JP4075359B2 - 歯車ポンプ又はモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に建設機械、車両用油圧機械等に適用可能な、歯車ポンプ並びに歯車モータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図1ないし図3に、典型的な外接歯車ポンプを例示する。このものは、噛合する駆動歯車2及び従動歯車3を、ケーシング1の内周11aの少なくとも一部分と歯車の刃先21、31とが略密接した状態で配設してなるものであり、吸込口INから歯車2、3の歯溝内に吸い込まれた液体はケーシング内周11aに沿って搬送されて吐出口OUTより吐き出される。
【0003】
周知の通り、歯車ポンプあるいは歯車モータは力学的に不平衡である。吐き出し圧力が低圧である場合、歯車軸4、5はほぼケーシング内周11aの中央にあって、加工寸法により決まる歯先隙間を保持している。しかし、吐き出し圧力が高圧になるほど、歯車軸4、5及び軸受に偏荷重がかかるために、歯車2、3が軸受の隙間や歯車軸4、5の撓みの分だけ低圧側、即ち吸込口IN側に押しやられて当該歯車の歯先21、31とケーシング内周11a(低圧側11aL)とが接触する。このとき、一般に歯車の方がケーシング1よりも高い硬度を有していることから、吸込口IN側のケーシング内周11a壁表面が歯車の歯先21、31によって削られ(以下、ワイプと呼称する)、図4に示すようなワイプ面WSが形成される。負荷運転時の歯先隙間を適切な状態に保つためには、工場出荷前に全数定格圧よりも高い圧力を負荷して慣らし運転を実施し、歯車の歯先21、31によってケーシング内周11aを徐々にワイプして当該ケーシング内周11a壁面を適宜の形状に形成することが必要となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ケーシング1を構成する素材その他の条件により、ワイプ面WSが適切に形成されないことがある。特に、ケーシング1を鋳鉄ボディとした場合等にあっては、ケーシング内周11a面がむしられたように荒れた状態となってしまう。これは、アルミニウムボディ等と比較して鋳鉄ボディの方が被削性が悪いことに起因するものである。そして、このような場合には、慣らし運転に工夫を凝らしたとしても歯車ポンプあるいは歯車モータとしての性能が安定しないという問題が生じていた。
【0005】
以上の問題に鑑みて、本発明は、ケーシング内周11a壁に形成されるワイプ面WSを適切に仕上げて歯車ポンプあるいは歯車モータの性能を安定させることを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決する手段として、本発明に係る歯車ポンプあるいは歯車モータは、吸込口IN側と吐出口OUT側との液圧差に基づいて生ずる歯車軸4、5の変位または歯車軸4、5の撓みに対応してケーシング内周11aの初期表面粗さを調整し、しかる後に慣らし運転によって歯車の刃先21、31によるワイプを実施して前記ケーシング内周11a面を適宜に切削形成するものとした。
【0007】
即ち、慣らし運転を行う前に予めケーシング内周11aの初期表面粗さを調整し、歯車の歯先21、31による切削抵抗を低減しておくことで、鋳鉄ボディ等の場合にあってもむしるような切削にはならずに良好なワイプ面WSを得ることができる。加えて、液圧差による歯車軸4、5の変位や歯車軸4、5の撓みに対応して、歯先21、31がより深く切削する部分についてはケーシング内周11a面の初期表面粗さをより大きく(深く)、歯先21、31が浅く切削する部分については初期表面粗さを小さく(浅く)調整しておくことにより、ケーシング内周11a面の所要の範囲全域に亘って良好なワイプ面WSを得ることができる。この結果、負荷運転時の歯先隙間が適切な状態となり、歯車の歯先21、31によるシール性が向上して歯車ポンプあるいは歯車モータとしての性能を安定的に高めることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態に係る歯車ポンプあるいは歯車モータは、図1ないし図3に示すように、ボディ11、フロントカバー12並びにリアカバー13からなるケーシング1の、前記ボディ11に設けた眼鏡状のめがね穴111に、駆動歯車2及び従動歯車3を噛合状態で収容し、ボディ11の両端を前記フロントカバー12及びリアカバー13によって閉止して構成されるものである。フロントカバー12及びリアカバー13は、ボディ11のめがね穴111に面する軸受穴121、131を有し、これら軸受穴121、131に軸受たるブッシュ122、132を嵌入して、歯車2、3を軸着した歯車軸4、5をそれぞれ軸承している。ボディ11には、両歯車4、5の噛合部に臨む位置に吸込口IN及び吐出口OUTをそれぞれ開口させてある。
【0009】
前記歯車2、3とフロントカバー3、リアカバー4との間には、それぞれ側板14を配設している。この側板14は、歯車2、3側に生じる高圧の圧液を反歯車側の面に導き、圧力バランスを利用して歯車2、3に添接して容積空間Sをシールするためのもので、全体の輪郭は互いに噛み合う歯車対を軸方向から投影した形状に略一致し、中央に2つの軸孔を打ち抜いている。
【0010】
そして、一端を外部に延出させてなる駆動歯車2の歯車軸4に外部から駆動力を加えることによって、両歯車2、3を同期逆回転させ、吸込口INから吸入した液を歯車2、3の歯間、側板11及びめがね穴111によって閉成される容積空間Sに閉じ込めて吐出口OUTにまで導き吐出するというポンプ作用を営むようにしている。また、モータ作用を営むときには、吐出口OUTより高圧の作動油を導入し、駆動歯車2の歯車軸4にトルクを与えて外部負荷を駆動するとともに、低圧となった作動油を吸込口INから吐出する。なお、ポンプ作用あるいはモータ作用を営ませる際、吐出口OUTと吸込口INとを上記とは逆の関係にして作動油を導いてもよい。
【0011】
このように構成された歯車ポンプあるいは歯車モータにあって、本実施形態では、組み立て作業の前に予めケーシング内周11a壁面の初期表面粗さを調整しておいた上で、組み立て作業後に慣らし運転を行いワイプによりケーシング内周11a面を適宜に切削形成することで、負荷運転時の歯先隙間が適切な状態となるようにしている。
【0012】
歯車2、3の歯の表面は、例えば浸炭焼入焼戻等の表面硬度を増大させる処理を施し、ケーシング1のボディ11よりも表面硬度が大きくなるようにしている。既に述べたように、本実施形態に係る歯車ポンプあるいは歯車モータは、組み立て工程を経た後、出荷前に慣らし運転を行う。慣らし運転は、高液圧でポンプ作用あるいはモータ作用を営ませることによって、半ば強制的に歯車2、3を回転させ、歯車の歯先21、31をケーシング内周11a、即ちめがね穴111の内周壁に摺接させて、内周壁表面をワイプするために行うものである。これによって歯車2、3が滑らかに、かつ歯先21、31がめがね穴111の内周壁に略隙間ない状態にて回転するようになる。
【0013】
この慣らし運転の際、吸入口INと吐出口OUTとの間で高低圧差が生じるが、高圧は図2の太線HPに示す部分、歯間とめがね孔111の内周壁に囲まれて形成される複数の単位容積空間Sのうち、吐出口OUT側の半部から吸入口IN側に若干及ぶような範囲内にあるものに生じる。この高圧により押される合力で、駆動歯車2並びに従動歯車3には、図2の矢印Fに示すように、他方の歯車側に向く力と吸入口IN側に向く力とを合成したような斜め方向の力が作用する。そして、歯車2、3は、この力Fの向きに沿って、めがね穴111の内周壁をワイプしつつ他方の歯車に向かって近接移動する。この移動範囲は、軸受の隙間によって歯車軸4、5がブッシュ122、132内で移動できる範囲内に規制される。加えて、歯車軸4、5はその前端部及び後端部がそれぞれフロントカバー12、リアカバー13によって軸承されていることから、液圧差による撓みは歯車軸4、5の中央部にて最大になる。言い換えるならば、歯車軸4、5は液圧差によりちょうど弓形に湾曲したような状態となる。
【0014】
ここで、ケーシング内周11a壁の初期表面粗さと、歯車の歯先21、31によるワイプの結果形成されるワイプ面WSとの関連について説明する。図5は、ケーシング内周11a壁の(歯車の径方向に切った)断面を模式的に表したものである。歯車の歯先21、31によるワイプの深さが図5のAの範囲内、即ち内周壁面の凹凸の範囲内(粗さ曲線の振幅の範囲内)にあれば、その切削抵抗は小さく、慣らし運転の結果良好なワイプ面WSが得られる。また、図5のCの位置、即ち表面の凹凸の最深部近傍(粗さ曲線の谷底近傍)までワイプが実施されたとき、歯先シール面が長期間確保される最良のワイプ深さとなる。一方で、図5のBの範囲にまで歯車のワイプが及ぶ場合には、切削抵抗が大きくなることから歯先21、31でむしられたような荒れたワイプ面WSとなってしまい、歯車ポンプあるいは歯車モータの性能が低下してしまう。
【0015】
上記の理由により、ケーシング内周11a面の所要の範囲全域に亘って良好なワイプ面WSを形成するためには、負荷運転時における歯車軸4、5の変位とともに、歯車軸4、5の撓みをも考慮に入れた上でケーシング内周11a面の初期表面粗さを調整しておかなくてはならない。よって、ケーシング内周11aの低圧側11aLにおいて、図6に模式的に示すように、歯車軸4、5の撓みに対応して、前後方向の末端部では初期表面粗さを小さく(浅く)、中央部では初期表面粗さを大きく(深く)調整する。より具体的には、内周11a面に処理を施す加工ツールの送り速度を変化させることによって、初期表面粗さの調整を実施する。即ち、加工ツールの送り速度を速くするほど加工面の表面粗さは大きく、遅くするほど表面粗さが小さくなることを利用し、ケーシング内周11aの前後方向の末端部では加工ツールの送り速度を遅くするとともに、ケーシング内周11aの前後方向の中央に近づくほど加工ツールの送り速度を速くすることにより、初期表面粗さを適宜に調整することができる。
【0016】
しかる後、組み立て工程にて噛合する歯車2、3をケーシング1内に配設し、慣らし運転によって歯車の歯先21、31によるワイプを実施する。なお、図6上には駆動歯車2及びその歯車軸4を表示しているが、従動歯車3側に関しても同様に構成することは言うまでもない。
【0017】
係る慣らし運転を終えて出荷された歯車ポンプあるいは歯車モータは、ポンプ作用あるいはモータ作用を営む際、吸入口INと吐出口OUTとの間で高低圧差が生じると、慣らし運転時と同様、該液圧差により駆動歯車2並びに従動歯車3に前記合力Fが作用する。このとき、歯車軸4、5が軸受の隙間により許容されている分だけ変位するとともに歯車軸4、5が撓むが、慣らし運転によるワイプが既に実施されて良好なワイプ面WSが形成され、ケーシング内周11aの低圧側11aLと歯車の歯先21、31との間に適当な歯先隙間が存在しているため、歯車ポンプあるいは歯車モータとしての機能を安定した性能で発揮することができる。
【0018】
従って本実施形態によれば、ケーシング1のボディ11に設けられためがね穴111内に噛み合う外接歯車2、3を配設した歯車ポンプあるいは歯車モータにおいて、吸込口IN側と吐出口OUT側との液圧差に基づいて生ずる歯車軸4、5の変位又は歯車軸4、5の撓みに対応してケーシング内周11aの初期表面粗さを調整し、しかる後に慣らし運転を行うことによって、歯車の刃先21、31によるワイプが実施されてケーシング内周11a面が適宜に切削形成され良好なワイプ面WSを得ることができる。この結果、歯車ポンプあるいは歯車モータとしての性能が安定する。特に、比較的もろい鋳鉄等をケーシング1のボディ11に用いた場合にあっても、ワイプ面WSが荒れてしまうことがない。さらには、容易に良好なワイプ面WSを形成することが可能であって、慣らし運転を従前と比較して簡略化できる。
【0019】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0020】
【発明の効果】
以上に詳述した本発明によれば、ケーシング内周壁に形成されるワイプ面を適切に仕上げて歯車ポンプあるいは歯車モータの性能を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る外接歯車ポンプを示す縦断面図。
【図2】同実施形態に係る外接歯車ポンプの要部縦断面図。
【図3】同実施形態に係る外接歯車ポンプの分解斜視図。
【図4】同実施形態に係る外接歯車ポンプのケーシングの部分斜視図。
【図5】ケーシングの内周壁の断面を模式的に示す図。
【図6】ケーシングの内周壁の初期表面粗さを模式的に示す図。
【符号の説明】
1…ケーシング
11…ボディ
11a…ケーシング内周壁面
WS…ワイプ面
2…駆動歯車
21…駆動歯車の歯先
3…従動歯車
31…従動歯車の歯先
4…駆動歯車の歯車軸
5…従動歯車の歯車軸
F…液圧差に基づいて生ずる合力
Claims (1)
- ケーシング内に噛み合う外接歯車を備える歯車ポンプ又はモータにおいて、
吸込口側と吐出口側との液圧差に基づいて生ずる歯車軸の変位又は歯車軸の撓みに対応して、歯車軸に沿った前後方向の末端部ではケーシング内周の初期表面粗さを小さく、中央部では大きく調整し、
しかる後に慣らし運転を行うことによって、歯車の刃先によるワイプが実施されてケーシング内周面が切削形成されることを特徴とする歯車ポンプ又はモータ。
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