JP4075211B2 - 直流ブラシレスモータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はレーザービームプリンタ(以下LBPと略す)などのレーザスキャンに使用されるポリゴンミラースキャナモータのような高速回転(数万rpm以上)を必要とした直流ブラシレスモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
このような高速回転では、
1)高速回転での損失の増加による発熱・モータ電源の大型化
2)電磁振動・電磁力による回転精度・騒音の悪化
といった課題が発生する。
【0003】
1)の課題については、PAM駆動やPWM駆動により駆動回路の損失を減少させ対処するものが一般的である。
【0004】
2)の課題については、振動や騒音・回転精度といった観点で、コアとマグネットの比率を検討してきた。その中で多スロット化をはかったものとしては、特開昭63−316648号公報や特開平5−56586号公報などに開示されている。特開昭63−316648号公報では、隣り合う3個の突極歯に1相分の巻線を分割して巻く構成としコギング力を低減することが開示されている。これは、1磁極ピッチ90度に対して1相が120度の幅を占めていることとなる。
【0005】
特開平5−56586号公報は、ACサーボモータの巻線構造で4N極9Nスロット(Nは整数)とすることにより高調波を低減し高精度回転を達成することが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、高速回転での回転磁界による鉄損の増加・モータ巻線のインダクタンスによる巻線電流の遅れによってモータを回転数制御するなかで、モータの伝達関数に遅れが生じ、目標とするジッタ(回転むら)が得られないといった課題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、少ない磁極数・磁束密度で鉄損を低減しつつPWM駆動での高速・高精度回転を可能にしたモータを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、ステータコアとステータコアに設けられた3相からなるステータ巻線とステータ巻線に通電する3相全波PWM駆動方式の駆動回路とにより、8極マグネットが固定されたロータを駆動する構成からなり、前記ステータのスロットは18個のスロットからなり、3相のステータ巻線の各相は、6ヶ所に分割して、5番目と9番目と14番目と18番目のスロットに巻線が集中巻きされ、7番目と16番目のスロットは他のスロットと逆方向に集中巻されており、前記3相のステータ巻線の任意の2相の端子間のインダクタンスL(μH)とモータの回転数N(rps)との間で、L0.5×N<18000となる特徴を備え、前記マグネットの外周は軽量非鉄の非磁性体からなる構造体で覆われ、前記ロータにはポリゴンミラーが固設された直流ブラシレスモータである。
【0009】
これにより、高速回転での通電電流の遅れを規制することにより、モータトルクの適正な供給をはかることで高精度なジッタ(回転むら)を維持することができる。また、更に効率を上げるためPWM駆動をするに際しても十分にスイッチングすることができるようになり、PWM駆動での回転精度の向上を実現することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
【0011】
請求項1記載の発明は、ステータコアとステータコアに設けられた3相からなるステータ巻線とステータ巻線に通電する3相全波PWM駆動方式の駆動回路とにより、ステータの外周に微小間隙で対向配置された8極のマグネットが固定されたロータを駆動する構成からなり、前記ステータのスロットは18個のスロットからなり、3相のステータ巻線の各相は、6ヶ所に分割して、5番目と9番目と14番目と18番目のスロットに巻線が集中巻きされ、7番目と16番目のスロットは他のスロットと逆方向に集中巻されており、前記3相のステータ巻線の任意の2相の端子間のインダクタンスL(μH)とモータの回転数N(rps)との間で、L0.5×N<18000となる特徴を備え、前記マグネットの外周は軽量非鉄の非磁性体からなる構造体で覆われ、前記ロータにはポリゴンミラーが固設された直流ブラシレスモータであり、
微小間隙の磁束密度が低減し、高速回転(300rps以上)での鉄損を大きく減少させ、かつ高速回転での通電電流の遅れを規制することにより、モータトルクの適正な供給をはかることで高精度なジッタ(回転むら)を維持することができる。特に、PWM駆動でのジッタ(回転むら)改善では効果が大きいものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、PWM駆動回路のPWM発振周波数を少なくとも50kHz以上としたもので、例えば、ロータの磁極数が12極で500rpsで回転する場合、相切り替えのスイッチング周波数は、500×24=12kHzとなり、8極で800rpsで回転する場合800×16=12.8kHzで、その約4倍以上のPWM発振周波数であれば通電角度が電気角で120度でも2回以上のPWMスイッチングが可能となるため、PWMでの制御ができる作用を有する。
【0013】
請求項3記載の発明は、モータの回転数N(rps)が、300以上としたもので、上記に述べた作用の効果が特に著しくなる。
【0014】
【実施例】
以下本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本発明の実施例による直流ブラシレスモータを示す構造図で、回転軸1は、軸受2により回転可能に支承されている。回転軸1には、ロータフレーム3が固定され、更にロータフレーム3の上には回転多面鏡6が、押さえ板5により固設されている。ロータフレームの内側には、ラジアル方向に多極に着磁されたマグネット4が挿入固定され、マグネット4と微小間隙で対向してモータを付勢するべくステータコアに巻線が巻かれたステータ7がステータ基板8に固定された構成となっている。ここで、ロータフレーム3は高速でのイナーシャの低減及び軸受負荷低減のため、アルミなどの軽量非鉄の材料からなっている。また、マグネット4は、8極着磁されたフェライト系のマグネットを使用しており、ステータ7は、18スロット構成となっている。この巻線パターンを図3に示す。
【0016】
上記構成の動作について説明する。一般に、鉄損は磁束の2乗に比例するから、マグネットを弱くした分必要トルクは巻線で稼ぐ必要があるが、そうすると巻線抵抗Ra(Ω)が増加し、回転数N(rpm)を上げるためには発電定数Ka(V/rpm)を下げる必要がある。即ちトルク定数Kt(gcm/A)は低下する。今、モータの電源電圧をVcc(V)、電流をI(A)とすると
N=(Vcc−RaI)/Ka
で表される。このとき、Ktが低下すると負荷に対して電流Iが増加し益々Ktは悪化する。
【0017】
しかしながら、PWM駆動をする場合、上記のKtの低下ほどには電流は低下せずモータの入力電力Pi(W)は、
モータ損失(風損+軸損+鉄損+銅損)+回路損失×β
で表される。ここで、βはPWMデューティによる係数で、この部分がKtの影響を受ける。従って、高速のモータではモータ損失がその大半を占めるためにKtの悪化による損失の影響は小さくなる。
【0018】
以上のような考えで、マグネットを弱くできるためロータフレームに高速でのイナーシャの低減及び軸受負荷低減のため、アルミなどの軽量非鉄の材料を使用できることになる。このことにより高速への起動特性や寿命を大幅に向上させることができる。また、磁束による電磁振動も低下し高速回転での騒音も低減する。
【0019】
次に回転精度であるが、通常、ポリゴンミラースキャナモータでは非常に高い回転精度を要求するため、フィードバック制御をかけている。ところが、モータのインダクタンスが大きいと発生トルクに遅れ(むだ時間)が生じ、制御性が悪化してジッタ(回転むら)も悪化する。
【0020】
この実験結果を図2に示す。図2では、3相の巻線の任意の2相の端子間のインダクタンスLを変えたときの回転数によるジッタの変化を示すグラフである。
【0021】
尚、通常は時定数(インダクタンス÷抵抗)を考えるべきであるが、実験ではほぼインダクタンスのみに相関が見られた。
【0022】
ここでジッタの要求レベルを0.01%以下とすると、その際の回転数N(rps)とインダクタンスL(μH)との間で、N×L0.5<18000とすれば
、達成できることが判明した。この効果は、特にモータ構成によらないことは明白であり、高速回転での大幅なジッタ改善につながるものである。
【0023】
また、PWMをかける場合には、ロータの磁極数が12極で500rpsで回転する場合、相切り替えのスイッチング周波数は、500×24=12kHzとなり、8極で800rpsで回転する場合800×16=12.8kHzで、その約4倍以上のPWM発振周波数であれば通電角度が電気角で120度でも2回以上のPWMスイッチングが可能となるため、PWMでの制御が円滑にできるため、ジッタの悪化を防止することができる。
【0024】
以上に述べた鉄損の低減及びジッタの低減を同時にはかるためには、少ない磁極数で、巻線を分割して(即ち多スロット化)インダクタンスを下げるのが良い。
【0025】
本実施例では、マグネット4を8極ステータ7のスロット数を18とした例を示している。
【0026】
図3は、ステータ7の巻線パターンを示している。図に示すように1相の巻線を6ヶ所に分割して巻くためにマグネット7の空隙磁束密度が少ない(0.25T以下)にも関わらず、インダクタンスを大幅に下げることができる。
【0027】
尚、実際にこれらの効果は回転数が少なくとも300rps以上で効果が顕著であった。
【0028】
【発明の効果】
上記実施例の記載から明らかなように、本発明によれば高速回転での課題であるジッタの改善をはかることができ、また鉄損・電磁振動の少ない軽量のモータ構成を実現することができる。
【0029】
更に、PWM駆動など省エネの動きに対しても十分な回転精度を維持しつつ高速回転まで対応を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例による直流ブラシレスモータを示す構造図
【図2】 本発明の実施例における直流ブラシレスモータのジッタと回転数の関係を示すグラフ
【図3】 本発明の実施例による直流ブラシレスモータの巻線パターンを示す図
【符号の説明】
1 回転軸
2 軸受
3 ロータフレーム
4 マグネット
5 押さえ板
6 回転多面鏡
7 ステータ、ステータコア、巻線
8 ステータ基板

Claims (3)

  1. ステータコアとステータコアに設けられた3相からなるステータ巻線とステータ巻線に通電する3相全波PWM駆動方式の駆動回路とにより、ステータの外周に微小間隙で対向配置された8極のマグネットが固定されたロータを駆動する構成からなり、前記ステータのスロットは18個のスロットからなり、3相のステータ巻線の各相は、6ヶ所に分割して、5番目と9番目と14番目と18番目のスロットに巻線が集中巻きされ、7番目と16番目のスロットは他のスロットと逆方向に集中巻されており、前記3相のステータ巻線の任意の2相の端子間のインダクタンスL(μH)とモータの回転数N(rps)との間で、L0.5×N<18000となる特徴を備え、前記マグネットの外周は軽量非鉄の非磁性体からなる構造体で覆われ、前記ロータにはポリゴンミラーが固設された直流ブラシレスモータ。
  2. PWM駆動回路は、PWM発振周波数が少なくとも50kHz以上である請求項1記載の直流ブラシレスモータ。
  3. モータの回転数N(rps)が、300以上で、マグネットとステータコアの空隙の磁束密度が、0.25T以下である請求項1または2記載の直流ブラシレスモータ。
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