JP4074556B2 - 分析系の応答速度改善方法および排気ガス測定システム - Google Patents

分析系の応答速度改善方法および排気ガス測定システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は分析系の応答時間に関し、信号処理によってその応答速度を改善する分析系の応答速度改善方法およびそれを用いた排気ガス測定システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平8−15225号公報
【非特許文献1】
「Calculation Method of Exhaust Mass Emissions by Using Tail-pipe Exhaust Gas at Transient Mode 」:細井賢三著、日本自動車研究所 自動車研究 第22巻 第4号
従来より、分析計の応答速度を改善するための種々の方法が提案されている。特許文献1は高速応答型炭化水素分析計のような高速ガス濃度計の応答速度を試験する方法および装置を示しており、この特許文献1においては、分析計は1次遅れ系と仮定してステップ状の変動を与えたときの検出出力が63%に達するまでの時間を用いて分析計における遅れ補正処理回路のための時定数を求めることが行われている。
【0003】
次いで、分析計の応答速度を上げるために、分析計の構造または電気系など信号処理の遅れ時間を少なくするために、前記方法で求められた時定数を用いて遅れ補正処理回路などのハードウェアの設定を変更する。これにより、時定数の設定が正確に行なうことができれば、分析計の応答の一次遅れは補正されて、その応答速度は改善される。
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法で求められる時定数では、種類や形状の定まった特定の分析計についてはある程度正確な遅れ時間の補正を行えるものの、測定信号の遅れ方は分析計の種類、形状、大きさなどによって大いに異なるものであり、特許文献1に示される方法ではあらゆる種類の分析計において正確な時定数を求めることはできなかった。
【0005】
そこで、非特許文献1に示すように、デコンボリューションやz変換を用いた演算処理によって、分析計の遅れ時間をより正確に補正する方法も考えられている。例えば、z変換による応答速度改善方法を例にして示すと、ガス濃度の変化を分析計に対する入力信号、測定値出力を出力信号と考えて、分析計の応答はz変換を使った以下の式(1)に示す伝播関数G(z)として表わすことができる。
G(z)=C(z)/R(z) … 式(1)
【0006】
ここで、z変換された入力信号をR(z),出力信号をC(z)と表すと、両信号R(z),C(z)は以下の式(2),(3)に示すようになる。
R(z)=r0 +r1 -1+r2 -2+…rn -n+… … 式(2)
C(z)=c0 +c1 -1+c2 -2+…cn -n+… … 式(3)
【0007】
そして、分析計の応答を一次遅れであると仮定とするとき、その伝達関数は、以下の式(4)に示すように表現できる。
G(z)=(1−d)/(z−d) … 式(4)
但し、d=exp(−T/τ)であり、Tはデータサンプリング周期、τは時定数である。
【0008】
したがって、分析計の時定数τが分かれば出力信号C(z)から、以下の式(5)に示す式を計算することで、分析計の一次遅れを補正した入力信号R(z)を演算によって求めることが可能である。
Figure 0004074556
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、非特許文献1に示すz変換を行っても、分析計の時定数τを正確に求めることは極めて困難であった。図7,図8は分析計の時定数τを求める一つの方法を説明する図であり、図7,8は何れも横軸に時間、縦軸に測定信号Cをその最終値C∞によって割った値を1から減算した値を対数表示したものである。
【0010】
また、図7,8は何れも、分析計にステップ状の変動を与えたときの応答である同じ測定信号(データD1 〜D16)から近似曲線L1 ,L2 を求めることで、その時定数τを求める例を示している。この方法では、操作者がどのデータを用いて近似直線L1 ,L2 を引くかを判断する必要があり、これが時定数τの大きさに多大な影響を与えることがあった。
【0011】
つまり、一次遅れによる影響で信号に遅れが生じている部分から時定数τを求めるときに、操作者が近似直線L1 ,L2 の演算のために、図7に示すように、データD1 〜D16を選択した場合は近似曲線L1 はy=7.048exp(−3.369x)となるのに対し、図8に示すように、操作者がデータD5 〜D13を選択した場合は近似曲線はy=3.042exp(−2.546x)となって、両者に大きな相違が生じていた。
【0012】
このため、より効果的に遅れ補正を行える時定数τを求めるためには、測定された前データD1 〜D16の中から近似直線の演算のために用いるデータを適正に判断する必要があり、これには経験豊富な人間の判断に頼らなければならず、自動化が難しかった。
【0013】
そして、従来の方法では時定数τを求める演算において分析計の測定信号が一次遅れであることを前提としている。したがって、従来の方法では二次遅れの以上の影響は全く無視せざるを得なかった。
【0014】
本発明は、上述の事柄を考慮に入れてなされたものであって、その目的は特殊な構造をとらず、一般的な分析系の構造で応答速度の速い分析系を実現することができる分析系の応答速度改善方法および排気ガス測定システムを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、第1の発明の分析系の応答速度改善方法は、測定信号に所定パラメータによる遅れ補正処理を行なう応答速度の改善方法であって、ステップ状に変化させた測定対象を測定したときの測定信号をサンプリングして記憶すると共に、演算処理部に、記憶した測定信号に順次変化させた前記パラメータによる遅れ補正演算処理を行なわせ、各パラメータを用いた場合の遅れ補正演算処理後の測定信号がオーバーシュートを起こすかどうかを判断させて、オーバーシュートを起こさない最大のパラメータを最適パラメータとして設定させることにより、測定時に最適パラメータによる遅れ補正処理を行なうことを特徴としている。(請求項1)
【0016】
また、第2発明の分析系の応答速度改善方法は、測定信号にそれぞれ所定パラメータによる遅れ補正処理を複数段重ねて行なうことで二次遅れ以上の遅れ補正を行なう応答速度の改善方法であって、ステップ状に変化させた測定対象を測定したときの測定信号をサンプリングして記憶すると共に、演算処理部に、記憶した測定信号に前記遅れ補正処理に対応してそれぞれ順次変化させた前記パラメータによる遅れ補正演算処理を複数段重ねて行なわせ、各パラメータを用いた場合の遅れ補正演算処理後の測定信号がオーバーシュートを起こすかどうかを判断させて、オーバーシュートを起こさない最大のパラメータを最適パラメータとしてそれぞれ設定させることにより、測定時にそれぞれ最適パラメータによる二次遅れ以上の遅れ補正処理を行なうことを特徴としている。(請求項2)
【0017】
したがって、前記分析系の応答速度改善方法によれば、遅れ補正処理のパラメータを決定する方法として、実際に測定対象をステップ状に変化させたときに分析系から得られる測定信号を用いて、コンピュータなどの演算処理部に、順次パラメータを変えて遅れ補正演算処理を行った後の測定信号を複数算出させることで、言わば演算処理によって遅れ補正処理をシミュレーションすることで、最適なパラメータを求めるものである。
【0018】
つまり、従来のように一次遅れ補正を行なう時定数の算出のために近似直線を用いるような数学的な手法に捕らわれることがなく、遅れ補正演算処理の内容はどんなものであってもよい。したがって、それだけ実際の測定信号の遅れ補正を的確に行なうことができる。なお、前記遅れ補正演算処理は遅れ補正処理と実質的に同じ処理である必要があり、遅れ補正処理が演算処理によって行われる場合は、遅れ補正演算処理は遅れ補正処理と全く同じ演算処理を行なうものである。しかしながら、遅れ補正処理がアナログの処理回路によって行われる場合は、遅れ補正演算処理はこの処理回路をシミュレーションするような演算処理であることが望ましい。
【0019】
また、本発明では分析系の入口側で測定対象(例えばガス濃度)をステップ状に変化させて、分析系の測定信号をデータとして一旦記憶させているので、記憶した測定信号(データ)を何度も利用できる。そして、演算処理部によってパラメータを順次変更した遅れ補正演算処理(データ処理)を高速に行って、その結果得られる遅れ補正演算処理後の測定信号を評価することができる。
【0020】
図6は、演算処理部による遅れ補正演算処理の内容を簡単に示す図であり、30は記憶した測定信号(データ)、31a,31bは記憶した測定信号30を用いて演算処理部による遅れ補正演算処理後のデータである。
【0021】
前記最適パラメータの設定は、例えば、遅れ時間補正処理を一次遅れの補正とすると、時定数τは補正処理による影響が小さい値(補正が効かない値)から大きい値に順次変更させて、遅れ補正演算処理後にデータ31aのようにオーバーシュートするまで変化させ、オーバーシュートが生じたパラメータの一つ前(すなわちオーバーシュートする直前のデータ31a)のパラメータを最適パラメータとして設定することができる。すなわち、これがオーバーシュートを起こすことない最も早い応答速度を得るための最適パラメータである。
【0022】
なお、二次遅れ以上の遅れ補正を行なう場合にも、複数段重ねて処理する各遅れ補正処理に対応してそれぞれのパラメータを遅れ補正処理による影響が小さい値(補正が効かない値)から順次変化させて遅れ補正演算処理を行なわせ、これが遅れ補正演算処理後にデータ31aのようにオーバーシュートするまで変化させ、オーバーシュートが生じたパラメータの一つ前(すなわちオーバーシュートする直前のデータ31a)のパラメータを最適パラメータとして設定することができる。
【0023】
しかしながら、最適パラメータの設定は、所望の応答速度を得るためのものであってもよく、この場合、オーバーシュートを起こさないことは必要であるが、遅れ補正演算処理後のデータ31aが要求された応答速度を得られるとき、このときのパラメータを最適パラメータとすることも可能である。つまり、第1,2発明は特性の不明な分析系の応答特性を設計(改善)する有効な方法を示している。
【0024】
また、第2発明において例えば一次遅れの遅れ補正処理をカスケードに複数段重ねて行なうことで二次以上の遅れ補正処理を行なうことが可能であるが、この複数の遅れ補正処理を重ねる方法はカスケード接続に限られるものではない。
【0025】
前記分析系が入口部に流体のサンプリング部を設けた分析計であって、このサンプリング部の上流側において流路切換によってステップ状に変化させた流体を供給することで、サンプリング部を含めた分析系の遅れ補正処理を行なう場合(請求項3)には、ガスなどの流体の測定対象試料を採取するときに生じる拡散や滞留などによる測定信号の遅れを補正することも可能となり、分析系が比較的大きな分析システムを形成するときも、システム全体での遅れ時間を補正を行なうことができる。
【0026】
第3発明の排気ガス測定システムは、排気ガスの全流量を測定する流量計と、この排気ガスから所定流量を採取するサンプリング部を設けて採取した排気ガスの濃度を分析する分析系と、流量計によって測定される流量に分析系によって測定される各測定成分の濃度を乗算することにより各測定成分の排出量を求める演算部とを有する分析システムであって、前記演算部が、少なくとも前記分析系からの測定信号に前記分析系の応答速度改善方法による遅れ補正処理を施すことで、応答速度の改善を図った分析系によって得られる濃度信号と流量計によって得られる流量信号とを遅れ時間を合わせて乗算し、排気ガスの排出量を求めるものであることを特徴としている。(請求項4)
【0027】
前記排気ガス測定システムによれば、分析系によって得られる濃度信号と流量計によって得られる流量信号とを遅れ時間を合わせて乗算するので、排気ガスの排出量をより正確に求めることが可能となり、それだけ排気ガス測定システムの精度を向上できる。なお、前記分析系によって得られる濃度信号と流量計によって得られる流量信号の遅れ時間を合わせる処理には、分析系の応答遅れのみならず、分析系および流量計の無駄時間も合わせる処理が含まれる。また、流量計の応答遅れも同時に補正してもよいことはいうまでもない。
【0028】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の分析系の応答速度改善方法を説明する図である。図1において、1は応答速度を改善する対象となる分析系であって、この分析系1は測定対象の一例としてのサンプルガスSを採取して前処理を施すサンプリング部2(ガスサンプリング部)と、採取したサンプルガスSに含まれる各測定対象成分の濃度を分析する分析計3と、分析計3から得られた測定信号Ciを信号処理してその応答速度を改善した測定信号Coを出力する処理部4と、所定流量のサンプルガスSを引き込むためのポンプ5とからなっている。
【0029】
処理部4の構成は例えば演算処理部4aおよび記憶部4bを有しており、記憶部4bには分析計3から得られた測定信号Ciに加えて、所定パラメータによる遅れ補正演算処理を行なう応答速度改善プログラム6、この遅れ補正処理に最適なパラメータを設定する最適パラメータ設定プログラム7、この最適パラメータ設定プログラム7によって設定された最適パラメータ8、前記プログラム7によって遅れ補正演算処理を行った後の測定信号Corr1, Corr2, …などを記憶することができるように構成されている。
【0030】
9は前記分析系1の入口部に異なる2種類のガスをサンプルガスSとして切り換えて供給する流体切換弁、10は一例として二酸化炭素CO2 を供給するボンベ、11は例えば窒素ガスN2 を供給するボンベである。つまり、流体切換弁9を切り換えることにより、分析系1はステップ状に変化させた測定対象S(CO2 ,N2 )を測定することができる。
【0031】
つまり、図1に示すように、分析系1の入口部において測定対象をステップ状に変化させた状態で、前記最適パラメータ設定プログラム7を実行することにより、測定信号Ciにはガスサンプリング部2を含めた分析系1の応答遅れが生じ、これに応じて最適な遅れ補正演算処理を行うための最適パラメータ8を設定することが可能である。
【0032】
図2は最適パラメータ設定プログラム7の動作を説明する図である。
図2において、S1は分析計3から測定信号Ciを入力するステップである。また、入力した測定信号Ciはサンプリングされてデータとして記憶部4bに記憶される。このサンプリングの精度は高いことが望ましいが、サンプリング速度との関係で分析系1の種類に合わせたものとする。
【0033】
S2は遅れ補正演算処理を行うためのパラメータの初期値を設定するステップである。ここでは、説明が容易なように遅れ補正演算処理として一次遅れの補正演算処理を考えて、そのパラメータは時定数τである。また、その初期値は0である。
【0034】
S3は前記パラメータを用いて記憶部4bに記憶された測定信号Ciのデータを用いて遅れ補正演算処理を行なうステップである。なお、この遅れ補正演算処理は実際の測定時における前記応答速度改善プログラム6を呼び出すことが望ましい。そして、このパラメータで遅れ補正演算処理を行った後の測定信号CorrXを記憶部4bに記憶する。(なお、Xには順次数字が入る)
【0035】
S4は遅れ補正演算処理後の測定信号CorrXにオーバーシュートが生じているかどうか判断するステップである。オーバーシュートが生じているかどうかの判断は例えば測定信号CorrXを構成するデータの中に最終値より例えば1%オーバーしているデータが存在するかどうかによって行なうことができる。なお、このオーバーシュートを判断する基準には分析系1の種類やサンプリング制度などに合わせた所定の許容誤差を持たせて任意に設定可能である。
【0036】
S5は前記ステップS4においてオーバーシュートが生じていないと判断されたときに実行されるステップであり、前記パラメータを増加した後に前記ステップS3にジャンプする。
【0037】
S6は前記ステップS4においてオーバーシュートが生じていると判断されたときに実行されるステップであり、前記パラメータを減少することで、オーバーシュートが生じる直前のパラメータに戻す。
【0038】
S7は前記オーバーシュートが生じる直前のパラメータを最適パラメータ8として記憶部4bに記憶するステップである。すなわち、上述の各ステップS2〜S7は、時定数τをパラメータとして補正処理による影響が小さい値(補正が効かない値)から大きい値に順次変更させることで、遅れ補正演算処理後のデータがオーバーシュートすると、このオーバーシュートが生じる直前のパラメータを最適パラメータとして設定するものであり、これによってオーバーシュートを起こすことない最も早い応答速度を得るための最適パラメータ8を容易に得ることができ、これを記憶部4bに記憶させることができる。
【0039】
図3は、図2に示す最適パラメータ設定プログラム7の動作によって得られる演算結果の例を示す図であり、Corr1〜Corr4は何れもパラメータとしての時定数τを順次変化させた得の演算結果を示している。この例では、5回目(Corr5)で、最終値1.000の1%増の値1.010よりも大きい値Ovが4点ありるのでオーバーシュートが起こっており、直前の計算で使用した時定数が最適の値であることが分かる。
【0040】
このようにして設定された最適パラメータ8は、実際の測定対象を測定したときに得られる測定信号Ciに対して、応答速度改善プログラム6が遅れ補正処理(演算処理)を施す際に使用される。これによって、測定時に最適パラメータ8による遅れ補正処理を行なうことができ、分析系1の出力信号Co(図1参照)は応答速度を可及的に改善したものとすることができる。また、応答速度を向上するためのハードウェアの改造や高価な部品を用いることないので、分析系1または分析系1を含む排ガス測定システムの応答速度を上げることができ、正確な排ガス測定を行える。
【0041】
なお、本例では分析系1の入口部に設けたガスサンプリング部2の上流側において、測定対象(二酸化炭素の濃度)をステップ的に変化させた例を示しており、これによって前処理部分を含めた分析系1のシステム全体における応答速度を容易に改善させることができる。つまり、従来はどうすることもできなかったガスサンプリング部2における応答遅れをも補正することが可能となる。しかしながら、本発明は応答速度の改善を行なう分析系1がガスサンプリング部2を有することに限定されるものではなく、分析計3のみの応答速度を改善するためにも用いることが可能であることはいうまでもない。
【0042】
また、上述の例では演算部4を分析系1内に持たせることで、分析系1の測定信号Coは既に応答速度の改善を図ったものとすることが可能であるが、分析系1からの測定信号Ciを別途の演算処理装置などを用いて応答速度の改善処理を行ってもよいことはいうまでもない。
【0043】
さらに、上述の例では応答速度の改善を行なうために演算処理部4aを用いているので、最適パラメータ設定プログラム7の中で応答速度改善プログラム6を呼び出すことで、順次変更させたパラメータによる遅れ補正演算処理を、実際の測定信号Ciに施す遅れ補正処理と全く同様に行うことができ、それだけ最適パラメータの設定値を正確に行なうことが可能である。しかしながら、前記最適パラメータ設定プログラム7は応答速度改善プログラム6を呼び出す必要はなく、同様の処理を行なうものであってもよい。
【0044】
加えて、前記実際の測定信号Ciに施す遅れ補正処理は、演算処理部4aによる演算処理によって行われることに限定されるものではなく、種々のアナログ回路による遅れ補正処理であってもよい。この場合、最適パラメータ設定プログラム7のステップS3(図2参照)に示す遅れ補正演算処理はアナログ回路のシミュレーションを行うものである。また、この場合、最適パラメータ8は記憶部4bにではなく、遅れ補正処理を行なうアナログ回路に設定される。
【0045】
何れにしても、最適パラメータ設定プログラム7による遅れ補正演算処理は記憶部4bに記憶された測定信号Ciを用いて行うので、パラメータ(時定数τ)を順次変更した遅れ補正演算処理(図2のステップS3)を何度も高速に繰り返してやり直すことができ、遅れ補正処理の内容に係わらず速やかに最適パラメータを得ることができる。
【0046】
また、1次遅れ補正処理を複数段重ねて2次遅れ以上の遅れ補正処理を行なう場合にも、各遅れ補正処理に対応する各パラメータを順次変更してそれぞれの最適パラメータを設定することで、2次遅れ以上の遅れ補正処理も確実に行うことができる。
【0047】
図4は応答速度改善のための2次以上の遅れ補正処理の例を示す図であって、図4(A)は1次遅れ補正処理6a,6b,…をカスケード接続した遅れ補正処理6Aを示し、図4(B)はさらに複雑な遅れ補正処理6Bとして、測定信号Ciに対して並列に1次遅れ補正処理6a,6bを施した後にさらに遅れ補正処理6c…をカスケード接続した例を示す図である。
【0048】
図4に示すような複雑な応答速度改善方法で遅れ補正処理6A,6Bを施す場合にも、最適パラメータ設定プログラム7は応答速度改善のための処理6A,6Bの内容に係わりなく、前述と同じ方法で最適パラメータτa,τb,…を順番に求めることでこれを設定できる。つまり遅れ補正処理6A,6Bがいかに複雑になっても、従来のように数学的手法を駆使した複雑な演算処理を行なう必要がないだけでなく、使用者の判断に依存する処理も必要ないので極めて容易に遅れ補正処理を施すことができ、それだけ確実に応答速度を改善できる。
【0049】
図5は本発明の別の実施例を示す図である。図5において、20は排気ガス測定システムであり、21はこの排気ガス測定システム20の測定対象となる車両である。図5において、図1〜4と同じ符号を付した部材は同一または同等の部材であるから、その詳細な説明を省略する。
【0050】
本例に示す排気ガス測定システム20は排気ガスSの全流量Fを測定する流量計22と、この排気ガスSから所定流量を採取するガスサンプリング部2を設けて採取した排気ガスSの濃度Cを分析する分析系1と、流量計22によって測定される流量Fに分析系1によって測定される各測定成分の濃度Cを乗算することにより各測定成分の排出量Qを求めるパソコンなどの演算処理部からなる演算部23とを有する分析システムである。
【0051】
また、24,25は演算部23内における演算処理を表わしおり、演算処理24は分析系1から得られた測定信号Ciに、既に図2〜4を用いて示した応答速度改善方法による遅れ補正処理を施して、応答速度の改善された測定信号Coを生成する遅れ補正処理、演算処理25は流量計22から得られた測定信号Fiに、前記応答速度改善方法による遅れ補正処理を施して、応答速度の改善された測定信号Foを生成する遅れ補正処理である。そして、26は遅れ補正処理を施した各測定信号CoおよびFoを排気ガスSの濃度Cおよび流量Fとして乗算する乗算処理を示している。
【0052】
なお、前記遅れ補正処理24,25の内容には排気ガスSが流量計22を通った後にガスサンプリング部2を通って分析計3に入るまでの無駄時間の補正処理も含まれている。また、27は流量計22に所定流量のガスを流すためのポンプである。
【0053】
前記排気ガス測定システム20を用いた遅れ補正処理24,25を行なうためには、遅れ補正処理24,25に必要な各パラメータを設定する必要がある。そこで、流量計22の入口部に測定対象(例えば二酸化炭素)の濃度をステップ状に変化させたサンプルガスSを流入させ、前記ポンプ27を用いて流量をステップ状に変化させ、前記図1〜4に示した方法で、各パラメータを測定することができる。
【0054】
特に本例の場合は流量計22と分析系1との間の無駄時間の差も測定する必要があるので、ポンプ27を用いた流量のステップ状の変化と、流体切換弁9を用いた濃度のステップ状の変化を同期して行なう。そして、排ガス流量計22の測定信号Fiもコンピュータ23に記憶させ、記憶した流量計信号に図2と同様の処理を行い、流量計22の信号も補正する。同時に補正後の排ガス流量の測定信号Foと補正後の分析系1からの測定信号Coを比較して無駄時間28(遅れ時間と考えることも可能である)を求め、これを記憶する。
【0055】
また、前記演算部23は前記乗算処理27において、補正後の排ガス流量の測定信号Fo、分析系1からの濃度測定信号Coを、前記無駄時間28を用いて遅れ時間をあわせた信号F,Cとして両測定信号F,Cを乗算することで、正確な瞬時排ガス排出量Qを計算することができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の分析系の応答速度改善方法によれば、ハードウェアの改造や高価な部品を用いることなく、分析系または分析系を含む排気ガス測定システムの応答速度を上げることができ、正確な排気ガス測定を行なうことができる。また、遅れ補正処理に必要なパラメータの設定を演算処理部によって自動的に行なうことができる。
【0057】
排気ガスの瞬時排出量の計算に、遅れ補正処理を施した排気ガスの流量測定信号と濃度測定信号とを、両測定信号の間の無駄時間を合わせて乗算でき、正確な瞬時排出量を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によって応答速度を改善する分析系の構成を説明する図である。
【図2】前記分析系の応答速度改善方法の流れを説明する図である。
【図3】前記分析系の応答速度改善方法による演算処理の一例を示す図である。
【図4】前記遅れ補正処理の例を示す図である。
【図5】本発明の排気ガス測定システムの例を示す図である。
【図6】本発明の分析系の応答速度改善方法の基本的な考えを示す図である。
【図7】従来の応答速度改善方法で時定数を設定する方法を説明する図である。
【図8】従来の応答速度改善方法で時定数を設定する方法を説明する別の図である。
【符号の説明】
1…分析系、2…サンプリング部、3…分析計、4a…演算処理部、4b…記憶部、5…ポンプ、6,6A,6B…応答速度改善プログラム(遅れ補正演算処理)、7…最適パラメータ設定プログラム、8…最適パラメータ、20…排気ガス測定システム、22…流量計、23…演算部、28…無駄時間(遅れ時間)、CO2 …測定対象、Ci…測定信号(濃度信号)、Fi…測定信号(流量信号)、Ov…オーバーシュート、Q…排出量、S…サンプルガス(測定対象)、τ…パラメータ(時定数)。

Claims (4)

  1. 測定信号に所定パラメータによる遅れ補正処理を行なう応答速度の改善方法であって、
    ステップ状に変化させた測定対象を測定したときの測定信号をサンプリングして記憶すると共に、
    演算処理部に、
    記憶した測定信号に順次変化させた前記パラメータによる遅れ補正演算処理を行なわせ、
    各パラメータを用いた場合の遅れ補正演算処理後の測定信号がオーバーシュートを起こすかどうかを判断させて、
    オーバーシュートを起こさない最大のパラメータを最適パラメータとして設定させることにより、
    測定時に最適パラメータによる遅れ補正処理を行なうことを特徴とする分析系の応答速度改善方法。
  2. 測定信号にそれぞれ所定パラメータによる遅れ補正処理を複数段重ねて行なうことで二次遅れ以上の遅れ補正を行なう応答速度の改善方法であって、
    ステップ状に変化させた測定対象を測定したときの測定信号をサンプリングして記憶すると共に、
    演算処理部に、
    記憶した測定信号に前記遅れ補正処理に対応してそれぞれ順次変化させた前記パラメータによる遅れ補正演算処理を複数段重ねて行なわせ、
    各パラメータを用いた場合の遅れ補正演算処理後の測定信号がオーバーシュートを起こすかどうかを判断させて、
    オーバーシュートを起こさない最大のパラメータを最適パラメータとしてそれぞれ設定させることにより、
    測定時にそれぞれ最適パラメータによる二次遅れ以上の遅れ補正処理を行なうことを特徴とする分析系の応答速度改善方法。
  3. 前記分析系が入口部に流体のサンプリング部を設けた分析計であって、このサンプリング部の上流側において流路切換によってステップ状に変化させた流体を供給することで、サンプリング部を含めた分析系の遅れ補正処理を行なう請求項1または2に記載の分析系の応答速度改善方法。
  4. 排気ガスの全流量を測定する流量計と、
    この排気ガスから所定流量を採取するサンプリング部を設けて採取した排気ガスの濃度を分析する分析系と、
    流量計によって測定される流量に分析系によって測定される各測定成分の濃度を乗算することにより各測定成分の排出量を求める演算部とを有する分析システムであって、
    前記演算部が、少なくとも前記分析系からの測定信号に請求項3に記載の分析系の応答速度改善方法による遅れ補正処理を施すことで、応答速度の改善を図った分析系によって得られる濃度信号と流量計によって得られる流量信号とを遅れ時間を合わせて乗算し、排気ガスの排出量を求めるものであることを特徴とする排気ガス測定システム。
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