JP4073223B2 - 封止剤、半導体等の封止方法、半導体装置の製造方法、および半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は封止剤に関するものであり、更に詳しくは高い接着性を示し、低粘度、低温速硬化性であり実用性の高い封止剤、それによって電子部品、電気回路、電気接点あるいは半導体を封止する電子部品、電気回路あるいは半導体等の封止方法あるいは半導体装置の製造方法、およびそれによって半導体が封止されてなる半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
封止剤、特に半導体用の封止剤としては、多官能エポキシ化合物、フェノールノボラック系硬化剤、無機質充填剤を主成分としたエポキシ樹脂組成物が、広く用いられている。また、近年、半導体パッケージの小型化要求等に伴い、TAB封止、フリップチップ接続用のアンダーフィル封止等をはじめとして液状の封止剤が用いられるようになっており、これら液状封止剤には主としてエポキシ化合物、酸無水物系硬化剤、無機質充填剤を主成分としたエポキシ樹脂組成物が、広く用いられている。これらの封止剤に要求される基本的な特性は、はんだリフロー等の熱履歴によっても部品に不具合を生じさせない耐熱性、接着性等である。
【0003】
一般にエポキシ樹脂組成物は硬化に高温、長時間を要し、半導体パッケージ等の製造が困難であり製造サイクルが長くなることがあるが、製造を容易にしサイクルを速くして製造コストを軽減するために、低温速硬化性が要求されている。また、液状封止剤では半導体の大型化、高密度化による流動性のさらなる向上等による狭い隙間への高速浸透性が求められている。
【0004】
上記したような低温速硬化性、高速浸透性を改良するため、エポキシ樹脂において種々の改良が提案されている(特開平5−222270号公報、特開平6−5743号公報、特開平6−206982号公報、特開平7−165876号公報、特開平9−31161号公報、特開平9−246435号公報、特開平10−101906号公報、特開平11−21421号公報、特開平11−92549号公報、特開平11−140069号公報、特開平11−255864号公報、特開平11−256012号公報、特開平11−269250号公報、特開2000−3982号公報、特開2000−7891号公報、特開2000−53844号公報、特開2000−63630号公報)。
【0005】
一方で、一般に硬化性が速いヒドロシリル化反応を硬化反応に用いた硬化性組成物も提案されている(特開昭50−100、特開平9−291214、特開平1−126336、特開平5−295270)。
【0006】
さらに、封止剤には高い接着性が要求される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、高い接着性を示し、低粘度、低温速硬化性であり実用性の高い封止剤、それによって電子部品、電気回路、電気接点あるいは半導体を封止する電子部品、電気回路あるいは半導体等の封止方法あるいは半導体装置の製造方法、およびそれによって半導体が封止されてなる半導体装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために本発明者らは鋭意研究の結果、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(D)接着付与剤、を必須成分として含有することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する、下記一般式(I)で表される有機化合物、
【化2】
(式中R 1 は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR 1 は異なっていても同一であってもよい。)
(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)分子中にエポキシ基を含有する化合物である、接着付与剤、および、(E)シラノール縮合触媒を必須成分として含有することを特徴とする封止剤(1)であり、
(E)成分のシラノール縮合触媒が、ボロン系化合物あるいは/およびアルミニウム系化合物あるいは/およびチタン系化合物である(1)に記載の封止剤(2)であり、
半導体を封止するために用いられる(1)乃至(2)のいずれか1項に記載の封止剤(3)であり、
(3)に記載の封止剤からなるアンダーフィル(4)であり、
(1)乃至(2)のいずれか1項に記載の封止剤によって電子部品、電子回路、あるいは電気接点を封止することを特徴とする電子部品、電気回路、電気接点の封止方法(5)であり、
(3)に記載の封止剤あるいは(4)に記載のアンダーフィルによって半導体を封止することを特徴とする半導体の封止方法(6)であり、
(3)に記載の封止剤あるいは(4)に記載のアンダーフィルによって半導体を封止することを特徴とする半導体装置の製造方法(7)であり、
(3)に記載の封止剤あるいは(4)に記載のアンダーフィルによって半導体が封止されてなる半導体装置(8)である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
((A)成分)
まず、本発明における(A)成分について説明する。
【0011】
(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物であれば特に限定されない。有機化合物としてはポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、S、ハロゲンのみを含むものであることが好ましい。シロキサン単位を含むものの場合は、ガス透過性やはじきの問題がある。
【0012】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0013】
(A)成分の有機化合物は、有機重合体系の化合物と有機単量体系化合物に分類できる。
【0014】
有機重合体系化合物としては例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物を用いることができる。
【0015】
また有機単量体系化合物としては例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0016】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、下記一般式(III)
【0017】
【化3】
(式中R3は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される基が反応性の点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0018】
【化4】
示される基が特に好ましい。
【0019】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(IV)
【0020】
【化5】
(式中R4は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される脂環式の基が、硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0021】
【化6】
で示される脂環式の基が特に好ましい。
【0022】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合は(A)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンのみを含むものが好ましい。
これらの置換基の例としては、
【0023】
【化7】
【0024】
【化8】
が挙げられる。また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
【0025】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、
【0026】
【化9】
が挙げられる。
【0027】
(A)成分の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2,−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100%のもの、好ましくは1、2比率50〜100%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、
【0028】
【化10】
【0029】
【化11】
の他、従来公知のエポキシ樹脂のグルシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
【0030】
(A)成分としては、上記のように骨格部分とアルケニル基とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。
【0031】
(A)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.001mol以上含有するものが好ましく、1gあたり0.005mol以上含有するものがより好ましく、0.008mol以上含有するものがさらに好ましい。
【0032】
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(B)成分と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。
【0033】
(A)成分としては反応性が良好であるという観点からは、1分子中にビニル基を1個以上含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を2個以上含有していることがより好ましい。また貯蔵安定性が良好となりやすいという観点からは、1分子中にビニル基を6個以下含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を4個以下含有していることがより好ましい。
【0034】
(A)成分としては、力学的耐熱性が高いという観点および原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性が良好であるという観点からは、分子量が900未満のものが好ましく、700未満のものがより好ましく、500未満のものがさらに好ましい。
【0035】
(A)成分としては、他の成分との均一な混合、および良好な作業性を得るためには、粘度としては23℃において1000ポイズ未満のものが好ましく、300ポイズ未満のものがより好ましく、30ポイズ未満のものがさらに好ましい。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
【0036】
(A)成分としては、着色特に黄変の抑制の観点からはフェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等に例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基を示し、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換された基を示す。
【0037】
また、複屈折率が低い、光弾性係数が低い等のように光学特性が良好であるとともに耐候性が良好であるという観点からは、芳香環の(A)成分中の成分重量比が50重量%以下であるものが好ましく、40重量%以下のものがより好ましく、30重量%以下のものがさらに好ましい。最も好ましいのは芳香族炭化水素環を含まないものである。
【0038】
得られる硬化物の着色が少なく、光学的透明性が高く、耐光性が高いという観点からは、(A)成分としてはビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが特に好ましい。
【0039】
(A)成分としてはその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0040】
(A)成分は、単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0041】
(A)成分としては、耐熱性および透明性が高いという観点からは、下記一般式(I)
【0042】
【化12】
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
【0043】
上記一般式(I)のR1としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0044】
【化13】
等が挙げられる。
【0045】
上記一般式(I)のR1としては、得られる硬化物の各種材料との接着性が良好になりうるという観点からは、3つのR1のうち少なくとも1つがエポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、
【0046】
【化14】
で表されるエポキシ基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましい。これらの好ましいR1の例としては、グリシジル基、
【0047】
【化15】
等が挙げられる。
【0048】
上記一般式(I)のR1としては、得られる硬化物の化学的な熱安定性が良好になりうるという観点からは、2個以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜50の一価の炭化水素基であることがより好ましい。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
【0049】
【化16】
等が挙げられる。
【0050】
上記一般式(I)のR1としては、反応性が良好になるという観点からは、3つのR1のうち少なくとも1つが
【0051】
【化17】
で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、下記一般式(III)
【0052】
【化18】
(式中R3は水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましく、
3つのR1のうち少なくとも2つが下記一般式(V)
【0053】
【化19】
(式中R5は直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基を表し、R6は水素原子あるいはメチル基を表す。)で表される有機化合物(複数のR5およびR6はそれぞれ異なっていても同一であってもよい。)であることがさらに好ましい。
【0054】
上記一般式(V)のR5は、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の有機基であるが、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、直接結合あるいは炭素数1〜20の二価の有機基であることが好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜10の二価の有機基であることがより好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜4の二価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR5の例としては、
【0055】
【化20】
等が挙げられる。
【0056】
上記一般式(V)のR5としては、得られる硬化物の化学的な熱安定性が良好になりうるという観点からは、直接結合あるいは2つ以下の酸素原子を含みかつ構成元素としてC、H、Oのみを含む炭素数1〜48の二価の有機基であることが好ましく、直接結合あるいは炭素数1〜48の二価の炭化水素基であることがより好ましい。これらの好ましいR5の例としては、
【0057】
【化21】
が挙げられる。
【0058】
上記一般式(V)のR6は、水素原子あるいはメチル基であるが、反応性が良好であるという観点からは、水素原子が好ましい。
【0059】
ただし、上記のような一般式(I)で表される有機化合物の好ましい例においても、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有することは必要である。耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に3個以上含有する有機化合物であることがより好ましい。
【0060】
以上のような一般式(I)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、
【0061】
【化22】
等が挙げられる。
【0062】
また、(B)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(A)成分の揮発性が低くなり得られる封止剤からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(A)成分の例として上記したような、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物から選ばれた1種以上の化合物と、SiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサン(β)との反応物も好ましい。
((β)成分)
(β)成分は、SiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンである。
【0063】
具体的には、例えば
【0064】
【化23】
【0065】
【化24】
が挙げられる。
【0066】
ここで、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物との相溶性が良くなりやすいという観点から、下記一般式(II)
【0067】
【化25】
(式中、R2は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0068】
一般式(II)で表される化合物中の置換基R2は、C、H、Oから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0069】
入手容易性等から、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0070】
上記したような各種(β)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
(SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分の反応)
次に、本発明の(A)成分として、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分をヒドロシリル化反応して得ることができる化合物を用いる場合の、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分とのヒドロシリル化反応に関して説明する。
【0071】
尚、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分をヒドロシリル化反応すると、本発明の(A)成分を含む複数の化合物の混合物が得られることがあるが、そこから(A)成分を分離することなく混合物のままで用いて本発明の硬化性組成物を作成することもできる。
【0072】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合の、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分の混合比率は、特に限定されないが、反応中のゲル化が抑制できるという点においては、一般に、混合するSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合の総数(X)と、混合する(β)成分中のSiH基の総数(Y)との比が、X/Y≧2であることが好ましく、X/Y≧3であることがより好ましい。また(A)成分の(B)成分との相溶性がよくなりやすいという点からは、10≧X/Yであることが好ましく、5≧X/Yであることがより好ましい。
【0073】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば次のようなものを用いることができる。白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0074】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
【0075】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0076】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(β)成分のSiH基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
【0077】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレエート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
【0078】
反応させる場合のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(β)成分、触媒の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物に触媒を混合したものを、(β)成分にを混合する方法が好ましい。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(β)成分の混合物に触媒を混合する方法だと反応の制御が困難である。(β)成分と触媒を混合したものにSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物を混合する方法をとる場合は、触媒の存在下(β)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0079】
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
【0080】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
【0081】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0082】
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
【0083】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分を反応させた後に、溶媒あるいは/および未反応のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物あるいは/および(β)成分を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる(A)成分が揮発分を有さないため(B)成分との硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0084】
以上のような、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と(β)成分の反応物である(A)成分の例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、等を挙げることができる。
((B)成分)
次に、(B)成分であるSiH基を有する化合物について説明する。
【0085】
本発明の(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物である。
【0086】
(B)成分については1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に制限がなく、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
【0087】
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状オルガノポリシロキサンが好ましく、(A)成分との相溶性が良いという観点からは、さらに、下記一般式(II)
【0088】
【化26】
(式中、R2は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【0089】
一般式(II)で表される化合物中の置換基R2は、C、H、Oから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0090】
一般式(II)で表される化合物としては、入手容易性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0091】
(B)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、より流動性を発現しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。具体的には、分子量が50〜100,000のものが好ましく、50〜1,000のものがより好ましく、50〜700のものがさらに好ましい。
【0092】
(B)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0093】
(A)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(B)成分の揮発性が低くなり得られる封止剤からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(B)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機化合物(α)と、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン(β)を、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることが好ましい。
((α)成分)
ここで(α)成分は上記した(A)成分である、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物と同じもの(α1)も用いることができる。(α1)成分を用いると得られる硬化物の架橋密度が高くなり力学強度が高く信頼性の高い封止剤となりやすい。
【0094】
その他、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機化合物(α2)も用いることができる。(α2)成分を用いると得られる硬化物が低弾性となりやすく、低応力により信頼性の高い封止剤となりやすい。
((α2)成分)
(α2)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機化合物であれば特に限定されないが、(B)成分が(A)成分と相溶性がよくなるという点においては、化合物としてはポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンのみを含むものであることが好ましい。
【0095】
(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
【0096】
(α2)成分の化合物は、重合体系の化合物と単量体系化合物に分類できる。
【0097】
重合体系化合物としては例えば、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物を用いることができる。
【0098】
また単量体系化合物としては例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物、シリコン系の化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0099】
(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、下記一般式(III)
【0100】
【化27】
(式中R3は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される基が反応性の点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0101】
【化28】
示される基が特に好ましい。
【0102】
(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、下記一般式(IV)
【0103】
【化29】
(式中R4は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される脂環式の基が、硬化物の耐熱性が高いという点から好適である。また、原料の入手の容易さからは、
【0104】
【化30】
示される脂環式の基が特に好ましい。
【0105】
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合は(α2)成分の骨格部分に直接結合していてもよく、2価以上の置換基を介して共有結合していても良い。2価以上の置換基としては炭素数0〜10の置換基であれば特に限定されないが、(B)成分が(A)成分と相溶性がよくなりやすいという点においては、構成元素としてC、H、N、O、S、およびハロゲンのみを含むものが好ましい。これらの置換基の例としては、
【0106】
【化31】
【0107】
【化32】
が挙げられる。また、これらの2価以上の置換基の2つ以上が共有結合によりつながって1つの2価以上の置換基を構成していてもよい。
【0108】
以上のような骨格部分に共有結合する基の例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、
【0109】
【化33】
が挙げられる。
【0110】
(α2)成分の具体的な例としては、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−ウンデセン、出光石油化学社製リニアレン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、2,3,3−トリメチル−1−ブテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン等のような鎖状脂肪族炭化水素系化合物類、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、ノルボルニレン、エチリデンシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、カンフェン、カレン、αピネン、βピネン等のような環状脂肪族炭化水素系化合物類、スチレン、αメチルスチレン、インデン、フェニルアセチレン、4−エチニルトルエン、アリルベンゼン、4−フェニル−1−ブテン等のような芳香族炭化水素系化合物、アルキルアリルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類、グリセリンモノアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン等の脂肪族系化合物類、1,2−ジメトキシ−4−アリルベンゼン、o−アリルフェノール等の芳香族系化合物類、モノアリルジベンジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等の置換イソシアヌレート類、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェニルシラン等のシリコン化合物等が挙げられる。さらに、片末端アリル化ポリエチレンオキサイド、片末端アリル化ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系樹脂、片末端アリル化ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、片末端アリル化ポリブチルアクリレート、片末端アリル化ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、等の片末端にビニル基を有するポリマーあるいはオリゴマー類等も挙げることができる。
【0111】
構造は線状でも枝分かれ状でもよく、分子量は特に制約はなく種々のものを用いることができる。分子量分布も特に制限ないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0112】
(α2)成分のガラス転位温度が存在する場合はこれについても特に限定はなく種々のものが用いられるが、得られる硬化物が強靭となりやすいという点においては、ガラス点移転温度は100℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、0℃以下であることがさらに好ましい。好ましい樹脂の例としてはポリブチルアクリレート樹脂等が挙げられる。逆に得られる硬化物の耐熱性が高くなるという点においては、ガラス転位温度は100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましく、170℃以上であることが最も好ましい。ガラス転位温度は動的粘弾性測定においてtanδが極大を示す温度として求めることができる。
【0113】
(α2)成分としては、得られる硬化物の耐熱性が高くなるという点においては、炭化水素化合物であることが好ましい。この場合好ましい炭素数の下限は7であり、好ましい炭素数の上限は10である。
【0114】
(α2)成分としてはその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。具体的にはモノアリルジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、アリロキシエチルメタクリレート、アリロキシエチルアクリレート、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0115】
上記のような(α2)成分としては単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
((β)成分)
(β)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサンである。
【0116】
具体的には、例えば
【0117】
【化34】
【0118】
【化35】
が挙げられる。
【0119】
ここで、(α)成分との相溶性が良くなりやすいという観点から、下記一般式(II)
【0120】
【化36】
(式中、R2は炭素数1〜6の有機基を表し、nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
【0121】
一般式(II)で表される化合物中の置換基R2は、C、H、Oから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0122】
入手容易性等から、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
【0123】
上記したような各種(β)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
((α)成分と(β)成分の反応)
次に、本発明の(B)成分として、(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応して得ることができる化合物を用いる場合の、(α)成分と(β)成分とのヒドロシリル化反応に関して説明する。
【0124】
尚、(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応すると、本発明の(B)成分を含む複数の化合物の混合物が得られることがあるが、そこから(B)成分を分離することなく混合物のままで用いて本発明の硬化性組成物を作成することもできる。
【0125】
(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合の(α)成分と(β)成分の混合比率は、特に限定されないが、得られる(B)成分と(A)成分とのヒドロシリル化による硬化物の強度を考えた場合、(B)成分のSiH基が多い方が好ましいため、一般に混合する(α)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合の総数(X)と、混合する(β)成分中のSiH基の総数(Y)との比が、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。また(B)成分の(A)成分との相溶性がよくなりやすいという点からは、10≧Y/Xであることが好ましく、5≧Y/Xであることがより好ましい。
【0126】
(α)成分と(β)成分をヒドロシリル化反応させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば次のようなものを用いることができる。白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。更に、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0127】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
【0128】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0129】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(β)成分のSiH基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
ここここ また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレエート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
【0130】
反応させる場合の(α)成分、(β)成分、触媒の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、(α)成分に触媒を混合したものを、(β)成分にを混合する方法が好ましい。(α)成分、(β)成分の混合物に触媒を混合する方法だと反応の制御が困難である。(β)成分と触媒を混合したものに(α)成分を混合する方法をとる場合は、触媒の存在下(β)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
【0131】
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
【0132】
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。
【0133】
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
【0134】
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
【0135】
(α)成分と(β)成分を反応させた後に、溶媒あるいは/および未反応の(α)成分あるいは/および(β)成分を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる(B)成分が揮発分を有さないため(A)成分との硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は100℃であり、より好ましくは60℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
【0136】
以上のような、(α)成分と(β)成分の反応物である(B)成分の例としては、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビニルシクロヘキセンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジシクロペンタジエンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、アリルグリシジルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、αメチルスチレンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、等を挙げることができる。
((A)成分と(B)成分の混合)
(A)成分と(B)成分の組合せについては(A)成分の例として挙げたものおよびそれらの各種混合物/(B)成分の例として挙げたものおよびそれらの各種混合物、の各種組み合わせを挙げることができる。
【0137】
(A)成分と(B)成分の混合比率は、必要な強度を失わない限りは特に限定されないが、(B)成分中のSiH基の数(Y)の(A)成分中の炭素−炭素二重結合の数(X)に対する比において、好ましい範囲の下限はY/X≧0.3、より好ましくはY/X≧0.5、さらに好ましくはY/X≧0.7であり、好ましい範囲の上限は3≧Y/X、より好ましくは2≧Y/X、さらに好ましくは1.5≧Y/Xである。好ましい範囲からはずれた場合には十分な強度が得られなかったり、熱劣化しやすくなる場合がある。
((C)成分)
次に(C)成分であるヒドロシリル化触媒について説明する。
【0138】
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH2)2(PPh3)2、Pt(CH2=CH2)2Cl2)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)n、Pt[(MeViSiO)4]m)、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh3)4、Pt(PBu3)4)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)3]4、Pt[P(OBu)3]4)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号および3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0139】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl2O3、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4、等が挙げられる。
【0140】
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0141】
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、(B)成分のSiH基1モルに対して10-8モル、より好ましくは10-6モルであり、好ましい添加量の上限は(β)成分のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-2モルである。
【0142】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレエート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。((D)成分)
次に、本発明の(D)成分である接着付与剤について説明する。
【0143】
接着付与剤としては一般に用いられている接着剤の他、例えば種々のカップリング剤、エポキシ化合物、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレン、芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0144】
カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0145】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0146】
シランカップリング剤の添加量としては種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは0.5重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0147】
エポキシ化合物としては、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等を挙げることができる。
【0148】
エポキシ化合物の添加量としては種々設定できるが、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対しての好ましい添加量の下限は1重量部、より好ましくは3重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは25重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0149】
また、これらのカップリング剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物等は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0150】
これらの接着付与剤の内、接着性付与効果が高いという点においては分子内にエポキシ基を含有する化合物が好ましい。エポキシ基を含有する化合物の例としては、上記した、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類や、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等のようなエポキシ化合物等が挙げられる。
((E)成分)
次に(E)成分であるシラノール縮合触媒について説明する。
【0151】
本発明においてはカップリング剤やエポキシ化合物の効果を高めるために、さらにシラノール縮合触媒を用いることができ、接着性の向上および/あるいは安定化が可能である。このようなシラノール縮合触媒としては特に限定されないが、ボロン系化合物あるいは/およびアルミニウム系化合物あるいは/およびチタン系化合物が好ましい。シラノール縮合触媒となるボロン系化合物としては、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリイソプロポキシボラン、トリブトキシボラン、トリフェノキシボラン等のボロンアルコキシド類が例示できる。シラノール縮合触媒となるアルミニウム系化合物としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、sec−ブトキシアルミニウムジイソフロポキシド、アルミニウムトリsec−ブトキシド等のアルミニウムアルコキシド類:、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミキレートM(川研ファインケミカル製、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロポキシド)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)等のアルミニウムキレート類等が例示でき、取扱い性の点からアルミニウムキレート類がより好ましい。シラノール縮合触媒となるチタン系化合物としては、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン類:チタンテトラアセチルアセトナート等のチタンキレート類:オキシ酢酸やエチレングリコール等の残基を有する一般的なチタネートカップリング剤が例示できる。
【0152】
シラノール縮合触媒を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤あるいは/およびエポキシ化合物エポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは30重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0153】
また、これらのシラノール縮合触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
((F)成分)
次に(F)成分であるカルボン酸類あるいは/および酸無水物類について説明する。
【0154】
本発明においてはエポキシ基を含有する化合物の効果を高めるために、カルボン酸類あるいは/および酸無水物類を用いることができ、接着性の向上および/あるいは安定化が可能である。このようなカルボン酸類、酸無水物類としては特に限定されないが、
【0155】
【化37】
2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸、ノルボルネンジカルボン酸、水素化メチルナジック酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの単独あるいは複合酸無水物が挙げられる。
【0156】
これらのカルボン酸類あるいは/および酸無水物類のうち、ヒドロシリル化反応性を有し硬化物からの染み出しの可能性が少なく得られる硬化物の物性を損ない難いという点においては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を含有するものが好ましい。好ましいカルボン酸類あるいは/および酸無水物類としては、例えば、
【0157】
【化38】
テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸およびそれらの単独あるいは複合酸無水物等が挙げられる。
【0158】
カルボン酸類あるいは/および酸無水物類を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤あるいは/およびエポキシ化合物エポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0159】
また、これらのカルボン酸類あるいは/および酸無水物類は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(混合)
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分の混合の方法としては、各種方法をとることができるが、封止材の中間原料の貯蔵安定性が良好になりやすいという点においては、(A)成分に(C)成分および(D)成分を混合したものと、(B)成分を混合する方法が好ましい。(B)成分に(C)成分あるいは/および(D)成分を混合したものに(A)成分を混合する方法をとる場合は、(C)成分存在下あるいは/および非存在下において(B)成分が環境中の水分あるいは/および(D)成分のと反応性を有するため、貯蔵中等に変質することもある。
(添加剤)
(硬化遅延剤)
本発明の封止剤にはの保存安定性を改良する目的、あるいは製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、これらを併用してもかまわない。脂肪族不飽和結合を含有する化合物として、プロパギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示される。
【0160】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチンが好ましい。
【0161】
硬化遅延剤の添加量は種々設定できるが、使用するヒドロシリル化触媒1molに対する好ましい添加量の下限は10-1モル、より好ましくは1モルであり、好ましい添加量の上限は103モル、より好ましくは50モルである。
【0162】
また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(接着性改良剤)
また、本発明においては接着性付与効果をさらに高めるために、さらにシラノール源化合物を用いることができ、接着性の向上および/あるいは安定化が可能である。このようなシラノール源としては、例えばトリフェニルシラノール、ジフェニルジヒドロキシシラン等のシラノール化合物、ジフェニルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン類等を挙げることができる。
【0163】
シラノール源化合物を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤あるいは/およびエポキシ化合物エポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の下限は0.1重量部、より好ましくは1重量部であり、好ましい添加量の上限は50重量部、より好ましくは30重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0164】
また、これらのシラノール源化合物は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(熱硬化性樹脂)
本発明の封止剤には特性を改質する等の目的で、種々の熱硬化性樹脂を添加することも可能である。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂等が例示されるがこれに限定されるものではない。これらのうち、接着性等の実用特性に優れるという観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0165】
エポキシ樹脂としては、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ樹脂を、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物等の脂肪族酸無水物で硬化させるものが挙げられる。これらのエポキシ樹脂あるいは硬化剤はそれぞれ単独で用いても、複数のものを組み合わせてもよい。
【0166】
熱硬化性樹脂の添加量としては特に限定はないが、好ましい使用量の下限は硬化性組成物全体の5重量%、より好ましくは10重量%であり、好ましい使用量の上限は硬化性組成物中の50重量%、より好ましくは30重量%である。添加量が少ないと、接着性等目的とする効果が得られにくいし、添加量が多いと脆くなりやすい。
【0167】
これらの熱硬化性樹脂は単独で用いても、複数のものを組み合わせてもよい。
【0168】
熱硬化樹脂は樹脂原料あるいは/および硬化させたものを、(A)成分あるいは/および(B)成分に溶かして均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶媒に溶かして混合する等して分散状態としてもよい。得られる硬化物がより透明になりやすいという点においては、(A)成分あるいは/および(B)成分に溶かして均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱硬化性樹脂を(A)成分あるいは/および(B)成分に直接溶解させてもよいし、溶媒等を用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態あるいは/および混合状態としてもよい。
【0169】
熱硬化性樹脂を分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
(熱可塑性樹脂)
本発明の封止剤には特性を改質する等の目的で、種々の熱可塑性樹脂を添加することも可能である。熱可塑性樹脂としては種々のものを用いることができるが、例えば、メチルメタクリレートの単独重合体あるいはメチルメタクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリメチルメタクリレート系樹脂(例えば日立化成社製オプトレッツ等)、ブチルアクリレートの単独重合体あるいはブチルアクリレートと他モノマーとのランダム、ブロック、あるいはグラフト重合体等のポリブチルアクリレート系樹脂等に代表されるアクリル系樹脂、ビスフェノールA、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデンビスフェノール等をモノマー構造として含有するポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート系樹脂(例えば帝人社製APEC等)、ノルボルネン誘導体、ビニルモノマー等を単独あるいは共重合した樹脂、ノルボルネン誘導体を開環メタセシス重合させた樹脂、あるいはその水素添加物等のシクロオレフィン系樹脂(例えば、三井化学社製APEL、日本ゼオン社製ZEONOR、ZEONEX、JSR社製ARTON等)、エチレンとマレイミドの共重合体等のオレフィン−マレイミド系樹脂(例えば東ソー社製TI−PAS等)、ビスフェノールA、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のビスフェノール類やジエチレングリコール等のジオール類とテレフタル酸、イソフタル酸、等のフタル酸類や脂肪族ジカルボン酸類を重縮合させたポリエステル等のポリエステル系樹脂(例えば鐘紡社製O−PET等)、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の他、天然ゴム、EPDMといったゴム状樹脂が例示されるがこれに限定されるものではない。
【0170】
熱可塑性樹脂としては、分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合あるいは/およびSiH基を有していてもよい。得られる硬化物がより強靭となりやすいという点においては、分子中にSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合あるいは/およびSiH基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0171】
熱可塑性樹脂としてはその他の架橋性基を有していてもよい。この場合の架橋性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、架橋性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
【0172】
熱可塑製樹脂の分子量としては、特に限定はないが、(A)成分や(B)成分との相溶性が良好となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましい。逆に、得られる硬化物が強靭となりやすいという点においては、数平均分子量が10000以上であることが好ましく、100000以上であることがより好ましい。分子量分布についても特に限定はないが、混合物の粘度が低くなり成形性が良好となりやすいという点においては、分子量分布が3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。
【0173】
熱可塑性樹脂の配合量としては特に限定はないが、好ましい使用量の下限は硬化性組成物全体の5重量%、より好ましくは10重量%であり、好ましい使用量の上限は硬化性組成物中の50重量%、より好ましくは30重量%である。添加量が少ないと得られる硬化物が脆くなりやすいし、多いと耐熱性(高温での弾性率)が低くなりやすい。
【0174】
熱可塑性樹脂としては単一のものを用いてもよいし、複数のものを組み合わせて用いてもよい。
【0175】
熱可塑性樹脂は(A)成分あるいは/および(B)成分に溶かして均一な状態として混合してもよいし、粉砕して粒子状態で混合してもよいし、溶媒に溶かして混合する等して分散状態としてもよい。得られる硬化物がより透明になりやすいという点においては、(A)成分あるいは/および(B)成分に溶かして均一な状態として混合することが好ましい。この場合も、熱可塑性樹脂を(A)成分あるいは/および(B)成分に直接溶解させてもよいし、溶媒等を用いて均一に混合してもよいし、その後溶媒を除いて均一な分散状態あるいは/および混合状態としてもよい。
【0176】
熱可塑性樹脂を分散させて用いる場合は、平均粒子径は種々設定できるが、好ましい平均粒子径の下限は10nmであり、好ましい平均粒子径の上限は10μmである。粒子系の分布はあってもよく、単一分散であっても複数のピーク粒径を持っていてもよいが、硬化性組成物の粘度が低く成形性が良好となりやすいという観点からは粒子径の変動係数が10%以下であることが好ましい。
(充填剤)
本発明の封止剤には充填剤を添加することもできる。
【0177】
充填材としては各種のものが用いられるが、例えば、石英、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ等のシリカ系充填材、窒化ケイ素、銀粉、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ガラス繊維、炭素繊維、マイカ、カーボンブラック、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、無機バルーン等の無機充填材をはじめとして、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として一般に使用あるいは/および提案されている充填材等を挙げることができる。
【0178】
充填材としては、封止する半導体や電子材料へダメージを与え難いという観点からは、低放射線性であることが好ましい。
【0179】
充填材は適宜表面処理してもよい。表面処理としては、アルキル化処理、トリメチルシリル化処理、シリコーン処理、カップリング剤による処理等が挙げられる。
【0180】
この場合のカップリング剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
【0181】
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
【0182】
その他にも充填材を添加する方法が挙げられる。例えばアルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマーあるいはオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド、ハロゲン化物等を、本発明の組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で充填材を生成させる方法も挙げることができる。
【0183】
以上のような充填材のうち硬化反応を阻害し難く、線膨張係数の低減化効果が大きいという観点からは、シリカ系充填材が好ましい。
【0184】
充填材の平均粒径としては、封止材の狭い隙間への浸透性が良好となりやすいという点においては、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0185】
充填材の粒径50μm以上の粒子の割合としては、封止材の狭い隙間への浸透性が良好となりやすいという点においては、1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。
【0186】
充填材の粒径分布については、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として使用あるいは/および提案されているものをはじめ、各種設定できる。例えば、24μm以上の粒子が15重量%以上かつ1μm以下の粒子が3重量%以上となるようにしてもよい。
【0187】
充填材の平均粒子径、充填材の粒径50μm以上の粒子の割合はレーザー法マイクロトラック粒度分析計を用いて測定することができる。
【0188】
充填材の比表面積についても、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として使用あるいは/および提案されているものをはじめ、各種設定できる。例えば、4m2/g以上、4m2/g以下、10m2/g以下等、任意に設定できる。
【0189】
比表面積はBET法モノソーブ比表面積測定装置によって測定できる。
【0190】
充填材のガラス化率についても、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として使用あるいは/および提案されているものをはじめ、各種設定できる。例えば、97%以上等、任意に設定できる。
【0191】
充填材の形状としては、封止材の粘度が低くなりやすい観点からは、球状の充填材であることが好ましい。
【0192】
充填材は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0193】
充填材の添加量はとくに限定されないが、線膨張係数の低減化効果が高く、かつ封止剤の流動性が良好であるという観点から、好ましい添加量の下限は全封止剤中の30重量%、より好ましくは50重量%であり、好ましい添加量の上限は全封止剤中の80重量%、より好ましくは70重量%である。
(老化防止剤)
本発明の封止剤には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、一般に用いられている老化防止剤、たとえばクエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
【0194】
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(ラジカル禁止剤)
本発明の封止剤にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
【0195】
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(紫外線吸収剤)
本発明の封止剤には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
【0196】
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(その他添加剤)
本発明の封止剤には、その他、エポキシ系等の従来の封止材の充填材として使用あるいは/および提案されているものをはじめ、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、イオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
(溶剤)
本発明の封止剤は溶剤に溶解して用いることも可能である。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。
【0197】
溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。
【0198】
使用する溶媒量は適宜設定できるが、用いる硬化性組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1mLであり、好ましい使用量の上限は10mLである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶媒を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
【0199】
これらの、溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。
(封止剤性状)
本発明の封止剤としては上記したように各種組み合わせのものが使用できるが、狭い隙間への充填性が良好であるという点においては、封止剤の粘度としては、23℃において1000Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以下であることがより好ましく、5.0Pa・s未満であることがさらにこのましく、1.0Pa・s以下であることが特に好ましく、0.1以下であることが特に好ましい。また、同じ理由で、100℃において10Pa・s以下であることが好ましく、1.0Pa・s以下であることがより好ましく、0.1Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0200】
粘度の温度依存性(チクソ性)についても種々のものが使用できる。
【0201】
粘度はE型粘度計によって測定することができる。
【0202】
隙間への浸透速度としては、23℃における50μmの隙間への浸透時間が600秒/cm以下であることが好ましく、120秒/cm以下であることがより好ましい。また、23℃における25μmの隙間への浸透時間が600秒/cm以下であることが好ましく、180秒/cm以下であることがより好ましい。また、60℃における50μmの隙間への浸透時間が120秒/cm以下であることが好ましく、60秒/cm以下であることがより好ましい。また、60℃における25μmの隙間への浸透時間が180秒/cm以下であることが好ましく、120秒/cm以下であることがより好ましい。また、100℃における50μmの隙間への浸透時間が60秒/cm以下であることが好ましく、30秒/cm以下であることがより好ましい。また、100℃における25μmの隙間への浸透時間が120秒/cm以下であることが好ましく、60秒/cm以下であることがより好ましい。
【0203】
隙間への浸透時間は下記の方法により測定する。図1に示すように、ガラス板の上に2枚のアルミ箔スペーサー(厚み50μmあるいは25μm)を15mm隔てて並行に配置し、この間にまたがるように18mm幅のカバーグラスを積載した後、粘着テープによりガラス板、アルミ箔スペーサー及びカバーグラスを固定する。このようにしてガラス板、アルミ箔及びカバーグラスにより15mm×18mm×50μmあるいは25μmの空間を調製する。このものをホットプレート上に静置して設定温度に調整した後、図1に示すように隙間の一辺に封止剤を垂らしてからその一辺から1cmの位置に浸透した封止剤が到達するまでの時間を測定して隙間浸透時間とする。
【0204】
封止剤の硬化性については、任意に設定できるが、120℃におけるゲル化時間が120秒以内であることが好ましく、60秒以内であることがより好ましい。また、150℃におけるゲル化時間が60秒以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましい。また、100℃におけるゲル化時間が180秒以内であることが好ましく、120秒以内であることがより好ましい。硬化性が遅い場合には封止剤としての作業性が悪くなる。逆に速い場合には貯蔵安定性が悪くなりやすい場合もある。
【0205】
この場合のゲル化時間は、以下のようにして調べられる。設定温度に調整したホットプレート上に厚み50μmのアルミ箔を置き、その上に封止剤100mgを垂らしてゲル化するまでの時間を測定してゲル化時間とする。
(硬化)
本発明の封止剤は、あらかじめ混合し硬化性組成物中のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合とSiH基の一部または全部およびを反応させることによって硬化させて、半導体装置のための材料として用いることができる。
【0206】
封止剤を反応させて硬化させる場合において、(A)、(B)、(C)、(D)各成分の必要量を一度に混合して反応させてもよいが、一部を混合して反応させた後残量を混合してさらに反応させる方法や、混合した後反応条件の制御や置換基の反応性の差の利用により組成物中の官能基の一部のみを反応(Bステージ化)させてから成形等の処理を行いさらに硬化させる方法をとることもできる。これらの方法によれば成形時の粘度調整が容易となる。
【0207】
硬化させる方法としては、単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られやすいという観点から加熱して反応させる方法が好ましい。
【0208】
硬化温度としては種々設定できるが、好ましい温度の下限は30℃、より好ましくは100℃であり、好ましい温度の上限は300℃、より好ましくは200℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと成形加工が困難となりやすい。
【0209】
硬化は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が歪のない均一な硬化物が得られやすいという点において好ましい。
【0210】
硬化時間も種々設定できるが、高温短時間で反応させるより、比較的低温長時間で反応させた方が歪のない均一な硬化物が得られやすいという点において好ましい。
【0211】
反応時の圧力も必要に応じ種々設定でき、常圧、高圧、あるいは減圧状態で反応させることもできる。場合によって発生する揮発分を除きやすい、細部への充填性が良好であるという点においては、減圧状態で硬化させることが好ましい。
【0212】
封止剤が使用される製造工程において、封止剤中へのボイドの発生および封止剤からのアウトガスによる工程上の問題が生じ難いという観点においては、硬化中の重量減少が5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
【0213】
硬化中の重量減少は以下のように調べられる。熱重量分析装置を用いて封止剤10mgを室温から150℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して、減少した重量の初期重量の割合として求めることができる。
【0214】
また、電子材料へのシリコーン汚染の問題を起こし難いという点においては、この場合の揮発成分中のSi原子の含有量が1%以下であることが好ましい。
(硬化物性状)
本発明の封止剤は、高伸びであり耐熱応力性が高くなるという点においては、封止剤を硬化させて得られる硬化物の引張破断伸びが2%以上であることが好ましく、3%以上であることがより好ましく、4%以上であることがさらに好ましく、5%以上であることが特に好ましく、10%以上であることが最も好ましい。
【0215】
引張破断伸びは、以下の方法で測定することができる。厚さ3mmの板状硬化物より6×55×3mmの短冊を切り出し、r=1.0mm深さ1mmのUノッチを長辺方向の中央付近に両側より刻み図2のような試験片とする。23℃50%RHの環境下に置かれたオートグラフを用いて、チャック間距離を15mmとし、試験片のUノッチ部がチャック間の中央付近になるようにその両端をチャックで挟み、1mm/分の速度で引張り試験を行なう。このときの試験片が破断するまでの変位をチャック間距離で除して引張破断伸びとする。
【0216】
耐熱性が良好であるという観点からは、封止剤を硬化させて得られる硬化物のTgが100℃以上となるものが好ましく、150℃以上となるものがより好ましい。
【0217】
一方で、低応力であり、耐熱応力性が高いという観点からは、封止剤を硬化させて得られる硬化物のTgが100℃未満であるものが好ましく、80℃以下であるものがより好ましい。
この場合、Tgは以下のようにして調べられる。3mmx5mmx30mmの角柱状試験片を用いて引張りモード、測定周波数10Hz、歪0.1%、静/動力比1.5、昇温側度5℃/分の条件にて測定した動的粘弾性測定(アイティー計測制御社製DVA−200使用)のtanδのピーク温度をTgとする。
【0218】
また、封止剤として使用された場合に封止した配線等にイオンマイグレーション等の問題が生じ難く信頼性が高くなるという点においては、硬化物からの抽出イオン含有量が10ppm未満であることが好ましく、5ppm未満であることがより好ましく、1ppm未満であることがさらに好ましい。
【0219】
この場合、抽出イオン含有量は以下のようにして調べられる。裁断した硬化物1gを超純水50mlとともにテフロン(R)製容器に入れて密閉し、121℃、2気圧、20時間の条件で処理する。得られた抽出液をICP質量分析法(横河アナリティカルシステムズ社製HP−4500使用)によって分析し、得られたNaおよびKの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求める。一方同じ抽出液をイオンクロマト法(ダイオネクス社製DX−500使用、カラム:AS12−SC)によって分析し、得られたClおよびBrの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求める。以上のように得られたNa、K、Cl、Brの硬化物中の含有量を合計して抽出イオン含有量とする。
(封止対象)
本発明の封止剤を用いて半導体、電子部品、電子回路、あるいは電気接点を封止することができる。
【0220】
半導体としては通常のシリコンをベースとしたもののみではなく、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、亜鉛等種々の金属をベースとしたものを含む。その他、有機半導体も含む。素子としてはトランジスタ、抵抗、ダイオード等の他、発光ダイオード、半導体レーザー等の発光素子や、各種センサー等の受光素子、さらには太陽電池等も含む。また、メモリー、論理回路などの各種IC、LSI等も含まれる。半導体の形状としても通常の平板状、ブロック状のものの他、薄膜状、ボール状のもの(ボールセミコンダクター)のもの等も含まれる。半導体大きさについても種々適用可能であり、例えば0.3mm角のような小さなものから、25mm角あるいは100mm角のような大型のものでもよい。その他半導体上に設けられたパッシベーション膜等の保護膜や、ハンダバンプ、金バンプ、アルミパッド等の接続部位等についても適宜設定できる。
【0221】
電子部品としてはライバックトランス、コンデンサ等の他、自動車周辺電子部品、液晶周辺電子部品、電池周辺電子部品、有機EL(エレクトロルミネッセンス)周辺電子部品、光記録周辺電子部品等も含む。 自動車周辺電子部品としては、例えば、イグニッションコイル、燃料供給等の各種電子制御用の電子部品、計器部品、照明部品等が挙げられる。液晶周辺電子部品としては、例えば、偏光子、カラーフィルター、TFTのトランジスタ、透明導電膜、液晶等の他、液晶表示装置も含まれる。電池周辺電子部品としては、例えば、太陽電池基板、リチウムイオン電池、燃料電池等が挙げられる。有機EL(エレクトロルミネッセンス)周辺電子部品としては、有機EL基板等が挙げられる。光記録周辺電子部品としては、VD(ビデオディスク)、CD/CD−ROM、CD−R/RW、DVD−R/DVD−RAM、MO/MD、PD(相変化ディスク)、光カード用等のディスク基板、発光部品、ピックアップレンズ、受光部品等が挙げられる。
【0222】
電気回路としては、リジッドプリント基板、フレキシブルプリント基板、ビルドアップ基板の他光電子回路等が挙げられる。
【0223】
電気接点としては基板とケーブルの接続点、ケーブルとケーブルの接続点あるいは基板同士の接続点、基板と素子の接続点、ケーブルと素子の接続点などが挙げられる。
(封止方法)
封止する方法もエポキシ系等の従来の封止材の封止方法として使用あるいは/および提案されているものをはじめ、種々の方法をとることができる。例えば、キャスティング、ポッティング、ディッピング、プレス、コーティング、あるいはスクリーン印刷によって封止することもできるし、トランスファーモールドなどのようにモールディング封止することもできる。また、ディスペンスした後隙間に浸透させる方法(アンダーフィル)によっても封止することができる。
【0224】
封止時に必要に応じ各種処理を施すこともできる。例えば、封止時に発生するボイドの抑制のために封止剤あるいは一部反応させた封止剤を遠心、減圧などにより脱泡する処理などを適用することもできるし、封止した後に脱泡することもできる。
【0225】
封止する際の圧力条件も種々設定でき、常圧、減圧、加圧いずれの方法も適用できる。アンダーフィル等隙間に浸透させる場合や、微細部位への浸透性を高めたい場合等には減圧で実施することが有効であることがある。圧力は一定でもよいし、必要に応じて経時的に連続あるいは段階的に変化させてもよい。
【0226】
封止する場合の温度も種々設定できる。アンダーフィル等隙間に浸透させる場合や、微細部位への浸透性を高めたい場合等には加温状態で実施することが有効であることがある。この場合例えば、50℃〜200℃の温度が適用できる。温度は一定でもよいし、必要に応じて経時的に連続あるいは段階的に変化させてもよい。
(封止剤の具体例)
以下に封止剤の具体的な例を挙げるが、本発明の封止剤はこれに限定されるものではない。
【0227】
半導体の封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSI、センサー等をキャスティング、ポッティング、ディッピング、トランスファーモールド、コーティング、スクリーン印刷等で封止するための封止剤が挙げられ、より具体的には発光ダイオード、IC、LSI、センサー等のCOB、COF、TABといったポッティング封止剤、フリップチップのアンダーフィル(キャピラリーフロータイプおよびコンプレッションフロータイプ)、BGA、CSP等のICパッケージ類実装時の封止剤(補強用アンダーフィル)、スタックドIC用の封止剤、ウェハレベルCSP用の封止剤等を挙げることができる。その他、半導体前工程に使用されるパッシベーション膜、ジャンクションコート膜、バッファコート膜等の各種保護膜も半導体の封止剤の例である。
【0228】
電子部品の封止剤としては、偏向板、カラーフィルター、TFTのトランジスタ、透明導電膜、液晶表示装置の保護コーティング剤や、セルに充填した液晶の封止剤、太陽電池の保護コーティング剤、リチウムイオン電池や燃料電池の封止剤、有機EL(エレクトロルミネッセンス)の保護コーティング剤、光記録用光源、受光素子のコーティング剤や封止剤、さらに自動車の電子部品周辺の保護コーティング剤、封止剤も挙げられる。
【0229】
電子回路の封止剤としては、リジッドプリント基板、フレキシブルプリント基板材料、ビルドアップ基板のソルダーレジスト、保護コーティング剤等が挙げられる。
【0230】
電気接点の封止剤としては、基板と素子や基板と基板や基板とケーブル等の接点保護(コーティング)剤、ジャンクションコーティング剤等が挙げられる。
(半導体装置)
本発明の封止剤を用いて上記したような方法によって半導体を封止することによって半導体装置を製造することができる。この場合、本発明の封止剤を上記したような用途に使用し、通常の方法によって半導体装置を製造すればよい。
【0231】
半導体装置とは、各種半導体を含む装置であり、例えば、一般にDIP、QFP、SOP、TSOP、PGA、CSP、BGA、PIレジンやセラミックやBTレジンやFR4等各種サブストレートを用いたFCBGA、QFN、COB、COF、TAB、ウェハレベルCSP、スタックドパッケージ、BCC、MCM、SIP等と称されるの各種ICパッケージや、発光ダイオード部品、光センサー部品、およびそれらが搭載された基板、モジュール等が挙げられる。
【0232】
【実施例】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
(合成例1)
5Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、滴下漏斗、冷却管をセットした。このフラスコにトルエン1800g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1440gを入れ、120℃のオイルバス中で加熱、攪拌した。トリアリルイソシアヌレート200g、トルエン200g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.44mlの混合液を50分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま6時間加温、攪拌した後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したものであることがわかった(反応物Aと称する)。また、1,2−ジブロモメタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、8.08mmol/gのSiH基を含有していることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0233】
【化39】
(合成例2)
5Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、滴下漏斗、冷却管をセットした。このフラスコにトルエン1380g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1356gを入れ、105℃のオイルバス中で加熱、攪拌した。ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート300g、トルエン300g及び白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)1.36mlの混合液を30分かけて滴下した。得られた溶液をそのまま1時間加温、攪拌した後、未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと反応したものであることがわかった(反応物Bと称する)。また、1,2−ジブロモメタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、8.73mmol/gのSiH基を含有していることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0234】
【化40】
(合成例3)
1Lの四つ口フラスコに、攪拌装置、冷却管、滴下漏斗をセットした。このフラスコにトルエン150g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)15.6μL、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン500gを加えてオイルバス中で70℃に加温、攪拌した。ビスフェノールAジアリルエーテル64gをトルエン40gで希釈して滴下漏斗から滴下した。同温で60分攪拌後放冷し、ベンゾチアゾール4.74mgを添加した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がビスフェノールAジアリルエーテルと反応したものであることがわかった(反応物Cと称する)。また、1,2−ジブロモメタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、7.51mmol/gのSiH基を含有していることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0235】
【化41】
(合成例4)
1Lの四つ口フラスコに、磁気攪拌子、滴下漏斗、冷却管をセットした。このフラスコにトルエン200g、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン200gを入れ、窒素雰囲気下オイルバス中で50℃に加熱、攪拌した。アリルグリシジルエーテル95.0g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)31.5μL、トルエン50gの混合物を滴下漏斗から、30分かけて滴下した。1時間同温で加熱した後、未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がアリルグリシジルエーテルとヒドロシリル化反応したものであることがわかった(反応物Dと称する)。また、1,2−ジブロモメタンを内部標準に用いて1H−NMRによりSiH基の含有量を求めたところ、6.63mmol/gのSiH基を含有していることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
【0236】
【化42】
(実施例1〜8、比較例1〜3)
(A)成分としてSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する各種の有機化合物を用い、(B)成分として合成例1〜4で合成した反応物A〜Dを用い、(C)成分として白金ビニルシロキサン錯体を用い、表に示した配合で封止剤を作成した。
【0237】
これらの封止剤を用いて粘度、隙間浸透時間、硬化中の重量減少、ゲル化時間、接着性を測定した。
【0238】
これらの封止剤を軟膏缶に3mmの深さとなるように入れ、表に示した硬化条件で段階的に加熱を行い硬化物を得た。この硬化物を用いて引張破断伸び、Tg、抽出イオン含有量を測定した。
【0239】
【表1】
粘度:E型粘度計によって23℃での粘度を測定した。
【0240】
隙間浸透時間:アルミ箔スペーサーを2枚のガラス板で挟み込んで、図1のように15mm幅で長さ1.8cmの50μm厚みの隙間を作成した。このものをホットプレート上に静置して設定温度に調整した後、隙間の一辺に封止剤を垂らしてから一辺から1cmの位置に浸透した封止剤が到達するまでの時間を測定した。
【0241】
硬化中の重量減少:熱重量分析装置を用いて封止剤約10mgを室温から150℃まで10℃/分の昇温速度で昇温して、減少した重量の初期重量の割合として求めた。
【0242】
ゲル化時間:設定温度に調整したホットプレート上に厚み50μmのアルミ箔を置き、その上に封止剤約100mgを垂らしてゲル化するまでの時間を測定した。
【0243】
引張破断伸び:厚さ3mmの板状硬化物より6×55×3mmの短冊を切り出し、r=1.0mm深さ1mmのUノッチを長辺方向の中央付近に両側より刻み図2のような試験片とした。23℃50%RHの環境下に置かれたオートグラフを用いて、チャック間距離を15mmとし、試験片のUノッチ部がチャック間の中央付近になるようにその両端をチャックで挟み、1mm/分の速度で引張り試験を行なった。このときの試験片が破断するまでの変位をチャック間距離で除して引張破断伸びとした。
【0244】
硬化物のTg:3mmx5mmx30mmの角柱状試験片を用いて引張りモード、測定周波数10Hz、歪0.1%、静/動力比1.5、昇温側度5℃/分の条件にて測定した動的粘弾性測定(アイティー計測制御社製DVA−200使用)のtanδのピーク温度により求めた。
【0245】
抽出イオン含有量:裁断した硬化物約1gを超純水50mlとともにテフロン(R)製容器に入れて密閉し、121℃、2気圧、20時間の条件で処理した。得られた抽出液をICP質量分析法(横河アナリティカルシステムズ社製HP−4500使用)によって分析し、得られたNaおよびKの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求めた。一方同じ抽出液をイオンクロマト法(ダイオネクス社製DX−500使用、カラム:AS12−SC)によって分析し、得られたClおよびBrの含有量の値を、用いた硬化物中の濃度に換算して求めた。以上のように得られたNa、K、Cl、Brの硬化物中の含有量を合計して抽出イオン含有量とした。
【0246】
接着性:作成した封止剤をガラス板上に100μmの厚みに塗布し、120℃/1時間の条件で加熱硬化させた。得られた塗膜をJISK5400に規定されている方法によって碁盤目テープ法で接着性を調べた。碁盤目としては1mm角の10x10のマスを用い、剥がれたマスがあったものを×、全くはがれなかったものを○とした。
【0247】
また、これらの封止剤を隙間浸透時間測定に用いた50μmの隙間に充填したものを、150℃の熱風オーブン中で10分間加熱したところ硬化物となった。
【0248】
【発明の効果】
本発明の封止剤は高い接着性を有し、低粘度、低温速硬化性であり封止剤として優れた特性を有している。従って、これを用いて実用性の高い半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る隙間への浸透時間の測定に用いる冶具の斜視図である。
【図2】本発明に係る封止剤を硬化させて得られる硬化物の引張破断伸びを測定するための試験片の斜視図である。
Claims (8)
- (E)成分のシラノール縮合触媒が、ボロン系化合物あるいは/およびアルミニウム系化合物あるいは/およびチタン系化合物である請求項1に記載の封止剤。
- 半導体を封止するために用いられる請求項1乃至2のいずれか一項に記載の封止剤。
- 請求項3に記載の封止剤からなるアンダーフィル。
- 請求項1乃至2のいずれか1項に記載の封止剤によって電子部品、電子回路、あるいは電気接点を封止することを特徴とする電子部品、電気回路、電気接点の封止方法。
- 請求項3に記載の封止剤あるいは請求項4に記載のアンダーフィルによって半導体を封止することを特徴とする半導体の封止方法。
- 請求項3に記載の封止剤あるいは請求項4に記載のアンダーフィルによって半導体を封止することを特徴とする半導体装置の製造方法。
- 請求項3に記載の封止剤あるいは請求項4に記載のアンダーフィルによって半導体が封止されてなる半導体装置。
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