JP4072267B2 - 蒸気滅菌器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被滅菌物を収容するチャンバと、このチャンバに対向する面に所定幅で形成される環状の凹部にパッキンが装着されてなる内蓋とを有し、前記パッキンをチャンバの開口端面に圧接してチャンバ内を密閉状態に保持し、チャンバ内の高圧蒸気により被滅菌物の滅菌処理を行なう蒸気滅菌器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、医療用機材等を滅菌する蒸気滅菌器は、被滅菌物を収納するチャンバに内蓋を圧接してチャンバ内を密閉状態に保持し、このチャンバ内に満たされる高圧蒸気によって前記被滅菌物の滅菌処理を行なうように構成されている。前記内蓋には、チャンバの開口端に対向するように凹部が形成されており、この凹部にパッキンが挿着されている。この内蓋がチャンバに圧接されることにより、前記パッキンがチャンバの開口端に圧接され、チャンバ内が密閉状態に保持される。
【0003】
前記密閉構造では、滅菌処理中に浸透力に優れている飽和蒸気が凹部とパッキンとの間隙に浸入し、この浸入した蒸気や前記パッキンと凹部との間に残留している空気,水滴が加熱により膨張してパッキンを変形させてチャンバ内の密閉を壊してしまい、内蓋を閉じてもチャンバ内の圧力が外部に漏洩してしまうという問題点がある。
【0004】
特開平9−38178号公報(特許第2767569号)には、前記問題点を解消してチャンバ内の密閉を保持する蒸気滅菌器が提案されている。この蒸気滅菌器は、チャンバを塞ぐ内蓋に形成される凹部の底部にパッキンが入らない小径の溝を設け、この溝の適宜箇所から内蓋の外側に貫通する孔を設け、前記凹部とパッキンとの間に浸入した蒸気や残留空気,水滴が加熱により膨張しても前記孔から外部に放出される構造とされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平9−38178号公報に記載の蒸気滅菌器においては、パッキンを挿着する凹部の加工精度が悪い場合にチャンバ内の蒸気が前記凹部に形成される孔から漏洩してしまい、内蓋を閉じてもチャンバ内の圧力が外部に漏洩してしまうとともに、滅菌が正常に行なわれないという問題点がある。このため前記凹部の加工には高精度が要求され、加工性が低下するという問題点がある。また、前記凹部に形成される孔から、凹部とパッキンとの間に浸入した蒸気や残留空気,水滴が加熱により膨張して外部に放出される際に不快なエア漏れ音を発するという問題点もある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたもので、内蓋の加工精度に頼ることなくチャンバ内を確実に密閉状態とすることができ、不快なエア漏れ音を発生させることなく、安全で確実な滅菌処理が可能である蒸気滅菌器を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
前述された目的を達成するために、第1発明による蒸気滅菌器は、被滅菌物を収容するチャンバと、このチャンバに対向する面に所定幅で形成される環状の凹部にパッキンが装着されてなる内蓋とを有し、前記パッキンをチャンバの開口端面に圧接してチャンバ内を密閉状態に保持し、チャンバ内の高圧蒸気により被滅菌物の滅菌処理を行なう蒸気滅菌器において、
前記部の底部から凹部の内周壁にかけて、蒸気等を前記チャンバ内部に放出する複数の切込み溝を設けることを特徴とするものである。
【0008】
第1発明においては、内蓋のチャンバに対向する面に所定幅で環状に形成される凹部に、その底部から内周壁にかけて複数の切込み溝が設けられる。そして、この凹部にパッキンが挿着され、このパッキンがチャンバの開口端面に圧接されることによりチャンバ内が密閉状態に保持される。このチャンバ内の被滅菌物の滅菌処理を行なうに際して、例えば凹部とパッキンとの間に残留している空気,水滴や飽和蒸気が膨張した場合にはその蒸気等は前記切込み溝を経てチャンバ内部に放出される。
【0009】
第1発明によれば、凹部とパッキンとの間に浸入した飽和蒸気,凹部とパッキンとの間に残留している空気や水滴が膨張してパッキンを変形させてしまうのを防止することができるとともに、チャンバ内の蒸気が外部に放出されないため、凹部の加工精度に頼ることなくチャンバ内を確実に密閉状態にすることができ、安全で確実な滅菌処理が可能であるという効果を奏する。また、従来の問題点である蒸気が外部に漏れる際の不快な音を発生することがない。
【0010】
次に、第2発明による蒸気滅菌器は、被滅菌物を収容するチャンバと、このチャンバに対向する面に所定幅で形成される環状の凹部にパッキンが装着されてなる内蓋とを有し、前記パッキンをチャンバの開口端面に圧接してチャンバ内を密閉状態に保持し、チャンバ内の高圧蒸気により被滅菌物の滅菌処理を行なう蒸気滅菌器において、
前記凹部の底部に凹部幅より十分狭い環状溝を設けるとともに、この環状溝から前記凹部の内周壁にかけて、蒸気等を前記チャンバ内部に放出する少なくとも1つの切込み溝を設けることを特徴とするものである。
【0011】
第2発明においては、内蓋のチャンバに対向する面に所定幅で環状に形成される凹部に、その底部に凹部幅より十分狭い環状溝とこの環状溝から内周壁にかけて少なくとも1つの切込み溝が設けられる。そして、この凹部にパッキンが挿着され、このパッキンがチャンバの開口端面に圧接されることによりチャンバ内が密閉状態に保持される。このチャンバ内の被滅菌物の滅菌処理を行なうに際して、例えば凹部とパッキンとの間に残留している空気,水滴や飽和蒸気が膨張した場合には、その蒸気等は前記環状溝を経て切込み溝を通りチャンバ内部に放出される。
【0012】
第2発明によれば、第1発明と同様、凹部とパッキンとの間に浸入した蒸気や残留空気,水滴が膨張してパッキンを変形させてしまうのを防止することができるとともに、チャンバ内の蒸気が外部に放出されないため、凹部の加工精度に頼ることなくチャンバ内を確実に密閉状態とすることができ、安全で確実な滅菌処理が可能であるという効果を奏する。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、本発明による蒸気滅菌器の具体的な実施の形態につき、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1には、本発明の一実施例に係る蒸気滅菌器の概略縦断面図が示されている。
【0015】
本実施例の蒸気滅菌器1は、略直方体形状のケーシング2の正面側に左端部を軸として開閉する扉3が設けられており、このケーシング2の内部に底部4aを有する円筒状のチャンバ4とこのチャンバ4の開口部4bを塞ぐ内蓋5が設けられている。なお、前記チャンバ4の開口部4bは正面側に、底部4aは背面側にそれぞれ向けられている。
【0016】
前記ケーシング2内で、かつチャンバ4の側方には、貯水タンク(図示省略)が設けられており、この貯水タンクは前記チャンバ4に連結され内部の貯留水をチャンバ4内に供給するように構成されている。また、前記チャンバ4の底部4aには、ヒータ6が内部に向けて設けられている。このヒータ6により、前記チャンバ4内に供給された水が加熱される。
【0017】
図2には、前記内蓋5のチャンバ側面の部分平面図(a)および前記内蓋5にパッキンを挿着させた際の部分断面図(b)がそれぞれ示されている。前記内蓋5の外周縁側には、チャンバ4の開口部4bの対向位置にパッキン7を挿着させるリング状の凹部8が形成されている。このパッキン7は、一定幅を有するリング状の基台7aとこの基台7aの略外周に沿って設けられる突出部7bとからなり、前記凹部8はパッキン7の幅と略同一幅となるようにされている。
【0018】
この凹部8の底部8aには前記リング状に沿って断面V型状の環状溝9が形成されている。この環状溝9からリング状の凹部8の半径方向へその凹部8の内周壁8bを削るように複数個の切込み溝10が形成されている。なお、前記環状溝9は、前記パッキン7の幅より十分狭くされており、前記底部8aの幅方向の略中間位置を通るように形成されている。
【0019】
このように構成される蒸気滅菌器1においては、チャンバ4内に被滅菌物が収納された後、扉3が閉じられて内蓋5がチャンバ4の開口部に押え付けられ、パッキン7によりチャンバ4の密閉状態が保持される。その後、前記貯水タンクからチャンバ4内に水が供給され、この水が前記ヒータ6により加熱されて蒸気となる。前記チャンバ4内は、内蓋5により密閉状態とされているため、前記水の蒸発により加圧状態となり円滑に被滅菌物の滅菌処理が行なわれる。
【0020】
前記凹部8とパッキン7との間に浸入した飽和蒸気や、残留している空気,水滴等が滅菌処理中に加熱されて蒸気となり膨張した場合、その蒸気は前記環状溝9を経て切込み溝10を通ってチャンバ4内に放出される。
【0021】
本実施例によれば、凹部8とパッキン7との間に浸入した蒸気や残留空気,水滴が膨張してもチャンバ4内に放出されるので、パッキン5が変形するのを防止することができる。また、内蓋5に外部に通じる孔が形成されないため、チャンバ4内の蒸気が外部に放出されることがなく、凹部8の加工精度が多少劣っていてもチャンバ4内を確実に密閉状態とすることができるとともに、従来の問題点である蒸気が外部に漏れる際の不快な音を発生することがない。こうして安全で確実な滅菌処理が可能であるという効果を奏する。
【0022】
本実施例においては、パッキン7を装着する凹部8の底部8aに断面V型状の環状溝9が形成されているが、これに限らず、例えば断面角型状の環状溝や断面半円状の環状溝が形成されていても良い。また、前記環状溝9は、底部8aの幅方向の略中間位置に設けられているが、この環状溝9の形成位置や個数は、パッキン7の形状等に応じて任意に選定することができる。
【0023】
また、本実施例においては、切込み溝10が複数個設けられているが、この蒸気放出用の切込み溝は少なくとも1つ設けられていれば良い。
【0024】
本実施例においては、凹部8の底部8aに環状溝9が形成されているが、図3に本実施例の変形例に係る内蓋5’の部分平面図(a)および部分断面図(b)が示されるように、凹部8の底部8aから凹部8の内周壁8bを削るように形成される複数個の切込み溝10が設けられていれば、環状溝9は省略することもできる。
【0025】
この変形例に係る蒸気滅菌器においては、前記内蓋5’を用いてチャンバ4の密閉を保持し、前述のように滅菌処理を行なうに際して、前記凹部8とパッキン7との間に浸入した飽和蒸気や、残留空気,水滴等が加熱されて蒸気となり、この蒸気は前記切込み溝10からチャンバ4内に放出される。こうして前記実施例と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る蒸気滅菌器の概略縦断面図である。
【図2】図2は、本実施例の内蓋の部分平面図(a)および部分断面図(b)である。
【図3】図3は、変形例の内蓋の部分平面図(a)および部分断面図(b)である。
【符号の説明】
1 蒸気滅菌器
2 ケーシング
3 扉
4 チャンバ
5 内蓋
6 ヒータ
7 パッキン
8 凹部
9 環状溝
10 切込み溝

Claims (2)

  1. 被滅菌物を収容するチャンバと、このチャンバに対向する面に所定幅で形成される環状の凹部にパッキンが装着されてなる内蓋とを有し、前記パッキンをチャンバの開口端面に圧接してチャンバ内を密閉状態に保持し、チャンバ内の高圧蒸気により被滅菌物の滅菌処理を行なう蒸気滅菌器において、
    前記凹部の底部から凹部の内周壁にかけて、蒸気等を前記チャンバ内部に放出する複数の切込み溝を設けることを特徴とする蒸気滅菌器。
  2. 被滅菌物を収容するチャンバと、このチャンバに対向する面に所定幅で形成される環状の凹部にパッキンが装着されてなる内蓋とを有し、前記パッキンをチャンバの開口端面に圧接してチャンバ内を密閉状態に保持し、チャンバ内の高圧蒸気により被滅菌物の滅菌処理を行なう蒸気滅菌器において、
    前記凹部の底部に凹部幅より十分狭い環状溝を設けるとともに、この環状溝から前記凹部の内周壁にかけて、蒸気等を前記チャンバ内部に放出する少なくとも1つの切込み溝を設けることを特徴とする蒸気滅菌器。
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