JP4071590B2 - センサおよびセンサ製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、測定対象物の物理量(例えば、温度や特定ガスの濃度や濃度変化など)を検出するために、検出素子および金属筒状体を備えて構成されるセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、測定対象物の物理量を検出するセンサとしては、被測定領域に存在する測定対象物の温度を検出する温度センサや、被測定領域に存在する混合ガス中から特定ガス成分の濃度や濃度変化を検出するガスセンサ(酸素センサやNOxセンサなど)などが知られている。
【0003】
例えば、ガスセンサとしては、長尺形状に形成された固体電解質体からなる検出素子と、検出素子を保持する金属製の主体金具(金属筒状体)と、を備えて構成されるものがある。
このようなガスセンサには、ロー材を用いて主体金具と検出素子とをロー付け接合することにより、主体金具が検出素子を保持する構造のものや、ロー材を用いて環状の金属ホルダ(金属筒状体)と検出素子とをロー付け接合し、その状態で金属ホルダを主体金具に組みつけることにより、主体金具が検出素子を保持する構造のもの(例えば、特許文献1)がある。
【0004】
そして、ガスセンサは、主体金具が所定の取り付け位置に設置されて、検出素子の検出部が被測定領域に配置されるようにして使用に供される。例えば、自動車の排気ガス中の酸素濃度を検出するガスセンサの場合には、主体金具が排気管に設置されて、検出素子の検出部が排気管の内部に配置されて、排気ガス中の酸素濃度を検出する。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−126787号公報(図2参照)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、主体金具や金属ホルダを構成する金属筒状体と検出素子とをロー付け接合する構造のセンサにおいては、ロー材と検出素子との接合強度が、ロー材と金属筒状体との接合強度よりも弱いことから、主体金具および検出素子におけるロー材との接合強度に大きな偏りが生じてしまうという問題がある。
【0007】
つまり、ロー材は、金属系材料であることから、金属筒状体との親和性が良好であり、金属筒状体との接合強度が強くなるのに対して、固体電解質体などのセラミックスからなる検出素子との接合強度は弱くなる。このようにロー材との接合強度にバラツキがあると、ロー付け接合作業後の冷却工程におけるロー材の収縮により生じる応力が偏るために、検出素子からロー材が剥がれてしまう虞がある。
【0008】
また、検出素子からロー材が剥がれることにより、排気ガス(測定対象物)が被測定領域(例えば、排気管の内部)から外部に漏れ出てしまうと、適切な検出ができなくなる可能性がある。
なお、検出素子の表面に金属メッキやメタライズ層などを設けることで、ロー材と検出素子との接合強度を向上させることができるが、ロー付け接合作業後の冷却工程におけるロー材の収縮により、金属メッキなどが剥がれる虞がある。また、金属メッキやメタライズ層などを設けるには、そのための加工処理を実施する必要が生じるため、コストが高くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、検出素子と金属筒状体とをロー付け接合する構造のセンサにおいて、金属筒状体および検出素子におけるロー材との接合強度の偏りが少ないセンサ、およびそのようなセンサの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、測定対象物にさらされる検出部を有し、測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する電極部を有する長尺形状に形成される検出素子と、検出素子を挿通可能に構成された挿通孔を有し、検出部を測定対象物にさらす状態で挿通孔に挿通された検出素子の径方向周囲を取り囲む筒型形状に形成される金属筒状体と、を備えるセンサであって、検出素子は、外周表面に素子側ロー付け面を備え、金属筒状体は、挿通孔の内周面に金具側ロー付け面を備えると共に、ロー材を用いたロー付け接合により素子側ロー付け面と金具側ロー付け面とが接合されて、検出素子を保持するよう構成され、金具側ロー付け面は、金属筒状体の金属表面が露出する金属露出部と、この金属筒状体の金属表面上に形成される金属筒状体の金属表面よりもロー材との接合強度が低い材料からなる接合強度調整部材とから構成されることを特徴とする。
【0011】
金属筒状体の挿通孔の内面のうち、ロー材と対向する金具側ロー付け面を、金属筒状体の金属表面が露出する金属露出部とともに接合強度調整部材から構成することにより、金属筒状体の金属表面とロー材とが直接接合する面積を縮小することで、ロー材と金属筒状体との接合強度を低下させるのである。このようにロー材と金属筒状体との接合強度が適度に低下するよう接合強度調整部材を備えることで、金属筒状体および検出素子におけるロー材との接合強度の偏りを減少させることができる。
【0012】
よって、本発明(請求項1)のセンサによれば、金属筒状体および検出素子におけるロー材との接合強度の偏りを減少させることで、接合強度のバランスを調整することができ、これにより、接合強度の偏りに起因するロー材の剥離を防止できると共に、検出素子と金属筒状体との接合を良好に維持することができ、測定対象物が金属筒状体の内部を通じて被測定領域から外部に漏れるのを抑制することができる。
【0013】
なお、接合強度調整部材は、金属筒状体の金属表面よりもロー材との接合強度が低い材料で構成されており、例えば、セラミックス、ガラスなどの材料を用いて構成することができる。また、金属筒状体は、センサを所定の設置位置に取り付けるための取り付け部(ネジ部など)を有する主体金具や、板型検出素子を保持し、主体金具内に組みつけられる金属ホルダなどとして備えられる。さらに、長尺形状の検出素子としては、有底筒状(カップ形状)に形成されたもの、板型形状に形成されたものなどが挙げられる。
【0014】
そして、上述のセンサは、請求項2に記載のように、金具側ロー付け面における接合強度調整部材の占有割合が、50%以上80%以下となるように構成すると良い。なお、これにより、金具側ロー付け面における金属露出部の占有割合が20%以上50%以下となる。
【0015】
つまり、金具側ロー付け面における接合強度調整部材の占有割合の下限値を規定して、金属露出部の占有割合の上限値を制限することで、ロー材と金属筒状体との接合強度の上限値を制限して、ロー材と金属筒状体との接合強度を確実に低下させるのである。
【0016】
また、金具側ロー付け面における接合強度調整部材の占有割合の上限値を規定して、金属露出部の占有割合の下限値を制限することで、ロー材と金属筒状体との接合強度の下限値を制限して、ロー材と金属筒状体との接合強度を一定値以上に維持するのである。
【0017】
金具側ロー付け面における接合強度調整部材および金属露出部の占有割合がこのように規定されたセンサは、ロー材と金属筒状体との接合強度を一定値以上に維持しつつ、金属筒状体および検出素子におけるロー材との接合強度の偏りを減少させることができる。
【0018】
よって、本発明(請求項2)のセンサによれば、ロー材と金属筒状体との接合強度を一定値以上として、ロー材と金属筒状体との接合を良好に維持しつつ、金属筒状体および検出素子におけるロー材との接合強度の偏りに起因してロー材が剥がれるのを防止することができる。
【0019】
次に、上述(請求項1または請求項2)のセンサは、請求項3に記載のように、金具側ロー付け面の金属露出部が、接合強度調整部材により複数に分割されると共に、1つの金属露出部の面積が4[mm2 ]以上80[mm2 ]以下となるよう構成するとよい。
【0020】
つまり、金属露出部を1箇所に配置するのではなく、複数に分割することで、ロー付け接合作業後の冷却工程におけるロー材の収縮により生じる応力を分散させることができ、応力集中によるロー材の剥がれが生じるのを防止できる。
このとき、分割された1つの金属露出部の面積の上限値を規定することで、ロー材と金属筒状体との接合強度を確実に低下させると共に、また、分割された1つの金属露出部の面積の下限値を制限することで、ロー材と金属筒状体との接合強度を一定値以上に維持するのである。
【0021】
よって、本発明(請求項3)のセンサによれば、ロー材の収縮により生じる応力を分散することができる。また、金属露出部の面積の上限値および下限値を規定することで、ロー材と金属筒状体との接合を良好に維持しつつ、金属筒状体および検出素子におけるロー材との接合強度の偏りによるロー材の剥がれを防止することができる。
【0022】
なお、ロー材の収縮により生じる応力をより確実に分散させるには、1つの金属露出部の面積を50[mm2]以下とすることが好ましい。
そして、複数に分割された金属露出部を備えるセンサにおいては、例えば、請求項4に記載のように、接合強度調整部材が格子状に形成されているとよい。
【0023】
接合強度調整部材が格子状に形成されることで、金属露出部は、格子の枠内区画として複数に分割されると共に、金具側ロー付け面において略均等に配置されることになる。金属露出部が複数に分割されると共に略均等に配置されるセンサにおいては、冷却工程時のロー材の収縮により生じる応力を良好に分散させることができ、ロー材と金属筒状体(詳細には、金具側ロー付け面)との接合状態を良好なものとすることができる。
【0024】
よって、本発明(請求項4)のセンサによれば、金属露出部を格子の枠内区画として分割して配置することで、ロー材の収縮により生じる応力を分散でき、冷却工程におけるロー材の剥がれを防止することができる。
次に、上記目的を達成するためになされた請求項5に記載の発明方法は、測定対象物にさらされる検出部を有し、測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する電極部を有する長尺形状に形成されると共に、外周表面に素子側ロー付け面が形成された検出素子と、検出素子を挿通可能に構成された挿通孔を有し、検出部を測定対象物にさらす状態で挿通孔に挿通された検出素子の径方向周囲を取り囲む筒型形状に形成されると共に、挿通孔の内周面に金具側ロー付け面が形成された金属筒状体と、を備え、ロー材を用いたロー付け接合により素子側ロー付け面と金具側ロー付け面とが接合されて、金属筒状体が検出素子を保持する構成のセンサを製造するためのセンサ製造方法であって、挿通孔の内周面に、金属筒状体の金属表面よりもロー材との接合強度が低い材料からなる接合強度調整部材を形成し、金属筒状体の金属表面が露出する金属露出部と接合強度調整部材とからなる金具側ロー付け面を形成する第1工程と、金具側ロー付け面と素子側ロー付け面との間にロー材を配置し、このロー材を加熱溶融してロー付け接合作業を行う第2工程と、を有することを特徴とする。
【0025】
検出素子と金属筒状体とがロー付け接合されるセンサを製造するにあたり、そのセンサ製造方法において、金属筒状体の挿通孔の内周面に金属露出部と接合強度調整部材とからなる金具側ロー付け面を形成する第1工程を実施することで、金属筒状体の金属表面とロー材とが直接接合する面積を縮小させて、ロー材と金属筒状体との接合強度を低下させるのである。
【0026】
このようにロー材と金属筒状体との接合強度を適度に低下させることで、金属筒状体および検出素子におけるロー材との接合強度の偏りを減少させることができる。
よって、本発明(請求項5)のセンサ製造方法によれば、金属筒状体および検出素子におけるロー材との接合強度の偏りを減少させることができ、接合強度の偏りに起因してロー材が剥がれるのを防止でき、検出素子と金属筒状体との接合が良好となるセンサを製造することができる。
【0027】
そして、上述(請求項5)のセンサ製造方法においては、請求項6に記載のように、第2工程においてロー材を加熱するにあたり、ロー材のうち検出素子の近傍部分の温度を、金属筒状体の近傍部分の温度よりも5[℃]以上高温にするとよい。
【0028】
つまり、ロー材は、ロー付け接合作業時における温度が高温になるほど、接合相手との接合状態が良好になることから、金属筒状体よりも相対的にロー材と接合し難い検出素子の近傍部分のロー材を高温に設定することで、ロー材と検出素子との接合強度を向上させるのである。これにより、「金属筒状体とロー材との接合強度」と「検出素子とロー材との接合強度」との差を縮めることができ、金属筒状体および検出素子におけるロー材との接合強度の偏りを少なくすることができる。
【0029】
よって、本発明(請求項6)のセンサ製造方法によれば、金属筒状体および検出素子におけるロー材との接合強度の偏りが少なく、接合強度の偏りに起因するロー材の剥離を防止でき、検出素子と金属筒状体との接合状態が良好となるセンサを製造することができる。
【0030】
なお、ロー付け接合作業時における温度差が大きすぎると、冷却後のロー材の組成にムラが生じる虞があることから、ロー材のうち、検出素子の近傍部分と金属筒状体の近傍部分との温度差は、30[℃]以下にすることが望ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を適用したセンサの実施例を図面と共に説明する。
本実施例は、ガスセンサの一種である酸素センサ1であり、図1に酸素センサ1の全体構成を表す断面図を示す。なお、以下の説明においては、酸素センサ1のうち、図1における下端側が「ガスセンサの先端側」に相当し、同様に、酸素センサ1の図1における上端側が「ガスセンサの後端側」に相当する。
【0032】
図1に示すように、酸素センサ1は、ジルコニア(ZrO2 )を主成分とする固体電解質体により先端が閉じた有底筒状に形成された検出素子2,検出素子2の有底孔41に配置された軸状のセラミックヒータ3,酸素センサ1の内部構造物を収容すると共に酸素センサ1を排気管等の取付部に固定するケーシング4などを備えて構成されている。
【0033】
検出素子2の有底孔41の内面には、そのほぼ全面を覆うように、PtあるいはPt合金により多孔質に形成された内部電極48が形成され、外面のうち先端側(図中の下側)に同様な外部電極46が形成されている。また、検出素子2は、自身の長手方向略中間位置の外周表面から径方向外向きに突出する鍔部26を有して構成されている。そして、検出素子2は、先端側に配置される外部電極46、内部電極48および固体電解質体により構成され、測定対象物(排気ガス)にさらされることになる検出部25を有している。
【0034】
ここで、図7に、図1に示す酸素センサ1に備えられる検出素子2の外観を表す斜視図を示す。
検出素子2の外面には、図7に示すように、後端側(図7における上側)に導電層47が周方向に沿って帯状に形成され、外部電極46が鍔部26よりも先端側の全面を覆うように形成されており、さらに、導電層47と外部電極46とが直線状の接続パターン層44を介して電気的に接続されている。ここで、検出素子2の外面のうち鍔部26よりも後端側においては、後述するように素子側ロー付け面28が形成されることになるが、本実施例では、接続パターン層44と後述する充填部材52(ロー材)とが直接接触することがない(換言すれば、外部電極46と主体金具5とが充填部材52を介して短絡することがない)ように、接続パターン層44のうちで素子側ロー付け面28に位置する部分には、絶縁性のガラス層45により被覆されている。
【0035】
ケーシング4は、検出素子2を保持すると共にその先端側にある検出部25を排気管等の内部に突出させる主体金具5と、主体金具5の後端部(図1では上側の端部)に組み付けられ、検出素子2との間で基準ガス空間を形成する外筒6とを備えて構成されている。
【0036】
主体金具5は、検出素子2を挿通するよう先端側から後端側にかけて貫通する挿通孔50と、検出部25を有する先端側から挿通孔50に挿通された検出素子2の鍔部26を支持する棚部54とを有する略円筒型形状に形成されている。そして、主体金具5は、検出部25および後端部が挿通孔50の外部に露出する状態で検出素子2を保持可能に構成されている。
【0037】
主体金具5にて検出素子2を保持するにあたり、挿通孔50の内部には、検出素子2を先端側(図中下側)から支持するセラミックス材料からなる支持部材51,支持部材51の後端側(図中上側)に充填される共晶ロー(BAg8:Ag−Cu系ロー材)からなる充填部材52,および充填部材52の後端側に配置されるセラミックス材料からなるスリーブ53が同軸状に配置される。
【0038】
すなわち、支持部材51は、略円筒状に形成され、主体金具5の挿通孔50の内周に形成される棚部54にリング55を介して係止されると共に、検出素子2の鍔部26を先端側(図中下側)から支持する。なお、検出素子2の鍔部26は、支持部材51にパッキン56を介して係止される。そして、充填部材52は、支持部材51の後端側における主体金具5の挿通孔50の内面と検出素子2の外周面との間に配設され、さらに、スリーブ53は、略円筒状に形成され、充填部材52の後端側に配設される。
【0039】
なお、主体金具5の挿通孔50の内面のうち充填部材52に当接する部分に、金具側ロー付け面32が形成されており、検出素子2の外周面のうち充填部材52に当接する部分に、素子側ロー付け面28が形成されている。
スリーブ53は、後述するコイルバネ9により先端側に付勢されており、充填部材52に対して圧力を印加している。このため、加熱により溶融状態となった充填部材52は、スリーブ53からの加圧により、挿通孔50の内面と検出素子2の外周面との間の隅々まで充填される。そして、充填部材52は、温度低下により凝固して、検出素子2および主体金具5(詳細には挿通孔50の内面)とそれぞれ接合され、ひいては、検出素子2と主体金具5とが接合される。なお、支持部材51およびスリーブ53は、溶融状態の充填部材52が挿通孔50から外部に漏洩しないように、充填部材52を挿通孔50の内部に封止可能な形状に構成されている。また、溶融状態の充填部材52は、パッキン56によって検出素子2と支持部材51との間から漏れるのが確実に抑制される。
【0040】
なお、充填部材52を構成するBAg8は、溶融温度が約800[℃]であり、ロー付け作業後の耐熱温度が500〜600[℃]程度となる特性を示す共晶ロー材である。
ここで、挿通孔50の内部構造を表した主体金具5の断面図を図2に示す。
【0041】
図2に示すように、挿通孔50の内面のうち充填部材52に対応する部分である金具側ロー付け面32には、セラミックスからなる格子状のセラミックス層34と、主体金具5の金属表面である金属露出部35とが設けられている。
セラミックス層34は、挿通孔50の金具側ロー付け面32のうち、60%を占有するよう形成されている。また、セラミックス層34は、セラミックスで形成されるため、金属系材料のロー材からなる充填部材52との接合強度は、充填部材52と金属露出部35との接合強度に比べて低くなる。
【0042】
金属露出部35は、セラミックス層34の格子の枠内区画として複数に分割されて設けられており、具体的には、挿通孔50の貫通方向(上下方向)に2段に分かれて、挿通孔50の内面の周方向にわたり均等に分散して配置されている。分割された1つの金属露出部35は、面積が20[mm2 ]となるように形成されている。
【0043】
このようにセラミックス層34を設けて、挿通孔50の内面の金具側ロー付け面32における金属露出部35の総面積を縮小することで、主体金具5は、充填部材52(ロー材)との接合強度が低くなるように構成される。
図1に戻り、酸素センサ1は、主体金具5の後端部を覆う略円筒状の外筒6を備えており、外筒6は、主体金具5との間に基準ガス空間(内部空間)を形成している。外筒6は、その軸方向略中央部を境界として後端側の径方向寸法が先端側よりも縮径して形成されており、この径方向寸法の変更部分の内壁には、先端側に対向する段差部61が形成されている。なお、段差部61は、後述するセパレータ7のフランジ部71を係止可能に形成されている。外筒6の後端部(図中の上端部)には、後述するシール部材11の後端縁(上端縁)を覆うように内方に屈曲した肩部62が設けられ、その端縁により上端開口部63が形成されている。
【0044】
外筒6の上端開口部63には、検出素子2の電極46,48に夫々接続されるリード線21,22およびセラミックヒータ3に接続される一対のリード線を夫々外部から外筒6(酸素センサ1)の内部に導入すると共に、外筒6の内部への水分や油分の侵入を防止するシールユニット10が設けられている。
【0045】
このシールユニット10は、フッ素ゴムからなる円柱状のシール部材11と、このシール部材11の中央を軸方向に貫通する貫通孔14に嵌挿可能な筒状挿入部材39と、この筒状挿入部材39の上端部を覆うと共に、これらシール部材11の貫通孔14の内周面と筒状挿入部材39の外周面との間に挟持されて固定されるシート状の通気フィルタ40とから構成されている。シールユニット10は、リード線21,22などを挿通した状態で外筒6の先端側の開口部から上端開口部63の内側に配置された状態のシール部材11が、外筒6と共に径方向内側に加締められることにより、外筒6に固定される。これにより、外筒6およびシール部材11が密着し、そのシール性がより確実なものとなる。
【0046】
また、外筒6の内部に組み付けられたシール部材11の先端側には、セラミックで筒状に形成された絶縁性のセパレータ7が内挿されている。このセパレータ7は、略円筒形状の本体を有し、その本体先端部の外周面には径方向外側に突出したフランジ部71が周設され、その先端面には先端方向に突出した環状突部72が形成されている。フランジ部71は、その外径が先端側になるほど大きくなるようにテーパ状の当接部73を有し、この当接部73が外筒6の段差部61に係止されている。セパレータ7は、各リード線21,22と電気的に接続された端子部8を検出素子2の電極46,48に接続させた状態で保持すると共に、セラミックヒータ3と電気的に接続する一対のリード線とそれぞれ接続されるヒータ端子部36(もう一方は、図示せず)を保持し、端子部8と外筒6とを、また、端子部8とヒータ端子部36とを電気的に絶縁している。
【0047】
外筒6は、その下端開口端部が径方向内側に加締められ、全周レーザ溶接されることにより、主体金具5に対して装着されている。また、主体金具5の下端側外周には、検出素子2の突出部分(検出部25)を覆うと共に、測定対象ガスを導入するための複数の孔部を有する金属製の二重のプロテクタ81,82が溶接によって取り付けられている。
【0048】
そして、主体金具5とセパレータ7との間には、コイルバネ9が介装されており、コイルバネ9は、主体金具5の挿通孔50に配置されるスリーブ53を棚部54に向けて押圧すると共に、セパレータ7を後端側に押圧している。コイルバネ9は、一端がスリーブ53に直接接触し、他端がセパレータ7の環状突部72の内側に位置する先端面74に直接接触している。なお、コイルバネ9は、検出素子2の外面、端子部8、ヒータ端子部36と接することがないように、寸法が適宜調整されている。
【0049】
次に、本実施例の酸素センサ1の製造方法について説明する。
酸素センサ1の製造方法は、主体金具5の挿通孔50における金具側ロー付け面32にセラミックス層34を形成するための第1工程と、金具側ロー付け面32と検出素子2の素子側ロー付け面28との間に配置された充填部材52(ロー材)を加熱溶融してロー付け接合作業を行う第2工程と、を有している。
【0050】
第1工程では、単体状態の主体金具5の挿通孔50の内周面のうち、金具側ロー付け面32となることが予定される部分に対して、格子状にセラミックスコーティング処理を行うことで、格子状のセラミックス層34を形成する。このとき、格子により囲まれる枠内区画が20[mm2 ]となるようにコーティング処理を行うことで、主体金具5の金属表面が露出する金属露出部35の1個あたりの面積を20[mm2 ]に設定する。
【0051】
そして、主体金具5の挿通孔50の内面と検出素子2の外周面との間に、リング55、支持部材51、パッキン56、充填部材52、スリーブ53を配置しつつ、鍔部26がパッキン56、支持部材51、リング55を介して棚部54に支持されるように、主体金具5の挿通孔50に検出素子2を配置させる。
【0052】
続いて、検出素子2の電極46、48(詳細には、導電層47および内部電極48)に端子部8を接続し、外筒6の内側に配置させたセパレータ7の先端面74とスリーブ53との間にコイルバネ9を配置するように、セパレータ7およびシールユニット10が内装された外筒6を、主体金具5の後端側に取り付ける。このとき、セパレータ7の内側に配置されるセラミックヒータ3が、検出素子2の有底孔41に挿入される。続いて、外筒6と主体金具5とを加締め固定するための先端側加締め作業と、外筒6とシール部材11とを加締め固定するための後端側加締め作業とを実行する。先端側加締め作業は、外筒6の先端部分を径方向内側に向けて加締めることで行われ、この結果、外筒6が主体金具5に固定される。また、後端側加締め作業は、外筒6の後端部分を径方向内側に向けて加締めることで行われ、この結果、シールユニット10を備えるシール部材11が外筒6に固定される。
【0053】
ついで、第2工程では、第1工程を経て各部材が組みつけられた後、主体金具5と検出素子2をロー付け接合するためのロー付け作業を行う。ロー付け作業は、主体金具5に対して熱を加えて、主体金具5を介した熱伝導により充填部材52を800[℃]程度まで加熱すると共に、外筒6の後端部分に冷却風を当てることで行われる。加熱されて溶融した充填部材52は、コイルバネ9の弾性力によりスリーブ53から押圧されるため、金具側ロー付け面32、素子側ロー付け面28、支持部材51およびスリーブ53に囲まれる領域の隅々まで充填される。他方、外筒6の後端側の内部に配置されるシールユニット10、シール部材11などは、冷却風により冷却されることから、充填部材52よりも低い温度に維持されるため、高温による破損から保護される。なお、ロー付け作業時には、検出素子2の内部に配置されたセラミックヒータ3に通電してセラミックヒータ3を発熱させることで、充填部材52のうち、検出素子2の近傍の温度を主体金具5の近傍部分の温度よりも5[℃]以上高温となるように制御している。
【0054】
充填部材52に対する加熱作業が終了した後、所定の冷却期間にわたり冷却された充填部材52が凝固すると、充填部材52により検出素子2と主体金具5とがロー付け接合される。
以上に説明したように、本実施例(以下、第1実施例ともいう)の酸素センサ1は、主体金具5の挿通孔50の内面のうち、充填部材52(ロー材)と対向する金具側ロー付け面32にセラミックス層34を備えることにより、主体金具5の金属露出部35と充填部材52(ロー材)とが直接接合する面積を縮小することで、充填部材52と主体金具5との接合強度を低下させている。このように充填部材52と主体金具5との接合強度を低下させることで、主体金具5および検出素子2における充填部材52との接合強度の偏りを減少させることができる。
【0055】
よって、本実施例の酸素センサ1によれば、主体金具5および検出素子2における充填部材52との接合強度の偏りを減少させることで、接合強度のバランスを調整することができる。これにより、接合強度の偏りに起因するロー材の剥離を防止できると共に、検出素子2と主体金具5との接合を良好に維持することができる。
【0056】
なお、このような酸素センサ1は、金具側ロー付け面32に、主体金具5の金属露出部35よりも充填部材52との接合強度が低い材料からなるセラミックス層34を形成する第1工程と、第1工程の後に金具側ロー付け面32と素子側ロー付け面28との間に配置された充填部材を加熱溶融してロー付け接合作業を行う第2工程と、を有するセンサ製造方法により実現することができる。
【0057】
また、酸素センサ1は、金具側ロー付け面32におけるセラミックス層34の占有割合が60%となるように、即ち、金具側ロー付け面32における金属露出部35の占有割合が40%となるよう構成されている。金具側ロー付け面32におけるセラミックス層34および金属露出部35の占有割合がこのように規定された酸素センサ1は、充填部材52と主体金具5との接合強度を一定値以上に維持しつつ、主体金具5および検出素子2における充填部材52との接合強度の偏りを減少させることができる。
【0058】
よって、酸素センサ1によれば、充填部材52と主体金具5との接合強度を一定値以上として、充填部材52と主体金具5との接合を良好に維持しつつ、主体金具5および検出素子2における充填部材52との接合強度の偏りに起因した充填部材52の剥離を防止することができる。
【0059】
さらに、酸素センサ1は、金具側ロー付け面32の金属露出部35が、格子状に形成されたセラミックス層34により複数に分割されると共に、1つの金属露出部35の面積が20[mm2 ]となるよう構成されている。このように金属露出部35を1箇所に配置するのではなく、複数に分割することで、ロー付け接合作業後の冷却工程における充填部材52の収縮により生じる応力を分散させることができ、応力集中による充填部材52の剥離が生じるのを防止できる。
【0060】
また、分割された1つの金属露出部35は、その面積が20[mm2 ]であり、充填部材52と主体金具5との接合強度を確実に低下させると共に充填部材52と主体金具5との接合強度を一定値以上に維持するための範囲(4[mm2 ]以上80[mm2 ]以下)内で形成されている。このため、主体金具5と充填部材52との接合強度を良好な範囲内に設定することができる。
【0061】
さらに、セラミックス層34が格子状に形成されており、金属露出部35は、格子の枠内区画として複数に分割されることから、金具側ロー付け面32において略均等に配置されることになる。つまり、金属露出部35は、複数に分割されることに加えて、金具側ロー付け面32において略均等に配置されることから、充填部材52と主体金具5(金具側ロー付け面32)との接合状態を良好なものとすることができる。
【0062】
よって、酸素センサ1によれば、充填部材52の収縮により生じる応力を、金具側ロー付け面32において略均等に分散させることができ、冷却工程における充填部材52の剥離を防止できる。また、充填部材52と主体金具5との接合を良好に維持しつつ、主体金具5および検出素子2における充填部材52との接合強度の偏りによる充填部材52の剥離を防止することができる。
【0063】
また、酸素センサ1の製造方法においては、第2工程において充填部材52を加熱・溶融するにあたり、充填部材52のうち検出素子2の近傍部分の温度を、主体金具5の近傍部分の温度よりも5[℃]以上高温に制御している。
ロー材である充填部材52は、ロー付け接合作業時における温度が高温になるほど、接合相手との接合状態が良好になることから、検出素子2が主体金具5よりも相対的に充填部材52と接合し難いにも拘わらず、検出素子2と充填部材52との接合強度を向上させることができる。
【0064】
これにより、「主体金具5と充填部材52との接合強度」と「検出素子2と充填部材52との接合強度」との差を縮めることができ、主体金具5および検出素子2における充填部材52との接合強度の偏りを少なくすることができる。
よって、本実施例のセンサ製造方法によれば、主体金具5および検出素子2における充填部材52との接合強度の偏りが少なく、接合強度の偏りに起因する充填部材52の剥離を防止でき、検出素子2と主体金具5との接合状態が良好となる酸素センサ1を製造することができる。
【0065】
なお、第1実施例の酸素センサ1においては、主体金具5が特許請求の範囲における金属筒状体に相当し、充填部材52がロー材に相当し、セラミックス層34が接合強度調整部材に相当する。
次に、第2実施例として、板型検出素子と金属ホルダを備える第2酸素センサ85について、説明する。
【0066】
第2酸素センサ85の全体構成を表す断面図を図3に示す。なお、以下の説明においては、第2酸素センサ85のうち、図3における下端側が「ガスセンサの先端側」に相当し、同様に、第2酸素センサ85の図3における上端側が「ガスセンサの後端側」に相当する。
【0067】
図3に示すように、第2酸素センサ85は、板型検出素子96と、金属ホルダ93と,第2酸素センサ85の内部構造物とを収容すると共に、第2酸素センサ85を排気管等の取付部に固定する第2ケーシング87などを備えて構成されている。
【0068】
板型検出素子96は、ジルコニア(ZrO2 )を主成分とする固体電解質体により板型形状に形成されると共に、先端側(図中の下側)に排気ガス(測定対象物)にさらされる検出部99を有し、後端側(図中の上側)に排気ガス中の酸素濃度に応じた検出信号を出力するための検出部99を構成する一対の電極部と接続された一対の電極端子97を有して構成されている。また、板型検出素子96は、内部にヒータ(図示省略)を備えており、一対のヒータ端子98を通じて供給される電力よりヒータが発熱することで、固体電解質体を活性化温度に加熱・維持するよう構成されている。
【0069】
金属ホルダ93は、図4にも示すように、固定用ロー材135を収容可能な有底筒状に形成されると共に板型検出素子96を挿通可能な中空部142を有するホルダ本体部95と、板型検出素子96を挿通可能な中空部143を有すると共にホルダ本体部95の開口面に当接可能なホルダ蓋部94と、を備えて構成されている。
【0070】
図4に、板型検出素子96が挿通された金属ホルダ93の分解斜視図および断面図を示す。
図4に示すように、金属ホルダ93は、ホルダ本体部95の中空部142に板型検出素子96が挿通され、中空部142の内部に固定用ロー材135が配置される状態でホルダ蓋部94が配置された後、固定用ロー材135が加熱溶融されてロー付け作業が行われることで、板型検出素子96と一体に接合される。つまり、金属ホルダ93は、板型検出素子96を挿通可能な中空部を有する略環状に形成され、板型検出素子96の長手方向略中間位置において径方向周囲を取り囲む状態で板型検出素子96と一体に接合される。
【0071】
なお、板型検出素子96は、外面のうち固定用ロー材135との当接部分および充填部材52との当接部分のそれぞれに、固定用ロー材135および充填部材52と接合するための素子側ロー付け面43が形成されている。
また、ホルダ本体部95は、中空部142の内面のうち、固定用ロー材135との当接部分にホルダ側ロー付け面144を備えており、ホルダ側ロー付け面144には、格子状のセラミックス層(図示省略)が形成されると共に、格子の枠内区画として面積が20[mm2 ]の金属露出部(図示省略)が複数形成されている。
【0072】
このようにセラミックス層が設けられることで、ホルダ本体部95のホルダ側ロー付け面144における金属露出部の面積が縮小されることになり、「固定用ロー材135と板型検出素子96との接合強度」と「固定用ロー材135と金属ホルダ93との接合強度」とのバランスを調整することができる。これにより、接合強度の偏りに起因するロー材の剥離を防止できると共に、板型検出素子96と金属ホルダ93との接合を良好に維持することができる。
【0073】
なお、第2酸素センサ85は、ホルダ本体部95のホルダ側ロー付け面144にセラミックス層を形成するためのセラミックスコーティング処理を行う第1工程と、ホルダ側ロー付け面144と板型検出素子96の素子側ロー付け面43との間に配置された固定用ロー材135を加熱溶融してロー付け接合作業を行う第2工程と、を実行することで形成される。
【0074】
図3に戻り、第2ケーシング87は、板型検出素子96と接合された金属ホルダ93を保持すると共に、板型検出素子96の先端側にある検出部99を排気管等の内部に突出させる主体金具5と、主体金具5の後端部(図3では上側の端部)に組み付けられ、板型検出素子96との間で基準ガス空間を形成する第2外筒89とから構成されている。
【0075】
主体金具5は、第1実施例と同様の構成であり、挿通孔50と棚部54とを有する略円筒型形状に形成されており、検出部99および電極端子97が挿通孔50の外部に露出する状態で板型検出素子96を保持可能に構成されている。
主体金具5にて板型検出素子96を保持するにあたり、挿通孔50の内部には、板型検出素子96と接合された金属ホルダ93を先端側(図中下側)から支持するセラミックス材料からなる第2支持部材90,第2支持部材90の後端側(図中上側)に充填される共晶ロー(BAg8:Ag−Cu系ロー材)からなる充填部材52,および充填部材52の後端側に配置されるセラミックス材料からなる第2スリーブ92が同軸状に配置される。
【0076】
すなわち、第2支持部材90は、略円筒状に形成され、主体金具5の挿通孔50の内周に形成される棚部54にリング55を介して係止されると共に、金属ホルダ93を先端側(図中下側)から支持する。そして、充填部材52は、第2支持部材90の後端側における主体金具5の挿通孔50の内周面と板型検出素子96の外周面との間に配設され、さらに、第2スリーブ92は、略円筒状に形成され、充填部材52の後端側に配設される。
【0077】
第2支持部材90、充填部材52および第2スリーブ92がこのように配設された後、加熱により溶融状態となった充填部材52は、挿通孔50の内周面と板型検出素子96の外周面との間の隅々まで充填される。そして、温度低下により凝固した充填部材52は、板型検出素子96および主体金具5(詳細には挿通孔50の内面)とそれぞれ強固に接合され、ひいては、板型検出素子96と主体金具5とが充填部材52を介して強固に接合される。なお、第2支持部材90および第2スリーブ92は、溶融状態の充填部材52が挿通孔50から外部に漏洩しないように、充填部材52を挿通孔50の内部に封止可能な形状に構成されている。
【0078】
ここで、主体金具5は、前述した第1実施例と同様の構成であり、図2に示すように、格子状のセラミックス層34と、金属露出部35とが設けられた金具側ロー付け面32を、挿通孔50の内面のうち充填部材52に対応する部分に備えている。上述したように、主体金具5は、セラミックス層34を設けて、挿通孔50の内面の金具側ロー付け面32における金属露出部35の総面積を縮小することで、充填部材52(ロー材)との接合強度が低くなるように構成される。
【0079】
また、第2酸素センサ85は、主体金具5の後端部を覆う略円筒状の第2外筒89を備えており、第2外筒89は、主体金具5との間にコンタクト部材130などを収容する内部空間を形成している。第2外筒89は、その軸方向略中央部を境界として後端側の径方向寸法が先端側よりも縮径して形成されており、この径方向寸法の変更部分の内壁には、先端側に対向する段差部61が形成されている。
【0080】
第2外筒89の上端開口部63には、板型検出素子96の電極端子97に接続される一対のリード線21と、ヒータ端子98に接続される一対のリード線22とを夫々外部から第2外筒89(第2酸素センサ85)の内部に導入する略円柱状のフッ素ゴムからなるグロメット120が備えられている。グロメット120は、リード線21,22などを挿通した状態で第2外筒89の先端側の開口部から上端開口部63の内側に配置されたあと、第2外筒89と共に径方向内側に加締められることにより、第2外筒89に固定される。
【0081】
また、第2外筒89の内部に組み付けられたグロメット120の先端側には、リード線21,22と電気的に接続された4本のリードフレーム131を、板型検出素子96の電極端子97,ヒータ端子98に接続させるためのコンタクト部材130が配置されている。コンタクト部材130は、各リードフレーム131が電極端子97ないしヒータ端子98に接触する状態の板型検出素子96を、一対の絶縁性ハウジング132で挟持するよう構成されている。また、コンタクト部材130は、リードフレーム131と第2外筒89とを電気的に絶縁している。
【0082】
第2外筒89は、その下端開口端部が径方向内側に加締められることにより主体金具5に対して装着されている。また、主体金具5の下端側外周には、板型検出素子96の突出部分(検出部99)を覆うと共に、測定対象ガスを導入するための複数の孔部を有する金属製の二重のプロテクタ81,82が溶接によって取り付けられている。
【0083】
そして、主体金具5と第2外筒89との間には、コイルバネ9が介装されており、コイルバネ9は、主体金具5の挿通孔50に配置される第2スリーブ92を棚部54に向けて押圧している。コイルバネ9は、一端が第2スリーブ92に直接接触し、他端が第2外筒89の段差部61の内面に直接接触している。なお、コイルバネ9は、板型検出素子96の外面、コンタクト部材130と接することがないように、寸法が適宜調整されている。
【0084】
次に、第2酸素センサ85の製造方法について説明する。
第2酸素センサ85の製造方法は、主体金具5の挿通孔50における金具側ロー付け面32にセラミックス層34を形成するためのセラミック層形成工程と、金具側ロー付け面32と板型検出素子96の素子側ロー付け面43との間に配置された充填部材52(ロー材)を加熱溶融してロー付け接合作業を行うロー付け工程と、を有している。
【0085】
セラミック層形成工程では、単体状態の主体金具5の金具側ロー付け面32に対して、格子状にセラミックスコーティング処理を行うことで、格子状のセラミックス層34を形成する。このとき、格子により囲まれる枠内区画が20[mm2 ]となるようにコーティング処理を行うことで、主体金具5の金属表面が露出する金属露出部35の1個あたりの面積を20[mm2 ]に設定する。
【0086】
そして、主体金具5の挿通孔50の内面と、板型検出素子96およびこの板型検出素子96とロー付け接合された金属ホルダ93の外周面との間に、リング55、第2支持部材90、充填部材52、第2スリーブ92を配置しつつ、金属ホルダ93が第2支持部材90、リング55を介して棚部54に支持されるように、主体金具5の挿通孔50に板型検出素子96を配置させる。
【0087】
続いて、コンタクト部材130を用いて板型検出素子96の電極端子97、ヒータ端子98にリードフレーム131を接続し、第2外筒89の段差部61の内面と第2スリーブ92との間にコイルバネ9を配置するように、グロメット120およびコンタクト部材130が内挿された第2外筒89を主体金具5の後端側に取り付ける。続いて、第2外筒89と主体金具5とを加締め固定するための先端側加締め作業と、第2外筒89とグロメット120とを加締め固定するための後端側加締め作業とを実行する。先端側加締め作業は、第2外筒89の先端部分を径方向内側に向けて加締めることで行われ、この結果、第2外筒89が主体金具5に固定される。また、後端側加締め作業は、第2外筒89の後端部分を径方向内側に向けて加締めることで行われ、この結果、グロメット120が第2外筒89に固定される。
【0088】
ついで、ロー付け工程では、セラミック層形成工程を経て各部材が組みつけられた後、主体金具5と板型検出素子96をロー付け接合するためのロー付け作業を行う。ロー付け作業は、主体金具5に対して熱を加えて、主体金具5を介した熱伝導により充填部材52を800[℃]程度まで加熱すると共に、第2外筒89の後端部分に冷却風を当てることで行われる。加熱されて溶融した充填部材52は、コイルバネ9の弾性力により第2スリーブ92から押圧されるため、金具側ロー付け面32、素子側ロー付け面43、第2支持部材90および第2スリーブ92に囲まれる領域の隅々まで充填される。他方、第2外筒89の後端側の内部に配置されるグロメット120などは、冷却風により冷却されることから、充填部材52よりも低い温度に維持されるため、高温による破損から保護される。なお、ロー付け作業時には、板型検出素子96の内部に配置されたヒータ(図示省略)に対してヒータ端子98を通じて電力供給を行い、そのヒータを発熱させることで、充填部材52のうち、板型検出素子96の近傍の温度を主体金具5の近傍部分の温度よりも5[℃]以上高温となるように制御している。
【0089】
充填部材52に対する加熱作業が終了した後、所定の冷却期間にわたり冷却された充填部材52が凝固すると、金属ホルダ93にロー付け接合された板型検出素子96と主体金具5とが充填部材52によりロー付け接合される。
以上に説明したように、第2実施例の第2酸素センサ85は、第1実施例の酸素センサ1と同様に、金具側ロー付け面32にセラミックス層34を備えて、主体金具5の金属露出部35と充填部材52(ロー材)とが直接接合する面積を縮小することで、充填部材52と主体金具5との接合強度を低下させている。これにより、主体金具5および板型検出素子96における充填部材52との接合強度の偏りを減少させることができる。
【0090】
また、板型検出素子96は、ホルダ本体部95のホルダ側ロー付け面144にセラミックス層が設けられることで、「固定用ロー材135と板型検出素子96との接合強度」と「固定用ロー材135と金属ホルダ93との接合強度」とのバランスが調整されている。
【0091】
よって、第2実施例の第2酸素センサ85によれば、主体金具5および板型検出素子96における充填部材52との接合強度のバランスを調整することができ、接合強度の偏りに起因するロー材の剥離を防止できると共に、板型検出素子96と主体金具5との接合を良好に維持することができる。さらに、板型検出素子96は、金属ホルダ93における固定用ロー材135との接合強度のバランスが調整されていることから、接合強度の偏りに起因するロー材の剥離を防止できると共に、板型検出素子96と金属ホルダ93との接合を良好に維持することができる。
【0092】
なお、第2実施例の第2酸素センサ85においては、主体金具5が特許請求の範囲における金属筒状体に相当し、充填部材52がロー材に相当し、セラミックス層34が接合強度調整部材に相当する。また、第2酸素センサ85のうち、金属ホルダ93が特許請求の範囲における金属筒状体に相当し、固定用ロー材135がロー材に相当し、ホルダ側ロー付け面144におけるセラミックス層が接合強度調整部材に相当し、ホルダ側ロー付け面144が金具側ロー付け面に相当する。
【0093】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施例に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
例えば、金属ホルダは、図4に示す金属ホルダ93のような複数の部材で構成されるものに限ることはなく、図5に斜視図として示す金属ホルダ138のような単一の部材で構成されるものでも良い。
【0094】
金属ホルダ138は、板型検出素子96を挿通可能な中空部141を有する略円筒状に形成され、板型検出素子96の径方向周囲を取り囲む状態で、ロー材139を用いたロー付け接合により板型検出素子96と一体に接合される。
図5に示す板型検出素子96をロー付け接合した状態の金属ホルダ138におけるA−A断面図を図6に示す。図6に示すように、中空部141は、その内壁面と板型検出素子96との最大隙間寸法dが2[mm]以下となるように形成されている。また、中空部141の内壁面には、格子状のセラミックス層(図示省略)が形成されると共に、格子の枠内区画として面積が20[mm2 ]の金属露出部(図示省略)が複数形成されている。
【0095】
このようにセラミックス層が設けられることで、金属ホルダ138の中空部141の内壁面における金属露出部の面積が縮小されることになり、「ロー材139と板型検出素子96との接合強度」と「ロー材139と金属ホルダ138との接合強度」とのバランスを調整することができる。これにより、接合強度の偏りに起因するロー材の剥離を防止できると共に、板型検出素子96と金属ホルダ138との接合を良好に維持することができる。
【0096】
なお、金属ホルダ138が特許請求の範囲における金属筒状体に相当し、中空部141の内壁面が金具側ロー付け面に相当し、中空部141の内壁面に形成されるセラミックス層が接合強度調整部材に相当する。
また、金属露出部の面積を縮小するための接合強度調整部材は、セラミックスからなるセラミックス層に限ることはなく、金属表面よりもロー材との接合強度が低い他の材料(ガラスなど)で構成してもよい。
【0097】
さらに、各部の寸法などは、上述した数値に限定されることはなく、例えば、金具側ロー付け面32におけるセラミックス層34の占有割合は60%に限ることはなく、センサの用途や構造などの諸条件に応じて、50%以上80%以下の範囲内で適宜設定すると良い。
【0098】
つまり、金具側ロー付け面32におけるセラミックス層34の占有割合の下限値(50%)を規定して、金属露出部35の占有割合の上限値を50%以下に制限することで、充填部材52と主体金具5との接合強度を確実に低下させるのである。また、金具側ロー付け面32におけるセラミックス層34の占有割合の上限値(80%)を規定して、金属露出部35の占有割合の下限値を20%以上に制限することで、充填部材52と主体金具5との接合強度を一定値以上に維持するのである。
【0099】
また、1つの金属露出部35の面積は、20[mm2]に限ることはなく、4[mm2 ]以上80[mm2 ]以下の範囲内に設定することで、充填部材52(ロー材)と金属筒状体との接合強度を確実に低下させると共に、ロー材と金属筒状体との接合強度を一定値以上に維持することができる。なお、充填部材52と主体金具5との接合強度をより確実に低下させるには、1つの金属露出部35の面積を50[mm2]以下とすることが好ましい。
【0100】
なお、金属露出部35の面積は、コーティング処理の範囲を変更することで、任意に設定することができる。また、セラミックス層34は格子状に限ることはなく、他の模様となるように形成しても良い。
さらに、検出素子は、固体電解質体としてジルコニアを用いて形成されるものに限定されることはなく、ジルコニアとアルミナからなる固体電解質体(例えば、ジルコニアとアルミナの合計量を100wt%とした場合に、アルミナを10〜80wt%の範囲内で含有させる固体電解質体)から形成されていてもよい。
【0101】
また、充填部材として用いるロー材は、BAg8に限ることはなく、BAg9(Ag−Cu−Ni系ロー材)やパラジウム系ロー材(Pdロー)など、ロー付け後の強度が低下し難く、ロー付け後の耐熱温度が500〜600[℃]程度となる特性を有する共晶ロー材を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 酸素センサの全体構成を表す断面図である。
【図2】 挿通孔の内部構造を表した主体金具の断面図である。
【図3】 第2酸素センサの全体構成を表す断面図である。
【図4】 第2検出素子の分解斜視図、および板型検出素子が挿通された金属ホルダの断面図である。
【図5】 単一の部材で構成される金属ホルダが組みつけられた検出素子の斜視図である。
【図6】 図5に示す検出素子におけるA−A断面図である。
【図7】 図1に示す酸素センサに備えられる検出素子の外観を表す斜視図である。
【符号の説明】
1…酸素センサ、2…検出素子、5…主体金具、25…検出部、28…素子側ロー付け面、32…金具側ロー付け面、34…セラミックス層、35…金属露出部、43…素子側ロー付け面、50…挿通孔、52…充填部材、85…第2酸素センサ、93…金属ホルダ、96…板型検出素子、138…金属ホルダ、144…ホルダ側ロー付け面。

Claims (6)

  1. 測定対象物にさらされる検出部を有し、前記測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する電極部を有する長尺形状に形成される検出素子と、
    前記検出素子を挿通可能に構成された挿通孔を有し、前記検出部を前記測定対象物にさらす状態で前記挿通孔に挿通された前記検出素子の径方向周囲を取り囲む筒型形状に形成される金属筒状体と、
    を備えるセンサであって、
    前記検出素子は、外周表面に素子側ロー付け面を備え、
    前記金属筒状体は、前記挿通孔の内周面に金具側ロー付け面を備えると共に、ロー材を用いたロー付け接合により前記素子側ロー付け面と前記金具側ロー付け面とが接合されて、前記検出素子を保持するよう構成され、
    前記金具側ロー付け面は、前記金属筒状体の金属表面が露出する金属露出部と、該金属筒状体の金属表面上に形成される当該金属筒状体の金属表面よりも前記ロー材との接合強度が低い材料からなる接合強度調整部材とから構成されること、
    を特徴とするセンサ。
  2. 前記金具側ロー付け面における前記接合強度調整部材の占有割合が、50%以上80%以下であること、
    を特徴とする請求項1に記載のセンサ。
  3. 前記金具側ロー付け面の金属露出部は、前記接合強度調整部材により複数に分割されると共に、1つの前記金属露出部の面積が4[mm2 ]以上80[mm2 ]以下であること、
    を特徴とする請求項1または請求項2に記載のセンサ。
  4. 前記接合強度調整部材は、格子状に形成されていること、
    を特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のセンサ。
  5. 測定対象物にさらされる検出部を有し、前記測定対象物の物理量に応じた検出信号を出力する電極部を有する長尺形状に形成されると共に、外周表面に素子側ロー付け面が形成された検出素子と、
    前記検出素子を挿通可能に構成された挿通孔を有し、前記検出部を前記測定対象物にさらす状態で前記挿通孔に挿通された前記検出素子の径方向周囲を取り囲む筒型形状に形成されると共に、前記挿通孔の内周面に金具側ロー付け面が形成された金属筒状体と、
    を備え、ロー材を用いたロー付け接合により前記素子側ロー付け面と前記金具側ロー付け面とが接合されて、前記金属筒状体が前記検出素子を保持する構成のセンサを製造するためのセンサ製造方法であって、
    前記挿通孔の内周面に、前記金属筒状体の金属表面よりも前記ロー材との接合強度が低い材料からなる接合強度調整部材を形成し、前記金属筒状体の金属表面が露出する金属露出部と該接合強度調整部材とからなる前記金具側ロー付け面を形成する第1工程と、
    前記金具側ロー付け面と前記素子側ロー付け面との間に前記ロー材を配置し、該ロー材を加熱溶融してロー付け接合作業を行う第2工程と、
    を有することを特徴とするセンサ製造方法。
  6. 前記第2工程において前記ロー材を加熱するにあたり、前記ロー材のうち前記検出素子の近傍部分の温度を、前記金属筒状体の近傍部分の温度よりも5[℃]以上高温にすること、
    を特徴とする請求項5に記載のセンサ製造方法。
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