JP4070710B2 - 地下水熱利用型融雪システム、およびそれを利用した融雪方法 - Google Patents
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Description
冬期間の降雪によって路上に雪が積もると、車両の安全な通行ができなくなって交通機能が麻痺してしまい、通勤通学の遅れや物流の停滞、更には交通事故の発生等の重大な結果を招く虞れがあることから、我が国では、主要な国道や県道を昼夜を問わず除雪する体制を採っているが、このような除雪作業によっても追い付かない程の大雪となってしまうことがあったり、除雪作業が行われない程度の多少の降雪であっても、降ったばかりの粉雪が車両の通過によって舞い揚げられ、後続車輌や歩行者等の視界を遮る状況を呈してしまったり、また自動車の通過によって圧雪状になったり、その状態に溶けた水が染み込んで凍結し、アイスバーンとなって制動が利かない状態になってしまう外、少ない雨や雪であっても気温の低下によって路面に薄い氷膜を形成して制動不能にしてしまうことがある等、降雪に伴う路面状況の変化は非常に危険であり、こうした様々な問題を解消する一つの手段として、地下水を汲み上げて道路中央部に埋設したパイプを通じて散水し、融雪する散水消雪が従来から知られていて、かっては降雪地帯で広く採用されてきていたが、この従前からの地下水を汲み上げて散水消雪に利用するという手段も、それが大量の地下水を汲み上げてしまうため、地下水脈を枯渇させて地盤沈下を発生してしまうという弊害が取り沙汰されることとなってからは、その利用を禁止してしまう地域が次第に拡大していき、有効な消雪手段でありながら採用できないという経緯があり、地域によっては今でも何とか採用できるようにならないのかという要望がある。
そこで、こうした地盤沈下を伴わない地下水利用の消雪技術として提案のあるものに、例えば特許第2544961号公報に開示された「地下還水装置」発明のように、地表部に設けた井戸室の底部に地下水を汲み上げるポンプ装置と汲上管とを設けた井戸管を垂設し、この井戸管の開口部に二次スクリーン部を連設し、井戸室内に一次スクリーン部を設けた濾過装置を設け、この濾過装置に雨水や融雪水を導入する導水装置を井戸室に連設し、濾過装置で濾過した浄水を二次スクリーン部を介して井戸管内に還水することを特徴とする横山発明が知られており、また、特開平11−181730号公報に記載された「融雪方法および融雪設備」発明の、被融雪地を循環する表層水に地下水の熱を移動して融雪用水とし、生産井より採取した地下水と、被融雪地に散水された融雪用水によって生じた雪解水を含む表層水を回収した後濾過してなる濾過水との間で熱交換し、熱交換によって熱を失った地下水を還元井により地下に戻すと共に、熱交換によって熱を受け取った濾過水を融雪用水として再び被融雪地に散水する杉野発明があり、あるいは利用目的を消雪ではなく、冷暖房設備を対象とするものとして、特開2002−54857号公報に記載の、打込工法によって地盤に浅井戸を設けて、冷房時において一方の井戸から汲み上げた地下帯水層の地下水を冷媒の熱交換に利用した後、他方の井戸に注入して地下帯水層に還元し、暖房時において他方の井戸から汲み上げた地下帯水層の地下水を、冷媒の熱交換に利用した後、一方の井戸に注入して地下帯水層へ還元するようにした「地下水を利用したヒートポンプシステム」の岡本発明等が、既に開発されている。
以上のように、既に開発済みの地下水熱を利用した融雪技術や冷暖房設備等は、地下水を汲み上げた量に略等しい量の水を地下に還元することにより、地盤沈下等の地下水量の減少によって起こる問題を解消しようとするものであったが、例えば、車道だけでなく歩道の除雪や道路に面する住宅や敷地等から運び出される排雪は、従前までと同様に車両に積んで近くの空地や河川敷まで運ぶか、あるいは流雪溝に流す等の作業を行うこととなり、流雪溝に大量の雪が一度に投入されてしまうことになると融雪が間に合わず、その場で堆積状となって滞り、円滑な除排雪を行うことができなくなってしまうという厄介な問題が残されたままとなっており、このような道路周辺の除排雪を、従前までの技術によって効率的に消雪するには、歩道や庭先等にも熱交換用の配管を埋設する工事が必要となって設置に多大な費用を要するものとなってしまうという問題があった。
そこで、この発明は、地下水量を一定以上に保ちながら地下水の熱を利用してロードヒーティングを行うことによって道路の消雪等を実現すると同時に、その周辺に発生した排雪も、迅速且つ効率的に消雪することを可能とする除排雪技術を開発することはできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の地下水熱利用型融雪システム、およびそれを利用した新規な融雪方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の地下水熱利用型融雪システムは、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、内部に砕石等が充填されて浸透兼濾過層に形成され、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達するようにした井戸穴の上端を、所定容量で排雪投入口付きの融雪槽底部に臨ませると共に、井戸穴内の浸透兼濾過層中を上下に貫通して融雪槽内に立ち上がるようにした還水管内には、その帯水層内に位置させた水中ポンプから往路管を立ち上げて地上部の融雪用配管の流入部に接続し、一部に還流水を含む地下水が融雪用配管に導通状となるようにする一方、該融雪用配管の吐出部から伸びる復路管を、前記融雪槽の排雪投入口と貯溜水面との間に位置し、同排雪投入口を囲むように配したシャワーノズル付きの融雪用環状シャワー管に接続したものとしてなる構成を要旨とする地下水熱利用型融雪システムである。
上記した、地下水熱利用型融雪システムに関連し、この発明には、当該地下水熱利用型融雪システムを利用した融雪方法も包含しており、その基本的な構成は即ち、予め十分な量の水を貯溜して置いた融雪槽の底部付近から、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達する還水管内に配された水中ポンプによって還流水を含む地下水を往路管を通じて強制的に汲み上げることにより、これに応じて地中に発生する負圧を、積極的に利用し、吸い上げた地下水量に略等しいか、あるいはその水量を越える量の貯溜水を、強制的に地中に吸い戻させるものとすることにより、地下水量の減少を抑止、可能とした上で、強制的に吸い上げた還流水を含む地下水を、融雪用配管に通過させる過程において放熱させ、地上に融雪作用をもたらすものとした後に、その復路水を、地上の除雪作業によって融雪槽内に投入され、貯溜水面上に浮上している排雪に向けて散水し、融雪するのに利用するものとしたことにより、地下水量を一定に保ったまま地熱のみを利用して速やかに除、排雪可能とする、前記何れか記載の地下水熱利用型融雪システムを利用した融雪方法である。
融雪槽は、地中に所定容量の水を貯溜可能とし、地上に排雪投入口を開口して投入された排雪を融雪可能とする機能を果たすと共に、貯流水面下となる底部付近から、浸透兼濾過層を通じて貯流水の一部を還流可能とした上、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さから還流水を含む地下水を汲み上げ可能とするものとしなければならず、排雪投入口と貯流水面との間には、融雪用環状シャワー管を配したものとすべきであり、必要に応じて貯流水の標準水位よりも上側であって、融雪用環状シャワー管よりも下側となる位置にオーバーフロー管を設けたものとするのが望ましい。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
以上のとおりの構成からなるこの発明の地下水熱利用型融雪システムは、この発明の融雪方法に好適に利用されるものであり、以下では当該融雪方法の具体的な事例に伴い、地下水熱利用型融雪システムの作用について示すものとする。
予め所定量の水8を貯溜して置いた状態で、水中ポンプ3を駆動させ、還流水8を含む地下水を強制的に汲み上げることとなるが、水中ポンプ3によって地中に発生する負圧により、井戸穴2内の浸透兼濾過層21を通じて融雪槽1内の貯溜水8が強制的に地中に還流されて地下水圧の均衡を保ち、実質的に地下水の汲み上げが無かったものとしてしまうか、あるいは汲み上げた地下水量よりも多くの浄水を地下水脈に供給可能とするものとなる。
以上のような構成からなる実施例の地下水熱利用型融雪システムおよびそれを利用した融雪方法は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、当該地下水熱利用型融雪システムを実際に製作し、平成13年から平成15年の3ヵ年に渡り、実験的に当該融雪方法を試みたところ、毎時300ワットの出力性能を有する水中ポンプ3を使用することにより、融雪用配管4によって形成された約300平方メートルの範囲に渡るロードヒーティングを実現すると同時に、融雪槽1内に投入された毎時30立方メートルの排雪を効率的に消雪することに成功し、しかも地下熱のみを熱源とする構造によって給湯のための燃料代を一切不要とし、毎時23円の水中ポンプ3の電気代のみに抑えることができるので、従前までの融雪システムに比較して格段に秀れた経済性を有するものとなる。
叙述の如く、この発明の地下水熱利用型融雪システムおよびそれを利用した融雪方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、施工も比較的容易で、しかも地下熱を利用することから従前からの融雪システムに比較して燃料や電力の消費を大幅に削減することができ、遥かに経済的な融雪を実現可能とする上、汲み上げ量に見合った十分な量の浄水を地下帯水層内に自動的に還流することができて地下水汲み上げによるリスクを解消し、既に有効性が実証されているにも拘わらず、地盤沈下という厄介な問題によって普及が途絶えてしまった散水消雪に替わり、広範に渡って利用、普及させることが可能となり、毎年のように除排雪に多大な労力と経費とを費やさなければならない自治体や住民によって高く評価され、しかも自然環境にも優しく半永久的な利用が可能となることから、設置された地域や周辺住民からは固より、膨大な除排雪予算を計上しなければならない自治体からも高い評価が得られるものになると予想される。
11 同 排雪投入口
12 同 グレーチング
2 井戸穴
21 同 浸透兼濾過層
3 水中ポンプ
31 同 還水管
32 同 還流孔
33 同 往路管
4 融雪用配管
41 同 流入部
42 同 吐出部
5 融雪用環状シャワー管
51 同 復路管
52 同 シャワーノズル
6 オーバーフロー管
7 バイパス管
71 同 切換えバルブ
8 還流水
W 貯溜水面
Claims (5)
- 内部に砕石等が充填されて浸透兼濾過層に形成され、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達するようにした井戸穴の上端を、所定容量で排雪投入口付きの融雪槽底部に臨ませると共に、井戸穴内の浸透兼濾過層中を上下に貫通して融雪槽内に立ち上がるようにした還水管内には、該還水管が貫通、立ち上がっている浸透兼濾過層中の帯水層内に位置させた水中ポンプから、同様に還水管内を通じて往路管を立ち上げて地上部の融雪用配管の流入部に接続し、一部に還流水を含む地下水が融雪用配管に導通状となるようにする一方、該融雪用配管の吐出部から伸びる復路管を、前記融雪槽の排雪投入口と貯溜水面との間に位置し、同排雪投入口を囲むように配したシャワーノズル付きの融雪用環状シャワー管に接続したものとしてなることを特徴とする地下水熱利用型融雪システム。
- 内部に砕石等が充填されて浸透兼濾過層に形成され、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達するようにした井戸穴の上端を、所定容量で排雪投入口付きの融雪槽底部に臨ませると共に、井戸穴内の浸透兼濾過層中を上下に貫通して融雪槽内に立ち上がるようにした還水管内には、該還水管が貫通、立ち上がっている浸透兼濾過層中の帯水層内に位置させた水中ポンプから、同様に還水管内を通じて往路管を立ち上げて地上部の融雪用配管の流入部に接続し、熱交換した還流水を含む地下水が融雪用配管に導通状となるようにする一方、該融雪用配管の吐出部から伸びる復路管を、前記融雪槽の排雪投入口と貯溜水面との間に位置し、同排雪投入口を囲むように配したシャワーノズル付きの融雪用環状シャワー管に接続したものとしてなることを特徴とする地下水熱利用型融雪システム。
- 内部に砕石等が充填されて浸透兼濾過層に形成され、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達するようにした井戸穴の上端を、開閉もしくは脱着可能なグレーチングを有した排雪投入口付きで所定容量の融雪槽底部に臨ませると共に、井戸穴内の浸透兼濾過層中を上下に貫通して融雪槽内に立ち上がるようにした還水管内には、該還水管が貫通、立ち上がっている浸透兼濾過層中の帯水層内に位置させた水中ポンプから、同様に還水管内を通じて往路管を立ち上げて地上部の融雪用配管の流入部に接続し、熱交換した還流水を含む地下水が融雪用配管に導通状となるようにする一方、該融雪用配管の吐出部から伸びる復路管を、前記融雪槽の排雪投入口と貯溜水面との間に位置し、同排雪投入口を囲むように配したシャワーノズル付きの融雪用環状シャワー管に接続し、該融雪用環状シャワー管と貯溜水面と間の適所にオーバーフロー管を接続したものとしてなることを特徴とする地下水熱利用型融雪システム。
- 往路管と復路管との間に、地上部の融雪用配管を迂回可能とするバイパス管を接続し、同バイパス管の中途部適所および融雪用配管流入部の夫々に、切換えバルブを配したものとすることにより、往路管を通じで供給される還流水を含む地下水を、直接的に復路管に供給し、融雪用環状シャワー管を通じてシャワーノズルから融雪槽内に放水するよう制御可能としてなる、請求項1ないし3何れか一項記載の地下水熱利用型融雪システム。
- 予め十分な量の水を貯溜して置いた融雪槽の底部付近から、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達する還水管内に配した水中ポンプによって還流水を含む地下水を往路管を通じて強制的に汲み上げることにより、これに応じて地中に発生する負圧を積極的に利用し、吸い上げた地下水量に略等しいか、あるいはその水量を越える量の貯溜水を強制的に地中に吸い戻させるものとすることにより、地下水量の減少を抑止、可能とした上で、強制的に吸い上げた還流水を含む地下水を、融雪用配管に通過させる過程において放熱させ、地上に融雪作用をもたらすものとした後に、その復路水を、地上の除雪作業によって融雪槽内に投入され、貯溜水面上に浮上している排雪に向けて散水し、融雪するのに利用するものとしたことにより、地下水量を一定に保ったまま地熱のみを利用して速やかに除、排雪可能とする、請求項1ないし4何れか一項記載の地下水熱利用型融雪システムを利用した融雪方法。
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