JP4070710B2 - 地下水熱利用型融雪システム、およびそれを利用した融雪方法 - Google Patents

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Description

この発明は、地下水熱を利用した融雪技術に関連するあらゆる分野をその技術分野とするものであって、融雪システムを製造、設置する分野は勿論のこと、その製造に必要とする設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野に至るまでといった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを製造するための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野、その他現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
(視 点)
冬期間の降雪によって路上に雪が積もると、車両の安全な通行ができなくなって交通機能が麻痺してしまい、通勤通学の遅れや物流の停滞、更には交通事故の発生等の重大な結果を招く虞れがあることから、我が国では、主要な国道や県道を昼夜を問わず除雪する体制を採っているが、このような除雪作業によっても追い付かない程の大雪となってしまうことがあったり、除雪作業が行われない程度の多少の降雪であっても、降ったばかりの粉雪が車両の通過によって舞い揚げられ、後続車輌や歩行者等の視界を遮る状況を呈してしまったり、また自動車の通過によって圧雪状になったり、その状態に溶けた水が染み込んで凍結し、アイスバーンとなって制動が利かない状態になってしまう外、少ない雨や雪であっても気温の低下によって路面に薄い氷膜を形成して制動不能にしてしまうことがある等、降雪に伴う路面状況の変化は非常に危険であり、こうした様々な問題を解消する一つの手段として、地下水を汲み上げて道路中央部に埋設したパイプを通じて散水し、融雪する散水消雪が従来から知られていて、かっては降雪地帯で広く採用されてきていたが、この従前からの地下水を汲み上げて散水消雪に利用するという手段も、それが大量の地下水を汲み上げてしまうため、地下水脈を枯渇させて地盤沈下を発生してしまうという弊害が取り沙汰されることとなってからは、その利用を禁止してしまう地域が次第に拡大していき、有効な消雪手段でありながら採用できないという経緯があり、地域によっては今でも何とか採用できるようにならないのかという要望がある。
(従来の技術)
そこで、こうした地盤沈下を伴わない地下水利用の消雪技術として提案のあるものに、例えば特許第2544961号公報に開示された「地下還水装置」発明のように、地表部に設けた井戸室の底部に地下水を汲み上げるポンプ装置と汲上管とを設けた井戸管を垂設し、この井戸管の開口部に二次スクリーン部を連設し、井戸室内に一次スクリーン部を設けた濾過装置を設け、この濾過装置に雨水や融雪水を導入する導水装置を井戸室に連設し、濾過装置で濾過した浄水を二次スクリーン部を介して井戸管内に還水することを特徴とする横山発明が知られており、また、特開平11−181730号公報に記載された「融雪方法および融雪設備」発明の、被融雪地を循環する表層水に地下水の熱を移動して融雪用水とし、生産井より採取した地下水と、被融雪地に散水された融雪用水によって生じた雪解水を含む表層水を回収した後濾過してなる濾過水との間で熱交換し、熱交換によって熱を失った地下水を還元井により地下に戻すと共に、熱交換によって熱を受け取った濾過水を融雪用水として再び被融雪地に散水する杉野発明があり、あるいは利用目的を消雪ではなく、冷暖房設備を対象とするものとして、特開2002−54857号公報に記載の、打込工法によって地盤に浅井戸を設けて、冷房時において一方の井戸から汲み上げた地下帯水層の地下水を冷媒の熱交換に利用した後、他方の井戸に注入して地下帯水層に還元し、暖房時において他方の井戸から汲み上げた地下帯水層の地下水を、冷媒の熱交換に利用した後、一方の井戸に注入して地下帯水層へ還元するようにした「地下水を利用したヒートポンプシステム」の岡本発明等が、既に開発されている。
(1)特許番号第2544961号公報 (2)特開平11−181730号公報 (3)特開2002−54857号公報
(問題意識)
以上のように、既に開発済みの地下水熱を利用した融雪技術や冷暖房設備等は、地下水を汲み上げた量に略等しい量の水を地下に還元することにより、地盤沈下等の地下水量の減少によって起こる問題を解消しようとするものであったが、例えば、車道だけでなく歩道の除雪や道路に面する住宅や敷地等から運び出される排雪は、従前までと同様に車両に積んで近くの空地や河川敷まで運ぶか、あるいは流雪溝に流す等の作業を行うこととなり、流雪溝に大量の雪が一度に投入されてしまうことになると融雪が間に合わず、その場で堆積状となって滞り、円滑な除排雪を行うことができなくなってしまうという厄介な問題が残されたままとなっており、このような道路周辺の除排雪を、従前までの技術によって効率的に消雪するには、歩道や庭先等にも熱交換用の配管を埋設する工事が必要となって設置に多大な費用を要するものとなってしまうという問題があった。
(発明の目的)
そこで、この発明は、地下水量を一定以上に保ちながら地下水の熱を利用してロードヒーティングを行うことによって道路の消雪等を実現すると同時に、その周辺に発生した排雪も、迅速且つ効率的に消雪することを可能とする除排雪技術を開発することはできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の地下水熱利用型融雪システム、およびそれを利用した新規な融雪方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の地下水熱利用型融雪システムは、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、内部に砕石等が充填されて浸透兼濾過層に形成され、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達するようにした井戸穴の上端を、所定容量で排雪投入口付きの融雪槽底部に臨ませると共に、井戸穴内の浸透兼濾過層中を上下に貫通して融雪槽内に立ち上がるようにした還水管内には、その帯水層内に位置させた水中ポンプから往路管を立ち上げて地上部の融雪用配管の流入部に接続し、一部に還流水を含む地下水が融雪用配管に導通状となるようにする一方、該融雪用配管の吐出部から伸びる復路管を、前記融雪槽の排雪投入口と貯溜水面との間に位置し、同排雪投入口を囲むように配したシャワーノズル付きの融雪用環状シャワー管に接続したものとしてなる構成を要旨とする地下水熱利用型融雪システムである。
この発明の地下水熱利用型融雪システムを換言すると、内部に砕石等が充填されて浸透兼濾過層に形成され、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達するようにした井戸穴の上端を、所定容量で排雪投入口付きの融雪槽底部に臨ませると共に、井戸穴内の浸透兼濾過層中を上下に貫通して融雪槽内に立ち上がるようにした還水管内には、その帯水層内に位置させた水中ポンプから往路管を立ち上げて地上部の融雪用配管の流入部に接続し、熱交換した還流水を含む地下水が融雪用配管に導通状となるようにする一方、該融雪用配管の吐出部から伸びる復路管を、前記融雪槽の排雪投入口と貯溜水面との間に位置し、同排雪投入口を囲むように配したシャワーノズル付きの融雪用環状シャワー管に接続したものとしてなる地下水熱利用型融雪システムであるということができる。
この発明の地下水熱利用型融雪システムをより具体的なものとして示すと、内部に砕石等が充填されて浸透兼濾過層に形成され、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達するようにした井戸穴の上端を、開閉もしくは脱着可能なグレーチングを有した排雪投入口付きで所定容量の融雪槽底部に臨ませると共に、井戸穴内の浸透兼濾過層中を上下に貫通して融雪槽内に立ち上がるようにした還水管内には、その帯水層内に位置させた水中ポンプから往路管を立ち上げて地上部の融雪用配管の流入部に接続し、熱交換した還流水を含む地下水が融雪用配管に導通状となるようにする一方、該融雪用配管の吐出部から伸びる復路管を、前記融雪槽の排雪投入口と貯溜水面との間に位置し、同排雪投入口を囲むように配したシャワーノズル付きの融雪用環状シャワー管に接続し、該融雪用環状シャワー管と貯溜水面と間の適所にオーバーフロー管を接続したものとしてなる地下水熱利用型融雪システムということが可能である。
(関連する発明)
上記した、地下水熱利用型融雪システムに関連し、この発明には、当該地下水熱利用型融雪システムを利用した融雪方法も包含しており、その基本的な構成は即ち、予め十分な量の水を貯溜して置いた融雪槽の底部付近から、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達する還水管内に配された水中ポンプによって還流水を含む地下水を往路管を通じて強制的に汲み上げることにより、これに応じて地中に発生する負圧を、積極的に利用し、吸い上げた地下水量に略等しいか、あるいはその水量を越える量の貯溜水を、強制的に地中に吸い戻させるものとすることにより、地下水量の減少を抑止、可能とした上で、強制的に吸い上げた還流水を含む地下水を、融雪用配管に通過させる過程において放熱させ、地上に融雪作用をもたらすものとした後に、その復路水を、地上の除雪作業によって融雪槽内に投入され、貯溜水面上に浮上している排雪に向けて散水し、融雪するのに利用するものとしたことにより、地下水量を一定に保ったまま地熱のみを利用して速やかに除、排雪可能とする、前記何れか記載の地下水熱利用型融雪システムを利用した融雪方法である。
以上のとおり、この発明の地下水熱利用型融雪システムによれば、何よりも先ず、浸透兼濾過層をなして形成された井戸穴の上端を融雪槽底部に臨ませ、同井戸穴の浸透兼濾過層中を上下に貫通した還水管内の地盤帯水層内に達する位置に水中ポンプを設け、往路管を通じて還流水を含む地下水を吸い上げる構造としたことにより、水中ポンプの作動によって地中に発生する負圧に応じて、吸い上げた地下水量と同等か、あるいはそれ以上の量の浄水を地下水中に還元することを可能とし、地下水量の減少を確実に防止するものとし、汲み上げた還流水を含む地下水の往路管を、地上部の融雪用配管に接続して融雪のために熱交換利用可能とすると共に、復路管を融雪槽内の適所に設置された融雪用環状シャワー管に接続したことにより、排雪投入口を通じて投入され、貯溜水面上に浮遊状となった排雪に散水して消雪を促進することができるという秀れた特徴が得られるものになっている。
また、この発明の地下水熱利用型融雪システムを利用した融雪方法によれば、地下に埋設された水中ポンプによって還流水を含む地下水を吸い上げることにより、吸い上げられる地下水量を大幅に削減すると同時に、該水中ポンプが発生する負圧によって地下に吸い戻された還流水にも地下熱を取り込むことができるので、地下水のみを汲み上げる場合と殆ど変わらない熱量を確保することが可能となり、地上部の融雪用配管に供給して十分な融雪作用を得ることができる上、融雪槽に戻す際に、排雪投入口を囲むように配した融雪用環状シャワー管を通じて散水することにより、同融雪槽内貯溜水面上に浮上している排雪を速やかに解かすと共に、貯溜水面上に浮き上がる排雪の水中に没した下側部分が、地下熱を蓄えた貯溜水を吸収するので、従前までの流雪溝よりも迅速な消雪を実現可能とするという大きな効果を発揮するものである。
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
融雪槽は、地中に所定容量の水を貯溜可能とし、地上に排雪投入口を開口して投入された排雪を融雪可能とする機能を果たすと共に、貯流水面下となる底部付近から、浸透兼濾過層を通じて貯流水の一部を還流可能とした上、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さから還流水を含む地下水を汲み上げ可能とするものとしなければならず、排雪投入口と貯流水面との間には、融雪用環状シャワー管を配したものとすべきであり、必要に応じて貯流水の標準水位よりも上側であって、融雪用環状シャワー管よりも下側となる位置にオーバーフロー管を設けたものとするのが望ましい。
排雪投入口は、地上の積雪を除雪した際に発生する排雪を簡便且つ効率的に融雪槽内に投入可能とする開口であり、排雪を投入するに好適な開口寸法および形状に設定されたものとすべきであり、除雪作業者が安全に排雪のみを投入できるよう、開閉あるいは脱着可能なグレーチングを装着したものとすることができる外、投入口の周縁に沿って融雪用環状シャワー管を配したものとすることが可能である。
井戸穴は、融雪槽底部と地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さ箇所とを透水自在で、しかも還流水を濾過可能とする機能を果たし、その内部を還水管が上下に貫通して帯水層内に水中ポンプを配置させ、該水中ポンプに還流水を含む地下水を供給可能なものとしなければならない。
浸透兼濾過層は、還流水を濾過、還流可能とするよう水中ポンプが発生する地下水圧の変化に伴い円滑に透水し、還流水を含む地下水を吸い上げ、および還流可能とする機能を果たすものであり、砕石や砂、小石等を充填して形成したものとすべきであり、必要に応じて濾過器やフィルター、木炭等のような一般に利用される浄化素材を、融雪槽の底部から交換可能に装着されたものとすることができる。
還水管は、融雪槽底部から地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さ箇所に至る範囲に、還流水および地下水を通水可能とする空洞状の管路を確保して地下の所定深さ位置に水中ポンプを配置可能とするものであり、上端が融雪槽内の貯溜水面下に没して還流水を適度に通水可能とし、その上端付近からは水中ポンプから延伸された往路管が突出されたものとなっている。
水中ポンプは、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さ箇所から還流水を含む地下水を強制的に吸い上げて、地上部の融雪用配管や融雪用環状シャワー管に供給可能とする機能を果たし、地上部の融雪用配管に対し、単位時間当りに十分な放熱を可能とする量の還流水を含む地下水を供給可能とすべきであり、タイマーや外気温等に連動して自動制御されるものとすることができる外、管理者によって適宜起動、停止制御されるものとすることができる。
往路管は、水中ポンプによって汲み上げられた還流水を含む地下水を、汲み上げの際に発生する水圧によって地上部の融雪用配管に供給可能とする機能を果たすものであり、断熱性をもたせて熱損失を低減するものとするのが望ましく、必要に応じて往路管と復路管との間に、地上部の融雪用配管を迂回可能とするバイパス管を接続し、同バイパス管の中途部適所、および、融雪用配管流入部の夫々に、切換えバルブを配したものとすることにより、往路管を通じて供給される還流水を含む地下水を、直接的に復路管に供給し、融雪用環状シャワー管を通じてシャワーノズルから融雪槽内に放水するよう制御可能としてなるものとすることが可能である。
融雪用配管は、地上部の積雪や排雪等を消雪するよう、適所に設置された配管内を流通する還流水を含む地下水から熱の放出を受けて融雪可能とする機能を果たすものであり、より具体的には道路のアスファルト層下、あるいは住宅敷地内の比較的浅い地表面下層に配管を埋設してなるロードヒーティングや、家屋の屋根の一部または略全面に配管した消雪屋根等とすることができる。
復路管は、融雪用配管の吐出部と融雪用環状シャワー管とを接続するものであり、全長に渡り略水平状に配管するか、もしくは融雪用配管の吐出部から融雪用環状シャワー管に向かって下り勾配となるよう配管されたものとするのが望ましく、放熱しないよう断熱性を確保したものとすることができる外、所定深さに配管して地熱を取り込むようにすることも可能である。
融雪用環状シャワー管は、復路管を通じて供給された還流水を含む地下水を、排雪投入口から投入され、融雪槽内の貯溜水面に浮遊する排雪に対し、上方から散水して迅速に消雪してしまう機能を果たし、排雪投入口と貯溜水面との間に配置し、同排雪用投入口を囲むように配置されたものとしなければならず、排雪用投入口を囲むように一回りする配管からなるものとすることにより、迅速な消雪が十分に可能となるが、その外にも排雪用投入口を囲む螺旋状の配管や、排雪用投入口を囲む鉛直筒形状の肉厚中に注水可能とした筒形配管の周面内側に複数のシャワーノズルを設けたものとすること等が可能である。
シャワーノズルは、融雪槽内の貯溜水面に浮遊する排雪に向けて散水し、迅速に融雪してしまう機能を果たすものであり、複数個のノズルを融雪用環状シャワー管に沿って排雪投入口を囲むよう配置し、投入された排雪に重点的に散水するものとすべきであるが、融雪槽内の貯溜水面の略全面に満遍なく散水可能な配置、構造とすることも可能であり、個々のノズルが如雨露状の散水を可能とし、出来るだけ広範囲に散水できるものとするのが望ましい。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
図1の地下水熱利用型融雪システムの斜視図に示される事例は、浸透兼濾過層21に形成され、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる所定深さに達する井戸穴2上端を、排雪投入口11付きの融雪槽1底部に臨ませ、該井戸穴2内の浸透兼濾過層21中を上下に貫通した還水管31中の地下帯水層内となる位置に水中ポンプ3を配設し、同水中ポンプ3から往路管33を立ち上げて地上部の融雪用配管4に接続し、一部に還流水を含む地下水が融雪用配管4に導通状となるようにする一方、該融雪用配管4から伸びる復路管51を、前記融雪槽1の排雪投入口11と貯溜水面Wとの間に、同排雪投入口11を囲むように配した融雪用環状シャワー管5に接続したこの発明に包含される地下水熱利用型融雪システムにおける代表的な一実施例を示すものである。
当該地下水熱利用型融雪システムは、融雪の主要な目的となる道路の約300平方メートルに渡る舗装路面下における比較的浅い地下にロードヒーティング用の融雪用配管4を付設し、その近辺の交通や周辺の市民生活に障害を来さない地下水脈の豊富な場所であって、望ましくは除雪作業によって発生した排雪を運び込むのに便利な箇所を選択し、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる深さ20メートル前後の深さにまで達するようにした直径1メートルないし数十センチメートル程度の井戸穴2を穿孔し、その井戸穴2の開口周囲に2メートル四方、深さ2メートルの矩形穴を掘削した上、井戸穴2の中心部分には、内部に毎時300ワットの出力を有する水中ポンプ3を、還水が十分に流動可能な隙間をもって収容可能とする内径に設定された還水管31を上下貫通状に装着し、地下約20メートルの深さ位置に該水中ポンプ3を配置させたものとし、該井戸穴2中の還水管31周囲に形成された円筒環状の空間には、砕石を充填することにより、浸透兼濾過層21を形成したものとなっている。
井戸穴2直上に形成された矩形穴空間内には、地上面に略面一状に形成された1.5メートル四方の天面を有し、深さ2メートル前後の矩形箱状に形成され、該天面の中央に約1メートル四方の排雪投入口11が開口された鉄筋コンクリート製の融雪槽1を埋設状に設置し、その周辺を埋戻したものとなっており、排雪投入口11には、開閉自在としたグレーチング12が装着され、同融雪槽1底部略中央には、前記井戸穴2の浸透兼濾過層21上端を、融雪槽1内の比較的大量の還流水8が自由に透水可能となるよう露出状に臨ませたものとすると共に、還水管31の上端が、融雪槽1の通常時の貯溜水面W位置に設定する位置付近まで鉛直状に延伸され、同上端を閉鎖状としてその近傍周壁面に還流水8を通過可能とする比較的小径の還流孔32を穿孔したものとし、更に還水管31上端からは、水中ポンプ3から立ち上げた往路管33が貫通状に突出され、更に略水平方向に折曲されて融雪槽1の壁面を貫通して地中に延伸され、前記融雪用配管4の流入部41に接続されたものとなっている。
融雪用配管4の吐出部42には、復路管51の一端が接続され、地中を通って融雪槽1の壁面を貫通し、同融雪槽1内に延伸された復路管51の他端には、排雪投入口11と貯溜水面Wとの間となる高さ位置に設定され、排雪投入口11の周囲を取り囲むように迂回し、先端が封止された配管からなり、その略全長に渡る周壁面には還流水8を散水可能とする複数のシャワーノズル52,52,……を配した融雪用環状シャワー管5が接続されており、また、該融雪用環状シャワー管5と、還水管31の還流孔32との間となる融雪槽1壁面には、外部排水路に繋がるオーバーフロー管6を貫通状に設けたものとなっている。
更に、往路管33と融雪用配管4の流入部41と間と、同融雪用配管4の吐出部42と復路管51との間には、バイパス管7が接続され、該バイパス管7の中途部と、融雪用配管4流入部41の中途部との夫々に、地上から開閉操作可能な切換えバルブ71,71を設けたものとしている。
(実施例の作用)
以上のとおりの構成からなるこの発明の地下水熱利用型融雪システムは、この発明の融雪方法に好適に利用されるものであり、以下では当該融雪方法の具体的な事例に伴い、地下水熱利用型融雪システムの作用について示すものとする。
予め所定量の水8を貯溜して置いた状態で、水中ポンプ3を駆動させ、還流水8を含む地下水を強制的に汲み上げることとなるが、水中ポンプ3によって地中に発生する負圧により、井戸穴2内の浸透兼濾過層21を通じて融雪槽1内の貯溜水8が強制的に地中に還流されて地下水圧の均衡を保ち、実質的に地下水の汲み上げが無かったものとしてしまうか、あるいは汲み上げた地下水量よりも多くの浄水を地下水脈に供給可能とするものとなる。
水中ポンプ3によって汲み上げられた還流水8を含む地下水は、往路管33を通じて融雪用配管4に供給され、同融雪用配管4を巡る過程において放熱し、路面上の積雪や凍結を解かす作用をもたらすものとなり、国内における地下10メートルの地温は、年間を通じて摂氏12度ないし13度と一定しており、汲み上げられた還流水8を含む地下水の平均温度は摂氏10度であって、路面上の積雪を確実に消雪するものとなる。
融雪用配管4を通過して吐出部42から復路管51を通じ、融雪用環状シャワー管5に供給され、各シャーワーノズル52,52,……から散水される水の平均温度は摂氏7度であり、十分な融雪作用が得られるものであって周辺の除雪作業によって発生した排雪を排雪投入口11を通じて投入することにより、貯溜水面Wに浮かぶ図示しない排雪に向けて散水し、これを速やかに消雪してしまうこととなり、また、短時間の中に大量の消雪を行って融雪槽1内の貯溜水量が、設定容量を越えたときには、井戸穴2浸透兼濾過層21および還流孔32を通じた還流水圧が高まり、地下水への浄水の供給圧力を増すものとなり、更に効果的に地下水脈の枯渇を防止することが可能となる外、著しく貯溜水量が増加してしまった場合には、オーバーフロー管6を通じて外部へ通常排水して、融雪槽1内の貯溜水8量を一定の範囲内に自動調整するものとなっている。
(実施例の効果)
以上のような構成からなる実施例の地下水熱利用型融雪システムおよびそれを利用した融雪方法は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、当該地下水熱利用型融雪システムを実際に製作し、平成13年から平成15年の3ヵ年に渡り、実験的に当該融雪方法を試みたところ、毎時300ワットの出力性能を有する水中ポンプ3を使用することにより、融雪用配管4によって形成された約300平方メートルの範囲に渡るロードヒーティングを実現すると同時に、融雪槽1内に投入された毎時30立方メートルの排雪を効率的に消雪することに成功し、しかも地下熱のみを熱源とする構造によって給湯のための燃料代を一切不要とし、毎時23円の水中ポンプ3の電気代のみに抑えることができるので、従前までの融雪システムに比較して格段に秀れた経済性を有するものとなる。
更に、還流水を含む地下水は、汲み上げ時の平均水温が摂氏10度であり、融雪用配管4を通過し、ロードヒーティングを終えた後にも尚摂氏7度を保持しているので、融雪用環状シャワー管5を通じて散水し、融雪槽1内に投入された排雪を効率的に融雪するのに活用してから、地下帯水層内に還流するものとしたことにより、汲み上げによって得られた地下熱の殆ど全てを余す事なく有効利用することを可能とし、低コストで融雪面積の拡大と、地下水脈への十分な浄水の還流とを実現できる秀れた性能をもつ地下水循環システムを提供できるという利点を得られることになる。
(結 び)
叙述の如く、この発明の地下水熱利用型融雪システムおよびそれを利用した融雪方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、施工も比較的容易で、しかも地下熱を利用することから従前からの融雪システムに比較して燃料や電力の消費を大幅に削減することができ、遥かに経済的な融雪を実現可能とする上、汲み上げ量に見合った十分な量の浄水を地下帯水層内に自動的に還流することができて地下水汲み上げによるリスクを解消し、既に有効性が実証されているにも拘わらず、地盤沈下という厄介な問題によって普及が途絶えてしまった散水消雪に替わり、広範に渡って利用、普及させることが可能となり、毎年のように除排雪に多大な労力と経費とを費やさなければならない自治体や住民によって高く評価され、しかも自然環境にも優しく半永久的な利用が可能となることから、設置された地域や周辺住民からは固より、膨大な除排雪予算を計上しなければならない自治体からも高い評価が得られるものになると予想される。
図面は、この発明の地下水熱利用型融雪システムおよびそれを利用した融雪方法の技術的思想を具現化した代表的な実施例を示すものである。
地下水熱利用型融雪システムの構造を示す斜視図である。
符号の説明
1 融雪槽
11 同 排雪投入口
12 同 グレーチング
2 井戸穴
21 同 浸透兼濾過層
3 水中ポンプ
31 同 還水管
32 同 還流孔
33 同 往路管
4 融雪用配管
41 同 流入部
42 同 吐出部
5 融雪用環状シャワー管
51 同 復路管
52 同 シャワーノズル
6 オーバーフロー管
7 バイパス管
71 同 切換えバルブ
8 還流水
W 貯溜水面

Claims (5)

  1. 内部に砕石等が充填されて浸透兼濾過層に形成され、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達するようにした井戸穴の上端を、所定容量で排雪投入口付きの融雪槽底部に臨ませると共に、井戸穴内の浸透兼濾過層中を上下に貫通して融雪槽内に立ち上がるようにした還水管内には、該還水管が貫通、立ち上がっている浸透兼濾過層中の帯水層内に位置させた水中ポンプから、同様に還水管内を通じて往路管を立ち上げて地上部の融雪用配管の流入部に接続し、一部に還流水を含む地下水が融雪用配管に導通状となるようにする一方、該融雪用配管の吐出部から伸びる復路管を、前記融雪槽の排雪投入口と貯溜水面との間に位置し、同排雪投入口を囲むように配したシャワーノズル付きの融雪用環状シャワー管に接続したものとしてなることを特徴とする地下水熱利用型融雪システム。
  2. 内部に砕石等が充填されて浸透兼濾過層に形成され、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達するようにした井戸穴の上端を、所定容量で排雪投入口付きの融雪槽底部に臨ませると共に、井戸穴内の浸透兼濾過層中を上下に貫通して融雪槽内に立ち上がるようにした還水管内には、該還水管が貫通、立ち上がっている浸透兼濾過層中の帯水層内に位置させた水中ポンプから、同様に還水管内を通じて往路管を立ち上げて地上部の融雪用配管の流入部に接続し、熱交換した還流水を含む地下水が融雪用配管に導通状となるようにする一方、該融雪用配管の吐出部から伸びる復路管を、前記融雪槽の排雪投入口と貯溜水面との間に位置し、同排雪投入口を囲むように配したシャワーノズル付きの融雪用環状シャワー管に接続したものとしてなることを特徴とする地下水熱利用型融雪システム。
  3. 内部に砕石等が充填されて浸透兼濾過層に形成され、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達するようにした井戸穴の上端を、開閉もしくは脱着可能なグレーチングを有した排雪投入口付きで所定容量の融雪槽底部に臨ませると共に、井戸穴内の浸透兼濾過層中を上下に貫通して融雪槽内に立ち上がるようにした還水管内には、該還水管が貫通、立ち上がっている浸透兼濾過層中の帯水層内に位置させた水中ポンプから、同様に還水管内を通じて往路管を立ち上げて地上部の融雪用配管の流入部に接続し、熱交換した還流水を含む地下水が融雪用配管に導通状となるようにする一方、該融雪用配管の吐出部から伸びる復路管を、前記融雪槽の排雪投入口と貯溜水面との間に位置し、同排雪投入口を囲むように配したシャワーノズル付きの融雪用環状シャワー管に接続し、該融雪用環状シャワー管と貯溜水面と間の適所にオーバーフロー管を接続したものとしてなることを特徴とする地下水熱利用型融雪システム。
  4. 往路管と復路管との間に、地上部の融雪用配管を迂回可能とするバイパス管を接続し、同バイパス管の中途部適所および融雪用配管流入部の夫々に、切換えバルブを配したものとすることにより、往路管を通じで供給される還流水を含む地下水を、直接的に復路管に供給し、融雪用環状シャワー管を通じてシャワーノズルから融雪槽内に放水するよう制御可能としてなる、請求項1ないし3何れか一項記載の地下水熱利用型融雪システム。
  5. 予め十分な量の水を貯溜して置いた融雪槽の底部付近から、地盤透水層の地下水面以下(帯水層内)となる地下所定深さにまで達する還水管内に配した水中ポンプによって還流水を含む地下水を往路管を通じて強制的に汲み上げることにより、これに応じて地中に発生する負圧を積極的に利用し、吸い上げた地下水量に略等しいか、あるいはその水量を越える量の貯溜水を強制的に地中に吸い戻させるものとすることにより、地下水量の減少を抑止、可能とした上で、強制的に吸い上げた還流水を含む地下水を、融雪用配管に通過させる過程において放熱させ、地上に融雪作用をもたらすものとした後に、その復路水を、地上の除雪作業によって融雪槽内に投入され、貯溜水面上に浮上している排雪に向けて散水し、融雪するのに利用するものとしたことにより、地下水量を一定に保ったまま地熱のみを利用して速やかに除、排雪可能とする、請求項1ないし4何れか一項記載の地下水熱利用型融雪システムを利用した融雪方法。
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