JP4070592B2 - 鋼管継手部の止水材注入方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、鋼管継手部の止水材注入方法に関し、特に、ほぼ水平方向を指向して地盤中に埋設される鋼管の継手部の止水材注入方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トンネルないしは地下構造物を構築する際の補助工法の一種として、トンネル掘削に先立ち、掘削断面外周に沿って、鋼管を挿入設置して、掘削断面形状に合わせたルーフを形成し、このルーフを支保工で直接支承して、掘削に伴う、地山の緩みや変形を抑止するパイプルーフ工法が知られている。
【0003】
このようなパイプルーフ工法において、止水性が要請される場合には、両端に設けられた継手部を介して、横方向に連結しながら、ほぼ水平方向を指向して地盤中に複数の鋼管を埋設してルーフを形成した際に、継手部にモルタルなどの高粘性止水材を注入して、鋼管間の止水性を確保することになる。
【0004】
この場合、特許文献ないしは非特許文献に開示されているか否かは不明であるが、実際の施工現場では、以下の方法が採用されていた。第1の方法は、継手部に止水材の注入孔を所定ピッチで貫通形成しておき、鋼管を埋設した後にその内部に作業員が入り込んで、注入孔から止水材を継手部内に充填注入する方法である。
【0005】
また、第2の方法は、継手部などに特別な手段を講じることなく、鋼管を埋設した後に、継手部の一端側から止水材を充填注入する方法である。
【0006】
しかしながら、このような従来の鋼管継手部の止水材注入方法には、以下に説明する課題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、第1の方法では、作業員が鋼管の内部に入って、止水材を注入するが、鋼管の径が小さい場合には、狭い空間での作業となり、作業環境が劣悪になるという問題があった。
【0008】
また、第2の方法では、継手部の一端側から、止水材を一度に注入するため、完全な止水性を得ることが、非常に難しく、殆ど不可能であった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、劣悪な環境での作業を排除し、かつ、ほぼ完全な止水性が得られる鋼管継手部の止水材注入方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、鋼管に設けられた継手部を介して、前記鋼管同士を横方向に連結しながら、複数の前記鋼管をほぼ水平方向を指向して地盤中に埋設した際に、前記継手部にモルタルなどの高粘性止水材を注入して、前記鋼管間の止水性を確保する鋼管継手部の止水材注入方法において、前記継手部は、隣接する前記鋼管の一方の外面に突設された突起部と、隣接する前記鋼管の他方の内面に設けられ、前記突起部の軸方向の挿通が可能で、当該突起部の挿通後に連結方向への離脱が不能になる筒部とを備え、前記筒部の側方に、前記高粘性止水材の注入用管体を添設し、前記筒部と前記注入用管体とを、長手軸方向に沿って所定の間隔を隔てて連通する複数の連通管を設置するとともに、前記注入用管体内に、流体注入により拡径,収縮する一対のパッカーを備えた前記高粘性止水材の注入管を設置し、各連通管を挟んで、その前後に前記一対のパッカーを配置した状態でこれを拡径させて、前記パッカーで区切られた注入空間を隔成し、前記注入空間を介して、前記筒部内に前記高粘性止水材を充填注入するようにした。
【0011】
このように構成した鋼管継手部の止水材注入方法によれば、筒部の側方に、高粘性止水材の注入用管体を添設し、筒部と注入用管体とを、長手軸方向に沿って所定の間隔を隔てて連通する複数の連通管を設置するとともに、注入用管体内に、流体注入により拡径,収縮する一対のパッカーを備えた止水材の注入管を設置し、各連通管を挟んで、その前後に一対のパッカーを配置した状態でこれを拡径させて、パッカーで区切られた注入空間を隔成し、注入空間を介して、筒部内に止水材を充填注入するので、作業員が作業環境の劣悪な鋼管の内部に入って注入作業をする必要がなくなる。
【0012】
この場合、止水材は、パッカーで区切られた注入空間を隔成し、注入空間を介して、筒部内に止水材を充填注入するので、一度に止水材を注入する場合よりも、きめ細かい注入が行え、施工管理も容易になる。
【0013】
前記高粘性止水材は、前記連通管の設置間隔を同一とし、前記注入空間内に、前記筒部の容積に応じた一定量を注入することができる。
【0014】
この構成によれば、止水材の注入量を測定すると、その測定値から空洞の有無などを予測することができる。
【0015】
前記連通管内には、前記注入空間から前記筒部への前記止水材の流入を許容し、前記筒部に充填された前記止水材が前記管体側へ流出するのを阻止する逆止弁を設置することができる。
【0016】
前記突起部は、T字形形状に形成することができる。
前記筒部は、角形断面に形成し、前記突起部の挿入が可能なスリット孔を長手軸方向に沿って形成することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1から図3は、本発明にかかる鋼管継手部の止水材注入方法の一実施例を示している。
【0018】
これらの図に示した注入方法は、図1に示すように、角形断面のトンネルTを構築する際に本発明を適用した場合を例示している。同図に示した例では、トンネル掘削に先立ち、掘削断面外周に沿って、鋼管10を挿入設置して、掘削断面形状に合わせたルーフを形成し、このルーフを支保工で直接支承して、掘削に伴う、地山の緩みや変形を抑止するパイプルーフ工法に適用した場合を例示している。
【0019】
鋼管10は、円形断面に形成され、外周部分に継手部12が設けられていて、この継手部12を介しながら、横方向に順次連結して、地盤に埋設される。この際に、各鋼管10は、ほぼ水平方向を指向するように、地盤中に埋設され、各継手部12には、鋼管10間の止水性を確保するための止水材14が注入される。
【0020】
この場合に用いる止水材14は、例えば、所定配合のモルタルなどの高粘性物質が用いられる。図2には、鋼管10の継手部12の詳細が示されている。本実施例の場合、鋼管10は、ほぼ円形断面の筒体であって、その断面の外周部分に継手部12が配置されている。
【0021】
継手部12は、T字形の突起部16と、角形の筒部18とから構成されている。T字形の突起部16は、相互に連結される一方の鋼管10の外周面に突設されていて、鋼管10の全長に亘る長さを備えている。
【0022】
筒部18は、他方の鋼管10の内面側に接するように、その全長に亘って形成されていて、その一側面側には、突起部16の挿通可能なスリット孔20が、その全長に亘って形成されている。
【0023】
なお、図2に示した例では、一方の鋼管10の突起部16を、他方の鋼管10の筒部18内に挿通させて、一対の鋼管10を連結した状態を示しているが、1つの鋼管10に着目すると、円形断面の鋼管10の外周部の外面に突起部16が突設され、外周面の内面に筒部18が設けられている。
【0024】
この場合、筒部18は、スリット孔20を形成することで、突起部16の軸方向の挿通が可能で、当該突起部16を挿通させた後には、突起部16が連結方向に離脱することが不能になっている。
【0025】
また、本実施例の場合には、筒部18の上面側側方には、止水材14の注入用管体22が添設されている。この注入用管体22は、中空円筒状のものであって、筒部18と平行に延びている。
【0026】
注入用管体22と筒部18との間は、連通管24で連通接続されている。連通管24は、本実施例の場合には、管体22ないしは筒部18の長手方向に沿って、一定の等間隔(ピッチP)で複数が設けられている。なお、筒部18には、連通管24の先端が挿入される貫通孔が設けられている。
【0027】
連通管24内には、逆止弁26がそれぞれ配置されている。逆止弁26は、後述する注入空間28から筒部18側への止水材14の流入を許可する一方で、筒部18内に充填注入された止水材14が、注入管体22側に流出するのを阻止する機能を有している。
【0028】
止水材14を継手部12の筒部18内に充填注入する際には、図3に示すような、注入管30が注入用管体22内に挿入される。図3に示した注入管30は、一対のパッカー32と、注入管本体34と、パッカー32に連通する空気供給管36とをなえている。
【0029】
パッカー32は、拡径,収縮自在な袋状体であって、空気供給管36から圧縮空気を注入すると、注入用管体22の内面に密着するように拡径し、圧縮空気を抜き出すと、注入用管体22の内面から離間する。
【0030】
パッカー32を注入用管体22の内面から離間させると、注入管30は、管体22の長手方向に移動させることができるとともに、パッカー32を拡径させて、注入用管体22の内面に密着させることで、管体22内の任意の位置に固定することができる。
【0031】
なお、パッカー32の拡径,収縮手段は、圧縮空気に限ることなく、例えば、水などの液体を注入,排除して、拡径,収縮させてもよい。注入管本体34には、止水材14を外部に排出する排出孔37が、パッカー32で挟まれた区間に複数個貫通形成されている。
【0032】
筒部18内に止水材14を充填注入する際には、まず、止水材14を収容したホッパ38にポンプ39を介して、注入管30の本体34が接続されると共に、空気供給管36にコンプレッサ40が接続される。
【0033】
そして、この状態で注入管30を管体22内に挿入して、筒部18の奥側から止水材14を充填注入する。なお、この場合、筒部18の最奥部は、端板で閉塞されている。
【0034】
止水材14をポンプ39により圧送する際には、パッカー32が、図3に示す位置にセットされる。すなわち、一対のパッカー32は、1つの連通管24を中心にしてこれを挟んで、その両側に等間隔になる位置にセットして、圧縮空気を供給して、その位置で拡径されて、管体22の内面に密着固定される。
【0035】
このような位置にパッカー32を固定すると、注入用管体22内には、一対のパッカー32で区切られた注入空間28が隔成される。このような状態で、ポンプ39を介して、止水材14を注入管本体34内に送り込むと、止水材14は、排出孔37を介して、注入空間28に排出され、その後、逆止弁26を開弁させて、筒部18内に注入される。
【0036】
この場合、本実施例では、連通管24の設置間隔が等間隔になっていて、1つの連通管24を介して、筒部18内に充填注入する止水材14の容量は、連通管24の設置間隔(ピッチP)と筒部18の直径から予め求めることができるので、予め算定した容積と同じ量の止水材14を各連通管24を介して、充填注入することが望ましい。
【0037】
このような充填注入方法を採用すると、ポンプ39を介して、送出する止水材14の量を測定しておくと、例えば、その量が少ない場合には、筒部18内に空洞が発生していることが予測できるとともに、設定した量が充填注入された場合には、空洞が発生していないことが確認できる。
【0038】
なお、本実施例で採用する止水材14は、前述したようにモルタルなどの高粘性物質なので、筒部18内にこれを充填注入した際には、筒部18の長手方向に長く流れ出す状態にならず、広い範囲に流動しない。
【0039】
従って、連通管24を介して、筒部18内に注入した止水材14は、連通管24を中心として、その両側にほぼ等量ずつ充填され、このような充填状態になることから、前述した筒部18内の容積と注入量との関係が成立する。
【0040】
以上のようにして、ポンプ39を介して、一定量の止水材14が送出されて、これが筒部18内に充填注入されると、ポンプ39による止水材14の供給を停止し、パッカー32内の圧縮空気を抜き出して、パッカー32を収縮させた後に、図3に矢印方向に注入管30を移動させる。
【0041】
そして、右側の連通管24を中心としてその両側にパッカー32を配置した状態で、上記したのと同じ操作を繰り返すことで、注入空間28を介して、止水材14を筒部18内に注入充填し、このような操作を順次繰り返すことで、筒部18内の全長に止水材14が充填注入され、止水材14が固化することにより、鋼管10間の止水性が確保される。
【0042】
この場合、前の工程で筒部18内に注入充填されていて止水材14は、新たに筒部18内に注入充填される止水材14の圧力を受けるが、連通管24には、逆止弁26が設けられているので、止水材14が注入用管体22側に逆流することが防止される。
【0043】
このようにして止水材14の逆流が防止されると、筒部18内に充填注入された止水材14の量が減少しないし、また、管体22内に止水材14が残存することも防止することができる。
【0044】
また、本実施例の場合には、筒部18の全長に亘って、止水材14を充填注入した場合に、止水材14が完全に固化する前に、例えば、筒部18の側面に、非破壊式の検査装置、例えば、ラジオアイソトープの照射により空洞を検出する検査装置を設置し、筒部18内に止水材14の未充填部である空洞部の有無を検出し、空洞部が発見された場合には、再び注入管30を管体22内に挿入して、空洞発生個所に止水材14を充填注入することもできる。
【0045】
このような止水材14の二次充填注入は、前述した逆止弁26による逆流防止と、注入管30を引き抜くことで、パッカー32間に残存していて止水材14を除去することができるので可能になる。
【0046】
さて、以上のように構成した鋼管継手部の止水材注入方法によれば、鋼管継手部12の筒部18の側方に、止水材14の注入用管体22を添設し、筒部18と注入用管体22とを、長手軸方向に沿って所定の間隔を隔てて設ける連通管24を介して連通するとともに、注入用管体22内に、流体注入により拡径,収縮する一対のパッカー32を備えた止水材14の注入管30を設置し、各連通管24を挟んで、その前後に一対のパッカー32を配置した状態でこれを拡径させて、パッカー32で区切られた注入空間28を隔成し、注入空間28を介して、筒部18内に止水材14を充填注入するので、作業員が作業環境の劣悪な鋼管の内部に入って注入作業をする必要がなくなる。
【0047】
この場合、止水材14は、パッカーで区切られた注入空間27を隔成し、注入空間28を介して、筒部18内に止水材14を充填注入するので、一度に止水材14を注入する場合よりも、きめ細かい注入が行え、施工管理も容易になり、その結果、ほぼ完全な止水性を得ることができる。
【0048】
なお、上記実施例では、T字形突起部16と角形筒部18とで構成した継手部12を備えた鋼管10に本発明を適用した場合を例示したが、本発明の実施は、これに限定されることはなく、他の継手構造であってもよい。
【0049】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明にかかる鋼管継手部の止水材注入方法によれば、劣悪な環境での作業を排除し、かつ、ほぼ完全な止水性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる鋼管継手部の止水材注入方法が適用されるパイプルーフ工法の説明図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】図1に示した鋼管の継手部に止水材を充填注入する際の説明図である。
【符号の説明】
10 鋼管
12 継手部
14 止水材
16 突起部
18 筒部
20 スリット孔
22 注入用管体
24 連通管
26 逆止弁
28 注入空間
30 注入管
32 パッカー
Claims (5)
- 鋼管に設けられた継手部を介して、前記鋼管同士を横方向に連結しながら、複数の前記鋼管をほぼ水平方向を指向して地盤中に埋設した際に、前記継手部にモルタルなどの高粘性止水材を注入して、前記鋼管間の止水性を確保する鋼管継手部の止水材注入方法において、
前記継手部は、隣接する前記鋼管の一方の外面に突設された突起部と、
隣接する前記鋼管の他方の内面に設けられ、前記突起部の軸方向の挿通が可能で、当該突起部の挿通後に連結方向への離脱が不能になる筒部とを備え、
前記筒部の側方に、前記高粘性止水材の注入用管体を添設し、前記筒部と前記注入用管体とを、長手軸方向に沿って所定の間隔を隔てて連通する複数の連通管を設置するとともに、
前記注入用管体内に、流体注入により拡径,収縮する一対のパッカーを備えた前記高粘性止水材の注入管を設置し、
各連通管を挟んで、その前後に前記一対のパッカーを配置した状態でこれを拡径させて、前記パッカーで区切られた注入空間を隔成し、前記注入空間を介して、前記筒部内に前記高粘性止水材を充填注入することを特徴とする鋼管継手部の止水材注入方法。 - 前記高粘性止水材は、前記連通管の設置間隔を同一とし、前記注入空間内に、前記筒部の容積に応じた一定量を注入することを特徴とする請求項1記載の鋼管継手部の止水材注入方法。
- 前記連通管内には、前記注入空間から前記筒部への前記止水材の流入を許容し、前記筒部に充填された前記止水材が前記管体側へ流出するのを阻止する逆止弁を設置したことを特徴とする請求項1または2記載の鋼管継手部の止水材注入方法。
- 前記突起部は、T字形形状に形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の鋼管継手部の止水材注入方法。
- 前記筒部は、角形断面に形成し、前記突起部の挿入が可能なスリット孔を長手軸方向に沿って形成したことを特徴とする請求項4記載の鋼管継手部の止水材注入方法。
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