JP4070514B2 - 放水路の築造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水底地盤に水平坑及び立坑を築造して構成される放水路の築造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トンネルの掘削にあたって、立坑を、原子力発電所、火力発電所等で使用される放水路の一部として海底地盤中に構築された主放水路となる水平坑と海底とを連結する放水立坑として用いる場合がある。
この放水路の一部となる放水立坑を海中に築造する場合、一般的に放水立坑が築造されるべき地盤の上面である海底に、立坑ケーソンを設置するとともに、海上に仮設された作業構台から、まず、前記立坑ケーソン上に仮設の立坑を築造し、この仮設の立坑を介して、立坑ケーソン下部の地盤を掘削して、海底地盤中に構築された放水路となる水平坑と連結させる方法が知られている。なお、このように海上から放水立坑を築造する際には、海上からの作業を継続的に行う必要があるため、海上に各作業を行うための作業構台や大型の自己昇降式台船等を設置して施工している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したような立坑を海底地盤に築造する方法では、立坑を築造するための各作業、つまり立坑ケーソンの設置作業、立坑ケーソン上に設置される仮設立坑の設置作業、放水立坑自体の築造作業等の作業は全て海上作業となるため、冬季等における荒天期間中は作業を行うことができない等のように海象条件により稼働率が低下し、工期が延長される可能性がある。
また、海上で各作業を行う場合、その作業のための海上構台や大型船舶の設置、さらにそれらの運転費用により作業コストが増大するものとなっている。
【0004】
このような工期の延長化及びコストの増大化を伴う海上での作業を減らす工法としては、構築されるべき放水立坑に接続される水平坑を構築した後、この水平坑内から上方に向かって、屋根付きの足場を仮設しつつ人力掘削及び発破により放水立坑を築造する工法や、構築された水平坑からシールド機を用いて上向きに掘削していく工法が考えられる。
しかし、屋根付きの足場を仮設しつつ人力掘削及び発破により前記放水立坑を築造する方法では、海上から放水立坑を築造する工法よりも安全性が劣り、上向きに掘進するシールド機を用いた工法では、築造される放水立坑の長さに比して機械費がかかり施工コストが増大するという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、海底地盤などの水底地盤に水平坑及び立坑を築造する場合でも、安全に築造できるとともに、施工期間の短縮化及び施工コストの低廉化を図ることができる放水路の築造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1記載の発明は、例えば、図1〜図11に示すように、水底地盤に水平坑及び立坑を築造して構成される放水路の築造方法であって、
前記立坑(例えば、放水立坑1)が築造されるべき水底地盤(例えば海底地盤2)の上部にケーソン(例えば、放水ケーソン3)を設置する設置工程と、
前記立坑が築造されるべき水底地盤中を掘削し、前記水底地盤上に設置されるケーソンの真下を通るほぼ水平な水平坑4を構築する水平坑構築工程と、
前記水底地盤に構築された水平坑内から前記ケーソンに向かって縦型導坑掘削機7を用いて推進工法により掘削し、前記ケーソンに至る導坑9を構築する導坑掘削工程と、
前記ケーソンに至る導坑の上部から立坑断面を形成すべく拡幅しつつ下方に向かって掘削する拡幅掘削工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、設置工程により、水平坑及び立坑による放水路が築造されるべき水底地盤の上部にケーソンを設置し、水平坑構築工程により、立坑が構造されるべき水底地盤中を掘削して、水底地盤上に設置されるケーソンの真下を通るほぼ水平な水平坑を構築し、導坑掘削工程により、水底地盤に構築された水平坑内からケーソンに向かって縦型導坑掘削機を用いて推進工法により掘削してケーソンに至る導坑を構築し、拡幅掘削工程により、ケーソンに至る導坑の上部から立坑断面を形成すべく拡幅しつつ下方に向かって掘削することで放水路を築造することができるので、ケーソンを設置する作業以外の作業は全て水底地盤中で行うことができる。
【0008】
よって、海底地盤などの水底地盤に水平坑及び立坑による放水路を築造する場合でも、従来と異なり、海上から、立坑ケーソンの設置作業、仮設立坑の設置作業、放水立坑の築造作業などの各作業を行う必要がなく、冬季等における荒天期間中は作業を行うことができない等のように海象条件により稼働率が低下することがない。これにより工期の短縮化を図ることができる。また、海上作業での各作業を行う際に必要な海上構台や大型船舶の運転費用もかからず、工期が延長された際に嵩む作業コストの増大化を防ぐことができる。
【0009】
さらに、放水立坑自体の築造は上方から行うので、水底地盤に構築されるべき放水立坑に接続される水平坑を構築し、この水平坑内から上方に向かって、屋根付きの足場を仮設しつつ人力掘削及び発破により放水立坑を築造する工法と比べて、安全性の向上を図ることができるとともに、上向きに掘進するシールド機を用いることがないので、その分の施工コストの削減を図ることができる。
しかも、水平坑及び立坑による放水路が築造されるべき地盤が水底地盤であるので、従来と異なり、海上等の水上から、立坑ケーソンの設置作業、仮設立坑の設置作業、放水立坑の築造作業などの各作業を行う必要がなく、海象条件により稼働率が低下することがなく、工期の短縮化を図ることができる。
また、海上にて、立坑ケーソンの設置作業、仮設立坑の設置作業、放水立坑の築造作業などの各作業を行う際に必要な海上構台や大型船舶の運転費用もかからず、工期が延長された際に嵩む作業コストの増大化を防ぐことができる。
さらに、放水立坑自体の築造は上方から行うので、構築されるべき放水立坑に接続される水平坑を構築し、この水平坑内から上方に向かって、屋根付きの足場を仮設しつつ人力掘削及び発破により放水立坑を築造する工法と比べて、安全性の向上を図ることができるとともに、上向きに掘進する全断面シールド機を用いることがないので、全断面シールド機を用いた際にかかるコスト分の施工コストの削減を図ることができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の放水路の築造方法において、例えば図1に示すように、
前記拡幅掘削工程により前記水底地盤に立坑が築造された後で、前記立坑と前記ケーソンの周囲とを連通可能とする連通部34を備えるケーソン3を用いることを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、前記拡幅掘削工程により前記水底地盤に立坑が築造された後で、前記立坑は、連通部を介して前記ケーソンの周囲と連通することができる。
これにより、ケーソンを介して、水底地盤上部に配置されたケーソンの周囲と水平坑及び立坑とを連通させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本実施の形態により築造される立坑は、例えば原子力発電所や火力発電所などから排出される排水を海中に放水する放水路となるものである。
詳細には、前記原子力発電所や火力発電所などに接続され、海底地盤中に至る水平坑である主排水路の覆工された上側壁部分に略直交するように連結され、主排水路と海中とを連通させる放水立坑(立坑)である。この放水立坑の上部には海底に設置され、放水立坑と海中とを連通可能なケーソンが接続される。
この放水立坑を築造する際には、まず、図1に示すように、放水立坑(想像線1で示す)が築造されるべき地盤2、ここでは海底地盤2の上部に、放水立坑1の径より大きな径の底板部31を有するケーソン3を設置するとともに、放水立坑1が構造されるべき地盤2中を掘削し、設置されるケーソン3の真下を通る略水平な水平坑4を構築する。
【0015】
ケーソン3は、築造される放水立坑1と連通可能な開口部31aが形成された底板部31と、該底板部31上面に結合された本体部32と、本体部32内に設けられ、底板部31の開口部31aと、本体部32の側壁部の側壁開口部32aと連通させる連通部34とを備える。
底板部31の開口部31aは底板用蓋体33により閉塞されているとともに、本体部32の側壁開口部32aには、バルブにより開閉自在することで連通部34に注水可能なバルブ付き蓋部35が取り付けられている。なお、図示しないがケーソン3には連通部34内の水をケーソン外部に排出可能な排出バルブが設けられている。この排水バルブは底板用蓋体33の蓋体本体33aの下面で操作可能となっており、操作することで蓋体本体33aを介して連通部34から下方に排水できる。また、底板用蓋体33は、モルタルからなるモルタル層33bの上面に、補強鋼材等により補強された円盤状の蓋体本体33aが取り付けられることで形成されている。
【0016】
このようなケーソン3は、海底面22を掘削した後で、掘削部分に打設された基礎コンクリート5の上部に設置されている。この設置されたケーソン3では連通部34内には水が充填された状態となっているとともに、バルブ付き蓋部35のバルブは閉められたものとなっている。
また、水平坑4は、図1及び図2に示すように主排水路となるものであり、ケーソン3の真下に至るように構築されたものである。この水平坑4は例えば、NATM工法またはシールド機を用いたシールド工法により掘削され、掘削した部分が覆工(覆工部41)された状態となっている。
【0017】
また、水平坑4のケーソン3直下部分(以下水平坑最深部分という)43は、水平坑本体部分44よりも幅及び高さが大きくなっている。なお、水平坑本体部分44内には、水平坑4に連結される放水立坑1を築造する際に用いられる各設備、装置などが配置されており、図1及び図2に示すように、水平坑本体部分44の延在方向に沿って立坑築造作業のための安全通路45、水平坑内を走行する運搬車両(ダンプ)46aにずりを搬送するベルトコンベア46b、水平坑内で作業を行うミニバックホウ46c等とが配置されている。
【0018】
このように所定の地盤上、つまり、放水立坑1を構築すべき海底地盤2上部にケーソン3を設置し、該ケーソン3の直下に至り、且つ構築されるべき放水立坑1の下端部を接続する水平坑4が構築された後、該水平坑4内において、ケーソン3の真下部分、ここでは水平坑4の最深部にて、縦型導坑掘削機7を組み立てて、水平坑4からケーソン3に向かって導坑を掘削する。
【0019】
この縦型導坑掘削機7は、図3〜図5に示すように、水平坑最深部44から地山を掘削し、水平坑最深部44側から分割された円弧状のセグメントを組み立てることでなるセグメントリングを介して水平坑最深部44底面に上方に進退するように配置された元押しジャッキ52により前方、ここでは上方に掘進させられるものであり、掘削部70、本体胴部71等を備えている。
【0020】
掘削部70は、回転することによって地山を掘削するものであり、構築されるセグメントリングの外径より少し大きい径を有し、カッタヘッド72と、カッタヘッド72の後部に配置されカッタヘッド72からのずりを貯留可能なチャンバー部72aと、カッタ群73等とを備えている。
【0021】
カッタヘッド72は、地山を掘削するカッタ群73を支持するとともに、掘削機7の前面の地山の崩壊を防ぐものであり、地山内で構築されるセグメントリング(構築される導坑の周壁)の外径より少し大きい径を有する。
また、カッタヘッド72は、地山に対向する前部に設けられ地山を掘削するカッタ群73を支持するとともに、掘削機7の前面の地山の崩壊を防ぐものであり、掘削機7の先端に取り付けられている。
【0022】
カッタ群73は、例えば、前方から見た際にカッタヘッド72の中心を通り該カッタヘッド72を2等分する部分に長尺に複数取り付けられ、自転して地山を掘削するツインディスクカッタ73aと、ツインディスクカッタ73aの周囲に取り付けられ自転して地山を掘削するシングルディスクカッタ73b、ツールビット73c、スクレーバカッタ73d、ゲージカッタ73e等とを備える。ここではシングルディスクカッタ73bは計12個、ツールビット73cは14個、スクレーバカッタ73dは24個、ツインディスクカッタ73aは3個装備されている。なお、シングルディスクカッタ73bのうち4つは、カッタヘッド72の外周縁より外方、つまり放射方向に突出するように配置されている。
【0023】
また、カッタヘッド72の前面部には、内部から作業者が出入り可能な開閉する前面側マンホール部74等が設けられている。
また、カッタヘッド72の後方で該カッタヘッド72に隣接配置されたチャンバー部72aには注入孔721と、蓋により閉塞されチャンバー内に連通するマンホール部722が形成されている。
【0024】
図5(b)に示すように、本体胴部71は、掘削部70の後方に配置され、筒状に形成された外周部711と、この外周部711の内部に設けられ、カッタヘッド72を回転駆動させるヘッド駆動用油圧モータ712と、本体胴部71の後部に設けられ、組み立てられたセグメントリングから反力を取ることで掘削部70、言い換えればカッタヘッド72の方向を制御する方向制御ジャッキ713と、ローリングストッパ714等の地山の掘削作業に必要な諸設備が内蔵されている。
【0025】
また、外周部711には、構築された導坑の到達部に到達した際に、放射方向に膨出する止水シール部8と、外周部711から外方に突出し、本体胴部71に岩盤等を掴ませるフロントグリッパ716等とが設けられている。
止水シール部8はリング状をなし、シールド工法におけるエントランスリングに用いられる止水シールと同様に構成されており、外周部711に形成され、本体胴部71内部と連通する止水シール材注入孔81よりシール材が注入されることで膨出するとともにシール材にて外部から本体胴部71内への水の進入を防ぐ。ここでは軸方向に2つならんで取り付けられている。
さらに、軸方向に並ぶ2つの止水シール部8間には、シール膨出後、その空間に止水材を充填する補足注入孔82が設けられ、この補足注入孔82は水抜き検査孔としても用いられる。
【0026】
さらに本体胴部71には、チャンバー部72aの後端部に連結され、カッタヘッド72により掘削されチャンバー部72aに滞留したずりを排出するための排土管76が設けられている。この排土管76は、本体胴部71の軸と同心で、下方に開口し、開口する基端部、つまり水平坑4側の端部で同径の後続鋼管77と連接可能となっている。また、排土管76には、その上下端部付近に、開閉自在のゲート部78が取り付けられている。このゲート部78を閉塞することでチャンバー部72a内を密閉型とすることができる。つまり、縦型導坑掘削機7では通常の掘削をオープン型で土砂を排出しているが、湧き水など、導坑内に水の侵入が考えられる場合にはゲート部78を閉塞することで密閉型として使用することができる。なお、後続鋼管77はチャンバー部72aにセグメント53をリング状に組み立てる際に排土管76に連通するように鉛直方向に繋げられる。また、排土管76には送水管79が接続されている。
【0027】
このように構成された縦型導坑掘削機7を、水平坑4における水平坑最深部分43から上方に向かって導坑9を掘削させる際には、水平坑4内に縦型導坑掘削機7を発進させるための発進作業台49を設置する。
この発進作業台49の上面は、縦型導坑掘削機7を推進させるために配置された元押しジャッキ52のシリンダが最も後退した位置の高さに対応させた高さに合わせて配置されている。
元押しジャッキ52は円柱状の縦型導坑掘削機7及びセグメントリング全体を上方に押し上げ可能に配置されている。具体的には、平面視して構築されるセグメントリングと略同径の円状となるように複数機、ここでは、セグメントリングを5分割することでなる各セグメント53を2機ずつの元押しジャッキ52で支持できるように、10機の元押しジャッキ52をほぼ等間隔で設置している。
【0028】
これら元押しジャッキ52では、シリンダ52aの先端部にはセグメントリング底面部に当接する当接板(スプレッダ)52bが取り付けられている。図3では、シリンダ52aが伸びた状態の当接版を符号52’bで示している。
このシリンダ52aが伸びることで、先端の当接板52bと発進作業台49の上面との間に、組み立てられるセグメント53の軸方向の長さよりも若干長くなる空間が形成される。
すなわち、セグメントリングは、まず、元押しジャッキ52により該元押しジャッキ52上部に配置された縦型導坑掘削機7全体を上方に押し上げる。そして、所定の元押しジャッキ52のシリンダ52a、つまり、セグメント53を配置すべき箇所に存在するシリンダ52aを後退させることで、その箇所を、縦型導坑掘削機7の下面と発進作業台49の上面との間にセグメントを設置可能な空間とする。次いで、この空間に、セグメント53を配置する。この作業をセグメント53が設置される箇所毎に順次繰り返していくことでセグメントリングは組み立てられる。なお、セグメント53は、水平坑4内の上側の周壁に取り付けられたレール57aに沿って移動するホイスト57により運搬されるセグメント53を配置する。
【0029】
組み立てられたリングの内周面には、下端部から上端の縦型導坑掘削機7に至るメンテナンスのための梯子部59(図9参照)が設けられる。この梯子部59も下方から組み立てられるセグメントリングに追従して下方に継ぎ足していくことで、その全長が長いものとなる。
また、組み立てられたセグメントリングを構成するセグメント53には、水平坑4内に設置された裏込めプラント56からの裏込め材を注入するための裏込め注入孔が形成され、この裏込め注入孔に裏込めプラント56に接続された裏込め注入部56a(図3参照)を挿入して、構築ざれたセグメントリングの外周部分に裏込め材が注入される。
【0030】
このように組み立てられたセグメントリングを介して元押しジャッキ52により縦型導坑掘削機7を上方に推進させることで、構築された水平坑内からケーソン底板部31に向かって縦型導坑掘削機7を推進工法により掘削していき、ケーソン底板部31に至る導坑9を構築する(図6参照)。なお、掘削時に生じるずりは排土管76及び後続鋼管77を介して下方に落下し、発進作業台49の中央部の可能に据え付けられたホッパ51に投入される。ホッパ51に投入されたずりはベルトコンベアなどを介して運搬車両46aに搭載される。
【0031】
図6及び図7に示すように、縦型導坑掘削機7は、本体胴部71を導坑9の到達部、すなわちケーソン底板部31の下部の基礎コンクリート5を破壊して、該基礎コンクリート5内に挿入させて方向制御ジャッキ713を伸ばし、ケーソン底板部31に至るまで掘削する。そして、本体胴部71が基礎コンクリート5内に配置させた状態で、止水シール部8にシール材を注入することで止水動作を行わせ、基礎コンクリート5と縦型導坑掘削機7内との間の止水を行うとともに、方向制御ジャッキ713を後退させることで、掘削部70のカッタヘッド72の前面とケーソン底板部31の下面との間に空間を形成する。
【0032】
そして、到達部に縦型導坑掘削機7を配置させた状態で、図8に示すように、チャンバー部72a内のずりを全て排出させた後、縦型導坑掘削機7内の作業者は、マンホール部722と前面側マンホール部74を介して、縦型導坑掘削機7のカッタヘッド72の前面とケーソン底板部31下面との空間へ出て、底板用蓋体33の下部のモルタル層33bの一部を掘削し、底板用蓋体33の蓋体本体33aの下面を導坑9内に露出させる。そして、ケーソン3内の排水バルブを開けることで、一端部がバルブ付き蓋部35により閉塞された連通部34の内部の水を導坑9を介して下方の水平坑4に排出する。
【0033】
そして、縦型導坑掘削機7を解体する。
この解体作業は、蓋体本体33aの下面に滑車58aを取り付けるとともに、導坑9下方の水平坑4内にマシン解体用ウインチ58を設置し、このウインチ58からのワイヤーを滑車58aに巻回させ、巻回させたワイヤーの先端に解体した縦型導坑掘削機7の各部位を吊るし、ウインチ58の駆動により水平坑4内に移動させることで行われる(図9参照)。
図9では、解体された各部位を吊り降ろす作業の一例として、カッタヘッド駆動用油圧モータ712にワイヤの先端を取り付けた状態を示している。
そして、図10に示すように、導坑9の上部からつまり、ケーソン底板部31の下部から下方に向かって、築造する立坑1の断面を形成すべく拡幅しながら掘削する。
【0034】
このような拡幅掘削工程では、まずケーソン底板部31に取り付けられた底板用蓋体33を解体、詳細にはモルタル層33b全部と蓋体本体33a全部を解体して、導坑9と連通部34とを連通させる。なお、解体された底板用蓋体33は導坑9及び水平坑4を介して外部に排出される。
そして、ケーソン3内部、ここでは連通部34の内周壁に、導坑9の真上を横切り且つ築造されるべき放水立坑1の直径部分上を移動可能なホイスト60のガイド部材60aを取り付ける。そして、このガイド部材60aにホイスト60を取り付け、このホイスト60により、導坑9を介して、拡幅掘削を行うための重機の分解された部品を上方の空間、つまりケーソン3内空間に引き上げる。
【0035】
そして、この空間内で重機を組み立てた後、組み立てられた重機61を使用して立坑1断面を形成すべく拡幅しながら下方に掘削していく。なお、ホイスト60及びガイド部材60aは既設のマシン解体用ウインチ58によりケーソン3内に搬入しておく。なお、上方の空間で行う作業に用いる道具、設備及び装置などは大型のものを用いる場合、それを引き上げるための装置、設備をまず引き上げて組み立て、それらの装置、設備を用いて大型の装置や設備を引き上げるというように段階的に行う。つまり重機を用いる場合、まず重機を構成する各部品を引き上げ可能な設備(例えばホイスト60など)を、それよりも小型の設備(ここでは解体用ウインチ58)により引き上げてケーソン内で組み立て、組み立てられたホイスト60を用いて重機の分解部品を引き上げ、組み立てることで使用する。
【0036】
この実施の形態では、上方から行われる拡幅掘削作業としてNATM工法を用いており、掘削された周壁部分は、ロックボルト11が打ち込まれ、覆工コンクリートを塗布されることで覆工されている。なお、図10に示す掘削作業を行う重機はブレーカ61である。さらに、拡幅作業を行う際には、構築された導坑9も上側から撤去される。撤去された各部材はホイスト60により既設の導坑9を介して水平坑4内に移動される。
また、この作業領域内には覆工作業を行う際の各設備や部材もホイスト60により水平坑4から搬入される。つまり、上部に設置されたケーソン3側から搬入作業を行わない。
また、上方で拡幅作業を行うに当たって、水平坑4の最深部分43では、発進作業台49を撤去し、発進作業台49より高い作業台62を設置する。
【0037】
この作業台62は、導坑9の下方において最深部分43を上下に分けるものであり、既設の安全通路45の最深部分側の端部に接続されているとともに、導坑9の鉛直下方の部位に上下に連通する開口部が形成されている。
また作業台62上には、導坑9内を仕切って導坑9上部で拡幅掘削された土砂(ずり)を所定箇所に案内するための仕切り壁部63が設けられ、この仕切り壁部により土砂は開口部を介して作業台の下方の位置に案内される。
作業台の下方にはバックホウ64が配置され、開口部を介して上方から投下される土砂を運搬車両、例えば図1に示した運搬車両46a等に積載し必要に応じて外部に排出する。
【0038】
このように放水立坑1を築造した後、つまり、ケーソン底板部31から連通部34に連通した状態で、ケーソンに接続され、且つ水平坑4内に連通する放水立坑1を築造した後、ケーソン3のバルブ付き蓋部35のバルブを緩めることで放水立坑1及び水平坑4内に水を充填させることができる。
【0039】
このように上記実施の形態における放水立坑1の築造方法によれば、放水立坑1が築造されるべき海底地盤2の上部に、放水立坑1の径より大きな径の底板部31を有するケーソン3を設置し、次いで、海底に設置されたケーソン3の真下の地盤を掘削することで、ケーソン3の真下を通る略水平な水平坑4を構築し、次いで、構築された水平坑4内からケーソン底板部31に向かって縦型導坑掘削機7を用いて推進工法により掘削して、水平坑4内からケーソン底板部31に至る導坑9を構築し、次いで、構築された導坑9の上部から放水立坑1の立坑断面を形成すべく拡幅しつつ下方に向かって掘削することで放水立坑1を築造しているので、海上からの作業はケーソン3の設置作業のみで放水立坑1を築造することができる。
【0040】
したがって、従来と異なり、海上から、立坑ケーソンの設置作業、仮設立坑の設置作業、放水立坑の築造作業などの各作業を行う必要がなく、冬季等における荒天期間中は作業を行うことができない等のように海象条件により稼働率が低下することがない。これにより工期の短縮化を図ることができる。
また、海上にて、立坑ケーソンの設置作業、仮設立坑の設置作業、放水立坑の築造作業などの各作業を行う際に必要な海上構台や大型船舶の運転費用もかからず、工期が延長された際に嵩む作業コストの増大化を防ぐことができる。
さらに、放水立坑自体の築造は上方から行うので、構築されるべき放水立坑に接続される水平坑を構築し、この水平坑内から上方に向かって、屋根付きの足場を仮設しつつ人力掘削及び発破により放水立坑を築造する工法と比べて、安全性の向上を図ることができるとともに、上向きに掘進するシールド機を用いることがないので、その分の施工コストの削減を図ることができる。
【0041】
なお、以上の実施の形態においては、ケーソン設置工程を水平坑を構築する工程よりも先に行うこととしたが、これに限らず、水平坑を放水立坑1が構築されるべき海底地盤中にまず構築し、その後、水平坑の鉛直上方にケーソン3を設置してもよい。但し、立坑が築造される地盤が軟弱地盤の場合は、地盤改良等の別途工事を行う。
また、上述した工程、すなわち、ケーソン設置工程、水平坑構築工程、導坑構築工程及び、ケーソン真下の導坑上部からの拡幅工程を踏まえて立坑を築造する方法であれば、その他、具体的な構成についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、ケーソンを設置する作業以外の作業は全て水底地盤中で行うことができ、海底地盤などの水底地盤に立坑を築造する場合でも、従来と異なり、海上から、立坑ケーソンの設置作業、仮設立坑の設置作業、放水立坑の築造作業などの各作業を行う必要がなく、冬季等における荒天期間中は作業を行うことができない等のように海象条件により稼働率が低下することがない。これにより工期の短縮化を図ることができる。また、海上作業での各作業を行う際に必要な海上構台や大型船舶の運転費用もかからず、工期が延長された際に嵩む作業コストの増大化を防ぐことができる。
【0043】
さらに、水平地盤における放水立坑自体の築造は上方から行うので、構築されるべき放水立坑に接続される水平坑を構築し、この水平坑内から上方に向かって、屋根付きの足場を仮設しつつ人力掘削及び発破により放水立坑を築造する工法と比べて、安全性の向上を図ることができるとともに、上向きに掘進するシールド機を用いることがないので、その分の施工コストの削減を図ることができる。
しかも、水平坑及び立坑による放水路が築造されるべき地盤が水底地盤であるので、従来と異なり、海上等の水上から、立坑ケーソンの設置作業、仮設立坑の設置作業、放水立坑の築造作業などの各作業を行う必要がなく、海象条件により稼働率が低下することがなく、工期の短縮化を図ることができる。
また、海上にて、立坑ケーソンの設置作業、仮設立坑の設置作業、放水立坑の築造作業などの各作業を行う際に必要な海上構台や大型船舶の運転費用もかからず、工期が延長された際に嵩む作業コストの増大化を防ぐことができる。
さらに、放水立坑自体の築造は上方から行うので、構築されるべき放水立坑に接続される水平坑を構築し、この水平坑内から上方に向かって、屋根付きの足場を仮設しつつ人力掘削及び発破により放水立坑を築造する工法と比べて、安全性の向上を図ることができるとともに、上向きに掘進する全断面シールド機を用いることがないので、全断面シールド機を用いた際にかかるコスト分の施工コストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用した一実施の形態の放水路の築造方法の工程を示す概略図である。
【図2】 図1に示す水平坑4の最深部分43を示す図であり、(a)は最深部分43の概略平面図、(b)は(a)で示すA−A線矢視断面図である。
【図3】 図1で示す縦型導坑掘削機の概略構成を示す概略側断面図である。
【図4】 図3で示す縦型導坑掘削機を示す図であり、(a)は図3で示すB−B線矢視断面図、(b)は止水シール部分の拡大側面図である。
【図5】 図3で示す縦型導坑掘削機を示す図であり、(a)は縦型導坑掘削機のカッタヘッドを示す縦型導坑掘削機の平面図であり、(b)は図3で示すCーC線矢視断面図である。
【図6】 本発明を適用した一実施の形態の放水路の築造方法の工程を示す概略図であり、(a)は、水平坑から縦型導坑掘削機を掘進させることで導坑を形成した状態を示す図であり、(b)は(a)に示すケーソン内における導坑と立坑の位置関係を示す図である。
【図7】 図6(a)において到達部に到達した縦型導坑掘削機を説明する縦型導坑掘削機の概略拡大側面図である。
【図8】 本発明を適用した一実施の形態の放水路の築造方法の工程を示す概略図であり、(a)は導坑を形成した状態を示す図であり、(b)は(a)に示すケーソン内における導坑と蓋体の位置関係を示す図である。
【図9】 本発明を適用した一実施の形態の放水路の築造方法の工程を示す概略図であり、(a)は到達部に到達した縦型導坑掘削機を解体する状態を示す図であり、(b)は、(a)の状態における水平坑の最深部分の概略平断面図である。
【図10】 本発明を適用した一実施の形態の放水路の築造方法の工程を示す概略図であり、(a)は拡幅工程を説明するための図、(b)は(a)において、導坑9と掘削された作業領域との位置関係を示す図である。
【図11】 図10で示す水平坑を説明するための図であり、(a)は図10に示された状態の水平坑の最深部分の概略平断面であり、(b)は(a)で示すD−D線矢視断面図である。
【符号の説明】
1 放水立坑(立坑)
2 海底地盤(立坑を築造すべき地盤)
3 ケーソン
4 水平坑
7 縦型導坑掘削機
9 導坑
22 海底面
31 ケーソン底板部
34 連通部
53 セグメント
Claims (2)
- 水底地盤に水平坑及び立坑を築造して構成される放水路の築造方法であって、
前記立坑が築造されるべき水底地盤の上部にケーソンを設置する設置工程と、
前記立坑が築造されるべき水底地盤中を掘削し、前記設置されるケーソンの真下を通るほぼ水平な水平坑を構築する水平坑構築工程と、
前記水底地盤に構築された水平坑内から前記ケーソンに向かって縦型導坑掘削機を用いて推進工法により掘削し、前記ケーソンに至る導坑を構築する導坑掘削工程と、
前記ケーソンに至る導坑の上部から立坑断面を形成すべく拡幅しつつ下方に向かって掘削する拡幅掘削工程とを備えることを特徴とする放水路の築造方法。 - 前記拡幅掘削工程により前記水底地盤に立坑が築造された後で、前記立坑と前記ケーソンの周囲とを連通可能とする連通部を備えるケーソンを用いることを特徴とする請求項1記載の放水路の築造方法。
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