JP4070446B2 - 建材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ケイ酸カルシウム、石こうボード、アロフェン焼成ボード等の複合建材が主として内装材として広く用いられている。しかしながら、これらは接合に際して、接合強度の点から締結具を用いることが困難であるため接着剤を用いるのが一般的である。しかしながら接着剤を用いることは、施工に手間がかかり、しかも接着剤成分の高分子モノマーおよび溶剤を放散させ、居住空間内には好ましくない。さらに接着剤の劣化によりこれらの内装材のライフが短くなる。
【0003】
一方において、建材の製造に際しては、種々の目的で基材が選択され、さらにそれらの各種基材に種々の材料が配合されることが多い。
【0004】
そのなかで、鉱物系材料の一つとしてバーミキュライトがある。このバーミキュライト(ヒル石)は、黒雲母に類似した粘土鉱物であり、高温で脱水により層に垂直の方向に著しく膨張して、ヒルのように伸び多孔体となる。このため、断熱性、吸音性に優れるので、基材への配合材(充填材、増量材)、さらには基材として断熱材、吸音材をはじめとする各種建材に、その軽量化の目的と併せて用いられることが多い。一方、バ―ミキュライトは吸湿能力があまり高くないため、調湿材としてはまったく顧みられていない。
【0005】
したがって、上記のように、バーミキュライトを建材に配合する場合には、軽量化等を目的とするため膨張バーミキュライトを用いるのが通常である。たとえば、モルタル、コンクリート等のセメント製品に軽量骨材として利用されている。これに対し、未膨張のバーミキュライトは、上記の軽量化等の利点が得られないため、数%程度までの少量が、その耐酸、耐アルカリ等の特性を活かす特別な目的のために基材に配合されているに過ぎない。また、基材として実質的に未膨張バーミキュライトからなるボードを、内壁の裏側部分等に固定して、火災発生時に膨張させ、延焼を防止しようとする試みもなされているが、これは耐火性を利用した特定の基材として用いられるものである。
【0006】
一方、建材自体も、競合製品との差別化を図るため、種々の機能の付与が提案されている。そのなかで、調湿(吸放湿)および/または消臭、さらには美観を備えた建材についても種々の検討がなされているが、いまだに満足すべきものは見出されていない。すなわち、これらは比表面積が大きいものを利用して一定の成果を得ているが、特に、保水および保湿力が強すぎて放湿速度に難がある場合が多い。
【0007】
そこで本発明者は、天然資源としてのバーミキュライトのさらなる有効利用を図り、調湿および/または消臭、さらには美観の要請をも満たし得る、特に吸放湿の量および速度においてバランスに優れた建材を見出すべく、種々検討を行った。
【0008】
その結果、意外にも、基材、とくに、吸湿性はあるが放湿性が不十分な水硬性材料に未膨張バーミキュライトを配合することにより放湿能力を著しく向上させ、上述の課題を解決し得ることを見出し、未膨張バーミキュライトを基材に配合してなり、かつその配合量が全組成物(固形分)の5〜70質量%である建材組成物を成形してなる建材を先般見出した。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の建材の検討の一環として、さらに接着剤を使用しなくても締結具を用いて接合しうる建材を得ることを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、意外にも上記の未膨張バーミキュライトを含む建材を用いることにより上記の課題を達成しうることを見出した。
【0011】
すなわち本発明の要旨は、活性化処理された未膨張バーミキュライトをケイ酸カルシウムに配合してなり、かつその配合量が全組成物(固形分)の5〜70質量%である建材組成物を成形してなる建材を締結具で接合してなる建材にある。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において使用される基材は、後述するバーミキュライトの特性を実質的に劣化させないものであれば特に制限されないが、調湿および/または消臭の観点からは、親水性であるのが好適である。これは、親水性基材自身も調湿および/または消臭機能を有し、さらにはその表面から内部拡散した物質を未膨張バーミキュライトが吸着し得るからである。このような親水性基材としては、たとえば、石膏、セメント、ケイ酸カルシウム、スラグ石膏またはこれらの類似物が挙げられる。これらは適宜併用することもできる。石膏は無水もしくは含水塩のいずれであってもよく、セメントもポルトランドセメントをはじめとする各種セメントを使用し得る。この場合、骨材および混和材が使用される。また、ケイ酸カルシウムとしては、とくに制限されないが、ケイ酸質原料と石灰をオートクレーブ中で水熱反応させて得られるもの(トバモライトもしくはゾノトライト)が一般的である。スラグ石膏は、高炉水砕スラグ粉末を20〜40%含み、2水石膏(排脱石膏)を60〜80%、ポルトランドセメント1〜5%混合されたものが一般的である。
【0013】
一方、本発明において、上記基材に配合されるバーミキュライトは、SiO2、MgO、Al2O3を主成分とする薄片状の鉱物であり、一般的な黒雲母系、緑泥石系のいずれでもよく、産地により組成等に差異があっても使用し得る。比表面積(窒素吸着法)は通常10m2/g以下である。粒径も特に制限されないが、通常、5mm以下、好ましくは3mm以下、特に好ましくは0.5mm以下である。たとえば0.25mm以下のような細粒品は膨張バーミキュライトの用途には適さないためテーリングとして規格外品とされているが、意外にも原鉱石の粉砕、選鉱、乾燥、篩い分けで、細粒の方がバーミキュライトの層間水の脱水変質(層間の水2分子層が1分子層へ変化)が少ないことがわかり、本発明においてはむしろ好適に使用されうる。なぜなら層間水が水2分子のほうが調湿、消臭特性に好適だからである。
【0014】
本発明においては、このようなバーミキュライトを実質的に未膨張の状態で使用する。すなわち、バーミキュライトは、通常10〜20%程度の水を含んでおり、高温(層間水が脱離し始める約320℃から1000℃)での急激な加熱により脱水され著しく膨張する(多くは1000℃、1〜2秒で、もとの厚さの10〜30倍)。したがって、本発明においては実質的にこのような膨張を得ていないものが使用される。
【0015】
さらに本発明においては、このバーミキュライトを基材に配合するに先立ち、活性化処理したものを用いるのが好適である。活性化処理は、バーミキュライトが吸着している有機物もしくは無機物を離脱させ、本来有する調湿、吸着性能等を再構成・回復させることを目的とする。たとえば、加圧水蒸気処理、食塩水による煮沸処理等が挙げられるが、好ましくは105℃〜200℃の飽和蒸気圧での水蒸気処理によることができる。
【0016】
また、特に基材がケイ酸カルシウム系である場合には、活性化処理されていないバーミキュライトを水熱反応前に配合しても、その後にたとえば150℃〜200℃程度の飽和蒸気圧でオートクレーブ処理を受けるので、結果的に活性化処理がなされることになる。
【0017】
基材へのバーミキュライトの配合は、その配合量が全組成物(固形分)の5〜70質量%、好ましくは10%〜50質量%になるように行われる。基材の種類、目的とする建材の性能、たとえば調湿度等、に応じて選ばれるが、好適な吸放湿の量および速度を得るためのバーミキュライトの十分なチャンネリング(ネットワーク)を形成させるには、一般的には15質量%以上が特に好ましい。
【0018】
本発明の建材組成物には、上記の未膨張バーミキュライトのほかに、その他の目的のために建材にそれぞれの基材に固有に用いられる種々の配合材、さらには、その他を適宜配合し得る。その種類、配合量は、常法によることができる。たとえば、骨材、補強材、混和剤、軽量化材等、より具体的にはパルプ、セルロース繊維、ガラス繊維、ヒュームドシリカ、発泡ガラス、シラスバルーン、アルミナバルーン、パーライト、ワラストナイト、セピオライト、砂利、砂、有機バインダー等が適宜選択される。
【0019】
得られる本発明の建材組成物は、抄造成形、押出し成形、プレス成形、鋳込み成形等の常法により、ボード等の所望の形状、大きさの建材とすることができる。一般的にはボードの場合、工業的には、いわゆる抄造機を用いた抄造成形が選ばれる。
【0020】
本発明の建材は、後述する参考例5に記載された吸放湿試験において、好適には、相対湿度を60〜90%に変化させた場合の放吸湿速度が吸湿:30分で平衡値の90%以上、放湿:25分以下、さらに好適には20分以下で平衡、を示す。
【0021】
このようにして得られる建材は、壁材、天井材、間仕切り材等の内装材として使用されるのが好適であるが、さらに軒天井材等の外装材等としても使用されうる。
【0022】
本発明の建材は、調湿および/または消臭、さらには美観の要請をも満たし得るものである。すなわち、
1.適度な放湿特性を有するので、調湿機能に優れる。たとえば、吸湿および放湿のバランス、量および速度に優れる。
【0023】
したがって、結露、ソリ等を防止でき、さらにはカビ、ダニ等の繁殖を効果的に抑制できる。
【0024】
2.消臭機能に優れる。たとえば、本発明の建材は、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレン等の揮発性化学物質もしくは臭いのあるガス類を吸着しうる。
【0025】
3.さらに、未膨張バーミキュライト粒子を表面研磨等により浮き出させて花崗岩調の表面とすることができ、美観を備えたボード材等を容易に提供し得る。
【0026】
4.製造工程でオートクレーブ処理を受けた製品については、使用済みの本発明の建材を回収し、そのままオートクレーブで105〜150℃程度の水蒸気処理をすることにより再生することが可能である。バーミキュライトは上記の基材と反応していないからである。
【0027】
5.膨張バーミキュライト用原料としては規格外の細粒品をむしろ好適に使用しうるので、資源を有効利用することができる。
【0028】
本発明においては、このようにして得られる建材を締結具で接合する。接合は、建材同志もしくは他の部材、構造部等との間で行なわれるのが一般的である。締結具としては、くぎ、小ねじ、ボルト・ナット、びょう、ステープルもしくはピンが好適に用いられる。これらは接合の目的に応じて適宜選択される。これらの締結具の材質は制限されず、金属、木、竹、プラスチック、セラミック等のいずれでもよい。くぎとしては洋くぎ、和くぎのいずれでもよく、平頭、平、角、丸頭くぎ等が挙げられる。小ねじとしては丸頭、半丸、平頭、十字穴付ねじ等が挙げられ、ボルト・ナットとしては六角穴付きがもっとも一般的である。そしてピンとしては、細小、山小、平小、平、丸ピン等が挙げられる。
【0029】
接合に際しては、本発明による建材は未膨張バーミキュライトによるスプリングバック作用に起因すると推測される、いわゆるグリップ力を有するので、接合する側であっても接合される側であってもよい。接合される側の例としては絵画、照明、手すり、タオルかけ等が挙げられる。締結具で接合する部位は復元性に富むので、たとえばいったんねじを脱着した後に同一部位に再締結しうる。
【0030】
さらに、本発明による建材は、たわみ性が良好でかんな抵抗性がなく保形性を有するため、その表面をカンナで削っても表面が損傷されず平滑な表面を形成することができ、削りくずは粉々にならない。そして、本発明による建材は、クロスもしくは壁紙等の仕上げ材を表面に貼らなくてもよいので、この場合にはさらにそのための接着剤の使用が不要となる付加的な利点を有する。
【0031】
さらに、本発明の建材の表面は、彫刻性に富みルーター加工、彫刻刀による加工が可能であり、表面の崩落、欠失なしに円滑な彫刻処理ができるので、所望の意匠を得ることができ、縁取り、幾何学的模様の付与等、任意に建材の意匠性を高めうる。
【0032】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお部は質量部を表わす。
【0033】
【実施例】
参考例1
ケイ酸質原料としてケイ石粉末27部、石灰質原料として消石灰27部および補強繊維としてパルプ6部、さらに未膨張バーミキュライト(南ア産、粒径0.25〜0.5mm)40部を出発原料として、これらに水を添加して混合し固形分約12%のスラリーとし、抄造機により生シートを形成させた後、オートクレーブ中(160〜180℃、約10時間)で加圧養生させ、ついで80℃未満で所定の含水率になるまで乾燥させ、ケイ酸カルシウムボード(30cm×30cm×6mm)を得た。
参考例2
ケイ石粉末42部、消石灰42部、パルプ6部および未膨張バーミキュライト10部を用いて参考例1と同様にして珪酸カルシウムボードを得た。
参考例3(吸放湿試験)下記の測定方法により、本発明および市販の建材について吸湿率および吸放湿速度を測定した。
【0034】
(1)測定方法/装置
測定装置:Heiden Analytical Ltd.社製 「IGA SORP」
測定方法:約1ccの測定バスケットに、粉末試料はそのまま、塊状試料は2〜
3mm程度に調整して、充てんして測定。
【0035】
【0036】
(2)測定試料
本発明:参考例1〜2で得られた下記のボード
参考例1 未膨張バーミキュライト40wt%含有ケイ酸カルシウムボード
参考例2 未膨張バーミキュライト10wt%含有珪酸カルシウムボード
比較品:下記のA〜G
A アロフェン焼成ボード(市販品)
B アロフェン(栃木産)
C ゼオライト30wt%含有スラグ石膏ボード(市販品)
D ゼオライト(宮城産)
E 珪藻土40wt%含有ケイ酸カルシウムボード(市販品)
F 珪藻土(秋田産)
G 膨張バーミキュライト40wt%含有ケイ酸カルシウムボード(膨張バーミキュライトを用いる以外は参考例1と同様な方法により得た。)
H 珪酸カルシウムボード(参考例1において、ケイ石47部、消石灰47部およびパルプ6部を用いて得た。)
(3)測定結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
これらの結果は、本発明の建材が、吸放湿特性において量および速度のバランスに優れていることを示す。吸湿および放湿の30分周期試験の結果、本発明の建材においては、吸放湿のバランスが良好であるため放湿時のベースラインは一定に保持されたが、一方比較品においては放湿が追いつかないため経時的にベースラインが右肩上がりとなることが示された。以上のことからも本発明の建材が結露しにくいことがわかる。
参考例4
バーミキュライトについて、水蒸気処理の吸放湿特性への影響をみるために約180℃でオートクレ―ブ処理を行った。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
参考例5
ケイ石粉末27部、消石灰33部および未膨張バーミキュライト40部に水を混合し固形分約12%のスラリーとし、これをオートクレーブ(190〜200℃、約10時間)中で加圧養生処理した。ついで、80℃未満で所定の含水率になるまで乾燥しゾノトライト系ケイ酸カルシウムボードを得た。
【0041】
参考例3に記載した方法により測定した吸放湿試験によれば、参考例1のケイ酸カルシウムと比較して、吸湿量は若干小さく、放湿速度は若干大きかった。
実施例1(接合:手すりの取り付け)
参考例1で得られたケイ酸カルシウムボードを内装材として用いた壁面に、木工用ねじ(太さ3.8mm、長さ32mm)を用いて手すりを取り付けたところ、締結に全く問題はなく、十分な接合が得られた。
【0042】
なお、建研式引張り試験機による引抜き強度を測定した。
【0043】
試験体寸法:10mm×300mm×300mm
打込み位置:試験体中央部および端部より10mm
試験結果:木工用ねじ 中央部 47kgf
端部 47kgf
実施例2(カンナけずり)
参考例2で得られたケイ酸カルシウムボード、スラグ石膏ボードおよび石膏ボードの表面を平カンナで削ったところ、カンナ屑は木材の場合と同様であり、粉化されておらず、円滑なカンナがけができた。
実施例3(彫刻加工)
参考例5で得られたケイ酸カルシウムボードの表面をルーターにより格子様模様に彫刻加工した。欠失は全くみられなかった。
【0044】
【発明の効果】
本発明においては、従来のケイ酸カルシウムボード、スラグ石膏ボードおよび石膏ボード等と異なり、上述のような調湿性建材を締結具で接合しうるので、接着剤を用いる必要がなく、施工が容易であり、接着剤成分の高分子モノマーおよび溶剤を放散させることがない。さらに接着剤の劣化によりこれらの内装材のライフが短くなることもない。加えて、本発明の建材は従来のケイ酸カルシウムボード、スラグ石膏ボードおよび石膏ボード等と異なり、カンナ削り、彫刻加工が可能であり、実用的な価値が大きい。
Claims (14)
- 活性化処理された未膨張バーミキュライトをケイ酸カルシウムに配合してなり、かつその配合量が全組成物(固形分)の5〜70質量%である建材組成物を成形してなる建材を締結具で接合してなる建材。
- 締結具が、くぎ、小ねじ、ボルト・ナット、びょう、ステープルもしくはピンである請求項1記載の建材。
- 建材が内装材である請求項1もしくは2記載の建材。
- 建材表面がカンナで削られた請求項1〜3のいずれかに記載の建材。
- 建材表面が彫刻加工された請求項1〜3のいずれかに記載の建材。
- 配合量が、全組成物(固形分)の10〜50質量%である請求項1記載に建材。
- 活性化処理が、水蒸気処理である請求項1記載の建材。
- 成形が抄造成形、押出し成形、プレス成形もしくは鋳込み成形である請求項1記載の建材。
- 活性化処理された未膨張バーミキュライトを、その配合量が全組成物(固形分)の5〜70質量%になるようにケイ酸カルシウムに配合して建材組成物を得、ついでこの建材組成物を成形して得られる建材を、締結具で接合することを特徴とする建材の接合方法。
- 締結具が、くぎ、小ねじ、ボルト・ナット、びょう、ステープルもしくはピンである請求項9記載の建材の接合方法。
- 建材の表面がカンナで削られた請求項9記載の建材の接合方法。
- 建材の表面が彫刻加工された請求項9記載の建材の接合方法。
- 活性化処理された未膨張バーミキュライトをケイ酸カルシウムに配合してなり、かつその配合量が全組成物(固形分)の5〜70質量%である建材組成物を成形してなる建材の表面がカンナで削られてなる建材。
- 活性化処理された未膨張バーミキュライトをケイ酸カルシウムに配合してなり、かつその配合量が全組成物(固形分)の5〜70質量%である建材組成物を成形してなる建材の表面が彫刻加工されてなる建材。
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