JP4069750B2 - 筒内直噴火花点火式内燃機関 - Google Patents

筒内直噴火花点火式内燃機関 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒内噴射火花点火式内燃機関の成層燃焼時の燃焼性を改善する技術に関する。
【0002】
【発明の属する技術分野】
従来の筒内噴射火花点火式内燃機関として、以下のようなものがある(特許文献1参照)。
【0003】
このものでは、燃焼室上面のほぼ中央部のシリンダヘッドに燃料噴射弁が装着され、シリンダヘッドの排気側から燃焼室中央部に向かって点火プラグが設けられた筒内噴射火花点火式内燃機関において、ピストン上面に排気側にオフセットし、排気側底面が深く形成された略円形の成層燃焼用キャビティを有する。これにより点火プラグ近傍側のキャビティで燃料を比較的長期に渡って保持することが可能となり、幅広い運転領域で成層燃焼可能な筒内噴射火花点火式内燃機関を提供できるとしている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−24925号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる構成においては、排気側に噴射された燃料と、吸気側に噴射された燃料がガス流動の影響により拡散程度が異なり、吸気側と排気側とに形成される混合気濃度の違いによって、燃焼安定性を損なったり、NOxの増大またはHCの増大を招く。
【0006】
特に、一般的に燃焼室に生成されるタンブル流(縦方向ガス流動)の場合、吸気側ではシリンダヘッド側へ上昇する流れとなり、排気側ではピストン方向への流れとなるため、排気側の混合気は上昇せずにキャビティ側へ保持されるため、燃料濃度が過濃になるおそれがある。
【0007】
ここで、前記従来例ではスワール流(水平方向ガス流動)を吸気に付与することにより燃料の混合と燃焼安定を図ろうとしているが、タンブル流とスワール流の合成により斜め方向のスワール流が生成される場合、上述のような混合気の不均質が避けられない。また、純粋に水平に旋回するスワール流では、燃料がシリンダ上方へ巻き上がりにくいため、機関負荷が高い場合にキャビティ内が過濃となる可能性が高くなるので好ましくない。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、燃焼室に生じるガス流動の影響を考慮して均質な成層混合気が生成されるようにした筒内直噴火花点火式内燃機関を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このため本発明は、
燃焼室上部に点火プラグと燃料噴射弁を有し、ピストン冠面の略中心付近に略円筒状のキャビティを有する筒内直噴火花点火式内燃機関において、
前記燃料噴射弁がマルチホール噴射弁であり、吸気側を指向する噴孔の径を、排気側を指向する噴孔の径より小さくして、該燃料噴射弁から吸気側へ噴射される燃料噴霧の噴霧速度を、排気側への噴霧速度より遅くすることにより、
該燃料噴射弁から前記キャビティへ向けて、吸気側と排気側とで非対称となるように燃料を噴射し、生成される成層混合気の濃度が吸気側と排気側とで均質となるようにした。
【0010】
このようにすれば、吸気側および排気側での成層混合気濃度が均質となって燃焼が安定して良好な運転性能得られると共に、排気・燃費性能を最良に維持できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態の構成図を示す。
シリンダヘッド1と、シリンダブロック2と、ピストン3とによって燃焼室4が形成され、吸気弁5を介して吸気ポート6と、排気弁7を介して排気ポート8とそれぞれ連通している。吸気弁5と排気弁7は、それぞれ図示しない吸気弁用カムと排気弁用カムとによって開閉駆動される。燃焼室4の上面(シリンダヘッド1)の略中央付近に燃料噴射弁9が設けられ、燃焼室4上部の排気側に点火プラグ10が配置され、スパークギャップ10aが燃焼室4中央に向けて設置されている。前記燃料噴射弁9及び点火プラグ10は、図示しないエンジンコントロールユニットからの信号に基づいて駆動され、燃料噴射および点火が行われる。
【0012】
ピストン3の冠面には略中央付近に、略円筒状のキャビティ3aが形成されている。燃料噴射弁9から噴射された燃料がキャビティ3aを経由して燃焼室4上側へ向かい、形成された成層混合気に点火し、成層燃焼を行う。キャビティ3a側壁は内側に傾いているが、垂直でもよい。
【0013】
ここで、本発明に係る筒内直噴火花点火式内燃機関の制御装置による成層混合気形成過程の概略を説明する。
燃料噴射時期は、燃料噴霧がキャビティ3aに受け止められるよう設定され、燃料噴霧はキャビティ3a底面に衝突する。その後噴霧は、噴霧の貫徹力によってキャビティ3a底面に沿って進行し、燃焼室4上空へと向かう。その後、燃焼室4上空をうずのように旋回しつつ、周囲の空気を巻き込みながら、点火プラグ10近傍のキャビティ3a上空に成層混合気が生成される。
【0014】
一般的に、成層燃焼においても、成層混合気濃度は当量比が1付近でかつ、混合気濃度が均質な場合に燃費、排気性能が最もよくなり、濃度分布に大きなバラツキがあると、燃費、排気等の性能が悪化する。
【0015】
一方、当量比が約1の均質な成層混合気を形成しようとすると、噴射した燃料が充分な時間を経て混合する必要がある。噴射された燃料の混合過程に点火を行おうとする場合、燃料噴射弁の特性に依存にした不均質を有した混合気塊に着火することになり、燃費、排気等の性能悪化を招くことが考えられる。
【0016】
燃料の気化・混合を促進し、かつ燃料噴射弁の特性に依存しない混合気塊を形成しようとした場合、ピストンキャビティで燃料噴霧を一旦受け止め、しかるのちに点火を行うことが最も望ましい。一般的に、飛翔中の燃料は濃度の不均一が大きく、かつガス流動、または筒内雰囲気ガスとの相互作用によりサイクル毎の変動が大きくなるためである。
【0017】
一般的に4弁機関では、特別な吸気制御手段を設けない場合、シリンダ内を縦に旋回するタンブル流が形成される。
一方、筒内にシリンダ水平方向に旋回するスワール流をつけるよう吸気制御手段を設けた場合、燃焼室上方への混合気の拡散が充分に得られないことが予想されるため、別に吸気ポート形状などによって燃焼室をシリンダ軸方向に旋回するタンブル流を与える手段が必要である。
【0018】
図2の(A)に示すように、タンブル流の場合、吸気側ではシリンダヘッド側へ上昇する流れとなり、排気側ではピストン方向への流れとなり、燃焼室内で流れが対称ではない。排気側のピストンキャビティに受け止められた燃料は燃焼室上方へ上昇しづらくなり、キャビティ側へ保持されるため、圧縮上死点付近の点火時期において、混合が不十分となり燃料濃度が過濃になるおそれがある。
【0019】
そこで、第1参考例では、以下に示すように、ピストンキャビティへ向けて噴射される燃料噴霧が、吸気および排気側で非対称となるように噴射することにより、吸気および排気側で非対称となるタンブル流動の作用により、吸気側と排気側で混合作用が異なる場合でも、図2の(B)に示すように、均質な混合気形成を可能とし、燃焼の安定および排気・燃費性能を最良に維持できるようにする。
【0020】
ここで、燃料噴射弁8は、圧縮行程後半における筒内圧力上昇時にも噴霧形状の変化が小さく、指向性の強いものが好ましく、多噴孔のマルチホール噴射弁を用いる。
【0021】
第1実施形態では、燃料噴射弁8として図3のb)に示すように、吸気側を指向する噴孔数と排気側を志向する噴孔数が異なり、排気側の噴孔数が少ないものを使用する。
【0022】
図4に、第1参考例の混合気形成を模式的に示す。
吸気側への燃料噴射量が排気側に対して相対的に多いため、タンブル流動の作用によりピストン3に受け止められた後、燃焼室4上方へ巻き上がる際に吸気側が排気側に比べて大きく混合拡散した場合でも吸気側が希薄になったり、または、排気側が過濃になったりすることがなく、吸気および排気側の濃度が等しく均質な成層混合気を形成できる。
【0023】
このように、吸気側を指向する噴孔の数を排気側に比べて多く設ける構成に代えて、吸気側を指向する噴孔径を排気側に比べて大きくなるよう設定することにより、排気側への燃料噴射量を低減し、混合気の均質化を図ることも可能である。いずれが適しているかは、機関の行程容積に依存する燃料の最小噴射量、また、燃料噴霧の貫徹力や粒径に影響する燃料噴射圧力等の設定に依存するので、それに応じて選択すればよい。
【0024】
次に、本発明の実施形態では、燃料噴射弁8として図3のc)に示すように、噴孔が吸気側で小さくなるよう設定したものを示す。このようにすれば、図5に示すように、吸気側への燃料飛翔速度が遅く、ピストン3冠面に受け止められる時期が遅くなる。その結果、流動の作用により吸気側の混合気の拡散が排気側に比べて急速に行われても、当初より吸気側の混合気形成が時間遅れを持って行われるため、吸気、排気に混合気濃度の違いが生じることを抑制できる。本実施形態の場合、図3のc)では、吸気側の噴孔径を排気側より小さくしたことにより、排気側より噴射量が減少することになるが、前記タンブル流動の作用にも遅れを生じることと相まって噴霧拡散範囲が小さくなるので混合気希薄となることは抑制される。すなわち、この構成は上述した第1参考例の吸気側の噴孔径を排気側より大きくして噴射量を多くする構成とは相反するが、吸気側と排気側の噴孔径の絶対値や比の関係により、本実施形態では拡散の遅れの作用の方が大きく機能して均質化できるのである。
【0025】
しかし、図3のd)に示すように、噴孔径とともに、噴孔数を吸気側と排気側とで異なるよう設定し、吸気、排気ともに同様な燃料噴射量となるよう設定した方が噴霧拡散範囲の偏りが無くなり望ましい。
【0026】
図6は、第2参考例における燃焼室の構成を示す。図1に示した燃焼室構成に対して、ピストン冠面に設けたキャビティ3bの底面が、吸気側が排気側より低くなるよう設定されている。
吸気側のキャビティ3b底面を排気側より低く設定することにより、吸気側の燃料が排気側よりも長い時間キャビティ内で保持され、燃焼室4上側へ上昇する時期を遅らせることができる。そのため、吸気側の燃料の拡散、混合が抑制され、排気側燃料濃度と吸気側燃料濃度を概ね等しくすることができる。
【0027】
吸気側のキャビティ3b底面を排気側より低く設定することにより、吸気側の燃料が排気側よりも長い時間キャビティ内で保持され、燃焼室4上側へ上昇する時期を遅らせることができる。そのため、吸気側の燃料の拡散、混合が抑制され、排気側燃料濃度と吸気側燃料濃度を概ね等しくすることができる。
【0028】
また、本第2参考例では、燃料噴射弁9は、図3の(A)で示した通常の噴射弁を用いるので、該燃料噴射弁9から噴射される円錐中心軸は、シリンダ中心軸と略平行であり、少なくとも1つの噴孔から噴射される燃料噴霧が、前記キャビティ3aを経由して、点火プラグ10方向を指向するよう設定したため、確実に点火プラグ10近傍に混合気を配することができ、燃料噴射量の少ない低負荷時にも確実な点火、燃焼が可能となる。また、点火プラグ10のギャップ位置をキャビティ3aの外周部より内側に設置したため、キャビティ3aを経由した燃料がキャビティ3a上空に形成した均質な混合気に確実に着火可能となる。
【0029】
図7は、図1と同様な燃焼室構成において、燃料噴霧を排気側へ傾かせるように噴射することにより、第2参考例と同様に吸気側でキャビティ内に相対的に長く滞留させて、燃焼室上方への燃料の混合、拡散を遅らせることにより、排気側の混合気濃度と排気側の混合気濃度を概ね同様にすることができる。つまり、ピストンで燃料を受け止める箇所が吸気側のほうがより、燃焼室中央付近となるため、ピストンキャビティ内を広がる距離が吸気側で長くなる。したがって、吸気側の燃料の燃焼室上側へ上昇する時期を排気側に比べて遅らせることができ、混合気濃度の均質化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1参考例にかかる筒内直噴火花点火式内燃機関の燃焼室周辺の構成を示す断面図。
【図2】第1参考例による吸気側と排気側とを非対称とした燃料噴射で生成される混合気状態を、通常噴射とで生成される混合気状態と比較して示した図。
【図3】通常(A)、第1参考例(B)及び本発明の実施形態(C),(D)における燃料噴射方式を示す図。
【図4】第1参考例における燃焼室内の成層混合気生成の様子を示す図。
【図5】本発明の実施形態における燃焼室内の成層混合気生成の様子を示す図。
【図6】第2参考例にかかる筒内直噴火花点火式内燃機関の燃焼室周辺の構成を示す断面図。
【図7】第3参考例にかかる筒内直噴火花点火式内燃機関の燃焼室周辺の構成を示す断面図。
【符号の説明】
1 燃焼室
3 ピストン
3a,3b キャビティ
4 燃焼室
9 燃料噴射弁
10 点火プラグ
10a スパークギャップ

Claims (3)

  1. 燃焼室上部に点火プラグと燃料噴射弁を有し、ピストン冠面の略中心付近に略円筒状のキャビティを有する筒内直噴火花点火式内燃機関において、
    前記燃料噴射弁がマルチホール噴射弁であり、吸気側を指向する噴孔の径を、排気側を指向する噴孔の径より小さくして、該燃料噴射弁から吸気側へ噴射される燃料噴霧の噴霧速度を、排気側への噴霧速度より遅くすることにより、
    該燃料噴射弁から前記キャビティへ向けて、吸気側と排気側とで非対称となるように燃料を噴射し、生成される成層混合気の濃度が吸気側と排気側とで均質となるようにしたことを特徴とする筒内直噴火花点火式内燃機関。
  2. 吸気側を指向する噴孔の数を、排気側を指向する噴孔の数より多くしたことを特徴とする請求項1に記載の筒内直噴火花点火式内燃機関。
  3. 燃焼室にタンブル流を形成する吸気通路を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の筒内直噴火花点火式内燃機関。
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