JP4068717B2 - 給気温度制御方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、天井の高い体育館・ホール・アトリウムなどに用いて好適な給気温度制御方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、体育館・ホール・アトリウムなどの室内大空間では、空気調和装置(空調機)からの給気の吹出口を空調対象層(居住域)の上方に設け、ここからの給気により室内温度を室内温度設定値に合致させるような制御を行っている。
図15はこの種の空調制御システムの概略を示す図である。同図において、1は室内大空間(例えば、体育館)、2は空気調和装置、3は制御用演算装置、4は室温設定手段、5は室内大空間の空調対象層の温度を室内温度として検出する室温検出手段、6(6−1〜6−n)は室内大空間1の空調対象層の上方に斜め下方に向けて設けられた給気の吹出口、7(7−1〜7−m)は室内大空間1の空調対象層からの還気口である。
【0003】
この空調制御システムにおいて、空気調和装置2からの給気SAは、吹出口6より室内大空間1へ供給される。室内大空間1からの還気RAは還気口7から空気調和装置2へ戻される。空気調和装置2は室内大空間1からの還気RAに熱供給を施し給気SAとして室内大空間1へ供給する。この場合、室内大空間1の室内温度Tは室温検出手段5によって検出され、制御用演算装置3へ与えられる。制御用演算装置3には、室温設定手段4から室内温度設定値Tset が与えられており、空気調和装置2の給気熱量制御手段(制御弁など)2−1を介して、T=Tset となるように給気SAの温度(給気温度)Tsaを制御する。
【0004】
ここで、従来においては、室内温度Tが室内温度設定値Tset に達するまでの暖房立ち上げ中は、空気調和装置2の能力をフルに発揮して室内大空間1への給気SAの供給を行っている。すなわち、室内大空間1を暖房する場合、室内温度Tが室内温度設定値Tset に達するまでの暖房立ち上げ中は、空気調和装置2における還気RAへの熱供給量を最大とし、また空気調和装置2からの給気風量を最大(一定)とし、給気温度Tsaを可能な限り高めて室内温度Tの急速アップを図る。
【0005】
例えば、空気調和装置2の最大昇温能力Δtmax を25℃とすると、還気RAの温度(還気温度)Tra(=T)が0℃の時には給気温度Tsaが25℃となり、10℃の時には給気温度Tsaが35℃となり、25℃の時には給気温度Tsaが50℃となる(図16(a)参照)。これにより、暖房立ち上げ開始時の還気温度Traを10℃とすれば、その時の給気温度Tsaは35℃となり(図16(b)のt1点)、室内温度Tすなわち還気温度Traの上昇に伴って給気温度Tsaがアップして行く。そして、室内温度Tが室内温度設定値Tset に達したところで(図16(b)のt2点)、暖房立ち上げが完了したとして、定常制御(T=Tset となるような給気温度Tsaの制御)に入る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方式(一般的な定風量方式)では、暖房立ち上げ中の給気温度Tsaが非常に高くなるため、エネルギーロスが大きく、また暖房立ち上がり時間も期待するほど短くならないという問題があった。
すなわち、空調空気には、「給気温度−室内の雰囲気温度」に比例した浮力が働く。このため、吹出口6からの室内大空間1への給気SAは、吹き出された後に、先ず空間上部へと上昇し蓄積されてしまう。給気温度Tsaが高ければ高いほど浮力が大きいので、室内大空間1の天井に大きな熱だまり(高温の空気層)ができ、屋根や壁等からの熱貫流による熱ロスが供給温度Tsaが高ければ高いほど大きくなる。また、天井から徐々に暖気層が下がって行くため、空調対象層の温度すなわち室内温度Tが室内温度設定値Tset に達するまでにはかなりの時間を要する。また、室内大空間1の全ての階層について暖めていることになるので、上記熱貫流による熱ロスと併せて必要とするエネルギーが過大となり、空調対象層を効率よく暖房することができない。
【0007】
なお、上述した一般的な定風量方式(方式▲1▼)の欠点を是正するために、空気調和装置2からの給気温度Tsaに上限値を設定する方式(給気温度リミット制御方式)がある。この給気温度リミット制御方式(方式▲2▼)では、給気温度Tsaの上限値を例えば40℃とし、給気温度Tsaが40℃を超えるまでは空気調和装置2に最大能力を発揮させ、給気温度Tsaが40℃を超えれば、給気温度Tsaを40℃となるように制御(リミット制御)し、室内温度Tが室内温度設定値Tset に達したところで、暖房立ち上げが完了したと判断し、定常制御に入る(図17参照)。
しかしながら、この方式▲2▼では、方式▲1▼よりも浮力による給気SAの上昇を抑えることができるが、給気温度Tsaの上限値は室内温度Tとは無関係に一定として設定されるため、特に室内温度Tが低い間は浮力が大きく(給気温度Tsaと室内温度Tとの温度差が大きい)、熱ロスが大きくなりがちである。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、空調対象層を効率よく暖房することの可能な給気温度制御方法および装置を提供することにある。
また、空調対象層を効率よく暖房することが可能で、かつ暖房立ち上げ時間をさらに短くすることの可能な給気温度制御方法および装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、第1発明(請求項1に係る発明)および第5発明(請求項5に係る発明)は、室内大空間の空調対象層の温度を室内温度とし、室内温度が室内温度設定値に達するまでの暖房立ち上げ中は、定周期で現在の室内温度に一定の温度差を与えた給気温度設定値を定め、この給気温度設定値と一致するように室内大空間の空調対象層の上方より下方に向けて吹き出す給気の温度を制御するようにしたものである。
この発明によれば、暖房立ち上げ中は、定周期で現在の室内温度Tに一定の温度差Δtを加えた給気温度設定値 saset が定められ、この給気温度設定値 saset と一致するように給気温度Tsaが制御される。すなわち、この発明によれば、暖房立ち上げ中、給気温度Tsaが常にTsa=T+Δt(例えば、Δt=10℃)とされる。
【0010】
第2発明(請求項2に係る発明)および第6発明(請求項6に係る発明)は、室内大空間の空調対象層の温度を室内温度とし、室内温度が室内温度設定値に達するまでの暖房立ち上げ中は、定周期で現在の室内温度にこの室内温度と外気温度との差に応じた温度差を与えた給気温度設定値を定め、この給気温度設定値と一致するように室内大空間の空調対象層の上方より下方に向けて吹き出す給気の温度を制御するようにしたものである。
この発明によれば、暖房立ち上げ中は、定周期で現在の室内温度Tにこの室内温度Tと外気温度Tout との差ΔTに応じた温度差Δαを加えた給気温度設定値 saset が定められ、この給気温度設定値 saset と一致するように給気温度Tsaが制御される。すなわち、この発明によれば、暖房立ち上げ中、給気温度TsaがTsa=T+Δαとされ、ΔαはΔT=T−Toutに応じた値(例えば、ΔT=0℃→Δα=3℃、ΔT=20℃→Δα=10℃)とされる。
【0011】
第3発明(請求項3に係る発明)および第7発明(請求項7に係る発明)は、第2および第6発明において、室内温度と外気温度との差に応じた温度差に上限値および下限値を定めたものである。
この発明によれば、室内温度Tと外気温度Tout との差ΔTに応じた温度差Δαに上限値Δαmax と下限値Δαmin (例えば、ΔT=0℃→Δαmin =3℃、ΔT=20℃→Δαmax =10℃)とが定められる。
第4発明(請求項4に係る発明)および第8発明(請求項8に係る発明)は、第1〜第3発明および第5〜第7発明において、室内温度が室内温度設定値に達するまでの暖房立ち上げ中は、給気風量を暖房立ち上げ後の給気風量よりも増大するようにしたものである。
この発明によれば、暖房立ち上げ中は給気風量が増大し、室内への供給熱量が増大し、暖房が立ち上がるまでの時間が早められる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態に基づき詳細に説明する。
〔実施の形態1:第1発明,第5発明〕
図1はこの発明の一実施の形態(実施の形態1)を示す空調制御システムの概略を示す図である。同図において、図15と同一符号は同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0013】
この実施の形態1では、給気温度差設定手段8を設け、この給気温度差設定手段8を介して一定の温度差Δt=10℃を制御用演算装置3−1へ与えるようにしている。また、給気温度検知手段9を設け、この給気温度検知手段9を用いて室内大空間1への給気SAの給気温度Tsaを検出し、この給気温度Tsaを制御用演算装置3−1へ与えるようにしている。
【0014】
図2は制御用演算装置3−1での本実施の形態特有の処理動作を示すフローチャートである。制御用演算装置3−1は、給気温度差設定手段8からの一定の温度差Δt=10℃、室温設定手段4からの室内温度設定値Tset 、室温検知手段5からの室内温度Tを取り込む(ステップ201、202、203)。
【0015】
制御用演算装置3−1は、室内温度Tと室内温度設定値Tset とを比較し(ステップ204)、T<Tset であれば暖房立ち上げ中と判断し、ステップ205へ進む。ステップ205において、制御用演算装置3−1は、その時の室内温度Tに給気温度設定手段8からの一定の温度差Δt=10℃を加算し、給気温度設定値Tsaset を求める(Tsaset =T+Δt:図3(a)参照)。
【0016】
そして、制御用演算装置3−1は、給気温度検知手段9からの給気温度Tsaを取り込み(ステップ206)、ステップ205で求めた給気温度設定値Tsaset と比較する(ステップ207)。給気温度Tsaが給気温度設定値Tsaset よりも小さければ(Tsa<Tsaset )、空気調和装置2の給気熱量制御手段2−1へ指令を送り、還気RAに対する供給熱量を増大側に制御する(ステップ208)。給気温度Tsaが給気温度設定値Tsaset よりも大きければ(Tsa>Tsaset )、空気調和装置2の給気熱量制御手段2−1へ指令を送り、還気RAに対する供給熱量を減少側に制御する(ステップ209)。給気温度Tsaと給気温度設定値Tsaset とが等しければ還気RAに対する供給熱量はそのままの状態を維持する(ステップ210)。
【0017】
制御用演算装置3−1は、暖房立ち上げ中、ステップ203〜210の動作を定周期で繰り返す。これにより、暖房立ち上げ中は、給気温度Tsaが給気温度設定値Tsaset と一致するように制御される(図3(b)参照)。そして、室内温度Tが室内温度設定値Tset に達したところで(図3(b)に示すt2点)、暖房立ち上げが完了したと判断して、定常制御に入る(ステップ204,211)。
【0018】
ここで、暖房立ち上げ中の給気温度Tsaに着目すると、給気温度Tsaは室内温度Tに対して常に10℃だけ高くなるように制御される。すなわち、図15に示した従来の空調制御システムの方式▲1▼では、暖房立ち上げ中は空気調和装置2の能力をフルに発揮させることによって結果的に25℃の大温度差になっていた。これに対して、本実施の形態1では、給気温度Tsaを積極的に制御することによって10℃の小温度差とされる。
【0019】
ここで、空調空気には「給気温度−室内の雰囲気温度」に比例した浮力が働き、この浮力は給気温度Tsaと室内温度Tとの差が小さいほど少ない。したがって、この実施の形態1では、暖房が立ち上げられるまでの全領域(図3に示すt1〜t2点)において、室内大空間1への給気SAに対する浮力が従来のシステムよりも大幅に抑制されるものとなる。これにより、室内大空間1の天井に生じる熱だまりが少なくなり、屋根や壁等からの熱貫流による熱ロスが軽減される。また、暖気層が天井からではなく途中階層から下がって行くような格好となるため、給気温度Tsaと室内温度Tとの差が小さくても、室内温度Tが室内温度設定値Tset に達するまでの時間が長引くことはない。また、途中階層から暖めているような格好になるので、上記熱貫流による熱ロスの軽減と併せて必要とするエネルギーが少なくなり、空調対象層を効率よく暖房することができる。
【0020】
なお、この実施の形態1では、一定の温度差Δtを10℃としたが、この温度差Δtは10℃に限られるものではなく、10℃以下を目安として物件の特性により最適値を設定する。
また、この実施の形態1では、室内温度Tを室内大空間1に配置した室温検知手段5で検出するようにしたが、室内大空間1における空調対象層の各部の温度の平均を室内温度Tとして検出するようにしてもよく、還気温度Traを室内温度Tとして検出するようにしてもよい。すなわち本発明において還気温度も室内温度の定義に含まれ、空間の構成、制御対象の位置や設定、給気位置などにより、空間各部の温度や還気の温度を室内温度として制御に使用してよい。
また、この実施の形態1では、従来のシステムに給気温度差設定手段8と処理内容を一部変更した制御用演算装置3−1を付加するだけで済むため、軽微な設備投資で、また軽微な既設改修で、大きな省エネルギー効果を得ることができる。
【0021】
〔実施の形態2:第2,第3,第6,第7発明〕
図4はこのこの発明の他の実施の形態(実施の形態2)を示す空調制御システムの概略を示す図である。同図において、図1と同一符号は同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0022】
この実施の形態2では、演算条件設定手段10を設け、この演算条件設定手段10を介して温度差Δαの上限値Δαmax =10℃および下限値Δαmin =3℃ならびに室内温度Tと外気温度Tout との差ΔTの上限値ΔTH =20℃および下限値ΔTL =0℃を制御用演算装置3−2へ与えるようにしている。また、外気温度検知手段11を設け、この外気温度検知手段11を用いて室内大空間1の周囲の外気温度Tout を検出し、この外気温度Tout を制御用演算装置3−2へ与えるようにしている。
【0023】
図5は制御用演算装置3−2での本実施の形態特有の処理動作を示すフローチャートである。制御用演算装置3−2は、演算条件設定手段10からのΔαmax =10℃,Δαmin =3℃,ΔTH =20℃,ΔTL =0℃、室温設定手段4からの室内温度設定値Tset 、室温検知手段5からの室内温度T、外気温度検知手段11からの外気温度Tout を取り込む(ステップ501、502、503)。
【0024】
制御用演算装置3−2は、室内温度Tと室内温度設定値Tset とを比較し(ステップ504)、T<Tset であれば暖房立ち上げ中と判断し、ステップ505へ進む。ステップ505において、制御用演算装置3−2は、その時の室内温度Tに室内温度Tと外気温度Tout との差ΔTに応ずる温度差Δαを加算し、給気温度設定値Tsaset を求める(Tsaset =T+Δα)。
【0025】
ここで、室内温度Tに加算する温度差Δαは、室内温度Tと外気温度Tout との差ΔTがΔTL =0℃以下であれば、Δαmin =3℃とする。また、室内温度Tと外気温度Tout との差ΔTがΔTH =20℃以上であれば、Δαmax =10℃とする。また、室内温度Tと外気温度Tout との差ΔTがΔTL からΔTH の範囲内にあれば、ΔTに比例した値とする。これにより、給気温度設定値Tsaset は、図6(a)に示すように、ΔTが0℃以下の場合にはT+3℃に固定され、ΔTが20℃以上の場合にはT+10℃に固定され、ΔTがΔTL =0℃からΔTH =20℃の範囲内にある場合にはΔTに比例した温度差Δαを室内温度Tに加算した値とされる。
【0026】
そして、制御用演算装置3−2は、給気温度検知手段9からの給気温度Tsaを取り込み(ステップ506)、ステップ505で求めた給気温度設定値Tsaset と比較する(ステップ507)。給気温度Tsaが給気温度設定値Tsaset よりも小さければ(Tsa<Tsaset )、空気調和装置2の給気熱量制御手段2−1へ指令を送り、還気RAに対する供給熱量を増大側に制御する(ステップ508)。給気温度Tsaが給気温度設定値Tsaset よりも大きければ(Tsa>Tsaset )、空気調和装置2の給気熱量制御手段2−1へ指令を送り、還気RAに対する供給熱量を減少側に制御する(ステップ509)。給気温度Tsaと給気温度設定値Tsaset とが等しければ還気RAに対する供給熱量はそのままの状態を維持する(ステップ510)。
【0027】
制御用演算装置3−2は、暖房立ち上げ中、ステップ503〜510の動作を定周期で繰り返す。これにより、暖房立ち上げ中は、給気温度Tsaが給気温度設定値Tsaset と一致するように制御される(図6(b)参照)。そして、室内温度Tが室内温度設定値Tset に達したところで(図6(b)に示すt2点)、暖房立ち上げが完了したと判断てし、定常制御に入る(ステップ504,511)。
【0028】
ここで、暖房立ち上げ中の給気温度Tsaに着目すると、室内温度Tとの差が小温度差でありながら、室内温度Tと外気温度Tout との差が小さい暖房開始直後は給気温度Tsaが低く、室内温度Tが上昇するにつれて給気温度Tsaが高く制御される。すなわち、図1に示した空調制御システム(実施の形態1)では、暖房開始直後からすぐに室内温度Tとの差を10℃としている。このため、浮力は小さいとはいいながらも給気SAの一部が室内大空間1の天井まで上昇し、熱だまりとなり、屋根や壁等からの熱貫流による熱ロスが生じる。これに対して、実施の形態2では、室内温度Tと外気温度Tout との差が拡がるにつれて給気温度Tsaを高めて行くようにすることによって、暖房開始直後からすぐに高温の空気を吹き込まないようにして、室内大空間1の天井にできる熱だまりを少なくし、熱貫流による熱ロスを軽減することができる。
【0029】
なお、この実施の形態2では、ΔTが0℃以下の場合にTsaset をT+3℃に固定し、ΔTが20℃以上の場合にTsaset をT+10℃に固定するようにしたが、これらの値を目安として物件の特性により最適値を設定する。
また、この実施の形態2においても、空間の構成、制御対象の位置や設定、給気位置などにより、空間各部の温度や還気の温度を室内温度Tとして制御に使用してよい。
また、この実施の形態2は、従来のシステムに演算条件設定手段10と外気温度検知手段11と処理内容を一部変更した制御用演算装置3−2を付加するだけで済むため、軽微な設備投資で、また軽微な既設改修で、大きな省エネルギー効果を得ることができる。
【0030】
〔実施の形態3:第4,第8発明〕
実施の形態1(図1)では、室内温度Tと給気温度Tsaとの差が小温度差一定とされるために、暖房立ち上がりまでに要するエネルギー量は少なくなる。しかし、この場合、暖房立ち上がり時間は長くなると考えられる。
【0031】
そこで、実施の形態3では、図7に示すように、給気管路12−1と還気管路12−2との間に電動ダンパ13−1,13−2を介してバイパス送風機14を設ける。そして、暖房立ち上げ中は、電動ダンパ13−1,13−2をオンとし、バイパス送風機14を運転し、給気風量を暖房立ち上げ後の給気風量よりも増大させる。
【0032】
すなわち、図8に図2と対応するフローチャートを示すように、ステップ204と205との間にステップ212を設け、暖房立ち上げ中は、電動ダンパ13−1,13−2をオンとし、バイパス送風機14を運転し、給気風量を増加させる。そして、ステップ204とステップ213との間にステップ213を設け、暖房立ち上げが完了すれば、電動ダンパ13−1,13−2をオフとし、バイパス送風機14の運転を停止し、給気風量の増加を停止させたうえ、定常制御に入る。
【0033】
〔実施の形態4:第4,第8発明〕
実施の形態2(図4)では、室内温度Tと給気温度Tsaとの差が小温度差可変とされるために、暖房立ち上がりまでに要するエネルギー量は少なくなる。しかし、この場合、暖房立ち上がり時間は長くなると考えられる。
そこで、実施の形態4では、図9に示すように、給気管路12−1と還気管路12−2との間に電動ダンパ13−1,13−2を介してバイパス送風機14を設ける。そして、暖房立ち上げ中は、電動ダンパ13−1,13−2をオンとし、バイパス送風機14を運転し、給気風量を暖房立ち上げ後の給気風量よりも増大させる。
【0034】
すなわち、図10に図5と対応するフローチャートを示すように、ステップ504と505との間にステップ512を設け、暖房立ち上げ中は、電動ダンパ13−1,13−2をオンとし、バイパス送風機14を運転し、給気風量を増加させる。そして、ステップ504とステップ513との間にステップ513を設け、暖房立ち上げが完了すれば、電動ダンパ13−1,13−2をオフとし、バイパス送風機14の運転を停止し、給気風量の増加を停止させたうえ、定常制御に入る。
【0035】
この実施の形態3,4によれば、暖房立ち上げ中は給気風量が増大するので、室内大空間1への供給熱量が増大し、暖房が立ち上がるまでの時間が早められる。この場合、吹出口6が室内大空間1の空調対象層の上方に斜め下方に向けて設けられているので、吹出風速の増大によって、給気SAに対する浮力が抑えられるという効果もある。
【0036】
なお、実施の形態3,4では、給気管路12−1と還気管路12−2との間にバイパス送風機14を設けるようにしたが、給気管路12−1中にブースターファンを設けるようにしてもよく、また空気調和装置2としてインバータ制御方式の空気調和装置を用いるようにしてもよく、給気風量の増大方法としては各種のものが適用可能である。既設の設備を改修する場合には、バイパス送風機やブースターファンを設ける方式を採用することによって、現在の空気調和装置2をそのまま使用することができ、改修費用を低減することができる。
【0037】
〔体育館における小温度差空調の解析〕
実施の形態3の空調制御システム(図7)を実際の体育館に適用した場合の解析結果を以下に示す。
【0038】
図11および図12に基本計算条件を示す。図12の「5.計算パターン・結果の概略」において、ケース「01」は従来の空調制御システム(図15の方式▲1▼)、ケース「02」は本願の空調制御システム(実施の形態3)である。本願の空調制御システムではΔTが従来の1/2、風量が2倍とされている。従来の空調制御システムでは立ち上がり時間が81分であったが、本願の空調制御システムでは54分となる。また、立ち上がりに要したエネルギーも、従来の空調制御システムの69%でよく、大きな省エネが効果が得られる。
【0039】
図13に従来の空調制御システムでの暖房立ち上がり時の給気温度Tsaおよび室内温度Tならびに各階層の温度の変化を示す。図14に本願の空調制御システムでの暖房立ち上がり時の給気温度Tsaおよび室内温度Tならびに各階層の温度の変化を示す。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように本発明によれば、暖房立ち上げ中は、定周期で現在の室内温度Tに一定の温度差Δtを加えた給気温度設定値 saset が定められ、この給気温度設定値 saset と一致するように給気温度Tsaが制御されるものとなり、すなわち給気温度Tsaが常にTsa=T+Δtとされるものとなり、Δtを小温度差(例えば、10℃)とすることによって、暖房が立ち上げられるまでの全領域において、室内大空間への給気に対する浮力を大幅に抑制することが可能となり、熱貫流による熱ロスの軽減と併せて必要とするエネルギーを少なくして、室内大空間の空調対象層を効率よく暖房することができるようになる。
また、本発明によれば、暖房立ち上げ中は、定周期で現在の室内温度Tにこの室内温度Tと外気温度Tout との差ΔTに応じた温度差Δαを加えた給気温度設定値 saset が定められ、この給気温度設定値 saset と一致するように給気温度Tsaが制御されるものとなり、すなわち給気温度TsaがTsa=T+Δαとされ、ΔαがΔT=T−Tout に応じた値とされるものとなり、例えばΔT=0℃→Δα=3℃、ΔT=20℃→Δα=10℃とすることにより、暖房開始直後からすぐに高温の空気を吹き込まないようにして、熱だまりを少なくし、熱貫流による熱ロスを軽減し、室内大空間の空調対象層をさらに効率よく暖房することができるようになる。
また、本発明によれば、室内温度が室内温度設定値に達するまでの暖房立ち上げ中は、給気風量が暖房立ち上げ後の給気風量よりも増大されるものとなり、暖房の立ち上げ時間を短くすることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態(実施の形態1)を示す空調制御システムの概略を示す図である。
【図2】 この空調制御システムにおける制御用演算装置での特有の処理動作を示すフローチャートである。
【図3】 この空調制御システムにおける室内温度Tに対する給気温度設定値Tsaset の変化状況および暖房立ち上がり時の室内温度T,給気温度Tsaの変化状況を示す図である。
【図4】 本発明の他の実施の形態(実施の形態2)を示す空調制御システムの概略を示す図である。
【図5】 この空調制御システムにおける制御用演算装置での特有の処理動作を示すフローチャートである。
【図6】 この空調制御システムにおける室内温度Tと外気温度Tout との温度差ΔTに対する給気温度設定値Tsaset の変化状況および暖房立ち上がり時の室内温度T,給気温度Tsaの変化状況を示す図である。
【図7】 実施の形態3を示す空調制御システムの概略を示す図である。
【図8】 この空調制御システムにおける制御用演算装置での特有の処理動作を示すフローチャートである。
【図9】 実施の形態4を示す空調制御システムの概略を示す図である。
【図10】 この空調制御システムにおける制御用演算装置での特有の処理動作を示すフローチャートである。
【図11】 実施の形態3の空調制御システムを実際の体育館に適用した場合の解析結果を説明するための基本計算条件(建築物、空調仕様、計算条件)を示す図である。
【図12】 実施の形態3の空調制御システムを実際の体育館に適用した場合の解析結果を説明するための基本計算条件(気象条件、計算パターン・結果の概略)を示す図である。
【図13】 従来の空調制御システムでの暖房立ち上がり時の給気温度Tsaおよび室内温度Tならびに各階層の温度の変化を示す図である。
【図14】 本願(実施の形態3)の空調制御システムでの暖房立ち上がり時の給気温度Tsaおよび室内温度Tならびに各階層の温度の変化を示す図である。
【図15】 従来の空調制御システムの概略を示す図である。
【図16】 この空調制御システムにおける定風量方式(方式▲1▼)での室内温度Tに対する給気温度Tsaの変化状況および暖房立ち上がり時の室内温度T,給気温度Tsaの変化状況を示す図である。
【図17】 この空調制御システムにおける給気温度リミット制御方式(方式▲2▼)での室内温度Tに対する給気温度Tsaの変化状況および暖房立ち上がり時の室内温度T,給気温度Tsaの変化状況を示す図である。
【符号の説明】
1…室内大空間、2…空気調和装置、2−1…供給熱量制御手段、3−1,3−2…制御用演算装置、4…室温設定手段、5…室温検知手段、6(6−1〜6−n)…吹出口、7(7−1〜7−m)…還気口、8…給気温度差設定手段、9…給気温度検知手段、10…演算条件設定手段、11…外気温度検知手段、12−1…給気管路、12−2…還気管路、13−1,13−2…電動ダンパ、14…バイパス送風機。

Claims (8)

  1. 室内大空間の空調対象層の上方より下方に向けて吹き出す給気の温度を制御する給気温度制御方法において、
    前記空調対象層の温度を室内温度とし、この室内温度が室内温度設定値に達するまでの暖房立ち上げ中は、定周期で現在の室内温度に一定の温度差を与えた給気温度設定値を定め、この給気温度設定値と一致するように前記給気の温度を制御する
    ようにしたことを特徴とする給気温度制御方法。
  2. 室内大空間の空調対象層の上方より下方に向けて吹き出す給気の温度を制御する給気温度制御方法において、
    前記空調対象層の温度を室内温度とし、この室内温度が室内温度設定値に達するまでの暖房立ち上げ中は、定周期で現在の室内温度にこの室内温度と外気温度との差に応じた温度差を与えた給気温度設定値を定め、この給気温度設定値と一致するように前記給気の温度を制御するようにした
    ことを特徴とする給気温度制御方法。
  3. 請求項2において、室内温度と外気温度との差に応じた温度差に上限値および下限値が定められていることを特徴とする給気温度制御方法。
  4. 請求項1,2又は3において、室内温度が室内温度設定値に達するまでの暖房立ち上げ中は、給気風量を暖房立ち上げ後の給気風量よりも増大するようにしたことを特徴とする給気温度制御方法。
  5. 室内大空間の空調対象層の上方より下方に向けて吹き出す給気の温度を制御する給気温度制御装置において、
    前記空調対象層の温度を室内温度とし、この室内温度が室内温度設定値に達するまでの間を暖房立ち上げ中と判断する判断手段と、
    この判断手段によって暖房立ち上げ中と判断されている場合、定周期で現在の室内温度に一定の温度差を与えた給気温度設定値を定め、この給気温度設定値と一致するように前記給気の温度を制御する給気温度制御手段と
    を備えたことを特徴とする給気温度制御装置。
  6. 室内大空間の空調対象層の上方より下方に向けて吹き出す給気の温度を制御する給気温度制御装置において、
    前記空調対象層の温度を室内温度とし、この室内温度が室内温度設定値に達するまでの間を暖房立ち上げ中と判断する判断手段と、
    この判断手段によって暖房立ち上げ中と判断されている場合、定周期で現在の室内温度にこの室内温度と外気温度との差に応じた温度差を与えた給気温度設定値を定め、この給気温度設定値と一致するように前記給気の温度を制御する給気温度制御手段と
    を備えたことを特徴とする給気温度制御装置。
  7. 請求項6において、室内温度と外気温度との差に応じた温度差に上限値および下限値が定められていることを特徴とする給気温度制御装置。
  8. 請求項5,6又は7において、前記判断手段によって暖房立ち上げ中と判断されている場合、給気風量を暖房立ち上げ後の給気風量よりも増大する給気風量増大手段を備えたことを特徴とする給気温度制御装置。
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