JP4067662B2 - バルブ休止機構を有する内燃機関の弁装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はバルブ休止機構を有する内燃機関の弁装置に関し、特に、カムとポペットバルブのステムとの間に、ロストモーション機構を有するバルブリフタを介在させた上記弁装置に関する。
【0002】
【従来技術】
1つのシリンダに複数の吸気弁もしくは排気弁を設けた内燃機関において、少くとも1つの吸(排)気弁は、これにバルブ休止機構を設けることにより、カムの作動に無関係に閉位置に保持できるようにし、内燃機関の中・高速回転時あるいは中・高負荷運転時のような中・大吸気量運転域においてはすべての吸(排)気弁を開閉動作させ、内燃機関の低速回転時あるいは低負荷運転時のような小吸気量運転域においては、前記バルブ休止機構を有する弁を休止状態にして閉じたままの状態に保持することが従来知られている。
【0003】
上記バルブ休止機構を有する弁装置として、特開平7−259520号公報に記載されたようなものがある。この弁装置は、カムとポペットバルブ(弁)のステム(弁棒)との間にバルブリフタ(タペット)を介在させ、該バルブリフタをスプリング(圧縮ばね)により常時前記カムと係合する方向に付勢している。そして、このバルブリフタ内に、直径方向に摺動自在なプランジャ(連結部材)が設けられており、このプランジャはその一端に当接する圧縮ばねによって一方向に付勢されるとともに、他端を同軸線上に配置されたピストンによって受けられている。さらに、上記プランジャには、前記バルブステムが出入できる孔が設けられている。
【0004】
前記ピストンが後退位置に在る時には、前記孔が前記ステムに整合し、バルブリフタがカムにより上下に動かされても、前記ステムが前記孔に出入りするだけで、バルブリフタの動きはバルブには伝達されない。すなわち、前記プランジャ、ピストンおよび圧縮ばねから成るロストモーション機構により、バルブはカムの作動に無関係に閉位置に保持される。前記ピストンは油圧によって駆動され、該ピストンが前記後退位置から突出すると、プランジャは前記圧縮ばねに抗して摺動し、前記孔が前記ステムから外れ、ステムはその上端がプランジャの下面に当接した状態で該プランジャに係止され、従ってバルブはバルブリフタを介しカムにより駆動される。
【0005】
上記のようにバルブリフタ内のロストモーション機構を油圧で駆動するようにした弁装置においては、図7に示すように、バルブリフタ01を摺動自在に案内するバルブリフタホール02の内周面に、上記油圧を導くための周溝03を形成するのが普通である。
【0006】
図7において、04はプランジャ、05はこれを付勢する圧縮ばねで、油圧がバルブリフタ01に設けた油孔06を経て直接プランジャ04の端面に作用するようになっている。バルブリフタ01はバルブリフタスプリング07により上向きに付勢されているが、カム08により上方から押えられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このようなバルブリフタ01のステム09上方位置への組付けは、カムシャフトの組付け前、すなわち上方にカム08が存在しない状態で行われ、バルブリフタホール02に上方からバルブリフタ01を挿入し、下端をシリンダヘッドに支承されて上方へ自由に伸長したスプリング07の上端に載置して支持する。このバルブリフタ01は、次いでカムシャフトを組付ける時に、そのカム08により上方から押され、スプリング07を圧縮して図7の位置に納まる。
【0008】
このようにバルブリフタ01は、当初、自由に伸長したスプリング07上に載置されるので、この時、図8に示すように、バルブリフタ01の下端01aは前記周溝03の下端03aより上方に位置する。従って次にこのバルブリフタ01をカム08により押し込む場合、図9に示すように、バルブリフタ01が僅かに傾斜することにより、該バルブリフタの一方の下端01aが周溝03内に入り込み、その下端部03aに噛み込んで、組立て作業をスムーズに行えないことがあった。
【0009】
特に、カムシャフトの組付け方向がバルブステムの延長方向と異なる場合にこのような事象が起り易く、組付時には治具等でリフタの傾きを矯正しながら行なわなければならず、組付工程が繁雑となる。
【0010】
【課題を解決するための手段および作用、効果】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明においては、カムとポペットバルブのステムとの間に、ロストモーション機構を有するバルブリフタを介在させ、該バルブリフタをスプリングにより常時カムと係合する方向に付勢するとともに、該バルブリフタを摺動自在に案内するバルブリフタホールの内周面に前記ロストモーション機構を駆動する油圧を導く周溝を形成した、バルブ休止機構を有する内燃機関の弁装置において、前記バルブリフタ、スプリングおよび周溝を、前記スプリングが自由に伸長した状態において前記バルブリフタの下端が前記周溝の下端より下側に位置するように形成する。
【0011】
本発明によれば、バルブリフタの組み付け当初において、自由に伸長したスプリング上に支持したバルブリフタの下端が、周溝の下端より下側に位置するので、次いでカムシャフトの組み付けに際してカムによりバルブリフタを押し下げる時、バルブリフタが周溝に引っかかることなく、バルブリフタおよびカムシャフトをスムーズに組み付けることができる。
【0012】
上記作用、効果は、カムシャフトの組付け方向が、前記バルブステムの延長方向と異なる請求項2の弁装置において、特に有利に、かつ顕著に発揮される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図1ないし図6に示す本発明の一実施形態について説明する。
図1は内燃機関のシリンダヘッド1の一部を示す縦断面図で、このシリンダヘッド1に本発明による弁装置2が装着されている。
【0014】
図示の実施形態においては、弁装置2は吸気通路3を開閉する吸気弁で、ポペットバルブ4から成っている。ポペットバルブ4のステム5はシリンダヘッド1に固着されたバルブガイド6を摺動自在に通過して上方へ延びている。そしてステム5の上方部に固定されたスプリングリテーナ7と、シリンダヘッド1に形成されたスプリング支持面8との間にバルブスプリング9が縮設され、ポペットバルブ4は閉位置を占めるよう該バルブスプリング9によって上方へ付勢されている。ステム5の上方にカム10がカムシャフト10aに取付けられて臨んでおり、このカム10とステム5との間にバルブリフタ11が介在している。
バルブリフタ11はシリンダヘッド1に設けられたバルブリフタホール12に、バルブステム5の軸線方向に摺動可能に嵌挿されている。シリンダヘッド1の前記スプリング支持面8とバルブリフタ11との間にリフタスプリング13が縮設され、バルブリフタ11はこのリフタスプリング13によって上方へ付勢され、かつカム10によって上方から押さえられている。
【0015】
図2は図1のバルブリフタ11の近傍の拡大図である。バルブリフタ11は有底円筒状のリフタ本体11aと、該本体11a内に設けられたロストモーション機構14とから成り、ロストモーション機構14は本体11a内に嵌挿された円筒状のプランジャ保持体15と、該プランジャ保持体15内に直径方向に摺動可能に保持されたプランジャ16とから成っている。図3および図4はプランジャ16を組み込んだプランジャ保持体15をそれぞれ上面側および底面側から見た斜視図、図5はプランジャ16の斜視図である。
【0016】
プランジャ保持体15の底面にはその中心寄りの部分に左右一対のリブ17が突設されており、該リブ17とリフタ本体11aの周壁部分11bとの間において前記リフタスプリング13がプランジャ保持体15の底面に係合している。プランジャ保持体15の上面には中心部分にリング状の突起15aが設けられており、該リング状突起内に調整部片18が嵌め込まれている。そしてこの調整部片18の上面に、リフタ本体11aの頂壁裏面に設けられた突起部11cが係合している。このようにして、リフタ本体11aはプランジャ保持体15および調整部片18を介してリフタスプリング13により上方へ付勢されている。なお、プランジャ保持体15の周面には全周にわたって環状溝19が形成されている。
【0017】
さらに、プランジャ保持体15内には直径方向に延びるプランジャ孔20が形成されている。該プランジャ孔20の一端(図2において右端)は開口21(図3、図4)となっており、他端は閉塞されている。そしてこのプランジャ孔20に前記プランジャ16が摺動自在に嵌挿されている。
プランジャ16の前記開口21に臨む側の端部には、平坦な端面16aから軸線方向に切り込まれた上下方向に延びるスリット部22が形成され、他方の端部には、端面から円筒状に凹入したスプリング収容部23が形成されている。そしてスプリング収容部23の底壁部23aとプランジャ孔20の底壁部20aとの間にリターンスプリング24が介装され、一方、開口21側においては、プランジャ孔20を上下方向に貫いてプランジャ保持体15に設けられたストッパピン25が前記スリット部22内を通っている。従ってリターンスプリング24によって開口21側へ押し出されたプランジャ16は、ストッパピン25がスリット部22の底部22aに当接することによりその位置に位置決めされる。この位置は、プランジャ16を上下方向に貫通するステム通過穴26が下方のバルブステム5と一直線上に整合するロストモーション位置である。すなわち、カム10によりバルブリフタ11に上下運動が与えられても、ステム5がステム通過穴26内に出入するだけであって、バルブリフタ11の上下運動はステム5すなわちポペットバルブ4には伝えられない。
【0018】
前記バルブリフタホール12の内周面に周溝27が凹設され、該周溝27はシリンダヘッド1内に形成された油通路28に連通している。図示していない油圧制御装置を通じて油圧が油通路28に導入され、もしくは油通路28から排除される。周溝27はまた、リフタ本体11aの周壁部分11bに設けられた通油孔29およびプランジャ保持体15の環状溝19を介して前記開口21に通じている。従って油通路28に油圧が導入されると、プランジャ16の開口21側の端面に作用する該油圧により、プランジャ16はリターンスプリング24を圧縮しながら後退し、ステム通過穴26がステム5から外れるが、プランジャ16にはステム通過穴26の下端に隣接して開口21側へ延びる平坦な当接面30が形成されており、この当接面30にステム5の上端がバルブスプリング9の力により当接、係合し、バルブリフタ11とステム5とが連結状態となって、バルブリフタ11の上下動がそのままポペットバルブ4に伝達される。油通路28内の油圧が排除されると、プランジャ16はリターンスプリング24により再び前記ロストモーション位置に復帰する。
【0019】
前記弁装置2をシリンダヘッド1に組み付けるに際しては、先ずポペットバルブ4をバルブスプリング9により支持して所定位置に組付けた後、バルブスプリング9の外側においてリフタスプリング13をスプリング支持面8上に載置して自立させる。次いでシリンダヘッド1のバルブリフタホール12に上方からバルブリフタ11を嵌入させ、上記の自由に伸長した状態にあるリフタスプリング13上にバルブリフタ11を載置する。以上はカムシャフト10aの組付け前、すなわち上方にカム10が存在しない状態で行われる。
【0020】
図6はこの時の弁装置2の状態を示す。リフタスプリング13はほぼ完全に伸び切った状態にあるので、バルブリフタ11はバルブリフタホール12から上方へ突出している。しかし、本発明により、このような状態においてもなお、リフタ本体11aの周壁部分11bの下端Aは周溝27の下端Bより下側に位置し、周壁部分11bの下部全周が高さCにわたってバルブリフタホール12の内周面に沿っている。
【0021】
次いで、カムシャフト10aを組み付けるが、該カムシャフトは上方から下向きに組み付けられるので、この時カム10がバルブリフタ11の上端面に当接してこれを押し下げ、図1、2に示すような状態となる。バルブリフタ11は、周壁部分11bの下端部分が当初から周溝27の下側でバルブリフタホール12の内周面に沿っているので、周壁部分11bの下端Aが周溝27にくい込んだり、周溝27の下端Bに引っかかったりすることなく、極めてスムーズに所定位置まで押し込まれる。前記重なり高さCは、周溝27、周壁部分11bおよびリフタスプリング13の寸法を適宜選定することにより、容易に設定できる。
【0022】
本実施形態においては、図1に示すように、バルブステム5の軸線xは垂直軸線Xに対して傾斜している。しかしてカムシャフト10aの組み付けは、同図に矢印aで示すように、垂直方向に行われるので、バルブリフタ11がカム10で押し下げられる時バルブリフタ11にこれを傾けるような力が作用する。しかしこのような場合でも、前記のように当初から重なり高さCが存在するので、何等の支障も生じない、
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による弁装置を備えた内燃機関シリンダヘッドの部分的縦断面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】プランジャを組み込んだプランジャ保持体を上面側から見た斜視図である。
【図4】同プランジャ保持体を底面側から見た斜視図である。
【図5】プランジャの斜視図である。
【図6】バルブリフタ組み付け時の状態を示す図2と同様な図である。
【図7】従来の弁装置を示す断面図である。
【図8】同弁装置におけるバルブリフタ組み付け時の状態を示す図である。
【図9】組み付け作業中に傾斜したバルブリフタを示す図8と同様な図である。
【符号の説明】
1…シリンダヘッド、2…弁装置、3…吸気通路、4…ポペットバルブ、5…ステム、6…バルブガイド、7…スプリングリテーナ、8…スプリング支持面、9…バルブスプリング、10…カム、11…バルブリフタ、12…バルブリフタホール、13…リフタスプリング、14…ロストモーション機構、15…プランジャ保持体、17…リブ、18…調整部片、19…環状溝、20…プランジャ孔、21…開口、22…スリット部、23…スプリング収容部、24…リターンスプリング、25…ストッパピン、26…ステム通過穴、27…周溝、28…油通路、29…通油孔、30…当接面。
Claims (2)
- カムとポペットバルブのステムとの間に、ロストモーション機構を有するバルブリフタを介在させ、該バルブリフタをスプリングにより常時前記カムと係合する方向に付勢するとともに、該バルブリフタを摺動自在に案内するバルブリフタホールの内周面に前記ロストモーション機構を駆動する油圧を導く周溝を形成した、バルブ休止機構を有する内燃機関の弁装置において、前記バルブリフタ、スプリングおよび周溝を、前記スプリングが自由に伸長した状態において前記バルブリフタの下端が前記周溝の下端より下側に位置するように形成したことを特徴とする、バルブ休止機構を有する内燃機関の弁装置。
- カムシャフトの組み付け方向が、前記バルブステムの延長方向と異なっている請求項1の弁装置。
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