JP4067411B2 - 気泡入り石鹸の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無数の気泡を含有する溶融石鹸から気泡入り石鹸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
気泡入り石鹸の製造方法に関する従来技術としては、例えば、下記特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
この技術は、溶融石鹸にエアレーション処理によりほぼ目標の比重となるように無数の気泡を含有させた後、該エアレーション処理よりも低いせん断ひずみエネルギーを与える条件で香料成分を混合し、さらに所定形状を付与して固化させるものである。
【0004】
ところで、この技術では、エアレーション処理によってほぼ目標比重を有する溶融石鹸を得ているため、気泡入り石鹸の製造効率を高めるためには、装置に負かが掛かりすぎ、所望の比重の気泡入り石鹸を効率よく製造するには限界があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−43699号公報
【0006】
従って、本発明の目的は、所望の比重の気泡入り石鹸を装置に負荷を掛けずに効率よく製造することができる気泡入り石鹸の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、エアレーション処理によって固化させる溶融石鹸の比重よりも比重が低くなるように気泡を含有させた溶融石鹸を調製し、該溶融石鹸と気泡を含有しない別の溶融石鹸とを目標比重となるように混合することで、装置に負荷を掛けずに細かい気泡が均一に分散した目標比重を有する溶融石鹸を効率よく生成し得ることを知見した。
【0008】
本発明は、前記知見に基づきなされたものであり、無数の気泡を含有する溶融石鹸を固化させて気泡入り石鹸を製造する方法において、固化させる前記溶融石鹸を、該溶融石鹸の比重G0より低比重で気泡を含有する第1の溶融石鹸と該第1の溶融石鹸より高比重の第2の溶融石鹸と混合して調製することを特徴とする気泡入り石鹸の製造方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、本発明の気泡入り石鹸の製造方法の一実施形態における製造工程の一部を模式的に示したものである。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の製造方法は、先ず、第1原料タンク1におい第1の溶融石鹸を調製するとともに、第2原料タンク2で第2の溶融石鹸を調製する。そして、気泡を含まない第1の溶融石鹸をポンプP1で発泡装置(エアレーション装置)3に供給するとともに、発泡装置3に制御弁4を介して起泡用の気体(例えば、空気や窒素等の不活性ガス)をボンベ5から供給し、固化させる溶融石鹸の比重G0より低比重で気泡を含有する第1の溶融石鹸を調製する。次いで、制御弁6を介して気泡を含有する第1の溶融石鹸を静止型混合装置7に供給するとともに、第2原料タンク2において気泡を含んだ第1の溶融石鹸よりも高比重に調製された第2の溶融石鹸をポンプP2で静止型混合装置7に供給し、第1、第2の溶融石鹸を静止型混合装置7で混合する。そして、所望の比重G0の溶融石鹸を成形装置8に供給して固化し、気泡入り石鹸を製造する。
【0012】
固化させる前記溶融石鹸の比重G0は、0.50〜0.80、特に0.55〜0.75であることが好ましい。該比重が0.50より小さいと、固化後の気泡入り石鹸における有効成分が少なくなる。該比重が0.80を超えると、固化後の気泡入り石鹸における軽量性、泡立ち、溶け易さ等といった気泡含有による効果が大きい性能が低下する。
【0013】
前記気泡を含有する第1の溶融石鹸の比重G1は、0.25〜0.45、特に0.28〜0.38であることが好ましい。該比重が低すぎると均一で微細な泡が発生できず、大きな泡が現れる場合があり、高すぎるとエアレーション装置の負荷が増大してしまう場合がある。なお、第1の溶融石鹸の気泡を含有させる前の比重は、泡噛みなどの気泡の混入や、比重の高い液体や固形分の含有などにより、0.85〜1.25、特に0.90〜1.20であることが好ましい。
【0014】
前記固化させる溶融石鹸の比重G0と前記気泡を含有する第1の溶融石鹸の比重G1との比(G0/G1)は、1.1〜3.2、特に1.3〜2.9であることが好ましい。該比が小さすぎると第2の溶融石鹸の混入量が少なくなり、本発明を用いるまでもなくエアレーション装置のみで目的とする所望の比重の溶融石鹸が得られる。該比が大きすぎると、第2の溶融石鹸の混入量が多くなり、均一に泡を分散させることが困難になる。
【0015】
前記第1の溶融石鹸の気泡含有率は、第1の溶融石鹸をその配合組成に応じて前記所定の比重とする上で、55〜75vol%、特に、62〜72vol%とすることが好ましい。
【0016】
前記第1の溶融石鹸は、気泡を含有させる前の粘度が20〜5000mPa・sであることが好ましく、さらに200〜5000mPa・sであることが好ましい。特に、溶融石鹸の粘度の高いほど気液分離が抑えられて長期間高い気泡含有率(低比重)が維持されるが、エアレーション装置の負荷が増大して石鹸生成能が低下し、泡径が大きくなることから、粘度の高い溶融石鹸ほど本発明は有効である。
【0017】
前記第1の溶融石鹸の配合成分としては、脂肪酸石鹸、非イオン系界面活性剤、無機塩、ポリオール類、非石鹸系のアニオン界面活性剤、遊離脂肪酸、水等の石鹸成分が挙げられる。なお、第1の溶融石鹸には、該石鹸成分に加え、エアレーション処理による悪影響が及ばない割合において、香料、抗菌剤、顔料、染料、油剤、植物エキス等の添加成分を適宜配合することもできる。
【0018】
前記第1の溶融石鹸への気泡の導入には、従来からこの種の気泡入り石鹸の製造方法に用いられているエアレーション処理を採用することができる。該エアレーション処理には、公知の発泡装置(エアレーション装置)を用いることができる。該エアレーション装置としては、例えば、(株)荏原製作所製「フォーミングマシン(ユーロミックス)」、「マイルダー」、浅田鉄工製「TORNADO」、(株)愛工舎製作所製「ターボホイップ」、田中食品機械(株)製「ホイップマスター」、MONDOMIX社製「モンドミキサー」、エム・テクニック(株)製「クレアミックス」等が挙げられる。
【0019】
前記エアレーション処理において溶融石鹸の起泡に用いられる気体には、窒素等の不活性ガスの他、空気等の従来からこの種の起泡入り石鹸の製造に用いられているものから適宜選択して用いることができる。
【0020】
前記第1の溶融石鹸の温度は、エアレーション処理時に発熱が大きくなって品質が劣化することを防止する上で、60〜90℃、特に、70〜80℃とすることが好ましい。
【0021】
前記第2の溶融石鹸の比重G2は、0.85〜1.25、特に0.90〜1.20であることが好ましい。
【0022】
前記第2の溶融石鹸の配合成分は、前記第1の溶融石鹸と同じ配合成分とすることもでき、異なる配合とすることもできる。特に、前記添加成分のうち、エアレーションによる発熱や高せん断力の付与によって品質が低下するおそれがある添加成分については、前記第2の溶融石鹸の前記石鹸成分に、該添加成分を適宜の割合で添加して異なる配合とすることが好ましい。なお、該添加成分は、前記第1の溶融石鹸のエアレーション処理後において、該第1の溶融石鹸への第2の溶融石鹸の混合中又は混合後に該第2の溶融石鹸とは別に(独立して)添加することもできる。
【0023】
溶融石鹸は、におい劣化などの品質低下を防ぐために、その固化温度よりも最小限度、高い温度にて扱うことが一般的である。しかしながら、エアレーション処理では溶融石鹸の温度が容易に上昇してしまうため、通常はエアレーション装置後に熱交換器を設置して、除冷を行う必要がある。本発明においては、前記第2の溶融石鹸の温度を、前記第1の溶融石鹸の気泡含有温度よりも低温にすることにより、エアレーション処理における発熱を混合にて除冷することが可能である。
このような観点から、前記第2の溶融石鹸の温度は、前記第1の溶融石鹸の気泡含有後の温度よりも、3〜20℃低温に設定しておくことが好ましく、特に6〜15℃低温にすることがより好ましい。温度差が無い場合や小さすぎる場合は、除冷が不充分であり、エアレーション前の品質低下の生じ難い温度に近づけるには、熱交換器が必要となる。温度差が大きすぎると、第2の溶融石鹸の温度が下がりすぎて、第2の溶融石鹸の粘度が上昇し、均一な混合が困難となる。
前記第2の溶融石鹸は、前記第1の溶融石鹸の温度及び上述温度差を考慮して、60〜85℃、特に、65〜75℃の範囲で設定される。
前記第1の溶融石鹸に対するエアレーション時の温度変化が僅かな場合や、温度上昇による品質低下がほとんど無い場合は、前記第2の溶融石鹸の温度は、前記第1の溶融石鹸の気泡含有温度と同等又はそれより高温でもよい。
【0024】
前記第1の溶融石鹸への前記第2の溶融石鹸の混合処理は、前述のように静止型混合処理装置を用い、前記エアレーション処理で与えられるせん断歪みエネルギーよりも少ないせん断歪みエネルギー下において行うことが好ましい。該静止型混合装置としては、ノリタケカンパニーリミテド製「スタティックミキサー」、住友重機械工業(株)製「スルザー型ミキサー」等が挙げられる。
【0025】
このようにして得られた固化される溶融石鹸は、前記範囲の比重G0を有し、その気泡含有率が20〜50vol%、好ましくは25〜45vol%、気泡の泡径が10〜200μm、好ましくは10〜100μmであり、該溶融石鹸の溶融石鹸の固化速度も速く、得られる石鹸も軽量で泡立ち、溶け易さが良好なものとなる。また、該溶融石鹸は、気液分離が起こりにくい。
【0026】
このようにして所望の比重G0に調製された溶融石鹸は、成形工程において固化されて所定の形状が付与され、さらに包装工程において包装されて製造が完了される。これらの成形工程及び包装工程における処理方法は、従来からこの種の気泡入り石鹸の製造方法に用いられている処理方法を選択して用いることができる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の気泡入り石鹸の製造方法によれば、所望の比重の気泡入り石鹸を装置に負荷を掛けずに効率よく製造することができる。
【0028】
本発明の気泡入り石鹸の製造方法は、上述の実施形態のように、固化させる溶融石鹸の比重よりも低比重の第1の溶融石鹸を調製し、続けて該第1の溶融石鹸より高比重の第2の溶融石鹸を該第1の溶融石鹸に加えて混合することが好ましいが、逆に該第2の溶融石鹸に該第1の溶融石鹸を加えて混合することもできる。また、混合処理は、連続処理により行うこともできるし、バッチ処理により行うこともできる。
【0029】
本発明は、気泡を含有する溶融石鹸を原料とする気泡入り石鹸の製造のように、加熱溶融された状態にあり且つ気泡を含有する圧縮性流体を原料とし、これを冷却固化させて製品とする物品の製造に特に好適であるが、例えば、アイスクリーム、チョコレート、ホイップクリーム等の食品の製造にも同様に適用することができる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
下記実施例及び比較例のようにして、溶融石鹸を調製するとともに、該溶融石鹸を固化させて気泡入り石鹸を作製した。そして、得られた溶融石鹸の比重及び泡径を下記のようにして調べるとともに、当該溶融石鹸を固化させた気泡入り石鹸の比重、泡径及び起泡含有率を下記のように調べた。
【0031】
〔実施例〕
<溶融石鹸の調製>
表1に示す配合にて調整した第1の溶融石鹸を用い、表2に示す条件でエアレーション処理(エアレーション装置:浅田鉄工製「TORNADE」)を行って、気泡を含有する所定の比重G1を有する第1の溶融石鹸を調製した。そして、得られた第1の溶融石鹸に、表1に示す配合にて調整した第2の溶融石鹸(比重G2)を静止型混合処理装置(ノリタケカンパニーリミテド製「スタティックミキサー」)を用いて混合し、目標比重とほぼ等しい所望の比重G0の固化させる溶融石鹸を得た。なお、第1、第2の溶融石鹸とも、気泡含有前の粘度は700mPa・sであった。
【0032】
【表1】
Figure 0004067411
【0033】
【表2】
Figure 0004067411
【0034】
<溶融石鹸の固化>
得られた溶融石鹸を70℃に調整し、2つに開閉可能で5℃に冷却された金型に圧力0.07MPaとなるように注入した。そして、5分後に金型を開いて固化した気泡入り石鹸を取り出した。得られた気泡入り石鹸は、容量120cm3、重量90g、比重0.75、気泡含有率25vol%であった。
【0035】
〔比較例〕
表1の比較例に示す配合にて調整した第1の溶融石鹸を用い、第2の溶融石鹸を混合せず、表2に示す条件で第1の溶融石鹸を起泡させた後前記実施例と同様にして固化させて気泡入り石鹸を得た。比較例配合は、実施例の第1、第2の溶融石鹸混合後の配合と同等となるようにしている。溶融石鹸の気泡含有前の粘度は700mPa・sであった。得られた気泡入り石鹸は、容量120cm3、重量90g、比重0.75、気泡含有率25vol%であった。
【0036】
〔溶融石鹸の比重の測定〕
溶融石鹸を容量100cm3の比重測定用樹脂カップ(JIS K 3362合成洗剤試験方法に記載された、内寸直径40mm、内寸高さ79.6mmのカップ)に上面を僅かにオーバーフローするところまで注入し、オーバーフロー分をステンレス板(長さ約170mm、幅15mm、厚み0.5mm)で掻き取った。そして、溶融石鹸100cm3の重量ML(g)を測定し、下記式より比重GLを得た。
L=ML/100
【0037】
〔溶融石鹸の泡径の測定〕
溶融石鹸を、石鹸の測定時温度+10℃程度に加熱した観察用スライドグラス上に滴下させ、その直後にカバーグラスを被せ、250gのおもりを載せて5℃まで冷却固化させて試料を作製した。作製した試料を光学的に拡大し、その透過光像をCCDカメラで撮影した後、撮影画像からランダムに選択した約300個(200〜400個)の泡について、それぞれの直径を測定し、算術平均することで泡径とした。標準偏差についても、前記泡径測定に用いた数値より算出した。
【0038】
〔気泡入り石鹸(固化後)の比重の測定〕
固化した気泡入り石鹸の重量Ms(g)を測定し、既知である金型容量V(cm3)から下記の式により比重Gsを得た。
Gs=Ms/V
また、気泡含有率A(vol%)は、下記式により算出した。
A=(1−Gs)×100
【0039】
〔気泡入り石鹸(固化後)の泡径の測定〕
−196℃で急冷した気泡入り石鹸を−150℃で切断し、−150℃真空化にて切断面を電子顕微鏡観察した。電子顕微鏡としてJEOL HIGHTEC H CO.LTD社製、クライオSEM JSM−5410/CRUを用いた。加速電圧は2kv、検出信号として二次電子像を用いた。得られた500倍の顕微鏡写真から気泡の径を測定し、約100個の泡について、それぞれ直径を測定し、算術平均することで泡径とした。標準偏差についても、前記泡径測定に用いた数値より算出した。
【0040】
表2に示すように、実施例による製造方法では、比較例の製造方法に比べて所望の比重G0の溶融石鹸を得るまでの電力を抑えることができ、装置に負荷を掛けずに効率よく製造することができる上、当該溶融石鹸の生産能力である気泡溶融石鹸の生成能は、約2.5倍と大幅に向上できた。しかも、得られる溶融石鹸中の気泡の泡径も細かく、均一であることが判った。また、実施例により得られた気泡入り石鹸は、比較例により得られた石鹸に比べて、泡径が小さく、標準偏差が小さなものであり、泡立ちや溶け易さ等の品質についても同等のものであった。また、香料については、第1の溶融石鹸から除いたことによって、比較例より香りの劣化を最小限に抑えることができ、香りの性能の高い石鹸が得られた。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、所望の比重の気泡入り石鹸を装置に負荷を掛けずに効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の一実施形態の一部の工程を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 第1原料タンク
2 第2原料タンク
3 発泡装置
4 制御弁
5 ボンベ
6 制御弁
7 静止型混合装置
8 成形装置
P1、P2 ポンプ

Claims (6)

  1. 無数の気泡を含有する溶融石鹸を固化させて気泡入り石鹸を製造する方法において、
    固化させる前記溶融石鹸を、該溶融石鹸の比重G0より低比重で気泡を含有する第1の溶融石鹸と該第1の溶融石鹸より高比重の第2の溶融石鹸とを混合して調製することを特徴とする気泡入り石鹸の製造方法。
  2. 前記溶融石鹸の比重G0と前記気泡を含有する第1の溶融石鹸の比重G1との比(G0/G1)が1.1〜3.2である請求項1記載の気泡入り石鹸の製造方法。
  3. 前記溶融石鹸の比重G0が0.50〜0.80であり、前記気泡を含有する第1の溶融石鹸の比重G1が0.25〜0.45であり、前記第2の溶融石鹸の比重G2が0.85〜1.25である請求項1又は2記載の気泡入り石鹸の製造方法。
  4. 前記第2の溶融石鹸の温度を、前記第1の溶融石鹸の気泡含有後温度よりも、低温に設定しておく請求項1〜3の何れかに記載の気泡入り石鹸の製造方法。
  5. 前記第2の溶融石鹸に所定の添加成分を含ませておく請求項1〜4の何れかに記載の気泡入り石鹸の製造方法。
  6. 前記溶融石鹸の気泡含有率が20〜50vol%であり、前記第1の溶融石鹸の気泡含有率が55〜75vol%である請求項1〜5の何れかに記載の気泡入り石鹸の製造方法。
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