JP4067282B2 - 形状記憶合金アクチュエータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、形状記憶合金を駆動源とする形状記憶合金アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の形状記憶合金アクチュエータは、一般に、外部から力が操作端に作用したとき、その外力が操作端を通じて形状記憶合金に直接作用する構成となっていた。
【0003】
また、従来の形状記憶合金アクチュエータは、多くの場合、操作端を一つの方向に移動させる際は、操作端を形状記憶合金の形状回復力により駆動する一方、操作端を反対方向に移動させる際は、バイアスばねの復元力により操作端を駆動するようになっていたが、操作端の前記一つの方向の移動に関してのみ見ると、形状記憶合金の形状回復力だけで操作端を駆動していた。
【0004】
また、従来は、操作端が2つの安定位置を持つ双安定型の形状記憶合金アクチュエータは存在しなかった。また、操作端が1つの安定位置を持ち、かつ操作端の位置が瞬間的に反転する単安定型の形状記憶合金アクチュエータも存在しなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
大きな予変形を与えられた形状記憶合金の加熱時の形状回復力は非常に大きく、それ自身の材料強度を上回る。例えば1%以上の変形を与え、ひずみを拘束した状態の形状記憶合金の形状回復力は、疲労強度や弾性限界を上回ることもある。しかるに、従来の形状記憶合金アクチュエータでは、一般に、前述のように外部から力が操作端に作用したとき、その外力が操作端を通じて形状記憶合金に直接作用する構成となっていたので、操作端が作動中に拘束されたり、不意に予定外の強い外力が操作端に作用されたりすると、過剰な応力が形状記憶合金に加わり、性能が低下したり、破壊されてしまう大きな原因となっていた。
【0006】
また、操作端を互いに反対方向に駆動する2つの形状記憶合金を備えた差動型といわれる形状記憶合金アクチュエータでは、冷却を十分に行わないと2つの形状記憶合金が互いの強い形状回復力で引き合う状態になり、形状記憶合金に致命的なダメージを与えることがあった。
【0007】
また、従来の形状記憶合金アクチュエータでは、前述のように少なくとも操作端の一方向の運動は、形状記憶合金の形状回復力のみで行われるようになっていたので、動作速度が遅いとともに、高価な形状記憶合金を比較的大量に要し、コストが高くなり、かつ使用エネルギー量も多くなるという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたもので、本発明の1つの目的は、外部から力が操作端に作用しても、その外力が操作端を通じて形状記憶合金に直接作用することのない形状記憶合金アクチュエータを提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、動作速度の速い形状記憶合金アクチュエータを提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、操作端が2つの安定位置を持つ双安定型の形状記憶合金アクチュエータを提供することを目的とする。
【0011】
本発明の他の目的は、操作端が1つの安定位置を持ち、かつ操作端の位置が瞬間的に反転する単安定型の形状記憶合金アクチュエータを提供することを目的とする。
【0012】
本発明の他の目的は、差動型形状記憶合金アクチュエータにおいて、両方の形状記憶合金が同時に形状回復力を発生している状態になっても、形状記憶合金が劣化したり、破壊されることのない形状記憶合金アクチュエータを提供することを目的とする。
【0013】
本発明の他の目的は、以下の説明から明らかになろう。
【0014】
【課題を解決するための手段】
第一の本発明による形状記憶合金アクチュエータは、
アクチュエータ外部に対しアクチュエータの機械的出力が出される操作端が2つの安定位置を有する双安定型形状記憶合金アクチュエータであって、
第一の操作端部材安定位置と第二の操作端部材安定位置との間を回動可能であり、前記操作端を構成する操作端部材と、この第一の操作端部材とともにリンク機構を構成しており、第一の中間部材安定位置と第二の中間部材安定位置との間を回動可能(または直線的に移動可能)な中間部材と、形状回復力を発生したとき、前記中間部材を前記第一の中間部材安定位置に向かって動かすように前記中間部材に連係された第一の形状記憶合金と、形状回復力を発生したとき、前記中間部材を前記第二の中間部材安定位置に向かって動かすように前記中間部材に連係された第二の形状記憶合金と、前記操作端部材と前記中間部材との間に介装されており、前記操作端部材の所定箇所と前記中間部材の所定箇所とを互いに近づけるようにまたは遠ざけるように付勢するばねからなる反転付勢手段とを有してなり、
前記操作端部材が前記第一の操作端部材安定位置、前記中間部材が前記第一の中間部材安定位置にそれぞれある状態から前記中間部材が前記第二の中間部材安定位置に向かって移動されて行くときは、前記中間部材が、前記操作端部材の回動軸と前記操作端部材に対する前記反転付勢手段の力の作用点とを結ぶ直線と前記反転付勢手段の力の作用線とが一直線上に重なることとなる位置である中立位置より前記第一の中間部材安定位置側にある間は、前記操作端部材は前記反転付勢手段により前記第一の操作端部材安定位置に向かって付勢されているが、前記中間部材が前記中立位置を越えて前記第二の中間部材安定位置側に移動すると、前記操作端部材は前記反転付勢手段により逆に前記第二の操作端部材安定位置に向かって付勢されるようになる一方、前記操作端部材が前記第二の操作端部材安定位置、前記中間部材が前記第二の中間部材安定位置にそれぞれある状態から前記中間部材が前記第一の中間部材安定位置に向かって移動されて行くときは、前記中間部材が前記中立位置より前記第二の中間部材安定位置側にある間は、前記操作端部材は前記反転付勢手段により前記第二の操作端部材安定位置に向かって付勢されているが、前記中間部材が前記中立位置を越えて前記第一の中間部材安定位置側に移動すると、前記操作端部材は前記反転付勢手段により逆に前記第一の操作端部材安定位置に向かって付勢されるようになるように構成されているものである。
【0015】
この第一の本発明の双安定型形状記憶合金アクチュエータにおいては、操作端部材が第二の操作端部材安定位置、中間部材が第二の中間部材安定位置にあるとき、第一の形状記憶合金が所定温度範囲まで加熱されると、第一の形状記憶合金の形状回復力によって中間部材が第二の中間部材安定位置から第一の中間部材安定位置に向かって移動される。しかし、中間部材が中立位置に達するまでは、反転付勢手段が操作端部材を第二の操作端部材安定位置に向かって付勢しているので、操作端部材は第二の操作端部材安定位置側に止まったままになっている。
【0016】
ところが、中間部材が前記中立位置を越えて第一の中間部材安定位置側に移動されると、反転付勢手段が操作端部材を逆方向に付勢するようになるので、操作端部材が急に第一の操作端部材安定位置に向かって動き出し、第一の操作端部材安定位置に達すると、その位置に停止する。その一方、中間部材は、反転付勢手段の付勢力により第一の中間部材安定位置に停止する。
【0017】
また、操作端部材が第一の操作端部材安定位置、中間部材が第一の中間部材安定位置にあるとき、第二の形状記憶合金が所定温度範囲まで加熱されると、第二の形状記憶合金の形状回復力によって中間部材が第一の中間部材安定位置から第二の中間部材安定位置に向かって移動される。しかし、中間部材が中立位置に達するまでは、反転付勢手段が操作端部材を第一の操作端部材安定位置に向かって付勢しているので、操作端部材は第一の操作端部材安定位置側に止まったままになっている。
【0018】
ところが、中間部材が前記中立位置を越えて第二の中間部材安定位置側に移動されると、反転付勢手段が操作端部材を逆方向に付勢するようになるので、操作端部材が急に第二の操作端部材安定位置に向かって動き出し、第二の操作端部材安定位置に達すると、その位置に停止する。その一方、中間部材は、反転付勢手段の付勢力により第二の安定位置に停止する。
【0019】
この第一の本発明の双安定型形状記憶合金アクチュエータにおいては、操作端部材に第一および第二の2つの安定位置を持たせ、第一または第二の形状記憶合金加熱することにより、その安定位置を反転できる。
【0020】
第二の本発明による形状記憶合金アクチュエータは、
アクチュエータ外部に対しアクチュエータの機械的出力が出される操作端が1つの安定位置を有する単安定型形状記憶合金アクチュエータであって、
操作端部材安定位置と操作端部材一時反転位置との間を回動可能であり、前記操作端を構成する操作端部材と、この第一の操作端部材とともにリンク機構を構成しており、中間部材安定位置と中間部材一時反転位置との間を回動可能(または直線的に移動可能)な中間部材と、形状回復力を発生したとき、前記中間部材を前記中間部材一時反転位置に向かって動かすように前記中間部材に連係された形状記憶合金と、前記中間部材を前記中間部材安定位置に向かって付勢する中間部材復帰付勢手段と、前記操作端部材と前記中間部材との間に介装されており、前記操作端部材の所定箇所と前記中間部材の所定箇所とを互いに近づけるようにまたは遠ざけるように付勢するばねからなる反転付勢手段とを有してなり、
前記操作端部材が前記操作端部材安定位置、前記中間部材が前記中間部材安定位置にそれぞれある状態から前記中間部材が前記中間部材一時反転位置に向かって移動されて行くときは、前記中間部材が、前記操作端部材の回動軸と前記操作端部材に対する前記反転付勢手段の力の作用点とを結ぶ直線と前記反転付勢手段の力の作用線とが一直線上に重なることとなる位置である中立位置より前記中間部材安定位置側にある間は、前記操作端部材は前記反転付勢手段により前記操作端部材安定位置に向かって付勢されているが、前記中間部材が前記中立位置を越えて前記中間部材一時反転位置側に移動すると、前記操作端部材は前記反転付勢手段により逆に前記操作端部材一時反転位置に向かって付勢されるようになる一方、前記操作端部材が前記操作端部材一時反転位置、前記中間部材が前記中間部材一時反転位置にそれぞれある状態から前記中間部材が前記中間部材安定位置に向かって移動されて行くときは、前記中間部材が前記中立位置より前記中間部材一時反転位置側にある間は、前記操作端部材は前記反転付勢手段により前記操作端部材一時反転位置に向かって付勢されているが、前記中間部材が前記中立位置を越えて前記中間部材安定位置側に移動すると、前記操作端部材は前記反転付勢手段により逆に前記操作端部材安定位置に向かって付勢されるようになるように構成されているものである。
【0021】
この第二の本発明の単安定型形状記憶合金アクチュエータにおいては、操作端部材が操作端部材安定位置、中間部材が中間部材安定位置にあるとき、形状記憶合金が所定温度範囲まで加熱されると、形状記憶合金の形状回復力によって中間部材が中間部材安定位置から中間部材一時反転位置に向かって移動される。しかし、中間部材が中立位置に達するまでは、反転付勢手段が操作端部材を操作端部材安定位置に向かって付勢しているので、操作端部材は操作端部材安定位置側に止まったままになっている。
【0022】
ところが、中間部材が前記中立位置を越えて中間部材一時反転位置側に移動されると、反転付勢手段が操作端部材を逆方向に付勢するようになるので、操作端部材が急に操作端部材一時反転位置に向かって動き出し、操作端部材一時反転位置に達すると、その位置に停止する。その一方、中間部材は、反転付勢手段の付勢力により中間部材一時反転位置に停止する。
【0023】
また、操作端部材が一時反転位置、中間部材が中間部材一時反転位置にそれぞれ達した後、形状記憶合金に対する加熱が停止され、形状記憶合金が冷却すると、中間部材復帰付勢手段により中間部材が反転付勢手段に抗して中間部材安定位置へ向かって移動されて行き、この中間部材が中立位置を越えて中間部材安定位置側に移動されると、反転付勢手段が操作端部材を逆に操作端部材安定位置に向かって付勢するようになるので、操作端部材が反転付勢手段の力により急に動き出し、操作端部材安定位置に復帰する。なお、中間部材も、中間部材復帰付勢手段および反転付勢手段の力により中間部材安定位置に復帰する。
【0024】
このようにして、第二の本発明の単安定型形状記憶合金アクチュエータでは、形状記憶合金を加熱することにより、中間部材が中立位置を越えると、安定位置にある操作端部材が急に一時反転位置へ反転し、かつ形状記憶合金が冷却すると、操作端部材が元の安定位置へ戻る。
【0025】
また、前記第一および第二の本発明の形状記憶合金アクチュエータにおいては、外部から操作端部材に力が作用しても、その外力が操作端部材を通じて形状記憶合金に直接作用することがない。したがって、外部から操作端部材に作用する力により過大な応力が形状記憶合金に加わり、性能が低下したり、破壊されてしまうことがないので、耐久性を向上することができる。
【0026】
また、操作端部材の動作は直接的には反転付勢手段の力によってなされるので、動作速度を速くすることができ、かつ形状記憶合金の使用量を減らし、コストを低減するとともに、使用エネルギー量の低減し、ひいては省資源を図ることができる。
【0027】
なお、本発明における形状記憶合金としては、一般的な形状記憶合金も使用することができるが、特に大きな二方向性形状記憶効果を持つ形状記憶合金を使用すると、一層優れた効果を得ることができる。
【0028】
ここで、二方向性形状記憶効果とは、低温で形状回復と反対方向の変形を与える際に力が不要であるか、または極めて少なくてよい現象である。見た目には、形状記憶合金が低温時に変形した形状と高温時に形状回復した形状との2つの形状を覚えているような挙動を示す。従来の二方向性形状記憶合金においては、引張ひずみで最大1%前後の小さくて不安定な二方向性形状記憶効果しか得られなかったが、本発明者が前に特願2000−204927号において提案した方法によれば、巨大な二方向性形状記憶効果を持つ形状記憶合金を得ることができる。例えば、ワイヤ状で、引張方向に記憶形状を持つ形状記憶合金とした場合は、加熱すると記憶している長さに収縮して硬くなる一方、冷却時には、負荷の無い状態でも、ちょうど筋肉が弛緩するように柔らかくなり、自分で伸びて低温時の元の長さと形に戻る。したがって、加熱と冷却だけで、外部からバイアス力を作用させることなく、伸び縮みする。
【0029】
このような形状記憶合金を、例えば、第一の本発明の双安定型形状記憶合金アクチュエータに使用した場合は、形状回復力を発生して収縮した形状記憶合金によって中間部材が動かされるとき、収縮をしていない方の形状記憶合金は抵抗力を発生することなくゆるむ方向に動き、操作部端部材の運動を容易にする。この結果、応答性などの性能や寿命が大幅に向上し、僅かな形状記憶合金で動く、双安定式の差動型アクチュエータを実用化できる。
【0030】
なお、完全な2方向性を示せないまでも、形状回復可能なひずみ領域内で低温での変形に力がほとんど必要ない形状記憶合金でも、同様の効果を得ることができる(このような形状記憶合金も実質的に二方向性形状記憶合金として考えてよい)、このような形状記憶合金もやはり本発明者が前に提案した特願2000−204927号に開示された方法により得ることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0032】
【実施例】
図1〜12は本発明による形状記憶合金アクチュエータの第一実施例を示しており、双安定型アクチュエータを構成した例である。これらの図のうち図1は後で詳しく説明するように操作端部材7および中間部材3がそれぞれの第二の安定位置にある状態を示している。図2は、図3(図2のIII−III線における断面図)と対応して参照することにより、装置の構成が容易に理解されるようにするために、通常の使用状態ではあり得ない状態であるが、操作端部材7および中間部材3を強制的に中立位置に位置に固定した状態を示している。
【0033】
アクチュエータ本体1には中間部材回動軸2が立設されており、この中間部材回動軸2には直線形のレバー状の中間部材3の一端部が該中間部材回動軸2を中心として回動可能に支持されている。前記アクチュエータ本体1にはピン状の中間部材ストッパ4および5が互いに間隔を置いて固定されており、中間部材3はその回動範囲を図8のように中間部材ストッパ4に当接する第一の中間部材安定位置と、図1および4のように中間部材ストッパ5に当接する第二の中間部材安定位置との間に制限されている。前記アクチュエータ本体1には操作端部材回動軸6が立設されており、この操作端部材回動軸6には直線形のレバー状の操作端部材7の一端部が該操作端部材回動軸6を中心として回動可能に支持されている。前記アクチュエータ本体1にはピン状の操作端部材ストッパ8および9が互いに間隔を置いて固定されており、操作端部材7はその回動範囲を図8のようにストッパ8に当接する第一の操作端部材安定位置と、図1および4のように操作端部材ストッパ9に当接する第二の操作端部材安定位置との間に制限されている。
【0034】
ここで、前記中間部材回動軸2と操作端部材回動軸6とを結ぶ直線E(図1参照)に関して、中間部材ストッパ4と5および操作端部材ストッパ8と9は対称的に配置されており、これに伴い直線Eに関して前記第一の操作端部材安定位置と第二の操作端部材安定位置および第一の中間部材安定位置と第二の中間部材安定位置とはそれぞれ対称的な位置となっている。ただし、本発明においては必ずしもこのような対称的な配置とする必要はない。
【0035】
前記中間部材3の他端部にはピン10が立設されており、操作端部材7の中間部にはピン11が立設されている。前記ピン10とピン11との間には引張コイルばねからなる反転付勢手段12が介装されており、この反転付勢手段12はピン10とピン11とを互いに近接する方向に付勢している。なお、前記中間部材回動軸2を中心にしたピン10(中間部材3に対する反転付勢手段12の力の作用点)の回転軌跡が操作端部材回動軸6上を通過するように各部が配置されている。図6および10は、ピン10が操作端部材回動軸6上に位置した状態を示している。
【0036】
前記中間部材3には、中間部材回動軸2と同軸に横断面円形の巻き掛け部13が一体的に設けられている。この巻き掛け部13の外周の1箇所には、1本のワイヤ状の形状記憶合金14の中間部が固定されており(15は巻き掛け部13に対する形状記憶合金14の固定部を示している)、この形状記憶合金14の両端部はそれぞれピン16,17を介してアクチュエータ本体1に固定されている。これにより、形状記憶合金14の前記固定部15付近は巻き掛け部13に巻き掛けられた状態となっている。この形状記憶合金14は物理的には1本のワイヤ状をなしているが、本実施例では、この形状記憶合金14の固定部15とピン16との間の部分が第一の形状記憶合金14aを構成する一方、前記固定部15とピン17との間の部分が第二の形状記憶合金14bを構成している。勿論、第一の形状記憶合金14aに相当する部分および第二の形状記憶合金14bに相当する部分を分離した2本のワイヤ状の形状記憶合金によりそれぞれ構成し、各形状記憶合金の端部を巻き掛け部13の外周に固定してもよい。
【0037】
前記形状記憶合金14は、巨大な二方向性形状記憶効果を持つ形状記憶合金とされており、直線引張方向に記憶形状を持ち、加熱すると記憶している長さに収縮して硬くなる一方、冷却時には、負荷の無い状態でも、ちょうど筋肉が弛緩するように柔らかくなり、自分で伸びて低温時の元の長さと形に戻る。したがって、加熱と冷却だけで、外部からバイアス力を作用させることなく、伸び縮みする。このような形状記憶合金は、例えば、本発明者が前に提案した特願2000−204927号に開示された方法により得ることができる。なお、完全な、2方向性を示せないまでも、形状回復可能なひずみ領域内で低温での変形に力がほとんど必要ない形状記憶合金であってもよく、このような形状記憶合金もやはり本発明者が前に提案した特願2000−204927号に開示された方法により得ることができる。
【0038】
前記ピン16と固定部15との間および、ピン17と固定部15との間は、スイッチ手段(図示せず)により、それぞれ独立に電源(図示せず)に接続および切断できるようになっている。
【0039】
次に、本実施例の作動を図4〜11の動作説明図を用いて説明する(これらの図においては、図面を分かりやすくするために、アクチュエータ本体1および形状記憶合金14等は図示を省略している)。図4は、図1と同じ状態を示しており、操作端部材7および中間部材3がそれぞれ反転付勢手段12の力により操作端部材ストッパ9,中間部材ストッパ5に当接され、それぞれ第二の操作端部材安定位置、第二の中間部材安定位置にある状態を示している。
【0040】
この図4の状態において、前記スイッチ手段によりピン16と固定部15との間を電源に接続し、第一の形状記憶合金14aに通電すると、ジュール熱により第一の形状記憶合金14aが所定温度範囲まで加熱され、形状記憶効果により反転付勢手段12に抗して該形状記憶合金14aが記憶している長さに戻ろうとする形状回復力を発生して収縮するので、巻き掛け部13ひいては中間部材3が図5および6の矢印Aのように時計方向(本実施例の動作説明において時計方向または反時計方向と言うとき、それは図3以外の図における向きとする)に回動して行く。しかしながら、中間部材3がその中立位置(図6のように中間部材3が中間部材回動軸2と操作端部材回動軸6とを結ぶ直線Eと重なる位置で、この位置においてピン10とピン11とを結ぶ直線(反転付勢手段12の力の作用線)が操作端部材回動軸6とピン11(操作端部材7に対する反転付勢手段12の力の作用点)とを結ぶ直線と一直線上に重なる)に達するまでは、反転付勢手段12が操作端部材7を時計方向に付勢しているので、操作端部材7は反転付勢手段12によって操作端部材ストッパ9に当接されて、第二の安定位置に停止したままになっている。
【0041】
しかしながら、中間部材3が図6の中立位置を時計方向に越えると、それまで操作端部材7を時計方向に付勢していた反転付勢手段12が操作端部材7を逆に反時計方向に付勢するようになるので、操作端部材7が急に動き出し、図7および8の矢印Bのように急速に反時計方向に回動されて行き、図8のように操作端部材ストッパ8に当接されると、その位置、すなわち第一の安定位置で停止する。他方、中間部材3に関してみると、操作端部材7の回動によって図7のようにピン10とピン11とを結ぶ直線(反転付勢手段12の力の作用線)が中間部材回動軸2とピン10(中間部材3に対する反転付勢手段12の力の作用点)とを結ぶ直線を越えると、それまで反転付勢手段12によって反時計方向に付勢されていた中間部材3が逆に時計方向に付勢されるようになるので、中間部材3は反転付勢手段12の力(および第一の形状記憶合金14a)によって図8のように中間部材ストッパ4に当接されるまで時計方向(矢印A方向)に回動されて行き、中間部材ストッパ4に当接される位置、すなわち第一の安定位置に停止する。
【0042】
また、図8のように中間部材3および操作端部材7がそれぞれの第一の安定位置にあるときに、前記スイッチ手段によりピン17と固定部15との間を電源に接続し、第二の形状記憶合金14bに通電すると、第二の形状記憶合金14bが所定温度範囲まで加熱され、形状記憶効果により反転付勢手段12に抗して該形状記憶合金14bが記憶している長さに戻ろうとして短くなるので、巻き掛け部13ひいては中間部材3が図9および10の矢印Cのように反時計方向に回動して行く。しかしながら、中間部材3がその中立位置に達するまでは、反転付勢手段12が操作端部材7を反時計方向に付勢しているので、操作端部材7は反転付勢手段12によって操作端部材ストッパ8に当接されて、第一の安定位置に停止したままになっている。
【0043】
しかしながら、図10のように中間部材3が中立位置まで回転され、さらにその位置を反時計方向に越えると、それまで操作端部材7を反時計方向に付勢していた反転付勢手段12が、操作端部材7を逆に時計方向に付勢するようになるので、操作端部材7が反転付勢手段12の力により急に動き出し、図11の矢印Dのように急速に時計方向に回動されて行き、図6のように操作端部材9に当接されると、その位置、すなわち第二の安定位置で停止する。他方、中間部材3に関してみると、操作端部材7の回動によって図11のようにピン10とピン11とを結ぶ直線(反転付勢手段12の力の作用線)が中間部材回動軸2とピン10(中間部材3に対する反転付勢手段12の力の作用点)とを結ぶ直線を越えると、それまで反転付勢手段12によって時計方向に付勢されていた中間部材3が逆に反時計方向に付勢されるようになるので、中間部材3は反転付勢手段12の力(および第二の形状記憶合金14b)によって中間部材ストッパ5に当接されるまで反時計方向に回動されて行き、中間部材ストッパ5に当接される位置、すなわち第二の安定位置に停止する。
【0044】
このようにして、この双安定型形状記憶合金アクチュエータでは、操作端部材7に2つの安定位置を持たせ、第一または第二の形状記憶合金14a,14bに加熱することにより、その安定位置を反転できる。なお、本発明においては本実施例のように、中間部材回動軸2を中心にしたピン10(中間部材3に対する反転付勢手段12の力の作用点)の回転軌跡が操作端部材回動軸6かその極近傍を通過するようにすることが好ましく、そのようにすることにより、中立位置近傍の中間部材3の極僅かな角度変化(位置変化)で操作端部材7を第一または第二の操作端部材安定位置に瞬時に反転できる。
【0045】
また、この形状記憶合金アクチュエータは、外部から操作端部材7に力が作用しても、その外力が操作端部材7を通じて第一および第二の形状記憶合金14a,14bに直接作用することがない。したがって、外部から操作端部材7に作用する力により過大な応力が形状記憶合金に加わり、性能が低下したり、破壊されてしまうことがないので、耐久性を向上することができる。
【0046】
また、操作端部材7の動作は直接的には反転付勢手段12の力によってなされるので、動作速度を速くすることができ、かつ形状記憶合金14a,14bの使用量を減らし、コストを低減するとともに、使用エネルギー量の低減、ひいては省資源を図ることができる。
【0047】
なお、前記実施例においては、中間部材3に対する反転付勢手段12の力の作用点の回転軌跡が操作端部材回動軸6上を通過するようにされているので、中間部材3が第一の中間部材安定位置から第二の中間部材安定位置に移動する際の中立位置と、第二の中間部材安定位置から第一の中間部材安定位置に移動する際の中立位置とが同一位置となっているが、中間部材3に対する反転付勢手段12の力の作用点の回転軌跡が操作端部材回動軸6上を通過しない場合は、中間部材3が第一の中間部材安定位置から第二の中間部材安定位置に移動する際の中立位置と、第二の中間部材安定位置から第一の中間部材安定位置に移動する際の中立位置とが異なってくることがある。
【0048】
また、本実施例では、第一および第二の形状記憶合金14a,14bとして、形状回復可能なひずみ領域内で低温での変形に力が必要ないか、またはほとんど必要ない形状記憶合金を用いているので、収縮をしていない方の形状記憶合金は抵抗力を発生することなくたるむ方向に動き、操作部端部材の運動を容易にする。この結果、応答性などの性能や寿命が大幅に向上し、僅かな形状記憶合金で動く、双安定式の差動型アクチュエータを実用化できる(ただし、本発明においては、形状記憶合金として、通常の形状記憶合金を用いることもできる)。
【0049】
また、前記第一の実施例においては、外部からの力により、操作端部材7が一方の安定位置から他方の安定位置に回動された場合には、中間部材3も反転されてしまうので、前記外部の力がなくなっても、操作端部材7および中間部材3は元の安定位置に戻ることはない。図12は、この現象を例示したものであり、外部からの力により操作端部材7が実線で示す第一の操作端部材安定位置から一点鎖線で示す第二の操作端部材安定位置へ回動されると、ピン10とピン11とを結ぶ直線(反転付勢手段12の力の作用線)が中間部材回動軸2とピン10(中間部材3に対する反転付勢手段12の力の作用点)とを結ぶ直線を越えた時点で中間部材3に対する反転付勢手段12の付勢力の向きが反転するため、中間部材3が実線で示す第一の中間部材安定位置から一点鎖線で示す第二の中間部材安定位置に反転されてしまう。したがって、前記外部の力がなくなっても、操作端部材7および中間部材3は元の第一の操作端部材安定位置および第一の中間部材安定位置に戻ることはない。勿論、逆に、外部からの力により操作端部材7が第二の操作端部材安定位置から第一の操作端部材安定位置へ回動されたときも、同様にして中間部材3が第二の中間部材安定位置から第一の中間部材安定位置に反転されてしまい、前記外部の力がなくなっても、操作端部材7および中間部材3は元の第二の操作端部材安定位置および第二の中間部材安定位置に戻ることはない。
【0050】
図13は、このような現象を防止することができる本発明による形状記憶合金アクチュエータの第二実施例を示している。この実施例においては、外部からの力により、操作端部材7が一方の安定位置から他方の安定位置に回動されても、ピン10とピン11とを結ぶ直線(反転付勢手段12の力の作用線)が中間部材回動軸2とピン10(中間部材3に対する反転付勢手段12の力の作用点)とを結ぶ直線を越えないようにアクチュエータが構成されている。他の構成は前記第一実施例と同様である。
【0051】
このような構成とすることにより、操作端部材7が一方の安定位置から他方の安定位置に回動されても、中間部材3は反転されないので、前記外部の力がなくなると、操作端部材7は元の安定位置に戻るようにすることができる(図13に例示されている場合について言えば、外部からの力により操作端部材7が実線で示す第一の操作端部材安定位置から一点鎖線で示す第二の操作端部材安定位置へ回動されても、中間部材3は実線で示す第一の安定位置に止まっており、したがって前記外部の力がなくなると、操作端部材7は元の第一の操作端部材安定位置に戻る)。
【0052】
図14〜16は本発明による形状記憶合金アクチュエータの第三実施例を示している。本実施例においては、中間部材回動軸2と操作端部材回動軸6とを同軸としている。他の構成は前記第一実施例と同様である。
【0053】
本実施例においても前記第一実施例と同様の作用効果を得ることができる。ただし、ピン10(中間部材3に対する反転付勢手段12の力の作用点)と操作端部材回動軸6との距離が大きくなるため、操作端部材7の安定位置の反転を行うのに中間部材3の大きな角度変化が必要となる。
【0054】
図17〜20は本発明の第四実施例を示している。前記各実施例においては中間部材3が回動する形式とされていたが、本実施例においては中間部材3がスライド運動(直線移動)を行う形式とされている。これを詳しく説明すると、アクチュエータ本体1にはピン状の中間部材ストッパ18,19,20,21が立設されており、中間部材ストッパ18と19との間および20と21との間に挟まれることにより、中間部材3が直線方向に移動可能な状態でアクチュエータ本体1に支持されている。そして、前記中間部材3はその移動範囲を図20のように中間部材ストッパ20,21に当接する第一の中間部材安定位置と、図17のように中間部材ストッパ18,19に当接する第二の中間部材安定位置との間に制限されている。前記アクチュエータ本体1には操作端部材回動軸6が立設されており、この操作端部材回動軸6には直線形のレバー状の操作端部材7の一端部が該操作端部材回動軸6を中心として回動可能に支持されている。前記アクチュエータ本体1にはピン状の操作端部材ストッパ8および9が互いに間隔を置いて固定されており、操作端部材7はその回動範囲を図20のように操作端部材ストッパ8に当接する第一の操作端部材安定位置と、図17のように操作端部材ストッパ9に当接する第二の操作端部材安定位置との間に制限されている。ここで、前記中間部材3の移動方向に対し垂直で操作端部材回動軸6を通る直線Fに関して、中間部材ストッパ18,19と20,21および操作端部材ストッパ8と9が対称的に配置されているので、前記直線Fに関して前記第一の操作端部材安定位置と第二の操作端部材安定位置および第一の中間部材安定位置と第二の中間部材安定位置とがそれぞれ対称的な位置となっている。ただし、この場合も、必ずしも対称的な配置としなくてもよい。
【0055】
前記中間部材3の中央部にはピン10が立設されており、操作端部材7の中間部にはピン11が立設されている。前記ピン10とピン11との間には引張コイルばねからなる反転付勢手段12が介装されており、この反転付勢手段12はピン10とピン11とを互いに近接する方向に付勢している。前記中間部材3の移動可能範囲の両側には、ピン22,23が立設されており、ピン22と中間部材3との間には第一の形状記憶合金14a、ピン23と中間部材3との間には第二の形状記憶合金14bがそれぞれ渡されている。第一および第二の形状記憶合金14a,14bは前記各実施例の場合と同様にそれぞれ巨大な二方向性形状記憶効果を持つワイヤ状の形状記憶合金とされており、直線の引張方向に記憶形状を持っており、加熱すると記憶している長さに収縮して硬くなる一方、冷却時には、負荷の無い状態でも、ちょうど筋肉が弛緩するように柔らかくなり、自分で伸びて低温時の元の長さと形に戻る。
【0056】
前記ピン22と中間部材3との間および、ピン23と中間部材3との間は、スイッチ手段(図示せず)により、それぞれ独立に電源(図示せず)に接続および切断できるようになっている。
【0057】
次に、本実施例の作動を説明する。図17は、操作端部材7および中間部材3がそれぞれ反転付勢手段12の力により操作端部材ストッパ9、中間部材ストッパ18,19に当接され、それぞれ第二の操作端部材安定位置、第二の中間部材安定位置にある状態を示している。この状態において、前記スイッチ手段によりピン22と中間部材3との間を電源に接続し、第一の形状記憶合金14aに通電すると、第一の形状記憶合金14aが所定温度範囲まで加熱され、形状記憶効果により反転付勢手段12に抗して該形状記憶合金14aが記憶している長さに戻ろうとして収縮するので、中間部材3が図19のように図上左方向に直線的に移動して行く。しかしながら、中間部材3がその中立位置(図19のように直線Fにピン10が重なる位置で、この位置においてピン10と11とを結ぶ直線(反転付勢手段12の力の作用線)が操作端部材回動軸6とピン11(操作端部材7に対する反転付勢手段12の力の作用点)とを結ぶ直線と一直線上に重なることとなる)に達するまでは、反転付勢手段12が操作端部材7を時計方向に付勢しているので、操作端部材7は反転付勢手段12によって操作端部材ストッパ9に当接されて、第二の操作端部材安定位置に停止したままになっている。
【0058】
しかしながら、図19のように中間部材3が中立位置を左方に越えると、それまで操作端部材7を時計方向に付勢していた反転付勢手段12が、逆に操作端部材7を反時計方向に付勢するようになるので、操作端部材7が反転付勢手段12の力により急に反時計方向に動き出し、図20のように操作端部材ストッパ8に当接されると、その位置、すなわち第一の操作端部材安定位置で停止する。他方、中間部材3に関してみると、操作端部材7の移動によってピン10とピン11とを結ぶ直線(反転付勢手段12の力の作用線)が中間部材3の移動方向に対し垂直な方向より反時計方向に傾くと、それまで反転付勢手段12によって右方に付勢されていた中間部材3が逆に左方に付勢されるようになるので、中間部材3は反転付勢手段12の力(および第一の形状記憶合金14a)によって中間部材ストッパ20,21に当接されるまで左方に移動されて行き、中間部材ストッパ20,21に当接される位置、すなわち第一の中間部材安定位置に停止する。
【0059】
また、操作端部材7の第一の操作端部材安定位置から第二の操作端部材安定位置への反転も全く同様にして行われる。
【0060】
図21〜24は本発明の第五実施例を示している。前記各実施例においては、一方の形状記憶合金が冷却しきらないうちに他方の形状記憶合金が加熱されると、両方の形状記憶合金14a,14bが同時に形状回復力を発生している状態になり、形状記憶合金が劣化したり、破壊される虞があるが、本実施例はこのような不都合を防止するものである。
【0061】
本実施例においては、中間部材ストッパ4,5はアクチュエータ本体1に凸部として形成されており、これらの中間部材ストッパ4,5に中間部材3が当接される位置がそれぞれ第一および第二の中間部材安定位置とされている。また、アクチュエータ本体1の肩部が操作端部材ストッパ8,9を構成しており、これらのストッパ8,9に操作端部材7に設けられた支柱部25が当接される位置がそれぞれ第一および第二の操作端部材安定位置とされている。このようにアクチュエータ本体1、中間部材ストッパ4,5および操作端部材ストッパ8,9の形状等は変更されているが、基本的な構成は前記第一実施例と同様とされている(対応する部品は同一符号で示している)。前記第一実施例との主な相違は、次に説明するように形状記憶合金14a,14bに過大な負荷荷重が作用するのを防止する手段が設けられていることである。
【0062】
アクチュエータ本体1には、中間部材回動軸2の下方において、スライド凹部26が設けられており、このスライド凹部26にはスイッチ作動部材27が図上上下方向に移動可能に嵌合されている。このスイッチ作動部材27はスライド凹部26の上端とアクチュエータ本体1に固定されたストッパ28,29とにより、その移動範囲を制限されている。前記スイッチ作動部材27にはスイッチ操作片30が設けられている。第一および第二の形状記憶合金14a,14bの一端部はスイッチ作動部材27に立設されたピン16,17を介してそれぞれスイッチ作動部材27に固定されている。前記スイッチ作動部材27に立設されたピン60とアクチュエータ本体1に立設されたピン31との間には引張コイルばねからなる過負荷防止用ばね32が介装されており、この過負荷防止用ばね32はスイッチ作動部材27を下方、すなわち巻き掛け部13から遠ざかる方向に付勢している。
【0063】
前記アクチュエータ本体1にはリミットスイッチからなる過負荷防止スイッチ33が取り付けられている。この過負荷防止スイッチ33は、二つの電気伝導性のよい板ばね34,35と、これらの板ばね34,35にそれぞれ固定されて互いに対向された2つの接点36,37と、板ばね34の先端部付近に設けられた電気絶縁体41とを有しており、一方の接点36は中間部材3の巻き掛け部13に固定部15において固定されている第一および第二の形状記憶合金14a,14bの一端部に板ばね34を介して電気的に接続され、他方の接点37は板ばね35を介して電源38の一方の極に電気的に接続されている。前記電源38の他方の極は第一および第二の駆動スイッチ39,40の一端に電気的に共通に接続されている。前記第一の駆動スイッチ39の他端はピン16を介して第一の形状記憶合金14aの他端部に電気的に接続され、第二の駆動スイッチ40の他端はピン17を介して第二の形状記憶合金14bの他端部に電気的に接続されている。
【0064】
本実施例においては、第一および第二の形状記憶合金14a,14bに過大な負荷が作用されていない状態では、過負荷防止用ばね32のばね力によりスイッチ作動部材27は下方に移動されてストッパ28,29に当接されている。この状態では、スイッチ作動部材27のスイッチ操作片30が電気絶縁体41および板ばね34を介して接点36を押し下げ、接点36と37とを互いに接触させている。したがって、図21の実線位置で示すように操作端部材7が第二の操作端部材安定位置、中間部材3が第二の中間部材安定位置にそれぞれある状態において、第一の駆動スイッチ39をオンすると、第一の形状記憶合金14aに通電されて該合金14aが加熱され、該合金14aが収縮するので、中間部材3が図上時計方向に回動され、操作端部材7が一点鎖線で示すように第一の操作端部材安定位置に反転するとともに中間部材3も一点鎖線で示すように第一の中間部材安定位置に回動する。
【0065】
次に、第一の形状記憶合金14aが十分に冷却した後、第二の駆動スイッチ40をオンすると、第二の形状記憶合金14bに通電されて該合金14bが加熱され、該合金14bが収縮するので、操作端部材7が第二の操作端部材安定位置に反転するとともに中間部材3も第二の中間部材安定位置に回動する。このようにして、第一および第二の形状記憶合金14a,14bに過大な負荷荷重が作用しない場合には、前記第一実施例の場合と同様に動作する。
【0066】
しかしながら、一方の形状記憶合金が冷却しきらないうちに他方の形状記憶合金が加熱されたり、両方の形状記憶合金14a,14bが同時に加熱されることによって両方の形状記憶合金が同時に形状回復力を発生している状態になったり、または大きい外力が作用したりすることにより、第一および(または)第二の形状記憶合金14a,14bに過大な負荷が作用すると、図24のようにスイッチ作動部材27が図上上方に引き上げられるので、スイッチ作動部材27がスイッチ操作片30、電気絶縁体41および板ばね34を介して接点36を押し下げなくなるため、接点36と37が離間される。これにより、それまで通電されていた第一または(および)第二の形状記憶合金14a,14bに対する通電が停止され、該形状記憶合金が冷却するので、第一および第二の形状記憶合金14a,14bに形状記憶合金が劣化したり、破壊されるのを防止できる。
【0067】
なお、ストッパ28,29は必ずしも設けなくてもよいが、本実施例のように設けておくと、スイッチ作動部材27と巻き掛け部13との間の距離の上限を設定することができ、これにより、前記上限を設けない場合におけるように過大な負荷が作用していないときにも両方の形状記憶合金にある程度以上の張力が作用し、中間部材3が中央付近で安定しやすくなってアクチュエータの動作が不安定になることを防止できる。
【0068】
図25〜28は本発明の第六実施例を示している。本実施例においては、中間部材3は該中間部材3に設けられた長穴42を中間部材回動軸2に嵌合されることにより回動可能とされている。巻き掛け部13は長穴42の周囲に長円状に形成されている。他の構成は前記図1〜12の第一実施例および図21〜24の第五実施例と同様とされている(対応する部品は同一符号で示している)。
【0069】
本実施例においては、第一および第二の形状記憶合金14a,14bがともに冷却しているときは、図25に示されるように、反転付勢手段12により、中間部材3が図上上方に引き上げられ、中間部材回動軸2は相対的に長穴42の一端(図上下端側)に偏倚した状態となっており、これにより巻き掛け部13と第一および第二の形状記憶合金14a,14bの反対側の端部との間の距離が比較的に大きくなっている(図25では、便宜上、中間部材が中立位置にあるように描いてある)。
【0070】
また、図26に示されるように、一方の形状記憶合金(図では第の形状記憶合金14)が十分に冷却している状態において、他方の形状記憶合金(図では第二の形状記憶合金14)が加熱されると、中間部材3が回動し、前記第一実施例および第五実施例の場合と同様に操作端部材7(図示せず)が反転する(この場合、反転付勢手段12に抗して中間部材3が若干図上下方に移動され、中間部材回動軸2が相対的に長穴42の中間部に若干移動するようになっていてもよいし、中間部材3が図上下方に移動せず、回動軸2が長穴42の一端に偏倚したままの状態となるようになっていてもよい)。
【0071】
また、図27に示されるように、一方の形状記憶合金(図では第の形状記憶合金14)がまだ十分冷却されていないうちに他方の形状記憶合金(図では第の形状記憶合金14)が加熱状態とされたときは、反転付勢手段12に抗して中間部材3が図上下方に移動され、中間部材回動軸2が相対的に長穴42の他端(図上上端)の方にある程度移動することにより、巻き掛け部13と第一および第二の形状記憶合金14a,14bの反対側の端部との間の距離がある程度短くなるので、第一および第二の形状記憶合金14a,14bに過大な負荷が作用するのを防止することができる。また、前記のように中間部材回動軸2が相対的に長穴42の他端(図上上端)の方にある程度移動することにより、形状記憶合金の形状回復力が一時的に反転付勢手段12に蓄えられる。その後、一方の形状記憶合金が冷却すると、前記中間部材3の下方移動のため、中間部材3の回動の当初、冷却した方の形状記憶合金は中間部材3が回転しやすい方向に緩む(なお、図26の場合も、中間部材回動軸2が相対的に若干移動するようになっている場合には、同様に、中間部材3の回動当初に、冷却して収縮していない形状記憶合金の方が中間部材3が回転しやすい方向に緩む)。
【0072】
さらに、第一および第二の形状記憶合金14a,14bが同時に加熱されている状態になると、図28に示されるように、中間部材3が大きく引き下げられて、相対的に中間部材回動軸2が長穴42の他端(図上上端)の方に大きく移動し、巻き掛け部13と第一および第二の形状記憶合金14a,14bの反対側の端部との間の距離が短くなるので、第一および第二の形状記憶合金14a,14bに過大な負荷が作用するのを防止することができる。
【0073】
図29および30は本発明の第七実施例を示している。本実施例においては、前記図25〜28の第六実施例の構成にさらに過負荷防止スイッチ33が設けられている。この過負荷防止スイッチ33は、前記図21〜24の第五実施例におけるものと同様のものであり、通常の状態では、反転付勢手段12(本実施例においては、本発明における過負荷防止用ばねを兼ねている)の力により、中間部材3(本実施例においては、本発明におけるスイッチ作動部材を兼ねている)が電気絶縁体41を介して板ばね34を押圧して、接点36,37を互いに接触させているので、加熱すべき形状記憶合金14aまたは14bに通電可能な状態となっている。
【0074】
しかしながら、第一および第二の形状記憶合金14a,14bが両方とも加熱状態となり、過大な負荷が作用されると、図30に示されるように、反転付勢手段12に抗して中間部材3が図上下方に大きく移動され、相対的に中間部材回動軸2が長穴42の他端(図上上端)の方に大きく移動し、電気絶縁体41が中間部材3から離間し、接点36,37も互いに離間し、過負荷防止スイッチ33が形状記憶合金14a,14bへの通電回路を遮断し、形状記憶合金14a,14bへの通電を停止させる。これにより、形状記憶合金14a,14bが保護される(なお、両方の形状記憶合金14a,14bが加熱状態となったときのみならず、一方の形状記憶合金がまだ十分冷却されていないうちに他方の形状記憶合金が加熱状態とされたときも、接点36,37が互いに離間し、形状記憶合金への通電が停止されるようにしてもよい)。
【0075】
図31は本発明の第八実施例を示している。本実施例においては、アクチュエータ本体(図示せず)に固定された回動部材回動軸43には回動部材44の中央部が回動を可能に支持されている。この回動部材44には2つのプーリー45,46がそれぞれ回転可能に支持されており、これらのプーリー45,46は回動部材回動軸43を間に挟むように配置されている。ここにおいて、本実施例では、回動部材44およびプーリー45,46が可動当接体を構成している。回動部材44と前記アクチュエータ本体1との間には引張コイルばねからなる過負荷防止用ばね32が介装されており、このばね32は回動部材44を図上時計方向に付勢することにより、プーリー46,45を第一および第二の形状記憶合金14a,14bに押圧し、これらの形状記憶合金14a,14bを伸張させようとするようになっている。前記アクチュエータ本体1に固定されたストッパ6は、回動部材44が所定以上図上時計方向に回動できないように回動部材44の回動範囲を制限しており、これにより第一および第二の形状記憶合金14a,14bを所定以上伸張させないように制限している。他の構成は前記第一実施例と同様とされている(対応する部品は同一符号で示している)。
【0076】
本実施例においては、通常は、回動部材44は図31の位置またはそれに近い位置にあり、第一および第二の形状記憶合金14a,14bが掛け渡される経路を長くしており、この状態で前記第一実施例の場合と同様な動作が行われる。
【0077】
しかし、両方の形状記憶合金14a,14bが同時に加熱状態とされたり、一方の形状記憶合金が十分冷却されないうちに他方の形状記憶合金が加熱されたりすることにより、形状記憶合金14a,14bに過負荷が作用したときは、回動部材44が過負荷防止用ばね32に抗して図上反時計方向に回動され、第一および第二の形状記憶合金14a,14bが掛け渡される経路が短くなって、第一および第二の形状記憶合金14a,14bに作用する力が緩和されるので、過負荷が防止される。
【0078】
図32は本発明の第九実施例を示している。本実施例においては、アクチュエータ本体1(図示せず)に固定された一対の回動部材回動軸47,48にはそれぞれ回動部材49,50が回動を可能に支持されている。これらの回動部材49,50には部分的な歯車部分51,52が設けられており、これらの歯車部分51,52を互いに噛み合わされている。各回動部材49,50にはそれぞれプーリー53,54が回転可能に支持されている。ここにおいて、本実施例では、回動部材49,50およびプーリー53,54が可動当接体を構成している。回動部材47,48間には引張コイルばねからなる過負荷防止用ばね32が介装されており、このばね32は図上回動部材49を時計方向、回動部材50を反時計方向に付勢することにより、プーリー54,53を第一および第二の形状記憶合金14a,14bに押圧し、これらの形状記憶合金14a,14bを伸張させようとするようになっている。前記アクチュエータ本体1に固定されたストッパ55は、回動部材50が所定以上図上反時計方向に回動できないように回動部材50の回動範囲を制限しており、これにより第一および第二の形状記憶合金14a,14bを所定以上伸張させないように制限している。図示していないが、他の構成は前記第一実施例と同様とされている。
【0079】
本実施例においても、通常は、回動部材49,50は図32の位置またはそれに近い位置にあり、第一および第二の形状記憶合金14a,14bが掛け渡される経路を長くしており、この状態で前記第一実施例の場合と同様な動作が行われる。
【0080】
しかし、両方の形状記憶合金14a,14bが同時に加熱状態とされたり、一方の形状記憶合金が十分冷却されないうちに他方の形状記憶合金が加熱されることにより、形状記憶合金14a,14bに過負荷が作用したときは、過負荷防止用ばね32に抗して回動部材49が図上反時計方向、回動部材50が時計方向に回動され、第一および第二の形状記憶合金14a,14bが掛け渡される経路が短くなって、第一および第二の形状記憶合金14a,14bに作用する力が緩和されるので、過負荷が防止される。
【0081】
図33〜37は本発明による形状記憶合金アクチュエータの第十実施例を示している。これらの図のうち図33は、図34(図33のXXXIV−XXXIV線における断面図)と組み合わせて参照することにより、装置の構成が容易に理解されるようにするために、通常の使用状態ではあり得ない状態であるが、操作端部材7および中間部材3を強制的に中立位置に位置に固定した状態を示している。
【0082】
この実施例は、単安定型アクチュエータを構成するものであり、基本的には前記第一実施例の双安定型アクチュエータにおける第二の形状記憶合金14を中間部材復帰付勢手段56に置き換えた構成とされている。これを詳しく説明すると、アクチュエータ本体1には中間部材回動軸2が立設されており、この中間部材回動軸2にはL字形をなした中間部材3の屈曲部が該中間部材回動軸2を中心として回動可能に支持されている。前記アクチュエータ本体1にはピン状の中間部材ストッパ4および5が互いに間隔を置いて固定されており、中間部材3はその回動範囲を図35のように中間部材ストッパ5に当接する中間部材安定位置と、図37のように中間部材ストッパ4に当接する中間部材一時反転位置との間に制限されている。前記中間部材3の一端部に立設されたピン57とアクチュエータ本体1に立設されたピン58との間には引張コイルばねからなる中間部材復帰付勢手段56が介装されており、この中間部材復帰付勢手段56は中間部材3を中間部材安定位置に向かって(すなわち図35〜37における反時計方向に)付勢している。前記アクチュエータ本体1には操作端部材回動軸6が立設されており、この操作端部材回動軸6には直線形のレバー状の操作端部材7の一端部が該操作端部材回動軸6を中心として回動可能に支持されている。前記アクチュエータ本体1にはピン状の操作端部材ストッパ8および9が互いに間隔を置いて固定されており、操作端部材7はその回動範囲を図35のように操作端部材ストッパ9に当接する操作端部材安定位置と、図37のように操作端部材ストッパ8に当接する操作端部材一時反転位置との間に制限されている。
【0083】
前記中間部材3の他端部にはピン10が立設されており、操作端部材7の中間部にはピン11が立設されている。前記ピン10とピン11との間には引張コイルばねからなる反転付勢手段12が介装されており、この反転付勢手段12はピン10とピン11とを互いに近接する方向に付勢している。前記中間部材3には、中間部材回動軸2と同軸に横断面円形の巻き掛け部13が一体的に設けられている。この巻き掛け部13には、ワイヤ状の形状記憶合金14の一端部が固定されており(15はこの巻き掛け部13に対する形状記憶合金14の固定部を示している)、この形状記憶合金14の他端部はピン17を介してアクチュエータ本体1に固定されている。これにより、形状記憶合金14の固定部15付近は巻き掛け部13に巻き掛けられた状態となっている。
【0084】
前記形状記憶合金14は、前記各実施例の場合と同様に巨大な二方向性形状記憶効果を持つ形状記憶合金とされている。前記ピン17と固定部15との間は、スイッチ手段(図示せず)により、電源(図示せず)に接続および切断できるようになっている。
【0085】
次に、本実施例の作動を図35〜37の動作説明図を用いて説明する。図35は、操作端部材7および中間部材3がそれぞれ反転付勢手段12の力により操作端部材ストッパ9、中間部材ストッパ5に当接され、それぞれの安定位置にある状態を示している。
【0086】
この状態において、前記スイッチ手段によりピン17と固定部15との間を電源に接続し、形状記憶合金14に通電すると、形状記憶合金14が所定温度範囲まで加熱され、形状記憶効果により反転付勢手段12に抗して該形状記憶合金14が記憶している長さに戻ろうとして収縮するので、巻き掛け部13ひいては中間部材3が図36の矢印のように時計方向に回動して行く。しかしながら、中間部材3がその中立位置、すなわち図36のようにピン10とピン11とを結ぶ直線(反転付勢手段12の力の作用線)が操作端部材回動軸6とピン11(操作端部材7に対する反転付勢手段12の力の作用点)とを結ぶ直線と一直線上に重なることとなる位置に達するまでは、反転付勢手段12が操作端部材7を時計方向に付勢しているので、操作端部材7は反転付勢手段12によって操作端部材ストッパ9に当接されて、操作端部材安定位置に停止したままになっている。
【0087】
しかしながら、中間部材3が図36の中立位置を時計方向に越えると、それまで操作端部材7を時計方向に付勢していた反転付勢手段12が、操作端部材7を逆に反時計方向に付勢するようになるので、操作端部材7が反転付勢手段12の力により急に動き出し、図37のように急速に反時計方向に回動されて行き、操作端部材ストッパ8に当接されると、その位置、すなわち操作端部材一時反転位置に停止する。他方、中間部材3に関してみると、操作端部材7の回動によってピン10とピン11とを結ぶ直線(反転付勢手段12の力の作用線)が中間部材回動軸2とピン10(中間部材3に対する反転付勢手段12の力の作用点)とを結ぶ直線を越えると、それまで反転付勢手段12によって反時計方向に付勢されていた中間部材3が逆に時計方向に付勢されるようになるので、反転付勢手段12の力(および形状記憶合金14の形状回復力)によって中間部材ストッパ4に当接されるまで反時計方向に回動されて行き、中間部材ストッパ4に当接される位置、すなわち中間部材一時反転位置に停止する。
【0088】
また、図37のように中間部材3および操作端部材7がそれぞれの一時反転位置に達した後、形状記憶合金14に対する通電が停止され、形状記憶合金が冷却すると、中間部材復帰付勢手段56により中間部材3が反転付勢手段12に抗して反時計方向に回動されて行き、中間部材3が図36の中立位置を反時計方向に越えると、それまで操作端部材7を反時計方向に付勢していた反転付勢手段12が、操作端部材7を逆に時計方向に付勢するようになるので、操作端部材7が反転付勢手段12の力により急に動き出し、急速に時計方向に回動されて行き、図35の操作端部材安定位置に復帰する。なお、中間部材3も、中間部材復帰付勢手段56の力により中間部材安定位置に復帰する(なお、途中からは反転付勢手段12の力も中間部材3を中間部材安定位置に復帰させるように作用するようになる)。
【0089】
このようにして、本実施例では、形状記憶合金14を加熱することにより、中間部材3が中立位置を越えると、安定位置にある操作端部材7が急に一時反転位置へ反転し、かつ形状記憶合金14が冷却すると、操作端部材7が元の安定位置へ戻る単安定型アクチュエータが得られる。
【0090】
なお、本実施例においても、外部から操作端部材7に力が作用しても、その力が操作端部材7を通じて形状記憶合金14に直接作用することがない。したがって、外部から操作端部材7に作用する力により過剰な応力が形状記憶合金14に加わり、性能が低下したり、破壊されてしまうことがないので、耐久性を向上することができる。
【0091】
また、操作端部材7の動作は直接的には反転付勢手段12の力によってなされるので、動作速度を速くすることができ、かつ形状記憶合金の使用量を減らし、コストを低減するとともに、使用エネルギー量の低減、ひいては省資源を図ることができる。
【0092】
また、本実施例のように単安定型アクチュエータを構成する場合も、前記図17〜20の第四実施例と同様に中間部材3が直線運動を行うようにしたり、前記第五実施例以下と同様に形状記憶合金14に対する過負荷防止手段を設けることができる。
【0093】
また、前記各実施例においては、形状記憶合金を通電により加熱するものとしているが、本発明においては、伝導加熱、対流や環境温度による加熱、赤外線やレーザーによる加熱等の他の種の加熱方式によって形状記憶合金を加熱してもよい。
【0094】
また、前記各実施例においては、反転付勢手段は、操作端部材の所定箇所と中間部材の所定箇所とを互いに近づけるよう付勢しているが、互いに遠ざけるように付勢する構成としてもよい。
【0095】
また、前記各実施例においては、反転付勢手段をコイルばねにより構成しているが、反転付勢手段をコイルばね以外の板ばね等のばねや、気体を利用したばね等の他の種のばねとしてもよいし、反転付勢手段をゴム弾性を有するゴム弾性体により構成してもよい。また、操作端部材および中間部材の所定箇所にそれぞれ磁石(永久磁石または電磁石)を設けたり、操作端部材および中間部材の所定箇所の一方に磁石、他方に磁性体を設け、これらを反転付勢手段としてもよい。
【0096】
【発明の効果】
以上のように本発明による形状記憶合金アクチュエータは、
(イ)外部から力が操作端に作用しても、その外力が操作端を通じて形状記憶合金に直接作用することがない、
(ロ)動作速度が速い、
(ハ)操作端が2つの安定位置を持つ双安定型の形状記憶合金アクチュエータや、操作端が1つの安定位置を持ち、かつ操作端の位置が瞬間的な反転動作を行う単安定型アクチュエータを得ることができる、
(ニ)過負荷防止手段を設けることにより、差動型形状記憶合金アクチュエータにおいて、両方の形状記憶合金が同時に形状回復力を発生している状態になっても、形状記憶合金が劣化したり、破壊されることがないようにすることができる、
等の優れた効果を得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による形状記憶合金アクチュエータの第一実施例を示す正面図である。
【図2】前記第一実施例を、操作端部材および中間部材を強制的に中立位置に位置に固定した状態において示す正面図である。
【図3】図2のIII−III線における断面図である。
【図4】前記第一実施例において操作端部材および中間部材がそれぞれ第二の安定位置にある状態を示す動作説明図である。
【図5】前記第一実施例において図4の状態から中間部材が回動され始めた状態を示す動作説明図である。
【図6】前記第一実施例において図5の状態から中間部材が中立位置に達した状態を示す動作説明図である。
【図7】前記第一実施例において図6の状態から中間部材が中立位置を越えた状態を示す動作説明図である。
【図8】前記第一実施例において操作端部材および中間部材がそれぞれ第一の安定位置にある状態を示す動作説明図である。
【図9】前記第一実施例において図8の状態から中間部材が回動され始めた状態を示す動作説明図である。
【図10】前記第一実施例において図9の状態から中間部材が中立位置に達した状態を示す動作説明図である。
【図11】前記第一実施例において図10の状態から中間部材が中立位置を越えた状態を示す動作説明図である。
【図12】前記第一実施例において操作端部材が外力により一方の安定位置から他方の安定位置に回動された場合の状態を示す動作説明図である。
【図13】本発明による形状記憶合金アクチュエータの第二実施例を示す正面図である。
【図14】本発明による形状記憶合金アクチュエータの第三実施例を、操作端部材および中間部材がそれぞれ第一の安定位置にある状態において示す正面図である(アクチュエータ本体および形状記憶合金等は図示を省略している)。
【図15】前記第三実施例において中間部材の回動に伴って操作端部材が反転する様子を示す動作説明図である。
【図16】前記第三実施例を、操作端部材および中間部材を強制的に中立位置に位置に固定した状態において示す断面図である。
【図17】本発明による形状記憶合金アクチュエータの第四実施例を、操作端部材および中間部材がそれぞれ第二の安定位置にある状態において示す平面図である。
【図18】前記第四実施例を示す背面図である。
【図19】前記第四実施例において図17の状態から中間部材が中立位置に達した状態を示す動作説明図である。
【図20】前記第四実施例において操作端部材および中間部材がそれぞれ第一の安定位置にある状態を示す動作説明図である。
【図21】本発明による形状記憶合金アクチュエータの第五実施例を示す正面図である。
【図22】前記第五実施例を示す背面図である。
【図23】前記第五実施例を、操作端部材および中間部材を強制的に中立位置に位置に固定した状態において示す断面図である(過負荷防止ばねは図示を省略している)。
【図24】前記第五実施例において過負荷防止スイッチが切断された状態を示す正面図である。
【図25】本発明による形状記憶合金アクチュエータの第六実施例を示す正面図である。
【図26】前記第六実施例において一方の形状記憶合金が十分に冷却している状態において、他方の形状記憶合金が加熱された状態を示す動作説明図である。
【図27】前記第六実施例において一方の形状記憶合金がまだ十分冷却されていないうちに他方の形状記憶合金が加熱されたときの様子を示す動作説明図である。
【図28】前記第六実施例において第一および第二の形状記憶合金が同時に加熱された状態を示す動作説明図である。
【図29】本発明による形状記憶合金アクチュエータの第七実施例を正常状態において示す正面図である。
【図30】前記第七実施例を、過負荷状態において示す正面図である。
【図31】本発明による形状記憶合金アクチュエータの第八実施例を示す正面図である。
【図32】本発明による形状記憶合金アクチュエータの第九実施例を示す正面図である。
【図33】本発明による形状記憶合金アクチュエータの第十実施例を、操作端部材および中間部材を強制的に中立位置に位置に固定した状態において示す正面図である。
【図34】図33のXXXIV−XXXIV線における断面図である。
【図35】前記第十実施例において操作端部材および中間部材がそれぞれ安定位置にある状態を示す動作説明図である。
【図36】前記第十実施例において図35の状態から中間部材が回動されて中立位置に達した状態を示す動作説明図である。
【図37】前記第十実施例において操作端部材および中間部材がそれぞれ一時反転位置に反転された状態を示す動作説明図である。
【符号の説明】
1 アクチュエータ本体
2 中間部材回動軸
3 中間部材(スイッチ作動部材)
6 操作端部材回動軸
7 操作端部材
12 反転付勢手段(過負荷防止用ばね)
13 巻き掛け部
14 形状記憶合金
14a 第一の形状記憶合金
14b 第二の形状記憶合金
27 スイッチ作動部材
32 過負荷防止用ばね
33 過負荷防止スイッチ
38 電源
39 第一の駆動スイッチ
40 第二の駆動スイッチ
42 長穴
44 回動部材(可動当接体)
45,46 プーリー(可動当接体)
49,50 回動部材(可動当接体)
53,54 プーリー(可動当接体)
56 中間部材復帰付勢手段

Claims (15)

  1. アクチュエータ外部に対しアクチュエータの機械的出力が出される操作端が2つの安定位置を有する双安定型形状記憶合金アクチュエータであって、
    第一の操作端部材安定位置と第二の操作端部材安定位置との間を回動可能であり、前記操作端を構成する操作端部材と、この第一の操作端部材とともにリンク機構を構成しており、第一の中間部材安定位置と第二の中間部材安定位置との間を回動可能な中間部材と、形状回復力を発生したとき、前記中間部材を前記第一の中間部材安定位置に向かって動かすように前記中間部材に連係された第一の形状記憶合金と、形状回復力を発生したとき、前記中間部材を前記第二の中間部材安定位置に向かって動かすように前記中間部材に連係された第二の形状記憶合金と、前記操作端部材と前記中間部材との間に介装されており、前記操作端部材の所定箇所と前記中間部材の所定箇所とを互いに近づけるようにまたは遠ざけるように付勢するばねからなる反転付勢手段とを有してなり、
    前記操作端部材が前記第一の操作端部材安定位置、前記中間部材が前記第一の中間部材安定位置にそれぞれある状態から前記中間部材が前記第二の中間部材安定位置に向かって移動されて行くときは、前記中間部材が、前記操作端部材の回動軸と前記操作端部材に対する前記反転付勢手段の力の作用点とを結ぶ直線と前記反転付勢手段の力の作用線とが一直線上に重なることとなる位置である中立位置より前記第一の中間部材安定位置側にある間は、前記操作端部材は前記反転付勢手段により前記第一の操作端部材安定位置に向かって付勢されているが、前記中間部材が前記中立位置を越えて前記第二の中間部材安定位置側に移動すると、前記操作端部材は前記反転付勢手段により逆に前記第二の操作端部材安定位置に向かって付勢されるようになる一方、前記操作端部材が前記第二の操作端部材安定位置、前記中間部材が前記第二の中間部材安定位置にそれぞれある状態から前記中間部材が前記第一の中間部材安定位置に向かって移動されて行くときは、前記中間部材が前記中立位置より前記第二の中間部材安定位置側にある間は、前記操作端部材は前記反転付勢手段により前記第二の操作端部材安定位置に向かって付勢されているが、前記中間部材が前記中立位置を越えて前記第一の中間部材安定位置側に移動すると、前記操作端部材は前記反転付勢手段により逆に前記第一の操作端部材安定位置に向かって付勢されるようになるように構成されている形状記憶合金アクチュエータ。
  2. 前記中間部材は該中間部材と一体的に回動する巻き掛け部を有し、前記第一および第二の形状記憶合金はワイヤ状とされていて、所定温度範囲に加熱されると記憶している長さに戻ろうとする形状回復力を発生して収縮するようになっており、かつそれぞれ形状回復力を発生したとき前記中間部材が回動されるように、前記前記巻き掛け部に巻き掛けられるようになっている請求項記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  3. 前記中間部材は該中間部材に設けられた長穴を回動軸に嵌合されることにより回動可能とされており、前記反転付勢手段は前記回動軸を相対的に前記長穴の一端側に偏倚させ、前記第一および第二の形状記憶合金を伸張させようとする方向に前記中間部材を付勢する請求項記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  4. 可動であって、前記第一および第二の形状記憶合金に当接する部分を有する可動当接体と、この可動当接体を前記第一および第二の形状記憶合金に押圧して前記第一および第二の形状記憶合金を伸張させようとする方向に前記可動当接体を付勢する過負荷防止用ばねとを有する請求項記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  5. アクチュエータ外部に対しアクチュエータの機械的出力が出される操作端が2つの安定位置を有する双安定型形状記憶合金アクチュエータであって、
    第一の操作端部材安定位置と第二の操作端部材安定位置との間を回動可能であり、前記操作端を構成する操作端部材と、この第一の操作端部材とともにリンク機構を構成してお り、第一の中間部材安定位置と第二の中間部材安定位置との間を直線的に移動可能な中間部材と、形状回復力を発生したとき、前記中間部材を前記第一の中間部材安定位置に向かって動かすように前記中間部材に連係された第一の形状記憶合金と、形状回復力を発生したとき、前記中間部材を前記第二の中間部材安定位置に向かって動かすように前記中間部材に連係された第二の形状記憶合金と、前記操作端部材と前記中間部材との間に介装されており、前記操作端部材の所定箇所と前記中間部材の所定箇所とを互いに近づけるようにまたは遠ざけるように付勢するばねからなる反転付勢手段とを有してなり、
    前記操作端部材が前記第一の操作端部材安定位置、前記中間部材が前記第一の中間部材安定位置にそれぞれある状態から前記中間部材が前記第二の中間部材安定位置に向かって移動されて行くときは、前記中間部材が、前記操作端部材の回動軸と前記操作端部材に対する前記反転付勢手段の力の作用点とを結ぶ直線と前記反転付勢手段の力の作用線とが一直線上に重なることとなる位置である中立位置より前記第一の中間部材安定位置側にある間は、前記操作端部材は前記反転付勢手段により前記第一の操作端部材安定位置に向かって付勢されているが、前記中間部材が前記中立位置を越えて前記第二の中間部材安定位置側に移動すると、前記操作端部材は前記反転付勢手段により逆に前記第二の操作端部材安定位置に向かって付勢されるようになる一方、前記操作端部材が前記第二の操作端部材安定位置、前記中間部材が前記第二の中間部材安定位置にそれぞれある状態から前記中間部材が前記第一の中間部材安定位置に向かって移動されて行くときは、前記中間部材が前記中立位置より前記第二の中間部材安定位置側にある間は、前記操作端部材は前記反転付勢手段により前記第二の操作端部材安定位置に向かって付勢されているが、前記中間部材が前記中立位置を越えて前記第一の中間部材安定位置側に移動すると、前記操作端部材は前記反転付勢手段により逆に前記第一の操作端部材安定位置に向かって付勢されるようになるように構成されている形状記憶合金アクチュエータ。
  6. 前記第一および第二の形状記憶合金にそれぞれ通電する通電手段と、前記第一の形状記憶合金および(または)第二の形状記憶合金に所定以上の負荷が掛かったときに前記通電手段からの前記第一の形状記憶合金および(または)第二の形状記憶合金に対する通電を停止する過負荷防止スイッチとを有してなる請求項1乃至5のいずれかに記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  7. 前記過負荷防止スイッチはリミットスイッチを構成しており、
    前記過負荷防止スイッチに対し相対的に移動可能で、この相対的移動により前記過負荷防止スイッチをオン、オフするようになっており、かつ前記第一の形状記憶合金および(または)第二の形状記憶合金に負荷が掛かると、前記過負荷防止スイッチをオフすることとなる方向に移動されようとするように前記第一および(または)第二の形状記憶合金に連係されたスイッチ作動部材と、このスイッチ作動部材を前記過負荷防止スイッチをオンすることとなる方向に付勢する過負荷防止用ばねとを有し、
    前記第一の形状記憶合金および(または)第二の形状記憶合金に所定以上の負荷が掛かったときは、前記スイッチ作動部材が前記過負荷防止用ばねに抗して所定以上相対的に移動し、前記過負荷防止スイッチをオフし、前記通電手段からの前記第一の形状記憶合金および(または)第二の形状記憶合金に対する通電を停止する請求項記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  8. アクチュエータ外部に対しアクチュエータの機械的出力が出される操作端が1つの安定位置を有する単安定型形状記憶合金アクチュエータであって、
    操作端部材安定位置と操作端部材一時反転位置との間を回動可能であり、前記操作端を構成する操作端部材と、この第一の操作端部材とともにリンク機構を構成しており、中間部材安定位置と中間部材一時反転位置との間を回動可能な中間部材と、形状回復力を発生したとき、前記中間部材を前記中間部材一時反転位置に向かって動かすように前記中間部材に連係された形状記憶合金と、前記中間部材を前記中間部材安定位置に向かって付勢する中間部材復帰付勢手段と、前記操作端部材と前記中間部材との間に介装されており、前記操作端部材の所定箇所と前記中間部材の所定箇所とを互いに近づけるようにまたは遠ざけるように付勢するばねからなる反転付勢手段とを有してなり、
    前記操作端部材が前記操作端部材安定位置、前記中間部材が前記中間部材安定位置にそれぞれある状態から前記中間部材が前記中間部材一時反転位置に向かって移動されて行くときは、前記中間部材が、前記操作端部材の回動軸と前記操作端部材に対する前記反転付勢手段の力の作用点とを結ぶ直線と前記反転付勢手段の力の作用線とが一直線上に重なることとなる位置である中立位置より前記中間部材安定位置側にある間は、前記操作端部材は前記反転付勢手段により前記操作端部材安定位置に向かって付勢されているが、前記中間部材が前記中立位置を越えて前記中間部材一時反転位置側に移動すると、前記操作端部材は前記反転付勢手段により逆に前記操作端部材一時反転位置に向かって付勢されるようになる一方、前記操作端部材が前記操作端部材一時反転位置、前記中間部材が前記中間部材一時反転位置にそれぞれある状態から前記中間部材が前記中間部材安定位置に向かって移動されて行くときは、前記中間部材が前記中立位置より前記中間部材一時反転位置側にある間は、前記操作端部材は前記反転付勢手段により前記操作端部材一時反転位置に向かって付勢されているが、前記中間部材が前記中立位置を越えて前記中間部材安定位置側に移動すると、前記操作端部材は前記反転付勢手段により逆に前記操作端部材安定位置に向かって付勢されるようになるように構成されている形状記憶合金アクチュエータ。
  9. 前記中間部材は該中間部材と一体的に回動する巻き掛け部を有し、前記形状記憶合金はワイヤ状とされていて、所定温度範囲に加熱されると記憶している長さに戻ろうとする形状回復力を発生して収縮するようになっており、かつ形状回復力を発生したとき前記中間部材が回動されるように、前記巻き掛け部に巻き掛けられるようになっている請求項記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  10. 前記中間部材は該中間部材に設けられた長穴を回動軸に嵌合されることにより回動可能とされており、前記反転付勢手段は前記回動軸を相対的に前記長穴の一端側に偏倚させ、前記形状記憶合金を伸張させようとする方向に前記中間部材を付勢する請求項記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  11. 可動であって、前記形状記憶合金に当接する部分を有する可動当接体と、この可動当接体を前記形状記憶合金に押圧して前記形状記憶合金を伸張させようとする方向に前記可動当接体を付勢する過負荷防止用ばねとを有する請求項記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  12. アクチュエータ外部に対しアクチュエータの機械的出力が出される操作端が1つの安定位置を有する単安定型形状記憶合金アクチュエータであって、
    操作端部材安定位置と操作端部材一時反転位置との間を回動可能であり、前記操作端を構成する操作端部材と、この第一の操作端部材とともにリンク機構を構成しており、中間部材安定位置と中間部材一時反転位置との間を直線的に移動可能な中間部材と、形状回復力を発生したとき、前記中間部材を前記中間部材一時反転位置に向かって動かすように前記中間部材に連係された形状記憶合金と、前記中間部材を前記中間部材安定位置に向かって付勢する中間部材復帰付勢手段と、前記操作端部材と前記中間部材との間に介装されており、前記操作端部材の所定箇所と前記中間部材の所定箇所とを互いに近づけるようにまたは遠ざけるように付勢するばねからなる反転付勢手段とを有してなり、
    前記操作端部材が前記操作端部材安定位置、前記中間部材が前記中間部材安定位置にそれぞれある状態から前記中間部材が前記中間部材一時反転位置に向かって移動されて行くときは、前記中間部材が、前記操作端部材の回動軸と前記操作端部材に対する前記反転付勢手段の力の作用点とを結ぶ直線と前記反転付勢手段の力の作用線とが一直線上に重なることとなる位置である中立位置より前記中間部材安定位置側にある間は、前記操作端部材は前記反転付勢手段により前記操作端部材安定位置に向かって付勢されているが、前記中間部材が前記中立位置を越えて前記中間部材一時反転位置側に移動すると、前記操作端部材は前記反転付勢手段により逆に前記操作端部材一時反転位置に向かって付勢されるようになる一方、前記操作端部材が前記操作端部材一時反転位置、前記中間部材が前記中間部材一時反転位置にそれぞれある状態から前記中間部材が前記中間部材安定位置に向かって移動されて行くときは、前記中間部材が前記中立位置より前記中間部材一時反転位置側にある間は、前記操作端部材は前記反転付勢手段により前記操作端部材一時反転位置に向かって付勢されているが、前記中間部材が前記中立位置を越えて前記中間部材安定位置側に移動すると、前記操作端部材は前記反転付勢手段により逆に前記操作端部材安定位置に向かって付勢されるようになるように構成されている形状記憶合金アクチュエータ。
  13. 前記形状記憶合金に通電する通電手段と、前記形状記憶合金に所定以上の負荷が掛かったときに前記通電手段からの前記形状記憶合金に対する通電を停止する過負荷防止スイッチとを有してなる請求項8乃至12のいずれかに記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  14. 前記過負荷防止スイッチに対し相対的に移動可能で、この相対的移動により前記過負荷防止スイッチをオン、オフするようになっており、かつ前記形状記憶合金に負荷が掛かると、前記過負荷防止スイッチをオフすることとなる方向に移動されようとするように前記形状記憶合金に連係されたスイッチ作動部材と、このスイッチ作動部材を前記過負荷防止スイッチをオンすることとなる方向に付勢する過負荷防止用ばねとを有し、前記形状記憶合金に所定以上の負荷が掛かったときは、前記スイッチ作動部材が前記過負荷防止用ばねに抗して所定以上相対的に移動し、前記過負荷防止スイッチをオフし、前記通電手段からの前記形状記憶合金に対する通電を停止する請求項13記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  15. 前記形状記憶合金は、形状回復可能なひずみ領域内で低温での変形に力を必要としないかまたはほとんど必要としない特性を有する形状記憶合金である請求項1乃至14のいずれかに記載の形状記憶合金アクチュエータ。
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