JP4067080B2 - 匣鉢 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック原料等の焼成に適した匣鉢に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セラミック原料である粉体や粒体を焼成するための窯道具として、箱形の匣鉢が用いられている。この種の匣鉢では、典型的には底壁部と周壁部とにより形成される箱体(焼成室)に被焼成物が収容される。そして、窯入れした際には、被焼成物はかかる焼成室内で加熱・焼成される。従来、そのような匣鉢として、角筒形の角匣鉢や円筒形の丸匣鉢等が使用されている。
また、匣鉢内の被焼成物を均一に加熱する等の目的で、焼成室の底に煙突形の突起を設けたもの(特開平8−152279号公報、実開平5−42998号公報)、あるいは焼成室の底に勾配を付けたもの(特開平6−341771号公報)等がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の匣鉢において、均一な焼成を達成するために形状(特に焼成室に関する形状)に工夫を凝らしたものは多い。しかしながら、窯出し後に匣鉢から被焼成物を取り出し易くする工夫をしたものはほとんど知られていない。特に、粉体、粒体等の小さい原料(被焼成物)を一度に大量に焼成する場合には、当該被焼成物を簡単かつ確実に回収し得る匣鉢が望まれている。
このことに関し、同形状の匣鉢をいくつも積み重ねて使用するいわゆる多段式匣鉢の一従来例として、多段式匣鉢の構成ユニットである個々の匣鉢の底部を省いて被焼成物を下方に取り出せるようにしたものが知られている(実開平6−39937号公報)。しかし、かかる形状の匣鉢では、積層された下段の被焼成物が上段の被焼成物の重さの影響を受け易い。さらには匣鉢の取出口が広いため、被焼成物が飛び散り易い。
本発明はかかる現状に鑑みて創出されたものであり、被焼成物を均一に加熱するとともに、粉体、粒体等の小型で嵩張る被焼成物を焼成後に簡単な操作で効率よく回収することを可能にした匣鉢を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
上記課題を解決するべく提供される被焼成物を焼成(仮焼成の場合を包含する)するための匣鉢は、被焼成物を収容するための焼成室が内部に形成された箱体と、上記箱体と分離可能な筒体とを備えている。また、上記箱体の底壁部には、箱体外部と焼成室とを連通する貫通孔が設けられている。その貫通孔は上記焼成室に収容された被焼成物を排出可能な開口形状である。そして、上記筒体が上記貫通孔を覆うようにして上記焼成室の底に載置される。このとき、上記貫通孔及び筒体の筒孔(即ち筒の中空部)を経由して焼成室と箱体外部との間で空気の流通が可能となる。
【0005】
かかる構成の本発明の匣鉢では、上記箱体内部即ち焼成室に被焼成物を収容して窯入れした際、箱体の外壁部のみでなく筒体からも積極的に熱を伝えることができる。このため、箱体の外側と内側から被焼成物を効率よく加熱することができる。
そして、窯出し後は、筒体を箱体(焼成室)の上記位置から分離することにより、箱体の貫通孔から被焼成物を下方に取り出すことができる。このため、焼成後の被焼成物の回収作業を極めて容易に行うことができる。
【0006】
また、本構成の匣鉢では、箱体と筒体とが別体であるため、箱体自体の形状が筒体の存在によって過度に複雑化することがない。このため、匣鉢成形のための装置構成(成形型等)を単純化して製造コストを抑えることができる。また、本構成の匣鉢によれば、箱体と筒体との間に熱膨張差が生じても、これらの接触面に熱応力が作用しないため、匣鉢の耐久性を向上させることができる。
【0007】
好ましい一つの本発明の匣鉢では、上記焼成室の底に上記貫通孔に近づくに従って下方に傾斜する傾斜面が設けられている。
かかる構成の匣鉢では、上記箱体の底部に貫通孔に向かって下方に傾斜する傾斜面が設けられているため、被焼成物を自重によって傾斜面の下方の貫通孔に容易に移動させることができる。
従って、被焼成物を貫通孔に誘導する作業負担が大幅に低減され、上記傾斜面に沿って一層容易に貫通孔から被焼成物を排出することができる。特に被焼成物として粉体や粒体あるいは球形状のものを焼成する場合には、当該形状の被焼成物が貫通孔側に容易に移動することから、焼成体の回収作業を極めて効率よく行うことができる。また、焼成体の回収作業が容易に行えるため、延いては窯出しの自動化または機械化を実現することが容易である。
【0008】
また、好ましい他の一つの本発明の匣鉢では、上記箱体の底壁部に上記焼成室の底に載置された筒体が所定の位置から位置ズレしないように上記筒体(典型的にはその下端部)を支持する位置決め手段が設けられている。
かかる構成の匣鉢では、所定の位置に筒体を安定的に止めておくことができる。このため、匣鉢を搬送するときのような振動や衝撃が加えられた場合にも所定の位置から筒体がずれるのを防止することができる。
従って、本構成の匣鉢によると、匣鉢が振動や衝撃を受けても、筒体が貫通孔から位置ズレしたり、貫通孔から被焼成物が落下したりすることを抑止して窯入れや窯出しの作業をより確実に快適に行うことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の匣鉢として好適ないくつかの実施形態を説明する。
【0010】
従来、セラミック原料を焼成する場合には、被焼成物の酸化を防ぐ等の理由から、被焼成物を空気に過剰に接触させない方がよいと考えられていた。しかしながら、本発明者は鋭意検討の結果、匣鉢内(焼成室)の全域に積極的に適度な通気性を持たせることにより、粉体や粒体の焼成ムラを低減させ得ることを見出した。
すなわち、本発明の匣鉢は、上記貫通孔とそれに連通する筒孔を焼成室内に形成した結果、当該筒孔を通じて箱体の外部と焼成室との間の積極的な空気の流通を可能とする。このため、被焼成物に有機バインダ(典型的には炭素成分)が含まれている場合であっても、当該有機バインダ成分が抜ける(気化する)温度域(典型的には500〜700℃程度の仮焼温度域)において焼成室で発生するバインダ由来のガス(二酸化炭素、水蒸気等)が焼成室内(即ち被焼成物の周囲)に滞留することを防止し得る。このため、焼結を妨げる物質が被焼成物の表面に残留したり再び沈着したりするのを防止して、所望する性状の焼成品(例えば900〜1200℃での焼成品)を安定して製造することができる。
【0011】
かかる観点から、本発明の匣鉢の好適例として、以下の構成のものが例示される。
すなわち、本発明の匣鉢として好ましい一つは、上記箱体または上記筒体の少なくとも一方の外壁にスリットが設けられている。
かかる構成の匣鉢では、スリットの存在によって、より効率よく高温ガス(熱伝導媒体)を焼成室内に伝導し得る。あるいはまた、焼成室と匣鉢外部との間のガス流通性を向上させ得る。
【0012】
また、本発明の匣鉢として好ましい他の一つは、上記箱体の外壁が焼成室の底に相当する底壁部と該底壁部の周縁部分から立ち上がった周壁部とから実質的に構成されている。その周壁部の上端は、同形状の匣鉢を積み重ね得る形状に形成されている。さらに、その上端部の一部には、同形状の匣鉢を積み重ねた際に焼成室と箱体外部との間で空気の流通を可能とする切欠きが設けられている。
本構成の匣鉢は、同形状の本構成の匣鉢をいくつも積み重ねて使用するいわゆる多段式匣鉢の一例である。
本構成の匣鉢を複数多段に積み重ねて使用する場合にも、周壁部(即ち個々の匣鉢の周壁部が積み重ね方向に連なって成る壁部)の随所に上記切欠きによる空気の流通する孔が形成される。
このため、本構成の匣鉢によると、より効率よく高温ガス(高熱伝導媒体)を焼成室内に伝導し得る状態及び良好なガス流通性を保った状態で複数多段に積み重ねて使用することができる。
【0013】
また、本発明の匣鉢として好ましい他の一つは、上記筒体が上記焼成室の底に載置された際の高さが上記周壁部の高さよりも低くなるように設定される。
かかる構成の匣鉢では、多段に積み重ねて使用する際、筒体の上端(即ち筒孔の開口部)とその上部に隣接する他の匣鉢の底壁部(典型的には貫通孔)との間に隙間を設けることができる。このため、筒孔を流通した高温ガスを該隙間から焼成室内に導入することができる。また、焼成室内のガスは筒孔及び貫通孔を経由して当該匣鉢の焼成室から隣接する他の匣鉢の焼成室に移動し、延いては多段に積み重なった匣鉢の上端或いは下端から外部に排出することもできる。
このため、本構成の匣鉢によると、より効率よく高温ガス(高熱伝導媒体)を焼成室内に伝導し得る状態及び良好なガス流通性を保った状態で複数多段に積み重ねて使用することができる。
【0014】
また、本発明の匣鉢として好ましい他の一つは、上記筒体は、上記焼成室の底に載置された際の上端部の外径が、下端部の外径よりも小さくなるように設定される。
かかる構成の匣鉢では、焼成室内のガス流通が効率的に行われる。このため、焼成ムラの発生を抑止して所望する性状の焼成体を得ることができる。
【0015】
本発明の匣鉢は、種々のセラミック材料から成形することができる。好適な材料としては、例えばAl2O3-SiO2、Al2O3-SiO2-MgO、SiC、Al2O3、ZrO2、MgO、MgO-Al2O3系等の耐火材料が挙げられる。また、多孔質材料を用いることにより、耐熱衝撃性を維持しつつ軽量化を図ってもよい。箱体と筒体とは、同種の材料であっても、異なる材料であってもよい。
また、匣鉢の表面に耐火材料をプラズマ溶射等の手段によりコーティングしてもよい。このことにより、耐久性を向上させ得る。なお、コート材は被焼成物の種類、焼成条件等に応じて最適な材料を選択することができる。
上記箱体および上記筒体の製法としては、従来公知の種々の方法、例えばロクロ成形、プレス成形、鋳込み成形、押出し成形等を採用するとよい。上記箱体および上記筒体を異なる成形方法で製造してもよい。
【0016】
上記課題を解決する限りにおいて、上記箱体の形状は特に限定されない。従来の箱匣鉢や丸匣鉢と同様な形状を採用してもよい。
上記箱体の貫通孔の数は限定されず、適当な位置(典型的には底壁部の中央部分)に少なくとも一個形成する。望ましくは、底部の中央に単一の貫通孔を形成するとよい。被焼成物を単一の貫通孔に集中させて通過させることで、回収作業の効率化を図ることができるためである。
【0017】
上記筒体の形状は、角筒形、円筒形等の種々の形状を採用することができる。成形容易性、強度保持等の観点から、シンプルな構造のものがよい。上記筒体の高さは、被焼成物の充填量等に応じて適宜設定し得る。筒径については、軸方向に均一にする他、ガス流通性が確保されれば不均一な径であってもよい。なお、上記筒体の外径については、上記貫通孔から上記筒体が落ちないように上記貫通孔の内径よりも大きくすることが必要である。望ましくは、上記筒体の下端から上端へ行くに従って次第に筒径(外径)が小さくなる山形状(角錐形、円錐形等)を採用するとよい。このような形状によれば、箱体の底部に筒体を載置したときに、筒体の重心が低く保たれ、安定し易いからである。また、ガス流通性もよくなる。
また、上記筒体の数は、上記貫通孔の数に応じて設定する。上記筒体と上記貫通孔の数を等しくすることが望ましい。
【0018】
上記箱体の底壁部即ち焼成室の底面は、匣鉢を窯(焼成炉)内の所定の位置に載置した場合に、フラットとなるようにしても構わないが、貫通面に向かって下るように傾斜面とする方が上述の理由により好ましい。なお、傾斜面については、被焼成物の形状等により種々の勾配に設定することができる。例えば、球体等の転がり易い被焼成物を焼成する場合には、水平面に対して5〜30゜程度の比較的緩やかな勾配が望ましい。また、粉体、粉体等を焼成する場合には、水平面に対して30〜50゜程度の比較的急な勾配でもよい。
【0019】
上記位置決め手段としては種々の機構のものを採用し得る。例えば、上記箱体の底壁部に、▲1▼.上記筒体の下端に嵌合する凹部を形成する、▲2▼.上記筒体の下端を囲むような凸部を形成する、といった方法が挙げられる。できるだけ簡単な構造で、箱体自身の強度を下げない機構のものが好ましい。例えば、箱体の底壁部に貫通孔に沿って凹面を形成し、この凹面に筒体の下端が嵌まるようにするとよい。また、上記貫通孔の孔面をテーパ面とし、このテーパ面に上記筒体の下端が納まるようにしてもよい。
【0020】
本発明の匣鉢の用途は、特に限定されないが、粉体、粒体、球形状等の被焼成物に適用するのが望ましい。具体的には、蛍光体、磁性体、誘電体(セラミックコンデンサ等)、電池(リチウムイオン電池等)等の原料となるセラミック粉体の仮焼成等に使用するとよい。その他、ろ過材、電子部品等の焼成に使用しても、優れた効果を得ることができる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明するが、本発明をかかる実施例に限定することを意図したものではない。
【0022】
本発明の第1実施例を図1〜図4に示す。第1実施例は、丸匣鉢に本発明を適用したものである。
図1および図2に示すように、匣鉢10は、有底円筒状の箱体2の内部に被焼成物の焼成室Rが形成される。箱体2の中央に筒体3が分離可能に載置されている。
【0023】
箱体2は、円形の底壁部2aと、その外周端に立ち上がって形成された周壁部2bとからなる。底壁部2aの中央に貫通孔Hが形成される。筒体3を持ち上げると、箱体2と筒体3とが分離し、底壁部2aの底面に貫通孔Hが開放されることになる。
【0024】
筒体3は、テーパ状の筒面を有するもので、上方にいくに従って筒径(外径)が小さくなる。このような山形状によって箱体2内で筒体3の転倒が防止される。筒体3の筒孔には、底壁部2aの貫通孔Hが連通している。窯入れ時、貫通孔Hから筒孔を通って高温ガスが上方または下方へ流通する。
【0025】
図2に示すように、箱体2の底壁部2aおよび周壁部2bには、これらの壁面を貫通するスリットS1,S2が形成される。スリットS1,S2は、周方向に等間隔に配置されている。
一方、筒体3にはスリットS3が形成される。スリットS3は、筒体3の壁面上部を径方向に貫通するように延びている。各スリットS1〜S3の長さおよび幅は、被焼成物のサイズに合わせて適宜設定される。被焼成物が落下しない形状であることが要求される。
【0026】
周壁部2bの上端部には、周方向に所定間隔を保って切欠きKが形成される。このことによって、匣鉢10を積み重ねると、高さ方向に並んだ周壁部2bの間に切欠きKによる通気口が形成される。
【0027】
図1に示すように、筒体3の高さは、周壁部2bの高さよりも低くなっている。匣鉢10を積み上げると、上段の箱体2と下段の筒体3との間に隙間が形成される。これにより、筒体3を通過する高温ガスは、この隙間を通って箱体3内に導入される。なお、筒体3の高さを周壁部2bよりも高くすることも可能である。この場合、好ましくは、筒体3の上端部の外径を下端部の内径及び貫通孔の径よりも十分に小さくする。このようにすると、筒体の上端部(周壁部よりも高く突出する部分)がその上に積み重ねられた匣鉢の貫通孔及び筒孔の下端部に入り込み且つ当該入り込んだ上端突出部分と筒孔との間にガス流通を確保する隙間を形成することができる。
【0028】
ここで、底壁部2aには、筒体3を定位置に保持するように、位置決め手段を設けるとよい。例えば、図5に示すように、底壁部2aの貫通孔Hに沿って円形の凹面2cを形成し、この凹面2cに筒体3の下端を嵌合する。その結果、凹面2cの側面により筒体3の位置ズレが防止される。
また、図6に示すように、貫通孔Hの孔面をテーパ面2dとし、このテーパ面2dに対応するテーパ面3dを筒体3の下端に設けてもよい。この実施例によると、貫通孔Hに筒体3が密着して納まるため、筒体3のガタ付きを抑えることができる。
【0029】
本実施例に係る匣鉢10は、多段に積み上げて使用することができる。即ち、図3に示すように、箱体2に被焼成物6を詰め、順に積み上げる。このように積み上げた状態で匣鉢10を窯内に入れ、被焼成物6を加熱・焼成する。
窯内の高温ガス(典型的には燃焼ガス)は、図3矢印に示すように、箱体2の外側からスリットS1〜S3(図2)および切欠きKを通過し、箱体2内に導入される(吹き込まれる)。また、筒体3の筒孔を通って箱体2の内側の焼成室に入る。被焼成物6は、箱体2および筒体3の壁面からの放熱と、高温ガスの熱とにより、均一にムラなく加熱される。
【0030】
窯出し後、図4に示すように、筒体3を持ち上げて箱体2から分離すると、被焼成物6は、貫通孔Hから下方に落下する。このため、箱体2をひっくり返さずほぼ水平に保ったままでも、被焼成物6を箱体2の外側に取り出すことができる。なお、予め被焼成体6を回収するための容器を匣鉢10の下方にセットしておくとよい。
【0031】
このように本実施例に係る匣鉢10によれば、被焼成物6を均一に加熱し、しかも箱体2の貫通孔Hから被焼成物6を簡単に回収することができる。
また、箱体2および筒体3を単純な型構成で別個に成形することができるため、匣鉢10の製造コストを抑えることが可能になる。
また、箱体2と筒体3との間に熱膨張差が生じても、これらの接触面には熱応力が作用せず、クラック等が生じにくいため、製品寿命を長く保つことができる。
【0032】
本実施例に係る匣鉢10のスリットS1〜S3の効果を確認するため、焼成試験を行った。
試験用の匣鉢には、箱体および筒体の所定位置にスリットを形成した丸匣鉢を用いた。比較の対照として、スリットを設けない同一構成の匣鉢についても同様な条件で焼成試験を行った。なお、周壁部の上端の切欠きは省略した。
直径5mmの球状セラミック担体5kgを匣鉢に詰め、1520℃で6時間加熱し、焼成後の担体をデジタルカメラにて撮影した。担体の焼成状態を比較したところ、スリット付き匣鉢に比べ、スリット無しの匣鉢は、焼成不良の量が多かった。このことから、スリットから匣鉢内に空気を送ることで、焼成ムラを低減し得ることが確認された。
【0033】
次に、本発明の第2実施例を図7に示す。なお、以下に示す実施例において、上記第1実施例と実質的に同一の構成部分については同一の符号を付す。
第2実施例による匣鉢20は、箱体2の底壁部2a(即ち焼成室Rの底)に、貫通孔Hに近づくに従って下方に傾斜する傾斜面2eを形成したものである。かかる傾斜面2eにより底壁部2a(焼成室Rの底)がすり鉢状に下方に傾斜している。
従って、箱体2に球状の被焼成物6を収容し、窯出し後、箱体2から筒体3を取り除くと、被焼成物6が傾斜面2eを底壁部2aの中央側へ自然に転がり、貫通孔Hから下方に落下する。このように被焼成物6を自重によって貫通孔Hに集めることができるため、窯出し等の作業の自動化および機械化を実現しやすくなる。なお、自重による移動に加えて、箱体2を振動させるなどの補助的手段によって、被焼成物6の貫通孔Hへの移動をアシストしてもよい。
【0034】
本発明の第3実施例を図8に示す。第3実施例に係る匣鉢30は、箱体2の焼成室Rの底を丸底にしたものである。
すなわち、図示されるように、箱体2および筒体3にそれぞれ湾曲面2f,3fが形成される。また、箱体2の底壁部2aには、貫通孔Hの孔面にテーパ面2dが設けられる。筒体3の下端部には、当該テーパ面2dに対応するテーパ面3dが設けられている。而して、底壁部2aのテーパ面2dに筒体3のテーパ面3dを密着させると、両方の湾曲面2f,3fが連なって丸底面が焼成室Rに形成される。
第3実施例によれば、図8矢印に示すように、高温ガスが丸底面に沿って対流するため、匣鉢30(焼成室R)内の通気性(ガス流通性)が良好になり、被焼成物の焼成ムラを大幅に低減することができる。
【0035】
第1実施例〜第3実施例を詳細に説明したが、本発明の実施例は、これらに限られることなく、種々の変更が可能である。例えば丸匣鉢に代えて、角匣鉢を用いてもよい。また、筒体の形状を角筒形にしてもよい。1個の匣鉢に複数の筒体を備えてもよい。筒体に形成されるスリットや切欠きについては、必要に応じて省略することも可能である。
【0036】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例による匣鉢を示す断面図である。
【図2】 本発明の第1実施例による匣鉢を示す斜視図である。
【図3】 本発明の第1実施例による匣鉢の積み上げ状態を示す断面図である。
【図4】 本発明の第1実施例による匣鉢の分離状態を示す断面図である。
【図5】 本発明による匣鉢の位置決め手段の一例を示す部分拡大断面図である。
【図6】 本発明による匣鉢の位置決め手段の一例を示す部分拡大断面図である。
【図7】 本発明の第2実施例による匣鉢を示す断面図である。
【図8】 本発明の第3実施例による匣鉢を示す断面図である。
【符号の説明】
2 箱体
2a 底壁部
2b 周壁部
2c 凹面
2d テーパ面
2e 傾斜面
2f 丸底面
3 筒体
6 被焼成物
10,20,30 匣鉢
H 貫通孔
K 切欠き
R 焼成室
S1〜S3 スリット
Claims (3)
- 被焼成物を焼成するための匣鉢であって、
被焼成物を収容するための焼成室が内部に形成された箱体と、前記箱体と分離可能な筒体とを備えており、
前記箱体の底壁部には、箱体外部と焼成室とを連通する貫通孔が設けられており、その貫通孔は前記焼成室に収容された被焼成物を排出可能な開口形状であり、
前記筒体が前記貫通孔を覆うようにして前記焼成室の底に載置された際には、前記貫通孔及び筒体の筒孔を経由して焼成室と箱体外部との間で空気の流通が可能となる、匣鉢。 - 前記焼成室の底には、前記貫通孔に近づくに従って下方に傾斜する傾斜面が設けられている、請求項1に記載の匣鉢。
- 前記箱体または前記筒体の少なくとも一方の外壁にスリットが設けられている、請求項1又は2に記載の匣鉢。
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