JP4066822B2 - 車両の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の制御装置に関し、特に、ハイブリッド車両に好適な車両の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からエンジンと発電/電動機を組合せて搭載し、車両走行状態の変化に伴い時々刻々変化する電動機の出力に対して発電機からリアルタイムに過不足なく電力を供給し、バッテリにおける充放電の際の損失を大幅に低減するようにしたシリーズ式のハイブリッド車両(HEV)の制御装置が特許文献1および本出願人による特許文献2により提案されている。
【0003】
また、このようなシリーズ式のハイブリッド車両において、特に出力が急変する過渡時にバッテリへの電力の入出力を最小限に抑えるために、電動機および発電機における電力の応答を出来るだけ正確に一致させるようにしたHEVの制御装置が本出願人による特許文献3により提案されている。これは、エンジンおよび発電機の応答を推定する物理演算モデルを設け、この物理演算モデルにより算出された時々刻々の仮想発電電力に対して電動機の電力が所定の許容変動幅内に収まるように、電動機の駆動トルクを制限して、発電機・電動機両者の発電・消費電力の差が所定値以内となるようにしている。
【0004】
さらに、実エンジンおよび発電機の応答に合せて構成した前記物理演算モデルに基づいて電動機を制御する場合に、車両の時々刻々の走行状況とは無関係なバッテリの充放電要求等の要因で、実際の発電量が変化することに応じて駆動力も変化し、運転性に違和感を生じることを改善するHEVの制御装置が本出願人による特許文献4により提案されている。これは、物理演算モデルを実際のエンジンおよび発電機に合せるのではなく、車両の走行状態あるいは電動機の運転状態に対して一義的に応答が定まる「仮想モデル」を適用するようにしている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11-146503号公報
【特許文献2】
特開2000−236602号公報
【特許文献3】
特開2001−292501号公報
【特許文献4】
特開2002−165307号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このようなHEVでは、基本的にエンジン・発電機・電動機が全てほぼ等しい定格出力、もしくはそれぞれ電力損失を考慮して必要な電力を過不足なく供給できる定格出力を備える組合せで用いることを前提としている。これは、エンジン・発電機・電動機それぞれの能力をいつでも最大限に使用でき、かつバッテリ容量をできるだけ小さくするためには上記関係を満たす組合せが最適なためである。しかし、現実的には上記関係を完全に満たす組合せを選択することは困難であり、実際にはそれぞれの定格出力に大小関係が生じる。
【0007】
特に、エンジン定格出力と電動機定格出力の大小関係について考えると、エンジン定格出力の方が大きい場合には、エンジンの最高出力に見合う駆動出力が得られないこととなる。他方、電動機定格出力が大きい場合、エンジンによる発電エネルギだけでは不足する条件においては、バッテリからエネルギ供給、いわゆる「バッテリアシスト」することにより、電動機の最高出力まで使い切る事が可能となる。また、前記バッテリアシストが可能な範囲においては、より積極的に定格出力の大きな電動機を組合せて、車両の動力性能を高める使い方も可能となる(例えば、エンジン定格:45kW、電動機定格:60kW)。
【0008】
しかしながら、前記特許文献4においては、物理演算モデルとして車両の走行状態あるいは電動機の運転状態に対して一義的に応答が定まる「仮想モデル」を備えるものの、その仮想モデルの定格および特性は、実際のエンジンおよび発電機に合せて設定することを前提としている。
【0009】
前述した通り電動機は、その電力が仮想モデルにおける仮想発電電力を基準とした許容変動幅内に収まるように、駆動トルクを制御される。したがって、定格出力の大きい電動機を使って大きな出力を発生させようとすると、その出力をカバーできる程度まで、前記許容変動幅を拡大することにより、定常的に大きな電動機電力とすることが可能となる(図12(B)参照)。
【0010】
しかし、前記許容変動幅の拡大は、過渡時も電動機電力と仮想発電電力(図中「バーチャル発電電力」)との乖離を生じさせ、過渡応答特性として運転性に大きな影響を与えるので、前記許容変動幅は運転性も考慮して設定する必要がある。例えば、アクセルを全開まで踏込んだ時、過渡時の電動機電力応答をエンジン出力すなわち発電電力の応答に合わせ、滑らかに加速しかつ余分なバッテリ電力放出を避ける一方で、電動機の最高出力まで使う、といった要求を満たすことは困難であるという問題点があった。
【0011】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、過渡時に発電電力の応答に合せて滑らかに加速でき且つ余分なバッテリ電力放出を抑制しつつ、電動機をその最高出力まで使うことを可能とするハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エンジンと、エンジンに接続されエンジンの出力を回生する発電機と、発電機の発電電力の供給を受けて駆動輪を駆動する電動機と、電動機への供給電力が不足するときに電動機に電力を供給し、供給電力が余ったとき余剰電力を蓄電するバッテリと、を備え、前記電動機の定格出力を前記エンジンの定格出力より大きく設定した車両制御装置であり、車両の走行状態に基づいて前記電動機の制御目標値を算出し、前記エンジンの出力特性を示すデータおよび前記電動機制御目標値に基づいてエンジンの制御目標値を算出し、前記エンジンの定格出力以下の出力範囲ではエンジンと同じ出力特性を有しかつエンジンの定格出力以上の定格出力を有する仮想エンジンの出力特性を示すデータに基づいて前記電動機の出力制限値を算出し、前記電動機出力制限値に基づいて前記電動機の出力ないしトルクを制限するようにした。
【0013】
【発明の効果】
したがって、本発明では、車両の走行状態に基づいて電動機の制御目標値を算出し、エンジンの定格出力以下の出力範囲ではエンジンと同じ出力特性を有しかつエンジンの定格出力以上の定格出力を有する仮想エンジンの出力特性を示すデータに基づいて電動機の出力制限値を算出し、電動機の出力ないしトルクを制限するため、従来のように仮想発電電力に対する許容変動幅の拡大によることなく、定格出力の大きな電動機を使うことができ、電動機電力の過渡応答特性の制御と、バッテリアシスト制御による最高出力制御を任意に行うことが可能となり、これにより余分な電力変動を防止できることによる燃費向上と最高出力向上による運転性向上を両立させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は本発明が適用される車両のシステム構成図である。この車両では、従来の機械式変速機に代えて、無段変速機として機能する電機パワートレイン5がエンジン1に接続されている。電機パワートレイン5は、主に発電機として使用される第1の回転電機(以下、発電機)2と主に電動機として使用される第2の回転電機(以下、電動機)4とで構成され、発電機2のロータ軸がエンジン1のクランク軸に連結される一方、電動機4のロータ軸(以下、出力軸)6は減速機を介して駆動軸(駆動輪が取付けられる回転軸)に連結される。
【0016】
発電機2および電動機4は永久磁石式交流同期電動機等の交流機であり、それぞれインバータ8に接続されている。インバータ8にはさらにバッテリ9(リチウムバッテリあるいはニッケル水素バッテリ等)が接続されている。
【0017】
発電機2と電動機4の間にはクラッチ3が介装されており、クラッチ3が締結されるとエンジン1と出力軸6が直結状態となってエンジン1で直接出力軸6を駆動することができる。クラッチ3は、例えば電気パワートレイン5の入力軸回転速度と出力軸回転速度が一致したときに締結され、発電機2と電動機4における損失を抑制して車両の燃費性能を向上させることができる。
【0018】
また、電機パワートレイン5には、発電機2のロータ回転速度(以下、入力軸回転速度)Niを検出する入力軸回転速度センサ24と、電動機4のロータ回転速度(以下、出力軸回転速度)Noを検出する出力軸回転速度センサ21とが取付けられている。
【0019】
一方、エンジン1の吸気管には電子制御式スロットル弁14が設けられており、スロットル弁14は必要とされる発電電力に応じて設定される目標エンジントルクが実現されるよう運転者のアクセル操作とは独立して開閉制御される。エンジン1にはこの他、吸入空気量を検出するエアフローメータ13、クランク角を検出するクランク角センサ23が設けられている。
【0020】
統合コントロールユニット10は、基本的には、検出されたアクセル操作量等に基づき運転者が要求する駆動力を求め、要求駆動力が実現されるようにトランスミッションコントロールユニット12を介して電動機4のトルク制御を行う。また、電動機4の駆動出力(消費電力)に見合った発電電力が得られるようにトランスミッションコントロールユニット12を介しての発電機2の回転速度制御及びエンジンコントロールユニット11を介してのエンジン1のトルク制御も併せて行う。
【0021】
図2は、統合コントロールユニット10の制御内容を示したブロック図であり、図中破線で囲んだ部分が統合コントロールユニット10に対応する。
【0022】
統合コントロールユニット10には、アクセル操作量センサ22の信号であるアクセル操作量AP0[deg]と、車速センサ26の信号である車速VSP[km/h]と、発電要求値tPg[W]とが入力される。また、トランスミッションコントロールユニット12を介して入力軸回転速度センサ24の信号である入力軸回転速度Ni[rpm]が入力される。なお、車速VSPは出力軸回転速度センサ21の信号である出力軸回転速度No[rpm]から演算によって求めることも可能であり、その場合は車速センサ26を省略することができる。
【0023】
目標駆動力演算部B1は、車両の走行状態を示すアクセル操作量AP0と車速VSPとに基づき、所定のマップを参照して目標駆動力tFd0[N]を演算する。ここで使用するマップは、エンジンの定格出力より大きい定格出力の電動機4を最大出力まで使い切ることを前提に作られている。目標駆動力tFd0は車両の駆動輪が路面に伝える力の目標値を示す。
【0024】
乗算器B2は、車速VSPと目標駆動力tFd0との乗算を行って目標駆動出力の基本値tPo00[W]演算する。車速VSP[km/h]は、トルク←→出力変換でゼロ(=0)による乗除を防止するために下限リミッタB6で所定値VSPMIN#による下限処理後、定数G1=1000/3600を乗じてVSP[m/s]に単位変換したものを用いる。
【0025】
フィルタB3は、目標駆動出力基本値tPo00に対してフィルタ処理を施し、目標駆動出力基本値のフィルタ処理値tPo0[W]を求める。このフィルタ処理は例えば2次フィルタを用いた遅れ処理であり、電動機4の見かけ上の応答を遅らせることで元々応答の遅いエンジンと応答性を一致させるために行う。
【0026】
電動機出力制限部B4は、目標駆動出力基本値フィルタ処理値tPo0に対して電動機出力制限処理を施し、目標駆動出力tPo[W]を求める。この制限処理は、発電機およびエンジンに対する仮想制御目標値に基づいて発電機の仮想電力を算出し、その発電機の仮想電力と目標発電出力の差が所定範囲内となるように、前記目標駆動出力基本値フィルタ処理値tPo0に制限処理を行う。電動機出力制限処理は、後述する仮想制御目標値演算部B7よりの仮想制御目標値から求めた、時々刻々のエンジンおよび発電機の仮想の運転状態からその時刻における仮想発電電力を算出し、ここでの処理結果を直ちに目標駆動出力tPo算出に反映するため、本処理は前記フィルタB3によるフィルタ処理の後に行うこととしている。この処理については後で詳しく説明する。
【0027】
除算器B5は、目標駆動出力tPoを車速VSP[m/s]で除し、定数G4=(タイヤ有効半径)/(ファイナルギヤ比)を乗じて目標出力軸トルクtTo[Nm]を演算する。演算された目標出力軸トルクtToはトランスミッションコントロールユニット12へ送信される。トランスミッションコントロールユニット12は目標出力軸トルクtToに応じてインバータ8を制御し、電動機4の出力軸トルクを目標出力軸トルクtToに一致させる。
【0028】
一方、加算器B8は、目標駆動出力基本値tPo00に電動機4の電動機損失LOSSmを加算し、加算器B9は、発電機の発電機損失LOSSgを加算して、目標発電機入力仕事率基本値tPo1[W]を演算する。ここで、電動機4の電動機損失LOSSmは、電動機損失演算部B11で電動機の運転状態(目標出力軸トルクtToおよび車速VSPを定数G2により変換した出力軸回転数No[rpm])に基づき所定のマップから参照した値を使用する。また、発電機の発電機損失LOSSgは、発電機損失演算部B12で発電機の運転状態(入力軸回転速度Ni[rpm]および目標エンジントルクtTe(前回値))に基づき所定のマップから参照した値を使用する。目標発電機入力仕事率基本値tPo1は、電動機4の出力をtPo00とするために発電機2で発電すべき電力を示す。
【0029】
加算器B10は、目標発電機入力仕事率基本値tPo1に外部からの発電量要求値tPgを加え、目標発電機入力仕事率tPo2[W]を求める。ここで、発電要求値tPgは車両に搭載された各種の電装品で必要とされる電力であり、エンジン1は、車両を駆動するために必要な出力tPo1に各種の電装品が必要とする電力を発電するための出力tPgを上乗せしたtPo2を目標出力として運転される。
【0030】
目標入力軸回転速度演算部B13は、目標発電機入力仕事率tPo2に基づき、所定のマップを参照して目標入力軸回転数基本値tNi0[rpm]を演算する。ここで使用するマップは、図11(B)に示す実際のエンジンの等燃料消費率曲線図の最良燃費線を達成するトルク−回転数特性を目標入力軸回転数特性とする目標入力軸回転テーブル(図11(A))を用いる。ただし、目標発電機入力仕事率tPo2がエンジン最高出力を超えている場合は、最高出力回転を目標入力軸回転数基本値tNi0とする。図11(B)には、横軸をエンジン回転数Ne、縦軸をエンジントルクTeとし、実際のエンジンの等燃料消費率曲線、最大トルク線および最良燃費線が画かれており、図11(A)には、横軸を発電機入力仕事率tPo、縦軸に入力軸回転数tNi(=エンジン回転速度)として目標入力軸回転数特性が画かれている。
【0031】
フィルタB14は、目標入力軸回転速度基本値tNi0に対してフィルタ処理を施し、目標入力軸回転速度tNi[rpm]を求める。このフィルタ処理はフィルタB3で行う処理と同じ遅れ処理であり、発電機2の見かけ上の応答を遅らせることでもともと応答の遅いエンジン1と応答性を一致させるために行う。
【0032】
演算された目標入力軸回転速度tNiはトランスミッションコントロールユニット12へ送信される。トランスミッションコントロールユニット12は目標入力軸回転速度tNiに応じてインバータ8を制御し、発電機2の回転速度を目標入力軸回転速度tNiに一致させる。
【0033】
また、除算器B15は、目標発電機入力仕事率tPo2を入力軸回転速度Ni[rad/s]で除し、目標エンジントルク基本値tTe0[Nm]を演算する。ここで、入力軸回転速度Niは、入力軸回転速度センサ24の信号である入力軸回転速度Ni[rpm]を定数G3=2×π/60によって単位換算した値を使用している。
【0034】
上限リミッタ処理部B16は、所定のマップを参照して目標エンジントルク基本値tTe0が実際のエンジンの最大トルクを超える部分に対してリミッタをかける上限処理を施して目標エンジントルクtTeとし、エンジンコントロールユニット11へ送信される。実際のエンジンの最大トルクは、入力回転数Niに対する実際のエンジンの最大トルク(図11(B)の最大トルク線参照)を記憶させている最大トルクテーブル部B17から参照した最大トルクTmaxを用いる。エンジンコントロールユニット11は目標エンジントルクtTeに応じて電子制御式スロットル弁14を制御し、エンジン1のトルクを目標エンジントルクtTeに一致させる。
【0035】
エンジン1が発生したトルクは発電機2の回生トルクとなり、発電機2で発電された電力により電動機4が駆動トルクを発生する。電動機4の目標駆動力演算部B1で演算される目標駆動力tFd0は、エンジン1の定格出力より大きい定格出力を持つ電動機4を最大出力まで使いきることを前提としている。したがって、目標発電機入力仕事率tPo2がエンジン最高出力より定常的に大きくなることがあり、エンジン1を最高出力運転点で運転しても発電電力が電動機消費電力に対し不足することがあり得る。その場合には、不足する電力をバッテリ9より補う。
【0036】
図3は、図1の仮想制御目標値演算部B7における処理内容を示したブロック図である。仮想制御目標値演算部B7は、仮想目標入力仕事率として、目標発電機入力仕事率基本値tPo1を用い、目標入力軸回転速度演算部B71およびフィルタB72により仮想目標入力軸回転数tNi_d[rpm]を演算し、除算器B73、上限リミッタ処理部B74および最大トルクテーブル部B75により仮想目標エンジントルクtTe_d[Nm]を演算する。
【0037】
目標入力軸回転速度演算部B71は、目標発電機入力仕事率基本値tPo1に基づき、所定のマップを参照して仮想目標入力軸回転数基本値tNi_d0[rpm]を演算する。ここで使用するマップは、図11(D)に示す仮想エンジンの最良燃費線を達成する内部エンジンモデルとしてのトルク−回転数特性を目標入力軸回転数特性とする内部発電機モデルとしての仮想目標入力軸回転テーブル(図11(C))を用いる。図11(D)には、横軸をエンジン回転数Ne、縦軸をエンジントルクTeとし、内部エンジンモデルとしての仮想エンジンの最大トルク特性および最良燃費特性が画かれており、図11(C)には、横軸を目標発電機入力仕事率基本値tPo1、縦軸に仮想目標入力軸回転数基本値tNi_d0として内部発電機モデルとしての仮想目標入力軸回転数基本値tNi_d0が画かれている。図11(C)および図11(D)によれば、内部エンジンモデルおよび内部発電機モデルとしての仮想のエンジンの最大トルク特性および最良燃費トルク特性は、実際のエンジンにおける最高出力回転以下の領域では実際のエンジンの最大トルク曲線に一致させる一方、最高出力回転より高回転の領域では電動機定格に合せて拡張設定している。例えば、実際のエンジンにおける最高出力回転よりも高回転の領域では回転上昇に対して単調増加となるように設定する。また、仮想目標エンジン回転の設定を、前記仮想目標発電機入力仕事率基本値tPo1が実際のエンジンにおける最高出力以下の領域では実際のエンジン・発電機の制御目標値である目標エンジン回転と一致させる一方、最高出力より高出力の領域では電動機定格に合せて拡張設定している。例えば、仮想目標発電機入力仕事率基本値tPo1の上昇に対して単調増加となるように設定する。
【0038】
フィルタB72は、仮想目標入力軸回転速度基本値tNi_d0に対してフィルタ処理を施し、仮想目標入力軸回転速度tNi_d[rpm]を求める。このフィルタ処理はフィルタB3で行う処理と同じ遅れ処理であり、発電機2の見かけ上の応答を遅らせることでもともと応答の遅いエンジン1と応答性を一致させるために行う。
【0039】
除算器B73は、目標発電機入力仕事率基本値tPo1を仮想目標入力軸回転速度tNi_dで除し、仮想目標エンジントルク基本値tTe_d0を演算する。ただし、ここで使用する仮想目標入力軸回転速度tNi_dは、前回の値(演算周期TJOB前の値)に定数G3を乗じて単位を[rad/s]に換算した値である。
【0040】
上限リミッタ処理部B74は、所定のマップを参照して仮想目標エンジントルク基本値tTe_d0が仮想エンジンの仮想最大トルクを超える部分に対してリミッタをかける上限処理を施して仮想目標エンジントルクtTe_dとする。仮想エンジンの仮想最大トルクは、仮想入力回転数Ne=tNi_d(前回値)に対する仮想最大トルク(図11(D)の仮想最大トルク線参照)を記憶させている仮想最大トルクテーブル部B75から参照した仮想最大トルクTmaxを用いる。
【0041】
次に、図1の電動機出力制限部B4における処理内容について説明する。
【0042】
電動機出力制限部B4は、仮想モデル演算を行い、エンジンおよび発電機の運動方程式、ならびに電力の関係式に基づいて(目標出力軸トルクtTo算出のために用いる)目標駆動出力tPoの値を適切に制限する。ここで、
Te:エンジントルク
Tg:発電機トルク
Ie:エンジン回転部イナーシャ
Ig:発電機回転部イナーシャ
Pg:発電機電力
Po:電動機電力
Pb:バッテリ電力
Lg:発電機損失
Lm:電動機損失
とする。
【0043】
エンジン1および発電機2の回転部の運動方程式は、次式(1)、
Te+Tg=(Ie+Ig)×ω’ ・・・(1)
で表される。ω'はエンジン1および発電機2の角速度ωの微分値(角加速度)である。また、発電機出力Pgは、次式(2)、
Pg=Tg×ω−ηg ・・・(2)
で表される。さらに、発電機2、電動機4、およびバッテリ9の電力の関係は、回生時電力<0とすると、次式(3)、
Pg+Po=Pb ・・・(3)
で表される。ここで、バッテリの許容電力範囲を、
−Pbmax≦Pb≦Pbmax ・・・(4)
とすると、上式(1)から(4)より、
{Te・ω−(Ie+Ig)・ω・ω’}−Lg−Pbmax≦Po≦{Te・ω−(Ie+Ig)・ω・ω’}−Lg+Pbmax ・・・(5)
の関係式が導かれる。電動機電力Poは上記(5)式を満たす必要がある。したがって、目標駆動出力tPoは、
[{Te・ω−(Ie+Ig)・ω・ω’}−Lg−Pbmax]−Lm≦tPo≦[{Te・ω−(Ie+Ig)・ω・ω’}−Lg+Pbmax]−Lm・・・(6)
を満たすように制限する必要がある。
【0044】
図4を参照しながら電動機出力制限部B4の具体的な処理内容を説明する。
【0045】
演算器B41は、エンジン1の慣性モーメントIe[kgm2]と発電機2の慣性モーメントIg[kgm2]との和、単位を[rpm]から[rad/s]に変換した仮想目標入力軸回転速度tNi_d(=ω)、仮想目標入力軸回転速度の変化量ΔtNi_d、演算周期TJOB[sec]に基づき、式(6)の第2項に相当するP2[=(Ie+Ig)×tNi_d×(ΔtNi_d/TJOB)=(Ie+Ig)・ω・ω’][W]を算出する。P2は、エンジン1および発電機2の回転部の運動エネルギ変化に相当する仕事率を示す。
【0046】
エンジントルク推定部B42は、仮想目標エンジントルクtTe_dと仮想目標入力軸回転速度tNi_dとに基づき、エンジントルクの応答を考慮して、時々刻々の仮想エンジントルクTe_cを算出する。エンジントルク推定部B42の具体的な構成については後述する。演算器B43は、仮想目標入力軸回転速度tNi_d、エンジントルク推定値Te_cに基づき、式(6)の第1項に相当するP1[=Te_c×tNi_d=Te・ω][W]を算出する。
【0047】
演算器B44は、P1からP2を減じ、仮想エンジン出力のうち、回転部の運動エネルギ変化に使われる分を差し引いたもの、即ち、仮想発電機入力仕事率推定値Pg_dを算出する。
【0048】
演算器B45は、仮想発電機入力仕事率推定値Pg_dから仮想発電機損失LOSSg_dおよび電動機損失LOSSmを減算して仮想発電機電力tPgを演算する。ここで、仮想発電機損失LOSSg_d((6)式の第3項に相当)は、仮想発電機損失演算部B46により仮想発電機の運転状態(仮想目標入力軸回転数tNi_dおよび仮想目標エンジントルクtTe_d)に基づき所定のマップから参照した値を使用する。電動機損失LOSSmは、(6)式の第5項に相当する。
【0049】
演算器B47は、仮想電動機電力tPgから出力許容変動幅BPLIM1を減じ、目標駆動出力の下限値tPo_L1を演算する。演算器B48は、仮想電動機電力tPgに出力許容変動幅BPLIM1を加え、目標駆動出力の上限値tPo_L2を演算する。ここで出力許容変動幅BPLIM1は、図8に示すように、出力許容変動幅演算部B49により車速VSPに基づき所定のマップから参照した値を使用する。所定のマップには、車速VSPに応じて出力許容変動幅を可変制御し、加速応答性を適切に設定することとしている。即ち、低車速ほど出力許容変動幅を大きくして、加速時に電動機電力応答を速くするようにしている。
【0050】
比較器B50は、目標駆動出力基本値フィルタ処理値tPo0と目標駆動出力下限値tPo_L1の大きい方の値を出力する。比較器B51は、比較器B50の出力と目標駆動出力の上限値tPo_L2の小さい方の値を仮目標駆動出力tPoXとして出力する。
【0051】
仮目標駆動出力tPoXは、図12(C)の目標駆動出力の下限値tPo_L1と上限値tPo_L2との間の出力許容変動幅BPLIM1の範囲内に出力が制限される。目標駆動出力の下限値tPo_L1および上限値tPo_L2は、前述のように、仮想発電電力tPgおよび許容変動量BPLIM1に基づき設定されるものであり、仮想発電電力tPgは、仮想制御目標値演算部B7の拡張設定された内部エンジンモデルおよび内部発電機モデルにより車両の走行状態に応じて算出された仮想制御目標値(仮想目標入力回転数tNi_dおよび仮想目標エンジントルクtTe_d)を含み、前記仮想制御目標値に対して内部エンジンモデル演算手段(B42、B43)および内部発電機モデル演算手段(B41)で推定するエンジン1および発電機2の動作応答を含む。このため、従来のように出力許容変動幅を拡大することなく、大きな定格出力を備える電動機4を仮想エンジンの出力特性に基づいて大きな出力を発生させるよう制御することができ、電動機電力の過渡応答特性を制御して余分な電力変動の防止して燃費向上できる。また、エンジン定格出力範囲内では、前記仮想発電電力tPgに対する前記許容変動量BPLIM1は、実際の発電電力に対するものと同じ意味になるため、前記許容変動量BPLIM1を制御することにより実際の電力変動を所定範囲内に制限でき、余分な電力変動の防止による燃費向上をより容易に実現することができる。
【0052】
演算器B52は、実発電電力推定値PGESTからバッテリ許容入出力BPLIM2を減じ、バッテリ許容入出力の下限値tPo_BL1を演算する。演算器B53は、実発電電力推定値PGESTにバッテリ許容入出力BPLIM2を加え、バッテリ許容入出力の上限値tPo_BL2を演算する。ここでバッテリ許容入出力BPLIM2は、図9に示すように、バッテリ許容入出力演算部B54によりバッテリ温度TMPBATに基づき所定のマップから参照した値を使用する。所定のマップには、バッテリ温度に基づき、低温になるほどバッテリ特性に合せて許容入出力が小さくなるように設定してある。
【0053】
また、発電電力推定値PGESTは、図10に示す発電電力推定値算出ブロックにより求める。即ち、単位を[rpm]から[rad/s]に変換した入力軸回転数Ni[rad/s]とローパスフィルタLPFを経由させた発電機トルクTg[Nm]とを演算器B55により乗算して発電機駆動力Tg・ωを算出する。他方、発電機損失演算部B56により発電機の運転状態(入力軸回転数Niおよび発電機トルクTg)に基づき所定のマップから参照した値により発電機損失LOSSgを求める。そして、演算器B57により発電機駆動力Tg・ωから発電機損失LOSSgを減算して発電電力推定値PGESTを求める。
【0054】
比較器B58は、仮目標駆動出力tPoXとバッテリ許容入出力の下限値tPo_BL1の大きい方の値を出力する。比較器B59は、比較器B58の出力とバッテリ許容入出力の上限値tPo_BL2の小さい方の値を目標駆動出力tPoとして出力する。
【0055】
この処理は、図12(C)において、実際の発電機電力推定値PGESTに対してバッテリ許容入出力±BPLIM2を加算して得られた第2の上下限値tPo_BL1〜tPo_BL2間の範囲PBLIM2に目標駆動出力tPoを制限してバッテリ9の過大な入出力を制限するものである。
【0056】
図5は、エンジントルク推定部B42における処理内容を示したブロック図である。エンジントルク推定部B42は、応答時定数演算部B421とトルク推定値演算部B422とから構成される。
【0057】
応答時定数演算部B421は、図6に示すように、仮想目標エンジントルクtTe_dと仮想目標入力軸回転速度tNi_dの前回値とからエンジン1の体積効率を演算する体積効率演算部B4211、演算した体積効率と仮想目標入力軸回転速度tNi_dの前回値とからエンジン1のシリンダ内の新気割合を演算する新気割合演算部B4212、エンジン1の吸気系容積と排気量と演算した新気割合と仮想目標入力軸回転速度tNi_dの前回値とからエンジン1の応答時定数T_engを演算する演算器B4213から構成される。演算器B4213での演算は、エンジン1の吸気系モデルに基づく次式(7)、
T_eng=2×Vm/(Ve・ηn・Ni)×60 ・・・(7)
による演算である。なお、Vm:吸気系容積、Ve:排気量、ηn:新気割合を夫々示す。
【0058】
トルク推定値演算部B422は、図7に示すように、仮想目標エンジントルクtTe_dに一定のむだ時間処理を施すむだ時間処理部B4221、むだ時間処理後の仮想目標エンジントルクに応答時定数T_engを用いた1次遅れ処理を施してエンジントルク推定値Te_cを求める1次遅れ処理部B4222から構成される。むだ時間は、電制スロットルの応答むだ時間および、燃料噴射の応答むだ時間等を考慮して定める定数である。
【0059】
次に、全体的な作用について説明する。上記制御装置を備えた車両においては、エンジン1の定格出力より大きく設定した定格出力の電動機4を備え、車両の走行状態に基づいて電動機4の制御目標値を算出し、エンジン1の定格出力以下の出力範囲ではエンジン1と同じ出力特性を有しかつエンジン1の定格出力以上の定格出力を有する仮想エンジンの出力特性を示すデータに基づいて前記電動機4の出力制限値を算出して電動機4の出力ないしトルクを制限するようにしている。
【0060】
このため、発電機2で発電された電力が電動機4に供給され駆動輪が駆動されるのであるが、エンジン1の定格出力以下の出力範囲では、エンジン1と同じ出力特性を備える仮想エンジンの出力特性で電動機4を駆動するため、電動機4の消費電力に発電機2の発電電力が一致するようにエンジン1及び発電機2が制御され、バッテリ9の入出力電力、即ち充放電損失を抑えて、余分な電力変動の防止により燃費が向上される。
【0061】
また、エンジン1の定格出力を超える出力範囲では、電動機4の消費電力と発電機2の発電電力は一致しなくなるのであるが、本発明の適用により、エンジン1の定格出力以上の定格出力を有する仮想エンジンの出力特性を示すデータに基づいて前記電動機4の出力制限値を算出して電動機4の出力ないしトルクを制限する。このため、従来のように発電電力を基準とした許容変動幅を拡大することなく、定格出力の大きな電動機4を使うことができ、電動機電力の過渡応答特性を制御でき、バッテリ9から電動機4へ電力を供給するバッテリアシスト制御による最高出力制御を任意に行うことが可能となる。
【0062】
さらに、実際のエンジン1における最高出力回転よりも高回転の領域では回転上昇に対して単調増加となるように設定した仮想エンジン最大トルク曲線を備えるとともに、仮想目標発電機入力仕事率が実際のエンジン1における最高出力よりも高出力の領域では仮想目標発電機入力仕事率の上昇に対して単調増加となるよう仮想目標エンジン回転を設定した内部エンジンモデルおよび内部発電機モデルを備えるため、拡張範囲においても、仮想目標発電量の上昇に伴い、仮想目標エンジン回転および仮想目標エンジントルクも上昇し、エンジン定格出力範囲から不用意な変動を伴わずに拡張範囲まで仮想モデルが動作し、それにより運転性および燃費を良好に保つことができる。
【0063】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0064】
(ア)エンジン1と、前記エンジン1に接続され前記エンジン1の出力を回生する発電機2と、前記発電機2の発電電力の供給を受けて駆動輪を駆動する電動機4と、前記電動機4への供給電力が不足するときに前記電動機4に電力を供給し、供給電力が余ったとき余剰電力を蓄電するバッテリ9と、を備え、前記電動機4の定格出力を前記エンジン1の定格出力より大きく設定した車両制御装置であって、車両の走行状態に基づいて前記電動機4の制御目標値tPo0を算出する手段(B1〜B3)と、前記エンジン1の出力特性を示すデータ(B17)および前記電動機制御目標値tPo0に基づいて前記エンジン1の制御目標値tTeを算出する手段(B15、B16)と、前記エンジン1の定格出力以下の出力範囲では前記エンジン1と同じ出力特性を有しかつ前記エンジン1の定格出力以上の定格出力を有する仮想エンジンの出力特性を示すデータ(B7)、即ち、仮想目標入力軸回転数tNi_dおよび仮想目標エンジントルクtTe_dに基づいて前記電動機4の出力制限値を算出する手段(B4)と、前記電動機出力制限値に基づいて前記電動機4の出力tPoないしトルクtToを制限する手段(B4)とを備える。このため、従来のように出力許容変動幅を拡大することなく、大きな定格出力を備える電動機4を仮想エンジンの出力特性に基づいて大きな出力を発生させるよう制御することができる。即ち、エンジン1の定格出力以下の出力範囲では、前記エンジン1と同じ出力特性により電動機4を制御してバッテリ9の充放電による余分な電力変動を防止できることによる燃費向上と、エンジンの定格出力以上の出力範囲では、バッテリアシスト制御による最高出力制御を任意に行うことが可能となる。
【0065】
(イ)前記電動機4の出力制限値を算出する手段が、車両の走行状態に基づいて内部エンジンモデルおよび内部発電機モデルによりエンジン1および発電機2に対する仮想の制御目標値(仮想目標入力回転数tNi_dおよび仮想目標エンジントルクtTe_d)を算出する仮想制御目標値演算部(B7)と、前記仮想制御目標値に対するエンジン1および発電機2の動作応答を推定する内部エンジンモデル演算手段(B42、B43)および内部発電機モデル演算手段(B41)と、前記両内部モデル演算手段(B42、B43)の動作応答に基づいて仮想発電電力tPgを算出する手段(B44、B45)と、前記仮想発電電力tPgに対する電動機出力の許容変動量BPLIM1を算出する手段(B49)と、前記許容変動量BPLIM1および前記仮想発電電力tPgに基づいて電動機4の出力制限値tPo_L1およびtPo_L2を算出する手段(B47、B48)と、前記電動機出力制限値tPo_L1およびtPo_L2に基づいて電動機4の出力tPoあるいはトルクtToを制限する手段(B50、B51)からなり、前記仮想制御目標値演算部(B7)の内部エンジンモデルの定格出力を少なくとも実際の電動機4の定格出力および電力損失を満足するように拡張設定し、また前記内部発電機モデルは前記拡張設定された内部エンジンモデルの定格出力を満足するように拡張設定することとした。このため、前記許容変動量MPLIMを大きくすることなく、定格の大きな電動機4を使うことができ、電動機電力の過渡応答特性の制御と、バッテリアシスト制御による最高出力制御を任意に行うことが可能となり、これにより余分な電力変動の防止して燃費向上でき、最高出力向上による運転性向上を両立させることができる。
【0066】
(ウ)前記拡張設定された仮想制御目標値に対するエンジン1および発電機2の動作応答を推定する内部エンジンモデル演算手段(B42、B43)および内部発電機モデル演算手段(B41)は、その動作を規定するパラメータ設定に関し、実際のエンジン1の定格出力範囲内においては、実際のエンジン1および発電機2と等しい応答を示すように設定することとしたため、エンジン定格出力範囲内では、前記仮想発電電力tPgに対する前記許容変動量BPLIM1は、実際の発電電力に対するものと同じ意味になるため、前記許容変動量BPLIM1を制御することにより実際の電力変動を所定範囲内に制限でき、余分な電力変動の防止による燃費向上をより容易に実現することができる。
【0067】
(エ)エンジン1・発電機2の各制御目標値算出手段は、目標発電機入力仕事率tPo2を算出する手段(B10)と、前記目標発電機入力仕事率tPo2に基づいて目標エンジン回転数tNiを算出する手段(B13)と、エンジン回転数Niおよび前記目標発電機入力仕事率tPo2に基づいて目標エンジントルクtTeを算出する手段(B15〜B17)を有し、前記仮想制御目標値算出手段(B7)は、仮想目標発電機入力仕事率tPo1を算出する手段(B9)と、前記仮想目標発電機入力仕事率tPo1に基づいて仮想目標エンジン回転数tNi_dを算出する手段(B71)と、前記仮想目標エンジン回転数tNi_dおよび前記仮想目標発電機入力仕事率tPo1に基づいて仮想目標エンジントルクtTe_dを算出する手段(B73〜B75)とからなり、前記仮想目標エンジントルク算出手段(B73〜B75)は、内部エンジンモデルの仮想エンジン最大トルクTmaxを算出する手段(B75)と、前記仮想エンジン最大トルクTmaxに基づいて前記仮想目標エンジントルクtTe_d0の制限処理を行う手段(B74)とを有し、前記仮想エンジン最大トルク曲線を、実際のエンジン1における最高出力回転以下の領域では実際のエンジン1の最大トルク曲線に一致させる一方、最高出力回転より高回転の領域では電動機4の定格に合せて拡張するとともに、前記仮想目標エンジン回転数算出手段(B71)は、前記仮想目標発電機入力仕事率tPo1が実際のエンジン1における最高出力以下の領域では実際のエンジン1・発電機2の制御目標値である目標エンジン回転数tNiと一致させる一方、最高出力より高出力の領域では電動機4の定格に合せて拡張する構成を備える。このため、エンジン定格出力範囲内では、前記仮想発電電力tPgを容易かつ的確に実際の発電電力に合せることができる。
【0068】
(オ)拡張設定された内部エンジンモデルの仮想エンジン最大トルク曲線Tmaxは、実際のエンジン1における最高出力回転よりも高回転の領域では回転上昇に対して単調増加となるように設定するとともに、前記拡張設定された内部エンジンモデルの仮想目標エンジン回転数tNi_dは、仮想目標発電機入力仕事率tPo1が実際のエンジン1における最高出力よりも高出力の領域では、仮想目標発電機入力仕事率tPo1の上昇に対して単調増加となるように設定することとしたため、拡張範囲においては、仮想目標発電機入力仕事率tPo1の上昇に伴い、仮想目標エンジン回転数tNi_dおよび仮想目標エンジントルクtTe_dも上昇するため、エンジン定格出力範囲から不用意な変動を伴わずに拡張範囲まで仮想モデルが動作し、それにより運転性および燃費を良好に保つことができる。
【0069】
なお、以上に説明した本発明の実施の形態は本発明が適用される車両の構成の一例を示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。特に、図2以降に示したブロック図はそれぞれ数多くの変形例が考えられる。また、上記実施形態では電動機の出力を制限する構成としているが、電動機のトルクを制限する構成としてもよく、この場合も同様の作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される車両のシステム構成図。
【図2】統合コントロールユニットの制御内容を示すブロック図。
【図3】仮想制御目標値演算部における処理内容を示したブロック図。
【図4】電動機出力制限部における処理内容を示したブロック図。
【図5】エンジントルク推定部における処理内容を示したブロック図。
【図6】応答時定数算出部における処理内容を示したブロック図。
【図7】トルク推定値算出部における処理内容を示したブロック図。
【図8】出力許容変動幅演算部における処理内容を示したブロック図。
【図9】バッテリ許容入出力算出部における処理内容を示したブロック図。
【図10】発電電力推定値算出部における処理内容を示したブロック図。
【図11】目標入力軸回転速度演算部B13および最大トルクテーブル部B17で用いられる目標入力軸回転数テーブル(A)および最大トルクテーブル(B)、並びに、目標入力軸回転速度演算部B71および最大トルクテーブル部B75で用いられる内部モデル用目標入力軸回転数テーブル(C)および内部モデル用最大トルクテーブル(D)を夫々示すグラフ。
【図12】アクセルペダルの踏み込み(A)に対する従来例での電動機電力変化(B)および本発明での電動機電力変化(C)を示すタイムチャート。
【符号の説明】
1 エンジン
2 発電機
4 電動機
9 バッテリ
10 統合コントロールユニット
11 エンジンコントロールユニット
12 トランスミッションコントロールユニット
21 出力軸回転速度センサ
22 アクセル操作量センサ
24 入力軸回転速度センサ
26 車速センサ
Claims (5)
- エンジンと、エンジンに接続されてエンジンの出力を回生する発電機と、発電機の発電電力の供給を受けて駆動輪を駆動する電動機と、電動機への供給電力が不足するときに電動機に電力を供給し、供給電力が余ったとき余剰電力を蓄電するバッテリと、を備え、前記電動機の定格出力を前記エンジンの定格出力より大きく設定した車両制御装置において、
車両の走行状態に基づいて前記電動機の制御目標値を算出する手段と、
前記エンジンの出力特性を示すデータおよび前記電動機制御目標値に基づいてエンジンの制御目標値を算出する手段と、
前記エンジンの定格出力以下の出力範囲ではエンジンと同じ出力特性を有しかつエンジンの定格出力以上の定格出力を有する仮想エンジンの出力特性を示すデータに基づいて前記電動機の出力制限値を算出する手段と、
前記電動機出力制限値に基づいて前記電動機の出力ないしトルクを制限する手段と、を備えることを特徴とする車両用制御装置。 - エンジンと、回転子がエンジンのクランクシャフトとともに回転可能な発電機と、回転子が駆動輪とともに回転可能な電動機と、前記発電機および前記電動機において消費・回生する電力を放電・蓄電するバッテリと、エンジン・発電機・電動機それぞれの制御目標値を算出する手段と、前記制御目標値に基づいてエンジン・発電機・電動機それぞれの動作を制御する装置と、車両の走行状態に基づいて内部エンジンモデルおよび内部発電機モデルによりエンジンおよび発電機に対する仮想の制御目標値を算出する手段と、前記仮想制御目標値に対するエンジンおよび発電機の動作応答を推定する内部エンジンモデル演算手段および内部発電機モデル演算手段と、前記両内部モデル演算手段の動作応答に基づいて仮想発電電力を算出する手段と、前記仮想発電電力に対する電動機出力の許容変動量を算出する手段と、前記許容変動量および前記仮想発電電力に基づいて電動機の出力制限値を算出する手段と、前記電動機出力制限値に基づいて電動機の出力あるいはトルクを制限する手段とを有し、前記電動機の定格出力が前記エンジンの定格出力よりも大きい組合せとする車両の制御装置において、
前記内部エンジンモデルの定格出力を少なくとも電動機の定格出力および電力損失を満足するように拡張設定し、
前記内部発電機モデルは前記拡張設定された内部エンジンモデルの定格出力を満足するように拡張設定することを特徴とする車両制御装置。 - 前記拡張設定された仮想制御目標値に対するエンジンおよび発電機の動作応答を推定する内部エンジンモデル演算手段および内部発電機モデル演算手段は、実エンジンの定格出力範囲内においては、実エンジンおよび発電機と等しい応答を示すようにその動作を規定するパラメータを設定することを特徴とする請求項2に記載の車両制御装置。
- 前記エンジン・発電機の各制御目標値算出手段は、目標発電機入力仕事率を算出する手段と、前記目標発電機入力仕事率に基づいて目標エンジン回転数を算出する手段と、エンジン回転数および前記目標発電機入力仕事率に基づいて目標エンジントルクを算出する手段を有し、
前記仮想制御目標値算出手段は、仮想目標発電機入力仕事率を算出する手段と、前記仮想目標発電機入力仕事率に基づいて仮想目標エンジン回転数を算出する手段と、前記仮想目標エンジン回転数および前記仮想目標発電機入力仕事率に基づいて仮想目標エンジントルクを算出する手段とからなり、
前記仮想目標エンジントルク算出手段は、内部エンジンモデルの仮想エンジン最大トルクを算出する手段と、前記仮想エンジン最大トルクに基づいて前記仮想目標エンジントルクの制限処理を行う手段とを有し、前記仮想エンジン最大トルク曲線を、実エンジンにおける最高出力回転以下の領域では実エンジンの最大トルク曲線に一致させる一方、最高出力回転より高回転の領域では電動機定格に合せて拡張するとともに、
前記仮想目標エンジン回転数算出手段は、前記仮想目標発電機入力仕事率が実エンジンにおける最高出力以下の領域では実エンジン・発電機の制御目標値である目標エンジン回転数と一致させる一方、最高出力より高出力の領域では電動機定格に合せて拡張することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の車両制御装置。 - 前記拡張設定された内部エンジンモデルの仮想エンジン最大トルク曲線は、実エンジンにおける最高出力回転よりも高回転の領域では回転上昇に対して単調増加となるように設定するとともに、
前記拡張設定された内部エンジンモデルの仮想目標エンジン回転数は、仮想目標発電機入力仕事率が実エンジンにおける最高出力よりも高出力の領域では、仮想目標発電機入力仕事率の上昇に対して単調増加となるように設定することを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか一つに記載の車両制御装置。
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