JP4066414B2 - 空調ダクトの溶着構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブロー成形された空調ダクトのパネル部材への溶着構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、特開平11−321287号公報に開示されるように、ブロー成形された空調ダクトをパネル部材としての自動車のインストルメントパネルに振動溶着することが行われている。この振動溶着の際には、振動溶着機の保持治具により空調ダクト及びインストルメントパネルをそれぞれ保持し、空調ダクトの溶着部とインストルメントパネルの被溶着部とを圧接させた状態で振動させるのであるが、円筒状に形成された空調ダクトの周壁に保持治具を押し当てるようにすると、そのときに作用するインストルメントパネルからの反力により空調ダクトが大きく屈曲変形する虞れがある。こうなると、溶着部と被溶着部とを狙い通りに圧接することが困難となるので、前記従来例では、空調ダクトの周壁からインストルメントパネルに沿って延出する取付フランジを設け、この取付フランジのインストルメントパネル側の面に溶着部を突設して反対側の面に保持治具を押し当てることで溶着部を狙い通りに圧接して確実に溶着するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来例のように、空調ダクトの周壁から延出する取付フランジを介して空調ダクトを固定するようにすると、空調ダクトの本体部分とインストルメントパネルへの溶着部とが離れるので、例えば自動車の走行時の振動等に対して空調ダクトが振動し異音を発生させる場合がある。
【0004】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空調ダクト自体の溶着部に対して振動溶着時の荷重方向を適切に設定することにより、空調ダクトをパネル部材へ強固に溶着することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明では、空調ダクトの周壁における溶着部と振動溶着機の保持治具に保持される保持部との間を略直線状に延びるように形成した。
【0006】
具体的には、1の発明では、ブロー成形された空調ダクトを振動溶着機の保持治具により保持してパネル部材に振動溶着するようにした空調ダクトの溶着構造を対象とする。そして、前記空調ダクトの周壁には、前記パネル部材の被溶着部に向かって突出する溶着部と、該溶着部の略反対側に位置し振動溶着に際して前記保持治具に保持される保持部とを設け、前記空調ダクトの周壁における溶着部と保持部との間には、略直線状に延びるように形成された平坦壁部を設ける構成とする。
【0007】
この構成によれば、空調ダクトの周壁の保持部が振動溶着機の保持治具により保持され、該空調ダクトの溶着部とパネル部材の被溶着部とを圧接した状態で両者を相対振動させて空調ダクトがパネル部材に溶着される。この際、空調ダクトの周壁における溶着部と保持部との間には略直線状に延びるように形成された平坦壁部が設けられているので、前記振動溶着時にはその平坦壁部がパネル部材からの反力に対して突っ張るようになり、空調ダクトの周壁が大きく屈曲変形することが防止される。これによって、空調ダクトの溶着部とパネル部材の被溶着部とを狙い通りに圧接させた状態で、空調ダクトの溶着部をパネル部材に直接振動溶着できるので、空調ダクトを強固に固定することが可能となる。
【0008】
2の発明では、1の発明において、空調ダクトの周壁の平坦壁部の一端を溶着部の両側に連続して2つ設け、該2つの平坦壁部の他端は溶着部から保持部側へ行くに従って互いに離れ該平坦壁部の他端における前記各保持部の両端が空調ダクトの周壁で連続して形成されている構成とする。
【0009】
この構成によれば、振動溶着時のパネル部材からの反力は溶着部の両側に連続して設けられた2つの平坦壁部にそれぞれ作用する。この際、2つの平坦壁部の他端は保持部側へ行くに従って互いに離れているので、両平坦壁部は溶着部と保持部との間で互いに突っ張るようになり、溶着部を両平坦壁部により被溶着部に安定して圧接した状態で、空調ダクトの溶着部をパネル部材に確実に振動溶着することが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車用空調ダクト1を示し、この空調ダクト1は筒状をなし、図2に示すように車室前部のパネル部材としてのインストルメントパネル3の内部に配設されている。
【0012】
このインストルメントパネル3は、フロントウインド(図示せず)の下端近傍から車室後側へ延びる上壁部3aと該上壁部3aの後端から下方へかつ下側へ行くほど若干車体後側に位置するように傾斜して延びる縦壁部3bとからなる。このインストルメントパネル3の縦壁部3bの上部における車幅方向両端近傍には、乗員へ向けて調和空気が吹き出すサイドベント吹出口5,5がそれぞれ形成されている。また、その縦壁部3bにおけるサイドベント吹出口5,5の間の略中央部には、同様に乗員へ向けて調和空気が吹き出すセンタベント吹出口9,9が2つ車幅方向に並設されている。
【0013】
前記インストルメントパネル3内部の車幅方向略中央には、図示しないが、空調ユニットが配設されており、この空調ユニットで生成された調和空気が空調ダクト1によってインストルメントパネル3の前記吹出口5,5,9,9に導かれるようになっている。
【0014】
前記空調ダクト1は、空調ユニットとインストルメントパネル3の上壁部3aとの間に位置していて、インストルメントパネル3の車幅方向両端に亘って延びている。空調ダクト1の車幅方向中央部の下壁には、図示しないが、前記空調ユニットの上部に形成された調和空気吹出口に接続される調和空気導入口が形成され、空調ダクト1内に調和空気が導入されるようになっている。また、空調ダクト1の車幅方向中央部の車体後側壁部には、前記インストルメントパネル3のセンタベント吹出口9,9に接続される接続口(図示せず)が形成されている。
【0015】
前記空調ダクト1の車幅方向中央部よりも右側の右側ダクト部の周壁11はインストルメントパネル3に配設されるメータユニット(図示せず)の車体前方を廻り込むように湾曲形成されており、その右端部が前記右側のサイドベント吹出口5に接続されている。一方、空調ダクト1の車幅方向中央部よりも左側の左側ダクト部の周壁13は比較的直線状に形成されており、その左端部が前記左側のサイドベント吹出口5に接続されている。
【0016】
前記空調ダクト1の左側ダクト部の周壁13は、インストルメントパネル3の縦壁部3bの上部近傍に位置しており、その断面形状はインストルメントパネル3の上壁部3aと縦壁部3bとの境界近傍に頂部が位置するような大略三角形の閉断面とされている。左側ダクト部の周壁13における車体後側の壁部は、インストルメントパネル3の上壁部3aと縦壁部3bとの境界近傍の前記頂部から該縦壁部3bに沿うように下方へ略直線状に延びるように形成された後側平坦壁部13aとされている。また、この左側ダクト部の周壁13における車体前側の壁部は、前記頂部から車体前側へ行くほど下方に位置するように傾斜して略直線状に延びるように形成された前側平坦壁部13bとされ、該前側平坦壁部13bの前端は後側平坦壁部13aの後端よりも下方に位置している。すなわち、周壁13の前側平坦壁部13b及び後側平坦壁部13aは、前記頂部において連続しかつ下側へ行くに従って互いに離れるように形成されている。
【0017】
また、前記左側ダクト部の周壁13における前側平坦壁部13bの前端及び後側平坦壁部13aの後端は下壁部13cの前端及び後端にそれぞれ連続している。該下壁部13cは、その前方が最も下方に位置するように湾曲形成されている。この下壁部13cの車体後縁にはそこから後側平坦壁部13aの延びる方向に沿って斜め下方へ延出する後側突出部13dが形成されている。該後側突出部13dの先端には車体後側へ傾斜して上方へ延びる溶着部13eが連なっており、従って、後側突出部13dは略くの字形状を有している。この後側突出部13dの溶着部13eは、インストルメントパネル3の縦壁部3bから空調ダクト1側へ突出して車幅方向に延びる突条部3cの下側に当接するようになっている。一方、左側ダクト部の周壁13における下壁部13cの車体前縁には、そこから車体前側へ延びた後、前記前側平坦壁部13bの延びる方向に沿うように斜め下方へ延出する前側突出部13fが形成されている。
【0018】
前記左側ダクト部の周壁13における前側平坦壁部13bと後側平坦壁部13aとが連続して一体的に結合する前記頂部近傍には、そこからインストルメントパネル3の上壁部3a後端に向かって突出する溶着部21が形成されている。この溶着部21及び前記溶着部13eは、これらの先端が当接するインストルメントパネル3の上壁部3a後端及び前記突条部3cの下側の縦壁部3bにそれぞれ振動溶着されるようになっており、上壁部3a後端及び突条部3cの下側の縦壁部3bがそれぞれ被溶着部とされている。また、図2に示すように、左側ダクト部の周壁13の左端近傍には、該周壁13の前側平坦壁部13bからインストルメントパネル3の上壁部3aへ延びる脚部25が形成されており、該脚部25の上面が上壁部3a裏面に溶着されるようになっている。
【0019】
前記空調ダクト1をインストルメントパネル3に振動溶着するための振動溶着機(図示せず)は、空調ダクト1を保持する保持治具29と、インストルメントパネル3を保持する保持治具(図示せず)とを備えている。保持治具29は、その空調ダクト1側である先端側が車体前後方向に分かれる二股状に形成されている。保持治具29の車体後側の後側部29aは、その先端面が左側ダクト部の周壁13における後側突出部13d下面の略全体に亘って当接するように形成されている。一方、保持治具29の車体前側の前側部29bは、その先端面が周壁13の下壁部13cの前端側下面と前側突出部13fの下面との略全体に亘って当接するように形成されている。従って、後側突出部13dが保持治具29の後側部29aにより保持される保持部とされ、一方、前側突出部13fが保持治具29の前側部29bにより保持される保持部とされている。そして、この保持治具29の基端側(図1の下方)は図示しない油圧シリンダに連結されていて、前記空調ダクト1の溶着部21をその突出方向(図1に示す矢印の方向)に上壁部3aの後端へ圧接するように構成されている。また、周壁13における後側突出部13dの溶着部13eは、保持治具29の後側部29aにより縦壁部3bにおける突条部3c下側に圧接されるようになっている。
【0020】
前記空調ダクト1をインストルメントパネル3に振動溶着して取り付ける際には、まず、インストルメントパネル3を振動溶着機にセットするとともに、空調ダクト1を振動溶着機の保持治具29にセットする。そして、保持治具29により空調ダクト1をインストルメントパネル3側へ押圧しながら、該インストルメントパネル3のみを振動させることで、空調ダクト1の溶着部21と後側突出部13dの溶着部13eとをインストルメントパネル3に溶着する。
【0021】
前記保持治具29により空調ダクト1を押圧した際には、保持治具29の前側部29bによって下壁部13cに加わる押圧力は前側平坦壁部13bにより溶着部21に伝達するとともに、保持治具29の後側部29aによって下壁部13cに加わる押圧力は後側平坦壁部13aにより溶着部21に伝達する。このとき、前側平坦壁部13b及び後側平坦壁部13aはともに略直線状に延びるように形成されているので、両平坦壁部13b,13aは溶着部21と下壁部13cとの間で突っ張るようになり、空調ダクト1が押圧方向に潰れるように大きく屈曲変形することはない。これにより、保持治具29による押圧力を空調ダクト1の溶着部21,13eへ狙い通りに作用させることができる。
【0022】
また、左側ダクト部の周壁13における前側平坦壁部13b及び後側平坦壁部13aは、溶着部21の両側に連続しかつ下壁部13c側へ行くに従って互いに離れているので、下壁部13cに作用した押圧力を溶着部21にその両側から集中させて作用させることができ、このことによって周壁13を殆ど変形させることなく溶着部21とインストルメントパネル3の上壁部3a後端とを確実にかつ安定して圧接することが可能となる。
【0023】
これらのことにより、空調ダクト1の周壁13をインストルメントパネル3に直接溶着することができ、自動車の走行時の振動等に対しても空調ダクト1が振動し、異音を発生させることがない。
【0024】
尚、この実施形態では、空調ダクト1をインストルメントパネル3の内部に配設する場合について説明しているが、これに限らず、例えば空調ダクトを車室のトリム材の内部に配設し、両者を振動溶着する場合にも適用できる。
【0025】
さらに、この実施形態では、振動溶着時に空調ダクト1を保持治具29によりインストルメントパネル3側に押圧して該インストルメントパネル3を振動させるようにしているが、これに限らず、インストルメントパネル3を空調ダクト1側に押圧して該空調ダクト1を振動させるようにしてもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、1の発明に係る空調ダクトの溶着構造によると、ブロー成形された空調ダクトを振動溶着機の保持治具により保持してパネル部材に振動溶着するようにしたものであって、空調ダクトの周壁には、パネル部材の被溶着部に向かって突出する溶着部と保持治具に保持される保持部とを設け、空調ダクトの周壁における溶着部と保持部との間に、略直線状に延びる平坦壁部を設けたので、振動溶着時に空調ダクトの溶着部とパネル部材の被溶着部とを狙い通りに圧接させた状態で振動溶着できる。このことで、空調ダクトの周壁をパネル部材に直接振動溶着できるので、パネル部材に発生する振動等によって空調ダクトが振動することはなく、そのことによる異音の発生を未然に防止できる。
【0027】
2の発明では、空調ダクトの周壁の平坦壁部を2つ設け、該2つの平坦壁部は溶着部から保持部側へ行くに従って互いに離れ平坦壁部の他端における各保持部の両端が空調ダクトの周壁で連続しているので、両平坦壁部は溶着部と保持部との間で互いに突っ張るようになり、溶着部を両平坦壁部により被溶着部に安定して圧接した状態で、空調ダクトの溶着部をパネル部材に確実に振動溶着することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る空調ダクトの溶着構造を示す図2におけるA−A線断面図である。
【図2】 空調ダクトを自動車のインストルメントパネルに溶着した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 空調ダクト
3 インストルメントパネル(パネル部材)
13 周壁
13a 後側平坦壁部
13b 前側平坦壁部
13d 後側突出部(保持部)
13e 溶着部
13f 前側突出部(保持部)
21 溶着部
29 治具

Claims (1)

  1. ブロー成形された空調ダクトを振動溶着機の保持治具により保持してパネル部材に振動溶着するようにした空調ダクトの溶着構造であって、
    前記空調ダクトの周壁には、前記パネル部材の被溶着部に向かって突出する第1溶着部が設けられるとともに、該第1溶着部の略反対側に位置し振動溶着に際して前記保持治具に保持される一側保持部及び他側保持部が互いに該周壁の周方向に離れて設けられ、
    前記空調ダクトの周壁における第1溶着部と一側保持部との間には、略直線状に延びるように形成された一側平坦壁部が設けられ、該周壁における第1溶着部と他側保持部との間には、略直線状に延びるように形成された他側平坦壁部が設けられ、
    前記一側平坦壁部の一側保持部側の端部には、前記パネル部材に溶着される第2溶着部が連続して設けられていることを特徴とする空調ダクトの溶着構造。
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