JP4066358B2 - ヘッドレスト支持装置 - Google Patents

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徳三 小林
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などのヘッドレスト支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の座席には、従来より、図6及び図7に示すように安全性を確保するためのヘッドレスト1がバックシート2の上部に装着されており、該ヘッドレストはヘッドレスト支持装置3により支持されている。
上記ヘッドレスト支持装置3は、例えば次のようなものとなされるのであって、即ち、バックシート2の案内手段4、4により第一特定方向(上下方向)f1への変位可能に案内される筒状の支柱部材5に複数の凹み部5aを特定方向f1へ列設し、一方では案内手段4、4と同体状個所に第一特定方向f1に対して特定の方向に交叉した第二特定方向(例えば、バックシート2の水平な左右方向)f2へ変位可能となされた係止部材6を設け、該係止部材6が第二特定方向f2の一定方向(以下、係止側方向)へ変位されたときに凹み部5aの任意な何れかに係合して、支柱部材5の第一特定方向f1への変位を規制する構造となされる(例えば特許文献1参照)。なお図中7は係止部材6を係止側へ特定力で付勢するためのスプリングである。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−346643号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したヘッドレスト支持装置3において、凹み部5aに係止部材6の透孔の内周縁6aを確実に係止させるには、図8及び図9に示すように筒状の支柱部材5に特定形状の凹み部5aを比較的深く形成することが必要であるが、該凹み部5aをそのように形成すると支柱部材5の凹み部5a個所の周壁の厚さt1が小さくなってその部分の強度が減少するため、支柱部材5の材料には、該厚さt1が小さくなっても強度不足とならないような十分な厚さを有する管部材を使用することが必要であり、このことが装置全体の軽量化を阻むものとなっている。
本発明は、所要の機能を維持させることができ、しかも使い勝手の損なわれないものである上に、構造を軽量化させることができ、さらには加工を容易化させることのできるヘッドレスト支持装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、請求項1に記載したように、一特定方向へ変位可能に案内される支柱部材に複数の凹み部を前記特定方向へ列設し、一方では前記特定方向と特定の方向に交叉した第二特定方向へスプリングで弾発されて変位可能となされた係止部材を設け、該係止部材が前記第二特定方向へ変位されたときに該係止部材に形成された係合部が前記凹み部の何れかに入り込んでその底面部に係合して前記支柱部材の第一特定方向への変位を規制するようになされたヘッドレスト支持装置において、前記底面部と前記係合部を前記第二特定方向側に所定の傾斜角度で拡がる傾斜面に形成し、前記係合部が前記底面部に係合したとき、前記係合部が前記底面部に対してくさび作用を発揮して圧接するようにしたものである。
【0006】
この発明では、前記係止部材が前記第二特定方向へ特定力(スプリングの弾発力)で押圧されて変位したとき、前記係止部材の係合部に形成された傾斜面が前記凹み部の中に入り込み、かつ底面部に当接してこれをくさび作用を発して圧接した状態となり、この際、前記傾斜面から前記底面部に作用する前記凹み部の深さ方向へ向かう押圧力は、前記傾斜面と前記底面部の傾斜に基づくくさび作用により前記特定力が倍加されたものとなって大きなものとなる。したがって、前記係止部材の前記支柱部材に対する係合力が強くなり、前記係止部材に大きな力がかかったとしても、位置がずれ難い。また、前記係止部材が前記支柱部材の凹み部から外れるためには、長い距離動かなければならないから、この効果として前記凹み部の深さを浅くできる。このため、前記支柱部材に薄肉パイプを使用して肉厚一定の凹み加工をすればよく、加工も容易になる。
【0007】
上記発明は次のように具体化することができる。
即ち、請求項2に記載したように、前記係止部材が前記支柱部材を挿通する透孔を有し、該透孔の内周縁の一部を前記係合部とした構成にすることができる。これによれば、前記透孔は前記支柱部材に対して前記係止部材の前記第二特定方向の移動を的確に案内するものとなる。
【0008】
また、請求項3に記載したように、前記凹み部並びに前記係合部が前記第二特定方向を挟んで対称に形成されている構成にすることができる。これによれば、係合面積が2倍になり、係止強度を倍加させ係止作用を安定化させるものとなる。また、2つの前記凹み部から前記係止部材に付与される押圧力が相殺し合うようになるため、前記した各凹み部に対応するくさび作用により倍加された押圧力のバランスが取れて前記支柱部材や前記係止部材以外のものに作用し難くなる。
【0009】
さらに、請求項4に記載したように、前記支柱部材がパイプ材で構成され、前記凹み部が同じ肉厚を有するプレス加工で形成される構成にすることができる。これによれば、薄肉のパイプ材が使用でき、軽量化が可能になる
【0010】
【発明の実施の形態】
以下の説明において、従来例と同一部位には同一符号を使用する。
先ず、本発明の第一実施例について説明すると、図1は該第一実施例に係るヘッドレスト支持装置の要部を示す平面視断面図、図2は図1のx1−x1部を示す断面図、図3は凹み部の変形例を示す断面図である。
【0011】
これらの図に示すように、係止部材6は第二特定方向f2と平行に配置された方形板となされていて、中央部に略長円形状の透孔8を形成されている。該透孔8は、長さをこれに挿通される支柱部材5に対し係止部材6が第二特定方向f2へ必要距離だけ往復変位され得る大きさとなされ、また、第二特定方向f2と直交した方向の寸法(巾)を支柱部材5の外周面の直径と略同一となされている。そして、支柱部材5の凹み部5aに嵌め込まれる側の内周縁6aを係合面(係合部)9としている。この係合部9は、第二特定方向f2側に向かって傾斜角度θで拡がる傾斜面に形成してある
【0012】
この係合部9の傾斜角度θは、第二特定方向f2に対して、例えば30度〜70度程度になされると共に、その長さは、凹み部5aの底面部aの長さよりも充分長くなされている。
【0013】
一方、支柱部材5は比較的薄肉のパイプ材で形成され、従来のものに比べて強度低下の少ない形状の凹み部5aが形成されている。これは係合部9が凹み部5aに嵌まり込んで前記第二特定方向の比較的長い距離に亘って前記凹み部5aの底面部aに圧接する構造であり、車の揺れや振動で係合が外れる心配が少ないからである。この強度低下の少ない形状(浅い凹みやなだらかな形状)を可能にした事で薄肉のパイプ材の使用を可能にしている
【0014】
この場合、凹み部5aの底面部aは第一特定方向f1と平行な平面となされているし、また、一方(上側)の側面bを底面部aに成る可く垂直に近い平面を有するものとなすと共に、他方(下側)の側面cを底面部aから離れるに伴って漸次に浅くなるように基礎周面5bに連続される傾斜面となされている。
【0015】
上記支柱部材5はパイプ材をプレス加工することにより製作する
その凹み部5aは浅いもので良く、例えば、従来の深さの凡そ3/4〜1/4程度(実際上は半分以下程度)でも充分で、プレス成形でのパイプ材の厚さ減少を最低に抑えられる
また、くさび作用による強い押圧であり、凹み部5aの形状は必ずしもシャープである必要がなく、プレス金型は芯金を省く事も可能である。
図3に示すものは芯金を使用しない場合の凹み部5aの断面形状で、底面部aに垂直となるような側面b、cが形成されてはおらず、なだらかである。いずれの場合も、管壁全体を凹ませており、凹み部5aは、他の部分と同一の肉厚を有している。
このような凹み部5aの形状が強度低下を最低に抑え、支柱部材5の厚みの軽減を可能にし、加工費も大幅に低減できるのである
【0016】
該第一実施例の使用例及び各部の作用について説明する。
ヘッドレスト1を特定高さに固定させるときは、図1及び図2に示すように、係止部材6の係合部9を任意な1つの凹み部5aに嵌め込んだ状態となすのであり、該状態はその位置で係止部材6がスプリング7の弾力で第二特定方向f2へ移動し、くさび作用で方向を変えられて増大され、係合部9が凹み部5aの底面部aに圧接する。なお、透孔8の第二特定方向f2に真っ直ぐな他方の内周縁6aは、支柱部材6の外周に接触しており、この両面で支柱部材6を挟み付けている
【0017】
保持状態では、このスプリング7の弾力で第二特定方向f2へ押圧し、挟み込む形の係止状態を保持するのである。即ち、スプリング7の弾力が係合部9の傾斜角度θによって係合部9がくさび作用を発するまでに増大された強い力で凹み部5aの底面部aを圧接するのである。尚、係止の外れ難さは、支柱部材5の凹み部5aの深さと傾斜角度θ及びスプリング弾力の大小で決まり、透孔8の周縁部の存在は、係止部材6の変形を防いでいる
【0018】
ここで車の揺れや振動による係止部材6と支柱部材5の係止外れを左右する第二特定方向f2の移動距離は、傾斜角度θの大小で増減されるので(傾斜角度θが小さいほど移動距離は増す反面、くさび作用が増大されて係止力は強くなる)、適正な設定で浅い凹み部5aを実現させ、合理的な薄肉の支柱部材5を選定する
【0019】
次に、ヘッドレスト1の高さを変更するときは、一方の手指の操作により、係止部材6をスプリング8の弾力に抗して非係止側へ移動させてその位置を保持させる。これにより係止部材6の係合部9は、これの嵌り込んでいた凹み部5aから外方へ離脱した状態となる。該離脱状態を保持したまま、他方の手でヘッドレスト1に第一特定方向f1の操作力を付与するのであり、これにより支柱部材5はヘッドレスト1と同体状に上下変位するものとなる。
【0020】
ヘッドレスト1を希望する高さ近傍に位置させた後、これまで係止部材6を操作していた手指を離す。このとき、係止部材6の係合部9が凹み部5aと正面で対向した状態でなければ、係合部9は支柱部材5の凹み部5a近傍の外周面に衝接した状態となる。該状態の下で、支柱部材5をヘッドレスト1と共に幾分上下何れかへ変位させるのであり、該変位により、係止部材6の係合部9が凹み部5aと正面で対向したとき、係止部材6はスプリング7の弾力で係止側へ移動されてその凹み部5a内に嵌り込み、先と同様に、係合部9がその凹み部5aの底面部aに圧接して支柱部材5をその凹み部5aに対応した特定高さに安定的に保持するものとなる。
【0021】
一方、係止部材6を操作していた手指を離したときに、係止部材6の係合部9が凹み部5aと正面で対向しておれば、係合部9は、直ちにスプリング7の弾力でその凹み部5a内に嵌り込み、先と同様に、係合部9がその凹み部5aの底面部aに圧接して支柱部材5をその凹み部5aに対応した特定高さに安定的に保持するものとなる。
【0022】
なお、ヘッドレスト1の高さを増大させるときは、係止部材6を操作することなく、専らヘッドレスト1に上向きの操作を付与するようにしてもよいのであり、この場合は、係止部材6の係合部9は、スプリング7の弾力で常に支柱部材5の外周面或いは凹み部5a内に位置するものとなり、支柱部材5の第一特定方向f1への移動中、係合部9は、凹み部5aの1つと正面で対向する度にその対向した凹み部5a内に弾発的に嵌り込み、このように嵌り込んだ後は、傾斜面である側面cによりこれに摺接しつつ、スプリング7の弾力に抗して押し出されるようになり、係合部9が希望するヘッドレスト1の高さに対応した凹み部5aに到達して嵌り込んだとき、ヘッドレスト1に付与した操作力を解放する。
【0023】
次に、本発明の第二実施例について説明する。図4は該第二実施例に係るヘッドレスト支持装置の要部を示す平面視断面図、図5は図4のx2−x2部を示す断面図である。
これらの図に示すように、支柱部材5の凹み部5a(底面部aも)は、第二特定方向f2を挟んで対称に形成され、係止部材7の係合部9も、これに合わせて対称に形成されているものである。該支柱部材5の製作に際しては、パイプ材の長手方向の適当距離間隔ごとの該当する2位置をパンチでプレスして一対の凹み部5a、5aを形成し、これら凹み部5a、5aを第二特定方向f2側から見て断面視でハ字状となされている。
【0024】
一方、係止部材6に形成された透孔8の係止側の内周縁には、これら凹み部5aのそれぞれに対応した2つの係合部9、9が同じくハ字状に形成されているのである。これらの係合部9、9は、パイプ材の長手方向の適当距離間隔ごとの周方向上の2つの凹み部5a、5aの底面部a、aに同時に係合して該凹み部5a、5aのそれぞれの底面部a、aを同時に押圧するものとしている。
その他の部位は先の実施例に準じたものとなされている。
【0025】
該第二実施例の使用例及び各部の作用について説明する。
ヘッドレスト1を第一特定方向f1の任意の位置で、凹み部5aと対峙した係止部材6は、スプリング7の弾力で第二特定方向f2へ移動する。
これにより、係止部材6の2つの係合部9、9は、スプリング7の弾力の方向を変えさせられて増大されてハ字状配置の2つの凹み部5a、5aの底面部a、aを同時に押圧する。
【0026】
ここで、各係合部9、9によって増大された力は、先の実施例におけると同様に、その対応する凹み部5a、5aの底面部a、aの向きに直交する方向f3、f4へ傾斜角度θによってくさび作用を発するまで増大されて押圧するが、このとき係止部材6の2つの係合部9、9が繋がった透孔8の内周であるので変形阻止に効果的である
また、支柱部材5が透孔8の2つの係合部9、9で支持されることは係止部材6自体で力を相殺させて案内手段4の負担を減少させる
さらに、係合部9、9が凹み部5a、5aから外れる場合の第二特定方向f2の移動距離(掛かり代)と押圧力の大小は、係合部9、9の傾斜角度θに関連して増減するが、これらは先の第一実施例も同様である
【0027】
【発明の効果】
以上に説明した本発明によれば、次のような効果が得られる。
即ち、請求項1記載のものによれば、第二特定方向f2に対して傾斜した向きを有する係合部9が凹み部5aの底面部aに直交した方向(凹み部5aの深さ方向)へスプリング7の弾力で押圧するとき、その傾斜角度θによってくさび作用を発するまでに増大されて圧接することになり、強力に係止して少々の外力では位置がずれたりしないし、一方では、スプリング7の弾力も減少させることができる。また、このくさび作用により、係合部9が凹み部5aから外れる場合の係止部材6の第二特定方向f2の移動距離(掛かり代)が拡大される。したがって、車の激しい揺れや振動などでのヘッドレストのずれや抜け出しに対しては極めて有利である。これにより、凹み部5aの深さの大幅な減少や肉厚変化が生じない程度の厚みを持った凹み形状を可能にし、結果、支柱部材を薄肉パイプ材としプレス加工を容易にし支柱部材5の重量を軽量化させ製作の容易化が図られるのである。
【0028】
請求項2記載のものによれば、第二特定方向f2の特定力を係合部9のくさび作用により増大された力を係止部材6自体で吸収し、支柱部材5以外のものに及ぶのを抑制することができ、簡易軽量な構造を可能にした。
【0029】
請求項3記載のものによれば、係止部材6の係合部9、9と凹み部5a、5aの底面部a、aの係合面積を更に大きくなすことができ、係止強度を更に増大させるか、凹み部5aの深さを更に浅くする事ができるのである
また、2つの凹み部5a、5aから係止部材6に付与される押圧力を相殺させることにより、バランスがとれて支柱部材5や係止部材6以外のものへの悪影響を効果的に抑制することができる
【0030】
さらに請求項4記載のものによれば、薄肉のパイプ材が使用でき、全体を軽量化できる
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一実施例に係るヘッドレスト支持装置の要部を示す平面視断面図である。
【図2】 図1のx1−x1部を示す断面図である。
【図3】 薄肉のパイプ材を芯金を使用することなくプレス加工して形成された前記ヘッドレスト支持装置の凹み部を示す断面図である。
【図4】 本発明の第二実施例に係るヘッドレスト支持装置の要部を示す平面視断面図である。
【図5】 図4のx2−x2部を示す断面図である。
【図6】 従来例の自動車の座席の後部を示す図である。
【図7】 従来例の自動車の座席のヘッドレストを引き上げた状態を示す図である。
【図8】 従来例の支柱部材5及び係止部材6を示す平面視断面図である。
【図9】 図8のx3−x3部を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ヘッドレスト
2 バックシート
3 ヘッドレスト支持装置
4 案内手段
5 支柱部材
5a 凹み部
6 係止部材
8 透孔
9 係合部
a 凹み部の底面部
f1 第一特定方向
f2 第二特定方向

Claims (4)

  1. 一特定方向へ変位可能に案内される支柱部材に複数の凹み部を前記特定方向へ列設し、一方では前記特定方向と特定の方向に交叉した第二特定方向へスプリングで弾発されて変位可能となされた係止部材を設け、該係止部材が前記第二特定方向へ変位されたときに該係止部材に形成された係合部が前記凹み部の何れかに入り込んでその底面部に係合して前記支柱部材の第一特定方向への変位を規制するようになされたヘッドレスト支持装置において、前記底面部と前記係合部を前記第二特定方向側に所定の傾斜角度で拡がる傾斜面に形成し、前記係合部が前記底面部に係合したとき、前記係合部が前記底面部に対してくさび作用を発揮して圧接するようにしたことを特徴とするヘッドレスト支持装置。
  2. 前記係止部材が前記支柱部材を挿通する透孔を有し、該透孔の内周縁の一部を前記係合部としたことを特徴とする請求項1記載のヘッドレスト支持装置。
  3. 前記凹み部並びに前記係合部が前記第二特定方向を挟んで対称に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のヘッドレスト支持装置。
  4. 前記支柱部材がパイプ材で構成され、前記凹み部が同じ肉厚を有するプレス加工で形成されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のヘッドレスト支持装置。
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