JP4065995B2 - 異色構造物写真画像の判定方法及び写真画像処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、異色構造物写真画像の判定方法及び写真画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、写真撮影に使用されるフィルムはデイライトタイプと呼ばれ、太陽光下、ストロボ光下で撮影された場合には適正なカラーバランスの写真が得られるが、写真撮影は様々な状況下で行なわれるため、結果として不適正な画像がフィルムに記録される場合が少なくない。そのような不適正な撮影がなされる顕著なシーンとして、タングステン灯光の下での撮影シーンや、蛍光灯の下での撮影シーンや、さらには、水中での撮影シーン等、異種光源下で撮影される状況がある。例えば、タングステン灯光の下で撮影された写真画像は黄色っぽく、蛍光灯の下や水中で撮影された写真画像は全体に青っぽくなる。
【0003】
従来、異種光源写真画像であるか否かを判断する方法として、様々な提案がされており、例えば、撮影時の平均輝度情報とフラッシュ発光の有無に基づいて被写体照明光の種類を推定する技術が提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−219077号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の方法による場合には、異種光源写真画像と異色構造物写真画像を正確に識別することができないという問題があった。ここに、異色構造物とは、主体とする被写体が撮影光源の影響を受けていないものの、被写体とは明らかに違う色の特定物体が画面に占める割合が大きい場合における特定物体のことをいう。異色構造物シーンには2種類あり、一つは例えば図11(b)左に示すような一般シーンに黄色い構造物が存在する場合であり、他は例えば水族館等で水槽の前に人物が存在するような場合である。従来の方法によれば、例えば黄色い看板の入ったシーンを撮影した異色構造物写真画像に対してタングステン灯光の下での撮影写真と誤判定される結果、そのような判断結果に基づいて画像データを補正すると、却ってカラーフェリアが発生するという問題点があった。そのため、最終的にはオペレータがコマ毎に画像を目視して異色構造物写真画像と異種光源写真画像とを見分け、後者の判断時にはタングステン灯光写真のように黄色っぽければ黄色の濃度を引き、水中写真のように青っぽければ黄色の濃度を足すといった手動操作によりカラーバランスを調整せざるを得なかった。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の問題点に鑑み、従来の異種光源写真画像と自動判断されるような画像に対して、確実に異色構造物写真画像であるか否かを判別できる異色構造物写真画像の判定方法及びその判定方法を用いた写真画像処理装置を提供する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明に係る異色構造物写真画像の判定方法の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項1に記載した通り、対象フィルム画像データを構成する各画素のRGB成分データに基づいて異種光源写真画像か否かを判断する第一ステップと、第一ステップで異種光源写真画像と判断されたときに、構成画素毎のRGB成分データのうち最小値とその最小値に対するRGB成分データの関係を表す所定のX−Y二次元座標系に対応するように展開する第二ステップと、第二ステップで展開された画素データから、標準光で撮影されたフィルム画像特性を表す基準線に対する各画素の乖離度の平均値を最小値差分和として、少なくともRGB何れかの画素群毎に演算導出する第三ステップと、第三ステップで演算導出された何れかの画素群に対する最小値差分和が所定の基準値よりも大であるときに異色構造物が撮影されたフィルム画像であると判断する点にある。
【0009】
異種光源、例えばタングステン灯光における撮影画像を、X軸を平均濃度、Y軸をRGB各濃度とする散布図で表すと、図14(a)に示すように、標準光で撮影されたフィルム画像特性を表す基準線(図中、傾きが45°の直線を指す)に対してR成分が上方に、B成分が下方に偏在しており、例えば水中で撮影された写真画像を散布図で表すと、図14(b)に示すように、前記基準線に対してB成分が上方に、R成分が下方に偏在している。
【0010】
これに対して標準光(太陽光)の下で撮影された画像は、前記基準線に対してRGB各成分が均等に分布していることから、何らかの方法で画素の色成分の偏在の程度を判別することにより異種光源写真画像であるか否かが判断可能となる。
【0011】
しかし、例えば図10(a)に示すようなタングステン灯光の下で撮影されたフェリアのある異種光源シーンに対して各画素成分を上述の散布図に展開すると、図10(b)に示すように、全体としてR成分が上方に、B成分が下方に偏在している傾向があるものの、写真中の異色構造物である傘のフェリアの影響を受けて正確に判断できない場合が生じる。
【0012】
図11(a)左に示すようなタングステン灯光の下で撮影された異種光源シーンに対して各画素成分を上述の散布図に展開すると、同図(a)右に示すように、全体としてR成分が上方に、B成分が下方に偏在して、RとBの画素群が大きく離間しているため異種光源写真画像と判断されるが、フラッシュ撮影された図11(b)左に示すような異色構造物写真は中央部に黄色い構造物が写っているだけなので本来は異種光源画像と判断されるべきではないが、同図(b)右に示すような散布図を見ると、やはり、全体としてR成分が上方に、B成分が下方に偏在して、RとBの画素群が大きく離間しているため異種光源写真画像と判断される傾向がある。
【0013】
そこで、図12(b)に示すように、画素毎のRGBの中の最小値を横軸にした散布図を作成すると、標準光で撮影されたフィルム画像特性を表す基準線(図示されていないが、ここではX軸に対して45°の傾きをもつ直線である)に対してBの画素群が厚みをもって分布していることが分かる。図11(a)左に示すタングステン灯光シーンの写真に対しても同様に画素毎のRGBの中の最小値を横軸にした散布図を作成すると、図12(a)に示すように、画素毎のRGBの中の最小値を横軸にした散布図を作成すると、標準光で撮影されたフィルム画像特性を表す基準線に対してBの画素群の厚みが薄いことがわかる。
【0014】
従って、対象フィルム画像データを、構成画素毎のRGB成分データのうち最小値とその最小値に対するRGB成分データの関係を表す所定のX−Y二次元座標系に対応するように展開し、標準光で撮影されたフィルム画像特性を表す基準線に対する各画素の乖離度の平均値を最小値差分和として、少なくともRGBの何れかの画素群毎に演算導出し、演算導出された何れかの画素群に対する最小値差分和が所定の基準値よりも大であるときに異色構造物が撮影された写真画像であると判断することができる。その結果、異種光源写真画像と自動判断されるような画像に対して、確実に異色構造物写真画像であるか否かを自動判別できるのである。
【0015】
上述した異色構造物写真画像の判定方法を具現化した写真画像処理装置の第一の特徴構成は、同欄請求項2に記載した通り、対象フィルム画像データを構成する画素のRGB成分データに基づいて異種光源写真画像か否かを判断する異種光源画像判定手段と、前記異種光源画像判定手段により異種光源写真画像と判断されたときに、構成画素毎のRGB成分データのうち最小値とその最小値に対するRGB成分データの関係を所定のX−Y二次元座標系に対応するように展開する画像データ展開手段と、前記画像データ展開手段により展開された画素データから、標準光で撮影されたフィルム画像特性を表す基準線に対する各画素の乖離度の平均値を最小値差分和として、少なくともRGB何れかの画素群毎に演算導出する最小値差分和演算手段と、前記最小値差分和演算手段により演算導出された何れかの画素群に対する最小値差分和が所定の基準値よりも大であるときに異色構造物が撮影されたフィルム画像であると判断する異色構造物判断手段とを設けてある点にある。
【0016】
同第二の特徴構成は、同欄請求項3に記載した通り、前記最小値差分和演算手段は、以下の数2に基づいて最小値差分和を演算導出するものである点にある。
【0017】
【数2】
S={ΣCjCosθ−(MIN(Rj,Gj,Bj))Sinθ}/n
ここに、Sは、差分和であり、
Cjは、第j番目の画素のR,Bの何れかの画素濃度であり、
θは、基準線とX軸の角度であり、
nは、画素数である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明による異色構造物写真画像の処理方法を用いた写真処理装置について、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1に示すように、写真処理装置は、フィルムから画像を読み取りメモリに記憶する画像データ入力部1と、画像データ入力部1から入力された画像データに対して所定のデータ処理等を施す画像データ処理部2と、処理後の画像データに基づいて印画紙を露光する露光ヘッドを備えた画像露光部3と、露光された印画紙を現像処理する現像処理部4と、現像処理後の印画紙をコマ単位で切断して排紙する排紙部5と、上述した各機能ブロック全体を統合して作動制御するシステム制御部6とを備えて構成される。
【0020】
前記画像データ入力部1は、例えば現像済みの135カラーネガフィルム10の各コマを読取位置に間歇的に搬送するフィルム搬送部11と、フィルム10の各コマの画像を読み取る画像読取部12とからなり、前記フィルム搬送部11は、巻取ローラ111と、巻取ローラ111を回転駆動するフィルム搬送モータ112と、フィルム搬送モータ112を制御するフィルム搬送制御部113とを備えて構成され、前記画像読取部12は、フィルム10の下部に配置された光源114と、光源114の発光強度を制御する光源制御部115と、二次元CCDを備えた撮像素子116と、撮像素子116による画像の読取制御を行なう読取制御部117と、フィルム10の各コマ画像を撮像素子116の受光面に結像させるレンズ117と、フィルム10とレンズ117間に設けられ、フィルム10の画像をGRBの3色に分離する光学フィルタ118と、光学フィルタ118を切替駆動するフィルタ駆動モータ119と、フィルタ駆動モータ119を駆動制御するフィルタ切替制御部120と、撮像素子116で読み取った画像信号をデジタルデータとして記憶する画像データ記憶部121とを備えて構成される。前記画像データ記憶部121は、撮像素子116で読み取られたRGB夫々のアナログ画像信号を16ビットの階調レベルでRGBのデジタル画像データに変換するA/D変換器122と、A/D変換器122により変換されたRGB三色のデジタル画像データをコマ単位で格納するRAM等でなる画像バッファメモリ123とを備えて構成される。
【0021】
前記画像データ処理部2は、画像バッファメモリ123に格納されたコマ単位の画像データに対して後述の異種光源画像補正や階調補正等の各種の補正処理やレイアウト処理等の所定の処理を実行する際に使用するテーブルデータ等を格納するテーブルメモリ20と、前記画像バッファメモリ123に格納された画像データを読み出して前記テーブルデータ等に基づいて所定のデータ変換処理、例えば後述の異種光源画像補正、異色構造物判断、諧調補正処理や変倍処理等を実行する画像データ変換処理部21と、画像データ変換処理部21による画像データの変換処理に用いられ、変換された画像データがコマ単位の最終画像データとしてRGBの色毎に区画された領域に格納される画像処理メモリ22と、最終画像データの1ライン分の画像データを一時記憶するラインバッファメモリ23等を備えて構成される。
【0022】
前記画像露光部3は、ロールカセット30に巻回されている長尺状の印画紙31を搬送モータ37により露光ステーション33に向けて所定の搬送速度で搬送する印画紙搬送制御部38を備えた印画紙搬送部32と、露光ステーション33に搬送された印画紙31に対して露光走査するPLZT方式の露光ヘッド34と、露光ヘッド34を駆動制御する露光ヘッド制御部35と、ラインバッファメモリ23からの画像データを印画紙31の搬送速度に同期した所定のタイミングで露光ヘッド制御部35に出力する露光制御部36とを備えて構成される。
【0023】
前記現像処理部4は、現像液等の現像処理液が充填された処理槽40と、露光済みのロール印画紙31を処理槽40内に搬送して、現像、定着、漂白の各処理がなされたロール印画紙31を前記排紙部5に搬送する搬送制御部を備えて構成され、前記排紙部5は、現像処理部4で現像処理されたロール印画紙31を幅方向に切断して1コマ単位に分割するカッター50と、カッター50を駆動するカッターモータ51に対する駆動制御や、切断された印画紙31を装置外部に排出制御する排紙制御部52とを備えて構成される。
【0024】
前記システム制御部6は、CPU、制御プログラムが格納されたROM、データ処理用のRAMと、各機能ブロックに対する制御用信号入出力回路を備えて構成され、前記制御プログラムに基づいて各機能ブロックが統合制御される。
【0025】
以下に、前記画像データ処理部2について詳述する。図2に示すように、前記画像データ処理部2は、前記画像データ記憶部121に記憶された対象フィルム画像データに対して異種光源画像補正を行なう第一変換手段211、第二変換手段212、第三変換手段213とを備えてなる異種光源画像補正手段210と、諧調性補正を行なうスキャナ補正手段240と、フィルム画像を出力サイズに調整する倍率変換手段250等を備えて構成される。
【0026】
前記異種光源画像補正手段210は、さらに画像データ第一展開手段221、グループ差分和演算手段222、厚み係数演算手段223、画像差分和演算手段224からなる異種光源画像判別手段220と、画像データ第二展開手段231、最小値差分和演算手段232からなる異色構造物判断手段230を備えてある。
【0027】
以下に、異種光源画像補正の基本的処理について説明する。前記テーブルメモリ20の一区画には、図4に示すように、Y軸をRGBの各画素成分データとしX軸をRGB平均濃度とするX−Y二次元座標系に表された特定のフィルムに対する発色限界特性を示す散布図から当該フィルムのRGB夫々のベース濃度を引いた散布図に対して、異種光源画像補正の基準となる分布画素群の上側境界を区画する上側主補正曲線CMUと、下側境界を区画する下側主補正曲線CMLをそれぞれ所定の濃度間隔で座標データとして規定した上側主補正曲線LUT、及び、下側主補正曲線LUTが予め生成され格納されている。
【0028】
ここに、前記発色限界特性は、図3に示すように、本実施形態においては異種光源の一種であるタングステン灯光下で露光量を変化させて撮影したマクベスカラーチャート画像に対する測光データを散布図に展開して求めたものであるが、デイライトタイプのフィルムであればどのフィルムも同様の特性が示され、彩度の高いカラーチャートであれば標準光による露光によっても同様の特性が得られるものである。
【0029】
本発明では、異種光源画像補正のための基準となる補正曲線及び後述の異種光源補正処理や異色構造物補正処理は、Y軸をR及びBの画素成分データとしX軸をRGB平均濃度とするX−Y二次元座標系に表された散布図を基にするものに限るものではなく、一軸をRGBの何れかの画素成分データとする所定のX−Y二次元座標系に表された散布図に対しても適用可能であり、例えば、X軸にG成分濃度をとりY軸にR,B成分濃度をとったもの、X軸に露光量を対数変換した値をとりY軸にR,G,B成分濃度をとったもの等フィルムの発色限界特性を示す散布図であれば特に制限されるものではないが、本実施形態では、Y軸をR及びBの画素成分データとしX軸をRGB平均濃度とするX−Y二次元座標系に表された散布図を基に説明する。
【0030】
以下、上側主補正曲線に対してなされる異種光源画像の補正ついて説明するが、下側主補正曲線に対してなされる補正も同様である。前記異種光源画像補正手段210に備えられたLUT補正手段(図示せず)により、入力されたフィルム画像データのフィルムベース濃度に基づいて前記各LUTをシフトさせ、対象フィルムのベース濃度による影響を排除した後に、図5(a)に示すような前記LUTで規定される上側主補正曲線CMUと標準光で撮影されたフィルム画像特性を表す基準線L(理想的にはX軸に対して45°の角度を有する直線となる)との乖離度(上側主補正曲線CMU上の各点から基準線Lへの距離を示す)を求め、その乖離度よりも所定比率で小なる乖離度、ここでは1/2の比率となる上側副補正曲線CSUを規定し、上側副補正曲線CSUが前記基準線Lに接するように副補正曲線LUTを生成して前記テーブルメモリ20の一部を構成する記憶手段21に記憶する。
【0031】
前記第一変換手段211は、図5(a)に示すように、前記対象フィルム画像データを前記X−Y二次元座標系に対応するように展開し、前記上側主補正曲線LUT及び上側副補正曲線LUTに基づいて、RGB何れかの画素成分のうち上側に偏在する画素成分に対して、前記基準線Lとは直交する直線に平行な特定直線L’上に分布する画素r’を、前記上側主補正曲線CMU上の画素rが前記上側副補正曲線CSUを基準として、前記上側主補正曲線CMUに接し且つ前記基準線Lに平行な直線上に前記特定直線L’に沿って移動する基準移動比率に基づいて、前記特定直線L’に沿って移動するように各画素データの上側移動量を演算導出し、同様に、前記下側主補正曲線LUT及び下側副補正曲線LUTに基づいて、RGB何れかの画素成分のうち下側に偏在する画素に対して、前記特定直線上に分布する画素を、前記下側主補正曲線上の画素が前記下側副補正曲線を基準として、前記下側主補正曲線に接し且つ前記基準線に平行な直線上に前記特定直線に沿って移動する基準移動比率に基づいて、前記特定直線に沿って移動するように各画素データの下側移動量を演算導出する。
【0032】
対象フィルム画像データがタングステン灯光下で撮影された異種光源画像である場合について具体的に説明すると、図14(a)に示すように、R成分が上方に分布しB成分が下方に分布するので、図6(a)に示すように、前記上側副補正曲線CSUより上側に位置するR成分画素について、X軸値d部分にあるY軸値rは、(数3)に示す計算式により、角度45°で同図白丸の位置への移動量としてY軸方向及びX軸方向への移動量がRmoveとして演算導出される。この結果、上側主補正曲線CMU上の画素は、上側主補正曲線CMUに接し且つ前記基準線Lに平行な直線上に位置するように移動量が演算され、それより小さい値は少し弱いレベルで移動するように移動量が演算され、上側副補正曲線CSU付近の画素は殆んど移動しないという結果となる。
【0033】
【数3】
【0034】
図6(b)に示すように、前記上側副補正曲線CSUより下側に位置するR成分画素について、X軸値d部分にあるY軸値rは、(数4)に示す計算式により、角度45°で同図白丸の位置への移動量が演算導出される。
【0035】
【数4】
【0036】
B成分画素に関しても同様に、X軸値d部分にあるY軸値bについて、下側主補正曲線及び下側副補正曲線のテーブルデータに基づいて(数3)、(数4)と同様の演算処理を行なって移動量を演算導出する。
【0037】
前記第二変換手段212は、前記第一変換手段211で演算導出されたR成分画素に対する移動量である上側移動量と、当該R成分画素に対応するB成分画素に対する移動量である下側移動量に基づいてRGB平均濃度が等しくなるように、X軸方向の移動量の平均値をX軸方向の相対移動量として演算し、該当する画素データを演算結果に基づいて移動するように新たな画素データとして変換処理する。
【0038】
前記第三変換手段213は、図7(a)に示すように、前記第二変換手段により変換処理された上側画素群Rgrp及び下側画素群Bgrpから所定画素数、ここでは全画素数の0.1%に入る画素数選択して、夫々の濃度最大値グループと濃度最小値グループの濃度平均を求め、濃度平均の差が小さいグループが重畳するように上側及び下側画素群をX軸方向に沿って移動処理する。従って、同じ色成分は必ず同一方向に補正されることとなり、色ずれなどのノイズの発生が抑制されることになる。ここで、前記第三変換手段213には、前記第二変換手段212により変換処理された上側及び下側画素群が、図7(b)に示すように、交差するか否かを判断する交差判断手段を設けてあり、交差しないと判断されたときにのみ上側及び下側画素群をX軸に沿って移動処理する。
【0039】
前記第三変換手段213は、前記第二変換手段212により変換処理された上側及び下側画素群の夫々の平均濃度を演算導出し、演算導出された平均濃度に対応する画素が前記基準線に移動するように上側及び下側画素群をY軸に沿って移動処理するものでもよい。この場合にも交差判別手段により交差しないと判断されたときにのみ上側及び下側画素群をX軸に沿って移動処理する。
【0040】
以上、対象フィルム画像データがタングステン灯光下で撮影された異種光源画像である場合について説明したが、対処フィルム画像が水中写真等の場合には、図14(b)に示すように、RとBの分布が逆になるので、B成分画素に対して上側主補正曲線と上側副補正曲線に基づいて補正され、R成分画素に対して下側主補正曲線と下側副補正曲線に基づいて補正されることになる。
【0041】
このように異種光源画像補正がなされたフィルム画像データに対してコマによる色のばらつきを補正するために上述のスキャナ補正手段240による諧調補正がなされ、倍率変換手段250による出力サイズへの圧縮または伸張変換がなされる。前記諧調補正について説明すると、フィルム画像データから無彩色部位を抽出し、その部位のRGB比を求め、前記テーブルメモリ20に格納された諧調補正用のLUTに基づいて所定の諧調性を示すように変換処理するものである。
【0042】
以上、異種光源画像補正の基本的処理について説明したが、実際には異種光源画像にも程度の差があり一律にテーブルデータとして準備されている主補正曲線に基づいて補正することに限界がある。また、異色構造物が標準光の下で撮影されている場合に上述した異種光源画像補正をかけると却ってカラーフェリアが発生する恐れもある。そこで、以下に、前記異種光源画像判別手段220及び異色構造物判断手段230による具体的な補正処理等について詳述する。
【0043】
前記異種光源画像判別手段220における前記画像データ第一展開手段221は、図9に示すように、例えばタングステン灯光下で撮影された対象フィルム画像データを、前記画像処理メモリ22上で、X軸を構成画素毎のRGB平均データとしY軸を各色成分データとする所定のX−Y二次元座標系に展開する。前記グループ差分和演算手段222は、前記画像データ第一展開手段221により展開された画素群、ここではR成分の画素群RgrpをRGB平均データが均等な間隔となるように、標準光で撮影されたフィルム画像特性を表す基準線Lに垂直な方向に複数グループに分割し(ここでは、0から65535の16ビットデータで表される画素濃度に対して2500単位に分割する)、分割されたグループ毎に、前記基準線Lに対する各画素の乖離度の平均値を、(数5)で示すグループ差分和としてRGB毎に演算導出する。ここで、グループ画素数が全画素数の1%以下であるグループはノイズ成分として除去する。
【0044】
【数5】
S(i)={ΣCjCosθ−((Rj+Gj+Bj)/3)Sinθ}/n
ここに、S(i)は、第i番目のグループのグループ差分和であり、
Cjは、第j番目の画素のR,G,Bの何れかの画素濃度であり、
θは、基準線とX軸の角度であり理想的には45°となり、
nは、第i番目のグループの画素数である。
【0045】
次に、厚み係数演算手段223が分割されたグループ毎に、(数6)で示す画素分布の前記基準線と離間する方向の分布厚みを正規化した厚み係数を演算導出する。
【0046】
【数6】
【0047】
前記画像差分和演算手段224は、前記グループ差分和演算手段222により演算導出されたグループ差分和と前記厚み係数演算手段223により演算導出された厚み係数に基づいて、(数7)で示す画像差分和Sを演算導出する。
【0048】
【数7】
【0049】
前記異種光源画像判別手段220は、前記画像差分和演算手段224により演算導出されたRGB毎の画像差分和のいずれかが予め実験等により設定された所定の閾値より大であるときに異種光源フィルム画像であると判断し、後述するように前記上側及び下側主補正曲線を補正した後に異種光源画像補正し、異種光源フィルム画像ではないと判断したときには前記スキャナ補正手段240による補正に移行する。
【0050】
異種光源画像であると判断されたとき、RGB何れかの画素成分の偏在の程度に応じて、つまり、異種光源画像の程度に応じて前記上側主補正曲線LUT及び前記下側主補正曲線LUTが補正される。詳述すると、前記LUT補正手段は、前記画像差分和演算手段224により演算導出された画像差分和を(数8)に示す所定の一次式で正規化した値を変数Xとして、(数9)及び図13(b)に示す所定のγ曲線に適用して得られる1から7の範囲の値をとる補正係数Lcに基づいて、図13(a)に示すように、補正係数が大となるほど前記上側主補正曲線または前記下側主補正曲線の最大乖離度に対する乖離度の偏差が小さくなるようにLUTを補正する。
【0051】
【数8】
【0052】
【数9】
Lc=7×(X/7)2.1+1
【0053】
つまり、補正係数Lc=1のときに図13(a)の左図に示す当初の上側主補正曲線CMUと下側主補正曲線CMLが維持され、補正係数Lc=2のときに同中央図に示すように曲線の膨らみが1/2となるような曲線に、補正係数Lc=6のときに同右図に示すように曲線の膨らみが1/6となるような曲率の曲線に補正される。即ち補正係数が大であるほど異種光源画像補正が弱められるように設定されている。そして、上側及び下側副補正曲線も補正後の上側及び下側主補正曲線をベースとして設定される。
【0054】
以上、異種光源画像の補正レベルの補正、つまり上下の主補正曲線の補正について説明したが、さらに好適な補正を行なうためには、前記異色構造物判断手段230による判断を加味して前記補正係数Lcを求めることが好ましい。以下に説明する。画像データ第二展開手段231により、対象フィルム画像データを、X軸に構成画素毎のRGB成分データのうち最小値をとり、Y軸にその最小値に対するRGB成分データをとる所定のX−Y二次元座標系に展開し、前記最小値差分和演算手段232により、前記画像データ第二展開手段231により展開された画素データから、標準光で撮影されたフィルム画像特性を表す基準線に対する各画素の乖離度の平均値を、(数10)で示す最小値差分和として、少なくともRGB何れかの画素群毎に演算導出する。
【0055】
【数10】
SC={ΣCjCosθ−(MIN(Rj,Gj,Bj))Sinθ}/n
ここに、SCは、最小値差分和であり、
Cjは、第j番目の画素のRGBの何れかの画素濃度であり、
θは、基準線とX軸の角度であり、
nは、画素数である。
【0056】
前記最小値差分和演算手段232により演算導出された最小値差分和を(数11)に示す所定の一次式で正規化した異色構造物係数Ldを求め、その値が予め設定された所定の値よりも大なる場合には異色構造物写真画像であり、所定値よりも小なる場合には異色構造物写真画像ではないと判断する。つまり、RGB毎の画像差分和のいずれかが所定の値より大であり、且つ、異色構造物が撮影された写真画像でないと判断されたときに異種光源写真画像であると判断して、異種光源補正を行なうのである。異種光源画像補正する場合には、前記補正係数Lcに、前記異色構造物係数Ldを乗じた値を新たな補正係数としてLUTを補正する。この補正により、顕著な異色構造物写真画像ではないが、異色構造物係数が大であるときには異種光源画像補正を弱めることとなる。即ち、上述した異種光源画像判別手段220、異色構造物判断手段230により前記LUT補正手段の一部が構成される。尚、ここで、Ldが1未満のときには、異種光源画像に対する補正レベルを落とさないようにするためにLdによる補正は行なわない。
【0057】
【数11】
Ld=SC/d
ここに、dは、Ld≦2になるように設定される定数
【0058】
以上説明した異種光源画像に対する補正処理の結果を図8(a),(b),(c)のそれぞれ右側の写真に示すが、同図左側の従来技術による補正とは顕著に相違し、カラーフェリアの発生が抑えられていることが分かる。
【0059】
上述した(数8)、(数9)、(数11)における定数は、様々な異種光源画像のサンプルに対する試行により適宜設定されるものである。また、上述した補正係数Lcに、さらに前記画像差分和Sを一次式で正規化した値を掛けて補正レベルに強弱をつけることも可能である。
【0060】
本発明において、対象フィルム画像データを構成する各画素のRGB成分データに基づいて異種光源写真画像か否かを判断する異種光源画像判定手段による具体的判定方法及び構造は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、上述した従来技術である撮影時の平均輝度情報とフラッシュ発光の有無に基づいて被写体照明光の種類を推定する技術等、公知の異色光源画像判定手段による判定方法にも適用可能であることはいうまでもない。
【0061】
本発明による写真画像の処理方法及び処理方法は、特にデジタル露光方式の写真処理装置に好適なものであり、上述の実施形態では、PLZT方式の露光ヘッドを採用したものを説明したが、露光ヘッドはレーザー方式FOCRT方式等各種のデジタル露光ヘッドに適用可能である。また、上述した実施形態に限定されるものではなく、課題を解決するための手段の欄に記載された特徴構成及びそれらの組合せの範囲で適宜構成することができるものである。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来の異種光源写真画像と自動判断されるような画像に対して、確実に異色構造物写真画像であるか否かを判別できる異色構造物写真画像の判定方法及びその判定方法を用いた写真画像処理装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】写真処理装置の機能ブロック構成図
【図2】画像データ処理部の機能ブロック構成図
【図3】フィルムの発色限界特性を求める手順の説明図
【図4】上側、及び、下側主補正曲線生成の説明図
【図5】異種光源画像補正の説明図
【図6】第一変換手段による演算の説明図
【図7】情第三変換手段による移動演算の説明図
【図8】異種光源画像補正された画像と従来との対比説明図
【図9】画像差分和演算の説明図
【図10】異色構造物写真の説明図
【図11】異種光源画像と移植構造物画像の対比説明図
【図12】異種光源画像と移植構造物画像の対比説明図
【図13】主補正曲線LUTの補正処理の説明図
【図14】異種光源画像を示す散布図
【符号の説明】
2:画像データ処理部
20:テーブルメモリ
21:データ変換処理部
22:画像処理メモリ
210:異種光源画像補正手段
211:第一変換手段
212:第二変換手段
213:第三変換手段
220:異種光源画像判別手段
221:画像データ第一変換手段
222:グループ差分和演算手段
223:厚み係数演算手段
224:画像差分和演算手段
230:異色構造物判断手段
231:画像データ第二展開手段
232:最小値差分和演算手段
Claims (3)
- 対象フィルム画像データを構成する各画素のRGB成分データに基づいて異種光源写真画像か否かを判断する第一ステップと、
第一ステップで異種光源写真画像と判断されたときに、構成画素毎のRGB成分データのうち最小値とその最小値に対するRGB成分データの関係を表す所定のX−Y二次元座標系に対応するように展開する第二ステップと、
第二ステップで展開された画素データから、標準光で撮影されたフィルム画像特性を表す基準線に対する各画素の乖離度の平均値を最小値差分和として、少なくともRGB何れかの画素群毎に演算導出する第三ステップと、
第三ステップで演算導出された何れかの画素群に対する最小値差分和が所定の基準値よりも大であるときに異色構造物が撮影された写真画像であると判断する異色構造物写真画像の判定方法。 - 対象フィルム画像データを構成する画素のRGB成分データに基づいて異種光源写真画像か否かを判断する異種光源画像判定手段と、
前記異種光源画像判定手段により異種光源写真画像と判断されたときに、構成画素毎のRGB成分データのうち最小値とその最小値に対するRGB成分データの関係を所定のX−Y二次元座標系に対応するように展開する画像データ展開手段と、
前記画像データ展開手段により展開された画素データから、標準光で撮影されたフィルム画像特性を表す基準線に対する各画素の乖離度の平均値を最小値差分和として、少なくともRGB何れかの画素群毎に演算導出する最小値差分和演算手段と、
前記最小値差分和演算手段により演算導出された何れかの画素群に対する最小値差分和が所定の基準値よりも大であるときに異色構造物が撮影されたフィルム画像であると判断する異色構造物判断手段とを設けてある写真画像処理装置。
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