JP4065649B2 - 皮革様シートおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維複合シート表面に高分子弾性体が積層された、湿潤状態での剥離強力に優れた、有機溶剤残存量が少ない皮革様シートおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、高分子弾性体水分散液を接着層に用いた地球環境にやさしく、剥離強度、風合いに優れた皮革様シートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、天然皮革代替物として、繊維複合シート表面に高分子弾性体からなる表皮層および接着層を積層した皮革様シートが、軽さ、イージーケアー、低価格などの特徴から、衣料用、一般資材およびスポーツ分野などに幅広く利用されている。
【0003】
そして、従来の表皮層と接着層を積層した皮革様シートの製造法としては、高分子弾性体の有機溶媒溶液を離型紙上に塗布し乾燥させて表皮層を形成した後、その表皮層上に高分子弾性体の有機溶媒溶液である接着剤を塗布して接着剤層を形成させ、繊維複合シートと貼り合せるラミネート法が広く採用されている。このようにして得られたシート状物には製造中に高分子弾性体の有機溶媒が大量に用いられており、特にDMF(N,N−ジメチルフォルムアミド)等の沸点の高い有機溶媒を使用した場合には顕著であるが、乾燥後もシート状物中に残留するという問題があった。
【0004】
また製造法としても、この方法で使用される有機溶媒は通常数種類を混合して用いられるため、乾燥工程で揮発した有機溶媒の回収は極めて困難であり、大気中に放出される量が多く、地球環境に対する影響が懸念されていた。さらに揮発した有機溶剤による作業者の労働衛生問題や、加工装置を防爆仕様にする必要があるために、装置の価格が高価になり、ひいては加工費が高くなるという問題があった。
【0005】
有機溶剤を含まない接着層をもちいた皮革様シートの提案としては、例えば、特開平9−158056号公報には有機溶剤を含まない熱可塑性エラストマーを溶融製膜し、該エラストマーが熱流動性を有するうちに押し付けて接着させる方法によるものが記載されている。しかしこの方法では、有機溶剤を含有しない接着力の高いシートは得られるものの、熱により繊維質基材や表皮層が融解するなどして、接着層と強固に接着するために、皮革様シートとしては硬いものとならざるを得ないという問題があった。
【0006】
また、別の提案としては、接着層に使用する高分子弾性体を有機溶剤タイプから、水性タイプに移行するための研究が行われているが、この方法でも、いまだ満足すべき風合いと物性を有した皮革様シートは得られていないのが現状である。その理由としては、水性タイプは有機溶剤タイプと異なり粘着性が少なく、ベース基材と密着したまま接着させにくいこと、水分が蒸発する際に水蒸気が接着層や他層との界面に移行し巨大な気泡となり空隙を発生させること、などの問題があった。その結果、特に接着性や屈曲疲労性を満足する皮革様シートが得られず、ことに湿潤状態での剥離接着力に問題があり、靴等の水に濡れて使用されることの多い分野には実用化されていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の有する問題点を鑑みなされたもので、その目的は、湿潤状態での剥離強力などの物性に優れた、有機溶剤残存量が少ない皮革様シート状物を提供することにある。または、有機溶剤の大気放出を抑えた、地球環境にやさしい製造法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の皮革様シートは、繊維集合体と高分子弾性体(1)からなる繊維複合シートの表面に、張り合わせ時の含水率が3〜70%の高分子弾性体(2)水分散液から形成された接着層を介して、高分子弾性体(3)からなる表皮層積層、乾燥してなる皮革様シートであって、乾燥状態での剥離強力(A)が20N/cm≦(A)≦50N/cm、湿潤状態での剥離強力(B)が0.5×(A)≦(B)≦(A)、曲げ圧縮応力を曲げ硬さで除して得られる皮革ライク指数(C)が25≦(C)≦100を満足し、かつ有機溶剤の含有量(D)が皮革様シートの全重量に対し0wt%≦(D)≦0.05wt%であることが特徴である。さらに、該接着層における最大の空隙の換算直径が100μm以下であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の皮革様シートの製造方法は、高分子弾性体(3)からなる表皮層と、繊維集合体と高分子弾性体(1)からなる繊維複合シートとを、張り合わせ時の含水率が3〜70%の高分子弾性体(2)水分散液により張り合わせて積層物とし、ついで該積層物を100〜180℃にて10秒以上5分以下の時間加熱し、さらに100〜180℃の熱ロールにてニップすることを特徴とする。
【0010】
また本発明の皮革様シートの別の製造方法は、高分子弾性体(3)からなる表皮層と、繊維集合体と高分子弾性体(1)からなる繊維複合シートとを、張り合わせ時の含水率が3〜70%の高分子弾性体(2)水分散液により張り合わせて積層物とし、ついで100〜180℃の熱ロールにてニップし、さらに該積層物の厚さをニップ前の厚さ以下に保ったまま100℃〜180℃で30秒以上の時間加熱することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられる繊維複合シートとは、繊維集合体と高分子弾性体(1)から構成されたものであり、従来一般の皮革様シートの製造に用いられている各種のベース基材が本発明の繊維複合シートとして用いられる。
【0012】
さらに述べると、繊維集合体となる繊維としては、その成分としてポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル、ポリオレフィンなどの従来公知の繊維形成可能な合成樹脂の一種、あるいは二種以上の樹脂からなる繊維が使用出来、あるいは天然繊維を混合することが出来る。この中でも、合成繊維を用いることが好ましく、ポリエステル、ポリアミドまたはポリエステル/ポリアミド混合繊維を用いることが特に好ましい。繊維となるポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどがあげられ、ポリアミド系樹脂としては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−12などがあげられる。中でもポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6などが、工程安定性やコスト面から好ましい。また、繊維が海島型の混合紡糸繊維、複合紡糸繊維、あるいは剥離分割型複合繊維等で、該繊維分割後の単繊度が、0.01dtex以上1.0dtex以下のものがさらに好ましい。該繊維集合体を構成する繊維が、0.001dtex以上1.0dtex以下の単繊度を有する極細繊維である場合には、風合いが向上することに加えて、接着層の高分子弾性体が繊維複合シートの極細繊維に絡みつき、機械的なアンカー効果が増加するためより接着力が向上する。
【0013】
該繊維集合体は、上述の繊維からなる不織布、織編物であるが、本発明の皮革様シートがより皮革らしい風合いを得るためには、不織布であることが好ましい。これらの繊維を不織布に形成する方法としては、短繊維からのカーディング、交絡処理による方法、あるいは長繊維のダイレクトシート化、交絡処理による方法などの従来から公知の方法が採用できる。さらに緻密でかつ均質な不織布を得るためには、極細繊維化される剥離分割型複合繊維を用い、高圧水流により絡合させる方法が好ましい。
【0014】
また、例えば構成繊維の一部が熱収縮性繊維である繊維集合体を、収縮処理することにより、収縮緻密化、高密度化し、得られる繊維集合体の見かけ密度を0.3〜0.6g/cm3とすることが好ましい。熱収縮性繊維としては、高温多湿雰囲気中で収縮する合成繊維であればいずれでも良いが、好ましくは収縮応力が大きい高収縮ポリエステル系繊維である。例えばポリエチレンテレフタレートを主成分とする繊維形成性ポリマーを紡糸した後、温水中で低倍率で延伸して得られる熱収縮性繊維などである。さらに、該熱収縮性繊維は延伸条件などの制御により50℃以上100℃以下で収縮特性を発現するものが好ましい。収縮により高密度化する場合には、50℃より低い温度で特性を発現するものは品質のバラツキの要因になり、100℃より高い温度で特性を発現するものは、多くの熱量を必要し生産性が悪くなる。
【0015】
また、繊維集合体の繊維を熱収縮する場合の好ましい面積収縮率は、10%以上60%以下であり、より好ましくは20%以上50%以下である。面積収縮率が10%未満であると緻密かつ均質な構造の繊維集合体となりにくい傾向にある。一方、面積収縮率が60%を超えると繊維間の空隙が小さくなり繊維の自由度が低下する傾向にあり、繊維複合シートとしたときのドレープ性が低下する傾向にある。
【0016】
本発明に用いられる高分子弾性体(1)としては、例えばポリエステル系エラストマー、ポリウレタン、NBR、SBR、アクリル等の高分子弾性体樹脂があげられる。中でもポリウレタン樹脂が柔軟性、強度、耐候性、耐摩耗性などの点から好ましい。さらには、本発明の高分子弾性体(1)は環境問題などの面から有機溶剤タイプよりも水性タイプであることが好ましい。完全密閉の難しい高分子弾性体の含浸、凝固等の加工時に、できるだけ有機溶剤を発生させないことが好ましいからである。また、水性タイプの高分子弾性体を用いることにより本発明の皮革様シートの残存有機溶剤量を容易に減少させること、高分子弾性体水分散液から形成される接着層との接着力を向上させることができる。
【0017】
水性タイプの高分子弾性体(1)を用いる場合には、感熱凝固特性を有している高分子弾性体エマルジョンを用いることが好ましい。高分子弾性体エマルジョンの凝固特性が発現する温度は30℃以上90℃以下が好ましく、さらには60℃以上80℃以下で凝固特性を発現するものが好ましい。高分子弾性体エマルジョンの凝固特性が発現する温度とは、種々の添加剤を配合したエマルジョンを攪拌しながら昇温した時に、エマルジョンが流動性を失い凝固する温度であり、例えば曇点を下げる添加剤などを加えることで凝固温度を調節することが可能である。
【0018】
また上記高分子弾性体(1)の耐光性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性等の各種耐久性を改善する目的で酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等の安定剤や、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、ポリカルボジイミド化合物等の架橋剤を配合して使用することもできる。さらに、着色を目的として各種無機、有機顔料を配合することができる。また、シリコン系、フッ素系などの各種撥水剤や、ポリエチレングリコールなどの親水性の剤を加えることで、繊維と高分子弾性体(1)との非接合構造を調整し、繊維複合シートのドレープ性を向上させることができる。
【0019】
本発明に用いられる繊維複合シートを得るための高分子弾性体(1)の繊維集合体への含浸、塗布方法は、通常行われる方法であればいずれでも良く、例えばマングルによる含浸法、コーティング法、スプレー法等が挙げられる。高分子弾性体(1)の付着量(固形分)は、目的に応じて任意の値が採用されるが、好ましくは、繊維集合体100重量部に対し3〜150重量部である。高分子弾性体付着量(固形分)が3重量%未満では得られるシートの充実感が低下する傾向がある。一方150重量%を越えると、得られるシートは硬くなり、皮革様の風合いが低下する傾向がある。
【0020】
繊維複合シートを得るための凝固方法としては、例えば、水分散型の高分子弾性体エマルジョンを用いた場合には、高分子弾性体エマルジョンの感熱凝固温度以上とすれば加工可能である。処理温度は50℃以上180℃以下が好ましいが、より安定的に生産を行うためには感熱ゲル化温度の10℃以上とするのがさらに好ましい。また相対湿度は80%以上であれば問題はないが、さらには100%に近づく程表面からの乾燥が抑えられ好ましい。相対湿度が80%より低いと高分子弾性体が凝固する際に充実体になりやすく、ドレープ性、低反発性が悪化する傾向にある。また、多湿雰囲気が保たれればスチーム以外の他の過熱方法も併用でき、例えば通常の熱媒や電気による方法、赤外線、電磁波、高周波等の過熱方法が併用できる。
【0021】
本発明の接着層を形成する高分子弾性体(2)水分散液としては、水の除去後にエラストマー性を示すものであればいずれでも良く、例えばポリウレタンエマルジョン、NBRエマルジョン、SBRエマルジョン、アクリルエマルジョン等の高分子弾性体エマルジョンがあげられる。中でもポリウレタンエマルジョンが、特にポリカーボネート系ポリウレタンエマルジョンが柔軟性、強度、耐候性などの点から好ましい。
【0022】
また上記高分子弾性体(2)の耐光性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性等の各種耐久性を改善する目的で酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等の安定剤や、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、ポリカルボジイミド化合物等の架橋剤を配合して使用することもできる。さらに、着色を目的として各種無機、有機顔料を配合することができる。また、シリコン系、フッ素系などの各種撥水剤や、ポリエチレングリコールなどの親水性の剤を加えることで、繊維複合シートの繊維と高分子弾性体(2)との非接合構造を調整し、最終的に得られる皮革様シートのドレープ性を向上させることができる。さらに耐水性を向上させるためには、高分子弾性体分子中に架橋剤と反応しうる活性水素基等を含有することが望ましい。例えばイソシアネート系化合物の架橋剤を添加することにより、耐湿熱性を向上させることができる。
【0023】
また、本発明に用いられる表皮層を形成する高分子弾性体(3)としては、例えばポリエステル系エラストマー、ポリウレタン、NBR、SBR、アクリル等の高分子弾性体があげられる。中でもポリウレタンが、特にポリカーボネート系ポリウレタンが柔軟性、強度、耐候性、耐摩耗性などの点から好ましい。さらには、本発明の高分子弾性体(3)も環境問題などの面から有機溶剤タイプよりも水性タイプであることが好ましい。完全密閉の難しい加工時に、できるだけ有機溶剤を含まないことが好ましいからである。また、水性タイプの高分子弾性体を用いることにより本発明の皮革様シートの残存有機溶剤量を容易に減少させること、高分子弾性体水分散液から形成される接着層との接着力を向上させることができる。さらに物性を高めるために各種架橋剤、安定剤を用いても良いし、外観を向上させるために、着色剤やぬめり剤等を用いても良い。また、本発明では接着層の高分子弾性体(2)が水分散体であるので、従来の有機溶剤系のものを用いた場合と異なり、表皮層の高分子弾性体(3)は溶剤溶解性などの制約を受けないため、架橋されていない高分子弾性体や水系の高分子弾性体などを自由に選択することができる。
【0024】
本発明の皮革様シートの銀面層は、高分子弾性体(2)の接着層と、高分子弾性体(3)の表皮層から形成されたものである。接着層と表皮層を合わせたフィルムの膜厚は30μm以上500μm以下が好ましい。さらに好ましくは、50μm以上300μm以下である。30μmより薄いと表面の摩耗強度が弱くなり、500μmより厚いと表面がつっぱり、小皺感がなく座屈感が生じる傾向にある。
【0025】
また、高分子弾性体(2)および高分子弾性体(3)に架橋剤等を加えた配合液を乾燥して得られるフィルムの100%モジュラスはそれぞれ1.0MPa以上100.0MPa以下のものが好ましい。より好ましい100%モジュラスは1.0MPa以上20.0MPa以下のものである。100%モジュラスが1.0MPaより低いと表面の摩耗強度や接着力が低下する傾向にあり、100%モジュラスが増加すると、表面が硬く、小皺感が減少し、座屈感が生じて風合いが悪くなる傾向にあり、20.0MPa以上の100%モジュラスのものは、風合いよりも強度を要求される用途に適している。該高分子弾性体の分子量や架橋剤の種類や添加量によって、100%モジュラスを調整することができる。架橋剤としては例えばポリイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0026】
本発明の皮革様シートは、該繊維複合シートに、高分子弾性体(2)水分散液から形成された接着層を介して、高分子弾性体(3)からなる表皮層が積層されてなるものである。
【0027】
表皮層を成型するには、例えば柄のついた離型紙上に高分子弾性体(3)の溶液あるいは水分散液を塗布し、乾燥させることによって得られる。表皮層を形成する条件としては、初めは40℃以上100℃未満の温度で乾燥させ、次に100℃以上140度以下の温度で乾燥させるといった2段階の温度で乾燥させることが好ましい。水分散液のように粘度が低いものを、初めから100℃以上の温度で乾燥させると、急激に水が蒸発し高分子弾性体フィルムがひび割れることがある。有機溶剤タイプや、水性タイプでも粘度が高いか、あるいは製膜性の良いものは、初めから100℃以上の温度で乾燥させることもできる。
【0028】
次に接着層となる高分子弾性体(2)水分散液を表皮層上か繊維複合シート上に塗布する。この時、水分散液の水分量が多く粘度が低い場合には、繊維複合シート上に塗布すると沈み込みがおき、シートが硬くなるので、表皮層上に塗布することが好ましい。塗布した後、直に張り合わせても良く、また高分子弾性体(2)の含水率を調整するために、予備乾燥を行っても良い。
【0029】
張り合わせ時の好ましい含水率は3〜70%とすることであり、より好ましくは15〜50%に調整することである。含水率が3%より小さいと、接着層の製膜化が進み、後のニップ工程で接着層の高分子弾性体(2)が繊維複合シートに沈みこまず、機械的なアンカー効果が生じにくいため、剥離強度が低下する傾向にある。また、接着層に架橋剤を用いている場合には、過度に予備乾燥を行うと、水と架橋剤との反応が進み、接着時の架橋剤の有効成分が減少する。含水率が70%より大きいと、粘度が低く、高分子弾性体(2)が繊維複合シートに沈みこむので接着層が薄くなり、接着強力が低下すると共に、最終的に得られる皮革様シートも硬くなる傾向にある。また、含水率が大きい場合、張り合わせ時の繊維複合シートへの接着層の沈みこみを制御するために、増粘剤等の添加剤を必要以上に増やさねばならず、各種物性の低下を招く。
【0030】
接着層の予備乾燥を行う場合は、30℃〜100℃未満の温度で乾燥させることが好ましい。より好ましくは60℃以上90℃以下の温度である。30℃より低い温度で乾燥させると乾燥させるのに長い時間、工程が必要となる傾向にある。100℃以上の高い温度で乾燥させると、急激に水が蒸発し接着層がひび割れたり、架橋剤を用いている場合には繊維複合シートとの張り合わせ前に架橋反応が進み、接着強力や耐水性が低下する傾向にある。
【0031】
次いで、表皮層と繊維複合シートとを接着層が中になるように張り合わせて積層物とする。この際は表皮層、接着層、繊維複合シートが密着していれば良い。水系では有機溶剤系のように粘着力が強くないため、ニップを行わなくとも浮きやしわが発生しないように平易に密着させることができる。
【0032】
この後、一つの方法としては、例えば、該積層物を100〜180℃にて10秒以上5分以下の時間、より好ましくは15秒以上2分以下の時間、前加熱し、さらに100〜180℃、より好ましくは110〜140℃の熱ロールにてニップする。
【0033】
また、別の方法の例としては、張り合わせた積層物を100〜180℃、より好ましくは110〜140℃のの熱ロールにてニップし、さらに該積層物の厚さをニップ前の厚さ以下に保ったまま100℃〜180℃で30秒以上の時間、後加熱する。
【0034】
前加熱や後加熱の際、積層物が離れないようにすることが肝要で、特に後加熱の際には、該積層物の厚さをニップ前の厚さ以下に保ったまま、積層物が離れないようにすることが肝要である。水分散体の場合、溶剤系の高分子弾性体と異なり、粘着性が低いので、繊維複合体と表皮層の間の接着が完成するまでははがれやすく、接着の欠点となりやすいからである。また、接着層に含まれる水分が蒸発し気泡を生じ、積層物が離れるとその離れた部分に気泡が集まり、接着層に空隙が発生する。このため、例えばニップする熱ロールに積層物の張力を利用して押し当てたり、ベルトによって押し当てることが好ましい。前加熱の時間は、10秒未満の場合、接着層が加熱されず、熱ニップ時に軟化温度まで昇温しない傾向にあり好ましくない。逆に5分より多くした場合、ニップ時の含水率が低下しすぎて接着層が製膜化されてしまい、繊維複合シートに接着層が沈みこまず、機械的なアンカー効果を期待できず、接着力が低下する傾向にある。前加熱を行った場合のニップ時の含水率は3〜15%であることが好ましい。
【0035】
また、ニップ時のクリアランスは基材厚さの50〜95%、さらに好ましくは60〜80%である。このクリアランスを満足するならば、ニップ圧を調整して行っても良い。
【0036】
前加熱、後加熱および熱ニップの温度が100℃より低いと、水が蒸発しにくく、含水率が減少しないため、熱ニップ時に密着しにくい傾向にある。180℃を超えると繊維や高分子弾性体が熱劣化を起こす傾向にある。また、表皮層を離型紙上に作成した場合、その耐熱温度、例えば離型紙の離型剤の耐熱温度が140℃ならばその140℃以下で加工しなければならない。
【0037】
このように処理した積層物は、残存した水分をなくし、接着層の強度を十分に発揮させるために、さらに乾燥させる。この時架橋剤を使用している場合には、架橋温度以上にて十分なキュアリングを行うことが好ましい。例えばポリウレタン樹脂にイソシアネート系架橋剤を使用した場合には100℃から140℃で1分から5分のキュアリングが好ましい。キュアリング後の基材の含水率は好ましくは10%以下、さらには5%以下とすることが好ましい。含水率が10%より多いと、残存する水分が架橋剤と反応するため、接着層における有効架橋剤濃度が減少する傾向にある。その後必要に応じて20℃から60℃の雰囲気下でエージングさせることにより、高分子重合体と架橋剤との硬化反応を完結させ、残存する水分をとばすことにより、更に強固な接着性、特に耐湿熱接着性が得られる。
【0038】
また、本発明の皮革様シートは、乾燥状態での剥離強力(A)が20N/cm≦(A)≦50N/cm、湿潤状態での剥離強力(B)が0.5×(A)≦(B)≦(A)であるものである。乾燥状態での剥離強力が20N/cmより小さい場合には、皮革様シートして実用に耐えず、50N/cmより大きい場合には、皮革様シートが硬くなる傾向にある。湿潤状態の剥離強力(B)は、特に水系の接着層を用いた場合乾燥状態より低下する傾向にあり、(B)<0.5×(A)の場合には実用に耐えない。この剥離強力は90mm×20mmの試験片を塩ビレザーと張り合わせた後、剥離試験したときの剥離力を1cm幅当たりに換算した値である。また、乾燥状態はそのまま、湿潤状態は40℃の温水にて5時間浸水した後に測定する。接着力を上げるためには、高分子弾性体(2)水分散液を繊維複合シートに浸透させる深さを増加させれば良い。また、接着層の強度を高めることも大切で、例えば架橋剤を併用したり、分子量を増加させれば良い。
【0039】
さらに本発明の皮革様シートは、曲げ圧縮応力を曲げ硬さで除して得られる皮革ライク指数(C)が25≦(C)≦100を満足する必要がある。さらには60≦(C)≦100であることが好ましい。皮革ライク指数は、この数値が大きいほどソフト性に富み、腰の強さが大きいことを意味しており、皮革ライク指数が大きいことは天然皮革の性格により近いことを示すものである。この値は、各高分子弾性体のモジュラスを上述の適正範囲に設定したり、繊維と高分子弾性体(1)、(2)との接合状態を調整することにより達成される。
【0040】
本発明の皮革様シートは、接着層に高分子弾性体水分散液を用いることにより、有機溶剤の含有量(D)を皮革様シートの全重量に対し0wt%≦(D)≦0.05wt%としたものである。さらに高分子弾性体(1)、(3)も水系にすることにより、より容易に皮革様シート全体の有機溶剤の残存含有量を低下させることができる。
【0041】
また、本発明の皮革様シートは、該接着層における最大の空隙の換算直径が100μm以下であることが好ましい。ここで換算直径とは、空隙の長径(ヨコ径)と短径(タテ径)を足して2で割ったものである。この換算直径が100μm以上であると、表皮層と接着層からなる銀面層の強度がその空隙部分で低下した物となりやすい。この空隙を小さくするためには、張り合わせ後の積層物の密着状態を保持させたまま乾燥させることにより得られる。また、接着層の換算直径が1μm以上の空隙の数は、幅500μmの範囲に100個以下、さらには50個以下であることが好ましい。小さな空隙でも数が100個より多くなった場合には、接着層の強度や各種物性が低下する傾向にある。
【0042】
更に20万回の屈曲疲労試験が4級以上であることが好ましい。3級以下の皮革様シートでは、使用用途を制限することが必要になる。この屈曲疲労を上げるためには、銀面層の強度や接着力を上げればよい。
【0043】
また、以上のようにして、本発明の皮革様シートは得られるが、必要により、樹脂や表面仕上げ剤や着色剤を付与してもよく、更に表面処理、揉み加工等の後加工を行っても構わない。
【0044】
【作用】
本発明では、水系タイプの高分子弾性体水分散液を接着層に用いることにより、有機溶剤の含有量を少なく抑え、かつ、剥離強力等の物性と、皮革ライク性に代表される風合いとの両立を果たした。
【0045】
接着と風合いがこの様に共に向上した理由は定かではないが、以下のように考えられる。本願では、高分子弾性体の水分散液が水分を含んだ状態で張り合わせているが、接着層の高分子弾性体は繊維複合シートの繊維に絡み付き、機械的なアンカー効果を生んで接着力を向上させていると考えられる。そして、含水した状態で繊維と接着層の高分子弾性体が接触するため、乾燥後の繊維と高分子弾性体は、乾燥中の水の介在により非接合構造をとりやすく、風合いの低下が起りにくい。従来の有機溶剤タイプの高分子弾性体や、熱接着型の無溶剤タイプの高分子弾性体を接着層に用いた場合には、繊維と高分子弾性体との非接合構造をとることが難しく、機械的なアンカー効果は風合いと相反するものであった。
【0046】
また、従来の技術は繊維や表皮層が接着層との、化学的な結合により接着力を発揮させるものであるために、風合いを得るためには、フィルムのモジュラスを下げるか、膜厚を下げる方法しかなかった。しかし、本願では、繊維複合シートの含浸層の高分子弾性体と同じく、接着層の高分子弾性体も繊維との非接合構造をとりやすいため、フィルムのモジュラスや膜厚を物性に必要なレベルに保ったまま、風合いを得ることができた。
【0047】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断らない限り重量基準である。また、実施例中の各測定値は次の方法により測定した。
【0048】
(1)原綿の温水収縮率
延伸後、機械捲縮を付与したクリンプトウを20cm採取し、繊度1.1dtex当たり9.8×10-6Nの荷重がかかるように重りを吊るして引き伸ばした状態で、トウの中央に10cmの長さで2点の印を付ける。印を付けた後、荷重を取り除き70℃の温水中にトウを30分間浸漬し、浸漬後トウの水分を室温で風乾して取り除き、再度上記の荷重をかけ、印の長さを測定し、収縮前後の印の長さの比を求める。
【0049】
(2)乾燥状態での剥離強力
試験片90mm×20mmを準備し、試験片の測定面の両端18mmにセロハンテープを貼り付ける。セロハンテープの貼っていない部分をユープライ200(広野化学工業(株)製)で拭き、次いで接着剤(広野化学工業(株)製ユーロック420に日本ポリウレタン(株)製コロネートLを2wt%添加したもの)を塗布する。同時に、試験片に貼り合せる塩ビレザーも試験片と同様に処理をする。処理後、試験片と塩ビレザーを貼り合せる。貼り合せた後、80℃の乾燥機に入れ294Nの荷重をかけ8時間放置する。測定サンプルを乾燥機から取り出し室温まで冷却する。
【0050】
冷却後、テンシロンRTC−1210((株)オリエンテック製)を用い、試験片を上側、塩ビレザーを下側にして定格荷重490Nのロードセルに固定し、試験巾;20mm、初期試料長;20mm、クロスヘッド速度;50mm/分、記録紙速度;50mm/分に設定し測定する。記録紙から値を読み取り、試験片幅1cm当たりの応力に換算して乾燥状態での剥離強力として単位はN/cmで表す。
【0051】
(3)湿潤状態での剥離強力
試験片90mm×20mmを準備し、試験片の測定面の両端18mmにセロハンテープを貼り付ける。セロハンテープの貼っていない部分をユープライ200(広野化学工業(株)製)で拭き、次いで接着剤(広野化学工業(株)製ユーロック420に日本ポリウレタン(株)製コロネートLを2wt%添加したもの)を塗布する。同時に、試験片に貼り合せる塩ビレザーも試験片と同様に処理をする。処理後、試験片と塩ビレザーを貼り合せる。貼り合せた後、80℃の乾燥機に入れ294Nの荷重をかけ8時間放置する。測定試料を乾燥機から取り出し室温まで冷却する。冷却後40℃の温水にて、5時間の浸水処理をする。
【0052】
測定サンプルを取り出し表面の水を拭き取り、テンシロンRTC−1210((株)オリエンテック製)に、試験片を上側、塩ビレザーを下側にして定格荷重490Nのロードセルに固定し、試験巾;20mm、初期試料長;20mm、クロスヘッド速度;50mm/分、記録紙速度;50mm/分に設定し測定する。記録紙から値を読み取り、試験片幅1cm当たりの応力に換算して乾燥状態での剥離強力として単位はN/cmで表す。
【0053】
(4)皮革ライク性
天然皮革の特徴として、その構造の緻密性と均一性によってもたらされる柔らかくて腰が強い点があげられ、この指標として(曲げ圧縮応力)/(曲げ硬さ)を皮革ライク性として表す。曲げ圧縮応力、曲げ硬さは下記のようにして測定した。
【0054】
(4−1)曲げ硬さ
25mm×90mmの試験片を、一方の端部から20mmの位置で固定具に把持する。試験片他端より20mmの位置で、曲率半径20mmで90度折り曲げ、折り曲げてから5分後の反発力を測定し、幅1cm当たりに換算して曲げ硬さ(柔軟度)として単位はmN/cmとした。
【0055】
(4−2)曲げ圧縮応力
2.5cm×9.0cmの試験片を一方の端より30mmの位置で折り曲げて、20mmの間隔にセットされた平板とUゲージの測定板との間に固定する。次いでUゲージの測定板を10mm/分の速度で平板と水平に下方へ移動させて試験片を圧縮し、平板とUゲージとの間隔が5mmとなった時の応力を記録計より読み取り、幅1cm当たりの応力に換算して曲げ圧縮応力(腰の強さ)とした。単位はmN/cmとした。
【0056】
(5)屈曲疲労試験
試験片70mm×45mmを準備し、試験片の一端の表面を内側に、他端の表面を外側にして折り曲げ、Flexoメータ(安田精機(株)製)のクランプに試験片の両端をそれぞれ装着する。一方のクランプは固定し、他方のクランプは往復運動させ、常温で20万回屈曲させた後の試験片の状態を、下記の基準で判定した等級で表した。
【0057】
一般に、等級の数値が大きいほど表皮層と含浸層が接着している場合が多く、折り曲げた場合の小皺感に優れることが多い。
1級 表皮層の一部分から繊維が貫通するか、亀裂が著しく使用に耐えられないもの。
2級 亀裂が著しいもの。
3級 亀裂がやや著しいもの。
4級 亀裂が少数のもの。
5級 亀裂が生じないもの。
【0058】
(6)空隙の測定
サンプル10mmの電子顕微鏡写真を200倍で撮影し、幅1000μmにある最大の空隙の大きさを測定した。換算直径=(垂直方向の径(タテ径)+水平方向の径(ヨコ径))/2とした。
また、接着層の幅500μmの範囲にある換算直径1μm以上の空隙の数を計測し、空隙数とした。
【0059】
(7)有機溶剤量の測定
サンプルを40℃のアセトンにて1時間抽出し、それをガスクロマトグラフにて分析した。分析はDMF(N,N−ジメチルフォルムアミド)、MEK(メチルエチルケトン)、トルエンについて行い、それぞれのこの方法での検出限界は、サンプルの皮革様シート重量に対して0.03wt%、0.01wt%、0.01wt%であった。
【0060】
[参考例1](繊維複合シート1の作成)
第1成分として収縮特性を有するポリエチレンテレフタレート、第2成分をナイロン−6とする16分割歯車型の断面を有する親糸繊度4.4dtexの剥離分割型複合繊維を、ニードルパンチと高圧水流交絡処理により、繊維の絡合と分割処理を行い厚さ1.15mm、目付け265g/m2の不織布とし、次いでこの分割処理後の不織布を75℃の温水槽中に20秒間浸漬し、第1成分のポリエチレンテレフタレート繊維を収縮させ、全体の面積を21%収縮させて乾燥した収縮不織布を得た。
【0061】
次いで該収縮不織布に感熱凝固型水系ポリウレタン分散液(濃度9%)を含浸させ、表面の余分な分散液を掻き落として、温度97℃、飽和水蒸気雰囲気下で1分間かけてポリウレタンの凝固を行い、収縮不織布の面積を更に2.5%収縮させ、さらに97℃の熱水槽の中で1分間処理し、110℃の熱風乾燥機で乾燥させ、厚さ1.2mm、見掛け密度0.38g/cm3の繊維複合シート1を得た。得られた繊維複合シートの不織布:ポリウレタンの比率は重量で100:30であった。
【0062】
[実施例1]
ハイドラン WLS211(水性ポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、固型分濃度35重量%)/DISPERSE HG(水分散性黒顔料、大日本インキ化学工業(株)製)/ハイドラン WLアシスターT1(ウレタン系増粘剤、大日本インキ化学工業(株)製)/ハイドラン WLアシスターC2(イソシアネート系架橋剤、大日本インキ化学工業(株)製)/ハイドラン WLアシスターW1(レベリング剤、大日本インキ化学工業(株)製)/ハイドラン アシスターD1(消泡剤、大日本インキ化学工業(株)製)=100/5/0.25/4/0.2/5(重量部)で配合したフィルム層用配合液を離型紙(AR―144SM、厚さ0.25mm、旭ロール(株)製)上に塗布厚100μm(wet)で塗布し、初めに70℃で2分間、次いで110℃で4分間の2段階で乾燥を行い、ポリウレタン樹脂フィルム(以下フィルム層という)を形成した。
【0063】
その表面にさらに、ハイドラン WLA311(水性ポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製、固型分濃度45重量%)/DISPERSE HG(水分散性黒顔料、大日本インキ化学工業(株)製)/ハイドラン WLアシスターT1(ウレタン系増粘剤、大日本インキ化学工業(株)製)/ハイドラン WLアシスターC2(イソシアネート系架橋剤、大日本インキ化学工業(株)製)=100/5/0.1/10(部)で配合した接着剤配合液を塗布厚150μm(wet)で塗布した。離型紙上の塗布液の含水率を測定したところ、45.8%であった。
【0064】
塗布後、直ちに繊維複合シート1に貼り合せ、熱シリンダー(表面温度130℃)に接触させて15秒間前加熱をかけ、その後クリアランス1.0mmの条件下で該熱シリンダーを用いて熱ニップし、さらに120℃で2分間のキュアリングを行った。キュアリング後の基材の含水率は4.1%であった。さらに、50℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥ぎ取り銀付き調の人工皮革様シートを得た。
【0065】
該シートの表皮層の厚さは95μm、乾燥状態での剥離強力は、23N/cmで、湿潤状態の剥離強力は、21N/cmであり、皮革ライク性は75で、屈曲試験は4級であった。また、得られた皮革様シートの有機溶剤量を測定したが、いずれも測定限界以下であった。
【0066】
[実施例2]
実施例1と同様に同じ配合液を用いて、離型紙上にフィルム層を成型し、その表面に接着剤配合液を塗布厚150μm(wet)塗布した。離型紙上の塗布液の含水率を測定したところ、45.8%であった。塗布後、直ちに繊維複合シート1に貼り合せ、熱シリンダー(表面温度130℃)に接触させて30秒間前加熱をかけ、その後クリアランス1.0mmの条件下で該熱シリンダーを用いて熱ニップし、さらに120℃で2分間のキュアリングを行った。キュアリング後の基材の含水率は2.2%であった。さらに、50℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥ぎ取り銀付き調の人工皮革様シートを得た。
【0067】
該シートの表皮層の厚さは86μm、乾燥状態での剥離強力は、24N/cmで、湿潤状態の剥離強力は、22N/cmであり、皮革ライク性は78で、屈曲試験は4級であった。また得られた皮革様シートの有機溶剤量を測定したが、いずれも測定限界以下であった。
【0068】
[実施例3]
実施例1と同様に同じ配合液を用いて、離型紙上にフィルム層を成型し、その表面に接着剤配合液を塗布厚150μm(wet)塗布した。塗布後、離型紙上で70℃2分間の予備乾燥を行った。この時、離型紙上の塗布液の含水率を測定したところ、12.2%であった。予備乾燥後、繊維複合シート1に貼り合せ、クリアランス1.0mmの条件下で熱シリンダー(表面温度130℃)を用いて熱ニップし、該熱シリンダー上で30秒間の後加熱をかけ、さらに120℃で2分間のキュアリングを行った。キュアリング後の基材の含水率は1.9%であった。さらに、50℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥ぎ取り銀付き調の人工皮革様シート3を得た。
【0069】
該シートの表皮層の厚さは95μmで、乾燥状態での剥離強力は、21N/cmで、湿潤状態の剥離強力は、21N/cmであり、皮革ライク性は62で、屈曲試験は3級であった。
【0070】
[実施例4]
実施例1と同様に同じ配合液を用いて、離型紙上にフィルム層を成型し、その表面に接着剤配合液を塗布厚150μm(wet)塗布した。塗布後、離型紙上で70℃2分間の予備乾燥を行った。この時、離型紙上の塗布液の含水率を測定したところ、12.3%であった。予備乾燥後、繊維複合シート1に貼り合せ、線圧100N/cmの条件下で熱シリンダー(表面温度130℃)を用いて熱ニップし、引き続き該熱シリンダー上で30秒間の後加熱をかけ、さらに120℃で2分間のキュアリングを行った。キュアリング後の基材の含水率は1.2%であった。さらに、50℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥ぎ取り銀付き調の人工皮革様シートを得た。
【0071】
該シートの表皮層の厚さは84μmで、乾燥状態での剥離強力は、30N/cmで、湿潤状態の剥離強力は、26N/cmであり、皮革ライク性は70で、屈曲試験は4級であった。
【0072】
[比較例1]
実施例1と同様に同じ配合液を用いて、離型紙上にフィルム層を成型し、その表面に接着剤配合液を塗布厚150μm(wet)塗布した。塗布後、離型紙上で70℃2分間の予備乾燥を行った。この時、離型紙上の塗布液の含水率を測定したところ、12.1%であった。予備乾燥後、繊維複合シート1に貼り合せ、クリアランス1mmの条件下で熱シリンダー(表面温度130℃)を用いて熱ニップし、さらに120℃で2分間のキュアリングを行った。キュアリング後の基材の含水率は3.9%であった。さらに、50℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥ぎ取り銀付き調の人工皮革様シートを得た。
【0073】
該シートの乾燥状態での剥離強力は、5N/cmで、湿潤状態の剥離強力は、4N/cmであり、皮革ライク性は40で、屈曲試験は2級であった。
【0074】
[比較例2]
実施例1と全て同様に同じ配合液を用いて、離型紙上にフィルム層を成型し、その表面に接着剤配合液を塗布厚150μm(wet)塗布した。塗布後、離型紙上で70℃2分間の予備乾燥を行った。この時、離型紙上の塗布液の含水率を測定したところ、12.9%であった。予備乾燥後、繊維複合シート1に貼り合せ、クリアランス1.0mmの条件下で熱シリンダー(表面温度130℃)を用いて熱ニップし、該熱シリンダー上で15秒間後加熱をかけ、さらに120℃で2分間のキュアリングを行った。キュアリング後の基材の含水率は2.7%であった。さらに、50℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥ぎ取り銀付き調の人工皮革様シートを得た。
【0075】
該シートの乾燥状態での剥離強力は、18N/cmで、湿潤状態の剥離強力は、11N/cmであり、皮革ライク性は60で、屈曲試験は2級であった。
【0076】
[比較例3]
実施例1と同様に同じ配合液を用いて、離型紙上にフィルム層を成型し、その表面に接着剤配合液を塗布厚150μm(wet)塗布した。塗布後、離型紙上で70℃2分間の予備乾燥を行った。この時、離型紙上の塗布液の含水率を測定したところ、12.5%であった。その後圧着ロールで線圧100N/cmの条件でニップし、繊維複合シート1に貼り合せた。その後、直ちに120℃で2分間キュアリングを行った。キュアリング後の基材の含水率は3.3%であった。さらに、50℃で24時間エージングを行い、離型紙を剥ぎ取り銀付き調の人工皮革様シート4を得た。
【0077】
該シートの乾燥状態での剥離強力は、1N/cmで、湿潤状態の剥離強力は、1N/cmであり、皮革ライク性は45で、屈曲試験は2級であった。
【0078】
表1に実施例および比較例の各物性値を示す。
【0079】
【表1】
Figure 0004065649
【0080】
【発明の効果】
本発明の皮革様シートは乾燥状態および湿潤状態での剥離強度が高く、風合いに優れ、有機溶剤の含有量の極めて少ない皮革様シートである。靴、鞄、衣料などの素材として用いることが出来る。
また、本発明の皮革様シートの製造方法は、有機溶剤の外部への放出が少ない地球環境に優しい製造方法である。

Claims (18)

  1. 繊維集合体と高分子弾性体(1)からなる繊維複合シートの表面に、張り合わせ時の含水率が3〜70%の高分子弾性体(2)水分散液から形成された接着層を介して、高分子弾性体(3)からなる表皮層積層、乾燥してなる皮革様シートであって、乾燥状態での剥離強力(A)が20N/cm≦(A)≦50N/cm、湿潤状態での剥離強力(B)が0.5×(A)≦(B)≦(A)、曲げ圧縮応力を曲げ硬さで除して得られる皮革ライク指数(C)が25≦(C)≦100を満足し、かつ有機溶剤の含有量(D)が皮革様シートの全重量に対し0wt%≦(D)≦0.05wt%であることを特徴とする皮革様シート。
  2. 該接着層における最大の空隙の換算直径が100μm以下である請求項1記載の皮革様シート。
  3. 20万回の屈曲疲労試験が4級以上である請求項1または請求項2に記載の皮革様シート。
  4. 該接着層の高分子弾性体(2)が架橋されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の皮革様シート。
  5. 高分子弾性体(1)が水分散型ポリウレタン樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の皮革様シート。
  6. 該繊維集合体を構成する繊維がポリエステル繊維およびポリアミド繊維の群から選択された少なくとも1種類の繊維である請求項1〜5のいずれか1項に記載の皮革様シート。
  7. 該繊維集合体を構成する繊維が、0.001dtex以上1.0dtex以下の単繊度を有する極細繊維である請求項1〜6のいずれか1項に記載の皮革様シート。
  8. 該繊維複合シートが、該高分子弾性体(1)を含浸する前に収縮特性を有する構成繊維を収縮させることにより繊維集合体の見かけ密度を0.3〜0.6g/cm3とした該繊維集合体と該高分子弾性体(1)からなるものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の皮革様シート。
  9. 該接着層の高分子弾性体(2)がポリウレタン樹脂である請求項1〜8のいずれか1項に記載の皮革様シート。
  10. 高分子弾性体(3)からなる表皮層と、繊維集合体と高分子弾性体(1)からなる繊維複合シートとを、張り合わせ時の含水率が3〜70%の高分子弾性体(2)水分散液により張り合わせて積層物とし、ついで該積層物を100〜180℃にて10秒以上5分以下の時間加熱し、さらに100〜180℃の熱ロールにてニップすることを特徴とする皮革様シートの製造方法。
  11. 高分子弾性体(3)からなる表皮層と、繊維集合体と高分子弾性体(1)からなる繊維複合シートとを、張り合わせ時の含水率が3〜70%の高分子弾性体(2)水分散液により張り合わせて積層物とし、ついで100〜180℃の熱ロールにてニップし、さらに該積層物の厚さをニップ前の厚さ以下に保ったまま100℃〜180℃で30秒以上の時間加熱することを特徴とする皮革様シートの製造方法。
  12. 表皮層の上に高分子弾性体(2)水分散液を塗布し、積層物とする請求項10または請求項11に記載の皮革様シートの製造方法。
  13. 該高分子弾性体(2)が架橋剤が添加されたものである請求項10〜12のいずれか1項に記載の皮革様シートの製造方法。
  14. 高分子弾性体(1)が水分散型ポリウレタン樹脂である請求項10〜13のいずれか1項に記載の皮革様シートの製造方法。
  15. 該繊維集合体を構成する繊維がポリエステル繊維およびポリアミド繊維の群から選択された少なくとも1種類の繊維である請求項10〜14のいずれか1項に記載の皮革様シートの製造方法。
  16. 該繊維集合体を構成する繊維が、0.001dtex以上1.0dtex以下の単繊度を有する極細繊維である請求項10〜15のいずれか1項に記載の皮 革様シートの製造方法。
  17. 該繊維複合シートが、該高分子弾性体(1)を含浸する前に収縮特性を有する構成繊維を収縮させることにより繊維集合体の見かけ密度を0.3〜0.6g/cm 3 とした該繊維集合体と該高分子弾性体(1)からなるものである請求項10〜16のいずれか1項に記載の皮革様シートの製造方法。
  18. 該接着層の高分子弾性体(2)がポリウレタン樹脂である請求項10〜17のいずれか1項に記載の皮革様シートの製造方法。
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