JP4063831B2 - 外断熱プレストレスト建築用構造体 - Google Patents
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Description
また、コンクリート建物を外断熱とする技術も、耐火性、優れた熱環境性等の面より、近年評価され、プレキャストコンクリート建物での外断熱も提案されている。
従来例1(図14)は、特開2002−339451号として提案された、プレキャストコンクリート板を用いる外断熱コンクリート建築に関するものである。
即ち、プレキャストコンクリート板(PC板)は、図14(A)に示す如く、外装コンクリート板と内装コンクリート板とを、断熱材及び空気層形成材を介在させてラチス筋で一体化したものであり、PC板の内装コンクリート板には、図14(B)の如く、周縁部適所に段差部を形成しておき、建築物の構築時に、図14(C)の如く、内装コンクリート板の該段差部を柱等に当接して、構造体としての柱とPC板とを接合金具で強固に取付け、断熱材で内装コンクリート板を外断熱とすると共に、空気層形成材で形成した通気層によって断熱材の吸湿機能低下を阻止したものである。
従来例2(図15)は、特開2002−276071号として提案された外断熱建築物の壁、柱、梁などに取付ける断熱PC(プレキャスト)コンクリート板の発明であり、図15(A),(B)に示す如く、内側の厚肉のPC板と、外板としての薄肉のPC板とを断熱層及び通気層を介してラチス筋で一体化した断熱PCコンクリート板である。
図15(C)は、その製造手法を示すものであり、(イ)に示す如く、型枠でラチス筋を突出させた形態に外板(PC板)を形成し、(ロ)に示す如く、型枠内に外板を載置して、ラチス筋間に、通気層を形成しつつ断熱材を敷き詰め、(ハ)に示す如く、ラチス筋頂部に亘って第2壁筋を配置して断熱材上にコンクリート打設してPCコンクリート板を形成する。
しかも、PC板は帳壁にしかすぎず、柱、梁、耐力壁等の主要構造体でないため、接合金具で主要構造体に強固に取付ける必要があり、接合金具での取付構造によって内装仕上げが制約を受け、コンクリート素地仕上げには対応出来ない。
従って、従来例1及び2は、共に、壁体を工場生産するだけであって、コンクリート外断熱建築物の建築の合理化は期待出来ない。
即ち、従来は、PC鉄筋コンクリートにプレストレスを導入して鉄筋コンクリート建物の躯体を構築することはおろか、PC鉄筋コンクリート構造物のみで鉄筋コンクリート建物を構築することすらなかった。
尚、穴部3A,3Bは、典型的には、プレストレスを導入するPC鋼材挿通用のスパイラルシースであって、プレキャストコンクリート体1A,1´Aの成型時に、PC鋼材7A,7B挿通位置に慣用のスパイラルシース3A,3Bを埋設しておけば良い。
この場合、構造体形成コンクリートとしては、高強度コンクリートを採用すれば良く、典型的には、圧縮強度500kg/cm2、スランプ8cm、水セメント比38%、空気量3%の高強度コンクリートである。
また、床スラブS内のスパン方向のPC鋼材の壁W面での端部保持は、図7(A)の如く、断熱パネル2の対応位置を切落して切欠孔H1を形成しておき、壁W外面に、ポケットフォーマー等の慣用の型を用いて欠込みH1´を形成すれば、欠込みH1´内に支圧板6及びアンカーヘッド6Cが配置可能であり、また、壁W内を上下に貫通するPC鋼材の上端部保持は、図7(A)に示す如く、ポケットフォーマー等の慣用の型で、壁W上面に欠込みH1”形成しておけば良い。
この場合、標準パネル2にあっては、条溝AG´の断面寸法は、図11(B)の如く、背面AFの長さL22が44mm、開口OGの長さL22´が30mm、深さgdが13mmであり、両側の傾斜側面ASが60°である。
従って、図11(B)に示す如く、屈曲形状の固定部16Aと、両側縁に60°傾斜の小幅Wa(標準:3mm)のアンカー片16B´を備えた可動部16Bと、ねじボルト16Cと、ナット16Dとからなる新規な取付金具16の条溝AG´内のへの挿入、圧接固着が、セメント板2Aのどの部分をも損傷することなく、確実、且つ容易に実施出来、本発明構造体で構築した建築物への腰水切の付設は、図11(A)の如く、取付金具16を、固定部16Aの下部をセメント板2A下端から10mm垂下した状態でセメント板2Aに圧接固着し、腰水切立上り辺15Aをドリルねじ15Cで止着することにより、腰水切15の簡単、且つ、きれいな取付けを可能とする。
また、プレストレスト建築用構造体1,1´は、工場生産となるため、品質管理の行き届いた環境の下での均斉な高品質の構造体1,1´が、天候に左右されずに製造出来て、建築工事期間も通常のRC造より大幅(約1/2)に短縮出来る。
そして、建築現場では、コンクリート躯体の建付けは、クレーンによる吊込みとプレストレス導入の作業となって、静かな環境下での建築作業となる。
しかも、建物密集地の挟小な土地での施工も可能となる。
この場合は、床スラブS内には、スパン方向のPC鋼材7B挿通用のスパイラルシース3B、及びスパン直交方向のPC鋼材7B挿通用のスパイラルシース3Cを埋設しておき、且つ、床スラブS両側縁では、欠込みH3,H3´内にスパイラルシース3C端を露出しておけば、構造体の接合時のPC鋼材処理が容易となる。
そして、プレキャストコンクリート体1Aは、壁Wと床スラブSとの断面L形状となるため、型枠組みが若干複雑となるが、図4の如く、粘性の高いコンクリートの使用により、山形状で、上面の開放した型組みで実施出来、プレキャスト成型、及び断熱パネル2の張着が容易となる。
また、建築現場は、基礎工事と、プレストレスト建築用構造体1の建付け及びプレストレス導入であるため、騒音が少なく、静かできれいな環境での作業となる。
従って、断熱パネルでコンクリート躯体への熱負荷が阻止された、高耐久で、耐震性に優れ、且つ、大空間を創出する外断熱鉄筋コンクリート建築物が、従来のRC造よりも、少量の資材(コンクリート)使用により、より短期間で、且つ現場騒音の抑制下で構築出来る。
この場合、コンクリート壁W内のねじ9C端とセメント板2Aからの皿ねじ9D´端とは、共にプラスチック製断熱材用コーン9Bに螺合保持されるが、皿ねじ9D´端とねじ9C端との間には間隔S9が存在するため、皿ねじ9D´は、ねじ9Cに対しても、コンクリート壁Wに対しても熱橋とはならない。
尚、「断熱材用コーン」は、断熱板をコンクリート型枠兼用で用いる際に、断熱板を押え、型枠の締め過ぎによる断熱板の極端な変形を防止する型枠用部材であって、それ自体は、業界で「KPコン」の通称の下に慣用されている部材である。
それゆえ、本願明細書中では、「断熱材用コーン」と、業界で通称となっている「KPコン」(丸井産業(株)、商品名)とを、同義語として用いている。
この場合、図1に示す床スラブ一体化の構造体1にあっては、図4に示す如く、山形状の上部開放型枠の壁W部でのフレッシュコンクリート面上に断熱パネル2の断熱層2Bを載置することとなり、図12に示す、コンクリート壁Wと断熱パネル2の層着形態の構造体1´にあっては、図13に示す如く、平坦配置のコンクリート壁Wのフレッシュコンクリート面上への断熱パネル2の断熱層2Bを載置することとなるが、コンクリート壁Wがフレッシュコンクリートであるため、断熱パネル2のセメント板2A面からの叩き調整が可能で、コンクリート壁W面と断熱層2B面との界面には空気隙間が発生せず、且つセメント板2A表面に不陸の生じない層着となる。
従って、硬化コンクリート壁Wへの断熱パネル2の接着剤による後貼り皿ねじ固定より、はるかに均斉、且つ断熱機能の保証された、高品質の構造体となる。
本発明のプレストレスト建築用構造体1(1´)で構築した外断熱建築物は、断熱パネル2内の条溝AG,AG´が、図10に示す如く、腰水切15から笠木17まで外気を貫流させる通気層となり、また、空気の自然対流は、空気粘性の為に通気層厚(深さ)が10mm以上必要である。
そして、本発明の切欠溝BGの深さは標準10mmとする。
従って、得られる建築物の外壁の通気層厚は,条溝AG,AG´の深さgd(標準:13mm)プラス切欠溝BG深さ(標準:10mm)となり、腰水切15から笠木17までの外気の自然対流が、各条溝AG,AG´全てで完全に保証される。
この場合、標準の、壁長さL8が2480mmのプレストレスト建築用構造体1(1´)にあっては、図2(A)の如く、5枚の断熱パネル2を衝合してコンクリート壁Wに一体化し、d1は10mm、d2は20mmである。
しかも、各プレストレスト建築用構造体1,1´相互の並列衝合部には、コンクリート壁W相互間には、d2(標準:20mm)の目地間隔が存在するため、建築物の構築時には、該目地間隔により、施工誤差、建方誤差、製品誤差の吸収(調整)が可能となる。
尚、壁目地28A間隔d2(20mm)は、プレストレスト建築用構造体1(1´)相互の建付け完了後に、慣用の無収縮モルタルを充填するが、断熱層2Bの壁W側縁からのd2(20mm)の突出は、壁目地28Aに無収縮モルタルを充填する際の型枠機能を奏する。
この場合、リブR、ジョイスト梁G共、図1に示す如く、端部から接合部C2へ突出長RL,GHを漸増した形態が好ましい。
この場合、受台Bは、図6の如く、上方のプレストレスト建築用構造体1のコンクリート壁Wを載置固定する機能を奏すると共に、図7(A)で明らかな如く、床スラブSに配置したPC鋼材(PC鋼より線7B)を定着するための、支圧板6及びアンカーヘッド6Cを配置する壁Wの欠込みH1´と、壁Wに配置したPC鋼材(PC鋼棒7A)を定着するための、アンカープレート4G及びナット4Eを配置する受台Bの欠込みH1”とを離した形態と出来る。
しかも、受台Bは、上面BTが、床スラブ表面Sfよりも高さBH(標準:100mm)だけ突出しているため、床スラブ表面Sfに、図10の如く、慣用の鋼製床下地30を配置し、フローリング30Aを受台Bの上面BTのレベルに二重床として張設することにより、フローリングと床スラブ表面Sfとのスペースを、情報機器用の配線、配管等の設備用空間として用いることが出来、床スラブSを損壊することなく配線、配管の敷設及び変更が可能となり、インテリジェントビルとしての内装も簡便に実施出来る。
即ち、本発明は、受台Bの存在により、プレストレスト建築用構造体1相互の上下載置結合を確実にすると共に、屋上から外壁面への流水防止機能も奏し、しかも、PCコンクリートへのプレストレスの導入がコンクリートを損壊することなく実施可能となり、同時に、床下の配線、配管の更新、変更が容易な二重床が形成出来る。
しかも、外断熱建物は、断熱パネル2内の条溝AG,AG´が、腰水切15から笠木17まで、外気を貫流させる通気層となって、内部結露や熱日射の影響の少ない建物となり、耐久性はRC造よりはるかに向上した建築物となる。
その上、コンクリート壁Wを外断熱被覆した断熱パネル2の押出成形セメント板2Aの通気用条溝AG´が、断面形状が左右対称で、最内部の平坦背面AFと、両側の等角度で内方に拡開形態で傾斜した傾斜側面ASとを備えているため、図11(B)に示す如く、屈曲形状の固定部16Aと、両側縁に60°傾斜の小幅Wa(標準:3mm)のアンカー片16B´を備えた可動部16Bと、可動部16Bを条溝AG´の傾斜側面ASに圧接させるネジボルト16Cと、ナット16Dとから成る、新規な取付金具16の条溝AG´内への挿入、圧接固着が、セメント板2Aのどの部分をも損傷することなく、確実、且つ容易に実施出来る。
そのため、本発明構造体で構築した外断熱建築物の外壁への腰水切の付設は、図11(A)の如く、取付金具16を、固定部16Aの下部をセメント板2Aの下端から垂下(標準:10mm垂下)した状態に、条溝AG´内に挿入して、セメント板2Aに圧接固着し、腰水切立上り片15Aを、ドリルねじ15Cで垂下した固定部16Aに止着することにより、腰水切15の簡単、且つ、きれいな取付けを可能とする。
また、プレキャストコンクリート体が、図11に示す壁Wのみのコンクリート体1´Aの場合は勿論、図1に示す、壁Wと床スラブSの一体化した断面L字形態のコンクリート体1Aの場合でさえ、粘性の大な高強度コンクリートを採用することにより、プレキャスト成形時には、型枠は上面開放形態に型組み出来、コンクリート打設、及び打設コンクリート壁への断熱パネル2の張設固定が容易に実施出来る。
しかも、建築現場は、主として、クレーンでの吊込みと、PC鋼材によるプレキャスト導入作業となり、騒音が少なく、静かできれいな作業環境下での作業となる。
従って、本発明のプレストレスト建築用構造体1,1´は、断熱パネルでコンクリート躯体が熱的に保護された、高品質で高耐久の外断熱鉄筋コンクリート建築物を、従来のRC造よりも、少量の資材(セメント)使用の下で、工期の短期間化の下で、且つ、現場騒音の低減の下で建築可能とする。
〔構築建物(図9)〕
図9(A)は、本発明を実施した建築物23の全体斜視図であって、図9(B)は、図9(A)のB−B横断面図である。
該建築物は、スパン長L1が8mで、建物の長さ(壁方向長さ)は、プレストレスト建築用構造体1の躯体部の長さL2(7690mm)に、長さL3が1600mmの鉄骨造建物29を付設した5階建の建物である。
プレストレスト建築用構造体1のRC造部は、事務所OFとして用いるもので、図6(A)に示す如く、壁W方向には、プレストレスト建築用構造体1を3ブロック並列結合し、スパン方向には、2ブロックのプレストレスト建築用構造体1を対向して、床スラブ前端SF(図1)を衝合結合したものである。
他端の鉄骨造建物29は、1階床スラブSに、慣用のアンカーボルトを介してH型鋼の柱を立設し、柱間にはH型鋼の梁を配置し、各階はデッキプレートを用いてコンクリート打設により床を形成し、鉄骨造建物29内には、階段SK、エレベータースペースEV、トイレWC、パイプシャフトPS等を配置し、外壁には、本出願人の開発した特許第2999980号、特許第3577061号等の断熱複合パネルを鉄骨梁に張着して、鉄骨造建物29を外断熱プレストレスト建築用構造体1と一体化し、高断熱、高気密、省エネ性に優れた建築物23とする。
図3(A)は、断熱パネル2の一部切欠斜視図であり、図3(B)は断熱パネル2の上面図であり、図3(C)は断熱パネル2の縦断面図である。
断熱パネル2は、プレキャストコンクリート体1Aの壁Wに一体的に張着使用するものであり、図3から明らかな如く、断熱パネル2は、厚さT1が25mmの押出成形セメント板2Aと、厚さT2が75mmの発泡プラスチック系断熱層2B(JISA9501)が積着一体化したものである。
尚、断熱パネル2は、コンクリート壁Wに固着するために、両端部上下に径9mmの皿ねじ挿入用孔H2を穿設し、中央部上方には、PC鋼材の緊張、定着のための、径200mmの切欠孔H1を切り取って開孔しておく。
図1(A)は、プレストレスト建築用構造体1の全体斜視図であり、図1(B)は、図1(A)の矢印B視側面図であり、図2(A)は、図1(A)の(イ)−(イ)線断面図、即ち、左半がリブRの下部RSを、右半がリブRの上部RTを通る線(イ)−(イ)断面であり、図2(B)は、図1(A)の(ロ)−(ロ)線断面図、即ち左半がジョイスト梁前部GTを、右半がジョイスト梁後部GSを通る(ロ)−(ロ)線断面図である。
そして、リブRは、下部RSでは、突出長RLが125mm、先端幅RWが100mm、元端幅RW´が140mmであり、上部RTでは、突出長RL´が250mm、先端幅RWが100mm、元端幅RW´が140mmである。
図4(A)は、型枠8の概略側面図であって、図4(B)は、図4(A)のB−B線断面図であり、図4(C)は、図4(B)の部分拡大図である。
また、図5(A)は、壁Wへの断熱パネル取付状態説明図であり、図5(B)は、受具10の分解斜視図であり、図5(C)は、受具の処理状態説明図である。
図4(A)に示す如く、壁W側と床スラブS側との一体化型枠8を、断面三角形の押え金具8Iで支承して、山形の傾斜形態に配置し、上面が開放したプレキャストコンクリート体用型枠とする。
従って、断熱パネル2の断熱層2Bと、プレキャストコンクリート体1Aのコンクリート壁Wとの界面には、空気が介在しない状態での、全面接着と出来る。
この場合、KPコン9B内では、コンクリート壁W内のKPコン9Bを保持しているねじ9Cの上端と、螺入する皿ねじ9D´の下端との間には、間隔S9が存在する形態に、皿ねじ9D´を螺着し、プレキャストコンクリート体1を型枠から製品として取出す。
プレキャストコンクリート体1Aの型成形時に、図1(B)に示す如く、プレストレスト建築用構造体1の相互結合部のスラブS両側縁には、高さ100mm、幅100mm、深さ25mmの欠込みH3を形成する。
欠込みH3は、床スラブSにジョイスト梁Gと直交方向にプレストレスを導入してPC鋼材7Bを配置するための、スパイラルシース3C及び3Bの、プレストレスト建築用構造体1の相互結合部での接合を容易とするためである。
また、図6(A)、図7(C)に示す如く、プレストレスト建築用構造体1相互を並列結合した際の最外端に位置する床スラブSの側縁、即ち、PC鋼材7Bの緊張、及び定着端となる側縁には、中間接合部での欠込みH3よりも大きな、幅、高さが100mmで奥行(深さ)が109mmの欠込みH3´を配置する。
また、建方時のプレストレスト建築用構造体1の転倒防止用として、壁W、床スラブSに欠込みH26を適宜配置すれば良い。
これら小さな欠込みH3,H3´,H25,H26等は、プレキャストコンクリート体1Aの型組み時に、適宜小片型枠を配置すれば形成容易である。
また、壁W上部には、図7(A)の如く、床スラブS内のPC鋼材7Bの緊張、定着用の欠込み(ポケット)H1´を、受台B上面には、壁W内のPC鋼材7Aの緊張、定着用の欠込み(ポケット)H1”を、慣用のポケットフォーマーで形成する。
外断熱プレストレスト建築用構造体1を用いた建物の構築は、図7(B)に示す如く、掘削地盤面に打設した捨コンクリートC0に、基礎梁FGの位置を墨出しし、基礎梁FG及び耐圧板FSをコンクリート打設する。
基礎梁FG外面に用いる断熱パネル2は、標準断熱パネル2の下部を平坦に切落したものであって、図7(B)に示す如く、下端2D´は平坦で、上端2Tは、押出成形セメント板2Aより断熱層2Bが50mm(d4)突出したもので、基礎梁FG上端辺FTより、断熱層2Bが30mm(d3)突出し、セメント板2A上端が20mm(d14)落下した状態に配置する。
尚、基礎梁FGは、上端辺FTが地面GLより100mm(L4)上方、且つ、床スラブ表面SfよりBH(100mm)上方位置であり、下端が地面GLより1200mm(LF)下方の高さである。
そして、基礎梁FGから上方に突出したPC鋼棒7A上端には、カップラー4Aを介して両端にねじを備えた径17mm、長さ3000mm長(L5)のPC鋼棒7A下端を螺着接続し、コンクリート体1Aの壁W内に配置したスパイラルシース3Aへの挿入用PC鋼棒7A群として立設する。
以上の建付けを順次繰返して、図6(A)に示す如く、建築物躯体を構築する。
即ち、壁W内を、図7(B)に示す基礎梁FGから、図7(A)に示す最上階の受台Bの欠込みH1”まで、カップラーシース4で接続する。
そして、スパイラルシース3A内をカップラー4Aで接続して貫通したPC鋼棒7Aは、最上階の受台Bの欠込みH1”内で、PC鋼棒7Aの上端に所定の引張応力を付与し、アンカープレート4G、座金4F、及びナット4Eで締着する。
また、床スラブS内でジョイスト梁Gに直交方向に配置するPC鋼材としては、PC鋼より線7Bを1本採用し、床スラブS内に配置したスパイラルシース3C内を挿通して構築躯体の前端から後端まで貫通して必要緊張力を付与し、両端を、図7(C)に示す如く、床スラブ側端縁の欠込みH3´内で、支圧板6´及びアンカーヘッド6C´で定着する。
そして、壁W及び床スラブSの欠込み、壁W相互の当接面の目地28A間隔、床スラブS相互の当接面の目地14´間隔等には、無収縮モルタル、シーリング等で閉止し、壁Wの欠込みH1´外面の断熱パネル2の切欠孔H1に対しては、切欠孔H1形成時に切り取った円盤形態の断熱パネル片2´を、2mm厚で幅50mmの隙間追従シート(商品名:ソフトロン、積水化学工業(株)製)2Cを断熱層2B外周に張着し、断熱層2B平面にエポキシ系接着剤(商品名:MP200、セメダイン(株)製)を塗布し、且つ、セメント板2Aの条溝AG,AG´を整合して無収縮モルタル6Eに当接することにより嵌着閉止し、断熱パネル2の切欠孔H1を断熱パネル片2´で元通りに修復する。
腰水切15は、一般厚1.5mmのアルミ製押出成形品であって、図11(D)に示す如く、断面形状は、後端に高さh15´が10mmの立上り辺15Aを備えた、勾配高さ5mmで幅W15が36mmの斜辺15Uと、斜辺15U前端からの高さh15が25mmの立下り辺15Fと、立下り辺15Fの下部5mmを水切り辺15Sとして残し、立下り辺15Fから後方に水平に延出した幅W15(36mm)の座板15Bとを備え、座板15B下面には水切り辺15Sから16mm(W15´)の位置から、下方に15mm(d15)長のアンカー板15Pを突出し、且つ、座板15Bの前端部には50mm間隔で空気孔h15を穿孔した形状であり、標準長さ4000mmのものである。
また、ボルト16Cは、径3mm、10mm長であり、ナット16Dはボルト16Cに螺合する。
そして、建物外壁材として、断熱パネルのセメント板2A外面には外壁タイル13を張着し、斜辺15Uとタイル13間には、バッカー14Bを介してシーリング14Aを充填し、座板15B下面では、アンカー板15Pでタイル13上端を覆う。
尚、立上り辺15Aと、固定部16との止着は、立上り辺15Aに固定部16Aの対応位置の目印を付しておき、慣用のドリルねじで止着すれば良い。
従って、笠木17としては、プレストレスト建築用構造体1内に存在する条溝AG,AG´の空気貫流を保証するものであれば良く、典型的には、特開2004−60335号として提案された笠木を採用する。
図9に示すように、X1通及びX4通の開放空間には、X1通には、複数階に亘るアルミ製のカーテンウォールCWを張設し、X4通には、各階毎にアルミ製窓AWを配置する。
また、外壁の断熱パネル2の押出成形セメント板2Aは、図8(A),(B)の如く、縦目地28B、及び横目地14、更に、緊張部の後貼断熱パネル片2´の周囲、及び押出成形セメント板2Aと、カーテンウォールCW、アルミ製窓AWとの取合部の隙間、また、腰水切15と押出成形セメント板下端2Dとの目地隙間14等は、必要に応じてバッカーを用いシーリングで充填閉止する。
また、壁、天井は、コンクリート打放し仕上げでも、塗装仕上げ、クロス貼り等の適宜の仕上げが採用出来る。
しかも、本発明のプレストレスト建築用構造体1にプレストレスを導入して曲げ応力強度を向上したコンクリート躯体は、熱橋の抑制した外断熱工法と組合せたことにより、耐久性は更に向上する。
そして、現場では、基礎部工事を除けば、クレーンによる吊込みと、PC鋼材の緊張、定着だけであるため、現場打ちコンクリートの1/2の時間で建て方が出来、しかも、騒音の無い、静かできれいな現場作業となり、周辺住民への迷惑や、第3者災害の少ない状態での建築施工により、新規、且つ高品質のプレストレストPCセメント建築物の提供が可能となる。
また、結露も無く、場所によっての湿度変化の影響も受けない、健康的で、省エネルギー性に富む、快適な居住空間の提供出来る建物となる。
変形例の構造体1´は、図12に示す如く、外壁部のみのプレキャストコンクリート体1´Aに断熱パネル2を張着したものであって、コンクリート建築物躯体の形成に際しては、別体の、プレキャストコンクリートの床スラブ構造体1”をプレストレス導入により、壁Wのみのプレストレスト建築用構造体1´と一体化するものである。
そして、コンクリート壁Wと断熱パネル2との関係構造は、実施例の外壁と床スラブ一体物と同一構造であり、図3に示す断熱パネル2を使用する。
図13(A)は、形成型枠80の斜視図であり、図13(B)は、図13(A)のB−B線断面図、図13(B)は図13(A)のC−C線断面図である。
変形例(図13)のプレストレスト建築用構造体1´は、プレキャストコンクリート体1´Aがコンクリート壁Wの形態であり、平板形態であるため、型枠組み及び断熱パネル2の張着作業は、実施例(図1)の構造体1の場合より、遥かに容易である。
また、長さH80も、押出成形セメント板2Aの高さ2Ahに段差d4を付加した寸法(標準:3030mm)である。
また、断熱パネル2のコンクリート壁Wへの皿ねじ9D´固定位置では、図4、図5に示す実施例での取付同様に、ベッド81にねじ9Aを介して受具10を取付け、受具10からねじ9Cを介してプラスチック製KPコン9Bを取付け、KPコン9Bから、図9(A)の如く、ねじ9Dを突出させておく。
また、型枠80のコンクリート壁W用キャビティ内には、強度計算に基づいて予め組立てた配筋、及び上下方向緊張用のPC鋼棒7Aを挿通するためのスパイラルシース3A、幅方向緊張用のPC鋼より線7Bを挿通するためのスパイラルシース3Bを配置し、各スパイラルシース3A,3Bにはグラウト注入用ホース5D(図7)を接続しておく。
型枠80内のベッド81上に、圧縮強度500kg/cm2、スランプ8cmの高強度コンクリートを打設し、KPコン9Bの表面9B´を厚さ目印とし、該流動性に乏しいコンクリートをバイブレータ、及びこて仕上げし、打設コンクリートがフレッシュコンクリートの状態で、KPコン9Bから突出しているねじ9Dに断熱パネル2の皿ねじ挿入用孔H2を嵌合して、断熱層2B面をフレッシュコンクリート表面に載置し、断熱パネル2の表面のセメント板2Aを叩きながら、セメント板2Aより突出したねじ9Dに座金9E及びナット9Fを用いて、KPコン9Bに断熱パネル2を取付ける。
この場合、KPコン9B内では、図5(A)の如く、コンクリート壁W内のKPコン9Bを保持しているねじ9Cの上端と皿ねじ9D´の下端との間には、間隔S9が存在する形態に螺着する。
そして、型枠を解体して製品構造体を取出し、図5(C)の如く、ボルト9Aの抜脱孔は、嵌合具10´で閉塞する。
図12(A)は、外壁用のプレストレスト建築用構造体1´と、別途形成した床スラブ構造体1”とで構築した建物躯体の斜視図であり、図12(B)は、図12(A)の要部縦断面図である。
外壁Wの構築は、構造体1´相互を上下左右に連結一体化すれば良く、実施例の構造体1での図7(A),(B)の構築同様、基礎梁FGから最上階の壁W構造体1´の上端までを、図12(B)の如く、構造体1´内に埋設したスパイラルシース3A内にPC鋼棒7Aを接続挿通して緊張し、下端のアンカープレート4G(図4)と上端のアンカープレート4G(図4)で締着するものである。
そして、床スラブS内のスパン方向のプレストレス導入は、実施例同様に図12(B)の如く、断熱パネル2の切欠孔H1及びコンクリート壁W内の欠込みH1´を介して、PC鋼より線7Bの緊張、定着で実施し、切欠孔H1は、切欠孔H1形成時に切取った断熱パネル片2´で補修する。
変形例(図12、図13)のプレストレスト建築用構造体1´は、実施例の構造体1と比べて、別体の床スラブ構造体1”を用意し、且つ壁W部のみの構造体1´と床スラブ構造体1”との組立て施工の必要があるが、プレキャストコンクリートの型枠組み、及び成形面では、実施例より、はるかに簡便、且つ均斉に実施出来る。
そして、得られるプレストレスト建築物は、実施例で得られる建築物同様の高性能、且つ、高耐久建築物となり、建築物の施工面でも、実施例のそれと同様に、従来の外断熱鉄筋コンクリート建物より、軽量化が図れ、工場生産によって天候に関係なく躯体ユニットが製造出来るため、工期の短縮化が達成出来る。
1” 床スラブ構造体(床スラブ版)
1A,1´A プレキャストコンクリート体(コンクリート体)
2 断熱パネル
2´ 断熱パネル片
2A 押出成形セメント板(セメント板)
2B 断熱層
2C 隙間追従シート
2D,2D´ 下端辺(下端)
2T 上端辺(上端)
2L 左側辺
2R 右側辺
3A,3B,3C スパイラルシース(シース管、穴部)
3F グラウト
4 カップラーシース
4A カップラー
4E ナット
4F 座金
4G アンカープレート
5,5´ トランペットシース
5A グラウト注入管
5D ホース
6,6´ 支圧板
6B,6B´,6B” 補強筋
6C,6C´ アンカーヘッド
6D´ 孔底部
6E 無収縮モルタル(モルタル)
7A PC鋼棒(PC鋼材)
7B PC鋼より線(PC鋼材)
8A,8A´,8A”,81 ベッド
8B 補強鋼材
8C,8C´ 櫛型
8D 腹起し
8E,8E´ 根太
8F かんざし
8G,8G´ キャンバー
8H,8´H コンクリート止
8I 押え金具
8J 止枠
9A ボルト
9B KPコン
9B´ KPコン表面
9C ねじ
9C´ ストッパー
9D ねじ
9D´ 皿ねじ
9G シート
9H 蒸気管
10 受具
10´ 嵌合具
10A 上端辺
10B,10B´ 下端辺
10C,10C´ 軸部
10D 仕切り
11B 横筋(壁横筋)
11C 主筋(リブ主筋)
11D 帯筋(リブ帯筋)
12A,12B 床スラブ筋
12C 主筋(ジョイスト梁主筋)
12D 肋筋
12E 腹筋
13 外壁タイル(タイル)
14 横目地(目地)
14´ 床スラブ目地
14A シーリング
14B バッカー
15 腰水切
15A 立上り辺
15B 座板
15C ねじ
15F 立下り辺
15P アンカー板
15S 水切り辺
15U 斜辺
16 取付金具
16A 固定部
16A´ 屈曲部
16A” 固定片
16B 可動部
16B´ アンカー片
16C ボルト(ねじボルト)
16D ナット
16F 突出板部
19 アスファルト防水(防水層)
19A 断熱材
19B 透明断熱材
19C 均しモルタル
23 建築物
28A,28B 縦目地(目地)
29 鉄骨造建物
30 鋼製床下地
30A フローリング
82A 堰坂
82B 上枠
82C 下枠
82D 仕切板
AF 背面(条溝背面)
AG 条溝
AG´ 台形条溝(条溝)
ar 空気
AS 傾斜側面
AW アルミ製窓
B 受台
BG 切欠溝
C0 捨コンクリート
C1,C2 接合部(弯曲接合部)
C1´,C2´ 弯曲鋼板
CW カーテンウォール
d1,d2,d3,d4 段差
EV エレベータースペース
FG 基礎梁
FS 耐圧板
G ジョイスト梁
GB ジョイスト梁元端
GF ジョイスト梁先端
GL 地面
GR ゴム輪
GS ジョイスト梁後部
GT ジョイスト梁前部
GW,GW´ ジョイスト梁幅
H1 切欠孔
H1´,H1”,H3,H3´,H25,H26 欠込み
H2 皿ねじ挿入用孔
H15 空気孔
H18 長孔
OF 事務所
OG 開口
OR ルーバー(目隠しルーバー)
PS パイプシャフト
P1,P2,P3 型板(鋼板)
R リブ
RL,RL´,GH,GH´ 突出長
RB リブ元端
RF リブ先端
RS リブ下部
RT リブ上部
RW,RW´ リブ幅
S 床スラブ(コンクリート床スラブ)
S9 間隔
SF 床スラブ前端辺
Sf 床スラブ表面
SS 床スラブ後部
ST 床スラブ前部
SK 階段
W 壁(コンクリート壁)
WC 便所(トイレ)
Claims (8)
- プレキャストコンクリート体(1A,1´A)の、コンクリート壁(W)の外面には、少なくとも、両端、及び中央部の条溝(AG´)が、断面形状が左右対称で、最内部の平坦背面(AF)と、両側の等角度で内方に拡開形態で傾斜した傾斜側面(AS)とを備えている条溝(AG´)を含む通気用の条溝(AG,AG´)群を内面に並列縦設した押出成形セメント板(2A)と断熱層(2B)の層着一体化した断熱パネル(2)を備え、コンクリート壁(W)内部には、プレストレスを導入するPC鋼材(7A,7B)を挿通する穴部(3A,3B)を備えている、外断熱プレストレスト建築用構造体。
- プレキャストコンクリート体(1A)が、上部からコンクリート床スラブ(S)を延出している請求項1のプレストレスト建築用構造体。
- 断熱パネル(2)は、断熱層(2B)をコンクリート壁(W)の外面(Wf)と層着一体化し、皿ねじ(9D´)を押出成形セメント板(2A)の外面から貫入してコンクリート壁(W)の外面に埋設したプラスチック製断熱材用コーン(9B)内に螺着し、且つ、皿ねじ(9D´)の先端が、断熱材用コーン(9B)を螺着保持したねじ(9C)端と間隔(S9)を保っている、請求項1、又は2のプレストレスト建築用構造体。
- 断熱パネル(2)は、プレキャストコンクリート体(1A,1´A)がフレッシュコンクリートの状態のコンクリート壁(W)に、断熱層(2B)を層着一体化した、請求項1乃至3のいずれか1項のプレストレスト建築用構造体。
- 断熱パネル(2)は、断熱層(2B)が、押出成形セメント板(2A)の各条溝(AG,AG´)の対向面に、断面矩形の通気増進用の切欠溝(BG)を備えている、請求項1乃至4のいずれか1項のプレストレスト建築用構造体。
- プレストレスト建築用構造体(1,1´)は、コンクリート壁(W)の一側縁(WL)では、壁(W)と断熱層(2B)とが面一で、セメント板(2A)が断熱層(2B)から突出段差(d1)を備え、他側縁(WR)では、断熱層(2B)が、壁(W)から、突出段差(d1)より大きな突出段差(d2)を備え、且つ、セメント板(2A)と壁(W)とが面一である、請求項1乃至5のいずれか1項のプレストレスト建築用構造体。
- プレストレスト建築用構造体(1)は、壁(W)の内面にはリブ(R)群を、床スラブ(S)下面にはジョイスト梁(G)群を備え、各リブ(R)とジョイスト梁(G)とは、弯曲接合部(C2)を介して連続した、請求項2乃至6のいずれか1項のプレストレスト建築用構造体。
- プレストレスト建築用構造体(1)は、壁(W)の上端に、床スラブ表面(Sf)より突出した上面平坦な受台(B)を備えた、請求項2乃至7のいずれか1項のプレストレスト建築用構造体。
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