JP4063797B2 - 水消去性インキ組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、筆跡が鮮明に発色し、かつ発色した筆跡を水で消去することができる水消去性インキ組成物に関する。
従来、ロイコ染料及び顕色剤を用いて、水により筆跡を消去することができる水消去性インキ組成物が種々提供されている(特許文献1〜特許文献15)。すなわち、ロイコ染料を顕色剤で着色し、これを含むインキを用いて筆記乃至塗布した後、その筆跡に水を付着させることにより、顕色剤が水に溶解し、水に溶けない染料から顕色剤が離脱し、ロイコ染料が元の無色の構造に戻ることにより消去するインキ組成物である。
上記顕色剤として、各種の水溶性顕色剤が例示されており、亜鉛塩、コバルト塩、ニッケル塩等の水溶性チオシアン酸金属塩、サリチル酸亜鉛、没食子酸、ポリオキシアルキレンモノアリルモノメチルエーテル/無水マレイン酸/スチレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル化カルボン酸、ポリオキシエチレンアリールエーテル燐酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル、p−スルホサリチル酸、P−トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。またこのほか、水不溶性顕色剤としてビスフェノールA、ビスフェノールSを例示することができる。
特開昭49−109108 特開昭53−82507 特開平4−85374 特開平4−239064 特許2982245 特許2511838 特許3329505 特開平7−90213 特許35133227 特開平8−239615 特開平9−59547 特開平9−302295 特開平10−17814 特開平10−101982 特開平10−130553
しかし、従来のこれらの水消去性インキ組成物では、筆記直後に鮮明な発色性を得ながら、当該筆跡の発色の経時安定性及び経時消去性も良好であるインキ組成物は未だ提供されていない。
本発明の課題は、筆記直後の発色性が鮮明でありながら、当該筆跡の発色の経時安定性も良好であり、また発色した筆跡を筆跡直後のみならず経時後も水で容易に消去することができる水消去性インキ組成物を提供するところにある。
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、前記の公知の水溶性顕色剤の中でスルホン基を有する有機酸が筆記直後の発色性及び経日後の水消去性は良好であるものの、空気中の水分の影響に起因すると考えられるが、筆跡の色が薄くなり、発色の経時安定性が低下することから、第2顕色剤としてビスフェノールS又はその誘導体をこのスルホン基を有する有機酸と同時に含ませることによって、ロイコ染料に対する着色において、筆記直後の発色性を鮮明にしながら、当該筆跡の発色の経時安定性と、筆記初期及び経日後の水消去性をすべて良好にすることができることを見出した。
本発明は、ロイコ染料、顕色剤、水溶性樹脂及び有機溶剤を含む水消去性インキ組成物であって、前記顕色剤として第1顕色剤及び第2顕色剤を含み、第1顕色剤としてスルホン基を有する有機酸、第2顕色剤としてビスフェノールS又はその誘導体を含む水消去性インキ組成物である。
特に、筆記直後の発色が鮮明で、当該筆跡の発色の経時安定性を確保するには、前記第1顕色剤(A)に対する第2顕色剤(B)の重量比(B/A)が、0.01以上である水消去性インキ組成物が好ましい。
前記ロイコ染料及び前記顕色剤の好ましい含有量は、インキ組成物全量中、前記ロイコ染料が0.1〜5重量%に対して、前記第1顕色剤が0.2〜20重量%、前記第2顕色剤が0.2〜20重量%である。
これにより、本発明のインキ組成物は、筆記直後の初期発色が鮮明でありながら、当該筆跡における発色の経時安定性も良好であり、発色した当該筆跡を筆跡直後のみならず経日後も水で容易に消去することができる。
本発明で用いられるロイコ染料としては、トリフェニルメタン系、フルオラン系、スビロビラン系、インドリルフタリド系、ローダミンラクタム系、ロイコオーラミン系などを例示することができ、特に限定されるものではない。
上記ロイコ染料は、インキ組成物全量に対して0.1〜5重量%含ませることができ、好ましい含有量は0.5〜3重量%である。上記ロイコ染料がインキ組成物全量に対して5重量%を超えるとインキ組成物に溶解することが困難であり、0.1重量%未満では発色濃度が薄く、筆記直後の筆跡の初期発色性が乏しい。
本発明で用いられる顕色剤は、前記ロイコ染料に対して第1顕色剤とともに第2顕色剤を併用する点が重要である。
第1顕色剤としては、スルホン基を有する有機酸、特にスルホン基を有する水溶性の有機酸が好ましい。具体的には、p−トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸、ナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
上記第1顕色剤は、インキ組成物全量に対して、0.2〜20重量%含ませることができ、好ましい含有量は0.5〜10重量%である。上記第1顕色剤がインキ組成物全量に対して20重量%を超えると、水により消去し難くなり、0.2重量%未満では発色濃度が薄く、筆記直後の筆跡の初期発色性が乏しい。
第2顕色剤としては、ビスフェノールS又はその誘導体を用いることができる。すなわち、ビスフェノールSは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンであるが、その誘導体としてビス−(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)−スルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホンなどを例示することができる。
上記第2顕色剤は、第1顕色剤と同様に、インキ組成物全量に対して0.2〜20重量%含ませることができ、好ましい含有量は0.5〜10重量%である。上記第2顕色剤がインキ組成物全量に対して20重量%を超えると、水により消去し難くなり、0.2重量%未満では発色濃度が薄く、筆記直後の筆跡の初期発色性が乏しい。
上記第1顕色剤及び第2顕色剤は、インキ組成物全量中、ロイコ染料0.1〜5重量%に対してそれぞれ0.2〜20重量%含ませることが好ましい。
なお、前記第1顕色剤(A)に対する第2顕色剤(B)の重量比(B/A)は、0.01以上が好ましく、さらに好ましくは0.01〜100、より好ましくは0.2〜20である。重量比(B/A)が0.01未満の場合、第1顕色剤(A)に対して第2顕色剤(B)の含有量が少なすぎるため、筆記直後の発色性及び経日後の水消去性は良好であるものの、空気中の水分の影響に起因すると考えられるが、筆跡の色が薄くなり、発色の経時安定性が低下する。一方、重量比(B/A)は100を超えても、発色の経時安定性の点でそれほど大きな効果がなく、むしろ第1顕色剤が第2顕色剤に対して相対的に含有量が少なすぎるため、筆記直後の発色性及び経日後の水消去性が低下する傾向が生じる。
本発明は水溶性樹脂を用いることができる。例えばポリビニルピロリドン、セルロース系樹脂などを用いることができ、具体的にはポリビニルピロリドン、ヒドロキシブロピルセルロースを好ましく用いることができる。本発明のインキ組成物にこれらの水溶性樹脂を用いて造膜することにより、筆跡中に有機溶剤が残ったときのノビを防止し、さらに樹脂そのものが水溶性であるため経時消去性も向上する。
上記水溶性樹脂は、インキ組成物全量に対して1〜20重量%含ませることができ、好ましい含有量は2〜10重量%である。1重量%以上含有することにより、水による消去性が向上する。上記水溶性樹脂がインキ組成物全量に対して20重量%を超えると、水により消去し難くなる。
本発明で用いる有機溶剤としては、任意に選定できるが、ロイコ染料その他成分の溶解性や筆跡の乾燥速度を考慮して選定することが好ましい。揮発性有機溶剤が好ましい。アルコール系、セロソルブ系グリコールエーテル系、エステル系等を例示することができる。具体的には、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどを用いることができる。なお、上記有機溶剤は、インキ組成物中、残りの成分(残部)含有量として配合することができる。
その他、界面活性剤(ノニオン系、カチオン系)を、水で消去しやすくする為に添加しても良い。添加量はインキ組成物全量に対して0.01〜5重量%であり、5重量%より多く加えると直ちに消える。好ましくは0.05〜2重量%である。
なお、本発明のインキは、水による消去を主としたインキであるが、水に格別限定されない。アルコールなどで消去することも可能である。
下記表1に示す組成にて、ロイコ染料、顕色剤(第1顕色剤、第2顕色剤)、水溶性樹脂を有機溶剤に添加し、攪拌溶解させて、実施例及び比較例に係るインキ組成物を得た。
Figure 0004063797

次に、上記実施例、比較例の各インキ組成物をポリエステル繊維束からなる中芯に充填し、マーキングペンを作成し、筆記直後の初期発色性、筆記1ヶ月後の経時発色性、筆記直後の水消去性、筆記1日後の水消去性についてそれぞれ評価した。
<評価>
(筆記直後の初期発色性)
発色の状態を目視にて確認した。
○:筆記後すぐに鮮明に発色
×:筆記後、溶剤が揮発後発色
(筆記1ヶ月後の経時発色性)
筆記1ヶ月後の発色の変化を目視にて確認した。
○:初期発色濃度と変化なし
×:初期発色濃度が薄くなっていた
(筆記直後の水消去性)
ホーロー製のホワイトボードに筆記する。
筆記後、水を含ませた布で筆跡を消去する。
○:綺麗に消去出来る
△:筆跡の一部が残る
×:消去されない
(筆記1日後の水消去性)
筆記1日後の筆跡を、水を含ませた布で筆跡を消去する。
○:綺麗に消去出来る
△:筆跡の一部が残る
×:消去されない
表1より、ビスフェノールA及びサリチル酸亜鉛を顕色剤とする比較例1及び比較例2のインキ組成物は、筆記直後の水消去性は良好であるが、筆記直後の発色性及び当該筆跡の発色の経時安定性も良好ではなく、経時後の水消去性も良好ではない。また、第1顕色剤としてp−トルエンスルホン酸或はスルホサリチル酸のみを含む比較例3及び比較例4のインキ組成物は、筆記経日後の発色性は低下していることが認められる。これに対して、各実施例のインキ組成物は、筆記直後の発色性が鮮明であり、また当該筆跡の発色の経時安定性も良好であり、さらにまた、発色した筆跡を筆跡直後及び経時後も水で容易に消去することができる。
本発明は、水又は水を含んだスポンジや布等で筆跡を消去することができる白板用または描画シート用のインキ組成物や、マーキングペン用インキなどに用いることができる。

Claims (6)

  1. ロイコ染料、顕色剤及び有機溶剤を含む水消去性インキ組成物であって、前記顕色剤として第1顕色剤及び第2顕色剤を含み、第1顕色剤としてスルホン基を有する有機酸、第2顕色剤としてビスフェノールS又はその誘導体を含む水消去性インキ組成物。
  2. インキ組成物全量に対して、前記第1顕色剤が0.2〜20重量%、前記第2顕色剤が0.2〜20重量%含まれる請求項1記載の水消去性インキ組成物。
  3. 前記第1顕色剤(A)に対する第2顕色剤(B)の重量比(B/A)が、0.01以上である請求項1又は2記載の水消去性インキ組成物。
  4. 前記第1顕色剤が、p−トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸及びナフタレンスルホン酸の群から選ばれる1又は2以上の有機酸である、請求項1乃至3のいずれかの項に記載の水消去性インキ組成物。
  5. 前記第2顕色剤が、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス−(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)−スルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン群から選ばれる1又は2以上の化合物である、請求項1乃至4のいずれかの項に記載の水消去性インキ組成物。
  6. インキ組成物全量に対して、次の成分を含有する水消去性インキ組成物。
    i) ロイコ染料 0.1〜5重量%
    ii) スルホン基を有する有機酸 0.2〜20重量%
    iii)ビスフェノールS又はその誘導体 0.2〜20重量%
    iV) 水溶性樹脂 1〜20重量%
    V) 有機溶剤 残部


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