JP4063224B2 - 過電流保護システム - Google Patents
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Description
この配電系統は非接地系統であり、地絡を検出するためだけに図示されていない接地トランス(GPT)の2次側に零相抵抗を挿入し、地絡時に発生する零相電圧及び零相電流を検出して地絡保護リレーにより保護動作を行うようになっている。
3相の配電線において、3相のうち2線または3線が接触した場合を短絡事故という。通常、このような短絡事故には、反限時特性の過電流保護リレーが使用される。周知のように、反限時特性の過電流保護リレーは、配電線に定格電流以上の大きさの電流が流れた時に、その電流値と動作するまでの時間とが反比例するような特性を持った保護リレーである。
なお、図4の動作時間特性における右側の縦軸nは、動作時間の整定値を示している。
近年、電力自由化の動向、環境問題への意識の高まりから再生可能エネルギーによる分散電源が普及している。現状の配電系統で大きな容量の分散電源が連系された場合、その発電電力量によって配電線に流れる電流(以下、潮流という)が大きく変化した場合は、特定の地点の電圧を規定値内に入れることは可能であるが、配電系統全般にわたって電圧値を規定の101±6[V]に維持することは困難になりつつある。
このような電圧制御システムのもとで、上記のような分散電源が負荷側に接続されると、配電系統全般にわたって適正な電圧値を維持するのは困難になってきている。
図5は、この種の連系系統(ループ系統)の例を示しており、需要家の受電点にある母線を経由して2つの配電線を連系させる構成となっている。
このような連系系統では、配電線1本当たりの電流が減るため、線路の電圧降下が小さくなり、配電線における電圧の維持が容易になる。
まず、この種の系統を従来の保護システムによって保護する場合、リレーRy2の動作時間は通常0.2秒程度である(需要家300構内の系統構成に応じた時間協調のため、動作時間は概ね0.5〜0.2秒程度であるが、以下では0.2秒と仮定する)。
これに対して、配電用変電所100,120内のリレーRy1,Ry3の動作時間は0.5〜1秒程度(以下では0.5秒と仮定する)に設定されていると共に、リレーRy4は負荷側にあるためリレーRy2と同様に0.2秒に設定されているとする。
このリレーRy4を確実に動作させないようにするには、事故時の電流値などを考慮して、リレーRy2に対して確実に0.2秒程度の時間差を確保できるようにしなければならない。また、このリレーRy4と他のリレーRy1,Ry3との間でも時間協調をとる必要があり、結果的にリレーRy1,Ry3の動作時間は現状より長くなる。
これを避けるためには、遮断器CB4をCB2よりも早く動作させる必要があるが、前述したように需要家300構内の地点F3における事故では、遮断器CB2をCB4よりも優先的に動作させることとしているため、何れの事故点F2,F3に対しても最適となるような動作時間の整定は困難である。
この協調装置では、上流側保護リレー及び下流側保護リレーの通電電流を検出し、これらの検出値と設定値との大小関係を判別することにより事故点を推定すると共に、上記大小関係に応じて上流側保護リレーのトリップ時間を遅延させ、下流側保護リレーを優先的に動作させている。
また、前記特許文献1に記載された過電流継電器協調装置では、比較回路、遅延回路等を多数必要とするため、回路構成が複雑になってコスト高を招くという問題があった。
従来の反限時特性の過電流保護リレーは電磁型であり、コイルに通流される電流値が大きい時は可動子が早く回転し、電流値が小さい時はゆっくり回転する原理に基づいており、可動子の回転時間を機構的に調整して様々な特性を実現している。
これに対し、最近の保護リレー技術では、電流入力をA/D(アナログ/ディジタル)変換して得たディジタルデータをマイクロコンピュータ等のデータ処理装置により加工し、所望の機能を実現するためのプログラムを組んで所定の性能を得るようしたディジタルリレーがかなり普及してきており、量産化によって次第に安価に供給されつつある。
このため、例えば、配電線200に接続された需要家300近傍のリレーRy2については、流れる電流の大きさが設定値を超えて事故が発生したと判断された場合、事故発生前の電流に対して事故発生後の電流が同位相の時は需要家300構内の事故(例えば事故点F3)と判断して0.2秒程度の短時限で瞬時に動作させ、逆位相の時(例えば事故点F2)は外部の事故と判断して0.7秒程度の長時限で動作させるようにする。また、上記配電線200と他方の配電線220との間に設けられたリレーRy4(遮断器CB4)の動作時間は、上記短時限と長時限との中間(0.4〜0.5秒程度)に設定する。
これにより、リレーRy2と、リレーRy4と、配電用変電所100,120側のリレーRy1,Ry3という3段階で時限協調が必要になるため、リレーRy1,Ry3の動作時間はやや長くなる(0.5秒→0.7秒程度)。
また、本発明では、分散電源が連系された既存のシステムを大きく変えることなく、単体の保護リレー単体のみの交換によって対応でき、環境に優しい分散電源の普及にも寄与することができる。
更に、本発明の主たる機能はソフトウェアにより実現可能であり、前記特許文献1の従来技術のように回路構成の複雑化を招くおそれもない。
図1はこの実施形態が適用される配電系統の構成図であり、系統構成自体は実質的に図5と同一である。
なお、配電線の短絡事故において完全短絡はまれであり、アーク抵抗を伴うことが多い。また、事故の様相や電流値、気象条件などでインピーダンスは様々な値となり、かつ時間的にも変化する。従って通常の故障計算はωLのみで行い、抵抗の最大値を考慮して設定値を決めている。
需要家300構内の系統インピーダンスは、0.1[Ω]とした。
需要家300の構内における3線短絡事故(事故点F3)では、配電線200,220から短絡電流が流入し、1相分ではおおよそ数式1のような電流が事故点F3に流入する。
[数式1]
(6,600[V]/√3)/{(電源インピーダンス+配電線インピーダンス)/2+(構内系統インピーダンス)}≒4.4[kA]
通常、定格の20倍を越える領域ではリレーの瞬時要素が数10[ms]で動作する(構内機器の短絡電流に対する過電流強度との関係で決める)。従ってこの場合は、リレーRy2が最先に動作し、他のリレーRy1,Ry3,Ry4については0.5秒程度の動作時間を確保すれば良い。
[数式2]
(6,600[V]/√3)/{(電源インピーダンス+配電線インピーダンス)/2+(構内系統インピーダンス+r)}≒1.75kA
例えば、リレーRy1,Ry3は、図4における動作時間の整定値n=2、Ry4はn=1にするようなことが考えられる。
・配電線200,220の電流:(6,600[V]/√3)/(電源インピーダンス+配電線インピーダンス)≒2.49[kA]
・需要家300の自家用発電設備301からの電流:
(6,600V/√3)/(構内系統インピーダンス+電源インピーダンス(自家用発電設備301のインピーダンスXd’))≒0.50[kA]
すなわち、リレーRy2を流れる電流が事故発生前後で逆位相になったときには、一定値以上の大きさの電流が一定時間以上継続して流れた場合にリレーRy2を動作させるように整定値nを制御することとした。
・配電線200,220の電流:
(6,600[V]/√3)/(電源インピーダンス+配電線インピーダンス+r)≒1.51[kA]
・需要家300の自家用発電設備301からの電流:
(6,600[V]/√3)/(構内系統インピーダンス+電源インピーダンス(自家用発電設備301のインピーダンスXd’)+r)≒0.48[kA]
各リレーの動作時間は、Ry1,Ry3(n=2):1.05秒、Ry4(n=1):0.44秒となり、また、Ry2はn=1のままであれば0.44秒で動作するが、前記の例のようにn=1.5とすると約0.6秒程度になり、協調がとれるようになる。
上記のように本発明において、各リレーの具体的な整定値は系統条件や機器の構成で異なるが、受電用の保護システムとして幅広い選択肢を提供することができる。
事故判定手段401は、電流の大きさが設定値を超えたことから系統事故が発生したと判定し、事故判定信号を出力する。また、電流波形記憶手段402は、系統電流波形を逐次記憶している。
そして、電流位相が同一である場合には、前述した如く需要家300の構内事故と判断し、この場合にはリレーRy2を瞬時に動作させるように整定値制御手段404を介して整定値nを制御する。
また、電流位相が逆である場合には、前述した如く、例えば連系配電線220における事故と考えられるため、この場合には一定値以上の大きさの電流が一定時間以上継続した場合にリレーRy2を動作させるように整定値制御手段404を介して整定値nを制御する。
なお、上記整定値制御手段404は、請求項1における動作時間制御手段に相当している。
また、事故発生前後の電流位相に応じて一定時間以上経過後にリレーを動作させる場合、その動作時間は電流の大きさに反比例するように変化させるが、動作時間を任意の値に設定可能としても良い。
更に、事故発生前後の電流位相が同一の場合、逆の場合の何れも、それぞれ所定の大きさの電流が所定時間継続した際に保護リレーを動作させるように各設定値や特性を変化させても良い。
101,121:電源
102,122:母線
200,220:配電線
201,221:母線
300:需要家
301:自家用発電設備
401:事故判定手段
402:電流波形記憶手段
403:位相判定手段
404:整定値制御手段
501:連系線
Ry1,Ry2,Ry3,Ry4:保護リレー
CB1,CB2,CB3,CB4:遮断器
F1,F2,F3:事故点
Claims (5)
- 系統電流の大きさが所定値を超えたことから系統事故の発生を検出する事故判定手段と、
系統電流の波形を逐次記憶する電流波形記憶手段と、
前記事故判定手段により系統事故の発生を検出した時に事故発生後の電流波形と前記電流波形記憶手段により記憶された事故発生前の電流波形との位相関係を判定する位相判定手段と、
この位相判定手段による判定結果に基づいて保護リレーの動作時間を制御する動作時間制御手段と、
を備えたことを特徴とする過電流保護システム。 - 請求項1に記載した過電流保護システムにおいて、
事故発生前後の電流波形が同位相の時には保護リレーを瞬時に動作させ、逆位相の時には一定値以上の大きさの電流が一定時間継続した際に保護リレーを動作させることを特徴とする過電流保護システム。 - 請求項1に記載した過電流保護システムにおいて、
事故発生前後の電流波形が逆位相の時には保護リレーを瞬時に動作させ、同位相の時には一定値以上の大きさの電流が一定時間継続した際に保護リレーを動作させることを特徴とする過電流保護システム。 - 請求項1に記載した過電流保護システムにおいて、
事故発生前後の電流波形が同位相及び逆位相の何れの時にも、それぞれ所定の大きさの電流が所定時間継続した際に保護リレーを動作させることを特徴とする過電流保護システム。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載した過電流保護システムにおいて、
前記保護リレーは、反限時特性を有する過電流保護リレーであり、前記動作時間制御手段が、前記位相判定手段による判定結果に基づいて前記過電流保護リレーの整定値を変更することにより前記過電流保護リレーの動作時間を制御することを特徴とする過電流保護システム。
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