JP4063088B2 - ステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の操舵操作を補助するステアリング装置に係わり、特に、車両の操舵輪の角度を検出するタイヤ角センサの出力に基づいて操舵操作を補助するステアリング装置に係わる。
【0002】
【従来の技術】
フォークリフト等の産業車両の操舵操作を補助するステアリング装置として、従来より、ステアリングホイールの操舵力または操舵速度に基づいて操舵操作を補助する動作を行うものが知られている。この種の装置では、例えば、ステアリングホイールの回転を検出する回転センサを備え、そのセンサの出力に従って油圧調整用モータの回転数が制御される。そして、これにより、ステアリングホイールの操舵速度に応じた流量の作動油が油圧ポンプからステアリング制御バルブに供給されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、他の形態のステアリング装置として、車両のタイヤ(操舵輪)の角度またはそのタイヤ角速度に基づいて操舵操作を補助する動作を行うものが知られている。この種の装置では、例えば、車両のタイヤの角度を検出するタイヤ角センサを備え、そのセンサの出力に基づいてタイヤ角速度を算出し、そのタイヤ角速度に応じて操舵操作補助動作が行われる(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第5542490号明細書
【0005】
【特許文献2】
特願2002−366857号(図1、図5、段落0036等)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ステアリングホイールの操舵とタイヤの角度とは、完全には対応していない。このため、ステアリングホイールの回転に基づいて操舵操作の補助を行うステアリング装置では、操舵されたタイヤがそのエンド位置に達しても、車両の運転者がステアリングホイールによる操舵操作を継続することがあり、この場合、例えば、回転センサは、そのステアリングホイールの回転を検出し続けることになる。このため、この回転センサの出力に従って油圧調整用モータの回転が継続されてしまう。そして、このことは、消費電流の低減、あるいは騒音の低減を図るうえでの妨げとなってしまう。なお、「エンド位置」とは、タイヤの切れ角の最大角度または限界角度に相当し、ステアリングホイールを操作してもタイヤの切れ角がそれ以上大きくならない状態をいう。
【0007】
一方、タイヤの角度に基づいて操舵操作を補助するステアリング装置では、一般に、タイヤの角速度が0(ゼロ)になると、すなわちタイヤが一定の角度に保持されると、油圧調整用モータが停止するように設計されている。このとき、図5に示すように、タイヤがねじれた状態(タイヤの操舵軸を軸としたタイヤと路面の間に摩擦力を蓄えた状態)にあるときに油圧調整用モータが停止すると、そのタイヤがねじれを解放しようとする力が機械的伝達メカニズムを介してそのままステアリングホイールに伝わってしまう。この結果、ステアリングホイールには、ねじれを解放しようとする力が働くので、運転者の手に衝撃が伝わることになる。
【0008】
本発明は、消費電流および騒音の低減を図りながら、車両の運転者に良好な運転感覚を提供するステアリング装置を実現することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のステアリング装置は、車両の操舵操作を補助する装置であって、上記車両のタイヤの角度を検出するタイヤ角センサと、上記車両の操舵操作を補助するために使用されるモータと、上記タイヤ角センサの出力に基づいて上記タイヤの角速度を表すタイヤ角速度を算出してそのタイヤ角速度に従って上記モータを制御する制御手段を有する。そして、上記制御手段は、上記タイヤ角速度が予め決められた所定値よりも小さくなったときに、上記モータの回転数を徐々に低下させて停止させる。
【0010】
このステアリング装置によれば、操舵を補助するために使用されるモータを停止する際には、そのモータの回転数が徐々に低下していく。ここで、このモータの回転数を徐々に低下させると、それに伴って操舵を補助する力も徐々に小さくなっていく。このとき、タイヤがねじれを解放しようとする力がステアリングホイールに伝わることになるが、上述のようにして操舵を補助する力が徐々に弱まっていくと、それに伴ってステアリングホイールに伝達される力は徐々に大きくなっていくことになる。すなわち、操舵を補助するために使用されるモータを停止する際に、タイヤがねじれを解放しようとする力は、ステアリングホイールに急激に伝わるのではなく、徐々に大きくなっていくように伝わる。よって、そのステアリングホイールを介して運転者の手に衝撃が伝わることはなく、良好な運転感覚が妨げられることはない。
【0011】
上記ステアリング装置において、制御手段は、タイヤ角速度がゼロになったときに、上記モータの回転数を徐々に低下させて停止させるようにしてもよい。この構成によれば、特に、タイヤがそのエンド位置まで操舵されたとき、或いは据切り操作をして車両を停止させたときに、ステアリングホイールを介して運転者の手に衝撃が伝わることを回避しながら、モータを停止させることができる。
【0012】
また、上記ステアリング装置は、上記モータにより駆動されそのモータの回転数に対応する流量で作動油を供給する油圧ポンプと、上記油圧ポンプから供給される作動油を上記車両のステアリングホイールの操舵に基づいて決まる流量だけ供給するステアリング制御バルブと、上記ステアリング制御バルブから供給される作動油により作動し上記タイヤを操舵するステアリングシリンダ、をさらに有するようにしてもよい。この構成によれば、油圧を利用して操舵を補助するシステムに本発明のステアリング装置を適用できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態のステアリング装置の構成を示す図である。なお、実施形態のステアリング装置は、特に限定されるものではないが、例えば、フォークリフト等の産業車両に搭載され、その車両の運転者の操舵操作を補助する。
【0014】
実施形態のステアリング装置は、PSバルブ(ステアリング制御バルブ)1、PSシリンダ(ステアリングシリンダ)2、タイヤ角センサ3、コントローラ(制御手段)4、モータ5、油圧ポンプ6を備える。ここで、この装置の構成自体は、公知である。ただし、コントローラ4による制御は、従来の技術にはない新たな手順を含んでいる。なお、タイヤ102は、ステアリングホイール101を利用して運転者により与えられる指示に従ってその角度が制御される操舵輪である。
【0015】
PSバルブ1は、ステアリングホイール101の操舵に従って作動し、油圧ポンプ6から供給される作動油を、ステアリングホイール101の操舵速度に対応する流量だけPSシリンダ2に供給する。このとき、PSバルブ1は、ステアリングホイール101の操舵方向(右操舵/左操舵)を区別して作動油をPSシリンダ2に供給する。
【0016】
PSシリンダ2は、PSバルブ1から供給される作動油により作動し、タイヤ102を右操舵または左操舵する。すなわち、PSシリンダは、ステアリングホイール101の操舵に従って、タイヤ102の切れ角を制御する。
タイヤ角センサ3は、特に限定されるものではないが、例えば、タイヤ102の操舵軸上に設けられたポテンショメータである。そして、このタイヤ角センサ3は、ステアリングホイール101が右操舵または左操舵されたときのタイヤ102の角度を検出する。なお、タイヤ102は、車両が直進するときの状態(中立状態)を基準とし、例えば、「+90゜(右側操舵時)」から「−90゜(左側操舵時)」まで操舵される。
【0017】
コントローラ4は、マイクロコンピュータであって、予め記述されたプログラムを実行することによりモータ5を駆動する。すなわち、コントローラ4は、タイヤ角センサ3の出力をタイヤ角データとして所定間隔ごとに読み込み、それらのタイヤ角データに基づいて、随時、タイヤ102の角速度を表すタイヤ角速度を算出する。そして、その算出したタイヤ角速度に従ってモータ5の回転数を制御する。
【0018】
モータ5は、特に限定されるものではないが、例えば、交流誘導型モータであり、コントローラ4により駆動される。ここで、モータ5は、タイヤ角速度が大きくなるほど高い回転数で駆動されるようにしてもよい。また、モータ5の回転数は、例えば、三相正弦波PWM(パルス幅変調)方式で制御される。
【0019】
油圧ポンプ6は、モータ5により駆動され、そのモータ5の回転数に対応する流量でPSバルブ1に作動油を供給する。この場合、油圧ポンプ6からPSバルブ1に供給される作動油の流量は、モータ5の回転数に比例するようにしてもよい。
【0020】
そして、上記ステアリング装置が搭載された車両において、運転者がステアリングホイール101を操舵すると、その操舵に応じてタイヤ102の角度が制御される。このとき、コントローラ4は、タイヤ102のタイヤ角速度に従ってモータ5を駆動し、そのモータ5により油圧ポンプ6からPSバルブ1に作動油が供給される。この結果、運転者は、比較的小さな力でステアリングホイール101を操舵することができる。
【0021】
図2は、コントローラ4の動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、基本的に、所定間隔ごとに実行される。
ステップS1では、タイヤ角センサ3の出力を取り込み、タイヤ102のタイヤ角速度を算出する。すなわち、時系列に取得したタイヤ角データの変化量に基づいて、タイヤ102のタイヤ角速度を算出する。
【0022】
ステップS2では、ステップS1で算出したタイヤ角速度が0(ゼロ)であるか否かを調べる。このとき、タイヤ角速度が0(ゼロ)でなければ、ステップS6において、そのタイヤ角速度に応じたモータ回転処理を行う。すなわち、そのタイヤ角速度に応じた回転数でモータ5を駆動する。
【0023】
タイヤ角速度が0(ゼロ)であった場合には、ステップS3において、モータ5が回転しているか否かを調べる。なお、モータ5はコントローラ4により駆動されるので、コントローラ4はモータ5の回転数を認識している。
タイヤ角速度が0(ゼロ)であり、且つ、モータ5が回転している場合には、ステップS4において、モータ5の回転数を徐々に減速させる処理を行う。ただし、この例では、図2に示すフローチャートの処理が所定間隔ごとに繰り返し実行されるので、ステップS4の処理は、具体的には、その時点におけるモータ5の回転数を所定量だけ低くする処理に相当する。そして、タイヤ角速度が0(ゼロ)であり、且つ、モータ5が回転している状態が継続すると、ステップS4の処理が繰り返し実行されることにより、モータ5の回転数を徐々に減速していくことになる。なお、タイヤ角速度が0(ゼロ)であり、且つ、モータ5が停止している場合には、モータ5に対する指令はない(ステップS5)。
【0024】
なお、図2に示す例では、ステップS2においてタイヤ角速度が0(ゼロ)であるか否かを調べているが、そのタイヤ角速度が予め決められた所定値よりも小さいか否かを調べるようにしてもよい。この場合、「予め決められた所定値」は、例えば、1゜/100m秒程度とする。
【0025】
また、モータ5の回転数が三相正弦波PWM方式で制御される場合は、モータ5の回転数を徐々に減速させる処理は、モータ5に印加される電圧正弦波周波数を低くしていく処理により実現される。
図3は、タイヤ102の角速度が0(ゼロ)になったときのステアリング装置の動作を説明する図である。なお、タイヤ102の角速度が0(ゼロ)になる状況は、タイヤ102がそのエンド位置まで操舵されたとき、或いは据切り操作をして車両を停止させたとき等に生じる。また、車両の走行中にステアリングホイール101が一定の操舵位置に固定されているときにもタイヤ102の角速度が0(ゼロ)になり得る。
【0026】
図3において、タイヤ102がねじれた状態(タイヤの操舵軸を軸としたタイヤと路面の間に摩擦力を蓄えた状態)にあるときは、そのタイヤ102がねじれを解放しようとする力が働く。ただし、コントローラ4の指示に従ってモータ5が回転しているときは、油圧ポンプ6からPSバルブ1に供給される作動油により、そのタイヤ102の角度は保持される。
【0027】
その後、モータ5が回転している状態でタイヤ102のタイヤ角速度が0(ゼロ)になると、以降、モータ5の回転数は徐々に低下していく。ここで、モータ5の回転数が低下すると、それに伴って油圧ポンプ6からPSバルブ1に供給される作動油の流量が減少する。すなわち、タイヤ102の角度を保持しようとする力が徐々に弱まっていく。このとき、タイヤ102がねじれを解放しようとする力はステアリングホイール101に伝わることになるが、上述のようにしてタイヤ102の角度を保持しようとする力が徐々に弱まっていくと、それに伴ってタイヤ102からステアリングホイール101に伝達される力は徐々に大きくなっていくことになる。
【0028】
このように、実施形態のステアリング装置によれば、タイヤ102のタイヤ角速度が0(ゼロ)になったときには、タイヤ102がねじれを解放しようとする力は、ステアリングホイール101に急激に伝わるのではなく、徐々に大きくなっていくようにステアリングホイール101に伝わる。したがって、ステアリングホイール101がねじれを解放しようとする力は、徐々に大きくなっていくことになり、ステアリングホイール101を介して運転者の手に衝撃が伝わることはなく、良好な運転感覚が妨げられることはない。
【0029】
また、タイヤ102のタイヤ角速度が0(ゼロ)になると、モータ5の回転数は徐々に低下してゆき、その後停止する。したがって、消費電流およびモータによる騒音も抑えられる。特に、タイヤ102がそのエンド位置まで操舵されたときは、運転者がステアリングホイール101の操舵を継続している場合であってもモータ5が停止するので、低消費電流化および低騒音化に大きく寄与することになる。
【0030】
なお、実施形態のステアリング装置がフォークリフトに搭載される場合には、図4に示すように、モータ5および油圧ポンプ6は、操舵補助および荷役作業の双方に利用されるようにしてもよい、この場合、油圧ポンプ6から供給される作動油は、いったん、例えば、プライオリティバルブ11に導かれる。そして、プライオリティバルブ11は、PSシリンダ2が必要とする流量の作動油を優先的にPSバルブ1に供給し、残りの作動油を不図示の荷役装置に供給するように動作する。
【0031】
また、上述の実施例では、油圧を利用してタイヤ102を操舵する構成を前提として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明に係わるステアリング装置は、モータを利用して操舵の補助を行う構成に広く適用可能である。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、操舵を補助するためのモータを停止するときには、そのモータの回転数を徐々に低下させるので、タイヤがねじれを解放しようとする力がステアリングホイールを介して運転者に衝撃を与えることはない。また、タイヤの角速度が所定値以下になったときは、上記モータを停止するので、消費電流および騒音を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のステアリング装置の構成を示す図である。
【図2】コントローラの動作を示すフローチャートである。
【図3】タイヤの角速度が0(ゼロ)になったときのステアリング装置の動作を説明する図である。
【図4】実施形態のステアリング装置の他の適用例を示す図である。
【図5】従来のステアリング装置の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
1 PSバルブ(ステアリング制御バルブ)
2 PSシリンダ(ステアリングシリンダ)
3 タイヤ角センサ
4 コントローラ(制御手段)
5 モータ
6 油圧ポンプ
101 ステアリングホイール
102 タイヤ(操作輪)
Claims (2)
- 車両の操舵操作を補助するステアリング装置であって、
上記車両のタイヤの角度を検出するタイヤ角センサと、
上記車両の操舵操作を補助するために使用されるモータと、
上記タイヤ角センサの出力に基づいて上記タイヤの角速度を表すタイヤ角速度を算出し、そのタイヤ角速度に従って上記モータを制御する制御手段と、
上記モータにより駆動され、そのモータの回転数に対応する流量で作動油を供給する油圧ポンプと、
上記油圧ポンプから供給される作動油を、上記車両のステアリングホイールの操舵に基づいて決まる流量だけ供給するステアリング制御バルブと、
上記ステアリング制御バルブから供給される作動油により作動し、上記タイヤを操舵するステアリングシリンダ、
を有し、
上記制御手段は、上記タイヤ角速度が予め決められた所定値よりも小さくなったときに、上記モータの回転数を徐々に低下させて停止させる
ことを特徴とするステアリング装置。 - 請求項1に記載のステアリング装置であって、
上記制御手段は、上記タイヤ角速度がゼロになったときに、上記モータの回転数を徐々に低下させて停止させることを特徴とするステアリング装置。
Priority Applications (1)
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