JP4062996B2 - 緊急遮断弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、緊急時に流路内を瞬時に遮断する緊急遮断弁に関し、より具体的には、流路内の流体流れの遮断により電気的な絶縁作用をも合わせて発揮する緊急遮断弁に関するものであって、燃料電池冷却装置の感電防止用の緊急遮断弁として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平8−320075号公報には、弁体にガスバックを使用する緊急遮断弁が記載されている。この従来技術では、流路内を遮断する必要が生じた時は、エアーポンプを駆動するとともに開閉弁を開放して、エアーポンプにより加圧された加圧流体をガスバック内に導入する。これにより、ガスバックが膨張し、ガスバックの外表面が流路内壁面に圧接することにより流路内の流路を遮断するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術では、エアーポンプが作動を開始してから、流路を遮断するのに充分な圧力の加圧流体を供給できるようになるまでに時間を要するため、流路を瞬時に遮断することができず、流路遮断作用の応答性が悪いという問題点がある。
【0004】
また、電気自動車に搭載した燃料電池冷却装置について考察すると、電気自動車が衝突等の事故を起こすと、燃料電池冷却装置の冷却水経路が破損され、その破損部位から帯電した冷却水が漏れ出し、人に感電するという不具合が発生することが想定される。そのため、燃料電池冷却装置における緊急遮断弁は、冷却水を瞬時に遮断するとともに、電気的に絶縁する必要がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、流路を瞬時に遮断することができる緊急遮断弁を提供することを第一の目的とする。
【0006】
また、本発明は、電気的な絶縁作用を発揮する緊急遮断弁を提供することを第二の目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ガス発生剤(20b)を着火することにより膨張ガスを発生させる膨張ガス発生装置(20)と、
膨張ガスにより膨張するガスバック(21)と、
帯電する熱媒体が流れる流路(22e)を形成するハウジング部材(22a)と、
ハウジング部材(22a)の内部に流路(22e)を開閉するように配置され、ガスバック(21)の体積膨張により変位する弁体(22f)とを備え、
ガスバック(21)の体積膨張により弁体(22f)が変位して流路(22e)を遮断するようになっており、
さらに、ハウジング部材(22a)および弁体(22f)は、流路(22e)の遮断時に流路(22e)の入口側熱媒体と流路(22e)の出口側熱媒体との間を電気的に絶縁するように電気絶縁体により形成されていることを特徴とする。
【0008】
これにより、ガス発生剤(20b)の着火燃焼とほぼ同時にガスバック(21)を膨張させ、このガスバック膨張により弁体(22f)を瞬時に変位させて流路(22e)を瞬時に遮断することが可能となる。
しかも、請求項1に記載の発明によると、流路(22e)内の熱媒体が帯電していても、弁体(22f)により流路(22e)を遮断した閉弁状態では弁体(22f)前後の流体間を電気的に絶縁できる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、請求項1において、弁体(22f)は、流路(22e)の開弁状態から直線的に変位して流路(22e)を遮断することを特徴とする。
【0016】
これによると、弁体(22f)が回転変位する場合に比較して、弁体(22f)の直線的変位により流路遮断の応答性を一層向上できる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2において、弁体(22f)が流路(22e)の開口部内側に嵌入することにより、流路(22e)を遮断するようになっており、 流路(22e)の開口部端面に、開口部内側への弁体(22f)の嵌入をガイドするテーパ状当接面(22m)を形成したことを特徴とする。
【0018】
これによると、テーパ状当接面(22m)により弁体(22f)をガイドして、弁体(22f)を流路(22e)の開口部内側にスムースに嵌入できる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つにおいて、ハウジング部材(22a)のうち弁体(22f)が接する部位、および弁体(22f)の表面に撥水処理層を形成したことを特徴とする。
【0022】
これによると、撥水処理層により流路(22e)内の熱媒体、特に水等を弾くことができるので、ハウジング部材(22a)と弁体(22f)との間の微小隙間に水分等が残存することを低減して、電気的な絶縁性能を一層向上できる。
【0023】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つにおいて、弁体(22f)は弾性体で構成され、弁体(22f)には流路(22e)を流れる流体が通過可能な貫通穴(22g)を設け、弁体(22f)が流路(22e)を遮断した際に、弁体(22f)が弾性的に圧縮変形することにより貫通穴(22g)が閉塞されるようにしたことを特徴とする。
【0024】
これによると、弁体(22f)が開弁状態から閉弁位置に向かって移動する過程に、弁体(22f)の貫通穴(22g)を通して流路(22e)内の熱媒体が通過できるので、弁体移動時における流体抵抗の増大を抑制して、流路遮断の応答性を一層向上できる。
【0025】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の緊急遮断弁(16、17)を燃料電池冷却水経路(11)内に配置する車両用燃料電池冷却装置であって、
車両の衝突を検出する衝突検出センサ(101)と、この衝突検出センサ(101)の検出信号が入力され、車両の衝突時に膨張ガス発生装置(1)を作動させる制御信号を出力する制御部(100)とを備え、車両の衝突時に緊急遮断弁(16、17)により燃料電池冷却水経路(11)を遮断するとともに、緊急遮断弁(16、17)の前後間を電気的に絶縁することを特徴とする。
【0026】
これにより、車両の衝突時には、緊急遮断弁(16、17)を自動的に瞬時に遮断状態にして、燃料電池冷却水経路(11)において、緊急遮断弁(16、17)より燃料電池側の経路と緊急遮断弁(16、17)より反燃料電池側の経路との間を電気的に絶縁できる。従って、燃料電池冷却水経路(11)のうち反燃料電池側の経路の冷却水に人体が接触しても、感電事故を防止できる。
【0032】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0033】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本第1実施形態は、本発明に係る緊急遮断弁を電気自動車用燃料電池冷却装置に適用したものであって、図1は燃料電池冷却装置の模式図である。燃料電池10には冷却水経路11が接続されており、冷却水(熱媒体)が冷却水経路11を介して燃料電池10に循環する。
【0034】
冷却水経路11には、冷却水を循環させるための電動式の循環ポンプ12が設けられている。冷却水としては、一般的な不凍液、具体的にはエチレングリコール等を混合した水を用いることができる。エチレングリコールは導電性であるため、発電作用をなす燃料電池10内部を冷却水が通過する際に、冷却水がイオン化して帯電する。このように冷却水が帯電した場合には、燃料電池10と冷却水経路11とから電気回路が形成されたのと同様の状態になる。
【0035】
冷却水経路11には、冷却水の放熱器をなすラジエータ13が設けられ、このラジエータ13には電動式の冷却ファン14が設けられている。そのため、燃料電池10の熱は冷却水を介してラジエータ13にて冷却ファン14の送風空気に放出される。
【0036】
また、冷却水経路11には、冷却水がラジエータ13をバイパスして流れるバイパス経路15が設けられている。循環ポンプ12による冷却水循環流量と、冷却ファン14の回転数(冷却風量)をそれぞれ制御することにより、冷却水の冷却量を制御することができる。
【0037】
冷却水経路11には、2つの緊急遮断弁16、17が設けられ、それぞれ燃料電池10の上流側及び下流側に配置されている。なお、緊急遮断弁16、17は、冷却水経路11の任意の箇所に配置することができる。
【0038】
また、本第1実施形態の燃料電池冷却装置では、各種制御を行う制御部100が設けられている。この制御部100はマイクロコンピュータ等により構成されるものであって、車両の運転状況等を検出する各種センサ群101の検出信号等が入力される。このセンサ群101には車両の衝突を検出する衝突検出センサが備えられている。制御部100はこの入力信号に基づいて所定の演算処理を行って、循環ポンプ12、冷却ファン14、緊急遮断弁16、17に制御信号を出力するようになっている。
【0039】
図2は本第1実施形態による緊急遮断弁16、17の断面図を示す。図2(a)は開弁状態を示し、図2(b)は閉弁状態を示している。
【0040】
本第1実施形態による緊急遮断弁16、17は、大別して膨張ガス発生装置20と、この装置20からの膨張ガスにより膨張するガスバック21と、このガスバック21の体積膨張により変位する弁機構22とから構成される。
【0041】
膨張ガス発生装置20は密閉空間を形成するケース20aを有し、このケース20a内部にガス発生剤20bを収納している。そして、ケース20a内部にてガス発生剤20bの中央部に電気点火装置20cを配置し、この電気点火装置20cの周囲に着火性の高い点火剤20dが配置してある。
【0042】
電気点火装置20cはコネクタ20eにより外部電気回路に結線され、制御部100の制御信号により電気点火装置20cに通電すると、電気点火装置20c内部のフィラメントが発熱して点火剤20dが直ちに着火し、点火剤20dの熱が火種となってガス発生剤20bも直ちに着火し燃焼する。このガス発生剤20bの着火、燃焼によりケース20a内部に瞬時に膨張ガスを発生させる。ここで、ガス発生剤20bは例えば、アジ化ナトリウムであり、燃焼により膨張ガスとして窒素ガスを発生する。図2(b)の点々は膨張ガスを示す。
【0043】
ケース20aの内部空間は連結管20fによりガスバック21の内部に連通しているので、膨張ガスは直ちにガスバック21内に導入され、ガスバック21を膨張させる。
【0044】
弁機構22は、電気絶縁体、具体的には樹脂材料により成形された主ハウジング22aおよび補助ハウジング22bを有している。この主ハウジング22aの内部に、入口パイプ22cから出口パイプ22dに向かう冷却水流路22eを形成する。この冷却水流路22eを開閉するための弁体22fが主ハウジング22aの内部に配置されている。
【0045】
この弁体22fは電気絶縁性を有する弾性体、具体的にはEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合ゴム)等のゴム系弾性体により円板状の形状に成形されている。この弁体22fの外周部は弾性変形しやすいように断面鋭角状に尖ったテーパ形状にしてある。
【0046】
なお、弁体22fには、その板厚方向に貫通する貫通穴22gが複数開けてある。図2(a)のように弁体22fが開弁状態にあって、弁体22fが自由状態にあるときは貫通穴22gの穴形状が開口状態にあるが、図2(b)のように弁体22fが閉弁して、弁体22fに圧縮力が作用すると、弁体22fが弾性的に圧縮変形することにより貫通穴22gの穴形状が閉塞するようになっている。
【0047】
円板状の弁体22fの中心部には弁作動軸22hの一端部が一体に連結されており、弁作動軸22fの他端部は補助ハウジング22bの内部空間に突き出す。そして、弁作動軸22fの他端部は補助ハウジング22bの内部にて円板状の押圧板22iに一体に連結されている。
【0048】
前記したガスバック21も補助ハウジング22bの内部に配置され、押圧板22iは、ばね22jのばね力により常時にガスバック21に圧接するようになっている。ばね22jとして本例ではコイルばねを用いている。
【0049】
なお、主ハウジング22aには弁作動軸22fが往復動可能に嵌合するOリング等のシール部22kを設けて、主ハウジング22a内から冷却水が補助ハウジング22b内へ洩れることを防止するようになっている。
【0050】
また、弁体22fは、主ハウジング22aの内部にて入口パイプ22c側流路の開口部に向かって移動して入口パイプ22c側流路の開口部を閉じるようになっている。そして、入口パイプ22c側流路の開口部において弁体22fのテーパ状外周部に対向する端面にテーパ状の当接面22mが形成してある。この当接面22mのテーパ状は弁体22fの外周部のテーパ状と同一方向に傾斜している。
【0051】
次に、第1実施形態による緊急遮断弁の作動を説明する。いま、電気自動車が衝突事故を起こし、センサ群101の衝突検出センサにより車両の衝突が検出されると、制御部100を通して緊急遮断弁16、17の膨張ガス発生装置20の電気点火装置20cに通電する。
【0052】
すると、電気点火装置20c内部のフィラメントが発熱して点火剤20dが直ちに着火し、点火剤20dの熱によりガス発生剤20bも直ちに着火し燃焼する。従って、ケース20a内部に瞬時に膨張ガス(窒素ガス)を発生することができる。
【0053】
ケース20aの内部空間は連結管20fによりガスバック21の内部に連通しているので、膨張ガスは直ちにガスバック21内に導入され、ガスバック21を瞬時に膨張させる。このガスバック21の膨張により、押圧板22i、弁作動軸22hおよび弁体22fの三者がばね22jのばね力に抗して押し下げられる。
【0054】
すると、弁体22fは、主ハウジング22aの内部にて入口パイプ22c側流路の開口部に向かって直線的に移動する。この移動過程において、入口パイプ22c側の冷却水が弁体22fの貫通穴22gを通過して出口パイプ22d側へ移動可能であるので、弁体22fの移動に伴う通水抵抗の増大を抑制できる。
【0055】
そして、弁体22fが入口パイプ22c側へ所定量移動すると、弁体22fの外周部が、入口パイプ22c側流路の開口部端面に形成されたテーパ状の当接面22mに当接する。この当接面22mのテーパ状は弁体22fの外周部のテーパ状と同一方向に傾斜しているので、弁体22fは当接面22mのテーパ状によりガイドされて入口パイプ22c側流路の開口部内にスムースに嵌入する。図2(b)はこの入口パイプ22c側流路の開口部内へ弁体22fが嵌入した状態を示す。
【0056】
ここで、弁体22fの外径寸法を入口パイプ22c側流路の開口部の内径より所定量大きく設計してあるため、弁体22fが入口パイプ22c側流路の開口部内に嵌入する際に弁体22fが弾性的に圧縮変形する。この圧縮変形に伴う弾性反発力によって、弁体22fはテーパ状の当接面22mおよび入口パイプ22c側流路の開口部の内壁面に圧着する。これと同時に、貫通穴22gも弁体22fの圧縮変形によって閉塞状態となる。これにより、主ハウジング22aの入口パイプ22c側の流路と出口パイプ22d側の流路との間を弁体22fにより遮断できる。
【0057】
本第1実施形態によると、車両の衝突を検出した後に、電気点火装置20cによりガス発生剤20bを直ちに着火し燃焼させて、ケース20a内部に瞬時に膨張ガスを発生することができる。そして、この膨張ガスによりガスバック21を瞬時に膨張させて、弁体22fを主ハウジング22a内流路の遮断位置に瞬時に移動できる。従って、ガスバックの膨張のためにエアポンプを利用する従来技術に比して流路遮断の応答性を大幅に向上できる。
【0058】
また、弁体22fおよび主ハウジング22aを電気絶縁体で構成しているから、冷却水が燃料電池10を通過する際に帯電しても、入口パイプ22c側の冷却水と出口パイプ22d側の冷却水との間を電気的に確実に絶縁できる。従って、図1の冷却水経路11において、2つの緊急遮断弁16、17よりも燃料電池10側経路と、2つの緊急遮断弁16、17よりも反燃料電池側経路との間を電気的に絶縁できる。従って、後者の反燃料電池側経路、すなわち、循環ポンプ12、ラジエータ13、バイパス経路15を包含する部分が破損し、その破損部位から冷却水が漏れ出て人体が接触しても、人体への感電を防止できる。
【0059】
また、主ハウジング22aのうち弁体22fが圧着する部位、すなわち、テーパ状の当接面22mおよび入口パイプ22c側流路の開口部の内壁面と、弁体22fの表面に撥水処理層を形成することにより、この撥水処理層によって水を弾くことができるので、弁体22fと主ハウジング22a側の内壁面との間の微小隙間に冷却水が残存することを低減でき、これにより、弁の電気絶縁性能をより一層向上できる。
【0060】
なお、図2には図示していないが、ガスバック21内の膨張ガスを外部へ逃がす機構を補助ハウジング22bに設定することにより、ばね22jのばね力にて弁体22fが入口パイプ22c側流路の開口部内から離れて図2(a)の開弁位置に復帰することができる。
【0061】
(第2実施形態)
第1実施形態では、膨張ガス発生装置20により膨張ガスを発生させてガスバック21を膨張させ、これにより、弁体22fを主ハウジング22a内流路の遮断位置に移動させるようにしているが、第2実施形態では膨張ガス発生装置20を使用せずに、ばね手段のばね力にて弁体22fを流路遮断位置に瞬時に移動させるものである。
【0062】
図3(a)(b)は第2実施形態であり、弁機構22は第1実施形態と類似の構成になっているが、押圧板22iおよびばね22jが第1実施形態と相違している。すなわち、第1実施形態では、ばね22jが押圧板22iを介して弁作動軸22hおよび弁体22fに対して開弁方向の力を作用させるようになっているが、第2実施形態では、これとは逆にばね22jが押圧板22iを介して弁作動軸22hおよび弁体22fに対して閉弁方向の力を作用させるようになっている。
【0063】
そして、通常時には、ばね22jを図3(a)のように押圧板22iと補助ハウジング22bの内壁との間で圧縮変形させてばね力を蓄えた状態にて、弁作動軸22hおよび弁体22fを開弁位置に保持する開弁保持機構23が補助ハウジング22bの外側に配置してある。この開弁保持機構23は、制御部100の制御出力により作動する電気アクチュエータ機構23aを内蔵している。
【0064】
図3(a)の通常時には、この電気アクチュエータ機構23aが非作動状態にあって、弁作動軸22hの上端部付近が電気アクチュエータ機構23aに係止されることにより、弁作動軸22hおよび弁体22fが図3(a)図示の開弁位置に保持される。また、ばね22jは図3(a)図示の圧縮変形した状態に保持される。
【0065】
そして、車両の衝突が検出され、制御部100の制御出力により電気アクチュエータ機構23aが作動すると、弁作動軸22hの係止状態が解除されるので、ばね22jのばね力によって押圧板22i、弁作動軸22hおよび弁体22fが一体となって、瞬時に押し下げられる。その結果、弁体22fによって主ハウジング22aの入口パイプ22c側の流路と出口パイプ22d側の流路との間を瞬時に遮断できる。この弁体22fによる流路遮断作用は第1実施形態と同じであり、第1実施形態と同様の作用効果を発揮できる。
【0066】
(第3実施形態)
第2実施形態では、開弁保持機構23に、制御部100の制御出力により作動する電気アクチュエータ機構23aを内蔵しているが、第3実施形態では開弁保持機構23を純機械的機構により構成して電気アクチュエータ機構23aを不要にする。
【0067】
図4(a)(b)は第3実施形態であり、開弁保持機構23にL字形の第1リンク23bが備えてあり、この第1リンク23bの一端部はピン23cにより弁作動軸22hの上端部に回転可能に結合されている。第1リンク23bの他端部は第2リンク23dの一端部にピン23eにより回転可能に結合されている。
【0068】
この第2リンク23dの中央部は図4(b)のように折り曲げ可能な可動節23fを構成している。第2リンク23dの他端部は開弁保持機構23の支持板23gにピン23hにより回転可能に支持されている。
【0069】
第2リンク23dの中央部の可動節23fにはフック状の係止機構23iが係止されて、第2リンク23dを通常時には図4(a)に示す直線状態を維持するようになっている。すなわち、通常状態では、第2リンク23dが直線状態に維持されることにより、L字形第1リンク23bがピン23cを中心にして回転することを阻止する突っかい棒の役割を第2リンク23dが果たす。
【0070】
これにより、通常状態では、ばね22jが図4(a)に示すように圧縮変形してばね力を蓄えた状態に維持され、弁体22fは開弁状態を保持する。第2リンク23dの上面部にて、可動節23fの近傍部位に重り23jが載置されている。この重り23jは可動節23fの近傍部位に重力による下向きの力を作用させるためのものである。
【0071】
上記のフック状の係止機構23iは車両に加わる衝撃力に応動するようになっており、係止機構23iに所定値以上の衝撃力が加わると、第2リンク23dの直線状態の維持を解除するようになっている。
【0072】
従って、車両が衝突事故等を起こして、フック状の係止機構23iに所定値以上の衝撃力が加わると、係止機構23iが第2リンク23dの直線状態の維持を解除する。この際、第2リンク23dの可動節23fの近傍部位に重り23jの重力により下向きの力が作用しているので、第2リンク23dは可動節23fにて必ず下側へ折れ曲がる。
【0073】
これにより、第2リンク23dの突っかい棒としての役割が消滅するので、ばね22jのばね力により押圧板22i、弁作動軸22hおよび弁体22fが押し下げられ、これと同時に、L字形第1リンク23bがピン23cを中心にして図4(b)の矢印A方向に回転する。
【0074】
第2リンク23dの可動節23fが下側へ折れ曲がると、ばね22jのばね力に基づく上記作動を抑制する力は一切作用しないので、弁体22fが図4(a)の開弁位置から図4(b)の閉弁位置に向かって瞬時に移動できる。
【0075】
(他の実施形態)
なお、第1実施形態では、膨張ガスにより膨張するガスバック21を冷却水流路22eの外部に配置し、このガスバック21の体積膨張により変位する弁体22fを冷却水流路22eの内部に配置し、この弁体22fにより冷却水流路22eを遮断するようにしているが、膨張ガスにより膨張するガスバック21を冷却水流路22eの内部に直接配置し、このガスバック21の体積膨張を利用して冷却水流路22eを直接遮断するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による緊急遮断弁を備えた燃料電池搭載車の冷却水回路図である。
【図2】(a)は第1実施形態による緊急遮断弁の通常時(開弁時)を示す断面図、(b)は第1実施形態による緊急遮断弁の閉弁時を示す断面図である。
【図3】(a)は第2実施形態による緊急遮断弁の通常時(開弁時)を示す断面図、(b)は第2実施形態による緊急遮断弁の閉弁時を示す断面図である。
【図4】(a)は第3実施形態による緊急遮断弁の通常時(開弁時)を示す断面図、(b)は第3実施形態による緊急遮断弁の閉弁時を示す断面図である。
【符号の説明】
10…燃料電池、11…冷却水経路、16、17…緊急遮断弁、
20…膨張ガス発生装置、20b…ガス発生剤、21…ガスバック、
22e…流路、22f…弁体、22j…ばね、23…開弁保持機構。
Claims (6)
- ガス発生剤(20b)を着火することにより膨張ガスを発生させる膨張ガス発生装置(20)と、
前記膨張ガスにより膨張するガスバック(21)と、
帯電する熱媒体が流れる流路(22e)を形成するハウジング部材(22a)と、
前記ハウジング部材(22a)の内部に前記流路(22e)を開閉するように配置され、前記ガスバック(21)の体積膨張により変位する弁体(22f)とを備え、
前記ガスバック(21)の体積膨張により前記弁体(22f)が変位して前記流路(22e)を遮断するようになっており、
さらに、前記ハウジング部材(22a)および前記弁体(22f)は、前記流路(22e)の遮断時に前記流路(22e)の入口側熱媒体と前記流路(22e)の出口側熱媒体との間を電気的に絶縁するように電気絶縁体により形成されていることを特徴とする緊急遮断弁。 - 前記弁体(22f)は、前記流路(22e)の開弁状態から直線的に変位して前記流路(22e)を遮断することを特徴とする請求項1に記載の緊急遮断弁。
- 前記弁体(22f)が前記流路(22e)の開口部内側に嵌入することにより、前記流路(22e)を遮断するようになっており、
前記流路(22e)の開口部端面に、前記開口部内側への前記弁体(22f)の嵌入をガイドするテーパ状当接面(22m)を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の緊急遮断弁。 - 前記ハウジング部材(22a)のうち前記弁体(22f)が接する部位、および前記弁体(22f)の表面に撥水処理層を形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の緊急遮断弁。
- 前記弁体(22f)は弾性体で構成され、前記弁体(22f)には前記流路(22e)を流れる流体が通過可能な貫通穴(22g)を設け、
前記弁体(22f)が前記流路(22e)を遮断した際に、前記弁体(22f)が弾性的に圧縮変形することにより前記貫通穴(22g)が閉塞されるようにしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の緊急遮断弁。 - 請求項1ないし5のいずれか1つに記載の緊急遮断弁(16、17)を燃料電池冷却水経路(11)内に配置する車両用燃料電池冷却装置であって、
車両の衝突を検出する衝突検出センサ(101)と、
この衝突検出センサ(101)の検出信号が入力され、車両の衝突時に前記膨張ガス発生装置(1)を作動させる制御信号を出力する制御部(100)とを備え、
車両の衝突時に前記緊急遮断弁(16、17)により前記燃料電池冷却水経路(11)を遮断するとともに、前記緊急遮断弁(16、17)の前後間を電気的に絶縁することを特徴とする車両用燃料電池冷却装置。
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