JP4062846B2 - 鉛蓄電池とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉛蓄電池とその製造方法、詳しくは鉛蓄電池のセル間接続構造とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の鉛蓄電池におけるセル間接続は、電槽のセル室を区画する隔壁上部に貫通孔を形成し、この貫通孔を通して相隣るセル室の極群から立設する異極性の中間極柱同士を抵抗溶接により接続する方法があった。しかし、この方法は、立設する中間極柱同士を隔壁の貫通孔を通して抵抗溶接機で溶接するため、隔壁の高さがストラップの上面より一定の高さ以上でなければならず、極群上部の空間(デッドスペースという)が大きくなり、電池をコンパクトにできないという問題点があった。また、制御弁式鉛電池では、極板から発生した水素ガスが前記デッドスペースに滞留し、引火爆発の原因になった。これら問題点を解決するため、前記隔壁の上縁に切欠きを形成し、この切欠きに相隣るセル室の異極性の極板同士を連結する一直線のストラップをはめ込むいわゆるダイレクトスルーと称する方法があった。
【0003】
しかしながら、この方法は、前記記問題点を解決できるが、隔壁の切欠きとストラップとの隙間の気密を保つことが難しいという問題点を有していた。
【0004】
このような問題点を解決するために、例えば特開平3―25855号公報などでは、セル間接続部の両側面と下面に溝を設けて、この溝を隔壁の切り欠き部にはめ込み、隣接するストラップ同士を加圧することで、接続導体を隔壁に密接する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなセル間接続では、隔壁と接続導体との接合に際し、物理的力のみで接続導体と隔壁の隙間の気密を保たせているので、セル間の気密や液密が不十分であった。また、蓋の隔壁下面と接続導体の上面との接着スペースが限定され、機械的強度も低くなった。さらに、セル間の気密や液密性を上げるため、溝を深くして電槽隔壁と接続導体の接合面積を大きくすると、セル間接続部の導通部断面積が小さくなり、大電流放電の際、セル間接続部が破断するという問題があった。この問題に対応して接着面積と導通部全体の断面積の両方を大きくすると、接続導体自体が大きくなり、その分接続導体の鉛量が増加し電池の重量効率が低下する。また、加圧部(ストラップ側面)が接合部と離れているので、加圧部に熱を加えて接続導体と隔壁を熱硬化樹脂などの接着剤で接着しても充分な接着強度が得られなかった。
【0006】
以上のように、接続導体と隔壁を充分に接合または接着することができず、電池使用時の機械的な振動により、隔壁部と接続導体との接合部に隙間が生じ、気密性が損なわれる問題に対する有効な対策がなかった。さらに、電池の使用中に接続導体部表面が腐食し、隔壁の切欠きと接続導体との間に隙間が形成され、セル間の気密が損なわれ、セル間で液絡が生じるという問題点も有していた。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、電槽隔壁の切欠き部と接続導体、蓋隔壁と接続導体の接着を強固にし、電池の使用中に前記接着部の気密性が損なわれることのない、鉛蓄電池とその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決する為、本発明は、電槽1と、複数の極群6と、蓋10とからなる鉛蓄電池であって、
前記電槽1は、隔壁2により複数のセル室4に区画形成され、該隔壁2が上縁に切欠部3を有するものであり、
前記蓋10は、下面に隔壁11を有するものであり、
前記極群6は、前記セル室4に収納され、上部に前記電槽隔壁2と平行に延びるストラップ5,5'を有し、該ストラップ5,5'の一側面から前記電槽隔壁2に向かって水平に延びる接続導体7,7'を有するものであり、
前記接続導体7または7'は、先端付近に突起8が形成され、該突起8がプライマーを介して前記電槽隔壁2と接着しており、先端が相隣る極群6の異極性の接続導体7'または7と前記切欠部3で連結されているものであり、
前記蓋10は、隔壁11の下縁が前記電槽隔壁2の上縁と接着し、前記切欠部3に挿入された前記接続導体7,7'の上面とプライマーを介して接着していることを特徴とする。
【0009】
そして、前記蓋隔壁11は、下縁の幅が前記電槽隔壁2と前記突起8との幅よりも大であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の製造方法は、電槽1と、複数の極群6と、蓋10とを準備し、該電槽1は、隔壁2により複数のセル室4に区画形成され、該隔壁2の上縁に切欠部3を有するものであり、該極群6は、上部にストラップ5,5'を有し、該ストラップ5,5'の一側面から接続導体7または7'が水平に延びて先端で相隣る異極性の接続導体7'または7と連結され、該接続導体の先端付近に突起8が形成されているものであり、該蓋10は、下面に隔壁11を有するものであり、
次いで、前記接続導体7,7'の連結部12と前記突起8に、あるいは電槽隔壁の切欠部3周辺にプライマーを塗布し、
次いで、前記ストラップ5,5'が前記電槽隔壁2と平行になり、かつ前記切欠部3に前記接続導体の連結部12が嵌合するように前記極群6を前記電槽1の各セル室4に収納し、
次いで、前記電槽隔壁2を挟んで配置された一対の前記突起8の、互いに反対方向に向く側面(背面)にアーム13を当て、ヒートプレスすることにより前記電槽隔壁2と前記連結部12、および前記電槽隔壁2と前記突起8を接着し、
次いで、前記蓋10の下縁と、前記電槽1の上縁および前記接続導体7,7'の上面とを接着することを特徴とする。
【0011】
上記製造方法において、前記接続導体7,7'は、前記突起8の背面と接する底面に溝9が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明は、突起により、電槽隔壁と接続導体と蓋との接着面積が大きくなり、またプライマーにより接着強度が増すと共に確実に接着できるので、セル間の気密が保たれる。さらに、アームをセル間の連結部付近に配置できるので、ヒートプレス時の温度がプライマーや電槽隔壁に伝わり易く接続部作業が容易且つ確実となるので、高信頼性で作業性のよい鉛蓄電池とその製造方法を提供することが出来る。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態を示す一部切欠き上面図、図2は図1の斜視図、図3は、図1の線A―Aに沿う断面図、図4は、本発明の製造方法を示す説明図であり、(a)は隔壁と接続導体のかん合前、(b)は隔壁と接続導体のかん合後でアーム固定前、(c)はアーム固定後のヒートプレス時の状態を示す図である。
【0015】
本発明に係る電槽1は、隔壁2により複数個のセル室4に区画形成されている。そして、この隔壁2の上縁には、角形の切欠部3が形成されている。また、相隣る前記セル室4、4には、正極板と負極板とをセパレータを介して積層し、同極性の極板同士をストラップ5,5'により接続した極群6,6が収納されている。ストラップ5または5'は、前記隔壁2と平行に延び、この隔壁2に面する一側面から隔壁2に向かって水平に延びる角柱形の接続導体7または7'を有する。この接続導体7または7'は、先端が相隣る極群の異極性の接続導体7'または7の先端と連結され、一体になっている。また、この接続導体'は、先端付近、すなわち隔壁2に接する部分の両側面および底面に隔壁2に平行な突起8が形成されている。そして、この突起8がプライマーを介して隔壁2に密着している。また、突起8と接する接続導体の底面には、溝9が形成されている。
【0016】
図3に示すように、蓋10は、下面の電槽隔壁2と対応する位置に隔壁11を有し、この隔壁11の下縁が電槽隔壁2の上縁と接着されている。そして、蓋隔壁11は、接続導体の連結部(セル間接続部)12上部で幅広になって、前記突起8上面を覆って、プライマーを介して接続導体7、7'と接着されている。
このように、本発明に係る接続導体は、電槽隔壁と平行な突起を有し、この突起と前記連結部が電槽隔壁とプライマーにより接着されているので、接着強度に優れる。また、連結部と切欠部の隙間が突起により塞がれるので気密性、液密性に優れる。
【0017】
また、蓋隔壁が接続導体の突起を含むセル間接続部上面とプライマーにより接着しているので、接着強度に優れる。
【0018】
次に、本発明の製造方法について説明する。
【0019】
先ず、隔壁2により複数のセル室4,4に仕切られた電槽1と、上部のストラップ5,5'から水平に延びる接続導体7,7'でセル間接続された複数の極群6,6と、前記電槽隔壁2と対応する位置に隔壁11を有する蓋10を準備する。なお、前記電槽隔壁2は、上縁に切欠部3を有する。また、相隣合う極群6,6の異極性の接続導体7と7'は、これら極群の中間で連結され、この連結部12を挟んで両方の接続導体に突起8を有する。この突起8は、接続導体の側面と底面から垂直に延び、他方の突起8とは平面で対面している。また、この突起8からストラップ側に後退した接続導体底面に溝9が形成されている。そして、連結されたこれらストラップ5,5'は、キャストオンストラップ法により形成される。
【0020】
次に、前記連結部12周面と、突起8の相対面および上面にプライマーを塗布する。
【0021】
その後、セル間接続した複数の極群6,6を、ストラップ5と5'が電槽隔壁2と平行になるように電槽の各セル室4,4に挿入し、図4の(a)のように前記接続導体7と7'の連結部12を電槽隔壁2の切欠部3にはめ込む。
【0022】
次に、電槽隔壁2を挟んで配置された一対の前記突起8の、互いに反対方向に向く側面(背面)に図4の(b)(c)のようにアーム13を当て、このアーム13を熱しながら電槽隔壁の方向に突起8を押して、該電槽隔壁2と突起8をプライマーを介して接着するとともに連結部12(上面を除く周面)と切欠部3もプライマーを介して接着する。なお、アーム13は、前記突起の前記背面の全てと接続導体の上面に当たるように、コの字形の一対の装置からなり、下部が前記溝9にはまるようになっている。
【0023】
次に、電槽1上部に蓋10を取り付ける。この時に、蓋隔壁11の下縁と電槽隔壁2の上縁とが溶着され、前記連結部12(上面)と突起8の上面もプライマーにより蓋隔壁11の下縁と接着される。
【0024】
このように、本発明の方法によれば、アーム13から突起8を介してプライマーと電槽隔壁2が熱せられるので、熱損失が少なく、確実かつ速く接着できる。また、プライマーを介在させて接続導体7,7'と電槽隔壁2および蓋隔壁11と接着するので、接着強度や気密性、液密性に優れる。また、溝9により突起8下部を熱することができるので、切欠部3の下部の接着も強固にできる。
【0025】
なお、溝9の形状は、接続導体7,7'と隔壁2を正確かつ容易にヒートプレスできるのであれば、本実施例に限定されない。
【0026】
また、プライマーは、本実施例では接続導体7、7'に塗布しているが、隔壁2,11に塗布してもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明は下記の効果を奏する。
(1)本発明の請求項1によれば、電槽隔壁と接続導体、蓋隔壁と接続導体の接着強度が優れ、液密性や気密性に優れた鉛蓄電池を提供できる。
(2)本発明の請求項2によれば、請求項1の効果に加え、蓋隔壁と接続導体との接着強度をさらに強固にできる。
(3)本発明の請求項3によれば、ヒートプレス時の熱損失が少なく、電槽隔壁と接続導体、蓋隔壁と接続導体の接着を確実かつ迅速にできる。
(4)本発明の請求項4によれば、電槽隔壁の切欠部下部も確実に接着でき、液密性、気密性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す鉛蓄電池の上面図である。
【図2】図1の斜視図である。
【図3】図1の線A―Aに沿う断面図である。
【図4】本発明の製造方法を示す、図1の線B−Bからみた説明図であり、 (a)は電槽隔壁と接続導体のかん合前、(b)は電槽隔壁と接続導体のかん合後でアーム固定前、(c)はアーム固定後のヒートプレス時の状態を示す。
【符号の説明】
1 電槽
2 電槽隔壁
3 切欠部
4 セル室
5、5' ストラップ
6 極群
7、7' 接続導体
8 突起
9 溝
10 蓋
11 蓋隔壁
12 連結部
13 アーム
Claims (4)
- 電槽と、複数の極群と、蓋とからなる鉛蓄電池であって、
前記電槽は、隔壁により複数のセル室に区画形成され、該隔壁が上縁に切欠部を有するものであり、
前記蓋は、下面に隔壁を有するものであり、
前記極群は、前記セル室に収納され、上部に前記電槽隔壁と平行に延びるストラップを有し、該ストラップの一側面から前記電槽隔壁に向かって水平に延びる接続導体を有するものであり、
前記接続導体は、先端付近に前記電槽隔壁と平行に延びる突起が形成され、該突起がプライマーを介して前記電槽隔壁と接着しており、先端が相隣る極群の異極性の接続導体と前記切欠部で連結しているものであり、
前記蓋は、隔壁の下縁が前記電槽隔壁の上縁と接着し、前記切欠部に挿入された前記接続導体の上面とプライマーを介して接着していることを特徴とする、
鉛蓄電池。 - 前記蓋隔壁は、下縁の幅が前記電槽隔壁と前記突起との幅よりも大であることを特徴とする請求項1記載の鉛蓄電池。
- 電槽と、複数の極群と、蓋とを準備し、該電槽は、隔壁により複数のセル室に区画形成され、該隔壁の上縁に切欠部を有するものであり、該極群は、上部にストラップを有し、該ストラップの一側面から接続導体が水平に延びて先端で相隣る異極性の接続導体と連結され、該接続導体の先端付近に突起が形成されているものであり、該蓋は、下面に隔壁を有するものであり、
次いで、前記接続導体の連結部と突起に、および/または電槽隔壁の切欠部周囲にプライマーを塗布し、
次いで、前記ストラップが前記電槽隔壁と平行になり、かつ前記切欠部に前記接続導体の連結部が嵌合するように前記極群を前記電槽の各セル室に収納し、
次いで、前記電槽隔壁を挟んで配置された一対の前記突起の背面にアームを当て、ヒートプレスすることにより前記電槽隔壁と前記連結部、および前記電槽隔壁と前記突起を接着し、
次いで、前記蓋の下縁と、前記電槽の上縁および前記接続導体の上面とを接着することを特徴とする、
鉛蓄電池の製造方法。 - 前記接続導体は、前記突起の背面と接する底面に溝が設けられていることを特徴とする請求項3記載の鉛蓄電池の製造方法。
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