本発明は筒状リングの歪み形状計測方法及びプログラムに関し、とくに筒状リングの画像からその精確な歪み形状を計測する方法及びプログラムに関する。本発明は、シールドトンネルを掘削するシールド掘削機のスキンプレート、そのスキンプレートの内側に組み立てるシールドセグメント等の筒状リングの歪み形状計測に適用することができる。
シールド掘進機を用いるトンネル掘削工事では、図12に示すように、地盤を一定距離だけ掘進する毎に、シールド掘進機1の筒状外周壁であるスキンプレート2のテール部(後端部)の内側に、トンネル内壁となるセグメントリング7を組み立てる。通常のセグメントリング7は複数の円弧状又は楕円弧状のセグメントピース8により構成され、テール部に設けたエレクタ6により複数のセグメントピース8を例えば真円又は楕円の筒状リングに組み立てた後、ボルト等で本締めして構築する。エレクタ6の真円保持装置等によりセグメントリング7をできるかぎり精確に組み立てることが大切であるが、組み立てたセグメントリング7を本締めする前に、その詳細な形状を計測してチェックすることが品質管理上重要とされている。
従来から、組み立て直後のセグメントリング7の外周面とスキンプレート2の内周面と間の距離(テールクリアランス)をコンベックスやスケール等で測定し、その測定値とスキンプレート2の内周面の断面形状(以下、内周形状という)とからセグメントリング7の形状を計測する方法(テールクリアランス計測法)が行われている。例えばスキンプレート2の内周形状を真円とすれば、その内周面の半径とテールクリアランス測定値との差としてセグメントリング7の外周面の半径を計測できる。コンベックス等による手動測定に代えて、特許文献1及び2が開示するように、自動化等を目的としたテールクリアランス測定装置等も提案されている。
また図12に示すように、エレクタ6の先端部にレーザ距離計36等を取り付け、エレクタ6を回転させながらセグメントリング7の内径を測定し、その測定値からセグメントリング7の内周形状を計測する方法(内径計測法)も行われている。エレクタ6を用いる方法に代えて、セグメントリング7の内周面上に予め測定用罫線を設けておき、組み立て直後の相対する罫線間の距離(直径)をレーザ距離計等で測定してセグメントリング7のリング内径を測定する場合もある。
しかし、従来のテールクリアランス計測法及び内径計測法は何れも、十分な精度でセグメントリング7の形状を求めることができず、しかも計測作業に手間がかかる問題点がある。シールド掘進機1のスキンプレート2の内周形状は掘削作業によって変形し、当初は真円であってもセグメントリング7の組み立て時の正確な形状が不明であるため、テールクリアランス計測法ではスキンプレート2の変形に伴う誤差が生じる。また内径計測法では、エレクタ6の機械的な軸ずれやたわみ等による誤差が生じ、手作業で測定する場合は人為的な読み取り誤差等も生じる。更に、セグメントリング7の詳細な形状を計測するには測定箇所を増やす必要があるが、従来の計測法は測定箇所の増加に応じて作業量も増大するので計測作業に時間がかかる。とくに内径計測法は、リング全体にわたり見通しを確保する必要があり、他の作業と並行に計測作業を進めることも難しいため、組み立て直後のセグメントリング7の形状を迅速に把握することは困難であった。
これに対し特許文献3は、2台のカメラ(撮像機)を用いた画像計測法によりセグメントリング7の形状を計測する方法を提案している。画像計測法は、図10に示すように、対象点Pとカメラ撮像面の中心(カメラ中心)Oとその撮像面上の像点pとの3点が同一直線上に存在するという幾何学的原理に基づくものである。地上座標系における対象点Pの三次元座標を(X,Y,Z)、カメラ中心Oの三次元座標を(X0,Y0,Z0)、撮像機の焦点距離をc、カメラ座標系における撮像機のx軸、y軸及びz軸の回りの回転角度を(ω,φ,κ)、カメラ座標系における像点pの三次元座標を(x,y,-c)とした場合、画像計測の幾何学的原理は式(1)〜(3)の共線条件式として表すことができる。また、カメラの焦点距離、主点位置、レンズ歪等を考慮する場合は、式(1)、(2)の共線条件式を変形して式(4)及び(5)とすることができる。式(4)及び(5)におけるΔx、Δyは、焦点距離、主点位置、レンズ歪係数により定まる補正項である。
共線条件式(1)及び(2)はカメラ位置(X0,Y0,Z0)及びカメラ角度(ω,φ,κ)の6つの未知数(外部標定要素)を含むが、画像計測では既知三次元座標(X,Y,Z)の複数の対象点P(以下、基準点ということがある)を写し込み、撮像面上の基準像点pの二次元座標(x,y)を検出することにより共線条件式の未知数を標定することができる。特許文献3のように2台のカメラを用いた場合は、1つの基準点Pに対し2つの像点p1、p2の座標が得られるので、原理的には1枚の画像中に少なくとも3つの基準点Pを写し込めば共線条件式(1)及び(2)の6つの未知数を標定できる。共線条件式(4)及び(5)を用いる場合は、カメラ位置(X0,Y0,Z0)及びカメラ角度(ω,φ,κ)に加えて焦点距離、主点位置、レンズ歪係数等が未知数(内部標定要素)であるため、評定のために更に多くの基準点を必要とする。共線条件式における未知数が標定できれば、撮像面上における任意像点pの二次元座標を共線条件式へ代入することにより、それと対応する地上座標系の対象点P(以下、計測点Pということがある)の三次元座標を算出することができる(前方交会法)。
特許文献3の画像計測法では、図12に示すように、セグメントリング7の内周面上の複数の対象点に反射板又はカラーマーキング等の視標Tを取り付け、シールド掘削機1の異なる所定位置に所定姿勢(向き)で固定した一対の撮像機10により各視標Tを含むセグメントリング7の画像Igを撮影し、撮像機10の所定位置及び姿勢(以下、位置・姿勢と表すことがある)と画像Ig内の視標像の二次元位置とから各視標Tのシールド掘削機1に対する三次元位置を算出し、その三次元位置によりセグメントリング7の三次元形状を計測する。この画像計測法によれば、セグメントリング7の画像を撮影するだけで三次元形状を計測できるので計測作業時間を短縮できると共に、スキンプレート2の変形やエレクタ6の機械的精度に関係しない誤差の小さなセグメントリング7の三次元形状の計測が期待できる。
特開2004−068366号公報
特開2003−030888号公報
特許第2685407号公報
特許第3530978号公報
秋本圭一・服部進「画像計測の基礎」岡山職業能力開発短期大学校紀要、第11号、1997年3月
しかし、特許文献3の計測方法は、セグメントリング7の三次元形状を計測するために撮像機10の位置・姿勢を固定する必要があり、その位置・姿勢の測定に手間がかかる問題点がある。図12に示すように実際のシールド掘進機1の切羽付近にはコンベアや配管、風管その他の様々な器具や装置が配置されており、撮像機10を一定の位置・姿勢に固定したままでは、器具等が障害物となってセグメントリング7の視標Tを写し込むことができない場合がある。そのため撮像機10の位置・姿勢を適宜移動させる必要があるが、特許文献3の方法では撮像機10を移動させる都度その固定位置・姿勢を測定する必要があるため、結果的に計測作業に要する時間が長くなってしまう。組み立て直後のセグメントリング7の形状を短時間で計測するためには、撮像機10の位置・姿勢の固定及び測定を必要としない画像計測法が必要である。
撮像機10の位置・姿勢の測定を必要としない画像計測法として、特許文献4は、異なる任意の位置・姿勢から撮影した複数の画像を用いたバンドル調整法による画像計測法を提案している。バンドル調整法とは、上述したように基準点Pの写り込んだ画像毎に共線条件式の未知数を標定する方法(単写真標定)ではなく、図11に示すように、基準点Pの写り込んだ複数の画像から共線条件式の未知数の標定と計測点Pの三次元座標の算出とを最小二乗法により同時に行う方法である(非特許文献1参照)。すなわち、基準点及び計測点Pの三次元座標、カメラ中心Oの三次元座標、及びカメラ角度の真値を各々の近似値(X',Y',Z')(X'0,Y'0,Z'0)及び(ω',φ',κ')に補正量を加えたもの(X'+ΔX,Y'+ΔY,Z'+ΔZ)、(X'0+ΔX0,Y'0+ΔY0,Z'0+ΔZ0)及び(ω'+Δω,φ'+Δφ,κ'+Δκ)とし、基準点及び計測点Pの像点pの二次元座標の真値をその二次元座標の検出値(x',y')に誤差を加えたもの(x'+Δx,y'+Δy)とする。補正量を加えた近似値と誤差を含む検出値とを複数の共線条件式(式(1)及び(2))に代入し、それらの共線条件式をテーラー展開により線形化した上で、各補正量(ΔX,ΔY,ΔZ)、(ΔX0,ΔY0,ΔZ0)、(Δω,Δφ,Δκ)及び誤差(Δx,Δy)を最小にする解を逐次繰り返し法(逐次近似解法)の収束解として求める。共線条件式(4)及び(5)を用いたバンドル調整法によれば、レンズ歪係数等の補正量を最小にする解も求めることができる。バンドル調整法には、基準点Pの正確な三次元座標を求める必要がないので計測作業を簡単化できると共に、補正量の最小化により通常要求される1/20,000〜1/50,000(長さ10mに対し200〜500μmの誤差)以上の高精度で計測点Pの三次元座標を計測できる利点もある。
特許文献4の画像計測法を、図8の流れ図及び図9(A)のブロック図を参照して、本発明の理解に必要な限度において説明する。先ずステップ401〜402において計測対象30上の計測部位にそれぞれ相互識別可能な識別視標Ta(図9(B)及び(C)参照)を取り付け、計測対象30上又は近傍の基準位置に所定相互間隔Lの基準視標群Tb(同図(D)参照)を固定する。ステップ403において、可動撮像機10により異なる任意の位置・姿勢から、基準視標群Tbと3以上の識別視標Taとが共通に写り込み且つ非共通の識別視標Taが含まれる第1画像Ig1及び第2画像Ig2を撮影する。ステップ404〜405において、第1画像Ig1及び第2画像Ig2を視標像座標検出手段31(図9(A)参照)に入力して各画像Ig1、Ig2における各基準視標Tb及び3以上の識別視標Taの視標像の二次元座標を検出し、撮影位置・姿勢検出手段19(図9(A)参照)により視標Ta、Tbの像の二次元座標と基準視標群Tbの所定相互間隔Lとから基準位置5を原点とする座標系における第1画像Ig1及び第2画像Ig2の撮影の位置・姿勢と3以上の識別視標Taの三次元座標とを算出する。
図9(D)に示す基準視標群Tbは、直交する2直線の交点上に配置した基準視標Tb1と、一方の直線上に配置した2つの基準視標Tb2、Tb3と、他方の直線上に配置した3つの基準視標Tb4、Tb5、Tb6とを含み、例えば交点の基準視標Tb1を基準位置に位置合わせして固定する。2直線上に配置される基準視標Tb1〜Tb6の数が相違するので、画像Ig1、Ig2に写し込まれた基準視標群Tb1〜Tb6から2直線を識別して座標軸とし、基準視標Tb1〜Tb6の相互間隔Lを各座標軸の単位長さとすることができる。撮影位置・姿勢検出手段19は、座標軸と相互間隔Lとで定まる基準視標Tb1〜Tb6の三次元座標とその視標像の二次元座標とを共線条件式(1)及び(2)へ代入することにより共線条件式の未知数、すなわち第1及び第2画像Ig1、Ig2の撮影位置・姿勢を算出する(ステップ405)。その後、第1及び第2画像Ig1、Ig2内の各識別視標Taの像の二次元座標を共線条件式(1)及び(2)へ代入することにより、基準位置を原点とする座標系における各識別視標Taの三次元座標を算出する(ステップ405)。
次いでステップ406〜407において可動撮像機10を移動させ、第n画像Ign(nは3以上の自然数)を、その中に第(n−1)画像Ig(n-1)内の座標算出済の3以上の識別視標Taと座標未算出の識別視標Taとが共通に写り込み且つ第(n−1)画像Ig(n-1)と非共通の識別視標Taが含まれる位置・姿勢で撮影する。またステップ408〜409において、撮影した第(n−1)画像Ig(n-1)及び第n画像Ignを視標像座標検出手段31に入力して各画像Ig(n-1)、Ignにおける視標Taの像の二次元座標を検出し、撮影位置・姿勢検出手段19によりその視標Taの像の二次元座標と座標算出済視標Taの三次元座標とから、第n画像Ignの撮影位置・姿勢と座標未算出の識別視標Taの三次元座標とを算出する。第n画像Ignと第(n−1)画像Ig(n-1)とに座標算出済の3以上の識別視標Taを共通に写し込むことにより、その識別座標の三次元座標を用いて第n画像Ignの撮影位置・姿勢を算出し、第(n−1)画像Ig(n-1)において座標未算出の識別視標Taの三次元座標を第n画像Ignの利用により算出する。更にステップ410において全ての識別視標Taの三次元座標が算出されたか否かを判断し、座標未算出の識別視標Taが残っている場合はステップ406へ戻り、ステップ406〜409を繰り返して全ての識別視標Taの三次元座標を算出する。その後、ステップ411においてバンドル調整手段17により上述したバンドル調整の演算を行い、全ての識別視標Taの三次元座標の高精度化を図ることにより各計測部位の三次元座標を求める。
特許文献4の画像計測法によれば、複数の画像Igから撮像機10の位置・姿勢を算出することができるので、撮影位置・姿勢を別途測定する手間を省くことができ、計測作業の省力化及び時間短縮を図ることができる。ただし、識別視標Taの近傍に計測座標系となる基準視標群Tbを固定する必要があるため、基準視標群Tbを写し込むことができない場合は識別視標Taの三次元座標の計測ができなくなる問題点がある。上述したようにシールド掘進機の切羽付近には様々な器具等が配置されており、セグメントリングの形状計測を撮影上の障害物が存在する見通しの悪い条件下で行わなければならない場合も多い。基準視標群Tbを適宜移動させながら計測作業を進めることも可能であるが、計測作業の手間が増える。見通しの悪い条件下でのセグメントリングの形状計測には、基準視標群Tbを写し込む必要のない画像計測法を開発することが有効である。
そこで本発明の目的は、撮影上の障害物が存在する条件下でも適用できる筒状リングの歪み形状計測方法及びプログラムを提供することにある。
図1の実施例及び図2の流れ図を参照するに、本発明による筒状リングの歪み形状計測方法は、所定内周形状及び内周長さG(例えば内周長さG=2πR)の筒状リングAの歪み形状を計測する方法において、リング中心軸Cの直交断面Fと交差するリング内周面の交線L上に所定角度位置θkの計測視標Tkの群を取り付け、リング内側の可動撮像機10により異なる位置・姿勢から計測視標Tkが写り込む画像Igの群を撮影し、各画像Ig内の計測視標Tkの像の二次元座標(x',y')と各計測視標Tkの所定角度位置座標(X',Y',Z')とから各画像Igの撮影位置(X'0,Y'0,Z'0)及び姿勢(ω',φ',κ')を検出し、各画像Ig内の計測視標Tkの像の二次元座標(x',y')と各計測視標Tkの所定角度位置座標(X',Y',Z')と各画像Igの撮影位置(X'0,Y'0,Z'0)及び姿勢(ω',φ',κ')とに基づくバンドル調整により各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を算出し、各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を結ぶ多角形の周囲長さQ(図4参照)と所定内周長さGとの縮尺Sに基づき補正した各計測視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)により筒状リングAの歪み形状を計測してなるものである。
好ましくは、図1に示すように、筒状リングAの内周面上に所定角度位置θkの計測視標Tkと共に任意位置の補助視標Tsを取り付け、各画像Ig内の計測視標Tkの像の二次元座標(x',y')と各計測視標Tkの所定角度位置座標(X',Y',Z')とから各画像Igの撮影位置(X'0,Y'0,Z'0)及び姿勢(ω',φ',κ')を検出すると共にその撮影位置(X'0,Y'0,Z'0)及び姿勢(ω',φ',κ')と各画像Ig内の補助視標像Tsの二次元座標(x',y')とから各補助視標Tsの位置座標(X',Y',Z')を検出し、各画像Ig内の視標Tk、Tsの像の二次元座標(x',y')と各計測視標Tkの所定角度位置座標(X',Y',Z')と各補助座標Tsの検出位置座標(X',Y',Z')と各画像Igの撮影位置(X'0,Y'0,Z'0)及び姿勢(ω',φ',κ')とに基づくバンドル調整により計測視標Tk及び補助視標Tsの各々の三次元座標(X,Y,Z)を算出する。
また図1(B)のブロック図及び図2の流れ図を参照するに、本発明による筒状リングの歪み形状計測プログラムは、所定内周形状及び内周長さG(例えば内周長さG=2πR)の筒状リングAの歪み形状を計測するためコンピュータ13を、リング中心軸Cの直交断面Fと交差するリング内周面の交線L上に取り付けた所定角度位置θkの計測視標Tkの群をリング内側の異なる位置・姿勢から撮影した画像Igの群を入力する入力手段16、筒状リングの所定内周形状及び内周長さGと各計測視標Tkの所定角度位置座標(X',Y',Z')とを記憶する記憶手段15、各画像Ig内の計測視標Tkの像の二次元座標(x',y')を検出し且つ検出二次元座標(x',y')と各計測視標Tkの所定角度位置座標(X',Y',Z')とから各画像Igの撮影位置(X'0,Y'0,Z'0)及び姿勢(ω',φ',κ')を検出する検出手段17、各画像Ig内の計測視標Tkの像の二次元座標(x',y')と各計測視標Tkの所定角度位置座標(X',Y',Z')と各画像Igの撮影位置(X'0,Y'0,Z'0)及び姿勢(ω',φ',κ')とに基づくバンドル調整により各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を算出する座標算出手段21、各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を結ぶ多角形の周囲長さQ(図4参照)と所定内周長さGとの縮尺Sに基づき各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を補正する座標補正手段22、並びに各計測視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)により筒状リングAの歪み形状を出力する出力手段25として機能させるものである。
好ましくは、図1に示すように所定内周長さGの大径筒状リングAの内側に小径筒状リングBを同心状に組み立てる場合に、入力手段16により大径リングAの内周面の中心軸CAと直交する交線LA上及び小径リングBの内周面の中心軸CBと直交する交線LB上にそれぞれ取り付けた計測視標Tkの群を撮影した画像Igの群を入力し、座標補正手段22により大径リングAの交線LA上の各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を結ぶ多角形の周囲長さQと所定内周長さGとの縮尺Sに基づき両リングA、Bの内周面の各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を補正し、両リングA、Bの内周面の各計測視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)により大径及び小径リングA、Bの間のクリアランスeを計測するクリアランス計測手段24を設け、出力手段25により両リングA、Bの間のクリアランスeを出力する。
更に好ましくは、図3に示すように、入力手段16により大径リングAの内周面のリング中心軸CA方向に所定距離dだけ隔てた一対の交線LA1、LA2上及び小径リングBの内周面のリング中心軸CB方向に所定距離dだけ隔てた一対の交線LB1、LB2上にそれぞれ取り付けた計測視標Tkの群を撮影した画像Igの群を入力し、記憶手段15に両リングA、Bの内周面の交線対間(LA1、LA2)、(LB1、LB2)の所定距離dを記憶し、各リングA、Bの内周面の交線対(LA1、LA2)、(LB1、LB2)上の各計測視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)と交線対(LA1、LA2)、(LB1、LB2)の間の所定距離dとから両リングA、Bの中心軸CA、CBの交差角度δを計測する角度計測手段23を設け、クリアランス計測手段24により両リングA、Bの中心軸CA、CBの交差角度δに基づき両リングA、Bの間の中心軸CA、CB方向のクリアランスeを計測する。
本発明による筒状リングの歪み形状計測方法及びプログラムは、所定内周形状及び内周長さの筒状リングAの内周面の交線L上に所定角度位置θkの計測視標Tkの群を取り付け、異なる位置・姿勢から撮影した複数の画像Ig内の計測視標Tkの像の二次元座標(x',y')と各計測視標Tkの所定角度位置座標(X',Y',Z')とに基づき各画像Igの撮影位置・姿勢を検出し、その撮影位置・姿勢と各計測視標Tkの像の二次元座標(x',y')と各計測視標Tkの所定角度位置座標(X',Y',Z')とに基づくバンドル調整により各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を算出し、各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を結ぶ多角形の周囲長さQと所定内周長さとの縮尺Sに基づき各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を補正し、各計測視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)により筒状リングAの歪み形状を計測するので、次の顕著な効果を奏する。
(イ)各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を結ぶ多角形の周囲長さQが筒状リングAの内周長さと一致するように補正するので、基準となる単位長さを示す視標を写し込まなくても筒状リングAの歪み形状を定量的に計測できる。
(ロ)単位長さを示す視標を写し込む必要がないので、障害物等により写し込めない視標が存在する場合でも筒状リングAの歪み形状を計測できる。
(ハ)筒状リングAの内周長さは内周形状が変形しても維持されるので、内周形状の変形に拘らず筒状リングAの歪み形状を精度よく計測できる。
(ニ)筒状リングAに予め計測視標Tkを取り付けておけば、複数の画像Igを撮影するだけで歪み形状を継続的に計測することができ、計測作業の大幅な省力化・迅速化が実現できると共に他の作業と並行に進めることも可能である。
(ホ)従来の計測法では困難であったリング中央点の位置を求めることができるので、筒状リングの詳細なはらみ出しの向きや量を計測することができる。
(ヘ)大径筒状リングAの内側に同心状に組み立てる小径筒状リングBにも計測視標Tkを取り付ければ、同じ画像Igから両リングA、Bの精確な歪み形状を同時に計測できる。
(ト)また、大径筒状リングAと小径筒状リングBの歪み形状を同時に計測することにより、両リングA、Bの間の精確なクリアランスeを計測できる。
(チ)シールド掘削機1のスキンプレートの歪み形状や、その内側に組み立てるセグメントリングの歪み形状の計測への有効利用が期待できる。
図1(A)は、この場合シールド掘削機1のスキンプレート2である筒状リングAに本発明を適用した実施例を示す。図示例のスキンプレート2は内周形状が円形の筒状リングAであり、その内径Rにより筒状リングAの内周長さG=2πRが定まる。ただし、本発明の適用対象の筒状リングAは内周形状が円形のものに限定されず、内周形状が所定であって内周長さが一定の筒状リングAに広く適用可能である。例えば内周形状が楕円又は長円形状のスキンプレート2やトンネル壁面等に本発明を適用することができ、筒状リングAの断面形状の一部分に直線が含まれていてもよい。また、筒状リングの全周にわたる内周長さGが分からない場合でも、その一部分の内周長さGが分かれば、その内周部分に本発明を適用してその部分の歪み形状を計測することも可能である。同図(B)は本発明の実施に使用する装置の一例のブロック図を示し、図2は本発明における処理の流れ図の一例を示す。以下、図2の流れ図を参照して本発明による筒状リングAの形状計測方法を説明する。
先ずステップ101において、図1(A)に示すように、筒状リングAのリング中心軸CAの直交断面FAと交差するリング内周面の交線LA上の複数の所定角度位置θkにそれぞれ計測視標Tkを取り付ける(ステップ101のa)。計測視標Tkとして適当な反射板又はカラーマーキング等を用いることができるが、特許文献4の場合と同様に各視標Tkを自動識別可能とするため、相互識別可能な識別視標Taを用いることができる。相互識別可能な識別視標Taの一例は、図9(B)に示すドット分布型又は同図(C)に示す共心型の視標であり、ドット分布型の識別視標Taは500〜600の識別コードを容易に作ることができる。例えば同図(B)の識別視標Taにおいて、周辺部の3つの反射素材40O、40A、40Bは座標軸OABを定める座標軸用反射素材であり、残りの3つの反射素材41a、41b、41cはIDコードを表すID用反射素材であり、3つのID用反射素材41a、41b、41cの配置により複数の識別コードを表す。
図示例では、筒状リングAの内周面の交線LAをn等分した各角度位置θk(例えば48分割した場合は7.5度ピッチの角度位置)にそれぞれ計測視標Tkを取り付けている。ただし各計測視標Tkの取り付け角度位置θkのピッチは一定でなくてもよい。筒状リングAの形状計測精度を高めるためには、その内周面の交線LA上にできるだけ多数(例えば48〜360個程度)の計測視標Tkを取り付けることが望ましく、計測視標Tkの数を増やすことで後述する縮尺Sに基づく補正の精度を高めることができる。例えば筒状リングAをスキンプレート2とした場合、シールド掘進機1の製造工場等においてそのスキンプレート2の内周面の所定交線L上に沿って所定角度位置θkの計測視標Tkを予め取り付けておけば、計測時の視標取り付け作業の手間を省くことができる。一度取り付けた計測視標Tkは、筒状リングAの同じ部位の形状を計測する際に繰り返し利用できる。
またステップ101において、所定角度位置θkの計測視標Tkと共に、筒状リングAの内周面上の任意位置に補助視標Tsを取り付けることができる(ステップ101のb)。補助視標Tsを用いて筒状リングAの内周面上の視標の数を増やすことにより、後述するバンドル調整の演算精度向上が期待できる。補助視標Tsとして、計測視標Tkと同様の反射板又は相互識別可能な識別視標Taを用いることができる。また、補助視標Tsは筒状リングAの内周面上又は内側の計測を必要する所要部位に取り付けることができ、演算精度の向上と共に所要部位の三次元位置の計測に利用することもできる。この補助視標Tsの取り付け位置は、後述するように各画像Ig内の補助視標像Tsの二次元座標(x',y')から検出する。
ステップ102において、筒状リングAの所定内周形状と所定内周長さGと各計測視標Tkの取り付け角度位置θkとを、コンピュータ13(図1(B)参照)の記憶手段15に記憶する。この内周長さG(=2πR)と取り付け角度位置θkとから、例えば内周形状が円形の筒状リングA上の各計測視標Tkの角度位置座標(X',Y',Z')を、リング中心軸CAと直交断面FAとの交点OAを原点とする座標系のXY平面上の座標(Rcosθk,Rsinθk,0)として算出することができる。また筒状リングAの内周形状が円形以外であっても、その内周形状と内周長さGと取り付け角度位置θkとが分かれば、同様に交点OAを原点とする座標系における計測視標Tkの角度位置座標(X',Y',Z')を算出できる。ただし、座標系の原点は交点OAに限定されるものではない。この角度位置座標(X',Y',Z')は、後述するバンドル調整において各計測視標Tkの近似三次元座標として利用する。
次にステップ103において、リング内側の可動撮像機10により、異なる位置・姿勢から視標Tk、Tsが写り込んだ複数の画像Igを撮影する。撮像機10の一例はCCDカメラ等のデジタルカメラであるが、従来の光学フィルム式カメラを用いることも可能であり、その場合は図1の撮像機10と入力手段16との間にアナログ画像をデジタルデータに変換するスキャナー等を設ける。撮像機10にはストロボやフラッシュ等の光源11を含めることができ(図9(A)参照)、光源11を用いて視標Tk、Tsの撮影が可能な限り撮像機10の絞りを絞ることにより、視標Tk、Tsのみが浮き上がる画像Igを撮影することができる。望ましくは全ての画像Igを1台の撮像機10で撮影し、撮像機10の内部構造に起因する未知数(内部標定要素)の増加を防ぐ。また形状計測の精度を向上するためには、できるだけ異なる位置・姿勢から撮影した画像Igを用いることが望ましい。図示例のように大断面のスキンプレート2を内側から撮影する場合、リング中心軸CAより低い下方部や坑口側からの画像Igに偏りがちであるため、足場等の上方部や切羽側からの画像Igを加えて精度向上を試みる。ステップ104において、撮像機10を移動させながら撮影した視標Tk、Tsの複数の画像Igをコンピュータ13の入力手段16(図1(B)参照)に入力する。
ステップ105〜111は、画像Igを入力したコンピュータ13におけるプログラム処理を示す。先ずステップ105において、各画像Igを検出手段17(図1(B))に入力し、二次元座標検出手段18により各画像Ig内の計測視標Tk及び補助視標Tsの像の二次元座標(x',y')を検出する(ステップ105のa)。視標像の二次元座標の検出方法として従来技術に属する適当な方法を選択できるが、例えば適当な閾値による画像Igの2値化処理によって現れる各視標像の重心を二次元座標として検出する。この重心を用いた二次元座標の検出は、一部に切欠けのある視標像(切欠け視標像)を用いて重心を検出すると二次元座標の誤差が大きくなるため、画像Ig上の切欠けのない視標像(無切欠け視標像)のみを用いて行うことが望ましい。ただし、後述する座標抽出手段を用いることにより、切欠け視標像から誤差の少ない二次元座標を検出することも可能である。
ステップ105では、計測視標Tk及び補助視標Tsとして識別視標Ta(図9(B)及び(C)参照)を用いた場合に、二次元座標検出手段18によって各視標Tk、Tsの二次元座標(x',y')の検出と同時にIDを検出することもできる。例えば同図(B)のドット分布型の識別視標Taを用いた場合は、2値化処理により現れた座標軸用反射素材40O、40A、40Bの視標像に基づき識別視標Ta上の二次元座標軸を決定し、座標軸用反射素材40O(又は40A、40B)の重心を用いて識別視標Taの二次元座標を検出し、ID用反射素材41a、41b、41cの配置に基づき識別視標TaのIDを読み取る。ただし、各視標Tk、視標Tsの識別は、画像Igや二次元座標の検出時の2値化画像等をディスプレイ等の出力装置14に出力し、作業者がディスプレイの画面を見ながら行ってもよい。
またステップ105において、二次元座標検出手段18により検出した各視標Tk、視標Tsの像の二次元座標(x',y')を撮像位置・姿勢検出手段19に入力し、各計測視標Tkの像の検出二次元座標(x',y')と所定角度位置座標(X',Y',Z')=(Rcosθk,Rsinθk,0)とから、各画像Igの撮影位置・姿勢を検出する(ステップ105のb)。撮像位置・姿勢検出手段19は、例えば6以上の計測視標Tkが写し込まれた画像Igを選択し、その画像Igに写し込まれた計測視標Tkの二次元座標(x',y')と角度位置座標(X',Y',Z')とを共線条件式(1)及び(2)(又は(3)及び(4))へ代入することにより、その共線条件式の未知数としてその画像Igの撮影位置(X'0,Y'0,Z'0)及び姿勢(ω',φ',κ')を算出する。また図9のステップ405及び409と同様に、3以上の計測視標Tkが写し込まれた一対の画像Igを選択し、その画像Igの対に写し込まれた計測視標Tkの二次元座標(x',y')と角度位置座標(X',Y',Z')とを共線条件式(1)及び(2)(又は(3)及び(4))へ代入することにより、それら一対の画像Igの撮影位置・姿勢を算出することもできる。この算出サイクルを各画像Igについて繰り返すことにより、全ての画像Igの撮影位置・姿勢を検出できる。
更にステップ105において、撮像位置・姿勢検出手段19により、各画像Igの撮影位置(X'0,Y'0,Z'0)及び姿勢(ω',φ',κ')と各画像Ig内の補助視標像Tsの二次元座標(x',y')とから、各画像Ig内の取り付け位置未定の補助視標Tsの三次元位置座標(X',Y',Z')を検出することができる(ステップ105のc)。具体的には、各画像Igの共線条件式(1)及び(2)にその画像Ig内の取り付け位置未定の補助視標像Tsの二次元座標(x',y')を代入することにより、計測視標Tkと同じ座標系における補助視標像Tsの三次元位置座標(X',Y',Z')を算出する。この算出サイクルを全ての画像Igについて繰り返すことにより、全ての画像Ig内の取り付け位置未定の補助視標像Tsの位置座標(X',Y',Z')を検出できる。
次いでステップ106において、座標算出手段21により、ステップ105において検出した各計測視標Tk及び補助視標Tsの位置座標(X',Y',Z')に含まれる誤差をバンドル調整により最小化する。具体的には、各計測視標Tk及び補助座標Tsの三次元座標(X,Y,Z)をその近似値である位置座標(X',Y',Z')に補正量を加えた値(X'+ΔX,Y'+ΔY,Z'+ΔZ)とし、各画像Igの撮影位置・姿勢の近似値に補正量を加えた値(X'0+ΔX0,Y'0+ΔY0,Z'0+ΔZ0)及び(ω'+Δω,φ'+Δφ,κ'+Δκ)と、各視標像の二次元座標の検出値に誤差を加えた値(x'+Δx,y'+Δy)とを複数の共線条件式(1)及び(2)(又は(3)及び(4))に代入し、テーラー展開により複数の線形方程式を作る。その複数の線形方程式から、各視標Tk、Tsの三次元座標の補正量(ΔX,ΔY,ΔZ)と、各画像Igの撮影位置・姿勢の補正量(ΔX0,ΔY0,ΔZ0)及び(Δω,Δφ,Δκ)と、各視標像の二次元座標の誤差(Δx,Δy)とを最小にする解を最小二乗法により求め、求めた最小補正量及び誤差を近似値及び検出値に加えたものを新たな近似値及び検出値として採用し、再度補正量及び誤差を最小にする解を求める。この過程を補正量及び誤差が十分に小さくなるまで繰り返す逐次近似解法により、各視標Tk、Tsの三次元座標(X,Y,Z)の収束解を求める。
更にステップ107において、座標算出手段21で算出した各計測視標Tk及び補助視標Tsの三次元座標(X,Y,Z)の座標系の単位長さを座標補正手段22により補正する。ステップ106で算出した各視標Tk、Tsの三次元座標(X,Y,Z)は、特許文献4における基準視標群Tbのような座標軸の単位長さの画像Ig中の基準がないので、座標系の単位長さが調整されていない。座標補正手段22は、筒状リングAの内周長さが断面形状の変形にも拘らず維持されていることに基づき、各三次元座標(X,Y,Z)を結ぶ多角形の周囲長さQが所定内周長さGと一致するような縮尺Sを求め、その縮尺Sによって各三次元座標(X,Y,Z)を補正する。
ステップ107では先ず、図4(A)に示すように、隣接する計測視標Tk、Tk+1の間の直線間隔(弦の長さ)ΔT=Tk+1−Tkの総和として、各三次元座標(X,Y,Z)を結ぶ多角形の周囲長さQ(=ΣΔT)を計算する(ステップ107のa)。ただし、図示例のように筒状リングAの内周形状が円形等の曲面である場合は、計測視標Tk、Tk+1の間の直線距離ではなく、内周面に沿った弧状間隔(弧の長さ)を計算する必要がある。図5は、内周形状が円形の筒状リングAに取り付けた計測視標Tk、Tk+1の角度ピッチθ(=θk+1−θk)と、その計測視標Tk、Tk+1の間の弧状間隔に対する直線間隔の間隔比α(=弦の長さ/弧の長さ)との関係を示すグラフである(図4(B)も参照)。例えば、筒状リングAの内周面の交線LAを48分割した場合は、角度ピッチθ=7.5度となるので、間隔比α=(2(1−cosθ))1/2/θ=0.99929となる。同図は内周形状が円形の場合の関係を示すグラフであるが、円形以外の場合も同様に角度ピッチθと間隔比αとの関係式を求めることができる。従って、同図のような関係式をコンピュータ13の記憶しておけば、座標補正手段22において隣接する計測視標Tk、Tk+1の角度ピッチθに応じた間隔比αを求めて計測視標Tk、Tk+1の間の弧状間隔(=ΔT/α)を計算し、その弧状間隔の総和として各計測視標Tkを結ぶ多角形の周囲長さQ(=Σ(ΔT/α))を計算することができる。望ましくは、計測視標Tkの取り付け角度ピッチθをできるだけ小さく(例えば1〜4度程度)することにより、間隔比αを1に近づけて周囲長さQの精度を高める。
またステップ107において、各計測視標Tkを結ぶ多角形の周囲長さQと筒状リングAの所定内周長さGとの縮尺Sを計算し(ステップ107のb)、その縮尺Sに基づき各計測視標Tk及び補助視標Tsの三次元座標(X,Y,Z)を補正する。例えば筒状リングAの内周形状が円形である場合は、各計測視標Tkを結ぶ多角形の周囲長さQ(=Σ(ΔT/α))と筒状リングAの内周長さG(=2πR)との縮尺S(=2πR・α/ΣΔT)を求め、その縮尺Sを各視標Tk、Tsの各三次元座標(X,Y,Z)に乗算することで補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)を計算する。この補正により各三次元座標(X,Y,Z)の座標系の単位長さを調整し、筒状リングAの実際のスケールと一致させることができる。筒状リングAの内周形状が円形以外であっても、この補正方法により各視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)を求めることができる。なお、ステップ107では計測視標Tkだけでなく各補助視標Tsの三次元座標(X,Y,Z)も同時に補正できる。
ステップ107において筒状リングAの実際のスケールと一致させた各計測視標Tk、補助視標Tsの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)が求まるので、その補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)により筒状リングAの歪み形状を計測することができる。例えば、ステップ107で求めた各計測視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)を出力手段25経由でディスプレイ・プリンタ等の出力装置14に表示又は印刷し、筒状リングAの歪み形状を確認することができる(ステップ109)。図6は、各計測視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)により図1のスキンプレート2(筒状リングA)の歪み形状を計測した結果を示す。同図から分かるように本発明によれば、筒状リングAの極めて精確な歪み形状を計測することができる。本発明者の実験によれば、本発明によって半径6.5m程度のスキンプレート2における0.5mm程度のはらみ出しや歪みの向き及び量を把握することが可能である。
ステップ108は、図3に示すようにリング中心軸CA方向に隔てた筒状リングAの内周面の複数の交線LA1、LA2、……上にそれぞれ計測視標Tkを取り付けた場合に、各交線LA1、LA2、……毎にステップ107を繰り返し、各交線LA上の計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)をそれぞれ筒状リングAの実際のスケールと一致するように補正して補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)を求める処理を示す。各交線LA上の計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)は、ステップ105〜106のバンドル調整処理により同時に同時に算出することができる。複数の交線LA上の三次元座標(X,Y,Z)についてそれぞれステップ107の補正処理を施すことにより、リング中心軸CA方向に隔てた異なる断面における筒状リングAの精確な歪み形状を計測することができ、後述するように筒状リングAのリング中心軸CA方向の歪み(傾斜)を計測することもできる。
ステップ110〜111は、筒状リングAの歪み形状の経時的変位を計測する処理を示す。ステップ110においてステップ103〜109による各視標Tk、Tsの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)を前回歪み形状として記憶したのち、ステップ103へ戻って所定時間経過後の画像Igの群を撮影し、その画像Igの群に対してステップ103〜109を繰り返すことにより所定時間経過後の筒状リングAの今回歪み形状を計測する。今回歪み形状と前回歪み形状との経時的偏差を算出することとにより、筒状リングAの歪み形状の経時的変位を計測できる。各視標Tk、Tsの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)の原点の位置ずれが想定される場合は、今回歪み形状と前回歪み形状と原点を一致させる処理を行ったのち、両歪み形状の偏差を算出すればよい。例えば、図1の実施例ではスキンプレート2の交線LA上の最下点視標Tkの位置ずれは少ないと想定されるので、例えば今回歪み形状及び前回歪み形状の最下点視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)を原点とした上で、両歪み形状の偏差を算出することができる。ただし、原点の位置ずれの補正処理はこの方法に限定されるものではない。
本発明によれば、画像Ig中に座標軸の基準となるような視標を写し込む必要がないので、撮影上の障害物が存在する見通しの悪い条件下でも筒状リングAの精確な歪み形状を計測することができる。また、筒状リングAに予め計測視標Tkを取り付けておけば、複数の画像Igを撮影するだけで歪み形状を継続的に計測することができるので、計測作業の大幅な省力化・迅速化が実現できる。更に、従来の計測法では困難であったリング中央点の位置を求めることができるので、筒状リングAの詳細なはらみ出し向きや量も計測できる。
こうして本発明の目的である「撮影上の障害物が存在する条件下でも適用できる筒状リングの歪み形状計測方法及びプログラム」の提供を達成することができる。
図1(A)の実施例では、シールド掘削機1のスキンプレート2の内側に同心状に組み立てるセグメントリング7にも計測視標Tkを取り付け、大径筒状リングAであるスキンプレート2の歪み形状と、小径筒状リングBであるセグメントリング7の歪み形状とを同時に計測している。すなわち、図2のステップ101において、大径筒状リングAの内周面だけでなく、小径筒状リングBのリング中心軸CBの直交断面FBと交差するリング内周面の交線LB上の複数の所定角度位置θk(例えば48分割した場合は7.5度ピッチの角度位置)にもそれぞれ計測視標Tkを取り付ける。また、筒状リングBの内周面上の任意位置に補助視標Tsを取り付けることができる。例えば、図示例のように複数のセグメントピース8により構成されるセグメントリング7の場合は、各セグメントピース8の接合部位の近傍に補助視標Tsを取り付けることができる。
図2のステップ102〜106において、大径筒状リングAの視標Tk、Tsと小径筒状リングBの視標Tk、Tsとが共に写り込む画像Igの群を撮影し、その画像Igの群に対して上述した撮影位置・姿勢の検出処理(ステップ105)、及びバンドル調整による三次元座標算出処理(ステップ106)を施すことにより、両リングA、B上の各視標Tk、Tsの三次元座標(X,Y,Z)を同時に算出する。またステップ107において、大径筒状リングAの各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を結ぶ多角形の周囲長さQと所定内周長さGとの縮尺Sに基づき、両リングA、Bの各視標Tk、Tsの三次元座標(X,Y,Z)をそれぞれ実際のスケールと一致するように補正して補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)を求める。なお、小径筒状リングBの内周長さGBが一定である場合は、ステップ107において、大径筒状リングAの縮尺Sに基づく補正に代えて、小径筒状リングBの各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を結ぶ多角形の周囲長さQBと所定内周長さGBとの縮尺SBを計算し、その縮尺SBに基づき小径筒状リングBの各視標Tk、Tsの三次元座標(X,Y,Z)を補正してもよい。
図2のステップ107において大径筒状リングA及び小径筒状リングBの各計測視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)が求まるので、その補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)により両リングA、Bの歪み形状を同時に計測することができる。また、ステップ107において補助視標Tsの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)も求まるので、その補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)により小径筒状リングBの内周面上の所要部位の三次元位置、例えばセグメントピース8の接合部位の三次元位置を計測してピース相互間の目違い等の検出に利用することができる。
更に、コンピュータ13に大径筒状リングAと小径筒状リングBとの間のクリアランスeを計測するクリアランス計測手段24(図1(B)参照)を設ければ、図2のステップ109において両リングA、Bの各計測視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)から両リングA、B間の任意角度向きのクリアランスを計測することができる。例えば、大径筒状リングAの歪み形状と小径筒状リングBの歪み形状とを同じ平面上に表わし(図6参照)、その平面上における大径筒状リングAと小径筒状リングBとの間のクリアランスを計測する。また、例えばセグメントリング7である小径筒状リングBの厚さをコンピュータ13の記憶手段15に記憶しておけば、クリアランス計測手段24により小径筒状リングBの内周面の補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)から外周面の歪み形状を算出し、スキンプレート2の内周面とセグメントリング7の外周面と間のテールクリアランスを計測することもできる。図6は、セグメントリング7の厚さを考慮したスキンプレート2との間のテールクリアランスを表したものである。
図3の実施例は、大径筒状リングAの内側に小径筒状リングBを同心状に組み立てる場合に、両リングA、Bのリング中心軸CA、CB方向の傾斜を考慮してクリアランスを計測する実施例を示す。この場合は、図2のステップ101において、大径リングAの内周面のリング中心軸CA方向に所定距離dだけ隔てた直交断面FA1、FA2と交差する一対の交線LA1、LA2上にそれぞれ所定角度位置θkの計測視標Tkを取り付けると共に、小径リングBの内周面のリング中心軸CB方向に所定距離dだけ隔てた直交断面FB1、FB2と交差する一対の交線LB1、LB2上にもそれぞれ所定角度位置θkの計測視標Tkを取り付ける。またステップ102において、両リングA、Bの所定内周形状と所定内周長さGと各計測視標Tkの取り付け角度位置θkと共に、両リングA、Bの内周面の交線対(LA1、LA2)、(LB1、LB2)の間の所定距離(間隔)dを記憶する。
図2のステップ102〜106において、大径筒状リングAの計測視標Tkと小径筒状リングBの計測視標Tkとが共に写り込む画像Igの群を撮影し、その画像Igの群により両リングA、Bの交線対(LA1、LA2)、(LB1、LB2)上の各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を同時に算出する。またステップ107〜108において、大径筒状リングAの各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を結ぶ多角形の周囲長さQと所定内周長さGとの縮尺Sに基づき、両リングA、Bの各計測視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を補正して補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)を求める。ステップ108において一対の交線LA1、LA2毎に求まる縮尺Sが相違する場合も考えられるが、その相違は極めて小さいと考えられるので、何れかの縮尺S又はその平均値等を用いればよい。
図2のステップ109において、コンピュータ13に設けた角度計測手段23(図1(B)参照)により、大径筒状リングAの交線対(LA1、LA2)上の各計測視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)とその交線対(LA1、LA2)の間隔dとから大径筒状リングAの中心軸CAの傾斜を求め、小径筒状リングBの交線対(LB1、LB2)上の各計測視標Tkの補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)とその交線対(LB1、LB2)の間隔dとから小径状リングAの中心軸CAの傾斜を求め、両リングA、Bの中心軸CA、CBの交差角度δを計測する。この交差角度δを用いれば、両リングA、Bの交線LA、LB1の歪み形状から交線LA、LB1以外の歪み形状を推定することができるので、両リングA、Bの間の中心軸CA、CB方向の任意位置におけるクリアランスe、すなわち中心軸CA、CB方向のクリアランスeの変位を計測することができる。また、小径筒状リングBの厚さをコンピュータ13の記憶手段15に記憶しておけば、小径筒状リングBの内周面の歪み形状から外周面の歪み形状を算出することができ、例えばスキンプレート2の内周面とセグメントリング7の外周面と間の中心軸C方向のテールクリアランスを計測することもできる。
本発明は、画像Ig中に座標軸の基準となるような視標を必要としないので撮影上の障害物が存在する見通しの悪い条件下でも筒状リングA、Bの歪み形状を計測することが可能であるが、撮影上の障害物が多い場合は、多くの計測視標Tkの像に切欠けが発生して計測精度が低下するおそれがある。本発明の歪み形状の計測では、二次元座標が精確に検出できない切欠け視標像を除外することが望ましいが(ステップ105)、バンドル調整及び補正処理(図2のステップ106〜107)の演算精度を高めるためには計測視標Tkの数を増やす必要がある。図1(B)の実施例では、切欠け視標像から誤差の少ない二次元座標を検出する座標抽出手段20を設け、計測視標Tkの数を増やすことによって歪み形状の計測精度の向上を図っている。
座標抽出手段20を用いる場合は、図2のステップ102において記憶手段15に各計測視標Tkの所定形状と取り付け向きとを記憶し、ステップ105において撮像位置・姿勢検出手段19により各画像Ig内の無切欠け視標像の二次元座標(x',y')と各視標Tkの角度位置座標(X',Y',Z')とから各画像Igの撮影位置(X'0,Y'0,Z'0)及び姿勢(ω',φ',κ')を検出したのち、その撮影位置(X'0,Y'0,Z'0)及び姿勢(ω',φ',κ')と、各視標Tkの角度位置角度位置座標(X',Y',Z')と、各計測視標Tkの所定形状及び所定取り付け向きとから、座標抽出手段20により切欠け視標の仮想画像It(以下、テンプレートItということがある)を作成する。テンプレートItは、筒状リングAの各計測視標Tkの像を大体の位置に大体の形状として表している。そのテンプレートItと撮影画像Igとの重ね合わせにより切欠け視標像の二次元座標(x',y')を抽出する。
図7は、座標抽出手段20による切欠け視標像の二次元座標(x',y')の抽出方法の一例を示す。座標抽出手段20は、撮影画像Ig(又は撮像位置・姿勢検出手段19により作成された2値化画像。図面では実画像と表している。)とテンプレートItとを重ね合わせ、撮影画像Ig内の切欠け視標像がテンプレートItと重なるようにテンプレートItの位置を調整し、テンプレートItの調整位置から切欠け視標像の二次元座標(x',y')を抽出する。
図7(A)は、テンプレートItを撮影画像Ig内の切欠け視標像の外縁位置に一致させる方法である。とくに、撮影画像Ig内の切欠け視標像における切欠け存在部位が把握できる場合に有効な方法である。例えば、撮影画像Ig内の視標像の右下部分に切欠けが存在する場合に、切欠け視標像の上縁部及び左縁部がテンプレートItと重なるようにテンプレートItの位置を調整し、調整後のテンプレートItの重心位置から切欠け視標像の二次元座標(x',y')を抽出する。簡便な方法であるが、障害物の位置等を把握しておく必要があるため自動化は難しい。
これに対し図7(B)は、テンプレートItの輪郭が撮影画像Ig内の切欠け視標像の輪郭と最も一致するようにテンプレートItの位置を調整する方法である。撮影画像Ig内の切欠け視標像の周辺でテンプレートItを1画素ずつ移動させながら、両者の輪郭形状が最も合う位置を探し出す。つまり、輪郭を構成する画素境界の重複する数(辺)が最も多い場合に相当する。輪郭形状が最も合う位置に調整したテンプレートItの重心位置から切欠け視標像の二次元座標(x',y')を抽出する。処理にやや時間がかかるが、障害物の位置等が把握できなくても適用できるので、自動化処理が可能である。
座標抽出手段20で切欠け視標像の二次元座標(x',y')を抽出することにより、計測視標Tkの数を増やしてバンドル調整及び補正処理の演算精度を高めることができる。具体的には、図2のステップ106において撮影画像Ig内の無切欠け視標像の二次元座標(x',y')と切欠け視標像の抽出二次元座標(x',y')とに基づいてバンドル調整により各視標Tkの三次元座標(X,Y,Z)を算出し、ステップ107において座標補正手段22により補正三次元座標(Xs,Ys,Zs)を求める。撮影条件にもよるが、座標抽出手段20により計測視標Tkの数を10%程度増やすことができれば、バンドル調整の演算精度を理論上約5%向上させることができる。
本発明による歪み形状計測方法の一実施例の説明図である。
本発明による歪み形状計測方法の一実施例の流れ図である。
本発明による歪み形状計測方法の他の実施例の説明図である。
本発明における各視標の三次元座標の補正方法の説明図である。
各視標の三次元座標の補正に用いるパラメタの説明図である。
本発明による計測結果の一例を示す説明図である。
画像中の切欠け視標像の二次元座標を抽出する方法の説明図である。
従来のバンドル調整法を用いた画像計測方法の流れ図の一例である。
図8の画像計測方法に用いるプログラム及び視標の説明図である。
共線条件式の説明図である。
バンドル調整法の説明図である。
従来のセグメントリング形状の画像計測方法の説明図である。
符号の説明
1…シールド掘進機 2…大径筒状リング(スキンプレート)
3…シールドジャッキ 4…カッタヘッド
5…カッタチャンバ 6…エレクタ
7……小径筒状リング(セグメントリング)
8…セグメントピース
10…可動撮像器 11…光源
12…移動手段 13…コンピュータ
14…出力装置 15…記憶手段
16…入力手段 17…検出手段
18…二次元座標検出手段 19…撮像位置・姿勢検出手段
20…二次元座標抽出手段 21…座標算出手段
22…座標補正手段 23…角度計測手段
24…クリアランス計測手段
25…出力手段
30…計測対象 31…視標像座標検出手段
32…撮影位置・姿勢検出手段
33…バンドル調整手段 34…撮影機位置・姿勢制御手段
36…レーザ距離計
40…座標軸用反射素材 41…ID用反射素材
A…(大径)筒状リング B…(小径)筒状リング
C…中心軸 d…断面間距離
e…クリアランス F…直交断面
G…内周長さ
Ig…撮影画像(入力画像)
It…仮想画像(テンプレート)
L…交線 Q…多角形の周囲長さ
R…筒状リング内径 S…縮尺
Tk…計測視標 Ts…補助視標
Ta…補助視標 Tb…基準視標群