JP4061435B2 - ゴルフボールの製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフボールの製造方法に関し、更に詳述すると、安定した硬度、初速度を長期に亘って維持することができ、品質の安定したゴルフボールを確実に得ることができるゴルフボールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ゴルフボールには、単層の架橋ゴム成形物からなるワンピースソリッドゴルフボール,架橋ゴム成形物からなる1層のコア又は中心コアに1層又は複数層の外被コアを包囲してなる多層コアの周囲に1層又は複数層のカバーを被覆したツーピース又はマルチピースソリッドゴルフボール,架橋ゴム成形物からなるソリッドセンターの周囲に糸ゴムを巻回した糸巻きコアをカバーで被覆した糸巻きゴルフボールなどの種類がある。
【0003】
従来、これらのゴルフボールを製造する場合、基材ゴムに充填剤,架橋剤,老化防止剤などの添加剤を添加して混練したゴム組成物を架橋成形して架橋ゴム成形物を得、これをワンピースソリッドゴルフボールとし、又はこれをコアとしてカバーを被覆形成することによりツーピース又はマルチピースソリッドゴルフボールを製造したり、或いはこれをセンターとして糸ゴムを巻回し、得られた糸巻きコアにカバーを被覆形成して糸巻きゴルフボールとすることが行われている。
【0004】
この場合、工業的には、製造効率の観点から上記ゴム組成物をある程度大量に調製して保存しておき、或いはゴム組成物を架橋成形して得たソリッドコアやソリッドセンターを保存しておき、受注状況や出荷状況に応じて、これらを架橋成形機或いは糸巻き機,カバー成形機に供給して最終製品のゴルフボールを製造することが行われている。
【0005】
ここで、ワンピースソリッドゴルフボールの場合には、ゴム組成物の組成,架橋条件などにより、その硬度や反発性を調整することが行われ、またツーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボールや糸巻きゴルフボールでも同様にコアやセンターの硬度、反発性を調整してボールの性能を適正化することが行われている。
【0006】
この場合、従来から架橋ゴムの硬度や反発性が水分含有量によって変化することが知られており、ゴルフボールの製造においてもゴム組成物中の水分量を調整することが提案されている(特公昭56−26422号公報)。しかしながら、ゴム組成物の保存時や架橋成形後の架橋ゴムにも吸湿は起こり、ゴム組成物や架橋ゴム成形物の水分含有量は少しずつ増加する。従って、得られるゴルフボールの性能にばらつきが生じる場合がある。また、製造時に所定の性能を有していても出荷,販売時までの保管時に吸湿して初期の性能が得られなくなることも考えられ、更に乾燥環境下に保存して保管時の吸湿を防止したとしても、販売後ユーザーによる保管環境が悪ければ使用時には性能の劣化が生じていることも考えられる。
【0007】
また、このような製造後の吸湿による性能の劣化を防止するため、ツーピースソリッドゴルフボールやマルチピースソリッドゴルフボールでは、コアとカバーとの間にコアを取り囲むようにして水蒸気透過率の低い水分障壁層を設け、コアの吸湿を防止することも提案されている(特開平7−67986号公報)。
【0008】
しかしながら、このような水分障壁層を設けることは、工程数を増やし、コスト高を招くこととなり、またこの水分障壁層のためにコアやカバーの設計が非常に複雑になるという問題点がある。また、このような方法ではゴルフボールとして完成した後の吸湿による性能劣化は防止することができるかもしれないが、製造時に上述したような性能のばらつきが生じていたのではその技術的価値は非常に少ないものとなってしまう。更に、この方法はワンピースソリッドゴルフボールには採用し得ないものである。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ワンピースソリッドゴルフボール,ツーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボールやソリッドセンターを有する糸巻きゴルフボールなどの架橋ゴム成形物を構成要素として具備したゴルフボールを得る場合に、煩雑な作業や工程数の増加などを招くことなく、安定した硬度,反発性を長期に亘って維持する架橋ゴム成形物を得ることができ、品質の安定したゴルフボールを確実に製造することができるゴルフボールの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ゴム組成物を架橋成形して架橋ゴム成形物を得ることにより、ワンピースソリッドゴルフボール,ツーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボールやソリッドセンターを有する糸巻きゴルフボールなどの架橋ゴム成形物を構成要素としたゴルフボールを製造する場合に、上記ゴム組成物中に含まれる成分を温度80〜130℃、相対湿度60%以下の条件で混練機内の排気を行いながら混練し、そのゴム組成物中の水分含有量を700ppm以下に調整し、次いで、上記ゴム組成物を架橋成形し、上記架橋ゴム成形物の架橋成形終了後24時間以内の水分含有量を500ppm以下とすることにより、初期性能にばらつきのない高品質のゴルフボールを確実に得ることができ、しかもその後吸湿しても硬度,反発性の変化は比較的少なく、安定した性能を長期に亘って維持することができることを見出した。
【0011】
即ち、本発明者は、上記ゴルフボール用の架橋ゴム成形物の水分含有量と硬度及び反発性との関係について、後述する実施例,比較例に示したように、次のような実験を行った。ゴム組成物を架橋成形してコアを製造し、これを乾燥環境下或いは高湿環境下に保存して吸湿させ、水分含有量の異なる数種のコアを得、一方ゴム組成物の状態で乾燥環境下或いは高湿環境下に保存してゴム組成物を吸湿させ、これを架橋成形することにより、水分含有量の異なる数種のコアを得、これらコアの硬度と反発性を測定し、水分含有量と硬度及び反発性との関係を調べたところ、図1,2に示した結果が得られた。なお、硬度は100kg定荷重時の変形量(mm)、反発性はコアをUSGAのゴルフボール初速度試験機同等品を用いてヘッドスピード43.9m/sで打撃したときの初速度(m/s)により評価した。
【0012】
その結果、図1,2に示されているように、架橋成形後吸湿したコアはその硬度及び初速度(反発性)の変化が比較的緩やかで、変化の度合いも非常に小さいのに対して、ゴム組成物の状態で吸湿したコアは、架橋成形後に吸湿したコアとは逆に水分含有量が増えるに従って硬度が軟らかくなると共に、硬度変化の度合い及び初速度(反発性)が低下する度合いが大きく、しかも急激であることが分かった。本発明者は、この結果に基づいて上記目的を達成するため種々検討を行った結果、ゴム組成物の状態での吸湿を可及的に防止して、架橋成形時の水分含有量が低い架橋ゴム成形物とすること、具体的には架橋成形直後の架橋ゴム成形物の水分含有量を500ppm以下、好ましくは200ppm以下、更に好ましくは150ppm以下と少なくすることにより、設計上の硬度及び反発性を確実に再現することができると共に、その後この架橋ゴム成形物が吸湿しても硬度や反発性の劣化は非常に少なく、この架橋ゴム成形物を用いてゴルフボールを構成することにより、性能のばらつきが殆どない高品質なゴルフボールを確実に得ることができ、しかもこのゴルフボールは保管環境にかかわらず長期に亘って安定した性能を発揮し得ることを見出し、本発明を完成したものである。
【0013】
従って、本発明は、ゴム組成物を架橋成形した架橋ゴム成形物を構成要素として含むゴルフボールを製造する方法において、上記ゴム組成物が、
(A)シス構造を少なくとも40重量%有する1,4−シス−ポリブタジエンを少なくとも80重量%有する基材ゴム 100重量部、
(B)架橋剤 0.1〜2重量部、
(C)アクリル酸の亜鉛塩又はマグネシウム塩 5〜50重量部、
(D)無機質充填剤 0〜100重量部
を含有し、これら成分を温度80〜130℃、相対湿度60%以下の条件で混練機内の排気を行いながら混練し、混練したゴム組成物中に含まれる水分含有量を700ppm以下に調整し、次いで、上記ゴム組成物を架橋成形し、上記架橋ゴム成形物の架橋成形終了後24時間以内における水分含有量を500ppm以下とすることを特徴とするゴルフボールの製造方法を提供する。また、上記ゴム組成物を保存したものを架橋成形するに際しては、ゴム組成物の製造後、温度4〜25℃、相対湿度60%以下の環境下で2日間以上保存したゴム組成物を架橋成形して架橋ゴム成形物を得るようにすることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールの製造方法は、上述したように、ワンピースソリッドゴルフボール、ツーピースソリッドゴルフボール等の1層コアに1層又は2層以上のカバーを被覆したソリッドゴルフボールのコア、中心コアに1層又は2層以上の外被コアを包囲した多層コアに1層又は2層以上のカバーを被覆したソリッドゴルフボールの中心コアや外被コア、糸巻きゴルフボールのソリッドセンターなど、ゴルフボールを構成する架橋ゴム成形物をゴム組成物から架橋成形して得る場合に、この架橋ゴム成形物の架橋成形直後における水分含有量が500ppm以下となるようにしたものである。
【0015】
ここで、上記架橋ゴム成形物を得るためのゴム組成物としては、ワーピースソリッドゴルフボール、ツーピース以上のソリッドゴルフボールのソリッドコア(1層コアや中心コア、外被コア)、或いは糸巻きゴルフボールのソリッドセンターを得るために従来から用いられている通常のゴム組成物を用いることができる。
【0016】
この組成物としては、基材ゴム、架橋剤、共架橋剤、無機充填剤等を用いて形成することができる。この場合、基材ゴムとしては従来からソリッドゴルフボールに用いられている天然ゴム及び/又は合成ゴムを使用することができるが、本発明においては、シス構造を少なくとも40%有する1,4−シス−ポリブタジエンが特に好ましい。この場合、所望により該ポリブタジエンに天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等を適宜配合してもよい。
【0017】
また、架橋剤としてはジクミルパーオキサイドやジ−t−ブチルパーオキサイドなどのような有機過酸化物等が例示される。この架橋剤の配合量は、通常は基材ゴム成分100重量部に対して0.1〜2重量部、好ましくは0.5〜1.8重量部程度とされる。
【0018】
共架橋剤としては、特に制限されず、不飽和脂肪酸の金属塩、特に炭素原子数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸(例えばアクリル酸、(メタ)アクリル酸等)又はその亜鉛塩やマグネシウム塩等の塩が例示されるが、アクリル酸亜鉛やアクリル酸マグネシウムが好適である。なお、共架橋剤の配合量は適宜設定され、通常は基材ゴム成分100重量部に対して5〜50重量部、好ましくは15〜35重量部程度とされる。更に、無機充填剤としては酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、炭酸カルシウム及び炭酸亜鉛等が例示されるが、酸化亜鉛、硫酸バリウムが一般的であり、その配合量はコアとカバーの比重、ボールの重量規格等に左右され、特に制限されないが、通常は基材ゴム100重量部に対して0〜100重量部、好ましくは0.5〜40重量部である。なお、本発明においては上記架橋剤や酸化亜鉛、硫酸バリウム等の充填剤の配合割合を適宜調整することにより、コア全体の硬度及び重量を最適値に調整することができる。また、α,β−不飽和カルボン酸を用いた場合、酸化亜鉛等の金属塩は配合、混練中に反応し、α,β−不飽和カルボン酸の亜鉛塩等を形成する。しかし、この場合には混練中に水分が発生しやすいので、共架橋剤としてはα,β−不飽和カルボン酸の塩を用いた方が好ましい。更に、ゴム組成物には老化防止剤等の添加剤を配合し得る。
【0019】
上記成分は通常の混練機、例えばバンバリーミキサーやロール等を用いて混練し、ゴム組成物(混練物)を形成することができる。
【0020】
ここで、上記成分を混練する前に各成分中の水分を低く抑えるように保管すべきであり、具体的には、混練物(ゴム組成物)中の水分を700ppm以下となるように調整する。保管は水分不透過性又は透過しにくい材質からなる容器で密封して行う。混練に際し各成分を計量したらなるべく早く混練を行う。具体的には各成分の計量から混練開始までを6時間以内に行うことが好ましい。
【0021】
混練する際には、混練温度80〜130℃、室内の相対湿度を60%以下にすることが必要であり、特に相対湿度を40%以下に保つことが好ましい。混練時にはニーダー等の混練機チャンバー内の排気を行うことが必要であり、具体的には50〜100m3/分の排気を行いながら混練することがよい。これにより混練物中の余分な水分が系外に放散される。
【0022】
また、上記ゴム組成物を混練直後に架橋成形することが好ましいが、2日以上、特に4日以上保存しておく場合は、4〜25℃、特に4〜18℃の温度で、相対湿度60%以下、特に5〜40%の環境下に保存しておくことが推奨され、これによって架橋成形物の水分量を上記範囲に保持し得る。湿度を上記のように低く保つためには、プラスチック製の容器又は袋にシリカゲル等の乾燥剤と共に組成物を密封することが好ましい。
【0023】
更に、上記ゴム組成物を混練後5日以上、特には7日以上保存した場合には、このゴム組成物のみからは架橋成形物を製造しない方が好ましい。この場合には、新しい混練物に対し、長期間保存したゴム組成物を混合して用いることが好適である。混合割合は保存日数にもよるが、新しく混練した組成物100重量部に対して5〜50重量部、特に5〜20重量部である。もし、この長期間保存したゴム組成物のみから架橋成形物を製造する場合には上述した条件での再混練処理、即ち80〜130℃、湿度60%以下の条件でより好ましくは上記のように排気しながら再混練を行って水分含量を低下させることが好ましい。
【0024】
上記ゴム組成物を架橋成形してワンピースソリッドゴルフボール、ソリッドコア、ソリッドセンターを得る方法及び条件は通常の方法により行うことができ、具体的には、金型内に上記ゴム組成物を所定の形状に仕込んだり、射出成形機によって供給し、その後プレス成形では140〜200℃で8〜40分間、好ましくは150〜180℃で10〜25分間加熱加圧することにより架橋成形を行うことができる。
【0025】
この場合、上記ゴム組成物の組成や架橋成形条件を適宜選定することにより、得られる架橋ゴム成形物の硬度や反発性を調整して所望の性能を有するワンピースソリッドゴルフボール,ソリッドコア,ソリッドセンターを設計することができる。
【0026】
本発明の製造方法は、この架橋成形直後における架橋ゴム成形物の水分含有量が500ppm以下、好ましくは200ppm以下、更に好ましく150ppm以下となるように管理するものであり、水分含有量が500ppm以下であれば水分含有量の変化による硬度や反発性の変化は殆どなく、設計通りの性能を有する架橋ゴム成形物を確実に得ることができ、品質の安定したゴルフボールを効率よく製造することができ、更に200ppm以下、特に150ppm以下とすれば、品質及び性能の安定性がより高いものとすることができる。この場合、架橋成形後の水分含有量が500ppmを超えていると、硬度が軟らかくなり、反発性は低下し、設計上の性能が得られなくなる可能性が高い。
【0027】
なお、本発明でいう架橋成形直後の水分含有量とは、架橋成形終了後24時間以内のことであり、その後の吸湿により水分含有量が500ppmを超えても差し支えない。
【0028】
本発明のゴルフボールの製造方法は、このように水分含有量を管理して得られた架橋ゴム成形物を用いてゴルフボールを製造するものであり、この架橋ゴム成形物からゴルフボールを得る方法は、公知の方法とすることができる。例えば、ワンピースソリッドゴルフボールを製造する場合には、上記架橋ゴム成形物を成形する際に表面にディンプルを形成し、得られた架橋ゴム成形物にトリミング処理,表面研磨処理を施した後、塗装を施し、ワンピースソリッドゴルフボールとすることができる。また、ツーピースソリッドゴルフボール等の複数層のソリッドゴルフボールを製造する場合には、トリミング処理,表面研磨処理を施した上記架橋ゴム成形物をコアとし、その周囲に公知の方法に従って1層又は複数層のカバーを成形し、更にトリミング処理,表面研磨処理を施した後、塗装を施し、ツーピースソリッドゴルフボール等の複数層ソリッドゴルフボールとすることができる。更に、糸巻きゴルフボールを製造する場合には、トリミング処理,表面研磨処理を施した上記架橋ゴム成形物をソリッドセンターとし、これに糸ゴムを巻回して糸巻きコアを得、その周囲に公知の方法に従ってカバーを成形し、更にトリミング処理,表面研磨処理を施した後、塗装を施し、糸巻きゴルフボールとすることができる。
【0029】
また、本発明の方法は、中心コアに1層又は2層以上の外被コアを包囲したソリッドゴルフボールに適用することができ、中心コアと外被コアとのいずれか一方又は双方を上記架橋ゴム成形物にて成形することができるが、中心コアと外被コアとの双方を上記架橋ゴム成形物にて形成することが好ましい。この場合、中心コアは上記ツーピースコアと同様にトリミング処理、表面研磨を行い、その後外被コアを射出成形又はプレス成形にて加熱加圧して多層コアを形成し、その表面(外被コアの表面)も同様にトリミング処理、表面処理を行うことが好ましい。
【0030】
上述のように、本発明の製造方法によれば、上記架橋ゴム成形物の架橋成形直後の水分含有量を500ppm以下、好ましくは200ppm以下、更に好ましくは150ppm以下としたことにより、設計通りの性能を有する高品質なゴルフボールを確実に得ることができるものである。この場合、上記架橋ゴム成形物は、その保管状況によっては製造後吸湿して水分含有量が500ppmを超えることもあるが、架橋成形24時間後は水分含有量が2000ppmぐらいまで高くなっても、硬度や反発性の変化は非常に少なく、初期の性能を十分に発揮し得るものである。
【0031】
なお、市販のツーピースボールを調べたところ、通常の室内保管では1年間でのコアへの吸湿量は1300〜2000ppmであり、約2000ppmを超えると吸湿のスピードが落ち、2年経過しても2200ppmであった。
【0032】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されない。
[実施例I,比較例]
下記成分をよく混練してゴム組成物を得た。
ゴム組成物
(*1)日本合成ゴム(株)製 BR01(商品名)
(*2)大内新興化学工業(株)製 ノクラックNS−6(商品名)
(*3)日本油脂(株)製 パークミルD(商品名)
【0033】
得られたゴム組成物を、表1に示す条件下に所定日数保存した後、これを架橋成形して同表に示した水分含有量を有するソリッドコアを得た。このソリッドコアについて硬度及び反発性を測定した。結果を表1に示す。
なお、硬度は100kg定荷重時の変形量(mm)、反発性はコアをUSGAのゴルフボール初速度試験機同等品を用いてヘッドスピード43.9m/sで打撃したときの初速度(m/s)により測定した。また、水分含有量は、各ソリッドコアから重量0.7〜1.2g,表面積5.5〜6.6cm2のサンプルを得、JIS K0113(1990)「電位差、電流、電量、カールフィッシャー滴定方法通則のカールフィッシャー滴定方法中の電量滴定方法」に従って測定した。なお、上記通則中の「8.4個別規格に記載すべき事項」については以下の通りとした。
【0034】
(1)測定対象成分及び濃度範囲
測定対象成分:ガス水分測定 濃度範囲:10μg〜100mg
(2)試料の採取方法及び保存方法
表1に記載した保存条件及び放置日数の球状サンプルを実質的に等分するように4分割したもの(1/4球)を更に3回2等分割して略四角錐形状としたものを測定用サンプルとし、サンプル採取まで5時間以内をテスト条件とし、サンプル採取後は直ぐに水分測定した。
(3)被滴定溶液の調製方法
発生電極液:クーロマットA(市販品、製造元Riedel−de Haen、輸入元ヘキストジャパン(株)、発売元林純薬工業(株))100mlにエチレングリコール20mlを加える。
対極液:クーロマットC(同上)
(4)滴定方法:カールフィッシャー電量滴定方式
(5)装置及び試薬
キャリアガスとして窒素を用いる。
(6)測定条件
温度:200℃
滴定速度(Control gain):5
自動終点検出もしくは時間限20分による水分測定値
終点決定用のレベル値(End Level):0.1
Stable状態の表示をさせる△μgH2O/min(1分間当りのBG偏差)値(Stable;△μg):1.5
バックグラウンド自動補正(Blank;on)
バックパージ 180sec
セルパージ 120sec
(7)測定回数
各実施例 n=2×1 回
【0035】
【表1】
【0036】
表1の結果から、架橋成形直後の水分含有量が150ppmを超えると、硬度が軟らかくなり始めるが、366.2ppm(実施例6)の水分含量までは、初速の低下はほとんどない。しかしながら、水分含有量が500ppmを超える比較例1〜3では反発性の低下が顕著になることが確認された。
【0037】
[実施例II]
上記の実施例Iと同様のゴム組成物を調製した。
得られたゴム組成物を、直ちに架橋成形してソリッドコアを得、得られたソリッドコアを表2に示した条件下に所定日数保存した後、各ソリッドコアについて上記と同様にして硬度,反発性及び水分含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2の結果から、架橋成形24時間後であれば、500ppmを超えるまで水分量が上がっても硬度,初速度の変化は極く僅かであり、初期の性能を維持していることが確認された。
【0040】
上記表1,2に示した結果から、硬度と水分との関係、初速度と水分との関係を示すグラフを作成した。結果を図1,2に示す。図1,2から分かるように、架橋成形24時間後に吸湿したコアはその硬度及び初速度(反発性)の変化が比較的緩やかで、変化の度合いも非常に小さいのに対して、ゴム組成物の状態で吸湿したコアは、架橋成形後に吸湿したコアとは逆に水分含有量が増えるに従って硬度が軟らかくなると共に、硬度が軟らかくなる度合い及び初速度の(反発性)が低下する度合いが大きく、しかも急激である。従って、ゴム組成物の状態での吸湿を可及的に防止して、架橋成形時の水分含有量が低い架橋ゴム成形物とすることにより、設計上の硬度及び反発性を確実に再現することができると共に、その後この架橋ゴム成形物が吸湿しても硬度や反発性の劣化は非常に少なく、この架橋ゴム成形物を用いてゴルフボールを構成することにより、性能のばらつきが殆どない高品質なゴルフボールを確実に得ることができ、しかもこのゴルフボールは長期に亘って安定した性能を発揮し得ることが分かる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のゴルフボールの製造方法によれば、安定した硬度,反発性を長期に亘って維持する架橋ゴム成形物を得ることができ、品質の安定したゴルフボールを確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ソリッドコアの水分含有量と硬度との関係を示すグラフである。
【図2】ソリッドコアの水分含有量と初速度との関係を示すグラフである。
Claims (8)
- ゴム組成物を架橋成形した架橋ゴム成形物を構成要素として含むゴルフボールを製造する方法において、上記ゴム組成物が、
(A)シス構造を少なくとも40重量%有する1,4−シス−ポリブタジエンを少なくとも80重量%有する基材ゴム 100重量部、
(B)架橋剤 0.1〜2重量部、
(C)アクリル酸の亜鉛塩又はマグネシウム塩 5〜50重量部、
(D)無機質充填剤 0〜100重量部
を含有し、これら成分を温度80〜130℃、相対湿度60%以下の条件で混練機内の排気を行いながら混練し、混練したゴム組成物中に含まれる水分含有量を700ppm以下に調整し、次いで、上記ゴム組成物を架橋成形し、上記架橋ゴム成形物の架橋成形終了後24時間以内における水分含有量を500ppm以下とすることを特徴とするゴルフボールの製造方法。 - 上記架橋ゴム成形物を単層構造としてワンピースソリッドゴルフボールを製造するようにした請求項1記載のゴルフボールの製造方法。
- 上記架橋ゴム成形物をコアとし、このコアの周囲に1層又は2層以上のカバーを被覆して複数層構造のソリッドゴルフボールを製造するようにした請求項1記載のゴルフボールの製造方法。
- 中心コアの周囲に1層又は2層以上の外被コアを包囲して多層コアを形成すると共に、この多層コアの周囲に1層又は2層以上のカバーを被覆した複数層構造のソリッドゴルフボールを製造するに当り、上記中心コアと外被コアとのいずか一方又は双方を上記架橋ゴム成形物にて形成するようにした請求項1記載のゴルフボールの製造方法。
- 上記架橋ゴム成形物をセンターとし、このセンターの周囲に糸ゴムを巻回して糸巻きコアを得、この糸巻きコアの周囲にカバーを被覆して糸巻きゴルフボールを製造する請求項1記載のゴルフボールの製造方法。
- ゴム組成物の製造後、温度4〜25℃、相対湿度60%以下の環境下で2日間以上保存したゴム組成物を架橋成形して架橋ゴム成形物を得るようにした請求項1乃至5のいずれか1項記載のゴルフボールの製造方法。
- 上記ゴム組成物を混練する前に、水分不透過性又は透過しにくい材質からなる容器で上記ゴム組成物を密封するようにした請求項1乃至6のいずれか1項記載のゴルフボールの製造方法。
- 上記ゴム組成物の各成分の計量から混練開始までの作業を6時間以内に行うようにした請求項1乃至7のいずれか1項記載のゴルフボールの製造方法。
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