JP4060999B2 - 消防用噴霧ノズル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は消防用の放水ノズルに関するものであって、特に噴霧放水するノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
古くから、火災を消火するために水が使用されてきているが、近年高圧の水を霧状に噴霧して放水し、その水によって火元を冷却すると共に、水が蒸発して生じた水蒸気により火元を覆い、空気の供給を遮断して消火することが広く行われるようになってきている。
【0003】
かかる噴霧放水による消火は、棒状の水を火元に直射して消火する旧来の方式と異り、消火のために要する水の量が少なくて済み、しかもその水を微細な水滴の状態で放出するので、放水流の直射による衝撃も少なく、水損を大幅に軽減することができる。
【0004】
また放出する水の量が少なく、霧状の水による冷却効果と水蒸気による窒息効果によって消火するので、従来は水による消火はできないとされていた油火災に対しても、有効に消火することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらかかる噴霧放水は、ノズル孔の形状によって噴射水流の形状を変化させることができ、火災の形態に応じた噴射水流を形成することができる半面、火災の状態によって適切な噴射水流を選択しなければ、有効な消火活動を期待できないという問題があった。
【0006】
例えば消防士が家屋に進入しつつ消火活動を行う場合には、部屋の入口付近から奥の火元に向かって放水することが多く、かかる場合には噴射水流の拡がり角度が小さく、長い距離にまで噴射水流を届かせることのできる放水形式を選択する必要がある。
【0007】
また油火災の場合には、火元の油に大量の水が混入することを避けつつ、噴射水流で炎を上から押え込み、冷却効果と窒息効果によって消火し、且つ再着火しにくい放水形式として、横方向にマット状に拡がった扇形の噴射水流を採用するのが好ましいとされている。
【0008】
しかしながらこのような拡がり角度の小さい直噴水流と横方向に拡がった扇形噴射水流とは、ノズル先端のノズル孔の形状が異り、単一のノズル孔で兼用することはできない。また消火活動を行いながら、異るノズル孔を有するノズル金具に交換することは不可能である。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、拡がり角度の小さい直噴水流と横方向に拡がった扇形噴射水流とを切り替えて噴射することのできる消防用ノズルを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
而して本発明は、送水ホースの先端に取り付けられる放水ノズルであって、選択的に切り替え可能の二つの水流路を有し、各水流路の先端にそれぞれ複数のノズル孔が形成されており、第一の水流路に接続されたノズル孔は全てが直噴噴射水流を形成する直噴ノズル孔であって、各直噴ノズル孔が他の直噴ノズル孔に対してそれら直噴ノズル孔の中心軸線方向が若干の角度をもって拡がる方向に形成され、第二の水流路に接続されたノズル孔は全てがほゞ水平方向に拡がり角度を有する扇形噴射水流を形成する扇形ノズル孔であって、各扇形ノズル孔が他の扇形ノズル孔に対してそれら扇形ノズル孔の中心軸線方向が水平方向に角度をもって拡がる方向に形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、前記複数の直噴ノズル孔の軸線方向の合成ベクトルは、ノズル金具の中心軸線方向よりも下向きであることが好ましく、また前記複数の扇形ノズル孔の軸線方向の合成ベクトルは、ノズル金具の中心軸線方向よりも上向きであることが好ましい。
【0012】
また本発明は、送水ホースの先端に取り付けられる放水ノズルであって、ノズル金具の先端面に、そのほゞ中心位置及びそれを取り巻く五か所にノズル孔を形成し、前記中心位置のノズル孔はノズル金具の中心軸線にほゞ一致する噴射水流を形成すると共に、周囲のノズル孔はノズル金具の中心軸線方向から若干放射状に拡がる噴射水流を形成し、前記中心軸線のノズル孔及びそれよりも下方に位置する二つの周囲のノズル孔は直噴噴射水流を形成する直噴ノズル孔であり、残りの三つの周囲のノズル孔は、ほゞ水平方向に拡がり角度を有する扇形噴射水流を形成する扇形ノズル孔であって、前記直噴ノズル孔と扇形ノズル孔とはそれぞれ別個の水流路に接続され、それらの水流路のいずれかに切り替えて送水可能であることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図面は本発明の消防用ノズル1の実施の一形態を示すものである。2は放水ガンであって、後部に接続された送水ホース3から供給された水を放水口4から放水するようになっており、その放水は引き金5でコントロールされるようになっている。
【0014】
前記放水口4には接続管6を介して切り替えバルブ7が接続されており、当該切り替えバルブ7において、放水口4から供給される水を二つの水流路8,9のいずれかに切り替えて供給するようになっている。10はその切り替えバルブ7における切り替えレバーである。
【0015】
前記水流路8,9を形成する流路管11の先端には、ノズルのノズル金具12が取り付けられている。当該ノズル金具12の後部には上下に二つの貯水室13,14が形成されており、当該貯水室13,14はそれぞれ前記二つの水流路8,9に接続されている。
【0016】
なおこの明細書において、「上」及び「下」とは、消防士が本発明の消防用ノズル1を構えて通常の放水姿勢を採ったときの、消防用ノズル1における上方及び下方を言い、その他の方向や姿勢を示す用語も、特に断らない限り全て消防士の通常の放水姿勢を基準として記述する。
【0017】
ノズル金具12は円筒状であってその先端面は、中心部においてはノズル金具12の中心軸に対して垂直面15を形成し、外周部付近においては外周が僅かに後方に向かって傾斜した傾斜面16を形成している。
【0018】
そしてノズル金具12の先端面には、その中心に一つ、それを取り巻いてその周囲の前記傾斜面16に五つの合計六つの陥凹部17が形成されており、各陥凹部17にはそれぞれノズル孔18を穿設したノズルチップ19が取り付けられている。そのノズルチップ19は、そこに形成されたノズル孔18の軸線が、それぞれそれを取り付けた位置の垂直面15及び傾斜面16に対してほゞ垂直に交わるように取り付けられている。
【0019】
而して前記中心の陥凹部17に取り付けられたノズルチップ19及びそれより下方に位置する二つのノズルチップ19においては、ノズルチップ19aの先端面が平面であってその中心にノズル孔18が開口した、直噴ノズル孔18aを形成している。当該直噴ノズル孔18aから噴出した水は、微細な水滴に分割されつつ主として前方に向かって飛び、拡がり角度の小さい円錐状の直噴噴射水流となって噴霧される。
【0020】
またノズル金具12の中心よりも上方に位置する三つのノズルチップ19bは、当該ノズルチップ19bの先端面を横切って水平方向に延びる溝20が刻設されており、当該溝20の底に前記ノズル孔18が開口した、扇形ノズル孔18bを形成している。
【0021】
かかる扇形ノズル孔18bから噴出した水は、微細な水滴に分割されつつ、上下方向には溝20の側壁によって拡がりが抑制され、横方向には溝20に沿って拡がることができるので、上下方向には拡がり角度が小さく横方向には大きい広がり角度を有する、扇形の噴射水流となって噴霧される。
【0022】
そして前記直噴ノズル孔18aは第一の水流路8に接続された第一の貯水室13に、また扇形ノズル孔18bは第二の水流路9に接続された第二の貯水室14に、それぞれ連通しており、前記切り替えレバー10を操作して切り替えバルブ7を切り替えることにより、直噴ノズル孔18a又は扇形ノズル孔18bのいずれかから放水するようになっている。
【0023】
【作用】
而して本発明の消防用ノズル1を使用するには、本発明の消防用ノズル1を把持して引き金5を操作することにより、ノズル金具12の先端から噴霧水流を放出する。
【0024】
このとき直噴噴射水流を放出しようとするときには、切り替えレバー10を操作して切り替えバルブ7を切り替え、接続管6と第一の水流路8とを連通せしめる。これにより水は切り替えバルブ7から第一の水流路8に流れ、第一の貯水室13において複数のノズルチップ19aに分配され、各ノズルチップ19aの直噴ノズル孔18aから直噴噴射水流として放出される。
【0025】
このとき図面の例においては、ノズルチップ19aの一つがノズル金具12の垂直面15に、二つが傾斜面16に設けられているので、三つの直噴ノズル孔18aの軸線が互いに若干の角度をもって拡がる方向に向いており、噴射水流は図4(a)に示すように、小さい拡がり角度をもった噴射水流21a,21b,21cが三角形状の水流の束となって放出される。
【0026】
各直噴ノズル孔18aの軸線同士の広がり角度は、各直噴ノズル孔18aから放出された噴射水流が、互いに過度に重複することがなく、また互いに過度に離れることもなく、全体として一体の水流の束を形成する程度の角度とするのが適当である。このようにすることにより噴射水流の束が周囲の空気をも巻き込んで一体となって放射され、長い距離に噴射水流を届かせることができると共に、大きな噴射水流の束によって火元を包み込み、冷却効果及び窒息効果を発揮して効率良く消火することができる。
【0027】
複数の直噴ノズル孔18aの軸線方向の角度が小さいと、個々の直噴ノズル孔18aから放出された噴射水流が他の直噴ノズル孔18aから放出された噴射水流とが大きく重複し、水滴同志がぶつかり合って放出の勢いが失われ、噴射水流の到達距離が短くなると共に、水滴が合体して大径化して落下しやすくなり、さらに大径化した水滴は蒸発しにくいため、冷却効果も窒息効果も劣り、消火効率が低下する。
【0028】
また逆に複数の直噴ノズル孔18aの軸線方向の角度が大き過ぎると、各直噴ノズル孔18aのから放出された噴射水流が離れてしまい、個々の噴射水流がそれぞれに大きな空気抵抗を受けるため、この場合にも放出の勢いが失われて噴射水流の到達距離が短くなる。また到達先においても威力の小さい噴射水流がばらばらに存在する状態となり、それらが一体として纏まって消火する機能を果たすことができない。
【0029】
なお各直噴ノズル孔18aの具体的な角度は、ノズルチップ19aにおける直噴ノズル孔18aの直径や長さ、ノズル金具12の内部構造、水の圧力などの要素によって一概に規定することは困難であり、具体的な設計に基づいて決定されるべきである。特定の設計において、前記角度が7.5°が適当であると認められた事例がある。
【0030】
また前記図面の例においては、ノズルチップ19aの一つが垂直面15に設けられて、直噴ノズル孔18aの向きがノズル金具12の中心軸線方向に一致しており、他の二つが傾斜面16に設けられて直噴ノズル孔18aはノズル金具12の中心軸線方向より下方に向かっているので、これら三つの直噴ノズル孔18aの方向の合成ベクトルは、ノズル金具12の中心軸線方向よりも下向きとなっている。
【0031】
一般に消防士が消防用ノズル1を把持して火元に向かって構えるときには、消防用ノズル1の筒先が若干上向きとなる姿勢が最も安定しており、上記構造とすることにより、この姿勢において噴射水流が真っ直ぐに前方に向かって放出されることとなるので好ましい。
【0032】
また家屋の窓などから屋内の火元に向かって放水するときにも、ノズル金具12の中心軸線方向がほゞ水平に近い状態に構えて、床に近い低い位置にある火元に向かって放水することができる。
【0033】
また本発明の消防用ノズル1において扇形噴射水流を放出しようとするときには、切り替えレバー10を操作して切り替えバルブ7を切り替え、接続管6と第二の水流路9とを連通せしめる。これにより水は切り替えバルブ7から第二の水流路9に流れ、第二の貯水室14において複数のノズルチップ19bに分配され、各ノズルチップ19bの扇形ノズル孔18bから水平方向に拡がった扇形噴射水流として放出される。
【0034】
このとき図面の例においては、三つのノズルチップ19bがノズル金具12の傾斜面16に円弧状に並んで設けられているので、三つの扇形ノズル孔18bの軸線が互いに水平方向に角度をもって拡がり、上下方向には小さい拡がり角度となる方向に向いており、噴射水流は図5(a)に示すように、大きい拡がり角度をもった扇形噴射水流22a,22b,22cがさらに重なり合って広い扇形となって放出される。
【0035】
この場合において、扇形ノズル孔18bの軸線同士の広がり角度は、各扇形ノズル孔18bから放出された噴射水流が、互いに過度に重複してぶつかりあうことがなく、また互いに過度に離れて水幕が途切れることもなく、水平方向に拡がった扇形噴射水流が上下に重なり合い、全体として一体の広い扇形の水幕を形成するような角度とするのが適当である。
【0036】
このようにすることにより、床面に拡がった油が燃えているような場合に、その炎の上部を水幕で覆いながら炎を上から押え込み、霧状の水による冷却効果とその水が蒸発して生じた水蒸気による窒息効果とにより、広い範囲を一気に消火し、且つ再着火を防止することができる。
【0037】
また前記図面の例においては、三つのノズルチップ19bが傾斜面16の上半部に設けられており、扇形ノズル孔18bはノズル金具12の中心軸線方向より上方に向かっているので、三つの扇形ノズル孔18bの方向の合成ベクトルは、ノズル金具12の中心軸線方向よりも上向きとなっている。
【0038】
一般に油火災は床面に拡がった油が燃焼することが多く、これを消火するためには前述のように炎の上部を扇形噴射水流による水幕によって覆うのであるが、そのためには水幕は床面とほゞ平行になるように拡がる必要がある。前述のように扇形ノズル孔18bの軸線方向の合成ベクトルを係止片12の中心軸線より上向きとすることにより、消防用ノズル1を低い位置に構えてさらに筒先を若干床面に近付けることにより、床面に近い位置で床面に平行の水幕を形成することができ、油火災を効率良く消火することができる。
【0039】
【発明の効果】
従って本発明によれば、切り替えバルブ7を切り替えることにより、拡がり角度が小さくて遠方にまで到達しやすい直噴噴射水流と、水平方向に大きい拡がり角度を有して油火災に対して有効な扇形噴射水流とを、必要に応じて切り替えて放水することができ、通常火災にも油火災にも対応できる。
【0040】
また直噴噴射水流は、複数の直噴ノズル孔18aから放出された噴射水流が纏まって一体の水流として燃焼物に放射されるので、粒径の小さい微細な水滴よりなる霧状の水流を十分に遠方にまで到達させることができ、冷却効果と窒息効果とにより火災を強力に消火することができる。
【0041】
さらに扇形噴射水流は、複数の扇形ノズル孔18bから放出された扇形の噴射水流により、広い範囲を覆う水幕を形成し、当該水幕で炎を押え込んで消火することにより、床面などに拡がった油が燃焼する油火災に対して、極めて効率良く消火することができる。
【0042】
また請求項2の発明によれば、複数の直噴ノズル孔18aの軸線方向の合成ベクトルが下向きとなるので、消防士が消防用ノズル1を把持して最も安定した姿勢で構えることにより、噴射水流を真っ直ぐ前方に放射することができ、操作性の良い消防用ノズル1となる。
【0043】
また請求項3の発明によれば、複数の扇形ノズル孔18bの軸線方向の合成ベクトルが上向きとなるので、低い位置で床面に平行の水幕を形成することができ、床面に拡がった油が燃焼する油火災に対して、水幕で炎を上から押え込んで消火することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の消防用ノズルの側面図
【図2】 本発明の消防用ノズルの主要部の中央縦断面図
【図3】 本発明の消防用ノズルの正面図
【図4】 本発明により放射される直噴噴射水流を示すものであって、(a)は平面図、(b)はb−b断面図である。
【図5】 本発明により放射される扇形噴射水流を示すものであって、(a)は平面図、(b)はb−b断面図である。
【符号の説明】
1 消防用ノズル
7 切り替えバルブ
8,9 水流路
12 ノズル金具
18 ノズル孔
18a 直噴ノズル孔
18b 扇形ノズル孔
Claims (4)
- 送水ホースの先端に取り付けられる放水ノズルであって、選択的に切り替え可能の二つの水流路(8,9)を有し、各水流路の先端にそれぞれ複数のノズル孔(18)が形成されており、第一の水流路(8)に接続されたノズル孔(18)は全てが直噴噴射水流を形成する直噴ノズル孔(18a)であって、各直噴ノズル孔(18a)が他の直噴ノズル孔(18a)に対してそれら直噴ノズル孔(18a)の中心軸線方向が若干の角度をもって拡がる方向に形成され、第二の水流路(9)に接続されたノズル孔(18)は全てがほゞ水平方向に拡がり角度を有する扇形噴射水流を形成する扇形ノズル孔(18b)であって、各扇形ノズル孔(18b)が他の扇形ノズル孔(18b)に対してそれら扇形ノズル孔(18b)の中心軸線方向が水平方向に角度をもって拡がる方向に形成されていることを特徴とする、消防用噴霧ノズル
- 前記複数の直噴ノズル孔(18a)の軸線方向の合成ベクトルが、ノズル金具(12)の中心軸線方向よりも下向きであることを特徴とする、請求項1に記載の消防用噴霧ノズル
- 前記複数の扇形ノズル孔(18b)の軸線方向の合成ベクトルが、ノズル金具(12)の中心軸線方向よりも上向きであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の消防用噴霧ノズル
- 送水ホースの先端に取り付けられる放水ノズルであって、ノズル金具(12)の先端面に、そのほゞ中心位置及びそれを取り巻く五か所にノズル孔(18)を形成し、前記中心位置のノズル孔(18)はノズル金具(12)の中心軸線にほゞ一致する噴射水流を形成すると共に、周囲のノズル孔(18)はノズル金具(12)の中心軸線方向から若干放射状に拡がる噴射水流を形成し、前記中心軸線のノズル孔及びそれよりも下方に位置する二つの周囲のノズル孔は直噴噴射水流を形成する直噴ノズル孔(18a)であり、残りの三つの周囲のノズル孔は、ほゞ水平方向に拡がり角度を有する扇形噴射水流を形成する扇形ノズル孔(18b)であって、前記直噴ノズル孔(18a)と扇形ノズル孔(18b)とはそれぞれ別個の水流路(8,9)に接続され、それらの水流路(8,9)のいずれかに切り替えて送水可能であることを特徴とする、消防用噴霧ノズル
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