JP4058127B2 - 半導体装置のレイアウト変更方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体装置の製造方法に関し、特に微細パターンを有する半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置等のホトリソグラフィにおいて、ホトマスク上の微細パターンをホトレジスト上に転写する技術が用いられている。パターンが露光波長と同程度の寸法になるとパターン形状に対して、光の回折、干渉が無視できなくなる。たとえば隣接する開口間の距離が短くなると、各開口を通過した光が回折によって拡がり、開口間の領域等で互いに干渉して露光レベルを持ち上げてしまう。この結果、隣接する開口を分解できなくなる。
【0003】
このような問題を解決する1つの方法として、たとえばレベンソン型位相シフトマスクが提案されている。隣接する開口の一方に位相差π(ラジアン)を生じさせる位相シフタを配することにより、隣接する開口を通過する光の位相を逆位相とする。すると回折干渉する光の位相が互いに逆位相となり、合成光の強度を弱める。この結果、隣接する開口を分解できるようになる。
【0004】
ところでレベンソン型位相シフトマスクには大きな制約がある。3つの開口A、B、Cが互いに隣接している場合、Aに対してBとCを逆位相とすると、BとCは必然的に同位相となってしまう。すなわち全ての隣接する開口を逆位相にすることは理論的に不可能である。
【0005】
そこで、このような矛盾個所に設計変更を行うことが必要になる。LSIは、通常極めて多くの回路素子をできるだけ狭い面積内に配置している。1つの設計変更は他にも影響を与え、複数個所の設計変更を行おうとすると莫大な数の選択肢が生じる。また、1つの設計変更が全体として良い結果を生むか悪い結果になるか予測することも困難である。
【0006】
設計者がマニュアルで設計変更を行おうとすると、経験、知識に加え、長時間の作業が必要である。CADメーカが半自動的に設計変更を行う簡易ツールを提供しているが、簡易ツールを利用するためにはそのためのデータを別に作成せねばならず、多くの工数も必要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
半導体装置の物理レイアウトに矛盾箇所が存在する場合、設計変更を自動的に行って矛盾個所を解消することが望まれている。
【0008】
本発明の目的は、半導体装置の物理レイアウトの矛盾個所を自動的に解消することの可能な半導体装置のレイアウト変更方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば、
a)半導体装置中の回路構成要素の配置を表す物理レイアウトを準備する工程と、
b)前記物理レイアウト中、少なくとも位相が干渉して所定の設計ルールに合致しない矛盾個所を検出する工程と、
c)前記物理レイアウトをグラフ化する工程であって、
c−1)前記物理レイアウトから回路素子、回路素子外のコンタクト、および配線の分岐点と端点からなるノードと、ノード間を接続するブランチとを検出する工程と、
c−2)ノードとブランチをグラフ化する工程と、
c−3)前記ブランチに一定のルールに従って向きを付与する工程と、
を含む工程と、
d)グラフ中の矛盾個所を解消する工程であって、
d−1)グラフ中のノードの矛盾個所を解消する工程と、
d−2)ブランチにベクトルを挿入する工程を含み、グラフ中のブランチの矛盾個所を解消する工程と、
を含む工程と、
e)でき上がったグラフを物理レイアウトへ変換する工程と
を含む半導体装置のレイアウト変更方法
が提供される。
【0010】
物理レイアウトそのものをグラフ化することにより、新たなデータを作成することなく、設計変更の自動化が可能となる。計算機シュミレーション等により、より良いレイアウトを見い出すことができる。十分改善された結果を得た時には、得られたグラフを物理レイアウトに変換すればよい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。なお、レベンソン型位相シフトマスクのシフター配置に対する設計変更を行う場合を例に取って説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0012】
図1は、本発明の実施例による半導体装置の設計変更方法の全体を概略的に示すフローチャートである。
【0013】
先ず、位相シフトマスクを用いて製造する半導体装置のレイアウトがCAD等により作成されたとする。このレイアウトは一次的なものであり、未だ矛盾箇所を含むものである。
【0014】
ステップS1において、所定のデザインルールに基づき、作成されたレイアウトを検査し、設計変更すべき矛盾箇所を検出する。例えば、レベンソンマスクの隣接する開口対は、同位相なら0.5μm以上、逆位相なら0.3μm以上離隔させる規則を適用する。デザインルールとしては、他に配線の幅や間隔などがあり得る。
【0015】
ステップS1の検出工程が終了すると、この物理レイアウト中設計変更すべき矛盾箇所が洗い出される。
【0016】
図2は、物理レイアウト中に存在し得る矛盾箇所の例を示す。
図2(A)は、同一の層に属する3つのパターンの配置例を示す。パターン L1にパターンL2およびL3が直交する形で配置され、これらのパターンL2、L3が互いに平行に配置されている。これらのパターンL1、L2、L3は互いに最小間隔、たとえば0.3μmで配置されている。
【0017】
パターンL1を位相0とし、パターンL2を位相πに設定する。パターンL3を位相0に設定すると、パターンL2とL3とは逆位相となるが、パターンL1とL3とは同位相となってしまう。このため実線のハッチングで示した領域がレベンソン型位相シフトマスクとしては矛盾箇所となる。
【0018】
パターンL3を位相πに設定し、パターンL2を位相0に設定すれば、今度はパターンL2とL1の間の領域が矛盾箇所となる。パターンL2とL3とを共に位相πに設定すれば、これらのパターンとパターンL1との間の領域には矛盾箇所が発生しないが、パターンL2とL3との間の領域が矛盾箇所となってしまう。
【0019】
1本のパターンL1に2本のパターンL2、L3が近接配置される場合を説明したが、1本のパターンに3本以上のパターンが近接配置される時も同様の問題が生じる。
【0020】
このように、互いに隣接する3つのパターンがある場合、隣接する対のパターンを全て逆位相の関係に設定することは不可能である。逆位相のパターンであれば、0.3μmの間隔に配置できるパターンも同位相となると0.5μmの間隔に配置しなければならない。そのために設計変更を行うこととなる。
【0021】
図2(B)は、途中で分岐するパターンの分岐間の問題を示す。パターンL4は、ある点でパターンL41とL42とに分岐する。これらの分岐パターンL41とL42とが互いに近接している領域においては、矛盾箇所が発生する。
【0022】
図2(C)は、U字型のパターンL5の2つの垂直な腕の間に、2つのパターンL6とL7が配置された構成を示す。パターンL5を位相0に設定し、パターンL6を位相π、パターンL7を位相0に設定すると、パターンL5とL7との間が矛盾箇所となる。
【0023】
パターンL6とL7の位相を反転すれば、パターンL5とL6の間に矛盾箇所が発生する。パターンL6とL7を共に位相πに設定すれば、パターンL6とL7の間が矛盾箇所となる。この関係は、図2(A)の場合と同様である。
【0024】
図1のステップS1においては、上述のような物理レイアウト中の矛盾箇所を検出し、これらの箇所の設計変更を行うことを決定する。
【0025】
ステップS2においては、設計変更を行うため、まず物理レイアウトの構成要素の検出を行う。
【0026】
図3(A)は、物理レイアウトの1部の構成例を示す。図中上方には並列トランジスタTr1が配置され、下方にはダブルゲートのトランジスタTr2が配置されている。トランジスタTr1は、中央にドレイン領域を構成する拡散層が配置され、その両側に多結晶(ポリ)シリコンのゲート電極を介して2つのソース領域を構成する拡散層が配置されている。
【0027】
ソース領域、ドレイン領域の拡散層の上にはメタル配線層が配置され、各々4つのコンタクトを介して拡散層に電気的に接続されている。2つのソース領域は、上方に引き出され、コンタクトC1、C2を介して水平方向に延びるメタル配線M2に接続されている。
【0028】
ドレイン領域に接続された金属配線M5は下方に引き出された後右方に曲げられ、コンタクトC3を介してポリシリコン電極P5に接続されている。
【0029】
並列トランジスタTr1の2つのゲート電極は下方に引き出され、間隔を狭めてトランジスタTr2内に配置されている。これら2つのゲート電極を挟むように、ソース領域、ドレイン領域を構成する拡散層が形成されている。なお、2つのゲート電極の間の領域にも拡散層が形成されている。
【0030】
トランジスタTr2のドレイン領域は、3つのコンタクトを介してその上のメタル配線に接続されている。このメタル配線がトランジスタTr2外のメタル配線M6となってトランジスタTr1のドレイン領域に接続されたメタル配線M5と接続されている。
【0031】
ソース領域の拡散層は、そのまま下方に延在し、拡散層F3を構成している。この拡散層上にはソース領域上のメタル配線と接続されたメタル配線M7が配置され、コンタクトC4で拡散層F3と接続されている。コンタクトC4から右方に、メタル配線M8が延在している。また、2つのゲート電極は下方に引き出され、メタル配線M8の下を通るポリシリコン配線P3とP4を構成している。
【0032】
図3(B)は、図3(A)に示す物理レイアウトをグラフ化した構成を示す。グラフは、図中丸で示すノードと線分で示すブランチで構成される。ノードは、トランジスタ、コンタクト、または配線の端点(分岐点を含む)を表す。すなわち、物理レイアウト中の回路構成素子、異なる層間のコンタクトおよび配線の端点がノードとなる。トランジスタ等の回路構成素子は、その内部の層構造やコンタクトを含めて1つのノードとして扱う。ノード間を接続する配線はブランチを構成する。
【0033】
図3(B)に示すグラフ化は、図3(A)に示す物理レイアウトを判別することにより自動的に行うことができる。たとえば、ポリシリコンパターンを挟んで拡散層が配置されている領域は、トランジスタTrのノードと判別すればよい。トランジスタ外の領域におけるコンタクトは、コンタクトを構成するノードと判別される。
【0034】
トランジスタ、コンタクト外の領域における配線の端点は、配線の端点を構成するノードと判別される。配線中に分岐が存在する場合も、分岐が配線の端点と扱えるため、仮想的にノードと識別される。但し、配線の分岐は、他のノードとは取り扱いを別にすることが好ましい。たとえば、仮想ノードとし、他の正常ノードとは区別する。
【0035】
検出したノードには、そのノードの情報を付随させる。たとえば、ノードの表すオブジェクト(トランジスタ、コンタクト、配線の端点等)の座標を含むデータと、ノードに直接つながっているブランチのデータを付随させる。ノード内の座標は、全てノードの代表点(たとえば重心座標)を原点とした相対座標で表す。また、レベンソン型位相シフトマスク等の場合、各パターンがどの層に属するかは重要な情報である。
【0036】
ノードの表すオブジェクトのデータとしては、構成要素の層、構成要素の座標等がある。また、ノードに直接接続されているブランチのデータは、接続点の識別子、接続点の相対座標、接続されているブランチの識別子を含む。
【0037】
ブランチは、ノード間を接続する配線情報である。ブランチの情報は、配線の両端のノードと接続点の識別子等の他、配線の方向を示すベクトル(配線が途中で方向を変えている時は複数のベクトル、なおベクトルの向きは後述の方法で定める)、配線を構成するベクトル毎の太さを含む。
【0038】
図3(A)に示すような物理レイアウトから、その構成を読み取り、図3(B)に示すようなグラフに変換する。すなわち、設計変更の工程上、図3(A)に示す物理レイアウトと、図3(B)に示すグラフとは等価のものとなる。このグラフでは、ブランチは向きを持たない無向ベクトルで表されている。
【0039】
図3(C)は、図3(A)、(B)に示す回路の等価回路である。すなわち、図3(A)、(B)に示す回路は、図3(C)に示すようにナンド回路を構成する。入力A、Bに応じ、出力端子にNAND出力が発生する。
【0040】
本実施例においては、設計変更の便宜上、各ブランチに向きを与える。ブランチに向きを与えることにより、各ブランチをベクトルとして扱うことができる。ベクトルの始点を上流、終点を下流とし、1つのベクトルの変更は下流に影響を及ぼすこととする。このような約束により探索空間を小さくすることができる。
【0041】
図4(A)は、グラフ化の対象とする物理レイアウトの構成例を概略的に示す。便宜的に与えられた原点Oを有するxy座標中にトランジスタTr、メタル配線M、コンタクトCが配置されているとする。メタル配線MとトランジスタTrとの接続は、代表点r1=(0.3、0.7)で表される。同様に、メタル配線MとコンタクトCとの接続は、代表点r2(0.3、0.4)で表される。
【0042】
図4(B)は、図4(A)に示す物理レイアウトから読み取ったグラフの構成を示す。トランジスタTrを表すノードからコンタクトCを表すノードまでメタル配線Mのブランチが延在している。ここで、メタル配線Mと両側のノードとの接続の代表点が、原点Oからどの程度離れているかを判別する。図4(A)に示した構成の場合、ベクトルr1の大きさはベクトルr2の大きさよりも大きい。
【0043】
ブランチの向きは、たとえば代表点のベクトルの小さな接続位置から代表点のベクトルの大きな接続位置に向かうものとする。このような規則に従えば、ブランチMは、コンタクトCからトランジスタTrに向かう向きが付与される。
【0044】
図4(C)は、このようにして決定された向きを付与されたブランチを示す。すなわち、メタル配線Mのブランチは、コンタクトCからトランジスタTrに向かう向きを有する。このようにして、各ブランチに向きを付与する有向化工程が行なわれる。
【0045】
図5は、物理レイアウトから読み取ったグラフの有向化工程を示す。図5(A)は、物理レイアウトから読み取ったままの、向きのない無向ブランチを含むグラフである。図5(B)は、上述のような一定の規則により、各ブランチに向きを与えた有向グラフを示す。図1のステップS3において、各ブランチに向きを与え、有向グラフを形成する。
【0046】
図6は、配線(ブランチ)の方向ベクトル表現を説明するための概略図である。図6(A)は、配線の物理レイアウトの例を示す。配線を表すパターンLは、始点Sから下方に一定距離進み、45度折り曲げられて斜め下方に進み、さらに45度折り曲げられて水平方向に進み、終点Eに至る。配線Lは、始点から終点に至るまで0.5(μm)の幅を有する。
【0047】
図6(B)は、図6(A)に示す物理レイアウトの配線を読み取り、どの様なブランチを作成するか示す。始点Sから下方に向かう部分はx方向の位置が変わらず、y方向が−1変化する。従って、始点Sから下方に向かうベクトルは、(0.0、−1,0)の大きさ(向き)を含むベクトルである。また、配線情報としてこの領域の配線の幅0.5を付与する。
【0048】
中間領域においては、配線は右下方に進む。この部分において、x座標が−0.75増加し、y座標が−0.75変化するとする。すると、この中間領域のベクトルは(0.75、−0.75)となる。グラフ中においては、このベクトルの大きさと幅0.5が与えられる。中間領域と終点Eを接続する部分は、同様にベクトル(1.0、0.0)と幅0.5によって表現される。
【0049】
以上の準備工程により、物理レイアウトの有向グラフ化が行なわれ、設計変更の準備が完了する。
【0050】
続いて、ステップS4に示すグラフの最適化を行う。グラフの最適化の例は、後述する。グラフの最適化とは、グラフ化したレイアウトにおいて矛盾箇所をなるべく解消するような処理を指し、必ずしも全ての矛盾箇所の解消を意味しない。
【0051】
ステップS5においては、最適化されたグラフから物理レイアウトへの変換が行われる。すなわち、グラフの状態において最適化処理が行われた後、物理レイアウトに戻される。
【0052】
ステップS6においては、グラフの最適化を行っても解消することのできなかった矛盾箇所、すなわち変更不能箇所、の表示が行われる。これ以後、始めてマニュアルによる設計変更が行われる。
【0053】
次に、ステップS4におけるグラフの最適化工程を説明する。
まず、ノード内の矛盾箇所を解消する。ノード内における矛盾箇所を解消できることは理論的に解明された。
【0054】
図7は、トランジスタ内の矛盾箇所の回避の例を示す。図7(A)は、ソースS、ドレインDが近接しすぎ、矛盾箇所を発生している状態を示す。
【0055】
図7(B)は、矛盾を解消したトランジスタの構成を示す。この例においては、ソースSとドレインDの距離を離し、矛盾を解消している。なお、物理レイアウトを作成する際に設計ルールを付加することによりこのような矛盾が生じない物理レイアウトを初めから作成することも可能である。他のノードにおいても、同様の手法により矛盾箇所を解消する。
【0056】
ノード内の矛盾箇所を解消した後、ノード間を接続するブランチの矛盾箇所を解消する。但し、この工程は完全に矛盾箇所を解消することができるとは限らない。必要に応じてグラフは分割し、分割化した領域毎に矛盾個所を解消する処理を行なう。
【0057】
グラフ化したレイアウトを改良し、矛盾箇所を解消する際には、以下のような評価に従って行う。
【0058】
1)変更の結果得られるグラフが設計ルールを満たすこと、
2)変更の結果得れるグラフが元の結線情報を保存していること、
3)変更の結果得られるグラフにおいて、トランジスタのノードのゲート長およびゲート幅が保存されていること、
4)変更の結果得られるグラフにおいて、トランジスタのソース/ドレインの位置関係がなるべく保存されていること、
5)変更の結果得られるグラフにおいて、ブランチの長さはなるべく保存されていること、
6)変更の結果得られるグラフにおいて、ブランチの太さがなるべく保存されていること、および
7)変更の結果得られるグラフにおいて、変更対象の単位としている領域において、端点の座標がなるべく保存されていること。
【0059】
上述の基準の内、1)、2)、3)の基準は絶対守らなければならない基準である。これに対し、4)〜7)の基準は守ることが好ましい基準である。これらが守られない場合には、一定の評価基準に従ってエラー値を算出することが好ましい。また、配線を示すブランチの内ポリシリコンのブランチとメタル配線のブランチとを異なる評価とすることもできる。
【0060】
図8は、ブランチすなわち配線の最適化工程を説明するための概略図である。まず、ブランチを表す各ベクトルに付与された太さを設計ルール内で調整し、矛盾箇所を回避する試みを行う。
【0061】
図8(A)、(B)は、このような矛盾解消工程を示す概略図である。図8(A)において、パターンL11とパターンL12とが近接し過ぎ、その間の領域が矛盾箇所となっているものとする。
【0062】
図8(B)に示すように、設計ルール内においてパターンL11とパターンL12の太さを減少させる。パターンの太さを減少させることにより矛盾箇所が解消した時はその結果を採用する。しかしながら、配線の幅は無制限に減少させることはできず、一定幅以上を有することが要求される。従って、このような操作により解消される矛盾箇所には制限がある。
【0063】
太さの変更により解消できる矛盾箇所を解消した後、残った矛盾箇所を解消するためにブランチに新たな方向ベクトルを付加する工程を行う。なお、方向ベクトルの向きは、設計ルールにより定められた範囲内で行う。たとえば、x方向とy方向のベクトルのみを許す場合や、さらに45度方向のベクトルを許す場合、全方向のベクトルを許す場合等がある。
【0064】
図8(C)〜(F)は、ブランチへのベクトルの挿入で矛盾箇所を回避する工程を概略的に示す。
【0065】
図8(C)は、矛盾箇所を有するブランチのレイアウトの構成例を示す。パターンL13、L14、L15は、連続して一つの配線を構成し、パターンL13とL15とが近接し過ぎており矛盾箇所を発生させている。
【0066】
図8(D)は、図8(C)をグラフ化した状態を示す。パターンL13〜L15に対応し、ベクトルV13〜V15が形成されている。
【0067】
図8(E)は、図8(D)に示すグラフに、ベクトルV14とV15との間にベクトルV20を挿入した状態を示す。ベクトルV20の始点は、ベクトルV14の終点に接続され、ベクトルV20の終点に次のベクトルv15の始点が接続される。従って、ベクトルV15は右方に移動されている。ベクトルV20がベクトルV14と逆方向であれば、ベクトルV15は左方に移動されることになる。
【0068】
図8(F)は、図8(E)に示すグラフを物理レイアウトに変換した状態を示す。ベクトルV13に対応するパターンL13は、図8(C)に示すものと同一である。パターンL14aは、図8(E)に示すようにベクトルV14とV20との和であり、図8(C)に示すパターンL14よりも長くなっている。このため、パターンL14aに接続されるパターンL15は、パターンL13からより離されている。この様なベクトルの挿入により、パターンL13とパターンL15とが離れ、矛盾箇所が解消する。
【0069】
図8(C)〜(F)に示した操作は極めて簡単な例であり、LSIのレイアウトにおいてすべての矛盾箇所がこのように簡単に解消するとは限らない。以下、ブランチへのベクトル挿入により矛盾箇所を解消する作業をより詳細に説明する。
【0070】
先ず、ブランチの太さを変更することにより、解消できる矛盾箇所は全て解消されているものとする。この状態を初期状態として設定する。初期状態において解消できなかった矛盾箇所をエラーとし、一定の規則に基づき、エラーを数量化する。各エラーのエラー値は、たとえば前述の規則1)〜7)のような基準に基づいて算出される。
【0071】
先ず、初期状態の目的関数を算出する。目的関数Oは、エラー値Eの総和として定義される。
【0072】
O(Xi)=ΣE(n)
ここで、Xiは1つの物理レイアウトを示し、Oはその目的関数を示す。E(n)は、1つの物理レイアウト中に含まれる各エラーnのエラー値を示す。各エラーは、設計変更を必要とする矛盾箇所を示している。
【0073】
グラフの最適化のため、遺伝的アルゴリズムを用いる。まず、初期状態(初期値)のグラフを親とし、子供を突然変異によって発生させる。すなわち、任意の設計変更箇所nのエラーを解消するために、適当な方向ベクトルをn又はnよりもベクトルの流れ的に上流のブランチに挿入する。このような操作により、先ず初期値のグラフからk個の子供を発生させる。
【0074】
k個の子供が発生した後は、クロスオーバ(勾配)およびミューテーション(突然変異)によりさらに次の世代を発生させる。
【0075】
クロスオーバーは、個体(レイアウト)iの染色体(レイアウト)Xiと個体jの染色体Xjをある共通部分で切断し、組み合わせを変えて結合する操作、又は平均を取って新しい染色体を構成する操作を指す。
【0076】
ミューテーションの手法としては、例えば以下のような方法が採用される。
【0077】
〔ヒューリステック手法〕
i)対象とする世代の内、最も優秀な染色体に対してある設計変更箇所nのエラーを解消するためにどの部分にベクトルを投入したら良いか、あるノードに対して総当たりし、最もよい部分にベクトルを挿入する。これを全ての設計変更箇所に対して行う。
【0078】
ii)経験的に結果が改良されると判明している変更を行う。たとえば、一方にレイアウトが存在しない場合、パターンを外側に広げる等である。
【0079】
このような遺伝的手法により、次世代を発生させると個体数は膨大な数に増大してしまう。個体数を抑制するため、評価関数を用いることができる。
【0080】
〔評価関数(fitness function)〕
目的関数O(Xi)に対し評価関数F(Xi)を次のように定義する。
【0081】
F(Xi)=O(X0)/O(Xi)+ε
O(X0)は、初期値である。εは、微小量でO(Xi)が0になった場合のオーバーフローを防止するためのものである。
【0082】
評価関数は上述の形式に制限されないが、目的関数の変化による評価関数の変化を敏感に、かつ敏感すぎないように表すためには上述の形式が適している。
【0083】
交配等を行う場合、個体Xiが選択される確率P(Xi)を以下のように設定することができる。
【0084】
P(Xi)=F(Xi)a /ΣF(Xi)a
これは、強調型ルーレットホイールの方法であり、交配等において選択される親のパラメータに強調因子aによって差を付けることができる。
【0085】
例えば、両親の内一方に極めて優れた超個体を選択したとき、他方の親としては比較的平凡な個体を選ぶと次の世代として優秀な個体を得られることが経験的に判明している。このような選択を強調因子の設定により行うことができる。a=1とした時通常の比例関係となり、1<aとすれば個体は強調され、1>aとすれば選択はランダムに近づく。
【0086】
評価関数を利用し、親よりも優れた個体のみを選択して次世代の個体を発生させる。同様の遺伝的処理によりさらに次世代の個体を発生させる。同一世代の固体数は、初期値を除き、一定とすることが好ましい。このような遺伝的処理により、全ての設計変更箇所が解消された時には、世代交代を停止させる。また、世代交代が所定数進んでも、最優秀個体の評価関数が更新されない場合には、同様に世代交代を停止させる。なお、世代交代を停止させる世代数は、ノード数等に依存して決定することができる。なお、このような遺伝的手法は、例えば特願平4−395687(米国特許第5,415,952号)の実施例の記載を参照することができる。
【0087】
以上、レベンソン型位相シフトマスクを例にとって説明したが、同様の方法が他のレイアウトの自動変更にも利用できることは当業者に自明であろう。
【0088】
以上本発明を実施例に沿って説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0089】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、物理レイアウトに基づいて設計変更を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の処理を示すフローチャートである。
【図2】物理レイアウトの矛盾箇所を説明するための概略平面図である。
【図3】物理レイアウトのグラフ化を説明するための概略平面図および等価回路図である。
【図4】ブランチの向きの決定方法を説明するための線図および概略平面図である。
【図5】グラフの有向化処理を説明するための概略線図ある。
【図6】配線の方向ベクトル表現を説明するための概略平面図および線図である。
【図7】ノード内の矛盾箇所の回避を説明するための概略平面図である。
【図8】配線の最適化を説明するための概略平面図および線図である。
【符号の説明】
L パターン
Tr トランジスタ
M メタル配線
C コンタクト
F 拡散層
P 多結晶シリコン層
X 端点
Claims (4)
- a)半導体装置中の回路構成要素の配置を表す物理レイアウトを準備する工程と、
b)前記物理レイアウト中、少なくとも位相が干渉して所定の設計ルールに合致しない矛盾個所を検出する工程と、
c)前記物理レイアウトをグラフ化する工程であって、
c−1)前記物理レイアウトから回路素子、回路素子外のコンタクト、および配線の分岐点と端点からなるノードと、ノード間を接続するブランチとを検出する工程と、
c−2)ノードとブランチをグラフ化する工程と、
c−3)前記ブランチに一定のルールに従って向きを付与する工程と、
を含む工程と、
d)グラフ中の矛盾個所を解消する工程であって、
d−1)グラフ中のノードの矛盾個所を解消する工程と、
d−2)ブランチにベクトルを挿入する工程を含み、グラフ中のブランチの矛盾個所を解消する工程と、
を含む工程と、
e)でき上がったグラフを物理レイアウトへ変換する工程と
を含む半導体装置のレイアウト変更方法。 - 前記工程d−2)が、2つのグラフから1つのグラフを発生させる工程を含む請求項1記載の半導体装置のレイアウト変更方法。
- 前記2つのグラフから1つのグラフを発生させる工程が、共通のある箇所で各グラフを分割し、各グラフの分割した異なる部分を結合する工程を含む請求項2記載の半導体装置のレイアウト変更方法。
- 前記2つのグラフから1つのグラフを発生させる工程が、2つのグラフの対応するブランチの平均化を行う工程を含む請求項2記載の半導体装置のレイアウト変更方法。
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