JP4057285B2 - 路面状態判定方法および装置、ならびに路面状態判定のプログラム - Google Patents

路面状態判定方法および装置、ならびに路面状態判定のプログラム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は路面状態判定方法および装置、ならびに路面状態判定のプログラムに関する。さらに詳しくは、車両の左側と右側で路面状態、すなわち左右のタイヤと路面との摩擦係数μが異なるスプリットμ路であるか否かを判定する路面状態判定方法および装置、ならびに路面状態判定のプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両は、左側車輪タイヤと右側車輪タイヤで摩擦係数が異なるような路面(スプリットμ路)で急加速や急制動を行なうと、タイヤがスリップを起こしスピンなどする危険性がある。また、急な操舵を行なうと車両が横すべりやスピンを起こす惧れがある。このように、車両の左側と右側で路面状態が異なる場合、車両の挙動が不安定になり非常に危険である。
【0003】
一般的に、車輪速度からスリップμ路を判定する場合、ある車輪が所定値以上スリップして始めて検出することが可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ABS装置などに路面情報を使用したり、ドライバーへ路面情報を警告する際には、タイヤがスリップする前に情報として得ていた方がよりよい。たとえば車両制御もより短時間で最適な制御を行なうことができる。
【0005】
本発明は、タイヤが大きくスリップする前に、車両の左右の路面で摩擦係数が異なるスプリットμ路を精度よく判定することができる路面状態判定方法および装置、ならびに路面状態判定のプログラムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の路面状態判定方法は、車両に装着される4輪のタイヤの回転情報を検出する工程と、前記車両の車体速度を求める工程と、該車両の加減速度を求める工程と、左側2輪および右側2輪のそれぞれのスリップ比を演算する工程と、該各スリップ比と前記車両の加減速度を所定の時間ごとに移動平均処理する工程と、当該移動平均処理された各スリップ比と車両の加減速度について1次回帰を行ない、前記左側2輪および右側2輪のそれぞれの回帰係数と相関係数を演算する工程と、該左側2輪および右側2輪の相関係数がともに所定の値以上の場合、前記左側2輪と右側2輪の回帰係数の比較値としきい値との関係に基づいて、路面状態を判定する工程とを備えてなることを特徴とする。
【0007】
また本発明の路面状態判定装置は、車両に装着される4輪のタイヤの回転情報を検出する回転情報検出手段と、該車両の加減速度を求める第1算出手段と、左側2輪および右側2輪のそれぞれのスリップ比を演算する第2演算手段と、該各スリップ比と前記車両の加減速度を所定の時間ごとに移動平均処理する処理手段と、当該移動平均処理された各スリップ比と車両の加減速度について1次回帰を行ない、前記左側2輪および右側2輪のそれぞれの回帰係数と相関係数を演算する第3演算手段と、該左側2輪および右側2輪の相関係数がともに所定の値以上の場合、前記左側2輪と右側2輪の回帰係数の比較値としきい値との関係に基づいて、路面状態を判定する路面状態判定手段とを備えてなることを特徴とする。
【0008】
さらに本発明の路面状態判定のプログラムは、路面の状態を判定するためにコンピュータを、該車両の加減速度を求める第1算出手段、左側2輪および右側2輪のそれぞれのスリップ比を演算する第2演算手段、該各スリップ比と前記車両の加減速度を所定の時間ごとに移動平均処理する処理手段、当該移動平均処理された各スリップ比と車両の加減速度について1次回帰を行ない、前記左側2輪および右側2輪のそれぞれの回帰係数と相関係数を演算する第3演算手段、該左側2輪および右側2輪の相関係数がともに所定の値以上の場合、前記左側2輪と右側2輪の回帰係数の比較値としきい値との関係に基づいて、路面状態を判定する路面状態判定手段として機能させることを特徴する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて、本発明の路面状態判定方法および装置、ならびに路面状態判定のプログラムを説明する。
【0010】
図1に示されるように、本発明の一実施の形態にかかわる路面状態判定装置は、4輪車両のタイヤFL、FR、RLおよびRRにそれぞれ設けられた車輪タイヤの回転情報(回転速度)を定期的に検出する回転情報検出手段1を備えており、この回転情報検出手段1の出力は、ABSなどのコンピュータである制御ユニット2に伝達される。また、この制御ユニット2には、図2に示されるように、液晶表示素子、プラズマ表示素子またはCRTなどの構成された表示手段である警報表示器3が接続されている。4は運転者によって、操作される初期化スイッチである。
【0011】
前記回転速度検出手段1としては、電磁ピックアップなどを用いて回転パルスを発生させてパルスの数から回転速度を測定する車輪速センサまたはダイナモのように回転を利用して発電を行ない、この電圧から回転速度を測定するものを含む角速度センサなどを用いることができる。
【0012】
前記制御ユニット2は、図2に示されるように、外部装置との信号の受け渡しに必要なI/Oインターフェイス2aと、演算処理の中枢として機能するCPU2bと、該CPU2bの制御動作プログラムが格納されたROM2cと、前記CPU2bが制御動作を行なう際にデータなどが一時的に書き込まれたり、その書き込まれたデータなどが読み出されるRAM2dとから構成されている。
【0013】
本実施の形態では、車両の左右で路面状態が異なる路面、たとえば左側が雪で右側がアスファルトのようなスプリットμ路を判定するために、車両に装着される4輪のタイヤの回転情報を検出する回転情報検出手段1と、該車両の加減速度を求める第1算出手段と、左側2輪および右側2輪のそれぞれのスリップ比を演算する第2演算手段と、該各スリップ比と前記車両の加減速度を所定の時間ごとに移動平均処理する処理手段と、当該移動平均処理された各スリップ比と車両の加減速度について1次回帰を行ない、前記左側2輪および右側2輪、すなわち左輪スリップ比と車両の加減速度および右輪スリップ比と車両の加減速度のそれぞれの回帰係数と相関係数を演算する第3演算手段と、該左側2輪および右側2輪の相関係数がともに所定の値以上の場合、前記左側2輪と右側2輪の回帰係数の比較値としきい値との関係に基づいて、路面状態を判定する路面状態判定手段とを備えている。
【0014】
本実施の形態では、前記4輪のタイヤの車輪速度を0.1秒以下、好ましくは0.05秒以下で検出する。車両の加減速度は、車両に装着される加速度センサから検出される信号を用いて算出することができるが、従動輪の平均車輪速度から求められる車体速度を微分することにより求めるのがコスト面から好ましい。前記各スリップ比は、左右それぞれの前後輪比である。
【0015】
前記スリップ比および車両の加減速度を一定時間分のデータ、たとえば少なくとも0.1秒分以上のデータの平均値として、サンプリング時間ごとに移動平均化して求める。
【0016】
ついで前記移動平均されたスリップ比および車両の加減速度のデータ、たとえば少なくとも5個以上のデータを用いて、左右それぞれのスリップ比と車両の加減速度との互いの1次の回帰係数と相関係数を求める。
【0017】
ついで左輪および右輪の相関係数がともに所定の値、たとえば0.8以上の場合、前記左側2輪と右側2輪の回帰係数の比較値としきい値との関係に基づいて、該比較値がしきい値以上の場合、左右の路面状態が異なるスプリットμ路面であると判定し、前記警報表示器3により警報を発する。
【0018】
前記比較値としては、たとえば回帰係数の比以外にも差などがあげられる。本実施の形態では、該比較値が回帰係数の比である場合について説明する。
【0019】
以下、本実施の形態の路面状態判定装置の動作を手順▲1▼〜▲7▼に沿って説明する。なお、かかる説明は後輪駆動車の場合についての説明である。
【0020】
▲1▼車両の4輪タイヤFL、FR、RLおよびRRのそれぞれの回転速度から車輪速度(V1n、V2n、V3n、V4n)を算出する。
【0021】
たとえば、ABSセンサなどのセンサから得られた車両の各車輪タイヤFL、FR、RL、RRのある時点の車輪速データを車輪速度V1n、V2n、V3n、V4nとする。
【0022】
▲2▼ついで従動輪の平均車輪速度を演算する。
Vfn=(V1n+V2n)/2 ・・・(1)
【0023】
▲3▼ついで前記従動輪の平均車輪加減速度(すなわち車両の加減速度)Afnを演算する。
【0024】
前記従動輪の平均車輪速度Vfnより1つ前の車輪速データから、平均車輪速度Vfn-1とすると、従動輪の平均車輪加減速度Afnはそれぞれつぎの式(2)で求められる。
Afn=(Vfn−Vfn-1)/Δt/g ・・・(2)
【0025】
ここで、Δtは車輪速データから算出される車輪速度VfnとVfn-1の時間間隔(サンプリング時間)であり、gは重力加速度である。前記サンプルング時間としては、データのばらつきを小さくし、かつ短時間で判別するためには、0.1秒以下である必要がある。より好ましくは、0.05秒以下である。
【0026】
▲4▼ついで前記車両の加減速度Afnの値に応じて、左輪と右輪のスリップ比を演算する。
Afn≧0およびV3n≠0、V4n≠0である場合、
LSn=(V1n−V3n)/V1n ・・・(3)
Afn<0およびV1n≠0、V2n≠0である場合、
RSn=(V2n−V4n)/V4n ・・・(4)
前記以外の場合、LSn=1、RSn=1とする。
【0027】
▲5▼ついで車両の加減速度および左右のスリップ比のデータをサンプリング時間ごとに移動平均化処理する。
【0028】
車両の加減速度については、
MAfn=(Af1+Af2+・・・+Afn)/N ・・・(5)
MAfn+1=(Af2+Af3+・・・+Afn+1)/N ・・・(6)
MAfn+2=(Af3+Af4+・・・+Afn+2)/N ・・・(7)
左右のスリップ比(LSn、RSn)については、
MLSn=(LS1+LS2+・・・+LSn)/N ・・・(8)
MLSn+1=(LS2+LS3+・・・+LSn+1)/N ・・・(9)
MLSn+2=(LS3+LS4+・・・+LSn+2)/N ・・・(10)
MRSn=(RS1+RS2+・・・+RSn)/N ・・・(11)
MRSn+1=(RS2+RS3+・・・+RSn+1)/N ・・・(12)
MRSn+2=(RS3+RS4+・・・+RSn+2)/N ・・・(13)
【0029】
▲6▼ついで左スリップ比と車両の加減速度および右スリップ比と車両の加減速度のそれぞれについて、互いの1次の回帰係数および相関係数の関係を求める。なお、LK1、LK2、LRはそれぞれ左輪のスリップ比の車両の加減速度に対する回帰係数、車両の加減速度のスリップ比に対する回帰係数および相関係数であり、RK1、RK2、RRはそれぞれ右輪のスリップ比の車両の加減速度に対する回帰係数、車両の加減速度のスリップ比に対する回帰係数および相関係数である。
LR=LK1×LK2 ・・・(14)
RR=RK1×RK2 ・・・(15)
【0030】
相関係数LRおよびRRが所定の値、たとえば0.8以上の場合、1次の回帰係数LK1とRK1の比Cを求める。
C=LK1/RK1 ・・・(16)
【0031】
この比Cがしきい値、たとえば1.3よりも大きい場合、左右の路面状態が異なるスプリットμ路面であると判定する。なお、前記しきい値は、たとえば今までの実験データから得ることができる。
【0032】
▲7▼つぎに路面の情報(車両の左右で滑りやすさが大きく異なるなど)を運転手に警報する。
【0033】
さらには、路面の状態をABS装置やTRC装置などの制御に使用する。
【0034】
つぎに本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
【実施例】
まず後輪駆動車の4輪タイヤとして、スタッドレスタイヤ(住友ゴム工業(株)製 グラスピックDS−1)を使用し、車両をドライアスファルト路R1、圧雪路R2およびアスフャルトと圧雪のスプリットμ路R3を走行させた。このときの走行条件は、各路面とも50km/h前後の走行である。車輪の車輪速度のサンプリング時間に関し、データ数を多く、かつばらつきや測定誤差を排除するために、たとえば1秒ではサンプリング時間が長すぎるため、40msとした。
【0036】
ついで前記ドライアスファルト路R1、圧雪路R2およびアスフャルト路と圧雪のスプリットμ路R3について、それぞれ左右の1次の回帰係数の比を判定回数31回まで演算した。その結果を図3に示す。
【0037】
図3から、アスファルト路R1および圧雪路R2では、左右の比はほぼ1.0近辺で推移しているのに対し、スプリットμ路R3では、1.3〜1.7程度で推移している。これにより、しきい値を1.3に設定することにより、スプリットμ路R3であると判定することができる。
【0038】
以上のように、本システムを用いることにより、スプリットμ路を精度よく、かつ短時間で判別することが可能となり、運転手に滑りやすい危険な状態であることを伝えることができた。
【0039】
そして、この判定されたスプリットμ路の情報をABS装置やTRC装置などに用いることにより、路面状態に応じた最適な制御を行なうことができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、タイヤが大きくスリップする前に、車両の左右の路面で摩擦係数が異なるスプリットμ路を精度よく判定することができるため、車両の性能および安全走行を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の路面状態判定装置の一実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図1における路面状態判定装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】左右の比と判定回数の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 回転情報検出手段
2 制御ユニット
3 警報表示器
4 初期化スイッチ

Claims (3)

  1. 車両に装着される4輪のタイヤの回転情報を検出する工程と、該車両の加減速度を求める工程と、左側2輪および右側2輪のそれぞれのスリップ比を演算する工程と、該各スリップ比と前記車両の加減速度を所定の時間ごとに移動平均処理する工程と、当該移動平均処理された各スリップ比と車両の加減速度について1次回帰を行ない、前記左側2輪および右側2輪のそれぞれの回帰係数と相関係数を演算する工程と、該左側2輪および右側2輪の相関係数がともに所定の値以上の場合、前記左側2輪と右側2輪の回帰係数の比較値としきい値との関係に基づいて、路面状態を判定する工程とを備えてなる路面状態判定方法。
  2. 車両に装着される4輪のタイヤの回転情報を検出する回転情報検出手段と、該車両の加減速度を求める第1算出手段と、左側2輪および右側2輪のそれぞれのスリップ比を演算する第2演算手段と、該各スリップ比と前記車両の加減速度を所定の時間ごとに移動平均処理する処理手段と、当該移動平均処理された各スリップ比と車両の加減速度について1次回帰を行ない、前記左側2輪および右側2輪のそれぞれの回帰係数と相関係数を演算する第3演算手段と、該左側2輪および右側2輪の相関係数がともに所定の値以上の場合、前記左側2輪と右側2輪の回帰係数の比較値としきい値との関係に基づいて、路面状態を判定する路面状態判定手段とを備えてなる路面状態判定装置。
  3. 路面の状態を判定するためにコンピュータを、車両の加減速度を求める第1算出手段、左側2輪および右側2輪のそれぞれのスリップ比を演算する第2演算手段、該各スリップ比と前記車両の加減速度を所定の時間ごとに移動平均処理する処理手段、当該移動平均処理された各スリップ比と車両の加減速度について1次回帰を行ない、前記左側2輪および右側2輪のそれぞれの回帰係数と相関係数を演算する第3演算手段、該左側2輪および右側2輪の相関係数がともに所定の値以上の場合、前記左側2輪と右側2輪の回帰係数の比較値としきい値との関係に基づいて、路面状態を判定する路面状態判定手段として機能させるための路面状態判定のプログラム。
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