JP4055988B2 - チップインダクタの製造方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チップインダクタの製造方法に係り、とくに巻線部分等の樹脂封止を行うチップインダクタの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、チップインダクタとして、ドラム状フェライトコアの両端面に厚膜又は薄膜技術で電極を形成し、このドラム状フェライトコアの小径となっている巻芯部に巻線を巻回し、その巻線端を予め電極にはんだ付けする、あるいは、はんだ付けに替えて溶接や導電性接着剤で接続してコイル本体を構成し、さらにドラム状フェライトコアの巻芯部に巻線を巻回した外周を樹脂で封止して保護する構造が採用されている。ドラム状フェライトコアの鍔の形状は、方形あるいは円形にしておき、さらに巻芯部周囲も樹脂封止することで、全体形状を直方体状又は円柱状として実装し易いチップ部品形状としている。その他に樹脂としてフェライト入り樹脂を用いると、チップインダクタの電気的特性を変えたり、樹脂で封止することが磁気シールドになることも知られている。
【0003】
このコイル本体を樹脂で封止する方法として、例えば、コイル本体を上下金型で挟んだ状態で樹脂が注入されるキャビティを形成し、キャビティに連通するランナーを通じて樹脂をキャビティに注入している。トランジスタやIC等の樹脂封止電子部品の製造に用いられるトランスファー樹脂封止方法と同じである。
【0004】
図6は従来の成形方法の1例で、(A)は平面図、(B)は側断面図であり、ランナー1、ゲート2を通してタブレット(成形終了後はカル3となる)より製品4に樹脂が供給される。
【0005】
図7は従来の成形方法の他の例で、(A)は平面図、(B)は側断面図であり、タブレット3を複数個所に設け、各タブレット(成形終了後はカル3となる)に対応させて設けたランナー1、ゲート2を通して製品4に樹脂が供給される。この場合、各製品4に樹脂が均等に供給されるようにランナーを配置している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、製品4が超小型のチップ部品の場合、製品の樹脂成形に利用される樹脂量に比較してランナー部分の樹脂量が相当大きくなり、材料効率が非常に悪い問題がある。
【0007】
また、製品4はゲート2を介しランナー1に接続した状態で排出されるため、ゲート2での切断作業が必要となり、処理コストがかかる。
【0008】
本発明の第1の目的は、上記の点に鑑み、ランナーレスで成形可能な構成とすることで、材料効率の大幅向上を図ったチップインダクタの製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の第2の目的は、キャビティから成形後のチップインダクタを取り出す際にゲートが切り離されるように構成し、製造工数の削減を図ったチップインダクタの製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明のその他の目的や新規な特徴は後述の実施の形態において明らかにする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、両側の鍔間に巻芯部を有するドラム状磁気コアの前記巻芯部に巻線を施したコイル本体の少なくとも巻線部を樹脂で覆うチップインダクタの製造方法において、
前記コイル本体を収容するキャビティを有するとともにキャビティに向かって先細となった錐状樹脂注入路と該錐状樹脂注入路に直結したタブレット収容部とを有する金型を用い、前記タブレット収容部内で加熱により溶融した樹脂を加圧して前記錐状樹脂注入路から前記キャビティに注入する工程を含み、
前記キャビティは、前記ドラム状磁気コアの鍔外周が前記キャビティ内面に隙間無く当接するように構成され、
前記錐状樹脂注入路の開口は、前記両側の鍔間に存在し、かつ前記巻芯部と対向していることを特徴としている。
【0012】
本願請求項2の発明に係るチップインダクタの製造方法は、請求項1において、前記キャビティが前記コイル本体を鍔端面同士が当接した状態で複数収容し、
各々のコイル本体の巻芯部を含む両側鍔間領域は、各コイル本体の鍔によって他の両側鍔間領域と仕切られ、
前記錐状樹脂注入路が各々のコイル本体の巻芯部に対応して設けられて前記タブレット収容部を共用していることを特徴としている。
【0013】
本願請求項3の発明に係るチップインダクタの製造方法は、両側の鍔間に巻芯部を有するドラム状磁気コアの前記巻芯部に巻線を施したコイル本体の巻線部を樹脂で覆うチップインダクタの製造方法において、
前記コイル本体を前記鍔端面同士が当接した状態で複数収容するキャビティを有するとともに、該キャビティの巻芯部収容部分に開口しかつ当該キャビティに向かって先細となった錐状樹脂注入路と該錐状樹脂注入路に直結したタブレット収容部とを有し、さらに前記キャビティ内面のうち少なくとも前記鍔に対接する部分を弾性材で構成した金型を用い、前記タブレット収容部内で加熱により溶融した樹脂を加圧して前記錐状樹脂注入路から前記キャビティに注入する工程を含み、
前記錐状樹脂注入路が各々のコイル本体の巻芯部に対応して設けられて前記タブレット収容部を共用し、
前記錐状樹脂注入路の開口は、各々のコイル本体の両側の鍔間に存在し、かつ各コイル本体の巻芯部と対向し、
前記弾性材は、弾性変形により前記キャビティ内面と前記鍔の外周との隙間をシールすることを特徴としている。
【0014】
本願請求項4の発明に係るチップインダクタの製造方法は、請求項3において、前記弾性材は、前記錐状樹脂注入路の開口及びその周辺部を除くように設けられ、
前記錐状樹脂注入路の開口及びその周辺部は金属が露出していることを特徴としている。
【0015】
本願請求項5の発明は、請求項3又は4において、前記弾性材が成形分割面にも延在していることを特徴としている。
【0016】
本願請求項6の発明に係るチップインダクタの製造方法は、請求項1,2,3,4又は5において、前記金型は相互に接離自在な上型と下型とを突き合わせた状態で前記キャビティを形成し、前記上型又は下型のいずれかに前記錐状樹脂注入路を形成し、かつ前記タブレット収容部内で溶融した樹脂を加圧して前記錐状樹脂注入路を通して前記キャビティに注入する加圧手段を有するものであり、この加圧手段は、前記タブレット収容部内で硬化した樹脂と嵌合し保持する保持手段を有し、
前記キャビティへの樹脂注入、硬化後に、前記タブレット収容部内に残ったカル及び前記錐状樹脂注入路内に残った錐状ゲートを前記保持手段によって保持しながら前記加圧手段後退させることにより前記上型と前記下型とを突き合わせた状態のまま前記キャビティ内の成形樹脂から前記錐状ゲートを切り離すようにしたことを特徴としている。
【0017】
本願請求項7の発明に係るチップインダクタの製造方法は、請求項2,3,又は5において、前記錐状樹脂注入路がそれぞれ同じ形状で、等しい長さであることを特徴としている。
本願請求項8の発明に係るチップインダクタの製造装置は、相互に接離自在でそれぞれ凹溝を有する上型と下型とを突き合わせた状態でコイル本体を収容するキャビティを形成するとともに、前記上型又は下型のいずれかに当該キャビティに向かって先細となった錐状樹脂注入路と該錐状樹脂注入路に直結したタブレット収容部とを有し、さらに、前記タブレット収容部内で溶融した樹脂を加圧して前記錐状樹脂注入路を通して前記キャビティに注入する加圧手段を有する金型と、
前記金型を加熱する加熱手段とを備え、
前記上型及び下型の前記凹溝は、前記コイル本体の両側の鍔外周と隙間無く当接するように構成され、
前記錐状樹脂注入路の開口は、前記コイル本体の両側の鍔間に存在し、かつ前記コイル本体の巻芯部と対向していることを特徴としている。
本願請求項9の発明に係るチップインダクタの製造装置は、請求項8において、前記キャビティが前記コイル本体を鍔端面同士が当接した状態で複数収容し、
各々のコイル本体の巻芯部を含む両側鍔間領域は、各コイル本体の鍔によって他の両側鍔間領域と仕切られ、
前記錐状樹脂注入路が各々のコイル本体の巻芯部に対応して設けられて前記タブレット収容部を共用していることを特徴としている。
本願請求項10の発明に係るチップインダクタの製造装置は、相互に接離自在でそれぞれ凹溝を有する上型と下型とを突き合わせた状態でコイル本体を鍔端面同士が当接した状態で複数収容するキャビティを形成するとともに、前記上型又は下型のいずれかに当該キャビティに向かって先細となった錐状樹脂注入路と該錐状樹脂注入路に直結したタブレット収容部とを有し、さらに、前記タブレット収容部内で溶融した樹脂を加圧して前記錐状樹脂注入路を通して前記キャビティに注入する加圧手段を有する金型と、
前記金型を加熱する加熱手段とを備え、
前記錐状樹脂注入路が各々のコイル本体の巻芯部に対応して設けられて前記タブレット収容部を共用し、
前記錐状樹脂注入路の開口は、各々のコイル本体の両側の鍔間に存在し、かつ各コイル本体の巻芯部と対向し、
前記上型及び下型の前記凹溝は、前記コイル本体の両側の鍔外周と対接し、この対接面は弾性材で構成され、
前記弾性材は、弾性変形により前記キャビティ内面と前記鍔の外周との隙間をシールすることを特徴としている。
本願請求項11の発明に係るチップインダクタの製造装置は、請求項10において、前記弾性材は、前記錐状樹脂注入路の開口及びその周辺部を除くように設けられ、
前記錐状樹脂注入路の開口及びその周辺部は金属が露出していることを特徴としている。
本願請求項12の発明に係るチップインダクタの製造装置は、請求項10又は11において、記弾性材が成形分割面にも延在していることを特徴としている。
本願請求項13の発明に係るチップインダクタの製造装置は、請求項8,9,10,11又は12において、前記加圧手段は、前記タブレット収容部内で硬化した樹脂と嵌合し保持する保持手段を有し、前記キャビティへの樹脂注入、硬化後に、前記タブレット収容部内に残ったカル及び前記錐状樹脂注入路内に残った錐状ゲートを前記保持手段によって保持しながら後退することにより、前記上型と前記下型とを突き合わせた状態のまま前記キャビティ内の成形樹脂から前記錐状ゲートを切り離すことを特徴としている。
本願請求項14の発明に係るチップインダクタの製造装置は、請求項9,10,11又は12において、前記錐状樹脂注入路がそれぞれ同じ形状で、等しい長さであることを特 徴としている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るチップインダクタの製造方法の実施の形態を図面に従って説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態における金型の正断面図、図2は同側断面図、図3は前記金型を下型側よりみた底面図である。また、図4は金型のキャビティへのコイル本体の配置状態を示す。
【0020】
本実施の形態で成形対象とするチップ状のコイル本体10は、図5(A)のように、磁気コアとして両側の方形鍔12間に巻芯部13を有するドラム状フェライトコア11を用い、その巻芯部13の周囲に巻線14が巻かれたものである。巻線14の両端部は方形鍔12の端面に形成された電極15にはんだ付け等で接続固定される。
【0021】
また、本実施の形態で用いる金型構造について説明すると、図1乃至図3において、20は下ベース型(下型)であり、ここに複数のV溝状のコイル本体配置凹溝21が形成されている。個々の凹溝21は、図2及び図3のように、コイル本体10を方形鍔12の端面同士が当接する状態として複数配置する形状である。
【0022】
前記下ベース型20の上型嵌合凹部22には上型30が昇降自在に嵌合するように設けられており、上型下面(下ベース型への当接面)にも複数のV溝状のコイル本体配置凹溝31が形成されている。そして、下ベース型20と上型30とを突き合わせた状態にてコイル本体を収容するキャビティ41が形成されるようになっている。そして、キャビティ41はコイル本体10を方形鍔12の端面同士が当接する状態として複数収容する。ここで、キャビティ41内において、ドラム状フェライトコア11の方形鍔12はキャビティ41内面に隙間無く当接するように設定する。
【0023】
前記下ベース型20にはキャビティ41内の各コイル本体10に対応して円錐状樹脂注入路23がそれぞれ形成され、円錐状樹脂注入路23の先細の先端は凹溝21の底部に開口している。より詳細に言えば、図4(A),(B)のように円錐状樹脂注入路23はキャビティ41の巻芯部13収容部分に開口している。
【0024】
前記下ベース型20の下側はタブレット収容部24となっており、ここにキャビティ41内に注入する樹脂のタブレット50(通常、熱硬化性樹脂)が収容される。タブレット50はタブレット収容部24内に下方から嵌入する(昇降自在な)加圧手段としての下プランジャ51で加圧されるように構成されている。また、下プランジャ51中央部に対し昇降自在にカル離型ピン55が設けられている。下ベース型20の下側に設けられたこれらの機構は樹脂移送器を構成している。
【0025】
前記下プランジャ51の周囲に加熱ベース60が配置されている。加熱ベース60は下ベース型20、下プランジャ51、上型30を加熱して150℃程度に昇温するものである。
【0026】
次に、チップインダクタの製造手順について説明する。図5(A)のようにドラム状フェライトコア11の巻芯部13の周囲に巻線14を施し、巻線の両端部を方形鍔12端面の電極15に接続固定してコイル本体10を作製し、これを下ベース型20のV溝状のコイル本体配置凹溝21内に配置する。図2及び図3から判るように、コイル本体10を、その方形鍔端面同士が当接した状態で凹溝21に複数個配置する。
【0027】
そして、下ベース型20の上型嵌合凹部22に上型30を嵌入し、下降させて下ベース型20に当接させる。
【0028】
その後、加熱ベース60によって金型全体を150℃程度に予熱してから、下ベース型20下側のタブレット収容部24に樹脂のタブレット50を入れる。タブレット50の樹脂が溶融したらベース型20及び上型30を固定支持するとともに、下プランジャ51及びカル離型ピン55を一体的に押し上げて(推力500kg)、溶融樹脂を円錐状樹脂注入路23を通してキャビティ41に注入する。この結果、図5(B)のようにドラム状フェライトコア11の巻線14を設けた巻芯部13の周囲が成形樹脂50Aで覆われる。この段階ではキャビティ41内の成形樹脂50Aと円錐状樹脂注入路23内の円錐状ゲート50Bとタブレット収容部24内部に残ったカル50Cはつながった状態である。
【0029】
キャビティ41内の樹脂が硬化した後、下プランジャ51及びカル離型ピン55を一体的に下降させる。このとき、図5(C)のように下プランジャ51の上端面に形成してある凹溝52は底面が幅広で開口が底面より狭く形成されており、タブレット50が溶融してタブレット収容部24内に残ったカル50Cが凹溝52に容易に抜けないように嵌合している。従って、下プランジャ51が下降するのに伴いカル50C及びゲート50Bも引き下げられ、キャビティ41内の成形樹脂50Aとゲート50B間はゲート先端のゲート口で破断する(図4(A)で見た正面方向のゲート口の幅Wは極めて狭いため、容易に破断する)。その後、上型30を引き上げる。
【0030】
この結果、図5(D)のように、ドラム状フェライトコア11の巻線14周囲を成形樹脂50Aで被覆(樹脂封止)したチップインダクタが得られる。
【0031】
なお、下プランジャ51と共に下降したゲート50B及びカル50Cは、カル離型ピン55を突き上げることで、下プランジャ51から外れて排出される。
【0032】
この実施の形態によれば、次の通りの効果を得ることができる。
【0033】
(1) 金型がランナーレス構造であり、タブレット50を加熱することで溶融した樹脂が直接円錐状樹脂注入路23(ゲート50B)を通してキャビティ41内に注入されて成形樹脂50Aとなる。このため、樹脂の無駄が少なく、材料効率性が向上する。
【0034】
(2) 金型がランナーレス構造で、かつ各コイル本体に対応してそれぞれ設けられた円錐状樹脂注入路23の形状、長さが同じため、均一な樹脂充填が可能で、さらに低圧充填が可能である。
【0035】
(3) 加圧手段としての下プランジャ51にカル50Cが係合する凹溝52を形成してあり、下プランジャ51を後退させることで、これと一体的にカル50C及びゲート50Bも移動し、ゲート50B先端のゲート口にてキャビティ41内の成形樹脂50Aとゲート50Bとが切り離される。つまり、金型内でゲート切断処理ができ、処理工数の低減を図ることができる。
【0036】
(4) 金型に形成したキャビティ41がコイル本体10を方形鍔端面同士が当接した状態で1列に複数収容し、前記円錐状樹脂注入路23が各々のコイル本体10の巻芯部に対応して設けられており、さらに、そのようなキャビティ41が金型内に複数列配設されているため、金型内にコイル本体10を高密度で配置でき、装置の小型化が可能である。
【0037】
なお、実施の形態に示した金型の構成を上下反転したような機構(上型側に円錐状状樹脂注入路を設け、プランジャを上型の上側に設ける構造)であってもよい。
【0038】
上記実施の形態の場合、磁気コアとしてのドラム状フェライトコア11を多数個で整列して金型のキャビティ41に収容するので、そのコア11の方形鍔の部分の寸法バラツキ(公差内であっても)や、特にコア11の両端の方形鍔の外周部分や電極部分等の表面状態の面粗さ等のバラツキが原因で、上下の金型(下ベース型20及び上型30)を閉じた場合でも、コア11との間に僅かの隙間が発生することがある。その隙間から加圧された樹脂が流出して、コア11の両端面まで付着したり、又はバリとなる。不要な樹脂のバリにより、導通不良を起こし、端子電極部の不良になったり、隣接コア同士の接合により離型性の低下が発生するおそれがある。
【0039】
この問題を解決可能なチップインダクタの製造方法を本発明の他の実施の形態として図8乃至図13を用いて説明する。
【0040】
図8は本発明の他の実施の形態における金型の側断面図、図9は同正断面図、図10及び図11は金型の弾性材配置を示す拡大側断面図及び拡大正断面図、図12は上型側の望ましい弾性材配置を示す底面図、図13は下ベース型側の望ましい弾性材配置を示す平面図である。
【0041】
これらの図に示すように、下ベース型(下型)20に複数のV溝状のコイル本体配置凹溝21が形成され、前記下ベース型20の上型嵌合凹部22には上型30が昇降自在に嵌合するように設けられており、上型下面(下ベース型への当接面)にも複数のV溝状のコイル本体配置凹溝31が形成されている。そして、下ベース型20と上型30とを突き合わせた状態にてコイル本体を収容するキャビティ41が形成されるようになっている。そして、キャビティ41はコイル本体10を方形鍔12の端面同士が当接する状態として複数収容する。ここで、上型30のV溝状コイル本体配置凹溝31の内面の全面は、フッ素系ゴム等の耐熱性弾性材31aで形成されている(覆われている)。また、下ベース型20のV溝状コイル本体配置凹溝21の内面は、少なくともドラム状フェライトコア11の方形鍔12に対接(圧接)する部分が、フッ素系ゴム等の耐熱性弾性材21aで形成されている(覆われている)。但し、円錐状樹脂注入路23の開口及びその周辺部には弾性材は設けない(下ベース型20の金属部20aが露出した面となっている)。なお、フッ素系ゴム等の耐熱性弾性材21a,31aの基部側はそれぞれ下ベース型20、上型30の金属部20a,30aであり、耐熱性弾性材21a,31aはその金属部20a,30aに装着一体化されている。
【0042】
フッ素系ゴムは樹脂成形における耐熱性を有するので、前記耐熱性弾性材21a,31aとして特に好ましく、望ましい硬度は70〜90ショアAである。
【0043】
上型(樹脂の非注入口側)30のコイル本体配置凹溝31に設ける耐熱性弾性材31aは加熱時の偏膨張防止のために、薄肉化及び肉厚均一化を図ることが望ましい。また、下ベース型20に設ける耐熱性弾性材21aは図9及び図13に示すように成形分割面(パーティング面)にも延在しており、仕切弾性材として機能する。すなわち、下ベース型20のV溝状コイル本体配置凹溝21からの樹脂の流出防止、成形分割面からの樹脂の流出防止を図るようにしている。また、耐熱性弾性材21aの仕切り幅Lは、キャビティ41内にコア11を整列させた時に、長さ方向(長手方向)の累積ずれを吸収可能な幅に設定する。つまり、端面で当接する隣り合うコア11の方形鍔12同士の部分を十分覆う幅にする。
【0044】
なお、その他の金型構成及びコイル本体10を用いたチップインダクタの製造過程は図1乃至図5に示した前述の実施の形態と同様であり、同一又は相当部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0045】
図8乃至図13に示す本発明の他の実施の形態の場合、下ベース型20と上型30とも、ドラム状フェライトコア11の方形鍔12に当接する位置を含む範囲にフッ素ゴム等の耐熱性弾性材21a,31aを設置してあり、下ベース型20と上型30とを閉じてキャビティ41を形成したときに、弾性材21a,31aの弾性変形により金型とコア11の方形鍔外周との隙間をシールして、方形鍔12の電極15を形成した面(端子電極面)への樹脂の流出を防止する。また、下ベース型20には成形分割面(パーティング面)にも弾性材21aが延長して設けてあるため、成形分割面からの樹脂の流出防止も図ることができる。
【0046】
この結果、コア11の電極15を設けた面(端子電極)への樹脂の付着、バリが無くなり、また隣接コア同士の接合が無くなり離型性が向上し、品質不良率の大幅な低下を図り、設備の稼動率を向上させることができる。
【0047】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されることなく請求項の記載の範囲内において各種の変形、変更が可能なことは当業者には自明であろう。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るチップインダクタの製造方法によれば、ランナーレスで成形可能な金型構造とすることで、材料効率の大幅向上を図ることができ、さらには樹脂の均一充填性を確保でき、さらに充填圧の低圧化を図ることが可能である。また、金型構造の小型化を図るのにも有利である。
【0049】
さらに、コイル本体が方形鍔を有する磁気コアに巻線したものである場合、金型のキャビティ内面のうち少なくとも前記方形鍔に対接する部分を弾性材で構成することで、前記弾性材の弾性変形により前記方形鍔外周とキャビティ内面間をシールして隙間を無くし、コア電極面への樹脂の付着やバリの発生を防止して、歩留まりの向上及び生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るチップインダクタの製造方法の実施の形態における金型(わかり易いように上型と下ベース型間に隙間を設けて図示)の正断面図である。
【図2】同じく金型(上型と下ベース型が当接状態)の側断面図である。
【図3】前記金型を下型側よりみた底面図である。
【図4】前記金型のキャビティへの個々のコイル本体の配置状態を示し、(A)は拡大正断面図、(B)は拡大側断面図である。
【図5】成形動作を示す説明図である。
【図6】従来の成形方法の1例であって(A)は平面図、(B)は側断面図である。
【図7】従来の成形方法の他の例であって(A)は平面図、(B)は側断面図である。
【図8】本発明に係るチップインダクタの製造方法の他の実施の形態における金型(上型と下ベース型が当接状態)の側断面図である。
【図9】同じく金型(わかり易いように上型と下ベース型間に隙間を設けて図示)の正断面図である。
【図10】同じく要部拡大側断面図である。
【図11】同じく要部拡大正断面図である。
【図12】上型側での望ましい弾性材配置を示す底面図である。
【図13】下ベース型側での望ましい弾性材配置を示す平面図である。
【符号の説明】
1 ランナー
2,50B ゲート
3 タブレット
4 製品
10 コイル本体
11 ドラム状フェライトコア
12 方形鍔
13 巻芯部
14 巻線
15 電極
20 下ベース型
21,31,52 凹溝
21a,31a 弾性材
22 上型嵌合凹部
23 円錐状樹脂注入路
24 タブレット収容部
30 上型
41 キャビティ
50 タブレット
50A 成形樹脂
50C カル
51 下プランジャ
55 カル離型ピン
60 加熱ベース

Claims (14)

  1. 両側の鍔間に巻芯部を有するドラム状磁気コアの前記巻芯部に巻線を施したコイル本体の少なくとも巻線部を樹脂で覆うチップインダクタの製造方法において、
    前記コイル本体を収容するキャビティを有するとともにキャビティに向かって先細となった錐状樹脂注入路と該錐状樹脂注入路に直結したタブレット収容部とを有する金型を用い、前記タブレット収容部内で加熱により溶融した樹脂を加圧して前記錐状樹脂注入路から前記キャビティに注入する工程を含み、
    前記キャビティは、前記ドラム状磁気コアの鍔外周が前記キャビティ内面に隙間無く当接するように構成され、
    前記錐状樹脂注入路の開口は、前記両側の鍔間に存在し、かつ前記巻芯部と対向していることを特徴とする、チップインダクタの製造方法。
  2. 前記キャビティが前記コイル本体を鍔端面同士が当接した状態で複数収容し
    各々のコイル本体の巻芯部を含む両側鍔間領域は、各コイル本体の鍔によって他の両側鍔間領域と仕切られ、
    前記錐状樹脂注入路が各々のコイル本体の巻芯部に対応して設けられて前記タブレット収容部を共用している請求項記載のチップインダクタの製造方法。
  3. 両側の鍔間に巻芯部を有するドラム状磁気コアの前記巻芯部に巻線を施したコイル本体の巻線部を樹脂で覆うチップインダクタの製造方法において、
    前記コイル本体を前記鍔端面同士が当接した状態で複数収容するキャビティを有するとともに、該キャビティの巻芯部収容部分に開口しかつ当該キャビティに向かって先細となった錐状樹脂注入路と該錐状樹脂注入路に直結したタブレット収容部とを有し、さらに前記キャビティ内面のうち少なくとも前記鍔に対接する部分を弾性材で構成した金型を用い、前記タブレット収容部内で加熱により溶融した樹脂を加圧して前記錐状樹脂注入路から前記キャビティに注入する工程を含み、
    前記錐状樹脂注入路が各々のコイル本体の巻芯部に対応して設けられて前記タブレット収容部を共用し、
    前記錐状樹脂注入路の開口は、各々のコイル本体の両側の鍔間に存在し、かつ各コイル本体の巻芯部と対向し、
    前記弾性材は、弾性変形により前記キャビティ内面と前記鍔の外周との隙間をシールすることを特徴とするチップインダクタの製造方法。
  4. 前記弾性材は、前記錐状樹脂注入路の開口及びその周辺部を除くように設けられ、
    前記錐状樹脂注入路の開口及びその周辺部は金属が露出している請求項3記載のチップインダクタの製造方法
  5. 前記弾性材が成形分割面にも延在している請求項3又は4記載のチップインダクタの製造方法。
  6. 前記金型は相互に接離自在な上型と下型とを突き合わせた状態で前記キャビティを形成し、前記上型又は下型のいずれかに前記錐状樹脂注入路を形成し、かつ前記タブレット収容部内で溶融した樹脂を加圧して前記錐状樹脂注入路を通して前記キャビティに注入する加圧手段を有するものであり、この加圧手段は、前記タブレット収容部内で硬化した樹脂と嵌合し保持する保持手段を有し、
    前記キャビティへの樹脂注入、硬化後に、前記タブレット収容部内に残ったカル及び前記錐状樹脂注入路内に残った錐状ゲートを前記保持手段によって保持しながら前記加圧手段後退させることにより前記上型と前記下型とを突き合わせた状態のまま前記キャビティ内の成形樹脂から前記錐状ゲートを切り離すようにした請求項1,2,3,4又は5記載のチップインダクタの製造方法。
  7. 前記錐状樹脂注入路がそれぞれ同じ形状で、等しい長さである請求項2,3,又は5記載のチップインダクタの製造方法。
  8. 相互に接離自在でそれぞれ凹溝を有する上型と下型とを突き合わせた状態でコイル本体を収容するキャビティを形成するとともに、前記上型又は下型のいずれかに当該キャビティに向かって先細となった錐状樹脂注入路と該錐状樹脂注入路に直結したタブレット収容部とを有し、さらに、前記タブレット収容部内で溶融した樹脂を加圧して前記錐状樹脂注入路を通して前記キャビティに注入する加圧手段を有する金型と、
    前記金型を加熱する加熱手段とを備え、
    前記上型及び下型の前記凹溝は、前記コイル本体の両側の鍔外周と隙間無く当接するように構成され、
    前記錐状樹脂注入路の開口は、前記コイル本体の両側の鍔間に存在し、かつ前記コイル本体の巻芯部と対向していることを特徴とする、チップインダクタの製造装置。
  9. 前記キャビティが前記コイル本体を鍔端面同士が当接した状態で複数収容し、
    各々のコイル本体の巻芯部を含む両側鍔間領域は、各コイル本体の鍔によって他の両側鍔間領域と仕切られ、
    前記錐状樹脂注入路が各々のコイル本体の巻芯部に対応して設けられて前記タブレット収容部を共用している請求項8記載のチップインダクタの製造装置。
  10. 相互に接離自在でそれぞれ凹溝を有する上型と下型とを突き合わせた状態でコイル本体を鍔端面同士が当接した状態で複数収容するキャビティを形成するとともに、前記上型又は下型のいずれかに当該キャビティに向かって先細となった錐状樹脂注入路と該錐状樹脂注入路に直結したタブレット収容部とを有し、さらに、前記タブレット収容部内で溶融した樹脂を加圧して前記錐状樹脂注入路を通して前記キャビティに注入する加圧手段を有する金型と、
    前記金型を加熱する加熱手段とを備え、
    前記錐状樹脂注入路が各々のコイル本体の巻芯部に対応して設けられて前記タブレット収容部を共用し、
    前記錐状樹脂注入路の開口は、各々のコイル本体の両側の鍔間に存在し、かつ各コイル本体の巻芯部と対向し、
    前記上型及び下型の前記凹溝は、前記コイル本体の両側の鍔外周と対接し、この対接面は弾性材で構成され、
    前記弾性材は、弾性変形により前記キャビティ内面と前記鍔の外周との隙間をシールすることを特徴とする、チップインダクタの製造装置。
  11. 前記弾性材は、前記錐状樹脂注入路の開口及びその周辺部を除くように設けられ、
    前記錐状樹脂注入路の開口及びその周辺部は金属が露出している請求項10記載のチップインダクタの製造装置
  12. 前記弾性材が成形分割面にも延在している請求項10又は11記載のチップインダクタの製造装置。
  13. 前記加圧手段は、前記タブレット収容部内で硬化した樹脂と嵌合し保持する保持手段を有し、前記キャビティへの樹脂注入、硬化後に、前記タブレット収容部内に残ったカル及び前記錐状樹脂注入路内に残った錐状ゲートを前記保持手段によって保持しながら後退することにより、前記上型と前記下型とを突き合わせた状態のまま前記キャビティ内の成形樹脂から前記錐状ゲートを切り離す請求項8,9,10,11又は12記載のチップイン ダクタの製造装置。
  14. 前記錐状樹脂注入路がそれぞれ同じ形状で、等しい長さである請求項9,10,11又は12記載のチップインダクタの製造装置。
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