JP4055464B2 - 車体位置決め方法および車体位置決め装置 - Google Patents

車体位置決め方法および車体位置決め装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、車体を構成する複数の部品相互を組み付ける際に各部品を位置決めする車体位置決め方法および車体位置決め装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車体を構成する複数の部品として、車体前部部品、ボディサイド部品、ルーフ部品などを相互に組み付けて溶接接合する場合には、それぞれの部品を個別に位置決め固定する位置決め治具を、床に固定されたベースフレームに結合し、床座標系に対する各位置決め治具の絶対位置を保証することで、各部品の相対位置を間接的に保証している(例えば、特公平8−15876号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の車体位置決め装置にあっては、次のような問題がある。
【0004】
▲1▼ 車体を構成する各部品に対して位置決めする位置決め治具を各部品に対応して個別に備えているため、設備の大規模化・設備コストの高騰・設備準備期間の長期化を招き、製造コストが上昇する。
【0005】
▲2▼ 各部品を位置決めする位置決め治具の位置精度に、ベースフレームの誤差が影響するので、高い位置決め精度を確保するためには、各治具の精度をより高くする必要がある。
【0006】
▲3▼ 上記▲1▼における設備の大型化により、溶接作業時に制約を受け、溶接工法が制限されるなど、作業性の悪化を招く。
【0007】
そこで、この発明は、製造コストの上昇び、位置決め精度の悪化および作業性の悪化を防止することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、互いに接合されて車体を構成する複数の部品相互間に開口部が形成され、この開口部と外周縁の形状が近似形状の位置決め治具を有するとともに、車体近傍に治具受けを配置し、この治具受けに、前記位置決め治具を、前記開口部への正規の装着位置に対し、開口部から離れた状態となるよう前記位置決め治具の一部を回転可能にセットし、その後前記位置決め治具を、前記治具受けに一部がセットされた状態のまま前記開口部の正規の位置へ、前記セットされた部位を中心として回転させて装着し、前記各部品の相対位置を位置決めする車体位置決め方法としてある。
【0011】
請求項の発明は、請求項の発明の車体位置決め方法において、前記位置決め治具を、ワイヤで吊った状態で下降させて前記治具受けにセットするとともに、前記開口部の正規の位置となるよう回転させて装着するものとしてある。
【0012】
請求項の発明は、請求項の発明の車体位置決め方法において、前記ワイヤで吊った状態の前記位置決め治具を、前記開口部の正規の位置に装着した後は、前記ワイヤを弛ませるものとしてある。
【0014】
請求項の発明は、互いに接合されて車体を構成する複数の部品相互間に開口部が形成され、この開口部と外周縁の形状が近似形状で、この開口部周縁の前記各部品に対して位置決めしつつ前記開口部に装着されて、前記各部品の相対位置を位置決めする位置決め治具を備えるとともに、車体近傍に治具受けを配置し、この治具受けは、前記位置決め治具が、前記開口部への正規の装着位置に対し、開口部から離れた状態で位置決め治具の一部が回転可能にセットされ、かつこのセット状態から、前記開口部の正規の位置へ前記位置決め治具を、前記セットされた部位を中心として回転案内する構成としてある。
【0015】
請求項の発明は、請求項の発明の構成において、前記治具受けは凹部を備え、前記位置決め治具は、前記凹部に一部がセットされて回転可能となる回転軸部を備えている構成としてある。
【0016】
請求項の発明は、請求項またはの発明の構成において、前記治具受けは、車体の車幅方向両側に一対備えている構成としてある。
【0017】
請求項の発明は、請求項ないしのいずれか1項の発明の構成において、前記位置決め治具は、ルーフ部品と、左右のボディサイド部品と、車体前部部品とで形成される前部開口部に装着される構成としてある。
【0018】
請求項の発明は、請求項ないしのいずれか1項の発明の構成において、前記位置決め治具は、ルーフ部品と、左右のボディサイド部品と、車体後部部品とで形成される後部開口部に装着される構成としてある。
【0019】
請求項の発明は、請求項ないしのいずれか1項の発明の構成において、前記位置決め治具は、ルーフ部品と、左右のボディサイド部品と、車体前部部品とで形成される前部開口部に装着される前部位置決め治具および、前記ルーフ部品と、前記左右のボディサイド部品と、車体後部部品とで形成される後部開口部に装着される後部位置決め治具をそれぞれ備えている構成としてある。
【0020】
請求項10の発明は、請求項またはの発明の構成において、前記車体前部部品は、フロアパネルを一体として含んでいる構成としてある。
【0021】
請求項11の発明は、請求項ないし10のいずれか1項の発明の構成において、前記位置決め治具は、開口部に配置されるメインフレームと、このメインフレームに設けられて各部品の周縁に対して位置決めする位置決め部とを有する構成としてある。
【0022】
請求項12の発明は、請求項11の発明の構成において、前記位置決め部は、互いに接合される部品相互の接合部に当接して位置決めする構成としてある。
【0024】
【発明の効果】
請求項の発明または請求項の発明によれば、位置決め治具を、車体の各部品相互間で形成される開口部に直接装着せず、治具受けにセットした後装着するので、位置決め治具の車体への接触による損傷を防止できるとともに、損傷を防止できることから位置決め治具の装着作業速度を高めることができる。また、位置決め治具により各部品相互の相対位置を位置決めするようにしているので、位置決め精度が向上するとともに、各部品に対応する位置決め治具を個別に設ける必要がなく、位置決め装置として簡素化して製造コストが低下し、簡素化した位置決め装置を用いることで、作業性の悪化を防止することができる。
また、位置決め治具は、治具受けにセットした後回転させることで、開口部の正規の位置に容易に装着することができる。
【0027】
請求項の発明によれば、位置決め治具の治具受けへのセットおよび車体開口部への装着を短時間で容易に行うことができる。
【0028】
請求項の発明によれば、ワイヤを弛ませることで、位置決め治具による車体開口部に対する位置決め精度が向上する。
請求項5の発明によれば、位置決め治具は、治具受けにセットした後回転させることで、開口部の正規の位置に容易に装着することができる。
請求項6の発明によれば、位置決め治具は、車体の車幅方向両側に設けてある治具受けにセットした後、車体開口部に装着するので、位置決め治具の車体への接触による損傷を確実に防止することができる。
【0029】
請求項の発明によれば、車体を構成する、ルーフ部品、左右のボディサイド部品、車体前部部品の各部品相互の位置決め精度が向上する。
【0030】
請求項の発明によれば、車体を構成する、ルーフ部品、左右のボディサイド部品、車体後部部品の各部品相互の位置決め精度が向上する。
【0031】
請求項の発明によれば、車体を構成する、ルーフ部品、左右のボディサイド部品、車体前部部品の各部品相互の位置決め精度が向上するとともに、ルーフ部品、左右のボディサイド部品、車体後部部品の各部品相互の位置決め精度が向上する。
【0032】
請求項10の発明によれば、車体を構成する、ルーフ部品、左右のボディサイド部品、フロアパネルを一体として含む車体前部部品の各部品相互の位置決め精度が向上する。
【0033】
請求項11の発明によれば、開口部内に配置されるメインフレームと、このメインフレームに設けられて各部品の周縁に対して位置決めする位置決め部とを有する簡素化された構成によって位置決め治具を構成することができる。
【0034】
請求項12の発明によれば、位置決め部が、互いに接合される部品相互の接合部に当接することで、部品相互の位置決め精度が向上する。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の参考例および実施の形態を図面に基づき説明する。
【0036】
図1は、この発明の参考例に係わる車体位置決め装置の概略を示す斜視図である。自動車の車体1は、ルーフ部品としてのルーフアッセンブリ3と、左右のボディサイド部品としてのボディサイドアッセンブリ5,7と、車体前部部品としてのフロアアッセンブリ9とで主として構成されている。
【0037】
ルーフアッセンブリ3の車体前方側(図1中で矢印F方向)の周縁部3aと、ボディサイドアッセンブリ5,7の同周縁部5a,7aと、フロアアッセンブリ9の前記周縁部3aに対向する周縁部9aとの四方に囲まれて前部開口部11が形成される。この前部開口部11に、前部開口部11と外周縁の形状が近似形状の前部位置決め治具13が装着されて、ルーフアセンブリ3と、ボディサイドアッセンブリ5,7と、フロアアッセンブリ9との相対位置が位置決めされる。
【0038】
また、ルーフアッセンブリ3の車体後方側の周縁部3bと、ボディサイドアッセンブリ5,7の同周縁部5b,7bと、車体後部部品としての図示しないリアパネル部品の周縁部との四方に囲まれて後部開口部15が形成される。この後部開口部15に、後部開口部15と外周縁の形状が近似形状の後部位置決め治具17が装着されて、ルーフアッセンブリ3と、ボディサイドアッセンブリ5,7と、図示しないリアパネル部品との相対位置が位置決めされる。
【0039】
図2は、図1における前部位置決め治具13の詳細な構造を示している。この前部位置決め治具13は、前部開口部11に配置されるメインフレーム19と、メインフレーム19の外周部に設けられる複数の位置決め部21,23,25とを備えている。
【0040】
メインフレーム19は、矩形状の枠部19aと、枠部19aの対角部相互を連結するほぼX字形状の補強部19bとを備えるとともに、枠部19aの車体前方側(図2中で矢印F方向)の2箇所の角部から、車体前方でかつ車幅方向外側に向けて突出し、前記した位置決め部21を先端に設けたフロア側アーム部19cを備えている。
【0041】
上記フロア側アーム部19cの先端は、フロアアッセンブリ9の位置決め面9bに対してほぼ平行となるピン保持部27を備え、ピン保持部27の下面に、位置決め面9bに形成してある位置決め孔9cに挿入される位置決めピン29が設けられている。位置決め孔9cは、車幅方向に長い長孔となっている。図3は、位置決めピン29が設けられた部位付近の正面図である。
【0042】
ルーフアッセンブリ3の周縁部3aに対向する部分の枠部19aの角部付近には、ルーフ側アーム部31が、周縁部3aに向けて突出して設けられている。図4は、図2のA−A断面図で、ルーフアッセンブリ3は、ルーフパネル33の周縁部3aにてその下面にルーフレール35を備えて閉断面を形成し、ルーフレール35とルーフパネル33の車体前方側の端部には、フランジ接合部37が形成されている。
【0043】
上記したルーフ側アーム部31は、先端側の上面に、ルーフレール35に形成した円形の位置決め孔35aに挿入される位置決めピン39が設けられるとともに、位置決めピン39に対して枠部19a側の上面には、前記したフランジ接合部37の下面に当接して位置出しを行うゲージ部41が設けられている。
【0044】
ボディサイドアッセンブリ5,7の各周縁部5a,7aに対向する部分の枠部19aの角部付近には、ボディサイド側アーム部43,45が、周縁部5a,7aに向けてそれぞれ突出して設けられている。ボディサイド側アーム部43,45の先端は、図5にその詳細を示すように、ボディサイドアッセンブリ5,7のフロントピラー部におけるアウタパネル47の角部に当接して位置出しを行うゲージ部49を備えている。なお、図5中で、符号51はインナパネル、53は補強パネルである。
【0045】
さらに、ゲージ部49の先端には、図2では省略してあるが、クランプシリンダ55が取り付けられている。クランプシリンダ55のピストンロッド57の先端には、ゲージ部49との間で、ボディサイドアッセンブリ5,7のフロントピラー部をクランプ保持するクランプ爪59が設けられている。このクランプ爪59は、アウタパネル47に当接して位置出しを行うアウタ側ゲージ部61と、インナパネル51に当接して位置出しを行うインナ側ゲージ部63とを備え、これら各ゲージ部61,63相互間に、補強パネル53を間に挟んでアウタパネル47とインナパネル51とが相互に接合されるフランジ接合部65が収容される。
【0046】
次に、参考例による作用を説明する。
【0047】
前部位置決め治具13は、車体搬送ラインにセットされた車体1に対し、フロアアッセンブリ9の左右の位置決め孔9cに位置決めピン29を挿入するとともに、ルーフアッセンブリ3の位置決め孔35aに位置決めピン39を挿入する。これにより、フロアアセンブリ9とルーフアッセンブリ3との間の車幅方向および車体前後方向の位置出しがなされる。このとき、ルーフアッセンブリ3のフランジ接合部37の下面にゲージ部41が当接するとともに、フロアアセンブリ9の位置決め面9bにピン保持部27が当接し、フロアアセンブリ9とルーフアッセンブリ3との間の上下方向の位置出しがなされる。
【0048】
さらに、左右のボディサイドアッセンブリ5,7に対し、図5に示したゲージ部49をアウタパネル47の角部に当接させる。このとき、図5に示してあるクランプシリンダ55はピストンロッド57を前進させておき、ゲージ部49がアウタパネル47に当接後、クランプシリンダ55を駆動してピストンロッド57を後退させる。
【0049】
これにより、ゲージ部49がアウタパネル47の角部に押し付けられるとともに、アウタ側ゲージ部61およびインナ側ゲージ部63が、アウタパネル47およびインナパネル51にそれぞれ押し付けられ、ボディサイドアッセンブリ5,7と、フロアアッセンブリ9およびルーフアッセンブリ3との間の車幅方向、車体前後方向および上下方向の位置出しがなされる。
【0050】
図1における後部位置決め治具17についても、上記した前部位置決め治具13と同様に、枠部の周囲に位置決めピンやゲージ部およびクランプシリンダなどを備えて、車体1の各部品、すなわちルーフアッセンブリ3、ボディサイドアッセンブリ5,7および、図示しないリアパネル部品の各周縁部に対して位置決めする。
【0051】
前部位置決め治具13および後部位置決め治具17を車体1の各部品に対して位置決めした後に、各部品相互間の必要箇所に、図示しない溶接ロボットなどを用いて溶接接合する。
【0052】
上記した車体位置決め装置による車体位置決め方法によれば、前部位置決め治具13および後部位置決め治具17により、車体1の各部品相互間の相対位置が位置決めされるので、各部品相互間の位置決め精度が向上したものとなる。
【0053】
また、この位置決め作業の際には、車体前部に対しては前部位置決め治具13を、車体後部に対しては後部位置決め治具17を用いるのみで、各部品に対して個別の治具が不要であるので、設備の大規模化・設備コストの高騰・設備準備期間の長期化を防止でき、製造コストの上昇を抑えることができる。設備の大規模化を防止できることから、溶接作業時に制約を受けにくく、溶接工法などが制限されず、作業性の向上が達成される。
【0054】
上記した位置決め装置は、互いに接合されて車体を構成する複数の部品相互間に開口部が形成される部位に対し、前部位置決め治具13や後部位置決め治具17を装着すればよいので、車種に対応した前部位置決め治具13や後部位置決め治具17を用意するだけで、同一の設備において、あらゆる車種形状・構造に対して適用できる。従来複数の車種を同一の設備で組み立てる場合には、各車種毎の位置決め治具をベースフレームに設置し、これら各車種毎の位置決め治具を、車種切替装置によって切り替えることで対応しているが、本装置によれば、このような複雑な構造とする必要がない。
【0055】
また、前部位置決め治具13および後部位置決め治具17は、前部開口部11および後部開口部15にそれぞれ設置する程度の比較的小型であることから、可搬することで、工場間の生産移管が容易にできる。さらに、各治具13,17は、床に固定したベースフレームなどに結合する必要がないので、車体組立作業を行える場所が限定されず、極めて汎用性の高いものとなる。
【0056】
なお、上記した前部位置決め治具13において、位置決めピン29,39を備えた位置決め部21,25を、フロアアッセンブリ9,ルーフアッセンブリ3にそれぞれ対応して設け、ゲージ部49,クランプシリンダ55およびクランプ爪59を備えた位置決め部23を、ボディサイドアッセンブリ5,7に対応して設ける構成としたが、各位置決め部21,23,25は、これらの部位に限って設けられるものではなく、位置決めする車体1側の形状に応じて取り付け位置や数を適宜変更可能である。このような取り付け位置や数の変更は、後部置決め治具17についても同様である。
【0057】
図6は、ルーフアセンブリ3に対し、位置決め部67により、矢印Yで示す車体前後方向の位置規制を行うとともに、位置決め部69により、ルーフアッセンブリ3とボディサイドアッセンブリ5(7)との接合部71に対して矢印Xで示す車幅方向の位置規制を行っている。位置決め部69には、必要であれば、図5に示したようなクランプシリンダ55を設けてもよい。
【0058】
図7は、図6の別方向(車体内側)から見た斜視図である。位置決め部69は、接合部71付近のルーフアッセンブリ3とボディサイドアッセンブリ5(7)との双方に当接する当接面69aを備えている。このように、接合部71に対して位置規制を行うことで、ルーフアッセンブリ3とボディサイドアッセンブリ5,7との間の位置精度がより向上したものとなる。一方位置決め部67は、ルーフアセンブリ3に当接する、互いにほぼ直角な当接面67a,67bを備えており、車体前後方向および上下方向の位置規制が可能となる。
【0059】
図8は、ハッチバックタイプの車体101に対して前部位置決め治具113および後部位置決め治具117を、前部開口部110および図示されていない後部開口部にそれぞれ装着して、車体101の各部品に対して位置決めを行っている状態を示している。この前部位置決め治具113および後部位置決め治具117は、外周縁の形状が、前部開口部110および後部開口部とそれぞれ近似形状となっている。
【0060】
上記車体101におけるルーフアッセンブリ103は、ループパネルを設ける前のルーフレール135fのみとしてあり、その位置決め部125は、下方に向けて突出する図示されていない位置決めピンが、ルーフレール135fの位置決め孔に挿入されている。
【0061】
左右のボディサイドアセンブリ105,107に対しては、図2における位置決め部23と同様な位置決め部123が設けられ、さらにフロアアッセンブリ109に対しては、図2における位置決め部21と同様な位置決め部121が設けられている。位置決め部123は、一方のボディサイドアセンブリ105または107に対して一つとしてあるが、図2に示してある位置決め部23のようにように2つ設けても構わない。
【0062】
一方、後部位置決め治具117は、車体後部のルーフレール135rに対し、位置決め部125と同様に、図示されていない位置決めピンがルーフレール135rの位置決め孔に挿入されて位置決めを行う位置決め部126を備えるとともに、ボディサイドアセンブリ105,107に対して位置決めを行う位置決め部124を備えている。
【0063】
位置決め部124は、図2における位置決め部23と同様に、図5に示したようなクランプシリンダ55によって適宜クランプ保持する構成とする。図示しないリアパネル部品に対しては、位置決め部126と同様に、位置決めピンをリアパネル部品に設けた位置決め孔に挿入する。
【0064】
上記図8に示した前部位置決め治具113および後部位置決め治具117を備えた位置決め装置においても、前記図1に示したものと同様な効果が得られる。
【0065】
図9は、この発明の第の実施形態に係わる車体位置決め装置の全体構成を示す斜視図である。この車体位置決め装置は、図1に示した参考例のものと同様に、自動車の車体1が、ルーフ部品としてのルーフアッセンブリ3と、左右のボディサイド部品としてのボディサイドアッセンブリ5,7と、車体前部部品としてのフロアアッセンブリ9とで主として構成されている。
【0066】
ルーフアッセンブリ3の車体前方側(図9中で矢印F方向)の周縁部3aと、ボディサイドアッセンブリ5,7の同周縁部5a,7aと、フロアアッセンブリ9の前記周縁部3aに対向する周縁部9aとの四方に囲まれて前部開口部11が形成される。この前部開口部11に、前部開口部11と外周縁の形状が近似形状の前部位置決め治具201が装着されて、ルーフアセンブリ3と、ボディサイドアッセンブリ5,7と、フロアアッセンブリ9との相対位置が位置決めされる。
【0067】
また、ルーフアッセンブリ3の車体後方側の周縁部3bと、ボディサイドアッセンブリ5,7の同周縁部5b,7bと、車体後部部品としてのリアパネル部品271の周縁部271b(図11参照)との四方に囲まれて後部開口部15が形成される。この後部開口部15に、後部開口部15と外周縁の形状が近似形状の後部位置決め治具203が装着されて、ルーフアッセンブリ3と、ボディサイドアッセンブリ5,7と、リアパネル部品271との相対位置が位置決めされる。
【0068】
上記した前部位置決め治具201は、図1のものと同様に、前部開口部11に配置されるメインフレーム205と、メインフレーム205の外周部に設けられる複数の位置決め部207,209,211とを備えている。
【0069】
メインフレーム205は、矩形状の枠部205aと、枠部205aの対角部相互を連結するほぼX字形状の補強部205bとを備え、枠部205aの周囲に前記した各位置決め部207,209,211が設けられている。
【0070】
左右のボディサイドアッセンブリ5,7を位置決めするための位置決め部209は、ルーフアッセンブリ3の近傍に配置され、前記図2に示した位置決め部23と同様な構成である。すなわち、図5に示してあるような、ボディサイド側アーム部43,45の先端にクランプシリンダ55を備えたものと同様である。
【0071】
フロアアッセンブリ9を位置決めするための位置決め部207は、位置決め部209と基本的な構造は同様である。すなわち、図示されていないが、周縁部9aに向けて突出して周縁部9aに当接するアーム部と、このアーム部の先端に設けたクランプシリンダおよびクランプ爪とを有する。
【0072】
一方、ルーフアッセンブリ3を位置決めするための位置決め部211は、前記図6に示した位置決め部67と同様の構成である。
【0073】
これらの各位置決め部207,209,211の形状は、車体の形状によって適宜変更する。
【0074】
上記した位置決め治具201の矩形状の枠部205aは、フロアアッセンブリ9の周縁部9aに対応する部分200が、車体1に対して車幅方向両側へ突出し、この突出部位先端に、回転軸部213を備えている。
【0075】
そして、上記した左右の各回転軸部213を回転可能に支持する治具受け215が床に配置されている。治具受け215は、図10に一部を拡大して示すように、治具ベース217の上端に、ほぼ半円形状の凹部219を備え、この凹部219に上方から入り込ませた前記回転軸部213を回転可能に支持する。凹部219の上部両端には、外側に広がるようテーパ面221を形成してある。
【0076】
治具ベース217の車幅方向外側には、上記した凹部219の側部を覆うカバープレート223が取り付けられている。カバープレート223は、上端が治具ベース217の上端とほぼ同一位置にあり、この上端部における治具ベース217に対向する側には、上端ほど治具ベース217から離れる方向に傾斜する傾斜面223aを備えている。
【0077】
また、治具ベース217の上部には、回転軸部213の凹部219へのセットを容易にするためにガイド部材225を必要に応じて設けてもよい。
【0078】
前記図9に示したように、車体1は、車体搬送ラインにおけるコンベア227上を搬送されて、図9における車体組立ステージにて車体1の組立作業を行う。
【0079】
上記した車体組立ステージにおける車体1の前方の車体搬送ライン側方には、前記した位置決め治具201を吊り下げ支持して車体1の前部開口部11に装着する助力装置229を配置してある。助力装置229は、支柱231の上端に、第1のアーム233および第2のアーム235をそれぞれ備えている。
【0080】
第1のアーム233は、支柱231に対し、車幅方向を含む鉛直面内にて矢印Cで示す方向に回動可能となるよう連結部237により連結されている。第2のアーム235は、第1のアーム233に対し、水平面内にて矢印Dで示す方向に回動可能となるよう連結部239により連結されている。
【0081】
第2のアーム235の先端には、治具吊り下げ用のワイヤ241が、ワイヤ吊下具243を介して吊り下げられている。ワイヤ吊下具243は、ワイヤ241を繰り出したり引き込んだりする機能を備えている。
【0082】
ワイヤ241は、メインワイヤ244の下端に連結具245を介して3本のサブワイヤ249,251,253が連結されている。このうちサブワイヤ249の下端は、前部位置決め治具201のメインフレーム205の枠部205aにおけるルーフアセンブリ3に対応する部位の車幅方向中央部の連結部255にて連結されている。また、2本のサブワイヤ251,253の下端は、枠部205aにおけるフロアアセンブリ9に対応する部位200の車幅方向両端の連結部257,259にて連結されている。
【0083】
ここで、上記したワイヤ241は、前部位置決め治具201を下降させ、車体1の前部開口部11に対し、正規の位置に装着した時点では、2本のサブワイヤ251,253が弛んだ状態となる(図12(c)参照)。すなわち、ワイヤ241で吊り下げられ、前部開口部11に装着する前の状態の前部位置決め治具201は、車体1の前部開口部11への正規の装着姿勢に対し、サブワイヤ249に連結されているルーフアセンブリ3に対応する側が上方に位置することになる(図12(b)参照)。
【0084】
図11は、後部位置決め治具203を後部開口部15に装着した状態の車体後方から見た斜視図である。この後部位置決め治具203についても、上記した前部位置決め治具201と同様に、枠部261の周囲に位置決めピンやゲージ部およびクランプシリンダなどの位置決め部263,265,267,269(図11参照)をそれぞれ適宜備えて、車体1の各部品、すなわちルーフアッセンブリ3、ボディサイドアッセンブリ5,7および、図11に示すリアパネル部品271の各周縁部に対して位置決めする。
【0085】
ここでルーフアッセンブリ3およびボディサイドアセンブリ5,7のトランクリッド開口部に対応する部位をそれぞれ位置決めする位置決め部263および267は、前記図6の位置決め部67と同様な構造である。また、ボディサイドアセンブリ5,7のルーフアッセンブリ3近傍部位を位置決めする位置決め部265は、前記図6の位置決め部69と同様な構造である。
【0086】
一方、リアパネル部品271を位置決めする位置決め治具269は、パネル内面に当接するゲージ部269aと、パネル内面に形成してある位置決め孔に挿入される位置決めピン269bとをそれぞれ備えている。
【0087】
上記した各位置決め部263,265,267,269の形状は、車体の形状によって適宜変更する。
【0088】
また上記した後部位置決め治具203は、枠部261の車体後部付近に、車幅方向に延長される支持ロッド273を備えている。
【0089】
支持ロッド273は、車体1に対して車幅方向外側に突出しており、その突出した端部に、前記した前部位置決め治具201と同様に、回転軸部275を備えている。この回転軸部275は、車体1の後端部近傍に配置してある治具受け277に回転可能に支持される。
【0090】
上記した治具受け277は、前記した前部位置決め治具201の回転軸部213を回転可能に支持する治具受け215と同様な構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0091】
さらに、上記した後部位置決め治具203は、前部位置決め治具201と同様に、図示しない助力装置に支持されたワイヤ279に支持される。このワイヤ279も、メインワイヤ281と、3本のサブワイヤ283,285,287とを備えており、サブワイヤ283は、枠部261のルーフアセンブリ3に対応する部位の車幅方向中央部の連結部289にて連結されている。また、2本のサブワイヤ285,287の下端は、支持ロッド273の車幅方向両端付近の連結部291,293にて連結されている。
【0092】
ここで、上記したワイヤ279は、前記したサブイヤ251,253と同様に、後部位置決め治具203を下降させ、車体1の後部開口部15に対し、正規の位置に装着した時点では、2本のサブワイヤ285,287が弛んだ状態となる。すなわち、ワイヤ279で吊り下げられ、後部開口部15に装着する前の状態の後部位置決め治具203は、車体1の後部開口部15への正規の装着姿勢に対し、サブワイヤ283に連結されているルーフアセンブリ3に対応する側が上方に位置することになる。
【0093】
次に、第の実施形態による作用を説明する。
【0094】
ワイヤ241で吊り下げた前部位置決め治具201を、助力装置229により車体1の前部開口部11の上方に移動搬送する。
【0095】
この状態から、図12(a)に示すように、ワイヤ241を繰り出して前部位置決め治具201を下降させ、同図(b)のように回転軸部213を治具受け215の凹部219に入り込ませる。このとき、前部位置決め治具201は、車体1への正規の装着姿勢に対し、サブワイヤ249に連結された側が上方に位置しているので、車体1の前部開口部11との間に角度θをもって離れた状態となる。
【0096】
上記図12(b)の状態から、さらにワイヤ241を繰り出すと、前部位置決め治具201は、サブワイヤ249に連結された側が車体1に接近するように、回転軸部213を中心として回動し、同図(c)のように、前部開口部11に対して正規の位置に装着される。このとき、2本のサブワイヤ251,253は、図12(b)の状態からさらにワイヤ241を繰り出しているので、弛んだ状態となる。
【0097】
そしてさらに、ワイヤ241を繰り出すことで、図12(d)のように、サブワイヤ249も弛んだ状態となる。この状態で、前部位置決め治具201の各位置決め部207,209,211による位置決め動作が適宜なされ、ルーフアッセンブリ3とボディサイドアッセンブリ5,7とフロアアッセンブリ9との間の車幅方向、車体前後方向および上下方向の位置出しがなされる。
【0098】
後部位置決め治具203についても、上記と同様な動作により後部開口部15に対して位置決めを行う。すなわち、後部位置決め治具203における支持ロッド273の両端にある回転軸部275を、治具受け277の凹部に入り込ませた後、後部位置決め治具203を、ルーフアッセンブリ3側が車体1に接近するように回転させ、後部開口部15に対して正規の装着位置となるよう移動装着する。
【0099】
前部位置決め治具201および後部位置決め治具203を車体1の各部品に対して位置決めした後に、各部品相互間の必要箇所に、図示しない溶接ロボットなどを用いて溶接接合する。
【0100】
溶接後は、図12における動作と逆の動作により、前部位置決め治具201および後部位置決め治具203を車体から取り外す。
【0101】
上記した車体位置決め装置による車体位置決め方法によれば、前部位置決め治具201および後部位置決め治具203を、車体1に直接装着せずに、回転軸部213および275を、治具受け215および277にそれぞれセットした後、回転軸部213および275を中心として回転させて、車体1の前部開口部11および後部開口部15の正規位置にそれぞれ装着するので、前部位置決め治具201および後部位置決め治具203の車体1への接触による損傷を防止できるとともに、損傷を防止できることから各位置決め治具201,203の装着作業速度を高めることができる。
【0102】
また、各位置決め治具201,203の車体1へのセットは、助力装置により搬送し、ワイヤ吊りした状態で行うので、容易かつ短時間で行うことができる。さらに、各位置決め治具201,203の車体1の正規位置への移動は、回転軸部213および275を中心として回転させて行うので、位置決め精度が極めて高いものとなる。
【0103】
また、溶接作業時には、各位置決め治具201,203を吊り下げているワイヤ241,281を、図12(d)に示すように弛ませるので、各位置決め治具201,203は助力装置に拘束されず、各位置決め治具201,203による車体1の各開口部11,15に対する位置決め精度が向上する。
【0104】
図13は、前記図9に示した第の実施形態の変形例である。これは、図9の第の実施形態に対し、治具受け215の凹部219に回転可能に支持される回転軸部213の取り付け位置を変化させている。
【0105】
すなわち、前部位置決め治具201の枠部205aの車体前方側(部分200)の角部から、車体前方で車幅方向外側に突出するアーム295を設け、アーム295の先端から下方に向けて突出させたブラケット297の下部内面に、回転軸部213を設けている。この回転軸部213は、ブラケット297の下部外面に設け、車幅方向外側に突出する構成としても構わない。
【0106】
このような回転軸部213の取付構造は、後部位置決め治具203に採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の参考例に係わる車体位置決め装置の概略を示す斜視図である。
【図2】図1における前部位置決め治具の詳細な構造を示した斜視図である。
【図3】図2の前部位置決め治具における位置決めピンが設けられた部位付近の正面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】図2の位置決め部の詳細を示す断面図である。
【図6】位置決め部の他の例を示す斜視図である。
【図7】図6の別方向から見た斜視図である。
【図8】ハッチバックタイプの車体に対して前部位置決め治具および後部位置決め治具を装着した状態を示す斜視図である。
【図9】 この発明の第の実施形態に係わる車体位置決め装置の全体構成を示す斜視図である。
【図10】 第の実施形態の要部を示す斜視図である。
【図11】 第の実施形態の後部位置決め治具を後部開口部に装着した状態の車体後方から見た斜視図である。
【図12】 第の実施形態の動作説明図で、(a)は位置決め治具をワイヤで吊り下げた状態、(b)は位置決め治具の一部を治具受けにセットした状態、(c)は位置決め治具を車体の正規位置に装着した状態、(d)はワイヤを弛ませて溶接作業を行う状態を、それぞれ示す。
【図13】 第の実施形態の変形例を示す部分的な斜視図である。
【符号の説明】
1,101 車体
3,103 ルーフアッセンブリ(ルーフ部品)
5,7,105,107 ボディサイドアセンブリ(ボディサイド部品)
9,109 フロアアセンブリ(車体前部部品)
11,110 前部開口部
13,113,201 前部位置決め治具
15 後部開口部
17,117,203 後部位置決め治具
19,205 メインフレーム
21,23,25,121,123,124,125,126,207,209,211,263,265,267,269 位置決め部
71 接合部
135f,135r ルーフレール(ルーフアッセンブリ,ルーフ部品)
213,275 回転軸部
215,277 治具受け
219 凹部
229 助力装置
241,281 ワイヤ
271 リアパネル部品(車体後部部品)

Claims (12)

  1. 互いに接合されて車体を構成する複数の部品相互間に開口部が形成され、この開口部と外周縁の形状が近似形状の位置決め治具を有するとともに、車体近傍に治具受けを配置し、この治具受けに、前記位置決め治具を、前記開口部への正規の装着位置に対し、開口部から離れた状態となるよう前記位置決め治具の一部を回転可能にセットし、その後前記位置決め治具を、前記治具受けに一部がセットされた状態のまま前記開口部の正規の位置へ、前記セットされた部位を中心として回転させて装着し、前記各部品の相対位置を位置決めすることを特徴とする車体位置決め方法。
  2. 前記位置決め治具を、ワイヤで吊った状態で下降させて前記治具受けにセットするとともに、前記開口部の正規の位置となるよう回転させて装着することを特徴とする請求項記載の車体位置決め方法。
  3. 前記ワイヤで吊った状態の前記位置決め治具を、前記開口部の正規の位置に装着した後は、前記ワイヤを弛ませることを特徴とする請求項記載の車体位置決め方法。
  4. 互いに接合されて車体を構成する複数の部品相互間に開口部が形成され、この開口部と外周縁の形状が近似形状で、この開口部周縁の前記各部品に対して位置決めしつつ前記開口部に装着されて、前記各部品の相対位置を位置決めする位置決め治具を備えるとともに、車体近傍に治具受けを配置し、この治具受けは、前記位置決め治具が、前記開口部への正規の装着位置に対し、開口部から離れた状態で位置決め治具の一部が回転可能にセットされ、かつこのセット状態から、前記開口部の正規の位置へ前記位置決め治具を、前記セットされた部位を中心として回転案内することを特徴とする車体位置決め装置。
  5. 前記治具受けは凹部を備え、前記位置決め治具は、前記凹部に一部がセットされて回転可能となる回転軸部を備えていることを特徴とする請求項記載の車体位置決め装置。
  6. 前記治具受けは、車体の車幅方向両側に一対備えていることを特徴とする請求項または記載の車体位置決め装置。
  7. 前記位置決め治具は、ルーフ部品と、左右のボディサイド部品と、車体前部部品とで形成される前部開口部に装着されることを特徴とする請求項ないしのいずれか1項に記載の車体位置決め装置。
  8. 前記位置決め治具は、ルーフ部品と、左右のボディサイド部品と、車体後部部品とで形成される後部開口部に装着されることを特徴とする請求項ないしのいずれか1項に記載の車体位置決め装置。
  9. 前記位置決め治具は、ルーフ部品と、左右のボディサイド部品と、車体前部部品とで形成される前部開口部に装着される前部位置決め治具および、前記ルーフ部品と、前記左右のボディサイド部品と、車体後部部品とで形成される後部開口部に装着される後部位置決め治具をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項ないしのいずれか1項に記載の車体位置決め装置。
  10. 前記車体前部部品は、フロアパネルを一体として含んでいることを特徴とする請求項または記載の車体位置決め装置。
  11. 前記位置決め治具は、前記開口部に配置されるメインフレームと、このメインフレームに設けられて各部品の周縁に対して位置決めする位置決め部とを有することを特徴とする請求項ないし10のいずれか1項に記載の車体位置決め装置。
  12. 前記位置決め部は、互いに接合される部品相互の接合部に当接して位置決めすることを特徴とする請求項11記載の車体位置決め装置。
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