JP4055188B2 - 軸挿入装置および軸挿入方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤内の水を排水するための集水管や排水管、もしくは下水や水道水、ガス、各種ケーブル等のための地中埋設管等を、非開削で地中に挿入する際等に利用される、挿入位置の検出技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時、適宜削孔方向制御を行う削孔方法(以下、方向制御削孔ともいう)を利用して、例えば既設構造物の周囲の地表面から下部地盤に対して曲がり可能な樹脂製管を地中に建て込む工法が開発され、注目されている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
かかる方向制御削孔においては、曲がり可能な削孔軸の先端に、軸心方向に対して傾斜した平坦な受圧面を有するテーパービットを取り付け、曲線的に削孔する場合には削孔軸に推進力のみを与えることで、その先端のテーパービットの受圧面にかかる力により推進方向を変化させながら削孔軸を地中に曲線推進させる。他方、直線的に削孔する場合には、削孔軸に回転力と推進力の両方を与え、受圧面にかかる力の方向を回転軸心周りの変化により打ち消すことで、直線的な削孔を可能にしている。
【0004】
この手法は、非開削で地中に軸を挿入する場合に有効な技術であり、単に挿入軸を地中に推進させる場合にも有効なものである。
【特許文献1】
特開2002−194990号公報
【特許文献2】
特開平8−120661号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来、挿入軸の先端部が地中の何処にあるのか、またどのような経路を辿っているのかを確認することは施工管理上非常に重要であるにもかかわらず、ジャイロ等のセンサを用いることができるといった程度の抽象的な提案しかなされておらず、具体的提案はなされていない。
【0006】
しかも、本発明者らが鋭意研究したところによれば、ジャイロセンサ等の検出装置を用いて挿入軸先端位置を検出する場合、次のような困難性がある。
【0007】
すなわち、本発明者らの知見によれば、挿入軸を曲線的に挿入するには先端側に基端側の主軸部よりも曲がり易い可撓部がある程度必要である。そして、挿入軸先端の位置を検出するためには、この可撓部に検出装置を設けねばならない。しかし、かかる検出装置は一定のサイズを有するとともに変形により破損するおそれが高いものであるから、これを曲がり易い可撓部に設けると検出装置を破壊してしまうおそれがある、正確な位置検出ができない、曲がる能力に制約を生じる、といった問題点を生ずる。
【0008】
よって、かかる検出装置を挿入軸の先端部に設け、挿入軸の先端部位置を検出することは実際上極めて困難なことであった。
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、上記種々の問題を解決した位置検出技術を提案することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
先端側に基端側の主軸部よりも曲がり易い可撓部を有する挿入軸を、地中に曲線挿入可能である軸挿入装置であって;
ピッチ角、方位角、ロール角を検出する角度検出装置を前記主軸部の先端部内に設け、
軸部材の所定部位に設けられた歪ゲージにより、軸部材がどの程度曲がっているかを表す曲り角度、およびその曲がっている方向が軸心周りの角度でどの方向を向いているかを表す方向角をそれぞれ検出する曲り検出装置を、前記可撓部内に同軸的に設けるとともに、
前記角度検出装置による検出結果と曲り検出装置による検出結果との組合せに基づいて、前記挿入軸の先端部の位置を算出する演算装置を備えた、
ことを特徴とする軸挿入装置。
【0011】
(作用効果)
このように、本発明は、挿入軸の先端側に基端側の主軸部よりも曲がり易い可撓部を有することを前提とする。したがって、可撓部の存在により挿入軸をより容易に曲線的に挿入できる。
【0012】
その上で、装置自体の曲がりを利用する曲り検出装置を先端可撓部内に設け、曲がるまたは撓むことのできない角度検出装置を、可撓部よりも曲がり難い主軸部の先端部内に設ける。よって、検出装置の破損のおそれや、曲がり能力の制約といった問題点を生じない。
【0013】
しかもこの場合、角度検出装置による検出結果に基づいて予め設定した基準位置(例えば地中挿入孔口の位置)に対する主軸部の先端部の位置を求めるとともに、曲り検出装置の検出結果に基づいて主軸部の先端部に対する可撓部先端(挿入軸先端)の位置を求め、これらを組み合わせることで基準位置に対する挿入軸先端部の位置を正確に計測することができる。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
<請求項2記載の発明>
前記主軸部の先端部内に、軸心方向に所定の間隔をおいて配置された軸受けと、
これら軸受けによって軸支され、挿入軸と同軸をなす軸心周りに回転自由とされた支持体と、
支持体の前記軸心方向の前後少なくとも一方側にのみ配置され、支持体と一体化された、前記軸受けの軸心から偏心した位置に重心を有する振子錘とを備えるとともに;
前記角度検出装置は、前記方位角を検出する角速度センサを有し、この角速度センサが前記支持体に取り付けられている、
請求項1記載の削孔装置。
【0025】
(作用効果)
地中に曲線挿入可能な挿入軸に角速度センサを固設すると、挿入軸の回転や捩れ等により角速度センサがローリングしてしまう。かかるローリングは、通常の場合であれば、別途のセンサを設ける等して補正することができるが、挿入軸のように設置スペースが限られているものでは、かかるセンサ数の増加は好ましくない。また仮に補正用のセンサを設けたとしても、ローリングが過度になると高精度な補正は望めない。
【0026】
したがって、本請求項2記載の発明では、角速度センサを挿入軸内に回転自由に軸支し、角速度センサを常に一定の姿勢に維持できるように構成している。これにより、挿入軸が捩れたり回転したりしても、角速度センサは挿入軸に対して回転し一定の姿勢を維持する、すなわちローリングしなくなる。よってこの場合、補正用のセンサは不要であり、また補正による検出精度の低下も実質的になくなるという利点がもたらされる。
【0027】
特に、同様の機能は、支持体の偏心位置に錘を設け支持体自体を振子錘とすることでも達成できるが、この場合支持体の径が大きくならざるを得ず、軸内のような幅の狭いスペースへの収容には不向きである。したがって、本発明では支持体の前後に振子錘を設ける構成となし、幅の狭いスペースへの設置を容易にしているものである。
【0028】
<請求項3記載の発明>
地中に孔を削孔する削孔装置であり、
前記挿入軸は、軸心方向に対して傾斜した受圧面を有するテーパービットを先端に有し、
前記削孔軸を回転及び推進させる回転推進手段を有し、
前記回転推進手段により前記挿入軸に推進力のみを与えることにより、その先端のテーパービットの受圧面にかかる力を利用して推進方向を変化させながら挿入軸を地中に曲線推進しうるように構成され、
前記演算装置は、前記テーパービットの位置を算出するものである、
請求項1又は2記載の軸挿入装置。
【0029】
(作用効果)
本発明は例えば予め地中に案内孔を形成した後に、その案内孔内に挿入軸を挿入する場合における先端位置検出にも適用できるものであるが、特に好適なのはかかる案内なしに、本請求項3記載のように方向制御削孔を利用して地中に任意経路で削孔を行う場合である。かかる削孔においては、その先端部がどのような経路を辿っているのか、また現位置は何処なのかを正確に知る必要があるため、前述したような位置検出が非常に有用である。
【0030】
<請求項4記載の発明>
請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置を用い、
挿入軸を地中に挿入する一方で、前記演算装置によって挿入軸先端部の三次元座標値を複数位置について得ることにより、挿入軸先端部の位置及び経路を確認しながら前記挿入軸の挿入を行うことを特徴とする軸挿入方法。
【0031】
(作用効果)
対応する各請求項記載の装置と同様の作用効果を奏する。また特に、複数位置の座標を得ることによって、現位置および挿入経路の両方を知ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
図1は、本発明による施工状態を概略的に示したものであり、挿入軸5と、その先端に対して取り付けられたテーパービット6と、挿入軸5を回転及び推進させる図示しない回転推進装置とから主に構成された軸挿入装置が示されている。
【0033】
本発明の挿入軸5は、先端側に基端側の主軸部よりも曲がり易い可撓部50Fを有するものである。かかる挿入軸5は、曲がり可能な材料、例えば鋼管等により形成できる。このように曲り易さに差異をもたせるために、部分的に材質を異ならしめたり、軸径を異ならしめたりすることができる。可撓部50Fの長さは、適宜定めることができるが、2〜5m程度が好ましい。
【0034】
より好ましい形態では、挿入軸5は、例えば挿入深さに応じて単位軸を複数直列接続して形成するようになし、先頭の単位軸(以下、)を基端側の単位軸よりも曲がり易いものとし、これにより本発明の可撓部50Fを構成することができる。この場合、単位軸の一端部に雌ネジ部を及び他端部に雄ネジ部をそれぞれ形成し、単位軸相互の連結を図ることができる。
【0035】
なお、従来、本発明者らは、先端側部分を基端側よりも曲がりやすくすると、直線推進性能が低下するため好ましくないと考え、先端側部分を基端側部分よりも高剛性にしていた。しかしその後、実験を重ねた結果、先端側部分を基端側よりも曲がり易くしないと、急角度での曲線推進ができないこと、および本発明で提案するような正確な位置検出が可能であれば、多少は直線推進精度が低下しても問題がないことが判明したのである。
【0036】
かかる挿入軸5の先端には、軸心方向に対して傾斜した受圧面を有するテーパービット6が取り付けられている。テーパービット6としては、例えば図2にも示すように、略円柱状をなし、頭部に軸心方向D1に対して傾斜した平坦面よりなる受圧面60を有するものとできる。テーパービット6は、鋳造等により製造できる。
【0037】
かかるテーパービット6を用いると、挿入軸5を、その方向を制御しながら地中に推進させることができる。より詳細に説明すると、曲線推進を行うときには図2(a)に示すように、テーパービット6の受圧面60の先端が回転軸心D1に対して曲げたい側に位置する状態で挿入軸5の回転を止め、更にそのままの状態で回転推進装置により挿入軸5に推進力のみを与える。この際、テーパービット6の受圧面60にかかる力によりテーパービット6の推進方向が徐々に変化し、挿入軸5を地中に曲線的に推進させることができる。換言すれば、テーパービット6は受圧面60で受ける力を逃がすように脇へ逸れつつ進行される。なお、この曲線推進は三次元曲線的な推進が可能であり、図示例では鉛直面方向において曲げているが、水平面方向に曲げることもできる。これに対して、直線推進を行うときには図2(b)に示すように、挿入軸5に回転力および推進力を与え、挿入軸5を先端のテーパービット6により削孔しながら地中に推進させる。この際、テーパービット6の先端は受圧面60を有しているものの軸心D1周りに回転しながら前進するので受圧面60による受圧の影響は打ち消され、直線的に削孔することが可能である。
【0038】
かくして、例えば図1に示すように、挿入軸5を地表面から目標層までは弧状に進行させ、その後は目標層内を水平方向に沿って進行させることができる。かかる方向制御推進は、挿入軸5を地中内位置まで挿入する場合の他、挿入位置から離間した地上部または予め設けた立坑内まで貫くように施工する場合にも適用できる。
【0039】
なお、単位軸連結構造の挿入軸5を用いる場合には、必要に応じて単位軸を継ぎ足しながら挿入軸を地中に挿入する。
【0040】
他方、以上の方向制御推進は、地盤内の水を排水するための集水管や排水管、もしくは下水や、水道水、ガス、各種ケーブル等のための地中埋設管を非開削で設置する場合の削孔や、薬液注入に際しての削孔に応用できる。
【0041】
<本発明のポイント>
そしてかかる方向制御に際して、挿入軸5先端部の現在位置や、姿勢、軌道等を知るために本発明の位置検出技術を用いることができる。すなわち、上記装置に本発明を適用する場合、図3に示すように、本発明の曲り検出装置BDは挿入軸5の先端側の可撓部50F内に設けられ、本発明の角度検出装置ADは可撓部50Fの基端側をなす挿入軸5の主軸部50Pの先端部内に設けられる。
【0042】
(角度検出装置について)
本発明の角度検出装置ADとしては、例えば、ピッチ角およびロール角を計測するための傾斜センサ(振り子式、サーボ式等)と、方位角(ヨー角)を計測するための角速度センサ(レートジャイロ等の各種ジャイロ等)とを組み合わせたものを好適に用いることができる。もちろん、ピッチ角、ロール角および方位角を計測するものであれば、他のセンサを使用することもできる。
【0043】
本発明の傾斜センサとしては、三軸静加速度センサ(相互に直交するX軸・Y軸・Z軸方向の重力加速度を検出する)を用いることができ、検出される各軸方向の重力加速度を、下記式(1)および(2)に代入することによりピッチ角Piおよびロール角Riをそれぞれを求めることができる。また演算の簡素化のために、傾斜センサの基準軸を挿入軸5の軸心D1(回転中心軸)に合わせるのが好ましいことはいうまでもない。
【0044】
本発明の角速度センサとしては、レートジャイロ等の各種ジャイロ等を用いた少なくとも1軸の角速度を検出する角速度検出装置を好適に用いることができる。もちろん、他の検出装置を使用することもできる。また演算の簡素化のために、傾斜センサの基準軸と角速度センサの基準軸とを合わせるのが好ましいことはいうまでもない。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
他方、角速度センサを取り付けた挿入軸が回転や捩れ等によりローリングしてしまうと、挿入軸の方位角およびロール角を計測するのは困難となる。図4〜図6は、これを回避するための好適な例を示している。この例では、主軸部50Pの先端部内に筒状ケース90が同軸的に配置固定されており、このケース90内に軸心方向に所定の間隔をおいて軸受け91,91が設けられ、これら軸受け91,91間に中空円筒状支持体92が配され、支持体前後に設けられた軸部93,93が軸受け91,91によってそれぞれ軸支されている。そして支持体92内には図示しない角速度センサ及び信号送受装置等が内蔵されている。よって、支持体92に内蔵された角速度センサは主軸部50Pと同軸をなす軸心周りに回転自由に支持される。さらに支持体92の前後軸部93,93には、その軸心から偏心した位置に重心を有する振子錘94,94が取り付けられており、この振子錘94の重心が重力により鉛直真下を向く姿勢を維持することによって、これに一体化された支持体92および内部の角速度センサは常に一定の姿勢に保持される。
【0053】
また本実施形態では、支持体92の後側軸部93は軸受け91の後方に突出されており、この突端がスリップリング95に連結されている。後側軸部93内には図示しない信号線が配されており、この内部信号線の先端は支持体92内の図示しない信号送受装置に接続されるとともに、基端はスリップリング95を介して、主軸部50P内に配された主信号線96と電気的に接続される。この主信号線96は、主軸部50Pの基端部から軸外に導出され、後述する管理装置等の外部制御装置に接続される(図示せず)。かくして、軸心周りに回転自由に支持された角速度センサに対する電力供給および信号送受を行うことができる。なお、この構成は、有線信号伝送を行う場合を想定しているが、無線により信号伝送を行うこともでき、その場合にはスリップリング95や信号線96等の有線伝送関連の構成は省略することができる。またこの場合における角速度センサ等の電力は充電池により供給するように構成できる。
【0054】
かくして、主軸部50Pが曲線挿入により捩れたり、回転したりしても、角速度センサは主軸部50Pに対して回転し一定の姿勢を維持し、ローリングしなくなる。よって補正用のセンサは不要であり、また補正による検出精度の低下も実質的になくなる。また本実施形態のように、支持体92の前後に振子錘94,94を設ける構成とすると、幅の狭い主軸部50P内への設置が容易であるという利点もある。
【0055】
(曲り検出装置について)
他方、本発明の曲り検出装置としては、本出願人による特願2002−185666号記載のものが使用される。図7〜図10は、曲り検出装置BDの概要を示している。図中符号102は円柱状軸部材(内部が中実のもののみならず、管のような中空のものも含まれる)を示しており、この軸部材102の所定位置に歪ゲージ(抵抗体)111〜114、121〜124が取り付けられる。符号X,Y,Zは、互いに直交する三次元座標軸を示している。
【0056】
より詳細には、軸部材102の中心線をY軸とし、Y軸上の所定間隔の2点をそれぞれa位置およびb位置としたとき、a位置を通り且つZ軸と平行をなす線が通る外周面上の2箇所の位置に、第1のZ軸歪ゲージ111および第2のZ軸歪ゲージ112がそれぞれY軸方向に沿って取り付けられ(すなわち歪ゲージの圧縮・引張り方向がY軸方向と平行となるようにする。以下同じ。)、また、a位置を通り且つX軸と平行をなす線が通る外周面上の2箇所の位置に、第1のX軸歪ゲージ121および第2のX軸歪ゲージ122がそれぞれY軸方向に沿って取り付けられる。
【0057】
また、a位置に対して所定の間隔L(当然ではあるがL>0である)をもって設定されたb位置においては、b位置を通り且つZ軸と平行をなす線が通る外周面上の2箇所の位置に、第3のZ軸歪ゲージ113および第4のZ軸歪ゲージ114がそれぞれY軸方向に沿って取り付けられ、また、b位置を通り且つX軸と平行をなす線が通る外周面上の2箇所の位置に、第3のX軸歪ゲージ123および第4のX軸歪ゲージ124をそれぞれY軸方向に沿って取り付ける。かくして、測定対象に取り付けられる検出体100が構成される。
【0058】
さらに、図9にはZ軸方向の歪を検出するための計測回路例130、及び図10にはX軸方向の歪を計測するための計測回路例140がそれぞれ示されている。これらの検出回路例130,140は、ホイートストンブリッジを利用する周知の形態のものである。すなわち、Z軸歪ゲージおよびX軸歪ゲージのそれぞれにおいて、第1〜第4の歪ゲージ111〜114(121〜124)を直列環状に接続するとともに、第1および第2の歪ゲージ111,112(121,122)間と、第3および第4の歪ゲージ113,114(123,124)間に直流電圧を印加し、第1および第4の歪ゲージ111,114(121,124)間と、第2および第3の歪ゲージ112,113(122,123)間とから、a位置およびb位置間におけるZ軸方向歪εZまたはX軸方向歪εXと対応する出力を得るというものである。
【0059】
測定に際しては、検出体100を測定対象に一体化する。測定対象が管体を連結するようなユニット組立式のものである場合には、ユニット相互間に検出体100を連結介在させることができる。また、測定対象が管体である場合には、管体内に(必要に応じてスペーサを用いて管体内に同軸的に)配置固定することができる。一方、検出回路130,140は、検出体100とともに測定対象に取り付けることもできるが、測定対象から離れた位置に設置することもできる。
【0060】
計測回路130,140からの出力値は下記式に代入することによって、曲がり角度θおよび方向角φが算出される。
θ = (εZ2+εX2)1/2 ・・・(3)
φ = tan-1(εX/εZ) ・・・(4)
εZ:a位置およびb位置間におけるZ軸方向歪
εX:a位置およびb位置間におけるX軸方向歪
【0061】
かくして、Z軸方向歪εZおよびX軸方向歪εXに基づき、a位置およびb位置間における軸部材102がどの程度曲がっているかを表す曲がり角度θ、およびその曲がっている方向がY軸周りの角度でどの方向を向いているかを表す方向角φをそれぞれ求めることができる。なお、図8中に曲がっている方向および軸部材の一部を仮想的に二点鎖線で示している。
【0062】
かかる検出装置は、非常に簡素・安価な構成であるにもかかわらず、測定対象の曲がり角度θおよび方向角φを検出するという非常に高度な計測が可能となるものである。また、本発明において測定対象に取り付けられる検出体100は、細長形状を有しているので、本発明のような地中挿入軸内であっても容易に取り付けることができるという利点もある。
【0063】
他方、かかる曲り検出装置を上記軸挿入装置で使用する場合には、軸部材102は可撓部50Fと実質的に同程度の長さとされ、可撓部50Fの一端から他端まで延在される。そしてかかる軸部材102の一端がa位置とされ、各歪ゲージ111,112,121,122がそれぞれ取り付けられ、他端がb位置とされ、各歪ゲージ113,114,123,124がそれぞれ取り付けられる。各計測回路130,140からの出力信号は、例えば、挿入軸5内を通りその基端部から軸外に導出される信号線を介して、後述する管理装置等の外部制御装置に送信される。外部制御装置は、入力信号に基づいて上記計算式により曲がり角度θおよび方向角φを算出する。
【0064】
(位置検出原理)
図11に、本発明に係る位置検出方法の軸挿入要領を示す。符号Hは削孔により形成した孔を表している。本例では、先ず同図(A)に示すように、挿入軸5を地表面に臨ませ、同図(B)に示すように所定区間、例えば単位軸の長さ分の深さまで削孔した後に、同図(C)に示すように挿入軸5を引き戻し、その先端部を削孔区間の基端に位置させる。以下、この形成孔の区間を区別のため第1区間という。この状態から、同図(D)に示すようにそのまま挿入軸5を回転させずに、挿入軸5の先端部を第1区間の先端まで推進させるとともに、角速度センサにより角速度を検出する。そして検出した角速度を積分することにより当該第1区間における主軸部50P先端部の水平方向の方位角変化量Wiを検出する。
【0065】
またその一方で、挿入軸5の先端部を第1区間の先端に位置させた状態で傾斜センサにより、第1区間の先端における主軸部50P先端部のピッチ角Pi及びロール角Riを検出する。このピッチ角及びロール角の検出は削孔直後に挿入軸の引き戻しに先立って行う(すなわち図11(B)の状態で行う)こともできるが、区間先端位置における方位角の検出とともに行うほうがより好ましい。なお、第1区間の基端位置は原点となるため、ピッチ角の検出は不要である。
【0066】
さらにその一方で、挿入軸5の先端部を第1区間の先端に位置させた状態で曲り検出装置BDにより、主軸部50Pの先端部に対する先端可撓部50Fの曲がり角度θおよび方向角φが検出される。
【0067】
以降は、図11(E)〜(G)に示すように、必要に応じて挿入軸5を継ぎ足しながら次の区間の削孔・引き戻し・検出を行うことを繰り返し、計画深さまで削孔を行う。また、図11は直線的な削孔を行う場合を示しているが、曲線的な削孔を行う場合には、前述のとおり、削孔時に挿入軸5を回転させずに推進させることはいうまでもない。
【0068】
他方、好適には各区間の検出が完了した段階で、検出値に基づいて削孔区間における基端に対する先端の位置が算出される。計画深さまで削孔を行った後に、各区間の先端位置を算出することもできるが、この場合、計画通りに削孔しえたか否かは判明するものの、削孔途中で各区間の先端位置を把握して削孔経路を修正するといった管理までは行うことはできないので、あまり好適ではない。
【0069】
区間先端位置の算出は、例えば次の要領で行うことができる。上記角度検出装置ADおよび曲り検出装置BDを備えた挿入軸5の位置検出原理の概要を図12〜図14に示す。いま、X軸、Y軸およびZ軸からなる三次元直交座標の原点位置から挿入軸5を地中に挿入し、テーパービット6位置(曲り検出装置BDの先端側歪センサの位置)がj位置にあり、主軸部50Pの先端部に内蔵された角度検出装置ADによる計測位置がi位置にある状態を考える。この場合、i位置の座標は、公知の坑跡計算方法を利用することにより算出でき、例えば接線法を用いると下記式(5)のようになる。
【0070】
ここで、Siは前回の角度検出位置i−1と今回測定点間の距離(測定区間長)であり、挿入軸5を挿入する装置にストローク計等を取り付けること等により計測することができるものである。またPiは、挿入軸5のi位置のZ軸方向に対するピッチ角(ここでは0°(鉛直上)〜180°(鉛直下)としている)であり、角度検出装置ADの傾斜センサ計測結果に基づいて求められるものである。またWiは、Y軸方向に対する方位角であり、角度検出装置ADの角速度センサの計測結果に基づいて求められるものである。さらに、Xi,Yi,Ziはi位置のX座標、Y座標およびZ座標であり、Xi-1,Yi-1,Zi-1はi−1位置のX座標、Y座標およびZ座標である。
【0071】
一方、i位置(主軸部50Pの先端部の現位置)に対するj位置(テーパービット6の現位置)の座標は次のようにして算出することができる。
【0072】
先ず挿入軸5のi位置がY軸に一致し、かつi位置の回転角Ri(曲り検出装置の基準軸(X軸、Y軸)の回転角)が0と仮定すると、i位置を原点とする先端位置jの三次元座標(X''' j,Y''' j,Z''' j)は下記式(6)のようになる。なお、Lは曲り検出装置BDのa位置からb位置までの長さ(可撓部50Fの長さに相当)であり、予め計測される既知の値である。また、θおよびφは、それぞれ曲がり角度および方向角であり、曲り検出装置BDにより検出されるものである。
【0073】
この式(6)で定まる先端位置jの座標(X''' j,Z''' j)を、下記式(7)に示すようにi位置の回転角RiでXZ平面を回転させると、曲り検出装置の基準軸の回転角を補正した座標(X'' j,Z'' j)が得られる。なお、回転角Riは角度検出装置ADにより計測されるものである。
【0074】
また、上記式(6)及び(7)で定まる座標(Y''' j,Z'' j)を、下記式(8)に示すように、挿入軸のi位置の傾斜角PiでYZ平面を回転させると、曲り検出装置BDの基準軸の傾斜角を補正した座標(Y'' j,Z' j)が得られる。
【0075】
また、上記式(6)で定まる座標(X'' j,Z'' j)を下記式(9)に示すように、挿入軸のi位置の方位角WiでXY平面を回転させると、曲り検出装置BDの基準軸の方位角を補正した座標(X' j,Y' j)が得られる。
【0076】
そしてこれらに基づいて、先端位置jの絶対座標は、下記式(10)より算出することができる。
【0077】
以上に説明した位置検出原理からも判るように、挿入軸5の位置検出を行うに際しては、例えば挿入軸5の地中挿入位置等の基準位置において、座標値、角度検出装置AD(本実施形態では傾斜計および角速度センサ)の初期設定(0設定)を行い、しかる後に挿入軸5の挿入過程において適宜上述の位置検出を行うことにより、挿入軸5の現位置の座標値(基準位置に対する位置)を計測することができる。また適宜の挿入段階で、特に所定間隔で複数回の位置検出を行うことにより、挿入軸5の挿入経路および現位置の座標を計測することができる。特に上述したように、挿入軸5の挿入過程で挿入軸5を継ぎ足し延長する場合には、継ぎ足し時に上記位置計測(座標の算出・確認等)を行うようにするのも好ましい計測形態である。
【0078】
かくして、装置自体の曲がりを利用する曲り検出装置BDを挿入軸5の可撓部50F内に設ける一方、曲がる等のできない角度検出装置ADを、可撓部50Fよりも曲がり難い主軸部50Pの先端部内に設けることによって、角度検出装置ADの破損のおそれや、曲がり能力の制約といった問題点を回避しながらも、これらの検出結果を組み合わせることによって、基準位置に対する挿入軸5先端部の位置を正確に計測できるようになる。
【0079】
他方、上記のようにして検出された先端位置座標は、例えば本出願人による特願2001−273334号記載の管理装置によって作業員が位置を把握できる形態、例えば座標値、立体的または平面的な経路図等としてディスプレイ装置や印刷装置等の出力装置へ出力したり、単に座標値や経路図等を表示装置に表示或いは印刷するといった簡易な形態で出力したりすることもできる。
【0080】
<その他>
(イ)上記装置例においては、図示例のテーパービット6に限らず、例えば屈曲軸状のテーパービットや円弧軸状のテーパービットも、その周面が軸心方向に対して傾斜した受圧面をなすので利用できる。
【0081】
(ロ)本発明では、上記の角度検出装置ADおよび曲り検出装置BD以外に、他の検出装置を組み合わせて位置検出することも可能である。例えば、挿入軸5の先端部内に電磁波発信機を設け地上側からこの電磁波を受信して軸先端部の位置を計測したり、挿入軸5の先端ビット6の掘削により発生する弾性波を地上で計測して軸先端部の位置を計測したりすることができる。
【0082】
【発明の効果】
以上のとおり本発明によれば、検出装置の破損のおそれや、曲がり能力の制約といった問題点を回避しながらも、基準位置に対する挿入軸先端部の位置を正確に計測できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 軸挿入装置の施工状態概要図である。
【図2】 方向制御の説明図である。
【図3】 角度検出装置および曲り検出装置の配設態様を示す概要図である。
【図4】 角速度センサの好適な配設例を示す縦断面図である。
【図5】 その要部斜視図である。
【図6】 その要部側面図である。
【図7】 曲り検出装置の検出体の正面図である。
【図8】 曲り検出装置の検出体の側面図である。
【図9】 曲り検出装置の検出回路の概要図である。
【図10】 曲り検出装置の検出回路の概要図である。
【図11】 本発明に係る位置検出方法の軸挿入要領を示す概要図である。
【図12】 位置検出原理の概略を示す斜視図である。
【図13】 位置検出原理の概略を示す正面図である。
【図14】 図14のA−A’断面から見たi位置およびj位置の関係を示す図である。
【符号の説明】
5…挿入軸、6…テーパービット、50F…可撓部、50P…主軸部、AD…角度検出装置、BD…曲り検出装置。
Claims (4)
- 先端側に基端側の主軸部よりも曲がり易い可撓部を有する挿入軸を、地中に曲線挿入可能である軸挿入装置であって;
ピッチ角、方位角、ロール角を検出する角度検出装置を前記主軸部の先端部内に設け、
軸部材の所定部位に設けられた歪ゲージにより、軸部材がどの程度曲がっているかを表す曲り角度、およびその曲がっている方向が軸心周りの角度でどの方向を向いているかを表す方向角をそれぞれ検出する曲り検出装置を、前記可撓部内に同軸的に設けるとともに、
前記角度検出装置による検出結果と曲り検出装置による検出結果との組合せに基づいて、前記挿入軸の先端部の位置を算出する演算装置を備えた、
ことを特徴とする軸挿入装置。 - 前記主軸部の先端部内に、軸心方向に所定の間隔をおいて配置された軸受けと、
これら軸受けによって軸支され、挿入軸と同軸をなす軸心周りに回転自由とされた支持体と、
支持体の前記軸心方向の前後少なくとも一方側にのみ配置され、支持体と一体化された、前記軸受けの軸心から偏心した位置に重心を有する振子錘とを備えるとともに;
前記角度検出装置は、前記方位角を検出する角速度センサを有し、この角速度センサが前記支持体に取り付けられている、
請求項1記載の削孔装置。 - 地中に孔を削孔する削孔装置であり、
前記挿入軸は、軸心方向に対して傾斜した受圧面を有するテーパービットを先端部に有し、
前記削孔軸を回転及び推進させる回転推進手段を有し、
前記回転推進手段により前記挿入軸に推進力のみを与えることにより、その先端のテーパービットの受圧面にかかる力を利用して推進方向を変化させながら挿入軸を地中に曲線推進しうるように構成され、
前記演算装置は、前記テーパービットの位置を算出するものである、
請求項1又は2記載の軸挿入装置。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置を用い、
挿入軸を地中に挿入する一方で、前記演算装置によって挿入軸先端部の三次元座標値を複数位置について得ることにより、挿入軸先端部の位置及び経路を確認しながら前記挿入軸の挿入を行うことを特徴とする軸挿入方法。
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