JP4054669B2 - 低反射ガラス板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低反射ガラス板(低反射膜付きガラス板)の製造方法に係り、さらに詳しくは低反射率で耐摩耗性や耐薬品性などに優れた低反射ガラス板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、低反射率膜付きガラスの作製方法としては、次の如き方法が一般に行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、
(1)真空製膜法やスパッタリングなどの気相法により、酸化チタンなどの高屈折率材料と酸化珪素などの低屈折率材料とを、屈折率や膜厚を制御してガラス基板に膜同士の界面を明確になるよう積層し、光学干渉を利用した多層膜を積層して低反射率膜付きガラスを作製する方法、
(2)スパッタリングなどの気相法により、チタンの窒化物などの光吸収性材料と酸化珪素などの低屈折率材料とを、屈折率や膜厚を制御してガラス基板に2層以上を膜同士の界面を明確になるよう積層することにより、光学干渉を利用した低反射率膜付きガラスを作製する方法、
(3)金属アルコキシドなどを用いてゾル−ゲル法などにより、酸化チタンなどの高屈折率材料と酸化珪素などの低屈折率材料とを、屈折率や膜厚を制御してガラス基板に2層以上を膜同士の界面を明確になるよう積層することにより、光学干渉を利用した低反射率膜付きガラスを作製する方法、および
(4)金属イオン含有水溶液や金属アルコキシドなどを用いてゾル−ゲル法により、酸化チタンなどの高屈折率材料と酸化珪素などの低屈折率材料とを、屈折率や膜厚を制御してガラス基板に2層以上を膜同士の界面を明確になるよう積層することにより、光学干渉を利用した低反射率膜付きガラスを作製する方法が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−194295号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の真空製膜法やスパッタリング法を使用する方法は、大掛かりな設備が必要となるため、コストが嵩むという問題がある。また、金属アルコキシドなどを使用したゾル−ゲル法などにより膜同士の界面を明確にし、光学干渉を利用した低反射率膜付きガラスは、膜同士の界面を明確にするため、各層への処理液塗布後に高温で乾燥する必要があり、生産性が悪くなる問題点がある。
従って本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、低反射率で耐摩耗性や耐薬品性などに優れた、好ましくはブルー色を呈する低反射膜付きガラス板を生産性よく製造する方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、樹脂B1および有機溶剤を含む処理液(1)と、膜形成用化合物、樹脂B1よりも分解温度が高い樹脂B2、および有機溶剤を含む処理液(2)とを用い、かつ、処理液(1)および処理液(2)の少なくとも一方が金微粒子を含有するものであって、処理液(1)を透明ガラス基板の表面に塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、さらにその上に処理液(2)を塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、処理された透明ガラス基板を400〜800℃で焼成することを特徴とする低反射ガラス板の製造方法を提供する。
【0006】
上記本発明の方法において、処理液(1)が、金微粒子を含有し、処理液(2)が、膜形成用化合物として有機珪素化合物を含有し、かつ、金微粒子を含有しないこと;処理液(1)が、さらに膜形成用化合物を含むものであること;透明ガラス基板が、熱線吸収ガラスまたは高熱線吸収ガラスであって、処理液(1)が、膜形成用化合物としてチタン、ジルコニウム、セリウムおよびコバルトから少なくとも1種選ばれてなる有機金属化合物、および金微粒子を含有し、処理液(2)が、膜形成用化合物として有機珪素化合物を含有し、かつ、金微粒子を含有せず、得られる低反射ガラス板がブルー色を呈すること;および処理液(1)からなる焼成後膜厚が5〜50nmであり、処理液(2)からなる焼成後膜厚が150〜350nmであることが好ましい。
【0007】
上記本発明の方法では、処理液(1)または処理液(2)を塗布した後の透明ガラス基板を高温で乾燥することなしに、それぞれ50〜200℃の温度で乾燥を実施するため、膜の構成成分が膜の深さ方向に連続的に変化し、2種の膜の間に明確な界面がなく、膜厚方向に成分が変化する、すなわち、膜厚方向に屈折率が変化し、比較的フラットな反射特性を有する。また、透明ガラス基板が、グリーン色を呈するガラスなどの熱線吸収ガラスまたは高熱線吸収ガラスである場合には、熱線カット効果が得られるとともに、発色源として作用する金微粒子並びにマトリクスとなる膜形成用化合物が熱分解して形成する金属酸化物の膜厚方向における分布特性により、ブルー色を呈することが可能である。なお、本発明において「ブルー色」とは、色度座標におけるx、yおよびzが、0.2000≦x<0.3040、0.2000≦y<0.3160およびx+y+z=1であることをいう。また、「グリーン色」とは、色度座標におけるx、yおよびzが、0.2800≦x≦0.3300、0.2900≦y≦0.3400およびx+y+z=1であることをいう。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明で使用する金微粒子は、例えば、特開平11−76800号公報に公開された発明により作製することができる。すなわち、金化合物を溶媒中に溶解した後、溶媒中の金イオンを高分子顔料分散剤の存在下で還元させると、粒径が1〜100nm、好ましくは1〜50nmの金微粒子が得られる。該金微粒子は、高分子顔料分散剤で保護され、アルコール、ケトン、エーテル、トルエンなどの溶剤に分散可能である。
【0009】
上記の、金微粒子を製造する工程で使用する高分子顔料分散剤は、特に限定されないが、(1)顔料親和性基を主鎖および/または複数の側鎖に有し、かつ溶剤親和部分を構成する複数の側鎖を有する櫛形構造の高分子、(2)主鎖中に顔料親和性基からなる複数の顔料親和部分を有する高分子、(3)主鎖の片末端に顔料親和性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子などである。具体的な市販品としては、例えば、ソルスパースシリーズ(ゼネカ社製)、ディスパービックシリーズ(ビックケミー社製)、EFKAシリーズ(EFKAケミカル社製)、アジスパ−PB711、アジスパ−PA111(味の素社製)などが挙げられる。
【0010】
あるいは、例えば、特開平3−34211号公報に開示されているようなガス中蒸発法と呼ばれる方法によって、金微粒子を有機溶剤中に独立分散させた溶液が作製される。すなわち、チャンバ内にヘリウム不活性ガスを導入して上記金属を蒸発させ、不活性ガスとの衝突により冷却され凝縮して得られるが、この場合、生成直後の粒子が孤立状態にある段階で有機溶剤の蒸気を導入して粒子表面の被覆を行っている。有機溶剤としては、例えば、p−キシレン、トルエン、α−テレピネオールなどの溶剤が用いられ、粒径が好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nmを有する、有機溶剤中に独立分散させた金微粒子が得られる。
【0011】
もしくは、アルコール、ケトン、エーテル、トルエンなどに可溶な高分子内に粒径が好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nmの金微粒子を分散させたものである。詳しくは、高分子の分子の末端あるいは側鎖にシアノ基(−CN)、アミノ基(−NH2)、そしてチオール基(−SH)から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する高分子あるいはオリゴマーを用いる。具体的には、分子の末端あるいは側鎖に上記シアノ基(−CN)、アミノ基(−NH2)、そしてチオール基(−SH)から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するもので、その骨格にはポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.10、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレンなどからなり、その融点あるいは軟化点は40〜100℃である。オリゴマーの数平均分子量は特に制限はないが、500〜6,000程度である。上記官能基は特に金微粒子の表面の金原子と共有結合や配位結合を形成しやすく、粒成長を抑制し、金微粒子の分散性を高めることになる。
【0012】
本発明で使用する樹脂B1は、有機溶剤に可溶で、処理液の粘度を適度に維持して透明ガラス基板への塗布、および塗布物の乾燥後の取扱を良好にし、かつ、焼成時に比較的低温で熱分解することが必要である。樹脂B1の熱分解温度としては、150〜400℃の範囲が好ましい。分解温度が150℃未満では、塗布膜の乾燥工程で、樹脂B1が熱分解してしまう場合があるためである。一方、分解温度が400℃を超えると、焼成後の酸化物膜強度が充分でなくなる場合があるためである。
【0013】
具体的な樹脂B1としては、例えば、ニトロセルロースなどの熱分解性のセルロース類、ポリ塩化ビニル類、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリル類などの樹脂が挙げられる。より好ましい樹脂B1はニトロセルロースである。このニ卜ロセルロースは、好ましくは重量平均分子量が2,000〜200,000の範囲であり、より好ましくは重量平均分子量が3,000〜150,000の範囲である。このニトロセルロースの添加量は、処理液(1)の粘度と所望する膜厚によって決定され、特に制限はないが、例えば、処理液(1)に配合するニトロセルロースは、分子量や処理液の塗布方法によっても異なるが、処理液(1)100質量部中で好ましくは1.0〜30.0質量部の範囲で添加する。
【0014】
処理液(2)に含有され、場合によっては処理液(1)にも含有されることが好ましい膜形成用化合物としては、例えば、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどの珪素のアルコキシド類、ポリシロキサン骨格を持つ各種シリコンオイル、シリコンワニスなどの低屈折率膜を形成する有機珪素化合物、および、チタン、ジルコニウム、セリウムおよびコバルトのエトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどのアルコキシド類、アセチルアセトナート、アミナートなどのキレート類、ステアレート、オクチレート、ナフテネート、グリコレートなどの有機酸金属塩、前記アルコキシドが重縮合化したオリゴマーなどの高屈折率膜を形成する有機金属化合物が挙げられる。
【0015】
本発明で使用する、樹脂B1よりも分解温度が高い樹脂B2は、後述の有機溶剤に可溶で、処理液の粘度を適度に維持して処理液のガラス基板への塗布、および処理液の乾燥後の取扱を良好にし、かつ、焼成時に比較的高温で熱分解することが必要である。樹脂B2の熱分解温度としては、250〜500℃の範囲が好ましい。分解温度が250℃未満では、膜の低反射化が不充分となる場合があり、一方、分解温度が500℃を超えると、焼成後の酸化物膜強度が充分でなくなる場合があるためである。
【0016】
具体的な樹脂B2としては、例えば、エチルセルロースなどの熱分解性のセルロース類、ポリ塩化ビニル類、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリル類などの樹脂が挙げられる。より好ましい樹脂B2はエチルセルロースである。このエチルセルロースは、重量平均分子量が好ましくは8,000〜150,000であり、より好ましくは重量平均分子量が10,000〜120,000のものである。このエチルセルロースの添加量は、処理液(2)の粘度と所望する膜厚によって決定され、制限はないが、例えば、処理液(2)に配合するエチルセルロースは、分子量や処理液の塗布方法によっても異なるが、処理液(1)100質量部中で好ましくは1.0〜30.0質量部の範囲で添加する。
【0017】
以上の樹脂B2と樹脂B1とは、樹脂B2の分解温度(T2)と樹脂B1の分解温度(T1)とが、T2−T1≧100℃であるように組み合わせて使用することが好ましい。上記熱分解温度の関係がT2−T1<100℃であると、低反射膜付きガラス板の可視光反射率が高くなり過ぎる場合があるためである。なお、ここで樹脂の分解温度とは、樹脂の90質量%以上が焼失する温度(℃)をいう。
【0018】
本発明で使用する有機溶剤は、金微粒子を凝集させずに安定に分散でき、膜形成用化合物、樹脂B1および樹脂B2を溶解できるものであれば特に制限はなく、前記処理液の塗布方法などにより適宜選択される。具体的には、メタクレゾール、ジメチルホルムアミド、カルビトール、α−テルピネオール、ジアセトンアルコール、トリエチレングリコール、パラキシレン、トルエンなどの高沸点溶剤が、前記処理液をガラス板表面に塗布するうえで好ましい。
【0019】
上記の処理液(1)および処理液(2)は、溶剤と樹脂を所定量はかりとり、60〜100℃(好ましくは70〜80℃)の温度のもとで、20〜40分間攪拌する。この溶液に金微粒子および膜形成用化合物から選ばれる必要成分を配合して、60〜100℃(好ましくは70〜80℃)の温度のもとで20〜40分間攪拌混合する。得られた溶液を保管溶液に移して自然冷却させることにより調製できる。
【0020】
以上の如くして本発明で使用する処理液(1)および処理液(2)が得られるが、金微粒子は、何れか一方が含有すればよい。処理液(1)が金微粒子を含有せず、処理液(2)が金微粒子を含有する場合でも、着色された低反射ガラス板が得られるが、この場合には金微粒子が反射膜の最表面に存在することになり、摩擦などにより、金微粒子が膜から剥れ落ちてしまい、色が薄くなってしまうおそれがある。また、処理液(1)および処理液(2)の両方に金微粒子が添加されていると、形成された膜の透過率が低下する場合がある。また、処理液(1)は、必ずしも膜形成用化合物を含有せねばならないというわけではなく、必要に応じて添加すればよい。処理液(1)に有機珪素化合物のような膜形成化合物が含まれていると、樹脂B1の種類によっては相分離を起こしやすく、膜面平滑性が悪化してしまう場合もあるからである。従って本発明においては、処理液(1)が、金微粒子、(および、必要に応じて膜形成用化合物)を含有し、処理液(2)が膜形成用化合物を含有し、かつ、金微粒子を含有しないことが好ましい。
【0021】
また、処理液(1)および処理液(2)には、ともに膜形成用化合物を添加することもできるが、形成される低反射膜は最外層の方が屈折率が低い方が好ましいので、処理液(2)の方が有機珪素化合物を含有し、処理液(1)の方が有機珪素化合物より高屈折率を呈する膜形成用化合物を含有することが好ましい。
また、処理液(1)が膜形成用化合物としてチタン、ジルコニウム、セリウムおよびコバルトから少なくとも1種選ばれてなる有機金属化合物、および金微粒子を含有し、処理液(2)が膜形成用化合物として有機珪素化合物を含有し、かつ、金微粒子を含有しない場合は、得られる低反射ガラス板はブルー色を呈する。
【0022】
前記処理液(1)または処理液(2)に配合する金微粒子の量は、所望する低反射ガラス板の透過率、反射率、色調および上記処理液の塗布方法などにより適宜決定されるが、上記処理液(2)、または、上記処理液(1)および処理液(2)が同時に配合する膜形成用化合物が含有する金属原子数(M)と、金微粒子の金原子数(N)が、M/N=0.1〜100の範囲になるように配合されることが好ましい。M/Nが0.1未満になると、金微粒子同士が焼結し、貴金属塊を形成し、金微粒子単体をガラス板表面に塗布および焼成した状態と変わらなくなり、本発明の目的とするコロイド発色が得られない場合がある。逆にM/Nが100を超えると、上記処理液中の金微粒子数が著しく少なくなり、有効なガラス板の着色ができなく、本発明の目的を達成できない場合がある。さらに具体的には、処理液(1)または処理液(2)100質量部中、金微粒子配合量はそれぞれ0.05〜20.0質量部含有することが好ましい。配合量が0.05質量部未満では充分な着色ができない場合があり、一方、配合量が20.0質量部を超えると、望ましいブルー色を呈さなくなる場合があるからである。
【0023】
前記処理液(1)または処理液(2)に配合される膜形成用化合物の添加量は、膜形成用化合物種、有機溶剤、樹脂B2および樹脂B1などの添加量および塗布方法によって異なるが、前記処理液(1)に配合する場合は、焼成後膜厚が5〜50nmになるように設定することが望ましい。具体的には、膜形成用化合物の配合量は、処理液100質量部中において0.5〜20質量部であることが好ましい。
【0024】
焼成後膜厚が5nm未満になる濃度では、得られる低反射膜の製膜性が向上せず、膜強度の低い膜しか得られなくなる場合がある。一方で、焼成後の塗膜が50nmを超えると、前記膜形成用化合物の添加量では、低反射膜中に配合されている前記膜形成用化合物の配合量が多くなりすぎ、得られる膜の反射率が充分に低くならない場合がある。従って、本発明では優れた製膜性と優れた低反射膜を得るためにも、前記処理液(1)からなる焼成後膜厚を5〜50nmになるように設定することが好ましい。
【0025】
前記処理液(2)に配合される膜形成用化合物の添加量は、樹脂B2や有機溶剤の種類、使用量および塗布方法によって異なるが、前記処理液(2)からなる焼成後膜厚が、150〜350nmになるように設定することが望ましい。焼成後膜厚が150nm未満になる膜形成用化合物の添加量では、優れた低反射性の膜が得られない場合がある。一方で、350nmを超える膜形成用化合物の添加量では、低反射膜中に配合されている膜形成用化合物の配合量が多くなりすぎ、膜強度の低い膜しか得られなくなる場合があるからである。従って、本発明では優れた製膜性と優れた低反射膜を得るためにも、前記処理液(2)からなる焼成後膜厚が150〜350nmになるように設定することが好ましい。
【0026】
本発明に使用する透明ガラス基板は、特に限定されないが、熱線吸収ガラスまたはさらに熱線カット効果を高めた高熱線吸収ガラスを使用することが好ましい。例えば、自動車用窓ガラスなどの如く、熱線カット効果が要求される用途には、グリーンガラス基板を用いることによって、低反射性とともに熱線遮断効果を有する着色ガラス板が得られるので好ましい。グリーンガラス板としては、グリーン色を呈しているものであればいずれでもよく、例えば、ソーダ石灰シリカ系ガラス成分を基礎成分とし、Fe2O3、NiO、TiO2などを適宜配合したグリーンガラス板、ガラス成分中にFe2O3、CoO、Seなどを配合したグリーンガラス板などが挙げられ、フロートガラス、アルカリガラスなどがある。
【0027】
前記処理液をガラス基板に塗布する方法としては、スプレー、ディップ、ロールコート、スピンコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷などの方法が挙げられる。処理液(1)をガラス基板に塗布し、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去した後、さらに処理液(2)を塗布し、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去した後、400〜800℃の炉中で1〜10分間焼成し、冷却を経て本発明の低反射ガラス板が得られる。
【0028】
上記塗布膜の焼成条件は、400〜800℃の範囲で焼成することが好ましい。400℃未満で焼成を行うと、膜の製膜性が悪くなり、一方、800℃を超える焼成を行うと金微粒子の凝集が発生するので好ましくない。
【0029】
以上のような本発明の方法で得られる低反射ガラス板は、そのガラス基材が熱線吸収または高熱線吸収ガラスである場合には、低反射性であるとともに、熱線遮断効果を有することから、車輌用、例えば、自動車用窓ガラスなどとして有用である。
【0030】
また、本発明の低反射ガラス板は、JIS−R3106(1999年)に規定される可視光透過率が30〜85%であることが好ましい。自動車用窓ガラス(特に、自動車用ウインドシールドまたは自動車用フロントドアガラス)に使用する場合には、70〜85%であることが好ましい。また、自動車用窓ガラスとして使用する場合、ガラス面の反射率が高いとぎらぎらした印象を与え、高級感が損われることから、JIS−R3106(1999年)に規定されるガラス面の可視光反射率は5.5%以下であることが好ましく、特に5.0%以下であることが好ましい。
【0031】
さらに本発明により形成される低反射ガラス板は、積層体を構成する基板として使用することもできる。積層体は第一および第二の基板の間に中間膜または断熱層を挟み込んだ構造であり、本発明の低反射ガラス板を第一および/または第二の基板として用いることができる。また、ガラス板の積層に際しては、ガラス板の低反射率膜が形成された面を内側に配することが、低反射率膜の耐久性の面から好ましい。前記中間膜としては、例えば、透明または着色されたポリビニルブチラール、エチレンビニルアセテート共重合体などが挙げられる。前記断熱層としては、例えば、不活性ガス、空気あるいは窒素などを充填してなる層または真空層などが挙げられる。
【0032】
前記積層体としては、例えば、第一および第二の基板として低反射熱線吸収ガラス、高熱線吸収ガラスおよび紫外線吸収ガラスのいずれかを用い、中間膜としてポリビニルブチラールを用いた合わせガラスが挙げられる。第一および第二の基板として低反射高熱線吸収ガラスを用い、中間膜としてポリビニルブチラールを用いた合わせガラスにおいては、前記高熱線吸収ガラスの透過率が低いため、膜面から入射する光の非膜面側における反射率を低下させることができ、特に好ましい。前記合わせガラスは、輸送機器用窓(例えば、車輌用窓)やメータ機器のカバーガラスに好適に用いられる。
【0033】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、文中「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。また、後記各実施例および比較例で得られた各低反射ガラス板の評価方法は以下の通りである。
【0034】
1.光学特性
色差計NDH−300A(日本電色(株)製)および濁度計ZE2000(日本電色(株)製)を使用して、各試料のHz率(JIS K6714(1994年))、透過率および透過色調(JIS Z8729(1999年))の測定を行い、分光光度計UV3100Ps(SIMADZU製)により各試料の透過率および反射率を測定し、各試料の可視光透過率および可視光反射率(JIS−R3106(1999年))を算出した。
【0035】
2.耐アルカリ性
各試料を3%の水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬し、浸漬の前後の透過率および反射率を分光光度計で測定し、各試料の可視光透過率および可視光反射率変化を算出した。実用上1.0%以下であることが好ましい。
3.耐酸性
各試料を3%の硫酸水溶液に2時間浸漬し、浸漬の前後の透過率および反射率を分光光度計で測定し、各試料の可視光透過率および可視光反射率変化を算出した。実用上1.0%以下であることが好ましい。
【0036】
4.製膜性
ラビング試験機(ラビングテスター、大平理化工業社製)の支持棒接点部にウエスを取付け、適宜水を滴下しながら、荷重1.0kgで移動台を支持棒に対して3,000回前後に動かし摩耗試験を実施した。その試験後における膜面の状態を目視観察した。なお、表1および表2における「○」は摩耗試験後においても膜面の変化がない場合であり、「×」は摩耗試験後において膜が剥離した場合を示す。
【0037】
実施例1〜11、比較例1〜10
表1および表2に、実施例1〜11および比較例2〜10で使用した処理液(1)および処理液(2)の組成を示す。各処理液は前記の方法に準じて調製した。実施例1〜11および比較例2〜10においては、厚み3.5mmのグリーン熱線吸収ガラス板上に、処理液(1)をスクリーン印刷法で塗布した後、150℃の熱風循環式オーブンで大気雰囲気下で5分間乾燥した。次いで、処理液(1)と同じ質量の処理液(2)を塗布後、150℃の熱風循環式オーブンで大気雰囲気下で5分間乾燥した後、600℃のマッフル炉中で5分間焼成し、実施例1〜11および比較例2〜10の低反射ガラス板の試料を得た。比較例1は、グリーン熱線吸収ガラス板それ自体であり、比較例2〜9は処理液(1)にニトロセルロースを使用せず、エチルセルロースを用いた例であり、比較例10は、処理液(2)のみを用いて作製した例である。なお、用いたニトロセルロースおよびエチルセルロースの分解温度は、それぞれ190℃および330℃であった。
【0038】
表1および表2に、実施例1〜11および比較例2〜10で得られた低反射ガラス板の前記試験項目の結果を示す。なお、上記実施例および比較例の低反射膜の1層目および2層目はその界面が明確ではなく、焼成して膜形成後には各層の膜厚の測定が困難である。表中の膜厚は、図1に示すようにガラス基板の上に処理液(1)と処理液(2)との一部が重複するように塗布し、前記と同一の条件で乾燥および焼成し、処理液が重複していない部分の膜厚を測定して1層目および2層目の膜厚とした。また、実施例7の低反射膜について膜断面方向の元素分析を光電子スペクトルにより測定した(測定装置は、X線光電子分光装置 型番:ESCA−3400、島津製作所製である)。その結果を図2および図3に示す。図3は、図2の金およびチタンの部分を拡大した図である。この分析結果から低反射膜の1層目および2層目はその界面が明確ではないことが分かる。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
表1および表2より、比較例2〜7は耐アルカリ性が低く好ましくない。また、比較例8および9は製膜性が悪く、実使用できない。比較例10も、耐アルカリ性および耐酸性が悪過ぎる。これに対して実施例1〜11の試料では、膜強度が強い状態で低反射機能を有し、耐アルカリ性および耐酸性も良好な低反射膜が得られることを示している。なお、実施例6および7においては得られた低反射膜付きガラス板はブルー色を呈する。そして、膜表面は珪素と酸素から構成されており、図2および図3に示すように、ガラス基板近傍になるにつれてチタンおよび金の存在が確認できる。また、図2および図3に示すように金の拡散はチタンの存在する位置まで達しており、そのために試料がブルー色を示していると考えられる。
【0049】
【発明の効果】
以上のように本発明では、処理液(1)と処理液(2)の組み合せからなる処理液をガラス基板の表面に塗布、乾燥の後、焼成することにより着色された低反射ガラス板を得ることができ、膜厚を所定の膜厚に設定することにより、製膜性に優れ、被膜の耐アルカリ性および耐酸性が良好で、さらには低いHz率を有し、所望の低い反射率を有する低反射ガラス板が得られる。また、透明ガラス基板が、グリーン色を呈するガラスなどの熱線吸収ガラスまたは高熱線吸収ガラスである場合には熱線カット効果が得られる。
また、本発明により得られる低反射ガラス板に形成された膜は、膜厚方向に成分が変化する、すなわち、膜厚方向に屈折率が変化することを特徴とし、比較的フラットな反射特性が得られる。また、処理液(1)、処理液(2)に配合する金微粒子、膜形成用化合物の組み合わせによってブルー色を呈する低反射ガラス板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明において形成される1層目および2層目の膜厚を説明する図。
【図2】 実施例7の低反射膜の膜断面方向の元素分析を示す光電子スペクトル。
【図3】 図2の金およびチタンの部分を拡大した図。
Claims (5)
- 樹脂B1および有機溶剤を含む処理液(1)と、膜形成用化合物、樹脂B1よりも分解温度が高い樹脂B2、および有機溶剤を含む処理液(2)とを用い、かつ、処理液(1)および処理液(2)の少なくとも一方が金微粒子を含有するものであって、処理液(1)を透明ガラス基板の表面に塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、さらにその上に処理液(2)を塗布し、その後、50〜200℃で乾燥して有機溶剤を除去し、次いで、処理された透明ガラス基板を400〜800℃で焼成することを特徴とする低反射ガラス板の製造方法。
- 処理液(1)が、金微粒子を含有し、処理液(2)が、膜形成用化合物として有機珪素化合物を含有し、かつ、金微粒子を含有しない、請求項1に記載の低反射ガラス板の製造方法。
- 処理液(1)が、さらに膜形成用化合物を含むものである請求項1または2に記載の低反射ガラス板の製造方法。
- 透明ガラス基板が、熱線吸収ガラスまたは高熱線吸収ガラスであって、処理液(1)が、膜形成用化合物としてチタン、ジルコニウム、セリウムおよびコバルトから少なくとも1種選ばれてなる有機金属化合物、および金微粒子を含有し、処理液(2)が、膜形成用化合物として有機珪素化合物を含有し、かつ、金微粒子を含有せず、得られる低反射ガラス板がブルー色を呈する請求項3に記載の低反射ガラス板の製造方法。
- 処理液(1)からなる焼成後膜厚が5〜50nmであり、処理液(2)からなる焼成後膜厚が150〜350nmである請求項2〜4の何れか1項に記載の低反射ガラス板の製造方法。
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