JP4054085B2 - 印象材トレー用清掃剤及び印象材トレーの清掃方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯科等の治療において用いられる印象材トレーに付着している印象材を除去清掃するために用いられる清掃剤及び清掃方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
歯科において義歯を作成する際して、印象材を専用のトレーに盛りつけて、歯の欠損部分の形状(印象)を型採りする。そして、印象材として、アルギン酸塩印象材を使用することが多い。
【0003】
該アルギン酸塩印象材は、一般に、アルギン酸アルカリ塩と硫酸カルシウムを主成分とするものであり、水と練り合わせることにより、水溶性のアルギン酸アルカリ塩のカルシウムとの交換反応により水不溶性のアルギン酸カルシウムが生成して固化する。このアルギン酸カルシウムの生成過程で、適当量を印象材用トレー(以下「トレー」と称する。)に盛りつけて、欠損部分に圧接して型採りをし、固化させて陰型を製作する。この陰型に模型材(石膏等)を注入して治療部分周辺の同型、同大の模型を製作する。
【0004】
使用後のトレーは繰り返し使用するため、付着している模型製作後の印象材をトレーから手で剥し取る。このとき、トレーに固化した印象材の一部が残滓として残る。特に、トレー10は、欠損部分の型採り性を良好にするために材料逃げが適度にできるように、図1に示す如く、表面凹凸または多孔構造とされているため、固化印象材の一部が残存付着して多くの残滓が発生し易い。
【0005】
しかしながら、このトレーに付着した印象材(アルギン酸カルシウム)の残滓は硬くて水に不溶性であり、通常のブラシをかけての水洗いでは容易に除去清掃することができない。
【0006】
このため、「印象材トレー用清掃剤」と称される特定の薬剤を使用する必要がある。
【0007】
当該印象材トレー用清掃剤(以下、単に「トレー用清掃剤」と称することがある。)としては、例えば、アルカリ性炭酸塩とエチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩などのキレート化剤を主成分とし、これに付着残滓内への上記主成分の浸透促進のために若干量の界面活性剤が配合された薬剤が、一般的に使用されている。
【0008】
当該薬剤は、2〜10wt%程度の濃度の水溶液とした浸漬処理浴中に、上記使用後のトレーを、一昼夜浸漬して用いる(特開平6−199625号公報段落「0007」参照)。そして、浸漬処理浴中で、印象材が溶解して、後清掃を容易にする。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記の如く、一般的なトレー用清掃剤は、印象材(水不溶性のアルギン酸カルシウム)を溶解させることを目的としており、不溶性アルギン酸をほとんど溶解させるためにの浸漬処理時間が長くかかった。浸漬処理時間が長いことは、作業効率の低下の問題の他に、トレーが金属製(例えばアルミニウム製)の場合、腐食等が発生し易い点でも望ましくない。浸漬処理時間が短いトレー用清掃剤(薬剤)の出現が要望されていた。
【0010】
また、一昼夜浸漬処理しておいても、付着した印象材は完全に溶解せずブラシ等を用いて擦り落とす作業が必要であり、さらに、トレーとしては、前述の如く凹凸構造のものが多い。このため、溶解した印象材がトレーの隙間に入り込むやすく、トレーの清掃作業に悪影響を与えた。
【0011】
なお、上記トレー用清掃剤は、上記の如く、通常、界面活性剤を含有する。このため、清掃剤(キレート化剤・アルカリ)の濃度が上記範囲(10wt%)を越えると溶液中の無機イオンの濃度が上がり、界面活性剤が塩析されて沈殿したり、ゲル化して二層分離したりする(これらの不溶性成分は、トレーに付着して更に清掃を困難にするおそれがある。)。このため、浸漬処理時間を短くしよう、即ち、溶解速度を上げようとしても制限された(同公報段落「0012」参照)。
【0012】
本発明は、上記にかんがみて、処理液への使用後トレーの浸漬時間が短くて済み、しかも、浸漬処理後の後清掃も容易となる印象材トレー用清掃剤を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、トレー用清掃剤を、上記実質的に界面活性剤を含有しない界面活性剤非含有タイプとし、特定のキレート化剤を、従来より高濃度とした処理液に、使用後のトレーを1時間前後浸漬処理した後、印象材が溶解しない状態で、清掃作業を行うと、驚くことに、印象材を主として剥離作用により除去清掃できることを見出し、下記構成の本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明のトレー用清掃剤は、界面活性剤を含有しない界面活性剤不要タイプであって、クエン酸二・三アンモニウム又はEDTA四ナトリウムを20〜40 wt %含有する水性液であり、必要により、アルカリによりpH6〜8に調整されてなるものである。
【0015】
本発明のトレーの清掃方法は、上記トレー用清掃剤に、印象材が付着しているトレーを約0.5〜2時間浸漬処理後、印象材が未溶解状態で印象材を主として剥離作用により除去清掃することを特徴とする。
【0016】
【手段の詳細な説明】
なお、以下の説明で、配合単位を示す「%」は、特に断らない限り「wt%」である。
【0017】
A.本発明のトレー用清掃剤は、界面活性剤を含有しない界面活性剤非含有タイプであって、キレート化剤:15〜45wt%含有する水性液であり、必要により、アルカリによりpH6.5〜7.5に調整されてなるものである。
【0018】
(2) キレート化剤が15%未満でも45%を越えても、印象材を溶解させずに実体的に剥離作用で除去清掃ができる状態を実現することが困難となる。即ち、キレート化剤が高濃度でないと、印象材の溶解が先行し、45%を越えると、トレーの腐食等の悪影響がある。
【0019】
キレート化剤の含有量の好ましい範囲は、20〜40%、更に好ましい範囲は、25〜35%である。
【0020】
キレート化剤としては、汎用のものを使用できるが、好ましくは、クエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、プロパンジアミン四酢酸塩、ポリ燐酸塩、ニトリロ三酢酸塩等のうちから1種又は2種以上を選択して使用できる。更に好ましくは、クエン酸二・三アンモニウム、EDTA四ナトリウムのうちから1種または2種以上を選択して使用できる。
【0021】
(3) アルカリは、主として、金属製トレーの腐食が促進されず、かつ、取扱性も容易な中性域にpHを調整するために配合するもので、通常、含有量は、30%以下、望ましくは、10%以下とする。
【0022】
アルカリとしては、アルカリ性を示すアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物・塩、及びアンモニア水溶液を挙げることができる。好ましくは、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのうちから1種又は2種以上を選択して使用できる。特に、炭酸水素ナトリウムが、アルカリ性が強くなく、安全であるため好ましい。
【0023】
B.本発明の方法は、トレー用清掃剤に、印象材(剥ぎ取る前のもの又は剥ぎ取った後の印象材残滓)が付着しているトレーを含む約30分〜2時間浸漬処理後、印象材が未溶解状態で印象材を主として剥離作用により除去清掃するものである。通常、印象材の剥離除去後は、通常、水洗い(必要によりブラシ等を使用して)により後清掃(仕上げ清掃)を行う。
【0024】
ここで、浸漬時間が短すぎると、印象材の剥離除去が困難であり、逆に、長すぎると、印象材の溶解が始まり、溶解残滓によるトレーの再付着が発生して、本発明の目的を達成しがたくなる。
【0025】
処理時間は、好ましくは45分〜1.5時間、更に好ましくは、1時間前後である。
【0026】
【発明の作用・効果】
本発明の印象材トレー用清掃剤は、上記の如く、界面活性剤非含有タイプで、キレート化剤を、従来に比して格段に高濃度で含有させたもの:15〜45wt%含有する水性液であり、当該清掃剤に被処理物である印象材が付着したトレーを、1時間前後浸漬することにより、印象材の剥離除去が可能となり、使用後トレーの清掃が格段に容易となる。特に、印象材の剥し取りを、本発明の清掃剤に浸漬後行うことにより、そのまま連続的に水洗により後清掃(仕上げ清掃)するだけで清掃作業が完了し、清掃作業性が格段に向上する。
【0027】
そして、アルカリで中性域にpH調整することにより、金属製トレーの腐食が促進されず、取扱性も良好となる。
【0028】
なお、本発明と同様の目的(浸漬処理時間の短縮化)のために、前述の特開平6−199625号公報に、下記概略構成のトレー用清掃剤が、「不溶性アルギン酸塩の溶解剤組成物」の名称で提案されている。
【0029】
「分子内にオキシエチレン鎖とオキシプロピレン鎖とを有する混合ポリオキシアルキレン型非イオン界面活性剤と炭素数10〜20のα−オレフィンスルホン酸塩をその重量比が1/4〜4/1の範囲内で含有し、金属キレート化能を有する化合物及びアルカリ性炭酸塩を主成分とする。」
しかし、当該清掃剤は、本発明で必須しない界面活性剤を主成分とするとともに、実施例レベルでは、使用時におけるキレート化剤(金属キレート化能を有する化合物)の含有量は、2〜4%であり、しかも、処理浸漬時間も5時間であり、別異の技術である。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために比較例と共に行った実施例について、説明をする。
【0031】
(1) まず、被処理物であるトレーは、下記の如く調製したものを使用した。
【0032】
印象材として「ニューアルフィーナ」(睦化学工業製)24.9gをラバーボウルに計り取り、水60gを加え、スパチュラで30秒間練和した。得られたペーストをトレーに盛りつけ、歯形に2分間圧着した。
【0033】
(2) 表1に組成処方に従って、処理液(1L)を調製し、該処理液中に、印象材を剥した後の残滓が付着しているトレーを1時間浸漬した後、溶解性及びトレーの清掃のし易さを調べた。各判定基準は、下記の通りとした。なお、各処理液のpHについても、DKK社製のpH測定器により測定した。
【0034】
1)溶解性判定
1時間浸漬した後のトレーを、水1Lに30分間浸漬した。トレーに残った印象材を乾燥させた後、重量を測定し、下記計算式に基づいて印象材の重量減少率を計算して、溶解性を調べた。
【0035】
重量減少率(%)=(最初の印象材量(g)−トレーに残った印象材量(g))/最初の印象材量(g)×100
2)清掃性判定
1時間浸漬した後のトレーを直径2cmのノズルから10L/分の圧力の水流下に5分間さらし、剥離した印象材を洗い流す。トレーに残った印象材を乾燥させた後、重量を測定し、下記計算式に基づいて印象材の剥離率を計算して、清掃のし易さを調べた。
【0036】
剥離率(%)=(最初の印象材量(g)−トレーに残った印象材量(g))/最初の印象材量(g)×100
(3) 試験結果を示す表1から、各実施例の処理液は、浸漬処理1時間では、いずれも、印象材が溶解せず、かつ、清掃性が良好であることがわかる。これに対して、各比較例は、印象材がわずかながら溶解するとともに、清掃性が良好でない。
【0037】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の薬剤を適用する印象用トレーの一例を示す斜視図。
【符号の説明】
10 トレー
Claims (5)
- 界面活性剤を含有しない界面活性剤不要タイプの印象材トレー用清掃剤であって、
クエン酸二・三アンモニウム又はEDTA四ナトリウムを20〜40wt%含有する水性液であることを特徴とする印象材トレー用清掃剤。 - 更に、アルカリ性金属化合物(以下「アルカリ」と称する。)を含有させて、pH6〜8に調製されてなることを特徴とする請求項1記載の印象材トレー用清掃剤。
- 前記アルカリが、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの群から選択されるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2記載の印象材トレー用清掃剤。
- 前記アルカリが、炭酸水素ナトリウムであることを特徴とする請求項3記載の印象材トレー用清掃剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の清掃剤に、印象材が付着しているトレーを約0.5〜2時間浸漬処理後、前記印象材を主として剥離作用により除去清掃することを特徴とする印象材用トレーの清掃方法。
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JP08010997A JP4054085B2 (ja) | 1997-03-31 | 1997-03-31 | 印象材トレー用清掃剤及び印象材トレーの清掃方法 |
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JPH10272145A JPH10272145A (ja) | 1998-10-13 |
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JP08010997A Expired - Lifetime JP4054085B2 (ja) | 1997-03-31 | 1997-03-31 | 印象材トレー用清掃剤及び印象材トレーの清掃方法 |
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- 1997-03-31 JP JP08010997A patent/JP4054085B2/ja not_active Expired - Lifetime
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