JP4051919B2 - カラー画像信号処理装置、カラー画像信号処理方法およびカラー画像信号処理プログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディジタル複写機やプリンタ等においてカラー画像を取り扱うための技術に関し、さらに詳しくは、入力側と出力側のカラー画像信号の色再現可能領域が異なる場合にカラー画像信号に対して色変換処理を行うカラー画像信号処理装置、カラー画像信号処理方法およびカラー画像信号処理プログラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、カラー画像を出力するための機器としてCRT(Cathode Ray Tube)等の表示装置やプリンタ等の印刷装置が普及しているが、これらはそれぞれ出力方式が異なるため、再現可能な色範囲に相違があることが知られている。そのため、例えばCRT上で作成した画像をプリンタで印刷する場合のように、異なる出力装置で同じ画像データによる出力を行おうとすると、再現できない色が生じる可能性がある。このことから、複数の機器を通じてカラー画像を取り扱う際には、与えられたカラー画像信号を出力装置の色再現可能領域内のカラー画像信号に置き換える、いわゆるカラーガマット(Color Gamut)圧縮と呼ばれる色空間の圧縮写像を行うことが必要となる。
【0003】
色空間の圧縮写像を行う技術としては、例えば特公平6−36548号公報にて開示されたものがある。この技術では、入力カラー画像信号の彩度および明度の範囲が出力装置の彩度および明度の再現範囲と比較して大きい場合に、入力カラー画像信号の彩度および明度の双方について、階調を保存するように出力装置の色再現可能領域内に圧縮写像を行っている。ところが、この技術を用いて大きく異なる色再現可能領域間で圧縮写像を行うと、高明度高彩度であった色は明度および彩度ともに低下してしまうことになる。すなわち、見た目に同じ色を再現しようとする場合、あるいは入力色より望ましい色を再現しようとする場合に、単純な変換処理だけでは満足できる結果を得ることができない。
【0004】
このことから、色空間の圧縮写像にあたっては、例えば特開2000−184222号公報にて開示されたカラー画像信号処理装置またはカラー画像信号処理方法を用いることで、入力カラー画像信号が示す色を出力装置において見かけ上望ましい色となるよう変換することが提案されている。詳しくは、色空間の圧縮写像を行う場合に、先ず、入力カラー画像信号を入力側の色再現域に基づいた中間的な色再現域内の中間カラー画像信号に変換し、その中間色再現域を高明度領域と低明度領域に分割し、各領域で個別に目標点を設定する。そして、図10(a)および(b)に示すように、それぞれの目標点に向かって直線方向に線形圧縮(線形圧縮係数を用いた圧縮)することによって、中間カラー画像信号を出力側の色再現可能領域内の出力カラー画像信号へ変換する。これにより、例えば明るい色については明度をそれほど低下させずに変換処理することができ、また暗い色についてはバランスの取れた色への変換を行うことができるといったように、入力カラー画像信号の取り得る入力側の色再現可能領域と出力側の色再現可能領域とが大きく異なる場合であっても、出力側においては見た目に同じような望ましい色を再現することが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば特開2000−184222号公報に開示された技術を用いて色空間の圧縮写像を行うと、一定方向への線形圧縮によって出力カラー画像信号を得ているため、色再現域の外郭付近、すなわち無彩色近傍においては特に問題とならないが、有彩色部分については必ずしも望ましい結果が得られるとは限らない。これは、例えば色再現域がR(赤)、G(緑)、B(青)、Y(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)等といった様々な色相での大きさに対応しようとした場合に、一定方向に線形の圧縮写像を行うと、特に色再現域内部に極度の彩度の低下が生じてしまうからである。このような彩度の低下は、例えば写真やグラフィックス等の画質に大きな影響を及ぼすため、その発生を極力抑制すべきである。
【0006】
そこで、本発明は、入力されたカラー画像信号を画像出力装置で再現可能な色再現域内の出力カラー画像信号に変換する場合に、適切な色再現を実現することを可能にする、カラー画像信号処理装置、カラー画像信号処理方法およびカラー画像信号処理プログラムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたカラー画像信号処理装置で、入力されたカラー画像信号をその入力側の色再現域に基づき設定された中間色再現域を利用して中間カラー画像信号に変換する第1の色変換手段と、前記中間カラー画像信号を画像出力装置で再現可能な出力色再現域に依存した出力カラー画像信号に変換する第2の色変換手段と、を具備するものにおいて、前記第2の色変換手段が、無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記出力色再現域の外郭点までの距離との比率を第1の係数とし、前記無彩色のL * 軸上の点から中間カラー画像信号までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離との比率を第2の係数とし、該第2の係数を指数係数として前記第1の係数に与えることによって設定した非線形の圧縮係数を用いて前記中間カラー画像信号から前記出力カラー画像信号への変換を行うものである、ことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明は、上記目的を達成するために案出されたカラー画像信号処理方法で、入力されたカラー画像信号をその入力側の色再現域に基づき設定された中間色再現域を利用して中間カラー画像信号に変換する第1の色変換ステップと、前記中間カラー画像信号を画像出力装置で再現可能な出力色再現域に依存した出力カラー画像信号に変換する第2の色変換ステップと、を具備する方法において、前記第2の色変換ステップでは、無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記出力色再現域の外郭点までの距離との比率を第1の係数とし、前記無彩色のL * 軸上の点から中間カラー画像信号までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離との比率を第2の係数とし、該第2の係数を指数係数として前記第1の係数に与えることによって設定した非線形の圧縮係数を用いて前記中間カラー画像信号から前記出力カラー画像信号への変換を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記目的を達成するために案出されたカラー画像信号処理プログラムで、コンピュータを、入力されたカラー画像信号をその入力側の色再現域に基づき設定された中間色再現域を利用して中間カラー画像信号に変換する第1の色変換手段と、前記中間カラー画像信号を画像出力装置で再現可能な出力色再現域に依存した出力カラー画像信号に変換する第2の色変換手段と、として機能させるためのプログラムにおいて、前記第2の色変換手段が、無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記出力色再現域の外郭点までの距離との比率を第1の係数とし、前記無彩色のL * 軸上の点から中間カラー画像信号までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離との比率を第2の係数とし、該第2の係数を指数係数として前記第1の係数に与えることによって設定した非線形の圧縮係数を用いて前記中間カラー画像信号から前記出力カラー画像信号への変換を行うことを特徴とするものである。
【0010】
上記構成のカラー画像信号処理装置、上記手順によるカラー画像信号処理方法、および、上記機能を実現するカラー画像信号処理プログラムによれば、中間カラー画像信号から出力カラー画像信号への変換を、無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記出力色再現域の外郭点までの距離との比率を第1の係数とし、前記無彩色のL * 軸上の点から中間カラー画像信号までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離との比率を第2の係数とし、該第2の係数を指数係数として前記第1の係数に与えることによって設定した非線形の圧縮係数を用いて行うので、その変換が線形圧縮の場合のように一律ではなく、軽重を持って行われることになる。そのため、例えば入力色再現域の大きな領域内部の圧縮率を抑え、人肌色や緑色等の有彩色部分の彩度を低下させずに圧縮したり、無彩色部分については入出力再現域の大きさに対して略線形の圧縮を行ったりすることが可能となる。したがって、写真やグラフィック等の色再現にも好適となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明に係るカラー画像信号処理装置、カラー画像信号処理方法およびカラー画像信号処理プログラムについて説明する。
【0012】
先ず、はじめに、カラー画像信号処理装置の概略構成を説明する。図1は、本発明に係るカラー画像信号処理装置の概略構成例を示すブロック図である。ここで説明するカラー画像信号処理装置は、ディジタル複写機やプリンタ等といった画像出力装置に搭載され、若しくはその画像出力装置に接続するサーバ装置に搭載され、またはその画像出力装置に動作指示を与えるドライバ装置に搭載されて用いられるもので、図1(a)に示すように、入力色空間変換部1と、色相変換部2と、第1の色変換部3と、第2の色変換部4と、出力色空間変換部5と、圧縮係数設定部6と、を備えたものである。
【0013】
入力色空間変換部1は、入力カラー画像信号の色空間が後段で用いる色空間と異なる場合に、後段で用いる色空間への色空間変換処理を行うものである。例えば、入力カラー画像信号がCRT等に表示させるためのRGB色空間の信号であるのに対して、色相変換部2から第2の色変換部4までの処理が装置に依存しない色空間、例えばCIE−L*a*b*色空間で行われる場合であれば、入力色空間変換部1は、RGB色空間からL*a*b*色空間への変換を行う。なお、入力カラー画像信号が装置に依存しない色空間の信号である場合には、入力色空間変換部1における処理は必要ないため、図1(b)に示すように、この入力色空間変換部1を設けないでカラー画像信号処理装置を構成してもよい。
【0014】
また図1(a)において、色相変換部2は、装置に依存しない色空間に変換された入力カラー画像信号に対して、明度および彩度を保存したまま、入力カラー画像信号の色に応じて色相を変更する処理を行うものである。色相を変更することは、色自体を変更することになるため、通常はあまり行われていない。しかし、以降の処理で色相を保持したまま明度および彩度を変更すると大きく変更しなければならないが、色相を多少変更すると明度および彩度の変更量が少なく、より自然に見える色変換を行える場合がある。このような場合に、この色相変換部2において色相を多少変更する処理を行う。このときの変更量は、入力カラー画像信号の色によって異なり、入力カラー画像信号の取り得る色、すなわち入力側の色再現域と、出力すべきカラー画像信号の取り得る色の範囲、すなわち出力側の色再現域との差異が大きいほど、色相の変更量を大きくすることができる。もちろん、上述のように色自体を変更する処理であるので、出力される画像がより自然に見える範囲内で変更量を設定しておくことが必要である。なお、この色相変換部2も、必ずしも設ける必要はなく、図1(b)に示すように構成することも考えられる。
【0015】
また図1(a)および(b)において、第1の色変換部3は、色相変換部2で色相が変更された入力カラー画像信号を、入力側の色再現域(入力カラー画像信号が取り得る色の範囲)に基づき設定された中間色再現域を利用して、その中間の色再現域に依存する中間カラー画像信号に変換するものである。中間の色再現域としては、入力側の色再現域の明度方向の最大値および最小値が、出力側の色再現域(出力カラー画像信号が取り得ることを許されている色の範囲)の明度の最大値および最小値と一致するように、入力側の色再現域に対して明度方向に調整を施す。さらに、明度方向の調整を施した後の色再現域の最大彩度を有する点の明度と、出力側の色再現域の最大彩度を有する点の明度との差より、所定の関数によって求められる明度のとき最大彩度が得られるように色再現可能領域を調整する。このようにして得られた色再現域を中間の色再現域として設定し、色相変換部2で色相が変更された入力カラー画像信号を中間の色再現域内の色へ変換し、中間カラー画像信号として出力する。
【0016】
第2の色変換部4は、第1の色変換部3から出力された中間カラー画像信号を、出力側の色再現域に依存した出力カラー画像信号へ変換するものである。このとき、出力側の色再現域の形状に応じて、中間カラー画像信号を変換する際の変換方向を変化させる。例えば、所定の明度を持つ無彩色、具体的には出力側の色再現域において最大彩度を有する点の明度を持つ無彩色を目標点とし、中間カラー画像信号の明度が目標点の明度より高い場合には、明度を維持して彩度を出力側の色再現域に応じて変換処理する。これによって、明るい色については明度をそれほど低下させずに変換処理することができる。また、中間カラー画像信号の明度が目標点の明度より低い場合には、中間カラー画像信号の色と目標点を結ぶ直線方向に、出力側の色再現域に応じて明度および彩度を変換処理する。これによって、暗い色についてはバランスのとれた色への変換を行うことができる。
【0017】
ただし、第2の色変換部4は、中間カラー画像信号を出力カラー画像信号へ変換するのにあたって、詳細を後述するように、非線形の圧縮係数を用いてその変換を行うようになっている。
【0018】
出力色空間変換部5は、出力カラー画像信号の色空間がこの出力カラー画像信号を受け取る出力側の画像出力装置で用いる色空間と異なる場合に、その画像出力装置で用いる色空間への色空間変換処理を行うものである。例えば画像出力装置がプリンタ等の場合、その画像出力装置は、YMC色空間またはYMCK色空間のカラー画像信号を取り扱うものが殆どである。このような場合に、出力色空間変換部5は、装置に依存しない色空間、例えばCIE−L*a*b*色空間からYMC色空間またはYMCK色空間への色空間変換処理を行う。もちろん、装置に依存しない色空間のまま出力してもよく、この場合には出力色空間変換部5における処理は不要なため、図1(b)に示すように、この出力色空間変換部5を設けないでカラー画像信号処理装置を構成してもよい。
【0019】
圧縮係数設定部6は、第2の色変換部4が用いる非線形の圧縮係数の設定を行うものである。圧縮係数設定部6では、非線形の圧縮係数の設定を、第1の色変換部3での変換によって得られる中間カラー画像信号や中間色再現域等に関する情報に基づいて行うようになっている。なお、非線形の圧縮係数の詳細については、後述するものとする。
【0020】
これらの各部1〜6は、例えば画像出力装置、サーバ装置またはドライバ装置が具備するもので、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等の組み合わせからなるコンピュータが、所定プログラムを実行することによって、それぞれ実現されたものであることが考えられる。
【0021】
続いて、以上のように構成されたカラー画像信号処理装置において、入力カラー画像信号を出力カラー画像信号へ変換する場合の処理手順、すなわちカラー画像信号処理方法について説明する。図2は、本発明に係るカラー画像信号処理方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0022】
カラー画像信号の変換処理を行う場合には、先ず、予め入力側の色再現域および出力側の色再現域を求めておく(ステップ11、以下ステップを「S」と略す)。このとき、装置に依存しない色空間、例えばCIE−L*a*b*色空間において求めておくとよい。なお、以下の説明では内部の処理はCIE−L*a*b*色空間において行うものとする。図3は、色再現域の一例を示す概念図である。一般に、色再現域は一様ではなく、図例のような複雑な3次元形状を有している。図に示した立体の内側が色再現が可能な領域であり、その外側は色を再現できない領域である。したがって、色再現域を求めるにあたっては、色再現が可能な領域と色を再現できない領域との境界を示す面(外郭面)の情報を求めておく。上述のようにこの外郭面の形状は一様ではないので、例えば三角形などの多角形状に分割して表現しておくとよい。図例では、外郭面の一部のみ、三角形状に分割して図示しているが、このような分割を外郭面の全面について行うことになる。
【0023】
入力側および出力側の色再現域を求めた後、例えばRGB色空間における信号である入力カラー画像信号が入力されると、入力色空間変換部1は、その入力カラー画像信号をCIE−L*a*b*色空間の画像信号に変換する。さらに、その変換後の画像信号に対し、色相変換部2は、その色相を所定関数で回転して、入力カラー画像信号の色に応じた色相の変更を行う(S12)。図4は、色相変換部における色相の変更処理の概念図である。CIE−L*a*b*色空間においては、色相の変更はL*軸を中心として回転移動させる処理となる。例えば図中に示した点アの色は、色相変換部2によって回転されて点イの色に変更される。なお、このときの回転角や回転方向は、入力カラー画像信号の色に応じて決められる。例えばマゼンタ(M)は赤(R)に近づく方向に大きく移動させる。また、青(B)はシアン(C)に近づく方向に大きく移動させるとよい。逆に黄(Y)はほとんど色相を変更しなくてよい。
【0024】
その後は、第1の色変換部3が、色相を変更した後の入力カラー画像信号を中間カラー画像信号に変換する(S13〜S15)。図5は、第1の色変換部3における色変換処理の具体例の説明図である。図中、破線は入力側の色再現可能領域を示し、実線は出力側の色再現可能領域を示している。入力カラー画像信号を中間カラー画像信号に変換するのにあたり、第1の色変換部3は、先ず、色相を変更した後の入力カラー画像信号の色相から、その色相を有し、かつ、明度軸(L*)を通る平面で、入力側および出力側の色再現可能領域を切断し、その色相における色再現域の断面を得る(S13)。このとき、例えば図5(a)に示すような入力側および出力側の色再現域の断面が得られたものとする。なお、この断面における座標系は、縦軸が明度を示すL*軸、横軸が彩度を示すC*軸となる。
【0025】
そして、色再現域の断面を得ると、第1の色変換部3は、入力側の色再現域の明度レンジ、すなわち明度の最大値から明度の最小値までを、出力側の色再現域の明度レンジに合わせる(S14)。これにより、入力側の色再現域は、図5(b)に破線で示したようになる。
【0026】
さらに、第1の色変換部3は、明度レンジの調整を施した後の入力側の色再現域における最大彩度を有する点(CUSPi)の明度と、出力側の色再現域の最大彩度を有する点(CUSPo)の明度との差の範囲内で、所定の関数によって点(CUSPi)を調整して中間の色再現域を設定する。具体的には、例えば図5(b)に破線で示している色再現域から、最大彩度を有する点(CUSPi)の明度を調整し、図5(c)に破線で示している中間の色再現域を設定する。そして、第1の色変換部3は、色相変更後の入力カラー画像信号の色が、設定した中間の色再現域内の色となるように色変換を行う(S15)。色変換の過程は、中間の色再現域の設定時の処理と同様であり、図5(b)に示すように明度方向の調整を行った後、最大彩度を有する点(CUSPi)の明度調整に従って変換処理を行えばよい。このような第1の色変換部3における処理により、色相変更後の入力カラー画像信号は、図5(c)に破線で示す中間の色再現可能領域内の中間カラー画像信号となる。
【0027】
その後は、第2の色変換部4が、中間カラー画像信号を出力カラー画像信号に変換する(S16〜S21)。この変換にあたり、第2の色変換部4は、先ず、中間カラー画像信号の明度が、出力側の色再現域において最大彩度を有する点(CUSPo)の明度よりも高いか低いかを判定する(S16)。図6および図7は、明度が高い場合、低い場合、それぞれにおける色変換処理の一例を示す説明図である。
【0028】
この判定の結果、中間カラー画像信号の明度のほうが高ければ、第2の色変換部4は、明度を保存したまま、彩度のみについて変換処理を行うように、その変換処理に要する変換ベクトルの方向(変換経路)を決定する(S17)。すなわち、図6(a)に示すように、中間カラー画像信号を示す点(図中丸印)を通り、L*軸に直交する直線(この直線は明度を保存する)を考え、これを変換ベクトルとして設定する。明度を保存することによって、第2の色変換部4では、高明度の色についてなるべく明るい色で再現できるように色変換を行うことができる。この場合、第1の色変換部3で中間色再現域を設定して色変換処理を行っているので、もとの入力側の色再現域から明度保存で色変換を行う場合に比べて、多少暗くはなるものの、白抜けすることなく色再現を行うことが可能となる。また、明度および彩度の両方を変化させる場合に比べ、高めの明度の色に変換することができる。これによって、中間カラー画像信号の明度のほうが、点(CUSPo)の明度よりも高い明度を有する中間カラー画像信号について、高めの明度の色に変換して見た目の色再現性を向上させることができる。
【0029】
一方、中間カラー画像信号の明度のほうが低いと判定した場合には、第2の色変換部4は、所定の明度を持つ無彩色を目標点とし、中間カラー画像信号の色と目標点を結ぶ直線方向に明度および彩度を変換処理するように、その変換処理に要する変換ベクトルの方向(変換経路)を決定する(S18)。すなわち、図7に示すように、目標点と中間カラー画像信号を示す点(図中丸印)とを通る直線を考え、これを変換ベクトルとして設定する。目標点としては、例えば点(CUSPo)の明度と同じ明度の無彩色(すなわちL*軸上)の点とすることができる。このような目標点を設定することにより、点(CUSPo)の明度よりも高い中間カラー画像信号に対する色変換結果との間での色の連続性を保証することができる。また、第2の色変換部4では、低明度の色については見かけ上類似した色に変換する、といったことも可能になる。
【0030】
変換ベクトルを設定すると、ここで、圧縮係数設定部6は、中間カラー画像信号、中間の色再現域の外郭点および出力の色再現域の外郭点から、第2の色変換部4が中間カラー画像信号を出力カラー画像信号に変換する際に用いる圧縮係数を設定する(S19)。詳しくは、圧縮係数設定部6は、設定された変換ベクトルと中間色再現域の外郭点との交点(図6または図7中における三角印)およびその変換ベクトルと出力色再現域の外郭点との交点(図6または図7中における菱形印)を求める。また、中間色再現域の外郭点との交点からL*軸までの距離をLin、出力色再現域の外郭点との交点からL*軸までの距離をLoutとする。さらには、中間カラー画像信号を示す点(図6または図7中における丸印)からL*軸までの距離をL'inとする。そして、これらの距離Lin、Lout、L'inに基づいて、変換後の出力カラー画像信号を示す点からL*軸までの距離L'outを求めるための圧縮係数を特定する。
【0031】
このとき、圧縮係数設定部6は、その圧縮係数を、色変換処理の際に中間カラー画像信号を通る変換ベクトル上のデータにより特定する。図8は、非線形圧縮係数の一例を示す説明図である。図に示すように、例えば、圧縮係数設定部6は、変換ベクトル上でのL*軸上の点(無彩色点)から中間色再現域の外郭点および出力色再現域の外郭点までの各々の距離Lin、Loutを用いて、中間色再現域が出力色再現域へ変換される第1の係数Lout/Linを設定し、無彩色点から中間カラー画像信号および中間色再現域の外郭点までの各々の距離の比率を第2の係数L'in/Linと設定し、その第2の係数を指数係数として第1の係数に与えることによって、第2の色変換部4が用いる圧縮係数を(Lout/Lin)L'in/Linとする。
【0032】
これにより、第2の色変換部4では、距離L'outを、L'out=L'in×(Lout/Lin)L'in/Linによって求めることができる。すなわち、圧縮係数設定部6が設定した非線形の圧縮係数を用いて、中間カラー画像信号を出力カラー画像信号に変換する(S20)。
【0033】
ところで、中間カラー画像信号を示す点は、中間色再現域外、すなわち中間色再現域の外郭点よりもさらに外側に位置することもあり得る。図9は、中間カラー画像信号を示す点が中間色再現域外に位置する場合の色変換処理の一例を示す説明図である。図例の場合であっても、第2の色変換部4は、中間色再現域外のカラー画像信号についての変換ベクトルとして、上述した手順で設定した中間色再現域内の変換ベクトルを拡張して利用することで、その中間色再現域外のカラー画像信号を出力カラー画像信号に変換すればよい。また、これと同様に、圧縮係数設定部6は、中間色再現域外のカラー画像信号についての圧縮係数として、上述した手順で設定した中間色再現域内の圧縮係数を拡張して利用することで、第2の色変換部4に非線形圧縮を行わせるようにすればよい。
【0034】
その後は、第2の色変換部4での変換によって得られた出力カラー画像信号に対して、出力色空間変換部5が、出力側の装置が要求する色空間への変換を行う(S21)。例えば、出力側の装置がYMCK色空間のカラー画像信号を要求していれば、CIE−L*a*b*色空間からYMCK色空間への変換処理を行えばよい。もちろん、内部の処理で用いたCIE−L*a*b*色空間のまま出力してよければ、この変換処理は必要ない。以上により処理は終了する。
【0035】
以上のように、本実施形態で説明したカラー画像信号処理装置およびカラー画像信号処理方法(これらを実現させるためのカラー画像信号処理プログラムをも含む)によれば、中間カラー画像信号から出力カラー画像信号への変換を非線形の圧縮係数を用いて行うようになっている。したがって、その変換が線形圧縮の場合のように一律ではなく、軽重を持って行われることになるため、例えば色再現域内部に極度の彩度低下が生じるといったことがなくなり、色再現のより一層の最適化が図れるようになる。
【0036】
特に、本実施形態では、非線形の圧縮係数を特定するのにあたり、変換ベクトル上の色再現域外郭データ、無彩色軸上の目標点、入力データ(中間カラー画像信号)を用いているので、入力色再現域の大きな領域内部(有彩色部分)の圧縮率を抑え、人肌色や緑色等といった有彩色の彩度を低下させず圧縮することができる。また、色再現域外郭近傍、すなわち無彩領域には入出力再現域の大きさに対して略線形の圧縮係数を使用することができる。これらによって、写真、グラフィック等に最適な色再現を行うことができるようになる。
【0037】
さらには、変換ベクトルおよび圧縮係数を拡張して利用することによって、圧縮係数を入力色再現域内だけに限定していないため、入力色再現域外の入力データについても色再現域内の入力データから滑らかに圧縮することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、非線形の圧縮係数として、中間カラー画像信号、中間の色再現域の外郭点および出力の色再現域の外郭点から特定される指数係数を例に挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の非線形圧縮係数を用いても構わない。
【0039】
また、上述した本実施形態の説明では、入力カラー画像信号に対して、図1に示した各部において順次処理を進めて行くものとして説明したが、例えば入力側および出力側の色再現可能領域が固定されているような場合には、入力カラー画像信号に対して出力カラー画像信号を一意に決定できる。これを利用して、予め種々の入力カラー画像信号に対して第1の色変換部3および第2の色変換部4による変換結果である出力カラー画像信号を求めておき、入力カラー画像信号と出力カラー画像信号を対応づけたテーブルを用意しておく。そしてこのテーブルによって、第1の色変換部3および第2の色変換部4の色変換処理を代行させることが可能である。さらに、色相変換部2による色相の変更や、さらには出力色空間変換部5による色空間変換処理まで含めて、テーブル化することも可能である。このようにテーブルによって入力カラー画像信号から出力カラー画像信号を得る場合、テーブルにはすべての入力カラー画像信号に対応する出力カラー画像信号の値を保持させておく必要はない。ある程度の間隔で出力カラー画像信号の値を保持させておき、テーブルにない入力カラー画像信号に対しては補間処理によって出力カラー画像信号を計算するように構成することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、入力カラー画像信号が取りうる色再現域と、出力側における色再現域が大きく異なる場合においても、出力カラー画像信号により出力したときに画像の見た目が良好となるように、望ましい色再現を可能にすることができるという効果がある。特にCRTで表示していたビジネス文書などの画像をプリンタで再現する場合、プリンタの特徴を十分に生かせるため、より高品質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るカラー画像信号処理装置の概略構成例のブロック図であり、(a)はその一例を示す図、(b)は他の例を示す図である。
【図2】 本発明に係るカラー画像信号処理方法における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】 色再現域の一例を示す概念図である。
【図4】 色相の変更処理の概念図である。
【図5】 入力カラー画像信号を中間カラー画像信号に変換する場合における色変換処理の概要の説明図であり、(a)〜(c)はその具体例を示す図である。
【図6】 中間カラー画像信号の明度が高い場合の色変換処理の一具体例を示す説明図である。
【図7】 中間カラー画像信号の明度が低い場合の色変換処理の一具体例を示す説明図である。
【図8】 非線形圧縮法の一例を示す説明図である。
【図9】 中間カラー画像信号を示す点が中間色再現域外に位置する場合の色変換処理の一具体例を示す説明図である。
【図10】 従来におけるカラー画像信号の色変換処理の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…入力色空間変換部、2…色相変換部、3…第1の色変換部、4…第2の色変換部、5…出力色空間変換部、6…圧縮係数設定部
Claims (15)
- 入力されたカラー画像信号をその入力側の色再現域に基づき設定された中間色再現域を利用して中間カラー画像信号に変換する第1の色変換手段と、
前記中間カラー画像信号を画像出力装置で再現可能な出力色再現域に依存した出力カラー画像信号に変換する第2の色変換手段と、を具備するカラー画像信号処理装置において、
前記第2の色変換手段は、無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記出力色再現域の外郭点までの距離との比率を第1の係数とし、前記無彩色のL * 軸上の点から中間カラー画像信号までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離との比率を第2の係数とし、該第2の係数を指数係数として前記第1の係数に与えることによって設定した非線形の圧縮係数を用いて前記中間カラー画像信号から前記出力カラー画像信号への変換を行うものである
ことを特徴とするカラー画像信号処理装置。 - 前記第1の色変換手段および前記第2の色変換手段は、装置に依存しない色空間にて色変換処理を行うものであり、
さらに、装置に依存しない色空間から前記画像出力装置に依存する色空間への色空間変換処理を行う出力色空間変換手段を備えている
ことを特徴とする請求項1記載のカラー画像信号処理装置。 - 前記非線形の圧縮係数を設定する係数設定手段を備えるとともに、
前記係数設定手段は、前記非線形の圧縮係数を、色変換処理の際に前記中間カラー画像信号を通る変換経路上のデータにより特定する
ことを特徴とする請求項1または2記載のカラー画像信号処理装置。 - 前記第2の色変換手段は、前記中間色再現域内の中間カラー画像信号を前記出力色再現域内の出力カラー画像信号に変換する変換経路を設定するとともに、前記中間色再現域外のカラー画像信号についての変換経路として、前記設定した前記中間色再現域内の変換経路を前記中間色再現域外においても利用する
ことを特徴とする請求項3記載のカラー画像信号処理装置。 - 前記係数設定手段は、前記中間色再現域内の中間カラー画像信号を前記出力色再現域内の出力カラー画像信号に変換する圧縮係数を設定するとともに、前記中間色再現域外のカラー画像信号についての圧縮係数として、前記設定した前記中間色再現域内の圧縮係数を前記中間色再現域外において利用した変換経路上のデータにより特定する
ことを特徴とする請求項4記載のカラー画像信号処理装置。 - 入力されたカラー画像信号をその入力側の色再現域に基づき設定された中間色再現域を利用して中間カラー画像信号に変換する第1の色変換ステップと、
前記中間カラー画像信号を画像出力装置で再現可能な出力色再現域に依存した出力カラー画像信号に変換する第2の色変換ステップと、を具備するカラー画像信号処理方法において、
前記第2の色変換ステップでは、無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記出力色再現域の外郭点までの距離との比率を第1の係数とし、前記無彩色のL * 軸上の点から中間カラー画像信号までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離との比率を第2の係数とし、該第2の係数を指数係数として前記第1の係数に与えることによって設定した非線形の圧縮係数を用いて前記中間カラー画像信号から前記出力カラー画像信号への変換を行う
ことを特徴とするカラー画像信号処理方法。 - 前記第1の色変換ステップおよび前記第2の色変換ステップでは、装置に依存しない色空間にて色変換処理を行い、
その後、装置に依存しない色空間から前記画像出力装置に依存する色空間への色空間変換処理を行う
ことを特徴とする請求項6記載のカラー画像信号処理方法。 - 前記非線形の圧縮係数を、色変換処理の際に前記中間カラー画像信号を通る変換経路上のデータにより特定する
ことを特徴とする請求項6または7記載のカラー画像信号処理方法。 - 前記中間色再現域内の中間カラー画像信号を前記出力色再現域内の出力カラー画像信号に変換する変換経路を設定するとともに、前記中間色再現域外のカラー画像信号についての変換経路として、前記設定した前記中間色再現域内の変換経路を前記中間色再現域外においても利用する
ことを特徴とする請求項8記載のカラー画像信号処理方法。 - 前記中間色再現域内の中間カラー画像信号を前記出力色再現域内の出力カラー画像信号に変換する圧縮係数を設定するとともに、前記中間色再現域外のカラー画像信号についての圧縮係数として、前記設定した前記中間色再現域内の圧縮係数を前記中間色再現域外において利用した変換経路上のデータにより特定する
ことを特徴とする請求項9記載のカラー画像信号処理方法。 - コンピュータを、
入力されたカラー画像信号をその入力側の色再現域に基づき設定された中間色再現域を利用して中間カラー画像信号に変換する第1の色変換手段と、
前記中間カラー画像信号を画像出力装置で再現可能な出力色再現域に依存した出力カラー画像信号に変換する第2の色変換手段と、
として機能させるためのカラー画像信号処理プログラムにおいて、
前記第2の色変換手段は、無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記出力色再現域の外郭点までの距離との比率を第1の係数とし、前記無彩色のL * 軸上の点から中間カラー画像信号までの距離と前記無彩色のL * 軸上の点から前記中間色再現域の外郭点までの距離との比率を第2の係数とし、該第2の係数を指数係数として前記第1の係数に与えることによって設定した非線形の圧縮係数を用いて前記中間カラー画像信号から前記出力カラー画像信号への変換を行う
ことを特徴とするカラー画像信号処理プログラム。 - 前記第1の色変換手段および前記第2の色変換手段は、装置に依存しない色空間にて色変換処理を行い、
さらに、装置に依存しない色空間から前記画像出力装置に依存する色空間への色空間変換処理を行う出力色空間変換手段としての機能を備えている
ことを特徴とする請求項11記載のカラー画像信号処理プログラム。 - 前記非線形の圧縮係数を設定する係数設定手段としての機能を備えるとともに、
前記係数設定手段は、前記非線形の圧縮係数を、色変換処理の際に前記中間カラー画像信号を通る変換経路上のデータにより特定する
ことを特徴とする請求項11または12記載のカラー画像信号処理プログラム。 - 前記第2の色変換手段は、前記中間色再現域内の中間カラー画像信号を前記出力色再現域内の出力カラー画像信号に変換する変換経路を設定するとともに、前記中間色再現域外のカラー画像信号についての変換経路として、前記設定した前記中間色再現域内の変換経路を前記中間色再現域外においても利用する
ことを特徴とする請求項13記載のカラー画像信号処理プログラム。 - 前記係数設定手段は、前記中間色再現域内の中間カラー画像信号を前記出力色再現域内の出力カラー画像信号に変換する圧縮係数を設定するとともに、前記中間色再現域外のカラー画像信号についての圧縮係数として、前記設定した前記中間色再現域内の圧縮係数を前記中間色再現域外において利用した変換経路上のデータにより特定する
ことを特徴とする請求項14記載のカラー画像信号処理プログラム。
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