JP4051910B2 - 退色性が改善された製紙用パルプの製造方法 - Google Patents
退色性が改善された製紙用パルプの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4051910B2 JP4051910B2 JP2001292837A JP2001292837A JP4051910B2 JP 4051910 B2 JP4051910 B2 JP 4051910B2 JP 2001292837 A JP2001292837 A JP 2001292837A JP 2001292837 A JP2001292837 A JP 2001292837A JP 4051910 B2 JP4051910 B2 JP 4051910B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- pulp
- bleaching
- cooking
- stage
- chlorine dioxide
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Landscapes
- Paper (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は製紙用パルプに関し、更に詳しくは、環境負荷の低い退色性が改善された製紙用パルプの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、製紙用パルプは、リグノセルロース材料を化学薬品で蒸解後、アルカリ酸素脱リグニンされ、塩素漂白(以下、C漂白と略す)−アルカリ抽出(以下、E抽出と略す)−次亜塩素酸漂白(以下、H漂白と略す)−二酸化塩素漂白(以下、D漂白と略す)からなるシーケンスで、ISO白色度80%以上のパルプとして製造されてきた。
【0003】
最近、環境問題に優しい産業を目指す製紙産業において、木材パルプのC漂白がダイオキシン類の有機塩素系物質を発生させる原因になること、H漂白がその原因物質であるクロロホルムの排出原因になることが判明し、C漂白、H漂白などの有機塩素系物質を排出する元素状塩素を使用しない漂白法(以下、ECF漂白と略す)が採用されるようになってきている。この漂白法の代表的シーケンスとしては、D−E−D−D漂白が挙げられる。しかし、D漂白における二酸化塩素は多量の電気エネルギーを使用して製造されるため、二酸化塩素を大量に使用して製造された高白色度のパルプ(通常ISO白色度90%以上のパルプ)は、環境に優しいパルプとは言えない。二酸化塩素の使用量をできるだけ減少させ、古紙脱墨パルプより若干高い白色度である、ISO白色度70〜89%のパルプが環境負荷の少ない製紙用パルプと言うことができるパルプである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ISO白色度70〜89%の製紙用パルプを得ようとする場合、ECF漂白の代表的なシーケンスであるD−E−D−Dのシーケンスで漂白すると、D漂白の薬品添加率を比較的低く抑えることができ、環境負荷の小さい製紙用木材パルプを製造可能であるが、このようにして製造された漂白パルプは長時間保存すると白色度が低下するといった欠点があることが判明した。本発明は、ISO白色度70〜89%で、環境負荷の比較的小さな製紙用パルプであって、長期間保存しても退色による白色度低下の少ない製紙用、特に酸性紙用の木材パルプの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決するため、D−E−D−Dのシーケンスで漂白した多種類のISO白色度89%以下の製紙用木材パルプの組成を鋭意分析し、解析したところ、長期保存により白色度が低下するパルプにはヘキセンウロン酸含有量が多いということを見出した。そして、該製紙用木材パルプを、5時間沸騰水浴中で加熱酸加水分解し、この加水分解液を、ODSカラムを使用して高速液体クロマトグラフで分離し定量したところ、ヘキセンウロン酸量が10mmol/絶乾パルプkg以上含まれていることを見出した。
【0006】
本発明者らは、先に、リグノセルロース物質を蒸解して得られる未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、その後、多段漂白工程で元素状塩素を使用せずに漂白処理してなる漂白パルプであって、該漂白パルプの過マンガン酸カリウム値(JIS P 8206)が1.5以下であり、かつISO白色度が70〜89%である退色性の改善された酸性紙用漂白パルプ(特願2001−073423号明細書)を提案した。またヘキセンウロン酸含有量が10mmol/絶乾パルプkg以下であり、かつ、ISO白色度が70〜89%である退色性の改善された酸性紙用漂白パルプも同時提案した。
【0007】
ヘキセンウロン酸を漂白工程で除去する方法については、酸処理によって除去する方法(特表平10−508346号公報)や酸処理とオゾンを組み合わせた方法(特開平2000−290887号公報)、酸性下で過酸化水素とモリブデン酸塩を組み合わせる方法(特開平2001−192991号公報)等が近年提案されているが、いずれも、漂白コストが大幅に高くなる上、設備コストもかなり高くなる。
【0008】
また、大量の二酸化塩素を主に初段の二酸化塩素段へ添加することで、漂白完成パルプのヘキセンウロン酸含有量を低減できることも判明しているが、二酸化塩素の添加量が増加する分だけコストが上がり、環境負荷も増加する。
また、白色度89%以下の製紙用パルプを生産する場合、特に過酸化水素を併用した漂白シーケンスを用いた場合には、二酸化塩素添加量が少なくてすむが、ヘキセンウロン酸の除去効果が弱い。
以上のように、これまでのパルプ製造法によっては、環境負荷の低減と退色性改善という要求を同時に満足させることは困難であった。
【0009】
一方、蒸解工程でのヘキセンウロン酸の挙動については、これまでにZHI-HUA JIANGらが未漂白パルプのヘキセンウロン酸含有量は蒸解初期に増加し、蒸解後期に減少することを報告している(TAPPI JOURNAL, Vol.83, No.1, 2000,p167-175,Hexenuronic acid groups in pulping and bleaching chemistry )。また、Catrin A-S. Gustavssonらは、蒸解温度が高い程、アルカリ添加率が多い程ヘキセンウロン酸が減少することを報告している(Nordic Pulp and Paper Research Journal, Vol.15, No.2, 2000, p160-167, The influence of cooking conditions on the degradation of hexenuronic acid, xylan, glucomannan and cellulose during kraft pulping of softwood)。しかし、漂白完成パルプのヘキセンウロン酸含有量との関係は判っておらず、ましてや蒸解条件が完成パルプの退色性へ与える影響についても全く言及されていない。また、漂白パルプの退色性を改善する蒸解方法についても明らかにされていなかった。
【0010】
本発明者らは、ヘキセンウロン酸の含有量が完成パルプの退色性に影響を与えることを見出し、ヘキセンウロン酸を蒸解工程で減少させる方法について多角的に検討した結果、蒸解初期で生成したヘキセンウロン酸を蒸解後期で除去するよりも、蒸解初期にヘキセンウロン酸の生成量をできるだけ少なくして、蒸解工程から得られる未漂白パルプのヘキセンウロン酸含有量を少なくし、その後、アルカリ脱リグニン工程を介して、多段漂白工程で元素状塩素を使用しない、環境負荷の少ない漂白処理を施すことにより、完成漂白パルプ中に残留するヘキセンウロン酸を減少させ、該ヘキセンウロン酸に起因する退色による白色度の低下を抑え得ることを見出した。
【0011】
上記目的を達成することのできる本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)広葉樹材を蒸解することによって、カッパー価が18〜23でありかつヘキセンウロン酸量が35〜45mmol/絶乾パルプkgである未漂白パルプを得、その後、アルカリ酸素脱リグニン処理を行い、元素状塩素を使用しない多段漂白工程で漂白処理してISO白色度70〜89%、ヘキセンウロン酸含有量が10mmol/絶乾パルプkg未満の漂白パルプを得ることを特徴とする退色性が改善された製紙用パルプの製造方法。
【0012】
(2)前記未漂白パルプが、広葉樹材を130〜155℃の温度で、アルカリ添加率12〜17質量%、硫化度20〜30%で蒸解することにより製造された未漂白パルプであることを特徴とする(1)項記載の退色性が改善された製紙用パルプの製造方法。
【0014】
【発明の実施形態】
本発明において、未漂白パルプ及び漂白パルプにおける「ヘキセンウロン酸含有量」とは、未漂白パルプや漂白パルプを5時間加熱酸加水分解し、その液をODSカラム(シリカゲル担体にオクタデシルシリル基を化学結合した充填剤が詰められたカラム)を用いて高速液体クロマトグラフで分離、定量して得られるヘキセンウロン酸の量を意味する。
【0015】
本発明で用いられる広葉樹材は、特に限定するものではなく、植物学分類上、広葉樹と見なされるものであれば、ユーカリ、オーク、アカシア、ビーチ、タンオーク、オルダー等、如何なるものでも良い。
本発明に使用される未漂白パルプを得るための蒸解法としては、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることができるが、パルプ品質、エネルギー効率等を考慮すると、クラフト蒸解法が好適に用いられる。
【0016】
例えば、木材をクラフト蒸解する場合、クラフト蒸解液の硫化度は5〜75%、好ましくは20〜30%であり、有効アルカリ添加率は絶乾木材質量当たり5〜30質量%、好ましくは12〜17質量%であり、蒸解温度は120〜170℃、好ましくは130〜155℃であり、蒸解方式は、連続蒸解法あるいはバッチ蒸解法のどちらでも良く、連続蒸解釜を用いる場合は、蒸解液を多点で添加する修正蒸解法でも良く、その方式は特に問わない。
【0017】
蒸解に際して、使用する蒸解液に蒸解助剤として、公知の環状ケト化合物、例えばベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナントロキノン及び前記キノン系化合物のアルキル、アミノ等の核置換体、あるいは前記キノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物、さらにはディールスアルダー法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ばれた1種あるいは2種以上が添加されても良く、その添加率は木材チップの絶乾質量当たり0.001〜1.0質量%である。
【0018】
本発明では、公知の蒸解法により得られた未漂白化学パルプは、洗浄、粗選及び精選工程を経て、公知のアルカリ酸素漂白法により脱リグニンされる。
本発明に使用されるアルカリ酸素漂白法は、公知の中濃度法あるいは高濃度法がそのまま適用できるが、現在汎用的に用いられているパルプ濃度が8〜15質量%で行われる中濃度法が好ましい。
【0019】
前記中濃度法によるアルカリ酸素漂白法において、アルカリとしては苛性ソーダあるいは酸化されたクラフト白液を使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。前記酸素ガスとアルカリは中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加され混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔へ送られ、脱リグニンされる。
【0020】
酸素ガスの添加率は、絶乾パルプ質量当たり0.5〜3質量%、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、反応温度は80〜120℃、反応時間は15〜100分、パルプ濃度は8〜15質量%であり、この他の条件は公知のものが適用できる。本発明では、アルカリ酸素漂白工程において、上記アルカリ酸素漂白を連続して複数回行い、できる限り脱リグニンを進めるのが好ましい実施形態である。アルカリ酸素漂白が施されたパルプは次いで洗浄工程へ送られる。パルプは洗浄後、多段漂白工程へ送られる。
【0021】
本発明においては、アルカリ酸素漂白後に、酵素処理工程を設けることも可能である。前記酵素処理工程で使用される酵素は、パルプと反応させることにより、JIS P 8206で測定されるパルプの過マンガン酸カリウム価が低下するものであれば、いかなる酵素でも良い。例えば、キシラナーゼ、リグニンパーオキシダーゼ、マンガンパーオキシダーゼ、ラッカーゼ等が知られいるが、勿論これらの酵素でも良く、未だ知られていない酵素でも該当する酵素であれば良いことは言うまでもない。また、これらの酵素は単独で用いても良く、あるいは複合、混合して、さらには複数回に分けて使用することもできる。これらの酵素のうち、キシラナーゼと呼ばれるキシラン分解酵素は、漂白促進効果も同時に有しており、好適に用いられる。
【0022】
酵素処理工程においては、パルプ濃度は1〜30質量%の範囲で行われる。パルプ濃度が1質量%未満では、処理に大容量の設備を要するので適さない。パルプ濃度が30質量%を超えると、パルプと酵素あるいは培養物を均一に混合する点で問題が生じるので適さない。
【0023】
処理温度は10〜90℃の範囲であるが、酵素の至適温度に近い処理温度がより好ましい。一般的な酵素の場合、処理温度が10℃未満では反応が不十分となる上、そのような温度を得ること自体に多大のコストを要するので適さない。一方、温度が90℃を超えて高くなると、処理系を密閉化しないと熱ロスが大きくなる上、一般的な酵素の場合、酵素自体が変性し、不活性になるので適さない。
【0024】
処理時の溶液pHは3〜10の範囲であるが、酵素の至適pHに近いpHがより好ましい。pHの調整が必要な場合は、任意の酸性溶液又はアルカリ性溶液を添加して調整することができる。前記のpH調整用に用いられる溶液は、多段漂白シーケンスからの排水を利用できることは言うまでもない。
処理時間は、10分以上であるが、時間については特に限定されない。
【0025】
酵素処理は、複数回行うこともできる。同一酵素を用いて複数回酵素処理を行うこともできるし、複数の酵素を用いて複数回酵素処理を行うこともできる。また、本発明の酵素処理は、既設あるいは新設を問わず、反応塔、タンク、チェスト等の容器内で実施することができる。また、耐圧容器内においては加圧状態での処理も可能である。酵素処理工程の終了後、パルプの洗浄がなされ、洗浄されたパルプは多段漂白工程へと送られる。
【0026】
本発明においては、アルカリ酸素漂白工程後、あるいは前記酵素処理工程後に、酸処理工程を設けることも可能である。また、特開平10−251986号公報、特開平10−298886号公報に記載のように、酸素及び/又は窒素加圧下で行っても構わない。更に酸性下で過酸化水素を併用しても良い。酸処理工程の終了後、パルプの洗浄がなされ、洗浄されたパルプは多段漂白工程へと送られる。
【0027】
多段漂白処理工程では、必ず初段は二酸化塩素漂白段(D)、二段目にはアルカリ抽出段(E)が用いられる。本発明の初段の二酸化塩素漂白段に用いられる二酸化塩素は、当業者にとって公知の多くの二酸化塩素発生法より得られる二酸化塩素から選ぶことができるが、好適には、塩素を副生しない発生法から得られる二酸化塩素が用いられる。本発明の初段の二酸化塩素段でのpHは2〜6であり、pHを調整するために任意の酸又はアルカリを補助的に添加することも可能である。また、二酸化塩素処理時間、処理温度、パルプ濃度等のその他の二酸化塩素漂白条件は、全て公知の条件を使用することができる。
【0028】
本発明の二酸化塩素漂白段に続くアルカリ抽出段では、当業者にとって公知の多くのアルカリ化合物から選ぶことができるが、苛性ソーダが最も使用しやすく、好適に使用される。本発明のアルカリ抽出段では、酸素及び/又は過酸化水素を併用することもできる。アルカリ抽出処理時間、処理温度、パルプ濃度等のその他のアルカリ抽出条件は、全て公知の条件を使用することができる。
【0029】
本発明の多段漂白工程で用いられる、二酸化塩素漂白段、アルカリ抽出段に続く3段目以降の漂白段では、塩素及び次亜塩素酸塩以外の漂白薬品であれば如何なる漂白薬品を用いても良いが、二酸化塩素、過酸化水素、オゾン、過酸、等の一般的な漂白薬品が好適に用いられる。3段目以降の段数も特に限定されるわけではないが、エネルギー効率、生産性等を考慮すると、合計で3段あるいは4段で終了するのが好適である。
【0030】
本発明に用いられる漂白薬品としては、塩素及び次亜塩素酸塩を除く、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)、有機過酸等の公知の漂白剤と漂白助剤を挙げることができる。また、本発明における多段漂白処理工程での漂白シーケンスとして、例えば、D−E/O−D、D−E/O−P−D、 D−E/O−D−D、D−E/O−D−P、D−E/OP−D、D−E/O−Z−D、Z−E/O−D、Z−E/OP−D、Z−E/OP−D−P、Z−E/OP−P−D、Z−D−E/O−D、Z−D−E/OP−D、Z/D−E/O−D、Z/D−E/OP−D等を挙げることができる。また、多段漂白工程中にエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段を挿入しても良い。
【0031】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下に示す実施例1〜3は、ヘキセンウロン酸を減少させることを目的とした蒸解方法で蒸解することにより製造された未漂白広葉樹クラフトパルプを酸素脱リグニン処理し、D−E/O−P−Dシーケンスで漂白を行ったものである。
また、特に示さない限り、カッパー価の測定、過マンガン酸カリウム価の測定、パルプ白色度の測定、パルプの退色性の評価はそれぞれ以下の方法で行った。なお、実施例及び比較例における薬品の添加率は絶乾パルプ質量当たりの質量%を示す。
【0032】
1.パルプのカッパー価の測定
カッパー価の測定は、JIS P 8211に準じて行った。
【0033】
2.パルプのヘキセンウロン酸含有量の定量
500mlのSUS製容器に十分にイオン交換水で洗浄したパルプを絶乾パルプ5g量り取って入れ、蟻酸−蟻酸ナトリウムバッファー10mmol/l溶液を用いてトータル300mlとした。その後、SUS製容器内を窒素ガスで置換し、油恒温槽内で、110℃、5時間処理した。SUS容器を流水冷却後、処理後のパルプ懸濁液を洗浄液を含めて500mlにメスアップした後、ろ過して、ろ液を資生堂社製ODSカラムを用いてHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて分析し、2−furoic acidと5―carboxy−2−furaldehydeを定量した。定量に際し、算出式、参考文献は、以下のものを使用した。
【0034】
算出式:(各サンプル20μlの濃度)=a、b(ng/μl)とした。
2)ヘキセンウロン酸含有量(mmol/l)=2−furoic acid量+5―carboxy−2−furaldehyde量
【0035】
(参考文献):著者 Vuorinen,T.
Selective hydrolysis of hexenuronic acid groups and its application in ECF and TCF bleaching of kraft pulps
International Pulp Bleaching Conference,April 14-18,1996,P43-51
【0036】
3.白色度測定用パルプシートの作成方法
漂白パルプを離解後、パルプスラリーに硫酸バンドを対パルプ3.0%加え、Tappi試験法T205os−71(JIS P 8209)に従って坪量60g/m2のシートを作製した。
【0037】
4.パルプ白色度の測定
JIS P 8148に従ってパルプのISO白色度を測定した。
【0038】
5.パルプの退色性評価
白色度測定用パルプシートを80℃、相対湿度65%の条件下で、48時間退色させ、退色前後のパルプ白色度から下式に従いPC価を算出し、評価した。
【0039】
実施例1
蒸解:
国内産広葉樹30%とユーカリ材70%からなる広葉樹混合木材チップを絶乾900g採取し、液比5、絶乾チップ質量当たり活性アルカリ14%、蒸解液の硫化度28%、蒸解温度150℃、蒸解時間150分の条件下で実験用間接加熱用オートクレーブを用いてクラフト蒸解し、その後廃液とパルプを分離し、パルプを10カットのスクリーンプレートを備えたフラットスクリーンで精選してISO白色度31.1%、カッパー価22.9の広葉樹未漂白クラフトパルプを絶乾447g得た。得られたパルプを5時間酸加水分解処理し、ヘキセンウロン酸含有量を測定した。蒸解条件、カッパー価、ヘキセンウロン酸(以下HexAと略す)含有量をまとめて表1に示す。
【0040】
酸素脱リグニン:
前記広葉樹未漂白クラフトパルプ絶乾質量90.0gを採取し、絶乾パルプ質量当たり苛性ソーダを1.5%添加し、次いでイオン交換水で希釈してパルプ濃度を10%に調整し、間接加熱式オートクレーブに入れ、ゲージ圧が5kg/cm2(0.49MPa)となるように純度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスで加圧し、温度100℃で60分間加熱し、中濃度法によりアルカリ酸素漂白を行った。得られたパルプをイオン交換水で洗浄し、パルプ濃度30%まで脱水濃縮を行った(以下脱水とは30%まで脱水濃縮することを示す)。
【0041】
D1段(二酸化塩素処理段):
アルカリ酸素脱リグニン段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を14%に調整した後、二酸化塩素を絶乾パルプに対して二酸化塩素換算で1.2%添加し、パルプ濃度を10%に調整し、70℃で30分間処理した。反応終了後、得られたパルプについてイオン交換水で洗浄し、脱水した。
【0042】
E/O段(アルカリ抽出段):
D1段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10%に調整した後、絶乾パルプ質量当たり苛性ソーダを1.2%添加し、ステンレス製2リットル容の間接加熱式オートクレーブに入れ、ゲージ圧が0.15MPaとなるように純度が99.9%の市販の圧縮酸素ガスで加圧し、70℃で20分間反応させた。その後、パルプスラリーをオートクレーブから取り出し、プラスチック袋に移した後、D1段と同様に70℃で70分間処理し、E/O段の抽出を行った。得られたパルプをイオン交換水で洗浄、脱水した。
【0043】
P段(過酸化水素処理段):
E/O段後のパルプ濃度を14%に調整したパルプに苛性ソーダを絶乾パルプ質量に対して0.45%、過酸化水素を過酸化水素換算で0.4%添加し、パルプ濃度を10%に調整し、65℃で120分間処理した。反応終了後、得られたパルプについてイオン交換水で洗浄し、脱水した。
【0044】
D2段(第二二酸化塩素処理段):
P段後のパルプ濃度を14%に調整したパルプに二酸化塩素を絶乾パルプ質量に対して二酸化塩素換算で0.2%添加し、パルプ濃度を10%に調整し、70℃で180分間処理した。反応終了後、得られたパルプについてイオン交換水で洗浄し、漂白完成パルプを得た。このパルプのISO白色度は86.1%であった。得られたパルプの白色度、ヘキセンウロン酸含有量、及びこの漂白パルプから製造した漂白パルプシートの48時間後のPC価を測定し、表2に示した。
【0045】
実施例2
蒸解温度が155℃で、活性アルカリ添加率が16.0%、硫化度が24.0%であること以外は実施例1と同様の処理を行い、ISO白色度36.1%、カッパー価18.1の広葉樹未漂白クラフトパルプを得た。得られた広葉樹未漂白クラフトパルプをD1段の二酸化塩素添加率を0.90%にする以外は実施例1と同様の処理を行い漂白完成パルプを得た。多段漂白後のパルプのISO白色度は86.0%であった。
【0046】
実施例3
蒸解温度が140℃で、活性アルカリ添加率が16.5%、硫化度が25.0%であること以外は実施例1と同様の処理を行い、ISO白色度32.3%、カッパー価18.5の広葉樹未漂白クラフトパルプを得た。得られた広葉樹未漂白クラフトパルプをD1段の二酸化塩素添加率を1.00%にする以外は実施例1と同様の処理を行い漂白完成パルプを得た。多段漂白後のパルプのISO白色度は86.0%であった。
【0047】
比較例1
蒸解温度が170℃で、活性アルカリ添加率が22.0%、蒸解時間が45分であること以外は実施例1と同様の処理を行い、ISO白色度35.9%、カッパー価16.0の広葉樹未漂白クラフトパルプを得た。得られた広葉樹未漂白クラフトパルプをD1段の二酸化塩素添加率を0.82%とした以外は実施例1と同様の処理を行い漂白完成パルプを得た。多段漂白後のパルプのISO白色度は86.2%であった。
【0048】
比較例2
蒸解温度が155℃活性で、アルカリ添加率が16.0%で、硫化度が32.0であること以外は実施例1と同様の処理を行い、ISO白色度35.5%、カッパー価16.5の広葉樹未漂白クラフトパルプを得た。得られた広葉樹未漂白クラフトパルプをD1段の二酸化塩素添加率を0.84%とした以外は実施例1と同様の処理を行い漂白完成パルプを得た。多段漂白後のパルプのISO白色度は85.9%であった。
【0049】
比較例3
蒸解温度が155℃活性で、活性アルカリ添加率が22.0%であること以外は実施例1と同様の処理を行い、ISO白色度37.7%、カッパー価13.4の広葉樹未漂白クラフトパルプを得た。得られた広葉樹未漂白クラフトパルプをD1段の二酸化塩素添加率を0.65%とした以外は実施例1と同様の処理を行い漂白完成パルプを得た。多段漂白後のパルプのISO白色度は85.8%であった。
【0050】
実施例1〜3及び比較例1〜3で用いた蒸解条件と未漂白パルプの性質を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1〜3及び比較例1〜3により得られた漂白完成パルプの性質を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2の実施例1〜3と比較例1〜3との比較から明らかなように、比較例1〜3の一般的な蒸解方法で製造された製紙用パルプの場合は、ヘキセンウロン酸含有量が多く、その結果PC価も高く、パルプの退色性が悪い。また実施例1〜3に示すように蒸解工程でヘキセンウロン酸の生成を抑制したものは比較例と同等の白色度であっても、漂白完成パルプ中のヘキセンウロン酸含有量が少なく、PC価も低く、パルプの退色性も良いので長期保存性が優れていると言える。
【0055】
【発明の効果】
広葉樹材を蒸解して得られる未漂白パルプをアルカリ酸素漂白し、その後、元素状塩素、次亜塩素酸塩を用いない多段漂白工程で処理してなる漂白完成パルプにおいて、広葉樹未漂白パルプのヘキセンウロン酸含有量が35〜45mmol/絶乾パルプkgであり、カッパー価が18〜23であり、かつISO白色度を70〜89%とすることで、退色性が著しく改善されている環境負荷の低い漂白パルプを提供することが可能となった。
Claims (2)
- 広葉樹材を蒸解することによって、カッパー価が18〜23でありかつヘキセンウロン酸量が35〜45mmol/絶乾パルプkgである未漂白パルプを得、その後、アルカリ酸素脱リグニン処理を行い、元素状塩素を使用しない多段漂白工程で漂白処理してISO白色度70〜89%、ヘキセンウロン酸含有量が10mmol/絶乾パルプkg未満の漂白パルプを得ることを特徴とする退色性が改善された製紙用パルプの製造方法。
- 前記未漂白パルプが、広葉樹材を130〜155℃の温度で、アルカリ添加率12〜17質量%、硫化度20〜30%で蒸解することにより製造された未漂白パルプであることを特徴とする請求項1記載の退色性が改善された製紙用パルプの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001292837A JP4051910B2 (ja) | 2001-09-26 | 2001-09-26 | 退色性が改善された製紙用パルプの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001292837A JP4051910B2 (ja) | 2001-09-26 | 2001-09-26 | 退色性が改善された製紙用パルプの製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003096680A JP2003096680A (ja) | 2003-04-03 |
JP4051910B2 true JP4051910B2 (ja) | 2008-02-27 |
Family
ID=19114728
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001292837A Expired - Lifetime JP4051910B2 (ja) | 2001-09-26 | 2001-09-26 | 退色性が改善された製紙用パルプの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4051910B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4956991B2 (ja) * | 2005-12-22 | 2012-06-20 | 三菱瓦斯化学株式会社 | 化学パルプの製造方法 |
JP5915263B2 (ja) * | 2012-03-01 | 2016-05-11 | 日本製紙株式会社 | パルプの製造方法 |
-
2001
- 2001-09-26 JP JP2001292837A patent/JP4051910B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003096680A (ja) | 2003-04-03 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4967451B2 (ja) | 漂白パルプの製造方法 | |
JP5487974B2 (ja) | 漂白パルプの製造方法 | |
JP4887900B2 (ja) | 漂白パルプの製造方法 | |
JPH1181173A (ja) | 漂白パルプの製造方法 | |
JP5471049B2 (ja) | Tcf漂白パルプの製造方法 | |
JP2006274478A (ja) | 退色性が改善された製紙用化学パルプ | |
JP4051910B2 (ja) | 退色性が改善された製紙用パルプの製造方法 | |
JP5585323B2 (ja) | 製紙用パルプの漂白方法 | |
JP5515409B2 (ja) | Ecf漂白パルプの製造方法 | |
JP5915263B2 (ja) | パルプの製造方法 | |
JP2002266271A (ja) | 退色性の改善された漂白パルプ | |
JP5471050B2 (ja) | Tcf漂白方法 | |
JP5526604B2 (ja) | Ecf漂白方法 | |
JP4645093B2 (ja) | 漂白パルプの製造方法 | |
JP3656905B2 (ja) | 退色性の改善された漂白パルプの製造方法 | |
JP2000290887A (ja) | リグノセルロースの漂白方法 | |
JP3915682B2 (ja) | 漂白パルプの製造方法 | |
JP5888151B2 (ja) | 漂白パルプの製造方法 | |
JP2004169243A (ja) | 製紙用漂白パルプの製造方法 | |
JP2006037327A (ja) | 酸性紙 | |
JP2004339628A (ja) | 漂白パルプの製造方法 | |
JP4039308B2 (ja) | 漂白パルプの製造方法 | |
JP2000110089A (ja) | 漂白パルプの製造方法 | |
JP2001055679A (ja) | リグノセルロース材料の漂白方法 | |
JP2006274476A (ja) | 退色性が改善された製紙用化学パルプの製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20041216 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050812 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060914 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20061024 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061219 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20071113 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20071126 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101214 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Ref document number: 4051910 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101214 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111214 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111214 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121214 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131214 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20141214 Year of fee payment: 7 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |