JP4051500B2 - 熱処理装置用ワーク積載装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、液晶パネルなどの板状電子部品の熱処理を行う装置に使用されるワーク積載装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば液晶パネルを製造する工程においては、TFTなどが設けられた駆動側基板とカラーフィルター基板とをエポキシ樹脂材料などのシール剤を介して貼り合わすことが行われている。この貼り合わせ時にシール剤を硬化させるため、熱処理装置を用いて一定時間の熱処理が施されている。熱処理が施されるワークは、基板またはそれを貼り合わせたもので、いずれも板状であり、熱処理ラックなどと称されるワーク積載装置に支持される。従来のワーク積載装置としては、ワークの複数カ所をそれぞれピンによって支持するものが一般的であった。また、特許文献1には、ピンに代えて長尺の丸軸をワーク受け部材として使用し、1対の丸軸によってワークの両縁だけを支持するようにした熱処理装置用ワーク積載装置が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−130959号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
液晶パネル製造時の基板同士の貼り合わせには、対向する画素をミクロンオーダーで位置合わせする必要があり、シール剤に十分な強度がない状態で基板にたわみが発生すると、位置ずれに伴う表示ムラが生じてしまう。近年、液晶パネルなどは、高精細化、大型化、薄板化が進んでおり、このような液晶パネルの製造時に、ワークを上記従来のピン支持タイプのワーク積載装置で支持した場合、表示ムラが起こるという問題が発生した。表示ムラが発生する原因は、ワークとピンとの接触が点接触であることから、熱処理中にワークの自重がピンに集中的にかかり、基板に部分的な変形が生じることによるものと考えられる。表示ムラは、ガラス基板の変形によってギャップの寸法が狂うために起こり、ギャップ寸法が狂う原因としては、樹脂スペーサーの耐熱強度不足による圧縮変形や、スペーサーの位置ずれなどが考えられる。同様に、特許文献1のものでも、ワークとピンとの接触が線接触であることから、ワークの自重が両縁の丸軸に集中的にかかるとともに、ワークが全体として凹状にたわむため、最終製品としての液晶パネルの表示ムラを確実に解消させることは難しいと考えられる。
【0005】
液晶パネルの基板貼り合わせに限らず、基板に回路パターンを形成する場合であっても、熱処理時に基板に部分的な変形が発生し、この変形が残ることによって製品不良が起きるという問題があり、また、この種の熱処理は、クリーン環境下で行われるが、支持面のレベル(平面度)がワーク受け部材間で異なっていると、ワークに部分的な浮きが生じ、熱風の流速によってワークが振動して発塵原因となるという問題があり、従来のものでは、この点でも不十分なものであった。
【0006】
なお、点接触支持および線接触支持のものにおいて、ワークの自重の集中を避けるために支持する箇所の数を増やすことが考えられるが、数を増やした場合には、製造コスト増となるだけでなく、すべての接触箇所で均等に支持することは困難であり、結局、部分的な変形は起こりやすいままとなり、上記問題を十分に解消することはできない。
【0007】
この発明の目的は、熱処理工程において、ワークの部分的な変形に伴う不良をなくすことができ、また、ワークの振動を抑えることができる熱処理装置用ワーク積載装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1の発明による熱処理装置用ワーク積載装置は、熱処理される板状ワークをそれぞれ上下に所定間隔をあけて積載可能な複数段の積載部および積載部支持体を備えたワーク積載装置において、各積載部は、ワークを直接支持する複数のワーク受け部材を有しており、その少なくとも1つがワークの周辺から離れた位置で受けるためのものであり、各ワーク受け部材は、ワークが積載される際のワークの移動方向に沿って長尺でかつ上面が平坦とされ、積載部支持体は、ワークが積載される際のワークの移動方向に対して積載部の両側に設けられた複数対の支柱と、その支柱対間に渡し止められてワーク受け部材の長手方向中間部を支持する補強部材とを備えており、補強部材上面に、ロボットハンドとの干渉を避ける溝状切り欠きが設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発明による熱処理装置用ワーク積載装置は、熱処理される板状ワークをそれぞれ上下に所定間隔をあけて積載可能な複数段の積載部および積載部支持体を備えたワーク積載装置において、各積載部は、ワークを直接支持する複数のワーク受け部材を有しており、その少なくとも1つがワークの周辺から離れた位置で受けるためのものであり、各ワーク受け部材は、長尺でかつ上面が平坦とされているとともに、ワークの自重を受けた際に傾斜することができるように積載部支持体に支持されていることを特徴とするものである。
【0011】
ワーク受け部材は、耐熱性、強度、低歪み、低発塵性、低コストなど実用上の点から、ステンレス鋼製の角パイプが好ましい。
【0012】
ワークが長方形の板状である場合に、ワーク受け部材の方向は、ワークの長辺方向に沿う方向とされてもよく、ワークの短辺方向に沿う方向とされてもよいが、支持部材の数を少なくして軽量化を図り、かつ蓄熱特性を改善するという点から、ワーク受け部材の方向をワークの長辺方向に沿う方向とすることが好ましい。より具体的には、ワークの長辺方向に平行な計5本のワーク受け部材を使用して、これらをワークの両縁部、中央部および各縁部寄りの位置に配置してもよく、または、ワークの長辺方向に平行な計6本のワーク受け部材を使用して、これらをワークの両縁部および両縁部間に、等間隔で配置してもよい。
【0013】
なお、上記ワーク受け部材の本数は、ワークの寸法により適宜変更される。
【0014】
この発明の熱処理装置用ワーク積載装置によると、ワークが複数のワーク受け部材で支持されるとともに、その少なくとも1つがワークの周辺から離れた位置に設けられるので、ワークの振動を防止でき、さらに、各ワーク受け部材が長尺で、その上面が平坦であることから、ワークが面接触で支持されるので、ワークに部分的な変形が生じることによる製品不良が防止される。
【0015】
請求項1の発明によると、ワークが積載される際のワークの移動方向に対して積載部の両側に設けられた複数対の支柱と、その支柱対間に渡し止められてワーク受け部材の長手方向中間部を支持する補強部材とを備えている積載部支持体によって、積載部を構成する複数のワーク受け部材が支持される。そして、補強部材にロボットハンドとの干渉を避けるための切り欠きが設けられていることにより、ワーク積載装置全体の高さを抑えて、多数段の積載部を設けることができる。
【0016】
各ワーク受け部材の少なくとも上面に、緩衝材が設けられていることがある。
【0017】
緩衝材は、熱収縮被覆材を使用してステンレス鋼製の角パイプ全面を被覆するようにしてもよく、また、帯状のものをステンレス鋼製の角パイプのワークに接触する面にだけ貼り付けるようにしてもよい。緩衝材に使用する材料としては、樹脂やゴムなど、弾性を持っており、かつ、剥離帯電しにくいものであり、熱処理温度(例えば200℃程度またはそれ以下)において発塵や液晶パネルに影響する脱ガスがないものが好ましい。
【0018】
ステンレス鋼製の角パイプでは、ワーク(例えばガラス基板)に傷を付ける可能性があるが、ワーク受け部材に緩衝材が設けられることによって、傷付きやすいワークであってもその恐れなく積載することができる。しかも、ワーク受け部材のワーク支持面の部材間の不揃いを吸収することができ、より均一にワークを支持することができる。
【0019】
請求項3の発明によると、各ワーク受け部材は、ワークが載せられた際にワーク受け部材に掛かる衝撃を緩和するために、ワークの自重を受けた際に傾斜することができるように積載部支持体に支持される。すなわち、ワーク受け部材は、球面軸受を内部に収納可能なように形成された角パイプと、積載部支持体に固定されて角パイプを任意の水平軸回りに回転可能に支持する球面軸受となる構成とされることがあり、あるいは、ワーク受け部材は、垂直軸部材を遊びがある状態で挿入可能なように形成された角パイプと、積載部支持体に固定されて上部が角パイプ内に相対移動可能に挿入された垂直軸部材と、角パイプ下面と積載部支持体との間に介在されて角パイプを上下移動可能に支持する圧縮コイルばねなどの弾性部材とからなる構成とされることがある。
【0020】
このようにすると、ワークをロボットによってこの積載装置に載せる際には、ワークは自重によりたわみが生じた状態となっているが、各ワーク受け部材がそれぞれワークに対応して傾斜することにより、1つのワーク受け部材にワークの自重が集中して掛かることが防止され、ワークをバランスよく支持することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、熱処理装置全体を示しており、熱処理装置は、加熱室(2)と、加熱室(2)内に設置されたワーク積載装置(1)と、加熱室(2)の外部とワーク積載装置(1)との間でワーク(W)の移載を行うロボット(3)とを備えている。
【0023】
ワーク(W)は、その長辺方向を加熱室(2)内の熱風の流れ方向と直交する方向に向けて処理されるように、ワーク積載装置(1)に積載されている。
【0024】
ロボット(3)は、ワーク(W)を支持する複数本(図示は3本)のハンド(3a)を有している。
【0025】
この発明によるワーク積載装置(1)は、図2および図3に拡大して示すように、熱処理されるワーク(W)を積載する複数段の積載部(10)およびこれらの積載部(10)を支持する積載部支持体(11)を備えている。
【0026】
積載部支持体(11)は、左右3対の支柱(13)および左右の支柱(13)間にそれぞれ渡し止められて各段の積載部(10)を支持する補強部材(12)を備えている。
【0027】
各積載部(10)は、3本の並列状補強部材(12)に支持されておりワーク(W)を直接受ける6本の並列状ワーク受け部材(14)によって構成されている。
【0028】
各ワーク受け部材(14)は、長尺のステンレス鋼製の角パイプによって形成されている。6本のワーク受け部材(14)は、中央部にはワーク受け部材が位置しないように、等間隔で配置されている。
【0029】
各補強部材(12)は、板金加工により各補強部材(12)のロボットハンド(3a)が差し込まれる位置には、図4に拡大して示すように、干渉を避けるための切り欠き(15)が設けられている。これにより、ワーク積載装置(1)全体の高さを抑えて、多数段の積載部(10)を設けることが可能とされている。
【0030】
なお、ワーク受け部材(14)の数は、6本に限られるものではない。ロボットハンド(3a)の数は、3本のもののほかに2本のものなどもあり、ロボットハンド(3a)の数が3本の場合には、ワーク受け部材(14)の数を偶数本として、中央部にはワーク受け部材が位置しないようにすることが好ましく、ロボットハンド(3a)の数が2本の場合には、ワーク受け部材(14)の数を奇数本として、中央部にもワーク受け部材が位置するようにすることが好ましい。
【0031】
図5は、ワーク積載装置に支持されたワーク(W)に掛かる力を模式的に示すもので、(a)は本発明の角パイプのワーク受け部材(14)で直接ワーク(W)を支持する場合を、(b)は従来方式の角パイプ(31)上面に固定された半球状のピン(32)でワーク(W)を支持する場合をそれぞれ示している。ワーク(W)は、液晶パネルとされるものであって、TFTなどが設けられた駆動側基板(W1)とカラーフィルター基板(W2)とをエポキシ樹脂材料などのシール剤(W3)を介して貼り合わせ、熱処理によってシール剤(W)を硬化させることにより得られる。駆動側基板(W1)とカラーフィルター基板(W2)とのギャップGは、5μm程度であり、カラーフィルター基板(W2)には、フォトリソグラフィなどによりギャップGを得るためのスペーサが形成されている。ワーク(W)の大きさは、例えば、1500mm×1800mm程度であり、シール剤の硬化条件は、温度が120℃〜180℃程度、保持時間が30分〜120分程度とされる。図5(b)によると、ピン支持タイプのものでは、ワーク(W)の自重がこれを直接支持しているピン(32)に集中的に掛かるため、ピン(32)に接触している方の基板(W1)が変形してギャップGの寸法が狂ってしまうことが分かる。ギャップGの寸法が狂う原因は、スペーサの耐熱強度不足による圧縮変形や、スペーサの位置ずれによるものと推測される。こうして、ピン支持タイプのものでは、ギャップGが狂うことによりピン(32)位置に表示ムラが起こることになる。これに対し、同図(a)に示す本発明のものによると、角パイプ製のワーク受け部材(14)でワーク(W)を受けることから、長辺方向全長にわたってワーク(W)とワーク受け部材(14)とが面接触することになり、ワーク(W)の自重によってワーク受け部材(14)に付加される圧力が大幅に小さくなり、この結果、ギャップGの寸法が一定に保たれることが分かる。すなわち、本発明のワーク積載装置(1)では、表示ムラの原因が取り除かれることが分かる。ワークに掛かる応力のシミュレーション解析によると、6本のワーク受け部材(14)を有している場合の応力ピーク値が6.917E+005Paとなり、応力集中が緩和されていることが示されている。なお、ピン支持タイプのように点接触支持するものや断面が半球状の長尺材のように線接触支持するものでは、ワーク(W)の部分的な変形に加えて、大型のワーク(W)の支持が不安定でワーク(W)が振動しやすいという問題があるのに対し、本発明のワーク積載装置(1)は、この問題も解消することができる。
【0032】
上記のワーク受け部材(14)としては、ステンレス鋼製の角パイプをそのまま使用してももちろんよいが、緩衝材を有する構成としてもよい。すなわち、ワーク受け部材(14)は、図6(a)に示すように、ステンレス鋼製の角パイプ(14a)の全面に、ゴム、プラスチックなどの緩衝材(14b)が貼り付けられているようにしてもよい。この構成は、例えば、緩衝材となる熱収縮被覆材を角パイプに被せた後に、加熱して収縮させることにより、容易に得ることができる。また、ワーク受け部材(14)は、図6(b)に示すように、ステンレス鋼製の角パイプ(14a)の上面に、ゴム、プラスチックなどの緩衝材(14c)が接着剤で貼り付けられているようにしてもよい。これにより、ワーク(W)に傷が付くことが防止されるとともに、角パイプ単独のものでは、ワーク受け部材(14)の僅かな傾きによってワーク受け部材(14)とワーク(W)とが線接触になりやすいのに対し、緩衝材(14b)(14c)が介在させられることによって、確実に面接触とすることができる。
【0033】
さらにまた、ワーク受け部材(14)は、ワーク(W)が載せられた際にワーク受け部材(14)に掛かる衝撃を緩和するために、球面軸受(22)、圧縮コイルばね(25)などを介してワーク(W)の自重を受けた際に傾斜することができるように積載部支持体(11)に支持されているようにしてもよい。すなわち、ワーク受け部材(14)は、図7(a)に示すように、球面軸受(22)を内部に収納可能なように形成された角パイプ(21)と、各補強材(12)にそれぞれ固定されて角パイプ(21)を任意の水平軸回りに回転可能に支持する球面軸受(22)となる構成としてもよく、ワーク受け部材(14)は、図7(b)に示すように、垂直軸部材(24)を遊びがある状態で挿入可能なように形成された角パイプ(23)と、各補強材(12)にそれぞれ固定されて上部が角パイプ(23)内に相対移動可能(角パイプ(23)が垂直部材(24)に対して上下移動可能でありかつ角パイプ(23)上面が水平面から傾斜可能なよう)に挿入された垂直軸部材(24)と、角パイプ(23)下面と補強部材(12)との間に介在されて角パイプ(23)を上下移動可能に支持する圧縮コイルばねなどの弾性部材(25)とからなる構成としてもよい。
【0034】
なお、この発明によるワーク積載装置は、上記に開示したものに限定されるものではなく、ワーク寸法、重量などに応じて適宜変更されることはもちろんのことである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明によるワーク積載装置が使用される熱処理装置の一例を示す平面図である。
【図2】 この発明による熱処理装置用ワーク積載装置の平面図である。
【図3】 同正面図である。
【図4】 図3の要部を拡大した要部拡大正面図である。
【図5】 この発明による熱処理装置用ワーク積載装置の作用効果を従来のものと比較した模式図である。
【図6】 この発明による熱処理装置用ワーク積載装置のワーク受け部材の変形例を示す斜視図である。
【図7】 この発明による熱処理装置用ワーク積載装置のワーク受け部材の他の変形例を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
(1) 熱処理装置用ワーク積載装置
(3a) ロボットハンド
(10) 積載部
(11) 積載部支持体
(12) 補強部材
(13) 支柱
(14) ワーク受け部材
(14a) 角パイプ
(14b)(14c)緩衝材
(15) 切り欠き
(21) 角パイプ
(22) 球面軸受
(23) 角パイプ
(24) 垂直部材
(25) 圧縮コイルばね(弾性部材)
Claims (3)
- 熱処理される板状ワークをそれぞれ上下に所定間隔をあけて積載可能な複数段の積載部および積載部支持体を備えたワーク積載装置において、各積載部は、ワークを直接支持する複数のワーク受け部材を有しており、その少なくとも1つがワークの周辺から離れた位置で受けるためのものであり、各ワーク受け部材は、ワークが積載される際のワークの移動方向に沿って長尺でかつ上面が平坦とされ、積載部支持体は、ワークが積載される際のワークの移動方向に対して積載部の両側に設けられた複数対の支柱と、その支柱対間に渡し止められてワーク受け部材の長手方向中間部を支持する補強部材とを備えており、補強部材上面に、ロボットハンドとの干渉を避ける溝状切り欠きが設けられていることを特徴とする熱処理装置用ワーク積載装置。
- 熱処理される板状ワークをそれぞれ上下に所定間隔をあけて積載可能な複数段の積載部および積載部支持体を備えたワーク積載装置において、各積載部は、ワークを直接支持する複数のワーク受け部材を有しており、その少なくとも1つがワークの周辺から離れた位置で受けるためのものであり、各ワーク受け部材は、長尺でかつ上面が平坦とされているとともに、ワークの自重を受けた際に傾斜することができるように積載部支持体に支持されていることを特徴とする熱処理装置用ワーク積載装置。
- 各ワーク受け部材の少なくとも上面に、緩衝材が設けられていることを特徴とする請求項1または2の熱処理装置用ワーク積載装置。
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