JP4051217B2 - 光記録媒体の処理方法、処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート樹脂基板上に金属層及び紫外線硬化樹脂層を有する光記録媒体からポリカーボネート樹脂を回収し、リサイクルして再利用するのに好適な光記録媒体の処理方法及び装置、並びに、その方法又は装置により回収されたポリカーボネート樹脂を基板材料として用いた光記録媒体に関する。
【0002】
【従来技術】
現在、光記録媒体は、磁気テープや磁気ディスクに代わり、可搬性媒体として主流になっている。特に、音楽用CD、CD−ROMが普及し汎用媒体となっている。近年、これら再生専用の光記録媒体に加え、記録可能なCD−R、CD−RW媒体が急速に普及してきている。更に、大容量のDVD媒体の普及も進んでいる。その結果、最近、これら大量に消費された媒体が廃棄されるようになり、埋め立て、焼却によって処分されるようになった。しかし、このような埋め立て、焼却は、地球環境に負荷を与えるばかりでなく、資源を無駄にすることになる。
このような状況の中で、廃棄される光記録媒体を資源として再利用する動きが出始めている。例えば、工場内で破棄されるポリカーボネート基板や、金属及び紫外線硬化樹脂層を有する光記録媒体は、専門業者によって回収され、破砕後、ポリカーボネートチップとして再利用されている。しかし現状では、金属及び紫外線硬化樹脂を含んだ不純物濃度の高いポリカーボネートチップしか得られず、再利用価値が低い。特に、光学部品としての再利用は不可能であり、構造体への再利用に用途が限られてしまう。
【0003】
そこで、不純物の少ないポリカーボネート樹脂として回収するために、金属層及び紫外線硬化樹脂層をサンドブラスト等により機械的に除去する方法が検討されている。また、特開2000−331384号公報には、研磨材を含む加工液の高圧流を利用した紫外線硬化樹脂層の除去方法が開示されている。
ところで、光記録媒体の基板材料であるポリカーボネート樹脂は、光学的部材としての高度な物性を要求されるため比較的高品質・高価なものが用いられている。従って、高品質を維持したポリカーボネート樹脂を回収できれば、再利用の範囲を広げることが可能となり、省資源に有効である。
しかし、前述の光記録媒体から金属層及び紫外線硬化樹脂層を機械的に除去する従来の方法では、ポリカーボネート樹脂に余分なストレスによるダメージが与えられるため品質が劣化してしまう。また、酸、アルカリ、加工液等による湿式プロセスでは、基板に化学的な変質を与えてしまい品質の劣化が避けられない。
更にこれら従来の金属層及び紫外線硬化樹脂層の機械的な除去や湿式プロセスによる除去では、回収するポリカーボネート樹脂の表層のみならず内部にまでダメージを与えてしまい、高品質なポリカーボネート樹脂を回収できない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、不純物が少ない光学的に高品質なポリカーボネート樹脂を回収できる光記録媒体の処理方法及び装置、並びにその方法又は装置により回収されたポリカーボネート樹脂を基板材料として用いた光記録媒体の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために鋭意検討した結果、光記録媒体を処理して金属層及び紫外線硬化樹脂層を除去する際に、乾式エッチング手段を利用すれば高品質なポリカーボネート樹脂が回収できることを見出した。
即ち、上記課題は、次の1)〜)の発明によって解決される。
1) ポリカーボネート樹脂基板上に、金属層及び紫外線硬化樹脂層を有する光記録媒体から、金属層及び紫外線硬化樹脂層を乾式エッチングにより除去して、ポリカーボネート樹脂を回収するに際し、まず前記基板からみて前記金属層よりも遠い位置にある前記紫外線硬化樹脂層を乾式化学エッチングにより除去することを特徴とする光記録媒体の処理方法。
2) 前記紫外線硬化樹脂層を除去したのち、前記金属層を乾式物理エッチングにより除去することを特徴とする1)記載の光記録媒体の処理方法。
3) 更に、前記光記録媒体が、前記基板と前記紫外線硬化樹脂層との間に誘電体層を有する場合に、該誘電体層を乾式物理エッチングにより除去することを特徴とする1)又は2)記載の光記録媒体の処理方法。
4) 前記乾式化学エッチング手段が、低温プラズマ、レーザービーム、光励起の何れかを利用したものであることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の光記録媒体の処理方法。
5) 前記乾式物理エッチング手段が、低温プラズマ、イオンビーム、レーザービーム、光励起の何れかを利用したものであることを特徴とする2)〜4)の何れかに記載の光記録媒体の処理方法。
6) ポリカーボネート樹脂基板上に金属層及び紫外線硬化樹脂層を有する光記録媒体を載置する手段と、まず前記紫外線硬化樹脂層を乾式化学エッチングにより、次いで前記金属層を乾式エッチングにより除去する手段と、前記ポリカーボネート樹脂を回収する手段を備えたことを特徴とする光記録媒体の処理装置。
7) 前記金属層を除去する乾式エッチング手段が、乾式物理エッチング手段であることを特徴とする6)記載の光記録媒体の処理装置。
8) ポリカーボネート樹脂基板上に金属層、誘電体層、及び紫外線硬化樹脂層を有する光記録媒体を載置する手段と、まず前記紫外線硬化樹脂層を乾式化学エッチングにより、次いで前記金属層及び誘電体層を乾式エッチングにより除去する手段と、前記ポリカーボネート樹脂を回収する手段を備えたことを特徴とする光記録媒体の処理装置。
9) 前記金属層及び誘電体層を除去する乾式エッチング手段が、乾式物理エッチング手段であることを特徴とする8)記載の光記録媒体の処理装置。
【0006】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
図1〜図3に本発明の処理対象となる光記録媒体の例を示す。
図1は一般的なCD−R媒体の層構成であり、案内溝を有する透明基板1上にシアニン色素、フタロシアニン色素、アゾ色素等からなる有機色素層2、光反射金属層3、紫外線硬化樹脂層4、印刷層5を有する。
図2は一般的なCD−RW媒体の層構成であり、案内溝を有する透明基板1上に、誘電体層6、相変化記録層7、誘電体層8、光反射金属層9、紫外線硬化樹脂層4、印刷層5を有する。
図3は一般的な音楽CD、CD−ROM媒体の層構成であり、案内溝を有する透明基板1上に、光反射金属層3、紫外線硬化樹脂層4、印刷層5を有する。
これらの他に、貼り合せ構造を有するDVD媒体なども本発明の処理対象となる光記録媒体である。
【0007】
図1〜図3に示したように、これらの光記録媒体はポリカーボネート樹脂基板と紫外線硬化樹脂と金属を必須としており、書き換え型媒体であるCD−RWでは誘電体も有している。これら光記録媒体の99重量%はポリカーボネート樹脂であり、リサイクル対象品としては有効な資源と言える。
しかし、光記録媒体から除去する物質は、金属、誘電体(無機物質)、樹脂と多様な物質であり、全て湿式プロセスで対応しようとすると、物質に合わせて溶液を調整しなければならず、回収対象のポリカーボネート樹脂への化学的な劣化が避けられなかった。具体的には、透明度の低下、剛性の低下、耐熱性の低下を引き起こしていた。
これに対し、本発明で採用する低温プラズマ、イオンビーム、レーザービーム、光励起を利用した乾式エッチング手段では、金属、誘電体(無機物質)、樹脂を、表層の物理的エッチング又は化学的反応によるエッチングにより除去するので、ポリカーボネート樹脂のダメージが最表面のみとなる。即ち、ポリカーボネート樹脂表層のみの処理であるため、本来の高品質なポリカーボネート樹脂を回収することが可能になった。
【0008】
次に、本発明で利用する乾式エッチング手段について説明する。
図4に低温プラズマを利用した本発明の光記録媒体処理装置の一例を示す。
低温プラズマを利用する方法は、低圧下において、13.56MHzの高周波等によって励起された中性の電離したガス(気体)を用い、除去対象物質を物理的エッチング又は化学反応(化学的エッチング)によって除去する。
用いるガス種としては、物理的エッチングの場合にはAr等が安価で効率がよい。また、化学反応を伴って、金属、誘電体(無機物質)、樹脂をポリカーボネート樹脂から除去するためには、除去対象物質に合わせてガス種を選択することが望ましい。例えば、有機物質の除去には、揮発性の高い炭素のハロゲン化物や酸化物を生成させるため、ハロゲンや酸素含有物質のガスが効果的である。金属や誘電体の除去には、ハロゲン化物が効果的である。光励起による方法も化学反応を伴うため、同様のガス種が効果的である。
一方、イオンビーム、レーザービーム等の高エネルギーを利用する方法は高速処理が可能であり生産性に優れる。中でもガスレーザーが高速処理に効果的である。
なお、本発明で利用する乾式エッチング手段は、従来の湿式プロセスと併用することにより従来プロセスの改善を図ることも可能である。
【0009】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0010】
実施例1
CD−RW媒体を図4のポリカーボネート樹脂回収装置の下部電極上に設置し、装置内を0.1Paまで減圧にした。
次いで、回収装置内に、ArとCOガスを5:5の割合で、10sccmの流量で導入した。
次いで、13.56MHzの高周波を3kW/200mmφの電力で、20分放電し、紫外線硬化樹脂層を除去した。
次いで、Al反射層、AgInSbTe記録層、ZnS・SiO層を、同様にArで物理エッチングして除去した。
上記の操作の結果、ポリカーボネート樹脂のみが得られた。このポリカーボネート樹脂の品質を確認するために、透明性、ヤング率、Tgを確認したところ、CD−RW媒体のポリカーボネート樹脂基板と同等の値であった。
次いで、この回収ポリカーボネート樹脂をペレット化し、射出成形によりDVD+RW用の貼り合せ基板として用いた。その結果、再生しないポリカーボネート樹脂貼り合せ基板と同等の機械特性を有し、実用に耐え得るものであった。
【0011】
【発明の効果】
ポリカーボネート樹脂基板上に、金属層及び紫外線硬化樹脂層を有する光記録媒体を処理して、金属層及び紫外線硬化樹脂層を除去する際に、乾式エッチング手段を利用することによって、高品質のポリカーボネート樹脂が回収できる。
また、乾式エッチング手段として、低温プラズマ、イオンビーム、レーザービーム、光励起を利用することにより、異種物質を選択的に除去でき、且つ低温プロセスとなるため、より高品質のポリカーボネート樹脂が回収できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なCD−R媒体の層構成を示す図。
【図2】一般的なCD−RW媒体の層構成を示す図。
【図3】一般的な音楽CD、CD−ROM媒体の層構成を示す図。
【図4】低温プラズマを利用した本発明の光記録媒体処理装置の一例を示す図。
【符号の説明】
1 基板
2 有機色素層
3 光反射金属層
4 紫外線硬化樹脂層
5 印刷層
6 誘電体層
7 相変化記録層
8 誘電体層
9 光反射金属層

Claims (9)

  1. ポリカーボネート樹脂基板上に、金属層及び紫外線硬化樹脂層を有する光記録媒体から、金属層及び紫外線硬化樹脂層を乾式エッチングにより除去して、ポリカーボネート樹脂を回収するに際し、まず前記基板からみて前記金属層よりも遠い位置にある前記紫外線硬化樹脂層を乾式化学エッチングにより除去することを特徴とする光記録媒体の処理方法。
  2. 前記紫外線硬化樹脂層を除去したのち、前記金属層を乾式物理エッチングにより除去することを特徴とする請求項1記載の光記録媒体の処理方法。
  3. 更に、前記光記録媒体が、前記基板と前記紫外線硬化樹脂層との間に誘電体層を有する場合に、該誘電体層を乾式物理エッチングにより除去することを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体の処理方法。
  4. 前記乾式化学エッチング手段が、低温プラズマ、レーザービーム、光励起の何れかを利用したものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光記録媒体の処理方法。
  5. 前記乾式物理エッチング手段が、低温プラズマ、イオンビーム、レーザービーム、光励起の何れかを利用したものであることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の光記録媒体の処理方法。
  6. ポリカーボネート樹脂基板上に金属層及び紫外線硬化樹脂層を有する光記録媒体を載置する手段と、まず前記紫外線硬化樹脂層を乾式化学エッチングにより、次いで前記金属層を乾式エッチングにより除去する手段と、前記ポリカーボネート樹脂を回収する手段を備えたことを特徴とする光記録媒体の処理装置。
  7. 前記金属層を除去する乾式エッチング手段が、乾式物理エッチング手段であることを特徴とする請求項6記載の光記録媒体の処理装置。
  8. ポリカーボネート樹脂基板上に金属層、誘電体層、及び紫外線硬化樹脂層を有する光記録媒体を載置する手段と、まず前記紫外線硬化樹脂層を乾式化学エッチングにより、次いで前記金属層及び誘電体層を乾式エッチングにより除去する手段と、前記ポリカーボネート樹脂を回収する手段を備えたことを特徴とする光記録媒体の処理装置。
  9. 前記金属層及び誘電体層を除去する乾式エッチング手段が、乾式物理エッチング手段であることを特徴とする請求項8記載の光記録媒体の処理装置。
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