JP4050643B2 - 反強磁性微小粒子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばハードディスク(HD)といった磁気記録媒体に使用されることができる微小粒子およびその製造方法に関する。特に、本発明は粒径1nm〜100nm程度の微小粒子すなわちナノ粒子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
いわゆるナノ粒子の製造方法は例えば以下の非特許文献1に開示される。この非特許文献1では、ナノ粒子の製造にあたってアセチルアセトナト白金および鉄カルボニルは利用される。両者の分子数比に基づき所望の成分比の鉄白金ナノ粒子は製造される。
【0003】
【非特許文献1】
Sun et al.,「Monodisperse FePt Nanoparticles and Ferromagnetic FePt Nanocrystal Superlattices」,Science,2000年3月;Vol 287; p.1989−1992
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述の製造方法では、Fe48Pt52、Fe52Pt48、Fe70Pt30といったナノ粒子を製造することはできるものの、FePt3といった反強磁性ナノ粒子を製造することはできない。反強磁性ナノ粒子の提供が望まれる。
【0005】
特に、ハードディスクといった磁気記録媒体の分野では記録磁性層に磁性ナノ粒子の利用が模索される。基板の表面に磁性ナノ粒子が単純に塗布されても、磁性ナノ粒子の集合体の表面は十分に平坦化されることはできない。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、反強磁性微小粒子およびその製造方法を提供することを目的とする。本発明は、微小粒子の集合体の表面を十分に平坦化することができる多層構造体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、反強磁性微小粒子の集合体と、集合体の表面に形成される記録磁性層とを備える磁気記録媒体が提供される。
【0008】
こうした磁気記録媒体によれば、記録磁性層は反強磁性層の表面に受け止められることから、記録磁性層では磁化の向きは十分に保持されることができる。磁気記録媒体に熱エネルギが加えられたとしても、記録磁性層に記録された磁気情報の劣化は阻止されることができる。
【0009】
記録磁性層は例えば磁性微小粒子の集合体から構成されればよい。こうした磁気記録媒体では、磁性微小粒子の集合体は反強磁性微小粒子の集合体の表面に受け止められる。反強磁性微小粒子や磁性微小粒子は規則的に配置されることから、磁性微小粒子の集合体の表面では平坦化面が確立されることができる。
【0010】
その一方で、記録磁性層は例えば反強磁性微小粒子に基づき成長する結晶粒で構成されてもよい。こうした磁気記録媒体によれば、記録磁性層は反強磁性微小粒子に基づき成長する結晶粒で構成されることから、記録磁性層の結晶粒の大きさや分布は確実に制御されることができる。磁気記録媒体では記録密度はこれまで以上に高められることができる。
【0011】
以上のような磁気記録媒体では、反強磁性微小粒子は金属元素に基づき構成されればよい。こういった反強磁性微小粒子にはFePt3が用いられればよい。反強磁性微小粒子の粒径は1nm〜100nmの範囲で設定されればよい。
【0012】
第2発明によれば、反強磁性材料から構成され、有機安定剤に包まれつつ溶媒中に分散することを特徴とする微小粒子が提供される。反強磁性材料には例えばFePt3が用いられればよい。こうした微小粒子に基づき反強磁性微小粒子は製造されることができる。
【0013】
以上のような微小粒子の製造にあたって、有機溶媒中に、第1分子数の有機安定剤、金属塩および還元剤を含む溶液を生成する工程と、溶液に、第1分子数の2分の1よりも少ない第2分子数の有機金属錯体を添加する工程と、所定の反応温度下で溶液を撹拌する工程とを備える微小粒子の製造方法が提供されればよい。
【0014】
こういった微小粒子の製造方法によれば、反強磁性材料から構成され、有機安定剤に包まれつつ溶媒中に分散する微小粒子が製造されることができる。このとき、有機安定剤には、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸およびアミンのいずれかから選択され、炭素数6〜22の有機化合物が含まれればよい。
【0015】
微小粒子の製造にあたって、有機溶媒中に、第1分子数のオレイン酸、オレイルアミン、金属塩および還元剤を含む溶液を生成する工程と、溶液に、第1分子数よりも少ない第2分子数の有機金属錯体を添加する工程と、所定の反応温度下で溶液を撹拌する工程とを備えることを特徴とする微小粒子の製造方法が提供されてもよい。
【0016】
同様に、有機溶媒中に、オレイン酸、第1分子数のオレイルアミン、金属塩および還元剤を含む溶液を生成する工程と、溶液に、第1分子数よりも少ない第2分子数の有機金属錯体を添加する工程と、所定の反応温度下で溶液を撹拌する工程とを備えることを特徴とする微小粒子の製造方法が提供されてもよい。
【0017】
同様に、有機溶媒中に、第1分子数のオレイン酸、第1分子数のオレイルアミン、金属塩および還元剤を含む溶液を生成する工程と、溶液に、第1分子数よりも少ない第2分子数の有機金属錯体を添加する工程と、所定の反応温度下で溶液を撹拌する工程とを備えることを特徴とする微小粒子の製造方法が提供されてもよい。
【0018】
以上のような微小粒子の製造方法では、有機金属錯体には有機鉄錯体が用いられればよい。同様に、金属塩には、白金を含むアセチルアセトナト塩、白金を含む塩化物、白金を含む臭化物および白金を含むヨウ化物の少なくともいずれかが含まれればよい。有機溶媒には、炭化水素、アルコール、エーテルおよびエステルのいずれかから選択され、炭素数2〜20の有機化合物が含まれればよい。
【0019】
第3発明によれば、第1微小粒子の集合体で構成される第1層と、第1層の表面に形成され、第2微小粒子の集合体で構成される第2層とを備えることを特徴とする多層構造体が提供される。
【0020】
こういった多層構造体では、第2微小粒子の集合体は第1微小粒子の集合体の表面に受け止められる。第1および第2微小粒子は規則的に配置されることから、第2微小粒子の集合体の表面では平坦化面が確立されることができる。こうした多層構造体では第2微小粒子では磁性が確立されればよく、第1微小粒子では反強磁性が確立されればよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0022】
図1は磁気記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は、例えば平たい直方体の収容空間を区画する箱形の筐体本体12を備える。収容空間には、磁気記録媒体としての1枚以上の磁気ディスク13が収容される。磁気ディスク13はスピンドルモータ14の回転軸に装着される。スピンドルモータ14は例えば7200rpmや10000rpmといった高速度で磁気ディスク13を回転させることができる。筐体本体12には、筐体本体12との間で収容空間を密閉する蓋体すなわちカバー(図示されず)が結合される。
【0023】
収容空間では、垂直方向に延びる支軸15にヘッドアクチュエータ16が装着される。ヘッドアクチュエータ16は、支軸15から水平方向に延びる剛体のアクチュエータアーム17と、このアクチュエータアーム17の先端に取り付けられてアクチュエータアーム17から前方に延びる弾性サスペンション18とを備える。周知の通り、弾性サスペンション18の先端では、いわゆるジンバルばね(図示されず)の働きで浮上ヘッドスライダ19は片持ち支持される。浮上ヘッドスライダ19には、磁気ディスク13の表面に向かって弾性サスペンション18から押し付け力が作用する。磁気ディスク13が回転すると、磁気ディスク13の表面で生成される気流の働きで浮上ヘッドスライダ19には浮力が作用する。弾性サスペンション18の押し付け力と浮力とのバランスで磁気ディスク13の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ19は浮上し続けることができる。
【0024】
浮上ヘッドスライダ19には、周知の通りに、磁気ヘッドすなわち電磁変換素子(図示されず)が搭載される。この電磁変換素子は、例えば、スピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化を利用して磁気ディスク13から情報を読み出す巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子といった読み出し素子と、薄膜コイルパターンで生成される磁界を利用して磁気ディスク13に情報を書き込む単磁極ヘッドや誘導書き込みヘッドといった書き込み素子とで構成されればよい。
【0025】
浮上ヘッドスライダ19の浮上中に、ヘッドアクチュエータ16が支軸15回りで回転すると、浮上ヘッドスライダ19は半径方向に磁気ディスク13の表面を横切ることができる。こうした移動に基づき浮上ヘッドスライダ19上の電磁変換素子は磁気ディスク13上の所望の記録トラックに位置決めされる。ヘッドアクチュエータ16の回転は例えばボイスコイルモータ(VCM)といった駆動源21の働きを通じて実現されればよい。周知の通り、複数枚の磁気ディスク13が筐体本体12内に組み込まれる場合には、隣接する磁気ディスク13同士の間で2本のアクチュエータアーム17すなわち2つの浮上ヘッドスライダ19が配置される。
【0026】
図2は本発明の第1実施形態に係る磁気ディスク13の断面構造を詳細に示す。この磁気ディスク13は面内磁気記録媒体として構成される。磁気ディスク13は、支持体としての基板31と、この基板31の表裏面に広がる多層構造体32とを備える。基板31は、例えば、ディスク形のSi本体33と、Si本体33の表裏面に広がる非晶質のSiO2膜34とで構成されればよい。ただし、基板31にはガラス基板やアルミニウム基板、セラミック基板が用いられてもよい。多層構造体32に磁気情報は記録される。多層構造体32の表面は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜35や、例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜36で被覆される。
【0027】
多層構造体32は、基板31の表面に形成される第1層すなわち反強磁性層37を備える。反強磁性層37は、反強磁性微小粒子すなわち反強磁性ナノ粒子38の集合体から構成される。反強磁性ナノ粒子38の集合体は基板31の表面に途切れなく広がる連続層を形成する。反強磁性ナノ粒子38の表面は炭素原子(図示されず)に包まれる。反強磁性ナノ粒子38は金属元素に基づき構成されればよい。金属元素には例えばFePt3が用いられればよい。こういった反強磁性ナノ粒子は結晶粒から構成される。反強磁性ナノ粒子38の粒径は例えば2nm〜10nmの範囲で設定されればよい。反強磁性ナノ粒子38の平均粒径Dに対する粒径の標準偏差σの比率σ/Dは30%以下に設定されればよい。
【0028】
なお、図2から明らかなように、基板31と反強磁性層37との間には密着層39が挟み込まれてもよい。こういった密着層39には例えばTi膜が用いられることができる。密着層39の働きによれば、基板31および反強磁性層37の間で密着力は高められることができる。
【0029】
多層構造体32は、反強磁性層37の表面に広がる第2層すなわち記録磁性層41を備える。記録磁性層41は磁性微小粒子すなわち磁性ナノ粒子42の集合体から構成される。磁性ナノ粒子42の集合体は反強磁性層37の表面に途切れなく広がる連続層を形成する。磁性ナノ粒子42の表面は炭素原子(図示されず)に包まれる。磁性ナノ粒子42は金属元素に基づき構成されればよい。金属元素には例えばFeおよびPtを含む合金が用いられればよい。ここでは、例えばFePt合金が用いられればよい。こういった磁性ナノ粒子42は結晶粒から構成される。磁性ナノ粒子42の粒径は例えば2nm〜10nmの範囲で設定されればよい。磁性ナノ粒子42の平均粒径Dに対する粒径の標準偏差σの比率σ/Dは10%以下に設定されればよい。
【0030】
以上のような磁気ディスク13によれば、記録磁性層41は反強磁性層37の表面に受け止められることから、記録磁性層41の個々の磁性ナノ粒子42では磁化の向きは十分に保持されることができる。磁気ディスク13に熱エネルギが加えられたとしても、記録磁性層41に記録された磁気情報の劣化は阻止されることができる。
【0031】
しかも、磁性ナノ粒子42の集合体は反強磁性ナノ粒子38の集合体の表面に受け止められる。反強磁性ナノ粒子38や磁性ナノ粒子42は規則的に配置されることから、磁性ナノ粒子42の集合体の表面では確実に平坦化面が確立されることができる。磁気ディスク13および浮上ヘッドスライダ19の衝突は極力阻止されることができる。
【0032】
次に磁気ディスク13の製造方法を詳述する。まず、ディスク形の基板31が用意される。基板31の表面にはTi膜の密着層39が形成される。密着層39の形成にあたって例えばスパッタリング法や真空蒸着法は用いられる。密着層39の膜厚は例えば3nm程度に設定されればよい。
【0033】
続いて、密着層39の表面には反強磁性層37すなわち反強磁性ナノ粒子38の集合体は形成される。集合体の形成にあたって、有機溶媒中に第1合金ナノ粒子を含む液体は用意される。第1合金ナノ粒子は所定の有機安定剤すなわち安定化配位子に包まれつつ有機溶媒中に分散する。第1合金ナノ粒子は例えばFePt3(Fe25Pt75)といった反強磁性材料から構成される。第1合金ナノ粒子の粒径は例えば5.5nm程度に設定される。第1合金ナノ粒子の形成方法の詳細は後述される。
【0034】
第1合金ナノ粒子を含む液体は密着層39の表面に塗布される。塗布にあたっていわゆるスピンコート法が用いられる。このスピンコート法では回転中の基板31の表面に液体が滴下される。滴下された第1合金ナノ粒子は基板31の表面に満遍なく均一に行き渡る。有機溶媒が乾燥すると、第1合金ナノ粒子および有機安定剤は密着層39の表面に残存する。
【0035】
続いて、第1合金ナノ粒子の集合体の表面には記録磁性層41すなわち磁性ナノ粒子42の集合体が形成される。集合体の形成にあたって、有機溶媒中に第2合金ナノ粒子を含む液体は用意される。第2合金ナノ粒子は所定の有機安定剤すなわち安定化配位子に包まれつつ有機溶媒中に分散する。第2合金ナノ粒子は例えばFePtといった磁性材料から構成される。第2合金ナノ粒子の粒径は例えば2nm〜10nm程度に設定される。第2合金ナノ粒子の形成にあたって周知のスーパーハイドライド法やポリオール法が用いられればよい。
【0036】
第2合金ナノ粒子を含む液体は第1合金ナノ粒子の集合体の表面に塗布される。塗布にあたって前述と同様に例えばスピンコート法が用いられればよい。有機溶媒が乾燥すると、第2合金ナノ粒子および有機安定剤は第1合金ナノ粒子の集合体の表面に残存する。このとき、第1および第2合金ナノ粒子は規則的に配置されることから、第2合金ナノ粒子の集合体の表面には平坦化面が確立されることができる。
【0037】
続いて、真空環境下で第1および第2合金ナノ粒子にアニール処理が施される。アニール処理にあたって基板31は加熱炉内に設置される。加熱にあたって例えば赤外線ヒータが用いられればよい。加熱炉内では1x10−6[Pa]以下の真空環境が確立される。加熱炉内では例えば30分間にわたって800℃の温度が維持されればよい。加熱に基づき個々の第1および第2合金ナノ粒子は結晶化する。第1合金ナノ粒子では反強磁性は発現する。その一方で、第2合金ナノ粒子では磁性は発現する。その後、基板31は室温まで冷却される。こうして反強磁性層37および記録磁性層41は形成される。
【0038】
その後、記録磁性層41の表面には保護膜35や潤滑膜36が形成される。保護膜35の膜厚は例えば5nm程度に設定されればよい。潤滑膜36の膜厚は例えば1nm程度に設定されればよい。保護膜35の形成には例えばスパッタリング法が用いられればよい。潤滑膜36は例えばディップ法に基づき塗布されればよい。
【0039】
次に、第1合金ナノ粒子の製造方法を詳述する。第1合金ナノ粒子の形成にあたって金属塩が用意される。金属塩には、例えばアセチルアセトナト塩、塩化物、臭化物およびヨウ化物の少なくともいずれかが用いられればよい。FePt3ナノ粒子を形成する場合、金属塩は、例えばビスアセチルアセトナト白金、ビスベンゾニトリル白金(II)塩化物、臭化白金(II)、塩化白金(II)およびヨウ化白金(II)のいずれかが用いられればよい。
【0040】
同様に、有機金属錯体が用意される。有機金属錯体には例えば有機鉄錯体が用いられればよい。FePt3ナノ粒子を形成する場合、有機金属錯体には、例えば、Fe(CO)5やFe2(CO)9、Fe3(CO)12といった有機鉄錯体のいずれかが用いられればよい。
【0041】
同様に、有機溶媒が用意される。有機溶媒には、例えば炭化水素、アルコール、エーテルおよびエステルのいずれかから選択され、炭素数2〜20の有機化合物が含まれればよい。同様に、還元剤が用意される。還元剤には例えば1,2-ヘキサデカンジオールが用いられることができる。
【0042】
同様に、有機安定剤が用意される。有機安定剤には、例えばカルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸およびアミンのいずれかから選択され、炭素数6〜22の有機化合物が含まれればよい。ここでは、有機安定剤には例えばオレイン酸およびオレイルアミンが用いられる。
【0043】
例えば窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気下でフラスコは用意される。有機溶媒中に、第1分子数の有機安定剤、金属塩および還元剤を含む溶液が生成される。続いて、溶液に、第1分子数の2分の1よりも少ない第2分子数の有機金属錯体が添加される。なお、有機安定剤にオレイン酸およびオレイルアミンが用いられる場合、第1分子数のオレイン酸、第1分子数のオレイルアミンおよび第1分子数よりも少ない第2分子数の有機金属錯体を含む溶液が生成されればよい。
【0044】
こうしてフラスコ内で生成される溶液は所定の反応温度下で撹拌される。反応温度は例えば220℃〜260℃の範囲で設定されればよい。その結果、溶液内では還元剤に基づき金属塩および有機金属錯体から金属が還元される。こうして第1合金ナノ粒子は形成される。第1合金ナノ粒子は有機安定剤に包まれる。
【0045】
その後、フラスコ内の溶液は室温まで冷却される。フラスコ内にはエタノールといった溶液が加えられる。遠心分離に基づき第1合金ナノ粒子および有機安定剤の沈殿物が取り出される。取り出された第1合金ナノ粒子および有機安定剤はヘキサンといった有機溶液に投入される。こうして、反強磁性材料から構成され、有機溶液中に分散するナノ粒子は得られる。
【0046】
本発明者は前述の製造方法に基づきナノ粒子を製造した。例えばアルゴンガス雰囲気下でフラスコは用意された。フラスコ内には、197mg(0.5mM相当)のビスアセチルアセトナト白金および390mgの1,2-ヘキサデカンジオールが配置された。フラスコには20mL(ミリリットル)のジオクチルエーテルが加えられた。フラスコには0.64mL(2.0mM相当)のオレイン酸および0.68mL(2.0mM相当)のオレイルアミンが加えられた。続いてフラスコには0.13mL(1.0mM相当)の鉄カルボニルFe(CO)5が加えられた。こうしてフラスコ内で生成される溶液は30分間にわたって230℃の温度下で撹拌された。
【0047】
その後、フラスコ内の溶液は室温まで冷却された。フラスコ内には40mLのエタノールが加えられた。遠心分離に基づきナノ粒子および有機安定剤の沈殿物が取り出された。取り出されたナノ粒子および有機安定剤はヘキサンに添加された。こうして粒径5.5nmのナノ粒子は形成された。
【0048】
本発明者はX線回折に基づきナノ粒子を観察した。観察にあたって試料は作成された。ナノ粒子は基板の表面に塗布された。塗布にあたっていわゆるスピンコート法が用いられた。ナノ粒子の集合体にはアニール処理が施された。加熱炉内では1x10−6[Pa]以下の真空環境が確立された。加熱炉内の温度は例えば30分間にわたって800℃の温度が維持された。温度は室温から800℃まで10分間で上昇した。その後、基板は室温まで冷却された。
【0049】
図3に示されるように、所定の結晶面でピークが確認された。こうして確認されたピークの位置[deg]はFePt3のJCPDS値に照らし合わせられた。その結果、図4に示されるように、試料に係るナノ粒子はFePt3で構成されることが確認された。
【0050】
次に、本発明者は、有機安定剤の使用量とナノ粒子の合金種との関係を検証した。検証にあたって複数の具体例が用意された。ナノ粒子の製造にあたって、前述と同様に、金属塩には197mg(0.5mM相当)のビスアセチルアセトナト白金が用いられた。有機金属錯体には0.13mL(1.0mM相当)の鉄カルボニルFe(CO)5が用いられた。還元剤には390mgの1,2-ヘキサデカンジオールが用いられた。有機溶媒には20mLのジオクチルエーテルが用いられた。有機安定剤にはオレイン酸およびオレイルアミンが用いられた。この検証では、本発明者は有機安定剤の使用量を変化させた。
【0051】
その結果、図6に示されるように、0.32mL(1.0mM相当)のオレイン酸および0.34mL(1.0mM相当)のオレイルアミンが使用されると、FePtナノ粒子が形成されることが確認された。その一方で、0.64mL(2.0mM相当)のオレイン酸および0.68mL(2.0mM相当)のオレイルアミンが使用されると、FePt3ナノ粒子が生成されることが確認された。しかも、有機安定剤の使用量が増加すると、ナノ粒子の平均粒径は増大することが確認された。同様に、有機安定剤の使用量が増加すると、粒径分散σ/D[%]は縮小することが確認された。
【0052】
図6は、本発明の第2実施形態に係る磁気ディスク13aの断面構造を詳細に示す。この磁気ディスク13aでは、多層構造体32aは、反強磁性ナノ粒子38の集合体から構成される反強磁性層37と、反強磁性層37の表面に形成される記録磁性層51とを備える。記録磁性層51は、反強磁性ナノ粒子38に基づき成長する結晶粒で構成される。記録磁性層51に磁気情報は記録される。記録磁性層61は、例えばCoやNi、Feのいずれかを少なくとも含む合金から構成されればよい。その他、前述の第1実施形態の構成や構造と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0053】
こういった磁気ディスク13aでは、記録磁性層51は反強磁性ナノ粒子38に基づき成長する結晶粒で構成されることから、記録磁性層51では結晶粒の大きさや分布は確実に制御されることができる。磁気ディスク13aでは磁気情報の記録密度はこれまで以上に高められることができる。
【0054】
しかも、記録磁性層51は反強磁性層37の表面に受け止められることから、記録磁性層51の個々の結晶粒では磁化の向きは十分に保持されることができる。磁気ディスク13aに熱エネルギが加えられたとしても、記録磁性層51に記録された磁気情報の劣化は阻止されることができる。
【0055】
次に磁気ディスク13aの製造方法を簡単に説明する。まず、ディスク形の基板31が用意される。基板31の表面にはTi膜の密着層39が形成される。密着層39の形成にあたって例えばスパッタリング法は用いられる。密着層39の表面にはいわゆるスピンコート法に基づき第1合金ナノ粒子が塗布される。塗布にあたって例えばスピンコート法が用いられればよい。第1合金ナノ粒子の塗布後、基板31はスパッタリング装置に装着される。例えばCoCrPtターゲットに基づきスパッタリングが実施される。反強磁性ナノ粒子38の集合体の表面には記録磁性層51が形成される。記録磁性層51の結晶粒は反強磁性ナノ粒子38からエピタキシャル成長に基づき成長する。その後、第1合金ナノ粒子および記録磁性層51にはアニール処理が施される。こうして反強磁性ナノ粒子38の集合体から構成される反強磁性層37および記録磁性層51は形成される。
【0056】
(付記1) 反強磁性を示すことを特徴とする反強磁性微小粒子。
【0057】
(付記2) 付記1に記載の反強磁性微小粒子において、金属元素に基づき構成されることを特徴とする反強磁性微小粒子。
【0058】
(付記3) 付記2に記載の反強磁性微小粒子において、FePt3から構成されることを特徴とする反強磁性微小粒子。
【0059】
(付記4) 付記3に記載の反強磁性微小粒子において、粒径は1nm〜100nmの範囲で設定されることを特徴とする反強磁性微小粒子。
【0060】
(付記5) 反強磁性微小粒子の集合体と、集合体の表面に形成される記録磁性層とを備えることを特徴とする磁気記録媒体。
【0061】
(付記6) 付記5に記載の磁気記録媒体において、前記記録磁性層は磁性微小粒子の集合体から構成されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0062】
(付記7) 付記5に記載の磁気記録媒体において、前記記録磁性層は反強磁性微小粒子に基づき成長する結晶粒で構成されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0063】
(付記8) 付記6または7に記載の磁気記録媒体において、前記反強磁性微小粒子は金属元素に基づき構成されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0064】
(付記9) 付記8に記載の磁気記録媒体において、前記反強磁性微小粒子はFePt3から構成されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0065】
(付記10) 付記9に記載の磁気記録媒体において、前記反強磁性微小粒子の粒径は1nm〜100nmの範囲で設定されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0066】
(付記11) 反強磁性材料から構成され、有機安定剤に包まれつつ溶媒中に分散することを特徴とする微小粒子。
【0067】
(付記12) 付記11に記載の微小粒子において、前記反強磁性材料はFePt3であることを特徴とする微小粒子。
【0068】
(付記13) 有機溶媒中に、第1分子数の有機安定剤、金属塩および還元剤を含む溶液を生成する工程と、溶液に、第1分子数の2分の1よりも少ない第2分子数の有機金属錯体を添加する工程と、所定の反応温度下で溶液を撹拌する工程とを備えことを特徴とする微小粒子の製造方法。
【0069】
(付記14) 付記13に記載の微小粒子の製造方法において、前記有機安定剤には、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ホスホン酸およびアミンのいずれかから選択され、炭素数6〜22の有機化合物が含まれることを特徴とする微小粒子の製造方法。
【0070】
(付記15) 有機溶媒中に、第1分子数のオレイン酸、オレイルアミン、金属塩および還元剤を含む溶液を生成する工程と、溶液に、第1分子数よりも少ない第2分子数の有機金属錯体を添加する工程と、所定の反応温度下で溶液を撹拌する工程とを備えることを特徴とする微小粒子の製造方法。
【0071】
(付記16) 有機溶媒中に、オレイン酸、第1分子数のオレイルアミン、金属塩および還元剤を含む溶液を生成する工程と、溶液に、第1分子数よりも少ない第2分子数の有機金属錯体を添加する工程と、所定の反応温度下で溶液を撹拌する工程とを備えることを特徴とする微小粒子の製造方法。
【0072】
(付記17) 有機溶媒中に、第1分子数のオレイン酸、第1分子数のオレイルアミン、金属塩および還元剤を含む溶液を生成する工程と、溶液に、第1分子数よりも少ない第2分子数の有機金属錯体を添加する工程と、所定の反応温度下で溶液を撹拌する工程とを備えることを特徴とする微小粒子の製造方法。
【0073】
(付記18) 付記13〜17のいずれかに記載の微小粒子の製造方法において、前記有機金属錯体は有機鉄錯体であることを特徴とする微小粒子の製造方法。
【0074】
(付記19) 付記13〜18のいずれかに記載の微小粒子の製造方法において、前記金属塩は、白金を含むアセチルアセトナト塩、白金を含む塩化物、白金を含む臭化物および白金を含むヨウ化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする微小粒子の製造方法。
【0075】
(付記20) 付記13〜19のいずれかに記載の微小粒子の製造方法において、前記有機溶媒には、炭化水素、アルコール、エーテルおよびエステルのいずれかから選択され、炭素数2〜20の有機化合物が含まれることを特徴とする微小粒子の製造方法。
【0076】
(付記21) 第1微小粒子の集合体で構成される第1層と、第1層の表面に形成され、第2微小粒子の集合体で構成される第2層とを備えることを特徴とする多層構造体。
【0077】
(付記22) 付記21に記載の多層構造体において、前記第2微小粒子は磁性を有することを特徴とする多層構造体。
【0078】
(付記23) 付記22に記載の多層構造体において、前記第1微小粒子は反強磁性を有することを特徴とする多層構造体。
【0079】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、反強磁性微小粒子およびその製造方法は提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 磁気記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】 本発明の第1実施形態に係る磁気ディスクの構造を詳細に示す拡大垂直断面図である。
【図3】 X線回折に基づく検証結果を示すグラフである。
【図4】 X線回折のピーク測定値とJCPDS値との比較を示す表である。
【図5】 有機安定剤の使用量とナノ粒子の組成との関係を示す表である。
【図6】 本発明の第2実施形態に係る磁気ディスクの構造を詳細に示す拡大垂直断面図である。
【符号の説明】
13 磁気記録媒体としての磁気ディスク、32 多結晶構造体、37 反強磁性層(第1層)、38 反強磁性ナノ粒子(反強磁性微小粒子)、41 記録磁性層(第2層)、42 磁性ナノ粒子(磁性微小粒子)。
Claims (4)
- 炭素原子に包まれる反強磁性ナノ粒子から構成される反強磁性層と、反強磁性層上に形成されて、磁性ナノ粒子から構成される記録磁性層とを備えることを特徴とする磁気記録媒体。
- 炭素原子に包まれる反強磁性ナノ粒子から構成される反強磁性層と、反強磁性層上に形成されて、反強磁性ナノ粒子に基づき成長する結晶粒で構成される記録磁性層とを備えることを特徴とする磁気記録媒体。
- 請求項1または2に記載の磁気記録媒体において、前記反強磁性ナノ粒子はFePt3を含み、前記反強磁性ナノ粒子の粒径は5.5nm〜10.0nmの範囲で設定されることを特徴とする磁気記録媒体。
- 有機溶媒中に、還元剤、第1分子数のビスアセチルアセトナト白金、第1分子数の4倍以上の第2分子数のオレイン酸および第2分子数のオレイルアミンを含む溶液を生成する工程と、溶液に、第1分子数の2倍の第3分子数の鉄カルボニルを添加する工程と、所定の反応温度下で溶液を撹拌する工程と、磁気記録媒体に溶液を塗布し、磁気記録媒体上に、FePt3ナノ粒子を含む反強磁性層を形成する工程とを備えることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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