JP4049406B2 - 津液改善剤及びそれを含有する経口投与用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、津液作用の改善効果を有する津液改善剤、及びそれを含有する食品、医薬等の経口投与用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
漢方思想における気、血、水の考え方は、その薬理作用の捉え方のユニークさと、漢方薬選択時の合理的な指標であるために、古くより研究されてきた。これらの内、気、血の意味するものについては、多くのことが解明されてきた。例えば、血とは酸素、栄養等エネルギーを中心とする補給・代謝を表すキーワードであり、気とは生命活動の恒常性機構の活動状況と生命活動の原動力の状況を表すキーワードであることが知られている。
【0003】
しかし、水(津液)の働きについては老廃物の代謝・排泄作用のみしか知られておらず、気・血・水の論理体型において遅れて認識された為、その真の作用(津液作用)の解明は未完であった。また、津液作用と現代医学で認識されている種々の薬理作用等との関係や津液の現代医学における役割などはあまり知られておらず、現代医学の分野における津液作用の解明及び津液作用の改善をもたらす食品や医薬等の開発が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況を踏まえてなされたものであり、津液の真の作用を明らかにし、津液作用を改善しうる物質及びそれを含有する食品、医薬等の経口投与用組成物を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、このような状況に鑑み、津液の真の作用を求めて鋭意研究を重ねた結果、津液作用が、ある種の物質の働きによって水分の体外への分泌を司る器官を刺激し、体内水分の体外への分泌を促進させる作用を意味していることを見出した。そして、そのような分泌器官を刺激し津液作用を促進・改善しうる物質である津液改善剤をスクリーニングすることにより、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩からなる津液改善剤を提供するものである。。
【0007】
【化7】
【0008】
[式(I)中、R1は水酸基又は糖残基を表し、R2は水素原子、水酸基、ヒドロキシメチル基又はカルボキシル基を表し、R3はメチル基、カルボキシル基又は水素原子を表す。Aはカルボニル基又はCH−R4で表される基を表す。ここでR4は糖残基又は置換基を有してもよいアントラニル基を表す。]
【0009】
また、本発明は、前記津液改善剤を含有する経口投与用組成物を提供するものである。
【0010】
本発明の津液改善剤とは、水分の体外への分泌を司る器官を刺激して体内水分の体外への分泌を促し津液作用を促進・改善する作用、すなわち津液改善作用を有する物質をいう。本発明者らは、津液作用が真皮から表皮への水分分泌を促進し表皮に十分な水分を保持させることによって起こる美肌作用、アトピー性皮膚炎、湿疹、皮膚真菌症、疣贅、色素沈着症、尋常性乾癬、老人性乾皮症、老人性角化腫、火傷等の各種皮膚疾患治療作用、発毛促進作用、発汗促進作用、胃壁、腎臓、腸管等での水分分泌を促進させることによって起こる消化液分泌促進作用、利尿作用、便通促進作用にかかわる作用であることを見出した。すなわち、漢方生薬の薬効分類を詳細に検討し、現代医薬分類との対比を行った結果、水(津液)が関与すると言われているしゃ下、利水、消導、補陰と言った薬草群の作用が現代医薬品分類における美肌作用、アトピー性皮膚炎、湿疹、皮膚真菌症、疣贅、色素沈着症、尋常性乾癬、老人性乾皮症、老人性角化腫、火傷等の各種皮膚疾患の治療作用、発毛促進作用、消化液分泌促進作用、発汗促進作用、利尿作用、便通促進作用と係わりが深いことを見出した。
【0011】
この知見をもとに種々の物質について美肌作用、アトピー性皮膚炎治療作用、湿疹の治療作用、発毛促進作用、消化液分泌促進作用、発汗促進作用を指標にスクリーニングを重ねたところ、上記一般式(I)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩がこのような作用に優れることを見いだしたものである。
【0012】
上記一般式(I)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩は、経皮吸収促進作用、肝機能の改善や免疫機能の改善作用等を有していることは知られているものの、それが真の意味での津液改善作用を有することは知る余地もなかった。更に、一般式(I)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩が美肌作用、アトピー性皮膚炎、湿疹、皮膚真菌症、疣贅、色素沈着症、尋常性乾癬、老人性乾皮症、老人性角化腫、火傷等の皮膚疾患治療作用、発毛促進作用、発汗促進作用、消化液分泌促進作用、利尿作用、便通促進作用を有することは全く知られていなかった。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
(1)本発明の津液改善剤
本発明の津液改善剤は、上記一般式(I)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩からなる。
【0014】
ここで、式(I)中、R1は水酸基又は糖残基を表し、R2は水素原子、水酸基、ヒドロキシメチル基又はカルボキシル基を表し、R3はメチル基、カルボキシル基又は水素原子を表す。Aはカルボニル基又はCH−R4で表される基を表し、R4は糖残基又は置換基を有してもよいアントラニル基を表す。
【0015】
このような化合物として具体的には、下記一般式(II)で表されるエモジン、下記一般式(III)で表されるアロエエモジン、下記一般式(IV)で表されるライン、下記一般式(V)で表されるセンノサイド、又は下記一般式(VI)で表されるアロインが挙げられる。尚、一般式(V)中、GlO又はOGlは糖残基を表わす。
【0016】
【化8】
【0017】
【化9】
【0018】
【化10】
【0019】
【化11】
【0020】
【化12】
【0021】
また、上記化合物の生理的に許容される塩とは、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミンやトリエタノールアミン等の有機アミン塩、リジンやアルギニン等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。これらの対塩基は1種でも2種以上を組み合わせて用いても構わない。
【0022】
一般式(I)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩は何れも市販されており入手可能である。
本発明の上記化合物からなる津液改善剤は、津液作用を促進・改善する効果を有する。津液作用は、その発現形態としてしゃ下作用、利水作用、補陰作用、消導作用として生体に発現することが知られている。これらの作用を有する漢方生薬としては、しゃ下作用であれば、ダイオウ、バンシャヨウ、ロカイ、マシニン、ケンゴシ、カンスイ、ゲンカ、ゾクズイシ、ウキュウコンピ等が知られており、利水作用を有する漢方生薬としては、チョレイ、ブクリョウ、タクシャ、インチンコウ、ヨクイニン、トウカニン、ジフシ、トウキヒ、キンセンソウ等が知られており、補陰作用を有する漢方生薬としては、シャジン、セイヨウジン、テンモンドウ、バクモンドウ、セッコク、ギョクチク、ヒャクゴウ、ソウキセイ、カンレンソウ、ジョテイシ、ゴマ、コクズ、キバン、ベッコウ等が知られており、消導作用を有する漢方生薬としては、サンザシ、クレンコンピ、ヒシ、カクシツ、ライガン、ビンロウジ、ナンカシ、タイサン等が知られている。
【0023】
これらについて文献等を調べてみると、美肌作用、発毛促進作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用、消化促進作用等の薬理作用が重複していることが見出された。ここに本発明者等は注目し、「水」(津液)の作用は現代医学における美肌作用、アトピー性皮膚炎治療作用、発毛促進作用、湿疹の治療作用、消化液分泌促進作用、発汗促進作用、利尿作用、便通促進作用等を指標とすることができることを見出した。尚、これらの作用の一つを有する物質は、大なり小なり他の作用も有している場合が多い。したがって、これらの作用の一つを指標にするスクリーニングを行えば、他の作用の推定を行うこともできる。
【0024】
本発明の津液改善剤は、美肌作用、アトピー性皮膚炎治療作用、湿疹で代表される皮膚炎群治療作用、皮膚真菌症治療作用、疣贅治療作用、肝炎で代表される色素沈着症治療作用、尋常性乾癬治療症、老人性乾皮症、老人性角化腫治療作用、物理的原因による皮膚損傷治療作用、発毛促進作用、消化液分泌促進作用、発汗促進作用、便通促進作用、及び利尿作用からなる群から選ばれる少なくとも一つの作用を改善する作用を有しており、これを投与することにより、肌の衰えの防止と改善、アトピー性皮膚炎の治療と発症・悪化の予防、発毛の促進と抜け毛の予防、湿疹の改善と悪化の予防、便通の促進、排尿の促進等の効果が発揮される。
【0025】
津液改善剤の好ましい投与量は、疾病の種類や患者の特性によって異なるが、成人一人一日あたり1〜10000mgを1回乃至は数回に分けて経口投与すればよい。
【0026】
取り分け本発明で注目すべきことは、上記一般式(I)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩は、経口投与によって肌が美しくなったり発毛が促進されたりするなど、複数の作用を同時に備えることができる点である。すなわち、好ましくは、本発明の津液改善剤は、美肌作用、アトピー性皮膚炎治療作用、湿疹で代表される皮膚炎群治療作用、皮膚真菌症治療作用、疣贅治療作用、肝炎で代表される色素沈着症治療作用、尋常性乾癬治療症、老人性乾皮症、老人性角化腫治療作用、物理的原因による皮膚損傷治療作用、発毛促進作用、消化液分泌促進作用、発汗促進作用、便通促進作用、及び利尿作用からなる群から選ばれる二以上の作用を改善する効果を有する。経口投与でこのような作用を同時に期待しうる物質は未だ知られていない。
【0027】
(2)本発明の経口投与用組成物
本発明の経口投与用組成物は、本発明の上記津液改善剤を含有することを特徴とする。上記津液改善剤は1種又は2種以上を含有してもよい。
【0028】
経口投与用組成物としては、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、キャンディー、ガム、グミ等に加工した食品組成物や医薬組成物が例示できる。好ましい本発明の津液改善剤の含有量は、食品組成物の場合、組成物全体に対し0.001〜50重量%であり、0.01〜20重量%がより好ましく、0.01〜15重量%が更に好ましい。また、医薬組成物の場合は0.1〜60重量%が好ましく、0.5〜50重量%がより好ましく、1〜30重量%が更に好ましい。
【0029】
本発明の組成物は、上記津液改善剤以外に、食品組成物又は医薬品組成物で通常用いられている任意成分を含有することができる。このような任意成分としては、医薬組成物であれば、賦形剤、結合剤、被覆剤、滑沢剤、糖衣剤、崩壊剤、増量剤、矯味矯臭剤、乳化・可溶化・分散剤、安定剤、pH調整剤、等張剤等が例示できる。食品組成物であれば、酸化防止剤、矯味矯臭剤、増粘剤、乳化安定剤、防腐剤、呈味剤、甘味剤、酸味剤等が例示できる。これらの任意成分と上記津液改善剤を常法に従って処理することにより、本発明の組成物を製造することができる。
【0030】
本発明の組成物は、津液作用の改善に用いることができる。具体的には、美肌作用、アトピー性皮膚炎治療作用、湿疹で代表される皮膚炎群治療作用、皮膚真菌症治療作用、疣贅治療作用、肝炎で代表される色素沈着症治療作用、尋常性乾癬治療症、老人性乾皮症、老人性角化腫治療作用、物理的原因による皮膚損傷治療作用、発毛促進作用、消化液分泌促進作用、発汗促進作用、便通促進作用、及び利尿作用からなる群から選ばれる作用の改善のために用いることができる。
【0031】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【0032】
【実施例1〜5】
<配合例>
表1に示す成分を用い、その処方に従って錠剤を作成した。即ち、各処方成分をグラッド造粒装置に秤込み、50重量部の20%エタノール水溶液を噴霧しながら混合して、粗顆粒を作成した。粗顆粒を40℃で48時間送風乾燥して、打錠機で打錠して250mgの錠剤を得た。尚、表1中の数値の単位は重量部を表す。
【0033】
【表1】
【0034】
【実施例6〜10】
<配合例>
表2に示す成分を用いてその処方に従ってキャンディーを作成した。即ち、各処方成分を120℃で加熱溶解し、冷却しながら成形してキャンディーを得た。尚、表2中の数値の単位は重量部を表す。
【0035】
【表2】
【0036】
【実施例11〜15】
<配合例>
表3に示す成分を用いてその処方に従ってキャンディーを作成した。即ち、処方成分を120℃で加熱溶解し、冷却しながら成形してキャンディーを得た。尚、表3中の数値の単位は重量部を表す。
【0037】
【表3】
【0038】
【実施例16】
<試験例1:美肌改善作用>
肌荒れに悩む28〜39歳のパネラー1群10名が、上記実施例1〜3の錠剤(1g錠)を1日朝晩2回1錠ずつ2ヶ月間のみ、肌荒れの改善を評価した。評価基準は、非常に改善した(評点5)〜改善しない(評点0)とした。対照としては、本発明の津液改善剤を乳糖に置換したものを用いた。結果を平均評点として表4に示す。これより、本発明の津液改善剤が内服によって肌荒れを改善する作用を有すること、即ち、美肌作用を有することがわかる。
【0039】
【表4】
【0040】
【実施例17】
<試験例2:発毛促進作用>
C3Hマウス1群5匹の背部を剃毛し、表5に示す検体10mgを生理食塩水200μlに溶解又は分散させ経口投与し、その後の毛の生え方を観察して発毛促進作用を評価した。対照はベヒクルの生理食塩水のみとした。評価の基準は、++(評点4):対照に比べて著しく早い、+(評点2):対照に比べて早い、±(評点1):対照に比べてやや早い、−(評点0):対照に比べて早くない、とした。結果を平均評点として表5に示す。これより、本発明の津液改善剤は発毛促進作用に優れることが判る。
【0041】
【表5】
【0042】
【実施例18】
<試験例3:アトピー性皮膚炎に対する作用>
アトピー性皮膚炎に悩む21〜35歳のパネラー1群10名が、上記実施例1〜3の錠剤(1g錠)を1日朝晩2回1錠ずつ2ヶ月間のみ、アトピー性皮膚炎の改善効果を評価した。評価基準は、非常に改善した(評点5)〜改善しない(評点0)とした。対照としては、本発明の津液改善剤を乳糖に置換したものを用いた。結果を平均評点として表6に示す。これより、本発明の津液改善剤が内服によってアトピー性皮膚炎を改善する作用を有することがわかる。
【0043】
【表6】
【0044】
【実施例19】
<試験例4:湿疹改善作用>
湿疹に悩む17〜24歳のパネラー1群10名が、上記実施例1〜3の錠剤(1g錠)を1日朝晩2回1錠ずつ2ヶ月間のみ、湿疹の改善効果を評価した。評価基準は、非常に改善した(評点5)〜改善しない(評点0)とした。対照としては、本発明の津液改善剤を乳糖に置換したものを用いた。結果を平均評点として表7に示す。これより、本発明の津液改善剤が内服によって湿疹を改善する作用を有することがわかる。
【0045】
【表7】
【0046】
【実施例20】
<試験例5:胃液分泌促進作用>
麻酔犬を用いて胃液の分泌促進作用を評価した。即ち、ペントバルビツールで麻酔した犬の胃に投与装置付き内視鏡を導入し、検体として表8に示す本発明の津液改善剤10mgを生理食塩水10mlに溶解又は分散させて投与し、その前後の胃液の分泌を観察した。対照は生理食塩水のみを用いた。評価の基準は、++(評点4):対照に比べて著しく胃液分泌が増大、+(評点2):対照に比べて胃液分泌が増大、±(評点1):対照に比べてやや分泌が増大、−(評点0):分泌が対照に比べて増大せず、とした。結果を表8に示す。これより、本発明の津液改善剤は胃液分泌促進作用に優れることがわかる。
【0047】
【表8】
【0048】
【実施例21】
<試験例6:便通・排尿の促進作用>
ICRマウスを代謝ケージで飼育した。投与群は上記実施例1〜3で得られた組成物を1g/1匹朝夕2回0.5gずつ投与した。24時間尿と糞の量をモニターした。コントロール群は検体を投与しなかった。各サンプル1群10匹とした。検体投与群の尿量の総和をコントロール群の尿量の総和で除した値(尿量比)と、検体投与群の糞量の総和をコントロール群の糞量の総和で除した値(糞量比)とを表9に示す。これより、本発明の一般式(I)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩は、便通促進作用及び排尿促進作用(利尿作用)に優れることがわかる。
【0049】
【表9】
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、美肌作用、アトピー性皮膚炎治療作用、湿疹で代表される皮膚炎群治療作用、皮膚真菌症治療作用、疣贅治療作用、肝炎で代表される色素沈着症治療作用、尋常性乾癬治療症、老人性乾皮症、老人性角化腫治療作用、物理的原因による皮膚損傷治療作用、発毛促進作用、消化液分泌促進作用、発汗促進作用、便通促進作用、及び排尿促進作用からなる群から選ばれる津液作用を改善する効果を有する津液改善剤を提供することができる。
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