JP4048416B2 - 脂質被覆不溶性無機粒子 - Google Patents

脂質被覆不溶性無機粒子 Download PDF

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な構造を有する、脂質を被覆した無機粒子およびその調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
無機微粒子には、補強剤、着色剤、ブロッキング防止剤、流動性向上剤などの多様な用途があり、多くの合成樹脂成形品、合成樹脂フィルム、塗料、化粧品、電子写真トナー、消火器粉末などに広く配合されている。
【0003】
これらの用途においては、その目的に応じ種々の粒子が選択され、使用されているが、それらが有する特性を更に向上させる、あるいは別の特性を付与するために、粒子表面に有機・無機種々の化合物で表面被覆処理が行われ、活用されている。
【0004】
有機金属化合物を用いて表面被覆処理を行う事例については、例えば、表面が酸化物で被覆された無機化合物微粒子を片末端官能性ポリジメチルシロキサン中に分散後、熱処理を行なう方法(特開平4-36370)や、コロイダルシリカにビニルハイドロジェンポリシロキサンを乳化重合により被覆する方法(特開平3-281536)、無機化合物粉末に直接オルガノポリシロキサンを被覆し、硬化させる方法(特開平 3-243667)、オルガノシランと無機化合物粉末を混合後アンモニア水などで加水分解する方法(特開平3-12460)、コロイダルシリカに縮重合性オルガノポリシロキサンを乳化縮重合させる方法、などが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の如く多種多様な用途で活用されている、表面被覆処理された無機粒子において、従来とは異なった新しい被覆構造を有し、そしてその構造故に特異的な特性を制御・発現できる粒子およびその調製方法を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、不溶性無機粒子の表面に、
(a)金属原子へ結合した少なくとも1つのアルコキシ基と、連結基を介して結合した2つの中長鎖アルキル基を持つ、該金属原子へ結合したアミノアルキル基とを有する有機金属化合物の中長鎖アルキル基が外側に配合した膜層、および(b)2つの中長鎖脂肪酸基もしくは中長鎖アルキル基と親水基を有する両親媒性分子の親水基が外側に配向した第2の膜層が第1の膜層の上に被覆されている脂質被覆不溶性無機粒子を提供する。
【0007】
本発明はまた前記脂質被覆粒子の製造法にも関する。この方法は、
(a)非プロトン性有機溶媒に分散した不溶性無機粒子を前記有機金属化合物で処理し、
(b)処理した不溶性無機粒子を分散液から分離し、
(c)処理し分離した不溶性無機粒子の存在下前記両親媒体分子を水中に分散し、
(d)分散液から固体粒子を分離する各ステップを含んでいる。
【0008】
本発明に従えば、粒子に種々の特異的性質を付与することが可能になる。例えば第2層の両親媒性分子に電荷を持たせることにより粒子の表面電荷の極性を厳密に調節することが可能となり、例えばトナー用電荷調整剤に応用することができる。また第1層と第2層の層間および/または第2層自体に種々の機能性分子を保持させることができ、これを用いて例えば徐放性化粧料の機能性粒子とし活用することができる。
【0009】
【好ましい実施態様の説明】
被覆粒子のコアとなる不溶性無機粒子は多種類のものを選択することができる。それらは酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、三酸化アンチモンのような金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸鉛、炭酸ニッケル、炭酸バリウム、炭酸マンガンなどの金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、カオリン、タルク、セリサイト、ろう石クレー、マイカ、ベントナイト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどの鉱物を含む。
【0010】
中でも酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、三酸化アンチモンなどの酸化物が好ましい。
【0011】
不溶性無機粒子の粒度は用途に応じて適宜選択し得る。例えば合成樹脂、塗料、化粧品、電子写真トナー、消火器粉末などに配合される場合は基質の強度低下を招来しないように通常100μm以下、好ましくは20μm以下サブミクロンのオーダーである。なお粒子サイズが小さくなればなる程粒子同士の凝集傾向が大きくなるため、各粒子がどの程度分散できるかによって最小粒子径が制限されるので、もし分散が可能であれば数10nm以下であってもよい。粒子の形状は任意であり、例えば球形、不定形、針状、鱗片状などである。
【0012】
コア粒子は第1層に用いる有機金属化合物のアルコキシ基と反応性の官能基を表面に持っていることが特に好ましい。例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシランからゾル−ゲル法(加水分解縮合)によって調製したシリカ粒子は表面にシラノール基を有し、このシラノール基が有機金属化合物のアルコキシ基と反応してそれをシリカ粒子へ化学的に結合する。同様な反応性無機粒子はチタンアルコキシドからゾル−ゲル法によって調製することができる。反応性無機粒子の使用は、第1層の有機金属化合物がその金属原子を頭にして粒子へ強固に結合することを確実にする。
【0013】
被覆の第1の層はアルコキシ基と2つの中長鎖アルキル基を有する有機金属化合物から形成される。有機金属化合物の金属種はケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛またはスズから選ぶことができるが、ケイ素化合物が合成し易く、特に好ましい。
【0014】
限定ではなく例として、実施例に使用したN−〔N−(3−トリエトキシシリル)プロピルスクシンアモイル〕ジヘキサデシルアミン〔(EtO)3 SiC3 Suc2C16〕の合成法について説明する。最初ジヘキサデシルアミンで無水コハク酸を開環し、ハーフアミドすなわちN,N−ジヘキサデシルスクシンアミド酸を合成する。この化合物のカルボキシル基を活性化した後3−アミノプロピルトリエトキシシランと反応させることにより所望の化合物が得られる。この方法において3−アミノプロピルトリエトキシシランおよびジヘキサデシルアミンの代りにそれらの同族体を用い、無水コハク酸の代りに無水マレイン酸のような他のジカルボン酸無水物を用いてもよい。ケイ素以外の他の金属種を有する同様な金属化合物も当業者には自明な方法によって合成することができる。
【0015】
不溶性無機粒子の有機金属化合物による被覆(第1の膜層の形成)は、無機粒子を非プロトン性有機溶媒例えばトルエン中に分散し、これへ有機金属化合物を加えて処理することによって行われる。その際ゾル−ゲル法によって調製した粒子の場合は一次粒子として分散するように超音波を印加するのが好ましい。非プロトン性有機溶媒の使用は有機金属化合物のアルコキシ基を保存し、疎水性炭化水素鎖の外側への配向を助ける。ここで中長鎖とは、鎖に含まれる炭素数が10以上30以下であることを意味する。
【0016】
コアの無機粒子の表面は一般に親水性であるため、このような系においては有機金属化合物は金属原子を頭にし、疎水性の二つの中長鎖アルキル基を反対側としてコア粒子の上に単分子膜を形成する。特にコア粒子の表面がシラノール基のようなアルコキシ基と反応する官能基を持っている場合には、コア粒子と第1の膜層の間には化学結合による強固な接着が形成される。そのような化学反応を促進するため、処理は加熱下例えば溶媒の還流下に行うことが好ましい。
【0017】
処理が終ったコア粒子は例えば遠心分離により分散媒から分離し、コア粒子へ結合しなかった有機金属化合物を除去するための処理を行った後乾燥する。
【0018】
次にこのようにして形成された第1の膜層の上に第2の膜層を形成する。第2の膜層は2つの中長鎖脂肪酸残基もしくは中長鎖アルキル基と親水基を有する両親媒性分子で形成される。そのような両親媒性分子の第1の例はリン脂質、例えばホスファチジルコリン(レシチン)である。天然物起源のホスファチジルコリン(PC)は、高級脂肪酸ジグリセリド混合物の残ったヒドロキシル基へコリンリン酸エステルが結合した化合物である。ホスファチジルエタノールアミン(PE)は、コリンリン酸エステルの代りにエタノールアミンリン酸エステルがジグリセリドへ結合している。中長鎖脂肪酸残基を有する合成リン脂質も市販されている。
【0019】
両親媒性分子はアミノ酸から出発して合成することもできる。例えばアミノ酸のカルボキシル基へアミド結合によって2本の中長鎖アルキル基を結合し、アミノ基を親水基を有するアルカン酸でアシル化した構造の両親媒性化合物がその例である。
【0020】
限定ではなく例として、実施例に使用したN,N−ジヘキサデシル−Nα−〔6−(トリメチルアンモニオ)ヘキサノイル〕−(S)−アラニンアミドブロミド(N+ 5 Ala2C16)およびN,N−ジヘキサデシル−Nα−(6−スルホヘキサノイル)−(S)−アラニンアミド〔(SO3 - )C5 Ala2C16〕の合成法を述べる。
【0021】
t−ブトキシカルボニル基(BOC)のような保護基でアミノ基を保護したアラニンのカルボキシル基を活性化し、これにジヘキサデシルアミンを反応させてN,N−ジヘキサデシルBOCアラニンアミドを合成する。常法によりBOCを脱離させた後、6−ブロモヘキサン酸クロリドでα位のアミノ基をアシル化し、N,N−ジヘキサデシル−Nα−(6−ブロモヘキサノイル)−(S)−アラミンアミド(BrC5 Ala2C16)を合成する。この化合物にトリメチルアミンを反応させると臭化物の形でN+ 5 Ala2C16が得られ、亜硫酸ナトリウムを反応させるとナトリウム塩の形で(SO3 - )C5 Ala2C16が得られる。アラニン以外のα−アミノカルボン酸を用いてもよく、ジヘキサデシルアミンおよび6−ブロモヘキサン酸クロリドの代りにそれぞれの同族体を用いてもよい。
【0022】
両親媒性分子の親水基の電気化学的性格によって最終被覆粒子の電荷の極性および電位が支配される。例えばリン脂質はリン酸残基によって負の電荷を有し、4級アンモニウム基を有する上の両親媒性分子は正の電荷を有し、スルホ基を有する両親媒性分子は負の電荷を有する。親水基はカルボキシル基、アンモニウム以外の他のオニウム基、またはアミド基およびヒドロキシル基のような他の陰性基、陽性基および中性基でもよい。
【0023】
無機粒子上の疎水性炭化水素鎖を外側にした第1の被覆層の上に両親媒性分子の第2の被覆層を形成するステップは、第1の被覆層を有する無機粒子の存在下、水中において両親媒性分子を分散(乳化)することを含む。水の存在下では両親媒性分子の親水基が水と接触する外側に、疎水性の炭化水素鎖が第1の被覆層の露出した疎水性炭化水素鎖と接触するように内側に配向して膜を形成する。この配向を助けるため、第1の被覆層を有する無機粒子と両親媒性分子を一旦有機溶媒中で混合し、有機溶媒を除去してから混合物を水に分散することが好ましい。その際超音波を印加して分散を助けるのが好ましい。有機溶媒による前処理は水を内包した両親媒性分子の二分子膜ベシクルの副生を減らす効果がある。
【0024】
処理を終った粒子は分媒液から分離し、粒子の被覆層を形成しなかったベシクルを分離するため水に再分散し、超音波を印加して洗浄する操作を繰り返した後乾燥する。
【0025】
粒子の被覆状態は種々の方法で確かめることができる。例えば出発コア粒子は親水性であるが、第1の被覆層は疎水性炭素水素鎖が外側に露出しているので撥水性であり、第2の被覆層が施された粒子は再び親水性になるので、処理前後の粒子の水や有機溶媒に対する親和性を比較することによって被覆の状態を確認することができる。また第1の被覆層の有無は、IR(赤外分光測定)やDTA−TG、DSC等で確かめることができる。
【0026】
粒子の被覆状態については、走査型および透過型電子顕微鏡により直接観察することができ、各被覆層の膜厚は例えば光散乱法による粒子径測定値の変化から知ることが可能であり、また有機金属化合物および両親媒性分子の疎水性炭化水素鎖の鎖長から算出することもできる。
【0027】
最終被覆粒子の荷電状態はゼータ電位を測定して確かめることができる。
【0028】
【実施例】
製造例1 シリカ粒子のゾル−ゲル法による調製
テトラエトキシシラン、エタノール、1重量%アンモニア水を、0.2:10:10のモル比で、総量が100gとなるように混合した。この際、シリカ粒子の粒径調節のため、総量に対し0.02重量%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム:界面活性剤)を加え、25℃で12時間攪拌した。得られた粒子を遠心分離し、残留テトラエトキシシランモノマーとアンモニア除去のため、さらにエタノール分散、超音波処理、遠心分離の操作を3回繰り返し、50℃で5時間真空乾燥した。操作の結果得られたシリカ粒子について、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計(DLS−7000)により動的光散乱(DLS)測定を行ったところ、粒径は240nm、多分散指数は3.4×10-3であった。
なお、多分散指数とはその分散系における粒子の分散性を示す指標であり、その値が0.1以下であれば、ほぼ均一に分散されていることを示している。
【0029】
製造例2 N−[N−(3−トリエトキシシリル)プロピル]−スクシンアモイルジヘキサデシルアミン[(EtO)3SiC3Suc2C16] の合成
無水テトラヒドロフラン(THF)50ml中にジヘキサデシルアミン3g(6.44mmol)と無水コハク酸1.29g(12.9mmol)を加え、加熱溶解を行い、室温で24時間攪拌した。溶媒を減圧下で留去し、残渣を塩化メチレン50mlに溶解した。これを飽和食塩水50ml、10%クエン酸水溶液50ml、飽和食塩水50mlの順で、それぞれ3回ずつ洗浄を行った後、液相分離濾紙で水分を除去し、溶媒を留去して白色固体を得た。これをアセトニトリルから再結晶し、N,N−ジヘキサデシルスクシンアミド酸(Suc2C16) の白色固体を得た。
上記で合成したN,N−ジヘキサデシルスクシンアミド酸(Suc2C16) 2.4g(4.24mmol)を、無水塩化メチレン50mlに溶解し、氷冷下で撹拌しながら、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)1.01g(4.9mmol)を加えた。15分後に、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTEOS)1.22g(5.51mmol)を加え、0℃で4時間、次いで室温にて12時間撹拌した。生じた白色のN,N’−ジシクロヘキシル尿素の沈澱を濾別した。濾液から溶媒を減圧下で留去した。得られた油状物を酢酸エチル50mlに溶解し、冷蔵庫で一晩放置して、さらに析出したN,N’−ジシクロヘキシル尿素の沈澱を濾別した。濾液から減圧下で溶媒を留去して得られた油状物を、ワコーゲルC−300を用いてカラムクロマトグラフ法により精製した。カラムクロマトグラフの具体的方法としては、まず、展開溶媒として酢酸エチル−クロロホルム(1:9 v/v)の混合溶媒を用いて不純物を溶出させ、その後に展開溶媒を酢酸エチルに変えて目的物を溶出し、溶媒を留去して減圧乾燥を行い、無色透明の油状物を得た。
得られた化合物は、元素分析やNMRによる構造特定などから、N−[N−(3−トリエトキシシリル)プロピル]−スクシンアモイルジヘキサデシルアミン[(EtO)3SiC3Suc2C16] であることを確認した。
【0030】
製造例3 N,N−ジヘキサデシル−Nα−[6−(トリメチルアンモニオ)ヘキサノイル]−(S)−アラニンアミドブロミド(N+ C5Ala2C16)の合成
N−t−ブトキシカルボニル−(S)−アラニン、4.5g(26mmol)を無水塩化メチレン40mlに溶解し、氷冷下で撹拌しながら、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)5.9g(30mmol)を加え、15分後に、ジヘキサデシルアミン12g(26mmol)を加え、0℃で5時間、次いで室温にて12時間撹拌した。生じたジシクロヘキシル尿素の沈澱を濾別した後、得られた濾液から溶媒を減圧下で留去した。残留物を酢酸エチル100mlに溶解し、10%クエン酸水溶液30ml、飽和食塩水30ml、4%炭酸水素ナトリウム水溶液30ml、飽和食塩水30mlの順で、それぞれ3回ずつ洗浄を行った後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去して得られた油状物について、ワコーゲルC−300を用いてカラムクロマトグラフ法により精製した。得られた淡黄色油状物について、元素分析やNMRによる構造特定などから、N,N−ジヘキサデシル−Nα−t−ブトキシカルボニル−(S)−アラニンアミド(BocAla2C16)であることを確認した。
上記で得られたBocAla2C16、2.9g(4.4mmol) を無水塩化メチレン20mlに溶解し、これにトリフルオロ酢酸25g(220mmol)を加えて2時間攪拌した。攪拌後、溶媒と過剰のトリフルオロ酢酸を減圧下で完全に留去し、得られた無色透明の油状物について、元素分析やIR、NMRによる構造特定などを行い、BocAla2C16からt−ブトキシカルボニル(Boc) 基が完全に除去されていることを確認した。この無色透明の油状物4.7gを無水塩化メチレン20mlに溶解し、トリエチルアミン3g(30mmol)を加えて、氷冷下で撹拌しながら、6−ブロモヘキサン酸クロリド1.9g(8.9mmol)を含有した無水塩化メチレン溶液15mlを20分で滴下し、0℃で5時間、次いで室温にて12時間撹拌した。攪拌後の反応混合物に塩化メチレン100mlを加え、飽和食塩水50ml、5%クエン酸水溶液50ml、飽和食塩水50ml、5%炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、飽和食塩水50mlの順で、それぞれ2回ずつ洗浄を行った後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去した後の残留物をメタノールで再結晶すると、m.p.41.5〜42.5℃の無色の固体2.8gが得られた。得られた固体について、元素分析やNMRによる構造特定などから、N,N−ジヘキサデシル−Nα−(6−ブロモヘキサノイル)−(S)−アラニンアミド(BrC5Ala2C16) であることを確認した。
上記で得られたBrC5 Ala2C16、950mg(1.3mmol) を無水ベンゼン30mlに溶解し、乾燥トリメチルアミンガスを3時間吹き込んで飽和させ、室温で一夜攪拌した。溶媒を減圧下で留去した後に、残留物をメタノールに溶解し、不純物を濾別した。濾液から溶媒を留去して得られる残留物について、Sephadex LH-20を用いたゲルクロマトグラフ法により精製を行った。さらに充填剤をToyopearl HW-40Fに替え、ゲルクロマトグラフ法による精製を繰り返すことにより、m.p.226 ℃の無色の固体を480mg得た。得られた固体について、元素分析やNMRによる構造特定などを行ったところ、N,N−ジヘキサデシル−Nα−[6−(トリメチルアンモニオ)ヘキサノイル]−(S)−アラニンアミドブロミド(N+ C5Ala2C16)であることを確認した。
【0031】
製造例4 N,N−ジヘキサデシル−Nα−(6−スルホヘキサノイル)−(S)−アラニンアミドナトリウム((SO3 - )C5Ala2C16) の合成
製造例3の工程中において得たBrC5 Ala2C16、1.5g(2mmol) をエタノール100mlに溶解し、環流下で攪拌しながら、亜硫酸ナトリウム5g(40mmol)を含有する水溶液100mlを1時間で滴下した。その後、環流下で6昼夜攪拌を続けた。攪拌後、溶媒を減圧下で留去した後に残留物をクロロホルムに溶解し、不溶物を濾別した。濾液から溶媒を留去して得られた固体について、Sephadex LH-20を用いたゲルクロマトグラフ法により精製を行うことにより、m.p.147 ℃の無色の固体を590mg得た。得られた固体について、元素分析やNMRによる構造特定などを行ったところ、N,N−ジヘキサデシル−Nα−(6−スルホヘキサノイル)−(S)−アラニンアミドナトリウム((SO3 )C5Ala2C16) であることを確認した。
【0032】
実施例1
製造例1で得たシリカ粒子、製造例2で得たN−[N−(3−トリエトキシシリル)プロピルスクシンアモイル]ジヘキサデシルアミン、トルエンをそれぞれ5:1:500のモル比で総量が5.0gとなるように秤量した。25mlナスフラスコ中にトルエンを入れ、そこへシリカ粒子を加えた後、超音波印加によって分散させ、その後N−[N−(3−トリエトキシシリル)プロピルスクシンアモイル]ジヘキサデシルアミンを加えた。ナスフラスコをシリコンオイルバス中に設置して加熱し、24時間環流することによって反応させた後、室温まで冷却した。遠心分離により反応液から粒子を分離した。シリカ粒子に直接結合せず、物理的吸着している上記有機ケイ素化合物を除去するために、有機溶媒添加、超音波印加、遠心分離という操作を、有機溶媒をトルエンとして2回、メタノールとして2回行った。操作後の粒子は、減圧下で3時間乾燥した。
得られた粒子について、KBr錠剤法によるFT−IR測定の結果、原料に用いたシリカ粒子からは観察できなかったアルキル鎖のメチレン基による対称・逆対称伸縮に帰属するピークが確認された。また、粒子の疎水化による水に対する分散性の低下も確認されたが、このことは、比較的親水性であるシリカ粒子表面において、有機ケイ素による表面処理によって有機鎖が粒子表面に露出するようになったため、と考えられる。
【0033】
次に以下の(1)、(2)、(3)の両親媒性化合物をそれぞれ用いて、上記で得られた有機ケイ素化合物処理シリカ粒子について、さらなる表面処理操作を施した。
(1) 製造例3で得たN+ 5 Ala2C16
(2) 製造例4で得た(SO3 - )C5 Ala2C16
(3) DMPC 〔SIGMA−ALDRICH社製試薬、rac−1,2−ジミリストイル−グリセロ−3−ホスホコリン〕
【0034】
有機ケイ素化合物による処理後のシリカ粒子8mg、上記両親媒性化合物1.3mgを秤量し、クロロホルム中に超音波処理にて分散させた。これを窒素気流下で薄膜とし、減圧乾燥した。無菌化処理を施した純水2mlを加えてミキサーで分散させ、さらにバス型ソニケーターで超音波処理を1時間行い、得られたサスペンジョン(乳濁液)を遠心分離した。粒子表面以外でベシクルを形成している成分を除去するため、固形分を上記無菌純水に分散して30分の超音波処理を行ってから遠心分離する、という操作を3回繰り返して行い、本発明の粒子を得た。
【0035】
得られた粒子の評価
上記実施例で得られた粒子は、それぞれ製造例1に記載した手法でDLS測定を行い、粒径と単分散性を評価した。また、大塚電子社製、レーザーゼータ電位計ELS−8000を用いてゼータ電位測定を行うことにより表面荷電状態を、MicroCal社VP−DSCを用いて示差走査熱量分析を行うことにより被覆層において形成されていると考えられる有機層がゲル−液晶相転移を起こす挙動について評価を行った。結果を表1に示す。
なお、得られた粒子は、いずれも水に対して高い分散性を示した。このことは、疎水性となって水に対する分散性が悪化していた最初の有機ケイ素化合物処理を行ったシリカ粒子の表面へ、さらに2回目の両親媒性化合物処理によって、親水基が粒子表面に露出したものと考えられる。
【0036】
表1
サンプル (1) (2) (3) 被覆処理なし
粒径(直径)(nm) 255 260 270 240
多分散指数 0.0095 0.029 0.051 0.0034
ゼータ電位(mV) 72.4 -79.2 -5.52 -63.07
相転移温度(℃) 22.9 22.7 24.2 観察されず
【0037】
表1の結果から、以下の事が明らかである。
1.DLS測定による粒子直径の長さは、2回の表面処理によって、出発原料のシリカ粒子よりも15〜30nm程度大きくなっている。このことと分散性を示す指数から、単分散したシリカ粒子表面上に使用した有機ケイ素化合物および両親媒性化合物の有機層二層分が被覆されている。
なお、上記のことはまた、透過型電子顕微鏡による観察において、本発明の粒子には、未処理のシリカ粒子表面上には見られない粒子表面での層を観察することができることからもあきらかである。
2.DSC測定による相転移温度の存在、並びにその温度が、表面処理した化合物の有機層におけるゲル−液晶相転移温度である、と推察される。
3.そして、ゼータ電位の測定結果から、二回目に被覆する両親媒性化合物の種類と比率を調節することにより、得られる本発明品の表面電荷状態を自由にコントロール可能である。
【0038】
実施例2
実施例1で用いたシリカ粒子の代わりに、平均粒子径が180nmの酸化チタン(テイカ社製JA−1、結晶形:アナタース形)を無機粒子基材として用い、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子について、実施例1と同様に測定を行ったところ、二層被覆構造を確認することができた。

Claims (6)

  1. 不溶性無機粒子の表面に、
    (a)金属原子へ結合した少なくとも1つのアルコキシ基と、連結基を介して結合した2つの中長鎖アルキル基を持つ、該金属原子へ結合したアミノアルキル基とを有する有機金属化合物の中長鎖アルキル基が外側に配向した第1の膜層、および
    (b)2つの中長鎖脂肪酸残基もしくは中長鎖アルキル基と親水基を有する両親媒性分子の親水基が外側に配向した第2の膜層が第1の膜層の上に被覆されている脂質被覆不溶性無機粒子であって、前記不溶性無機粒子がシリカまたは酸化チタンの粒子であり、前記有機金属化合物がアミノアルキルトリアルコキシシランのアミノ基を中長鎖アルキル基を有するスクシンアミド酸でアシル化した化合物であり、前記両親媒性分子がリン脂質、またはα−アミノ酸と中長鎖アルキルアミンのアミドのアミノ基を親水基を有するアルカン酸でアシル化した化合物であることを特徴とする脂質被覆不溶性無機粒子。
  2. シリカまたは酸化チタンの粒子がアミノアルキルトリアルコシシランと反応性の表面を持っている請求項1の脂質被覆不溶性無機粒子。
  3. 前記両親媒性分子の親水基は、ヒドロキシル基、4級アンモニウム基および/またはスルホン酸基である請求項1の脂質被覆不溶性無機粒子。
  4. (a)非プロトン性有機溶媒に分散したシリカまたは酸化チタンよりなる不溶性無機粒子を、金属原子へ結合した少なくとも1つのアルコキシ基と、連結基を介して結合した2つの中長鎖アルキル基を持つ該金属原子へ結合したアミノアルキル基とを有する有機金属化合物を分散液へ加えて処理するステップ、
    (b)処理した不溶性無機粒子を分散液から分離するステップ、
    (c)処理し分離した不溶性無機粒子の存在下、2つの中長鎖脂肪酸残基もしくは中長鎖アルキル基と親水基を有する両親媒性分子を水中に分散するステップ、
    (d)分散液から固体粒子を分離するステップ、
    を含む脂質被覆不溶性無機粒子の製造法であって、前記不溶性無機粒子がシリカまたは酸化チタンの粒子であり、前記有機金属化合物がアミノアルキルトリアルコキシシランのアミノ基を中長鎖アルキル基を有するスクシンアミド酸でアシル化した化合物であり、前記両親媒性分子がリン脂質、またはα−アミノ酸と中長鎖アルキルアミンのアミドのアミノ基を親水基を有するアルカン酸でアシル化した化合物であることを特徴とする脂質被覆不溶性無機粒子の製造法。
  5. シリカまたは酸化チタンの粒子がアミノアルキルトリアルコシシランと反応性の表面を持っている請求項4の方法。
  6. 前記両親媒性分子の親水基は、ヒドロキシル基、4級アンモニウム基および/またはスルホン酸基である請求項4の方法。
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