JP4048279B2 - 発酵エタノール分離精製システム - Google Patents

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Description

本発明は、疎水性浸透気化分離膜を用いて、発酵液中のエタノールを選択的に濃縮して回収、生産するシステムに関するものである。
食品、化学工業などの分野において、複数の化合物が混在する多成分系から目的物質を回収分離精製する方法は、最終製品を取り出すための重要な分離精製技術であり、種々な手段が採用されてきた。
目的物質の回収分離精製方法の一つとして蒸留法は、一般的に広範囲に用いられている方法の一つである。蒸留法は、物質の溶液をその沸点とし、その沸点差により成分を分離する方法であり、沸点差により各成分の確実な分離精製を行うことができるという利点が認められ、有効な分離手段とされてきた。蒸留法を適用するためには、処理しようとする対象溶液を加熱して沸点の状態にすることが必要である。このことは、必然的にエネルギー多消費型のプロセスとなる。
発酵で得られるエタノール水溶液は、エタノール濃度が低濃度のものとして得られるが、このような場合であっても、蒸留法が採用されてきた。
また、通常の蒸留法によりエタノール−水系の溶液を濃縮する場合には、エタノール濃度が、95.6重量%では、所謂共沸点となり、気相と液相の濃度が一致する結果、それ以上に濃縮することは、実質的に不可能であり、濃縮操作に限界が現れる。このような場合には、これ以上に濃縮して、無水化するためには、エタノール−水系にベンゼンあるいはシクロヘキサン等の物質を添加して蒸留する共沸蒸留法が用いることが行なわれるが、ベンゼン等を存在させて、その共存下で蒸留を行うことは、大気環境汚染や人体への影響が懸念されるため、その使用に際しては厳しい環境基準の遵守が義務付けられており、ベンゼンの使用は極力回避すべきである。
これらの問題点があることを考慮して、さらには、エタノール水溶液の濃縮を蒸留で行う場合には、生産されるエタノールの約半分のエネルギーを消費すると言われるほどのエネルギー多消費型のプロセスにおいて、必要とされるエネルギー量を少なくしようという観点から、蒸留法を回避する連続プロセスを開発することが検討されてきた。
液体混合物から特定成分を取り出して分離・濃縮する方法として、蒸留法以外に分離膜を用いる方法が注目されており、実際に工業的に用いられている。
エタノール発酵液からエタノールの選択的な分離・濃縮に関しても分離膜による方法が検討されている。具体的には、酵母等の微生物によって生産される特定の処理対象物質(エタノール)を含む水溶液(エタノール発酵液)を、エタノールに対して選択性を有する分離膜の一方に供給し、反対(透過)側から濃縮されたエタノールを取り出すことが可能なエタノール選択的疎水性浸透気化膜を利用するものである。この際に取り出し側を減圧に保つ浸透気化法が採用され、そのための分離膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコンゴム膜を用いる方法(特許文献1)、ポリジメチルシロキサンやシリコンゴム(非特許文献1)を用いることが、よく知られている。
この分離膜を用いる場合には、発酵により得られたるエタノールは、その濃度が20%〜30%程度までの濃度にまで濃縮されるものの、現状では、まだ十分な結果ということができず、効果的なものとなっていない。エタノール選択的疎水性浸透気化膜としては、シロキサンを含む共重合体(特許文献2)、アルコール透過性が良好な膜としては、シリル化合物の重合体(特許文献3)、置換ポリアセチレンとポリトリメチルビニルシランの膜を用い、分離膜の性能を回復させる方法(特許文献4)などが知られているが、発酵により得られるエタノールの濃縮には、膜分離法を用いても、その濃度が20〜30%程度までの濃度にまで濃縮されるにとどまり、効果的なものとなっていない。
エタノール選択的疎水性浸透気化膜としては、ゼオライトをシリコンゴムマトリックス中に入れた膜を用いたベーパーレーション法(浸透気化分離法)(特許文献5)も提案されている。しかしながら、この方法においてもシリコンゴムマトリックスが分離性能に影響を及ぼすために満足する結果を得ることができない。
ゼオライトの一種である結晶構造にアルミナを含まないシリカライトは、非常に高い疎水性を有すると共に、多孔性物質である。この点に着目して、本発明者等は、シリカライトとして、特許文献6の発明を行った。さらに、これらのシリカライトの膜支持体として、金属、セラミックスなどを用いることも検討した。また、多孔質セラミックス、多孔質ガラス、多孔質焼結体など支持体の上に高珪素含有のゼオライト又はシリカライトなどの疎水性無機質からなる分離膜(特許文献7)も知られている。
これらの膜は、その分離性能という点からは有効な膜であるということは期待されている通りである。このゼオライト膜は、緻密で多孔質構造であり、水とエタノールでは、後者の方が、疎水性が高いことから、シリカライトはエタノールに対して親和性が高いことによるものと考えられる。
このようなことから、エタノール選択的疎水性浸透気化膜を用いること、これらの中でもシリカライト膜を用いることにより、希薄なエタノール液を高濃度に濃縮して、高濃度のエタノールとして回収することが可能であると、本発明者らは考えた。
ところで、このシリカライト膜を用いて実際に浸透気化分離法により発酵エタノールの濃縮を継続した場合、回収される濃縮エタノール濃度が経時的に低下してしまうという問題点があることが判った(非特許文献2)。これらのことを検討してみると、発酵過程において変化する条件の影響などがあり、副生成物等の発酵系に存在する物質が徐々に蓄積されることにより、前記のような結果となるとも考えられる。
この経時的な変化を起こすことを防止することを検討してみた。
その一つの方法として、発酵液と直接に接するシリカライト分離膜表面を疎水性のシリコンゴムでコーティングすることにより、濃縮(分離膜透過)エタノールを高濃度とすることができ、分離膜の性能の劣化を大幅に軽減できる効果が認められる(非特許文献3)。しかしながら、この方法においても、分離膜性能の低下を完全に回避し得ていない現状である。このような膜分離性能の大きな低下は、エタノール発酵過程で副産物として生成する有機酸がシリカライト膜表面に吸着することに起因するものと考えられる。
また、アルミナ構造を含む結晶構造のゼオライトの場合にはシラン及びシリケートで膜を処理することも知られているが(特許文献8)、十分な効果は期待できない。
このような分離膜性能の低下をもたらす阻害要因をさらに検討した。この阻害要因を取り除くことができれば、発酵反応の進行とともに生成されるエタノール含有液を連続して安定な操業を行なえば、確実に運転できるエタノールを濃縮・分離するシステムを構築することができるものと考えられる。
特開昭57−136905号 特開昭61−242603号 特開昭61−174905号 特開昭62−250907号 特開昭63−116705号 特開平6−99044号 特開昭63−287504号 特表2000−508231 野村ら、化学工学協会第16秋季大会研究発表講演要旨集、p.540,1982 BiotechnologyTechniques, Vol. 11, p. 921-924, 1997; Biotechnology Letters, Vol. 21, p.1037-1041, 1999 J. Chem. Technol. Biotechnol., Vol. 78, p. 1006-1010, 2003 J. MembraneSci., 30, p. 273-287, 1987
本発明の課題は、希薄エタノール含有発酵溶液から濃縮エタノール液を得るシステムにおいて、従来行われてきたエネルギーを多く必要とする蒸留法を用いることなく、エタノール選択性分離膜を用いた浸透気化分離法によって、直接的かつ連続的に高濃度エタノール溶液を製造するシステムを提供することである。
本発明者らは、分離膜を用いることを前提とした場合には、エタノール/水系からエタノールの選択的な回収(濃縮)では、エタノールの方が水よりも疎水性が高いことから、分離膜として疎水性のものを用い、疎水性を維持することが必要不可欠となること、また、その際に、発酵反応により副生する有機酸あるいはこれに関連する物質が分離膜に吸着される場合には連続的に操作を行なうに際して好ましくない結果をもたらすものと考える。有機酸はその解離程度により有機酸分子(非解離型)として存在するか、有機酸イオン(解離型)として存在する場合があると考えられる。溶液中で有機酸分子として存在することは分離膜に吸着される結果、分離膜の性能が低下する結果となるのではないかと考えられる。すなわち、有機酸を解離状態(イオン)に維持すれば、疎水性の分離膜の吸着を低減できるということになる。
発酵により副生されるこれら弱酸性である、コハク酸、リンゴ酸、酢酸、乳酸、クエン酸について有機酸分子の解離の状態を、データをもとに調査した。その結果は、図7に示す通りである。
この結果から明らかなように、有機酸の解離状態はpHに依存する。pHを5から中性までの範囲に維持すれば、有機酸はほぼ解離した状態で存在している。したがって、このような状態の下では、疎水性分離膜に対して副生物質の吸着などが生じ難く、結果として分離性能の低下を防止できると考えた。
このことについて後述するように、この内容を裏付ける実験結果を得て、本発明者らの考え方は誤りではないことを確信した。
本発明者らは、分離対象となる発酵が終了したエタノール含有水溶液には、特定の有機酸を含有しており、これらの有機酸の解離の状態は、pHを制御することで変化させることができることを見出し、このpHを弱酸性〜中性域に制御することにより、疎水性分離膜に対して処理液中の有機酸の吸着を防止することができ、分離膜の性能の低下を阻止することができることを見出して、本発明を完成させたものである。
なお、従来からの発酵エタノールの膜分離では、このような、供給液のpHを調節すること、及びpHを特定の条件に維持することは行なわれていなかったことは、以下のことを考えると明らかである。
エタノール発酵では、発酵条件として、pHを4.0程度に維持することが行なわれてきている(Separation and Purification Technology 27(2002)59-66)。
一般的に、pHが低い環境ほど微生物の増殖は抑制されることはよく知られており、エタノール発酵過程における雑菌汚染を防止する観点から、発酵工程のpHは酸性条件下で実施される。
これらの事柄を考慮して、前記の条件が採用される。そしてこの発酵反応工程に引き続いて膜分離工程が設置されており、この工程に処理液を導く際に格別の操作を施しておらず、結局、膜分離工程のpHもこれに近い4程度と考えられる。この場合に有機酸は非解離型の有機酸分子としてかなりの割合で存在するであろうということは、前述の考察から明らかであり、この場合には分離膜に吸着される結果、いずれも分離膜の性能の低下を防止することはできない結果となる。
この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉エタノール発酵により得られる発酵生成物からエタノールを分離精製するシステムにおいて、エタノール発酵液のpHをpH5以上中性までの範囲に調整するpH調整工程、エタノール選択的疎水性浸透気化膜であるシリカライト膜による分離工程及びエタノール回収工程からなることを特徴とするエタノールを分離精製するシステム。
〈2〉前記pH調整工程において、エタノール発酵液のpHを、pH6以上中性までの範囲に調整するものであることを特徴とする〈1〉に記載のエタノールを分離するシステム。
〈3〉前記エタノール選択的疎水性浸透気化膜であるシリカライト膜による分離工程が、エタノール発酵液をシリカライト膜と大気圧下で接触させ、膜の反対側を減圧に保った状態で、エタノール及び水を気体状の混合物として取り出すことを特徴とする〈1〉又は〈2〉に記載のエタノールを分離するシステム。
〈4〉前記pH調整工程の前に微生物菌体ろ過工程が設けられていることを特徴とする〈1〉から〈3〉のいずれかに記載のエタノールを分離精製するシステム。
〈5〉前記エタノール発酵により得られる発酵生成物からエタノールを分離精製するシステムの前にエタノール発酵工程が設けられていることを特徴とする〈1〉から〈4〉のいずれかに記載のエタノールを分離精製するシステム。
本発明によれば、希薄エタノール含有発酵溶液をエタノール選択的疎水性浸透気化膜と接触させて疎水性浸透気化膜分離方法によるエタノール分離精製システムにおいて、疎水性浸透気化膜を通過するエタノール発酵済み処理液中の有機酸を解離した状態にあるようにpHの値により制御するので、有機酸が分離膜への吸着を起こさないので、安定してエタノール濃縮を操業することができる。その結果、分離工程発酵で得られる希薄エタノール水溶液から高濃度に濃縮されたエタノール水溶液を安定して連続的に回収することができる。
また、何らかの理由で付着した有機酸分子は、pHを調整すると解離型の有機酸イオンに導かれるため、膜から脱着する結果、エタノール選択的疎水性浸透気化膜は再生される。このようにして、エタノール選択的疎水性浸透気化膜に供給されるエタノールを含有する発酵液のpHを調整することにより、
安定して濃縮エタノール液を生産することができる。
発酵法により得られたエタノール溶液の濃縮に膜分離を採用することができるので、蒸留工程を排除でき、不必要に多くのエネルギーを必要としない分離操作を可能とする。その工業的価値は極めて高いものである。
図1を用いて本発明の内容を説明する。
本発明で分離・精製の対象として用いられる分離膜と直に接する供給液は、微生物による発酵反応によって得られる希薄エタノール含有混合物である。
このエタノール発酵工程は、以下の通りである。
[1]エタノール発酵工程
発酵工程は、反応器となるエタノール発酵槽(1)に、発酵原料供給槽(2)から供給手段である送液ポンプ(3)を介して原料物質が供給される。
原料物質には、グルコースなどの糖成分が供給される。反応槽中では、10%から20%程度の濃度が維持される。
また、発酵を行なうための酵母は、発酵槽(1)において増殖させる。
エタノール発酵では、微生物菌体の増殖維持のために空気が必要とされることがあることから、空気供給装置(4)から空気を発酵槽内へ供給する。
反応温度は25〜35℃に保つのが一般的であるが、この温度域外であってもよい。
反応生成物中には、目的とするエタノールのほか有機酸、微生物菌体などが含まれる。
エタノール発酵で得られるエタノール濃度は、一般的には、10〜15%程度、多くても20%以下である。有機酸の含有量に関しては、実施例1に示すとおりの以下の程度含まれる。
Figure 0004048279
残余の多くは水であり、これに微生物細胞、水及び各種の副生成物等が含有される。
[2]エタノール分離精製工程
(1)微生物菌体ろ過工程
微生物菌体ろ過装置(5)を、前記発酵槽(1)と浸透気化分離装置(9)の中間に配置させる。これは、後続のエタノール選択的透過性分離膜の目詰まりを防止する観点から、予め発酵性微生物を除去するために設置するものである。
発酵槽で得られるエタノール含有反応生成物を、送液ポンプ(6)を介して、微生物菌体ろ過装置(5)に供給し、反応生成物中の微生物菌体が取り除かれる。
そのために微生物菌体ろ過装置(5)を発酵槽(1)と浸透気化分離装置(9)の中間に配置させる。
微生物菌体ろ過装置(5)内には、精密ろ過膜、または限外ろ過膜が具備されており、これらの膜を透過した発酵液のみが取り出される。
一方、微生物菌体ろ過装置(5)内の精密ろ過膜、または限外ろ過膜を透過し得なかった微生物菌体を含む発酵液は、発酵槽(1)へ返送、再利用される。
(2)pH調整工程
微生物菌体ろ過装置(5)により菌体を除去された処理液は、微生物菌体ろ過装置(5)に接続する部分に、pH測定部分が設置されており、その測定結果と流量から算出された必要とされる量のpH調整液体が、pH調整液供給槽(7)から送液ポンプ(8)により供給され、得られた処理液中に添加される。
アルカリ性域の溶液下では分離膜は物理的に不安定であることから、エタノールを含有する発酵液のpHは弱酸性域から中性に調整することが望ましい。
pH調整液は、アルカリ溶液であり、苛性ソーダや水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどが用いられる。
(3)浸透気化分離工程
エタノール浸透気化分離槽(9)は、エタノール供給液槽、エタノール選択的疎水性浸透気化膜及びエタノール回収槽から構成される。エタノール選択的疎水性浸透気化膜を介して、一方は、エタノールを含有する発酵液がエタノール選択的疎水性浸透気化膜と接触する部分である供給液槽とし、エタノール選択的疎水性浸透気化膜を介して、その反対側は、エタノール選択的疎水性浸透気化膜を優先的に透過し、エタノール蒸気が濃縮して回収される部分である透過槽から構成される。
エタノール供給液槽には、微生物菌体ろ過装置(5)で処理された発酵性微生物が除去されたエタノールを含有する発酵液が供給される。発酵性微生物を含有したままの発酵液を供給液とすることも可能であるが、エタノール選択的疎水性透過性分離膜の目詰まりを防止する観点から、予め発酵性微生物を除去しておくことが必要である。
エタノールを含有する発酵液は、pH調整されて、有機酸を解離状態(イオン)に維持することができ、疎水性の分離膜への吸着を低減できる。
供給装置である送液ポンプによって浸透気化分離装置(9)に導かれる。浸透気化分離装置(9)内にエタノール選択的疎水性浸透気化膜が装着されている。このエタノール選択的疎水性浸透気化膜の透過側は真空ポンプ(12)に接続されており、真空に保たれている。
浸透気化分離装置(9)に供給されるエタノール発酵液の温度は、常温またはエタノール発酵の反応温度(25〜35℃)程度で供給される。この範囲外の温度であっても差し仕えない。
エタノール含有水溶液をエタノール選択的疎水性浸透気化膜と大気圧下で接触するように供給し、膜の反対側が減圧に保たれている状態で、エタノール選択的疎水性浸透気化膜を透過させる。その際に、エタノール選択的疎水性浸透気化膜の透過側が減圧に保たれていることによりエタノール及び水は気体状の混合物として取り出される。
エタノール選択的疎水性浸透気化膜の形状は、平板状、又は円筒状である。
減圧に保たれている状態は、20Torrから1Torr程度である。
減圧にするためには、真空にするための手段が採用される。具体的には、真空ポンプなどが採用される。
一方、エタノール選択的疎水性浸透気化膜の透過側を減圧にする代わりに、不活性ガスで透過側の膜面から蒸発する蒸気を掃引して冷却器へ導き、透過蒸気のみを液化することも可能である。
水とエタノールでは、後者の方が疎水性は高い。したがって、エタノールを分離膜によって選択的に回収するためには、その膜は疎水性であることが要求される。
したがって、生産される有機酸をイオン性の解離状態に維持することで、疎水性の分離膜への吸着を回避することができ、分離膜の性能の維持が可能となる。
前記浸透気化分離装置(9)内に装着されているエタノール選択的疎水性浸透気化膜には、公知の疎水性のゼオライト(無機)分離膜を用いることができる。ゼオライトをシリコンゴムマトリックス中に入れた膜、また、ZMS-5や本発明者らが開発した疎水性のシリカライト膜などを挙げることができる。このほか、これらの膜の表面をシリコンゴム等の疎水性素材で改質した膜も有効なものである。前記ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコンゴム膜を用いるもの、ポリジメチルシロキサンやシリコンゴムを用いるもの、シロキサンを含む共重合体、シリル化合物の重合体、置換ポリアセチレンとポリトリメチルビニルシランの膜などを用いる事ができる。
エタノール以外の副産物として、コハク酸をはじめとする有機酸類が発酵の進行とともに蓄積し、pHが低下するとともにそれらが分離膜に吸着するために、発酵エタノールを浸透気化分離法によって濃縮・回収使用とする際に、分離性能が低下することが明らかとなっている。
エタノール選択的疎水性浸透気化膜を透過し得なかった発酵液は、発酵槽(1)へ返送されるか、または流路切り替えバルブ(14)によって廃液処理工程に送られる。
エタノール選択的疎水性浸透気化膜を透過し得なかった発酵液は、発酵槽(1)へ返送される場合において、アルカリ性域の溶液下ではエタノール発酵を司る微生物細胞は物理的に不安定であることからも、エタノール浸透気化分離槽(9)に供給される発酵液のpHは弱酸性域から中性に調整することが望ましい。
一方、何らかの理由で有機酸がエタノール選択的疎水性浸透気化膜に吸着したことにより分離性能が低下した分離膜の再生には、中性の緩衝液で膜表面を洗浄する方法が有効である。すなわち、吸着した有機酸分子が解離型となり、分離膜より脱着する。
浸透気化分離装置は、温度制御されることが望ましく、その温度は、室温以上である。
浸透気化分離装置(9)に供給されるエタノール発酵液の温度は、常温またはエタノール発酵の反応温度(25〜35℃)程度で供給される。この範囲外の温度であっても差し仕えない。
(4)エタノール回収工程
エタノール選択的疎水性浸透気化膜を透過した蒸気は、冷却器(10)によって凝縮され、生成物回収容器(11)から高濃度エタノール液が取り出される。
発酵液には、エタノール以外の副産物として、コハク酸をはじめとする有機酸類が発酵の進行とともに蓄積し、pHが低下するとともにそれらが分離膜に吸着するために、発酵エタノールを浸透気化分離法によって濃縮・回収使用とする際に、分離性能が低下することが明らかとなっている。発酵により生産されるこれら弱酸性の有機酸類は、その分子の解離度合い、すなわち非解離の有機酸分子と解離した有機酸イオンの割合は、pHに応じて大きく変動する。pHが高い程、有機酸分子の割合は減少し、一方、有機酸イオンの割合は増大する。
次に実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこの実施例により限定されるものではない。
実施例1 エタノール発酵液の有機酸分析
グルコースを発酵原料とし、18重量%のグルコース水溶液をオートクレーブ滅菌(121℃、20min)した後、150mlをステンレス容器に注入し、これに市販の乾燥パン酵母(Saccharomyces cerevisiae、オリエンタル酵母工業製)1.5gを添加した。発酵は30℃(撹拌子の回転数;600rpm)で行い、培地中のグルコースが全て消費されるまで継続した。
得られた発酵液中の有機酸組成は、有機酸分析計(日立ハイテクノロジーズ製、L-7000シリーズ)を用いて、ブロムチモールブルー法により分析した。分離カラムは日立ゲルC-610HS、検出器にはUV-VIS検出器(日立ハイテクノロジーズ製、L-7420型)を用いた。
その結果を表2に示す。
有機酸類の組成は、発酵に使用する微生物の種類などによって異なる。
また、生産されるエタノール濃度を増加させるためには、発酵原料となる糖濃度を増加することが必要となるが、このような場合には、副産物である有機酸類の濃度もまた増加する。
Figure 0004048279
実施例2 シリカライト結晶粒子へのコハク酸の吸着挙動
コロイダルシリカ、水酸化ナトリウム、テトラプロピルアンモニウムブロマイドから水熱合成したシリカライトの粉末結晶0.5gとpHを1MのNaOH溶液で調整した0.3重量%のコハク酸水溶液5mlを密栓付L字型試験管に注入した。30℃で24時間振とう(50rpm)した後の、コハク酸濃度を測定し、その減少量からシリカライト粉末へのコハク酸吸着量を算出した。
その結果を図2に示す。コハク酸水溶液のpHの上昇にともなって、吸着量は急激に低下し、水溶液のpHを中性に調整するとほとんど吸着されなかった。
実施例3 シリカライト膜のエタノール分離性能に及ぼすコハク酸水溶液のpHの影響
エタノール選択性膜としては、ゼオライトの一種である、結晶構造にアルミナを全く含まない疎水性のシリカライト膜を用いた。この膜は、予め所定濃度に調製されたコロイダルシリカ、アルカリ金属水酸化物から成る水性ゲル混合物と結晶化調整剤の添加により多孔質焼結ステンレス基板上に水熱合成されたものを使用した。有効膜面積は、12.6cm2である。製膜方法の詳細は、既知の報告(Desalination, Vol. 144, p. 47-52, 2002)に従った。膜を介して一方側に、0.3重量%のコハク酸を含有する5重量%エタノール水溶液を供給した(30℃)。なお、この供給液を所定のpHに調整するために1MのNaOH溶液を用いた。
当該膜の反対側を減圧にした。膜を透過した蒸気は液体窒素を用いたコールドトラップにより凝縮し、濃縮エタノール液として回収した。膜を透過した回収液中のエタノール濃度の分析は、熱伝導度検出器付ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC-8A)、Thermon-1000充填カラム(Φ3mm×2m)により行った。
その結果を図3に示す。ここで、pH7の場合の測定値は、コハク酸を含有しないエタノール/水系での分離性能を示している。膜分離性能は、エタノール供給液のpHの低下に伴って低下し、pH3.2での膜透過エタノール濃度は25重量%、膜透過量は49g/m・hしかなかった。これらはpH7の場合の分離性能と比較すると、膜透過エタノール濃度で43ポイントの低下、膜透過量で10%まで減少した。
しかしながら、pH5〜7の範囲での膜透過エタノール濃度は、ほぼ一定であり、膜透過量もまた、pH6の場合に、pH7の場合の70%と高い割合を示した。
このように、コハク酸含量が同じエタノール水溶液を供給液として用いる場合であっても、そのpHを中性付近に調整することで、分離膜性能の低下を著しく軽減できることができた。
実施例4 シリコンゴムコーティングしたシリカライト膜のエタノール分離性能に及ぼすコハク酸水溶液のpHの影響
実施例3において用いたシリカライト膜の代わりに、シリコンゴムで膜表面をコーティングしたシリカライト膜を用いた以外は、実施例3と同様にして実験を行った。
ここで、シリコンゴムコーティングは以下のようにして行った。
シリコンゴム(信越化学製、高分子量型KE45)が7重量%となるようにヘキサンに均一に溶解した後、シリカライト膜の表面のみをコーティングするためにステンレス基盤側をセロファンテープで覆い、シリカライト膜を10秒間浸漬した。その後40℃で一晩乾燥した。
その結果を図4に示す。
膜分離性能は、エタノール供給液のpHの低下に伴って低下したものの、pH7の場合の分離性能と比較して、pH5での膜透過エタノール濃度の低下は認められず、膜透過量もまた85%と高い割合を示した。
実施例5 シリコンゴムコーティングしたシリカライト膜のエタノール分離性能に及ぼすコハク酸水溶液のpHの影響
実施例4においてコーティングに用いたシリコンゴム(信越化学製、高分子量型KE45)の代わりに、シリコンゴム(信越化学製、低分子量型KE108)を用いた以外は、実施例4と
同様にして実験を行った。
その結果を図5に示す。
膜分離性能は、エタノール供給液のpHの低下に伴って低下したものの、pH7の場合の分離性能と比較して、pH5での膜透過エタノール濃度の低下は認められず、膜透過量もまた86%と高い割合を示した。
実施例6 シリコンゴムコーティングしたシリカライト膜のエタノール分離性能に及ぼすコハク酸水溶液のpHの影響
実施例5と同様にしてコーティングしたシリカライト膜に、さらに実施例4と同様にしてシリコンゴム(信越化学製、高分子量型KE45)コーティングしたシリカライト膜を用いた以外は、実施例4と同様にして実験を行った。
その結果を図6に示す。
エタノール供給液がpH5以上の場合には、エタノール/水系での膜分離性能(図6中では、pH7の性能として表示)と比較して、その低下はほとんど認められなかった。pH4においても、pH7の場合の分離性能と比較して、膜透過エタノール濃度の低下は認められず、膜透過量もまた70%以上の高い割合を示した。
本発明を実施するためのシステム構成を示す図である。 シリカライト結晶粒子へのコハク酸の吸着挙動を示す図である。 シリカライト膜のエタノール分離性能に及ぼすコハク酸水溶液のpHの影響を示す図である。 シリコンゴムコーティングしたシリカライト膜のエタノール分離性能に及ぼすコハク酸水溶液のpHの影響を示す図である。 シリコンゴムコーティングしたシリカライト膜のエタノール分離性能に及ぼすコハク酸水溶液のpHの影響を示す図である。 シリコンゴムコーティングしたシリカライト膜のエタノール分離性能に及ぼすコハク酸水溶液のpHの影響を示す図である。 各種有機酸のpHに応じて変化する解離状態を示す図である。
符号の説明
1 エタノール発酵槽
2 発酵原料供給槽
3 送液ポンプ
4 空気供給装置
5 微生物菌体ろ過装置
6 送液ポンプ
7 pH調整液供給槽
8 送液ポンプ
9 浸透気化分離装置
10 冷却器
11 生成物回収容器
12 真空ポンプ
13 送液ポンプ
14 流路切り替えバルブ
15 排出用バルブ

Claims (5)

  1. エタノール発酵により得られる発酵生成物からエタノールを分離精製するシステムにおいて、エタノール発酵液のpHをpH5以上中性までの範囲に調整するpH調整工程、エタノール選択的疎水性浸透気化膜であるシリカライト膜による分離工程及びエタノール回収工程からなることを特徴とするエタノールを分離精製するシステム。
  2. 前記pH調整工程において、エタノール発酵液のpHを、pH6以上中性までの範囲に調整するものであることを特徴とする請求項1に記載のエタノールを分離するシステム。
  3. 前記エタノール選択的疎水性浸透気化膜であるシリカライト膜による分離工程が、エタノール発酵液をシリカライト膜と大気圧下で接触させ、膜の反対側を減圧に保った状態で、エタノール及び水を気体状の混合物として取り出すことを特徴とする請求項1又は2記載のエタノールを分離するシステム。
  4. 前記pH調整工程の前に微生物菌体ろ過工程が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のエタノールを分離精製するシステム。
  5. 前記エタノール発酵により得られる発酵生成物からエタノールを分離精製するシステムの前にエタノール発酵工程が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエタノールを分離精製するシステム。
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