JP3755035B2 - エタノール分離膜、エタノール分離膜を有するエタノール製造装置及びエタノール分離膜を用いるエタノール製造方法 - Google Patents

エタノール分離膜、エタノール分離膜を有するエタノール製造装置及びエタノール分離膜を用いるエタノール製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エタノール分離膜、エタノール分離膜を有するエタノール製造装置及びエタノール分離膜を用いるエタノール製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまでの化石燃料に依存するエネルギー生産体系は、地球上での炭酸ガスをはじめとした温室効果ガスの増加をもたらし続けている。一方、我が国のみならず地球上には植物など未利用な生物系有機資源であるバイオマスが豊富に存在し、毎年蓄積され続けている。植物は炭酸ガスを吸収することから、バイオマスをエネルギー資源として活用することは、地球上で炭素循環のバランスがとれ、化石資源の使用量を削減できるために、その結果として温室効果ガスを削減可能となることから様々な開発が積極的に進められている。
【0003】
バイオマスから得られるエネルギー資源としては、メタンガス、水素ガス、エタノール、ブタノール等がある。これらの中で、常温・常圧下での酵母などの微生物による発酵反応により生産できるエタノールは、燃焼に伴う排出ガス中の有害物質の量がガソリンと比較して少ない等、石油代替液体燃料として特に重要視されている。
しかしながら、発酵法で生産されるエタノールの濃度は、15%程度と希薄であることから、液体燃料として利用するためには濃縮する工程が不可欠となる。このための技術としては、蒸留法を用いることが一般的である。
さらに、希薄な発酵エタノールを蒸留法で濃縮する前には、発酵液中から酵母菌体を除去する固液分離の工程が必要であり、しかも蒸留工程は、生産されるエタノールの約半分のエネルギーを消費すると言われるほどのエネルギー多消費型のプロセスである。したがって、生産コスト的な競争力が石油と比較して非常に乏しく、バイオマスエタノールの実用化が進んでいない。
【0004】
一方、蒸留法に代わる技術として分離膜を用いる発酵エタノールの濃縮法がある。その原理は、次の通りである。特定の物質に対して選択性を有する分離膜を介して一方に液体混合物を供給し、反対(透過)側のみを減圧にすることによって、膜内を透過してきた液体の蒸気化を容易にして、その蒸気を冷却、液化して取り出す方法である。透過側を減圧にする代わりに、不活性ガスで透過側の膜面から蒸発する蒸気を掃引して冷却器へ導き、透過蒸気のみを液化することも可能である。この方法は、浸透気化分離法と呼ばれる技術である。
【0005】
浸透気化分離法では、浸透気化膜を設置した浸透気化装置内の供給側に、発酵で得られるアルコール水溶液(5〜15重量%)を、熱交換操作を行って、加熱後に供給する。加熱温度はアルコールの種類により決定される。膜を浸透気化されたアルコールは膜の透過側の凝縮器を介して液化されて取り出される。透過側はポンプにより減圧或いは真空に保たれている。このような操作が一般的である(特開平8−252434、特開平8−252435)。
【0006】
従来からアルコール分離膜では、浸透気化膜が知られている。
浸透気化分離膜の素材は、非多孔性の高分子化合物の膜を用いるもの、例えば、ポリオレフイン(特開平8−252434号公報)、シリコンゴム膜(特開昭57−136905号公報、野村ら、化学工学協会第16秋季大会研究発表講演要旨集、p.540(1982))、ポリトリメチルシリルプロパン膜(特開昭60−67306号公報)、ポリ尿素又はポリアミド膜(特開平5−245345号公報)、パーフッ素化オレフイン膜(特公表2−502634号公報)などを用いるものが知られている。これらの膜を用いる場合には、発酵法により得られたるエタノールは、その濃度が20%〜30%程度までの濃度にしか濃縮されず、効果的なものとなっていない。これらの膜を用いる場合も、いずれも反応槽から反応生成物を取り出した後に、生成液を膜中を透過させて濃縮を行うものである(特開平8−252434、特開平8−252435)。
【0007】
希薄な発酵エタノールを、A型ゼオライト等のような多孔性の水選択的透過性膜を用いて脱水し、濃縮エタノールを生産することも可能である。しかしながら、この方法では、発酵液中に溶解している有機酸類、発酵原料等の共存物質もまた濃縮されてしまうだけでなく、エタノール濃度が高くなることにより発酵反応を司る酵母の活性が著しく低下してしまう欠点がある。
したがって、疎水性の膜を用いた浸透気化分離法により、発酵液からエタノールを優先的に透過させ、濃縮する方法を用いることが、研究されている。
【0008】
ゼオライトの一種である、結晶構造にアルミナを含まない、シリカライトは、非常に高い疎水性を有しており、多孔性物質である。水とエタノールでは、後者の方が、疎水性が高いことから、シリカライトはエタノールに対して親和性が高いと考えられる。
したがって、シリカライト膜を用いることで希薄なエタノール液を高濃度に濃縮して、回収することが可能であると、本発明者らは考えた。しかしながら、このシリカライト膜を用いて実際に浸透浸透気化分離法により発酵エタノールの濃縮を継続した場合、回収される濃縮エタノール濃度が経時的に低下してしまうという問題点があることが判った(Biotechnology Techniques Vol11.No12 p921−924、Biotechnology letters 21:1037−1041)。 この経時的な変化を起こすことを防止することができれば、反応の進行とともに生成されるエタノールを生成液として取り出すことなく、エタノールを濃縮分離することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、でんぷん等の糖質を原料としてエタノール発酵させて得られるエタノール含有反応生成物の新規な分離膜、この新規な分離膜を利用したアルコール製造装置及びこの新規な分離膜を利用したアルコール製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来の浸透気化分離法においてシリカライト膜を用いて濃縮操作を行うと濃縮操作を効率よく行うことができるものの、アルコール濃縮が進行するにしたがって、濃縮度合が低減すること、そこで、シリカライト膜を用いた浸透気化分離法による発酵エタノールの濃縮において、発酵液中の共存物質がその膜分離性能に及ぼす影響について種々検討した結果、シリカライト膜の表面を疎水性素材により改質して使用すると、培地中に蓄積される発酵の副産物である有機酸類による、疎水性であるシリカライト膜の親水化を回避することができるのである。その結果、エタノール選択性の低下を防ぐことが可能であることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至ったものである。
【0011】
すなわち、以下の発明が提供される。
(1)シリカライト結晶からなる多孔性物質分離膜の表面をシリコンゴムコーティングしたシリカライト分離膜からなることを特徴とするエタノール分離膜。
(2)糖質を原料として発酵法によりエタノールを製造する発酵槽、発酵槽から得られるエタノールを含有する発酵生成物から濃縮エタノールを分離するためのエタノール分離膜を有するエタノール分離装置、エタノール分離装置からのエタノール濃縮物を取り出す装置、及びエタノール分離装置のエタノール分離膜を透過しない処理物を発酵槽に戻すための装置からなるエタノール製造装置において、エタノール分離装置に(1)記載のエタノール分離膜を用いることを特徴とするエタノール製造装置。
(3)糖質を原料として発酵法によりエタノールを製造する工程から得られるエタノールを含有する発酵生成物を、エタノール分離膜により濃縮して高濃度エタノールとして分離し、エタノール分離膜を透過しない未処理物をエタノールを製造する工程に戻して、エタノールを製造する方法において、エタノール分離膜が(1)記載のエタノール分離膜であることを特徴とするエタノール製造方法。
【0012】
【発明実施の形態】
本発明のエタノール発酵の原料には、糖質、具体的には、グルコース、マルトース、シュークロース等の単糖類、二糖類や多糖類が用いられる。これらはセルロース、デンプン等を予め加水分解して、得られる生成物でも利用することもできる。
反応には培地が用いられる。培地には、前記糖類、例えばグルコースが、特定量含有させたものが用いられる。一般的には10〜30重量%含有した水溶液が用いられる。
発酵を進行させるために酵母が用いられる。そして、例えば酵母エキス、ペプトン、リン酸カリウム、硫酸マグネシウムが添加される。
これらの培地は加圧蒸気滅菌してから発酵に用いられる。
【0013】
エタノールの製造工程においては、前記培地を用いて、発酵が行われる。滅菌した培地を注入した後、酵母を添加して発酵させる。あるいは、この部分において予め酵母を増殖させた後、発酵させる。この際、培地1ml中に10個オーダーの酵母細胞数であることが望ましい。発酵によりエタノールを生産する酵母は多くの種類があり、いずれも用いることができるが、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces ubarumを用いることが一般的である。このほか細菌なども、用いることができる。
また、発酵反応は、25〜35℃の範囲で行うのが好ましく、もっとも好ましい温度は30℃付近である。
【0014】
図6により、説明する.
発酵槽(1)からなる発酵工程から得られる反応生成物を取り出して、エタノール選択性分離膜を有するエタノール濃縮装置(2)によりエタノール濃縮処理を行う。
エタノール選択性分離膜によりエタノール濃縮装置は二分され、一方が発酵工程から得られる反応生成物が液体で供給される。この部分には大気圧状態で供給される。エタノール選択性分離膜により二分されたもう一方の部分は、液体で供給される部分に対して圧力差を有しており、濃縮部分の圧力は低く保たれ,その圧力差を大きくすることが有効である。濃縮部分の圧力は、大気圧以下、具体的には減圧下に400トール以下、更には20トール以下、更に好ましくは、10トール以下の真空に保たれることが有効である。
このようにして、分離膜を介して圧力差が存在するようにすると、分離が行われる。
分離膜を透過させたアルコールを含有する物質は液体、或いはガス状で取り出すことができるが、前記のように低圧に保つようにしてガス状にして取り出すこと、具体的には膜を透過させる物質の蒸気圧より低い圧力にすることが分離効率及び透過率のうえで有効である。具体的には,真空に保って減圧にする、或いは不活性ガスを流して低蒸気圧にすることが有効である。
発酵により得られる生成物中には、エタノールの他に副生成物や菌体などが含まれており、これらがエタノール選択性分離膜の利用に邪魔になるときには、これらを除去することが行われる。これらの処理には、ろ過膜や精密ろ過膜が用いられる。どの膜を選択するかは、除去しようとする対象物に応じて選択される。
【0015】
本発明では、エタノール水溶液の濃縮に際しては、エタノール選択性分離膜が用いられる。エタノール選択性分離膜の浸透気化膜として、シリコンゴムをコーティングしたシリカライト膜が用いられる。
シリカライト膜は、多孔質焼結ステンレス基板上にシリカライトを固定した膜である。シリカライト膜は水熱合成法により製造される。
初めに、コロイダルシリカ、アルカリ金属源としてアルカリ金属水酸化物及び水を均一に混合して、水性ゲル混合物を調製する。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等を挙げることができる。
シリカ1モルに対して、水は30〜1000モル、好ましくは50〜250モルの割合である。コロイダルシリカとアルカリ金属の割合は、シリカ1モルに対して、アルカリ金属水酸化物0.01〜0.3モル、好ましくは、0.1〜0.15モルである。
水性ゲル混合物には、結晶化調整剤が添加される。結晶化調整剤には、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等が用いられる。結晶化調整剤の使用量は、シリカ1モルに対して0.001〜0.1モル、好ましくは、0.002〜0.01モルである。
このようにして得られた水性ゲル混合物を、予めシリカライトが塗布されている担体に接触させる。水性ゲル混合物が乱流を生じさせないようにして加熱する。加熱温度は80〜250℃、好ましくは、120〜200℃である。
シリカライト膜を形成する方法としては、シリカライト膜の合成を一回の水熱合成により形成する方法、二回の水熱合成反応でシリカライト膜の形成を行う二段階法、及び種結晶ペーストを用いる方法がある。
【0016】
一回の水熱合成反応によりシリカライト膜を形成する方法は、一回の膜形成によりシリカライト膜を作成するものである。具体的な条件は、以下の通りである。
テトラプロピルアンモニウムブロマイド/SiO=0.1、
NaOH/SiO=0.1、
O/SiO=60〜90の値である。
得られた膜を流水で洗浄し、100℃の温度で一昼夜乾燥させる。テンプレートを焼失させるために空気中で300〜400℃、20〜60時間処理を行う。
【0017】
二回の水熱合成でシリカライト膜を形成する二段階方法は、一段階目で形成されるシリカライト膜を形成するためにシリカ含有量が多い反応液を用いて結晶の生成を行い、次にシリカ含有量の少ない反応液を用いて170℃程度の温度で水熱合成反応を行い、膜の合成を行うものである。テトラプロピルアンモニウムブロマイド、コロイダルシリカ、カ性ソーダの濃度は前記と同じであり、HO/SiO=60というシリカ含有量が多い状態で行い、次をHO/SiO=90以上という含有量が少ない状態で行う。HO/SiO=500で、96時間程度をかけると良好な結果が得られる。
【0018】
種結晶ペーストを用いる方法は、シリカライトの種結晶(粒径約1μm)を、すり込ませた基板を用いて水熱合成を行うものである。HO/SiO=300から700程度の値とすることが望ましい。NaOH/SiO=10であり、テトラプロピルアンモニウムブロマイド/SiO=0.10で、水熱合成温度が170℃程度で良好な結果が得られる。
【0019】
基板としてガスや液体を通しやすい多孔質体を用いることにより、ガスや液体の分離膜として使用することができる。孔径が1μm以上であり、通常では、2〜40μmの範囲にある。粒子界面を有しない一体形状の膜状に結晶成長したシリカライトにより形成された膜となる。
【0020】
このようにして得られるシリカライト膜の表面をシリコンゴムによりコーティングする。シリコンゴムには、ジメチルシリコン系ゴム、メチルビニルシリコン系ゴム、メチルフエニルシリコン系ゴム、フロロシリコン系ゴムなどを挙げることができる。これらは触媒を用いて架橋して、或いは熱を与えて架橋して用いる。熱により架橋して用いる方が良好な結果が得られる。
シリコンゴムによりコーティングするには、シリカライト膜をシリコンゴムの溶液に浸漬することにより行われる。シリコンゴムは溶剤に溶かしたものが用いられることが一般的である。溶剤には、無極性溶媒、例えば、n―ヘキサン、シクロヘキサンなどが用いられる。シリコンゴムの濃度はシリコンの分子量などに応じて適宜濃度が調整される。一般的な濃度は、0.1〜10%、好ましくは1.0〜5.0%濃度のものが用いられる。
このようにして得られるシリコンゴムによりコーティングされたシリカライト膜の状態を観察したところ、以下のような相違が見られた。図5は、シリカライト膜の未処理のもの、シリコンゴムにより表面処理を行ったシリカライト膜の表面写真である。この写真によれば、シリコンゴムにその表面をコーティングすることにより変化し,又孔の部分の大きさが小さく変化している様子がわかる。
【0021】
このようにして得られたシリカライト膜の表面をシリコンゴムによりコーティングされた膜を反応槽内の反応部分と反応生成物の回収部分の間に設置する。この膜は支持体に取り付けられて固定される。
【0022】
エタノール製造工程では、酵母の添加と同時に培地中にエタノールが蓄積され始める。その濃度が3重量%程度に到達した時点で取り出してエタノール濃縮装置に供給する。そして、エタノールの浸透気化分離を開始することが望ましい。すなわち、膜の透過側を減圧となるようにして、膜を透過した蒸気はコールドトラップにより液体として回収することができる。
以上のようにして、濃縮操作を行うことにより濃縮エタノールを取り出す。使用するシリカライト膜の性能に依存するが、一般に10重量%以下のエタノールを含む発酵液から50〜70重量%に濃縮されたエタノールを安定して生産することができる。
【0023】
取り出されたエタノール濃縮液は,更に濃縮操作を施すこともできるが,そのまま製品として使用することもできる。また、分離膜を透過しなかった未処理の液体は取り出して、反応工程に戻す。
【0024】
【実施例】
次に実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0025】
実施例1 シリコンゴムコーティングしたシリカライト膜の作製
シリカライト膜は、既報に従い、水熱合成法により多孔質焼結ステンレス基板上に作製した。次いで、ヘキサン溶媒に対してシリコンゴム(信越化学製、高分子量型KE45)を5重量%あるいはシリコンゴム(信越化学製、低分子量KE108)を3重量%となるように均一に溶解した後、シリカライト膜の表面のみをコーティングするためにステンレス基板側をセロファンテープで覆い、シリカライト膜を10秒間浸漬した。その後2日間風乾(室温)した。本シリカライト膜のエタノール水溶液を用いた分離性能を表−1に示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003755035
【0027】
実施例2 発酵法により得られたエタノールの浸透気化分離
反応槽において、発酵原料としてグルコースを含む培地を配置し、これに市販の乾燥パン酵母(Saccharomyces cerevisiae、オリエンタル酵母工業製)を添加した。発酵は30℃(撹拌子の回転数;600rpm)で行い、発酵開始12時間経過後より、得られた反応生成物を取り出し、前記実施例1で作製した膜(高分子量KE45,5重量%コーティング)を用いて反応生成物のエタノール濃縮を行った。反応生成物を供給する膜と反対側の濃縮エタノ−ルを取り出す部分の圧力を、10トール程度に減圧にして透過したエタノールを含む蒸気を液体窒素を用いたコールドトラップにより回収した。このコールドトラップは定期的に取り替えた。
培地中のグルコース、エタノール濃度は、高速液体クロマトグラフィー(日本分光製、880-PU)、示差屈折計検出器(日本分光製、RID-300)、ポリスフェアOA KCカラム(Cica-MERCK製)により経時的に分析した。
また、膜を透過した回収液中のエタノール濃度の分析は、熱伝導度検出器付ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC-8A)、Thermon-1000充填カラム(3.0 mm×2 m)により経時的に行った。
グルコース濃度を20重量%に調製した培地150mlに乾燥パン酵母1.5gを添加した発酵において、浸透気化分離法により回収されたエタノール濃度の経時変化を図−1に示す。濃縮エタノールの最大濃度は70.2重量%であり、培地中のグルコースが全て消費された発酵終了時には63.4重量%であった。全回収物中のエタノール濃度は、67.4重量%であった。結果を図1に示した。
【0028】
実施例3
ヘキサン溶媒に対してシリコンゴム(信越化学製、低分子量型KE108)を3重量%となるように均一に溶解した後、シリカライト膜の表面のみをコーティングするためにステンレス基板側をセロファンテープで覆い、シリカライト膜を10秒間浸漬した。その後2日間風乾(室温)した。本シリカライト膜のエタノール水溶液を用いた分離性能を、前記表−1に示す。
実施例2において用いたシリコンゴムによりコーティングしたシリカライト膜の代わりに、シリコンゴム(信越化学製、低分子量型KE108)でコーティングしたシリカライト膜を用いた以外は、実施例2と同様にして実験を行った。その結果、図−2に示すように、得られた濃縮エタノールの最大濃度は、59.3重量%であり、発酵終了時には50.2重量%であった。全回収物中のエタノール濃度は、55.4重量%であった。
【0029】
実施例4
シリコンゴムコーティングしたシリカライト膜を発酵エタノールの濃縮に繰り返し使用するために、実施例2の実験後、膜表面を蒸留水のみで洗浄した後、エタノール水溶液を用いて、分離性能が発酵前と同等であることを確認した。次に、実施例2と同様に繰り返し実験を行った。その結果、図−3に示すように、得られた濃縮エタノールの最大濃度は、71.3重量%であり、発酵終了時には68.3重量%であった。全回収物中のエタノール濃度は、69.7重量%であった。
【0030】
比較例
実施例2において、シリコンゴムコーティングしていないシリカライト膜を用いた以外は、実施例2と同様にして実験を行った。その結果、図−4に示すように、得られた濃縮エタノールの最大濃度は、40.2重量%であり、発酵終了時には24.3重量%と、15ポイント以上低下した。全回収物中のエタノール濃度は、29.7重量%であった。
【0031】
【発明の効果】
糖質等の原料をエタノール発酵させて得られるエタノール含有反応生成物を濃縮分離する際に、シリカライト膜の表面を疎水性素材であるシリコンゴムによりコーティングして使用すると、培地中に蓄積される発酵の副産物である有機酸類による疎水性であるシリカライト膜の親水化を回避でき、エタノール選択性の低下を防ぐことが可能となり、エタノール濃縮を継続して行うことができる。この膜を用いて、連続してエタノールを濃縮することができるアルコール製造装置及びこの新規な分離膜を利用したアルコール製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2において、分離膜としてシリコンゴム(信越化学製、高分子量型KE45)でコーティングしたシリカライト膜を用いて回収された発酵エタノール濃度の経時変化
【図2】実施例3において、分離膜としてシリコンゴム(信越化学製、低分子量型KE108)でコーティングしたシリカライト膜を用いて回収された発酵エタノール濃度の経時変化
【図3】実施例4において、分離膜としてシリコンゴム(信越化学製、高分子量型KE45)でコーティングしたシリカライト膜を用いて回収された発酵エタノール濃度の経時変化
【図4】比較例において、分離膜としてシリコンゴム未コーティングのシリカライト膜を用いて回収された発酵エタノール濃度の経時変化
【図5】シリカライト膜及びシリコンゴムによりコーティング処理したシリカライト膜の状態を示す図
【図6】本発明の装置を示す図

Claims (3)

  1. シリカライト結晶からなる多孔性物質分離膜の表面をシリコンゴムコーティングしたシリカライト分離膜からなることを特徴とするエタノール分離膜。
  2. 糖質を原料として発酵法によりエタノールを製造する発酵槽、発酵槽から得られるエタノールを含有する発酵生成物から濃縮エタノールを分離するためのエタノール分離膜を有するエタノール分離装置、エタノール分離装置からのエタノール濃縮物を取り出す装置、及びエタノール分離装置のエタノール分離膜を透過しない処理物を発酵槽に戻すための装置からなるエタノール製造装置において、エタノール分離装置に請求項1記載のエタノール分離膜を用いることを特徴とするエタノール製造装置。
  3. 糖質を原料として発酵法によりエタノールを製造する工程から得られるエタノールを含有する発酵生成物を、エタノール分離膜により濃縮して高濃度エタノールとして分離し、エタノール分離膜を透過しない未処理物をエタノールを製造する工程に戻して、エタノールを製造する方法において、エタノール分離膜が請求項1記載のエタノール分離膜であることを特徴とするエタノール製造方法。」
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