JP3981724B2 - シリコンゴムコーティングしたシリカライト膜を用いた浸透気化法による発酵法高濃度エタノールの製造方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンゴムコーティングしたシリカライト膜を用いた浸透気化法による発酵法高濃度エタノールの製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまでの化石燃料に依存するエネルギー生産体系は、地球上での炭酸ガスをはじめとした温室効果ガスの増加をもたらし続けている。一方、我が国のみならず地球上には植物など未利用な生物系有機資源であるバイオマスが豊富に存在し、毎年蓄積され続けている。植物は炭酸ガスを吸収することから、バイオマスをエネルギー資源として活用することは、地球上で炭素循環のバランスがとれ、化石資源の使用量を削減できるために、その結果として温室効果ガスを削減可能となることから様々な開発が積極的に進められている。
【0003】
バイオマスから得られるエネルギー資源としては、メタンガス、水素ガス、エタノール、ブタノール等がある。これらの中で、常温・常圧下での酵母などの微生物による発酵反応により生産できるエタノールは、燃焼に伴う排出ガス中の有害物質の量がガソリンと比較して少ない等、石油代替液体燃料として特に重要視されている。
しかしながら、発酵法で生産されるエタノールの濃度は、15%程度と希薄であることから、液体燃料として利用するためには濃縮する工程が不可欠となる。このための技術としては、蒸留法を用いることが一般的である。
さらに、希薄な発酵エタノールを蒸留法で濃縮する前には、発酵液中から酵母菌体を除去する固液分離の工程が必要であり、しかも蒸留工程は、生産されるエタノールの約半分のエネルギーを消費すると言われるほどのエネルギー多消費型のプロセスである。したがって、生産コスト的な競争力が石油と比較して非常に乏しく、バイオマスエタノールの実用化が進んでいない。
【0004】
一方、蒸留法に代わる技術として分離膜を用いる発酵エタノールの濃縮法がある。その原理は、次の通りである。特定の物質に対して選択性を有する分離膜を介して一方に液体混合物を供給し、反対(透過)側のみを減圧にすることによって、膜内を透過してきた液体の蒸気化を容易にして、その蒸気を冷却、液化して取り出す方法である。透過側を減圧にする代わりに、不活性ガスで透過側の膜面から蒸発する蒸気を掃引して冷却器へ導き、透過蒸気のみを液化することも可能である。この方法は、浸透気化分離法と呼ばれる技術である。
【0005】
浸透気化分離法では、浸透気化膜を設置した浸透気化装置内の供給側に、発酵で得られるアルコール水溶液(5〜15重量%)を、熱交換操作を行って、加熱後に供給する。加熱温度はアルコールの種類により決定される。膜を浸透気化されたアルコールは膜の透過側の凝縮器を介して液化されて取り出される。透過側はポンプにより減圧或いは真空に保たれている。このような操作が一般的である(特開平8−252434、特開平8−252435)。
しかしながら、このような操作では反応器から生成物を取り出した後に、新たに設置されている浸透気化装置内に特定の条件で導いて処理を行うので、装置構成上から見ると合理的ではない。反応槽で得られる反応生成物をとりだすことなく、得られる生成物をアルコール選択性分離膜で濃縮することができることが望ましい。
【0006】
従来からアルコール分離膜では、逆浸透膜、中空糸膜、浸透気化膜等の分離膜が知られている。
浸透気化分離膜の素材は、非多孔性の高分子化合物の膜を用いるもの、例えば、ポリオレフイン(特開平8−252434号公報)、シリコンゴム膜(特開昭57−136905号公報、野村ら、化学工学協会第16秋季大会研究発表講演要旨集、p.540(1982))、ポリ(トリメチルシリルプロパン膜(特開昭60−67306号公報)、ポリ尿素又はポリアミド膜(特開平5−245345号公報)、パーフッ素化オレフイン膜(特公表2−502634号公報)などを用いるものが知られている。これらの膜を用いる場合には、発酵法により得られたるエタノールは、その濃度が20%〜30%程度までの濃度にしか濃縮されず、効果的なものとなっていない。これらの膜を用いる場合も、いずれも反応槽から反応生成物を取り出した後に,生成液を膜中を透過させて濃縮を行うものである(特開平8−252434、特開平8−252435)。
【0007】
希薄な発酵エタノールを、A型ゼオライト等のような多孔性の水選択的透過性膜を用いて脱水し、濃縮エタノールを生産することも可能である。しかしながら、この方法では、発酵液中に溶解している有機酸類、発酵原料等の共存物質もまた濃縮されてしまうだけでなく、エタノール濃度が高くなることにより発酵反応を司る酵母の活性が著しく低下してしまう欠点がある。
したがって、疎水性の膜を用いた浸透気化分離法により、発酵液からエタノールを優先的に透過させ、濃縮する方法を用いることの方が、発酵反応との組み合わせを考えた場合には有利であると考えられる。このような装置の開発が望まれる。
【0008】
ゼオライトの一種である、結晶構造にアルミナを含まない、シリカライトは、非常に高い疎水性を有しており、多孔性物質である。水とエタノールでは、後者の方が、疎水性が高いことから、シリカライトはエタノールに対して親和性が高いと考えられる。
したがって、シリカライト膜を用いることで希薄なエタノール液を高濃度に濃縮して、回収することが可能であると、本発明者らは考えた。しかしながら、このシリカライト膜を用いて実際に浸透浸透気化分離法により発酵エタノールの濃縮を継続した場合、回収される濃縮エタノール濃度が経時的に低下してしまうという問題点があることが判った(Biotechnology Techniques Vol11.No12 p921−924、Biotechnology letters 21:1037−1041)。この経時的な変化を起こすことを防止することができれば,反応の進行とともに生成されるエタノールを生成液をとして取り出すことなく、エタノールを濃縮分離することができる。特に、発酵法によるエタノールを製造する場合には,回収のためのエネルギーを省くことができ、その工業的価値はきわめて高いものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、エタノール発酵させて得られるエタノール溶液を、回収することなく、特定なエタノール選択性分離膜中を透過させてエタノールの濃縮部分に導くことによる、高濃度エタノール溶液を製造する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、糖質を原料として発酵によりエタノールを製造する発酵槽を、特定なエタノール選択性分離膜を介して、一方を供給する糖質の発酵によるエタノールの製造部分とし、他の一方をエタノールの濃縮部分に分け、エタノール製造部分で得られるエタノール溶液を、エタノール選択性分離膜中を透過させてエタノールの濃縮部分に導くことにより、高濃度エタノールの製造することができることを見出して、本発明を完成させたものである。
【0011】
エタノール発酵では、理論上、発酵原料であるグルコース1モルからエタノールと炭酸ガスが各々2モル生成するが、実際には、コハク酸やリンゴ酸等の有機酸類も副生する。
【0012】
本発明者らは、シリカライト膜を用いた浸透気化分離法による発酵エタノールの濃縮において、発酵液中の共存物質がその膜分離性能に及ぼす影響について種々検討した結果、培地中に蓄積される発酵の副産物である有機酸類によって、疎水性であるシリカライト膜が親水化されることによりエタノール選択性の低下が惹起されることから、シリカライト膜の表面を疎水性素材により改質して使用すると、エタノール選択性の低下を防ぐことが可能であることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0013】
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
(1)糖質を原料としてエタノール発酵によりエタノールを製造する発酵槽を、表面をシリコンゴムコーティングしたシリカライト膜からなるエタノール選択性分離膜を介して、一方を供給する糖質の発酵によるエタノールの製造部分とし、他の一方をエタノールの濃縮部分に分け、エタノール製造部分で得られるエタノール溶液を、該エタノール選択性分離膜中を透過させてエタノールの濃縮部分に導くことを特徴とする高濃度エタノールの製造方法。
(2)エタノールの製造部分に比べて、エタノール濃縮部分の圧力が低い状態に保たれていることを特徴とする(1)記載の高濃度エタノールの製造方法。
(3)エタノール選択性分離膜を透過させるエタノールが気体状で取り出される、浸透気化法によることを特徴とする(1)又は(2)記載の高濃度エタノールの製造方法。
(4)糖質を原料として発酵によりエタノールを製造する発酵槽において、表面をシリコンゴムコーティングしたシリカライト膜からなるエタノール選択性分離膜を介して、一方を供給する糖質の発酵によるエタノールの製造部分とし、他の一方をエタノールの濃縮部分としたことを特徴とする高濃度エタノール製造装置。
(5)エタノールの製造部分に比べて、エタノール濃縮部分の圧力が低い状態に保たれていることを特徴とする(4)記載の高濃度エタノールの製造装置。
(6)エタノール分離膜を透過させるエタノールが気体状で取り出される、浸透気化膜を用いることを特徴とする(4)又は(5)記載の高濃度エタノール製造装置。
【0014】
【発明実施の形態】
本発明のエタノール発酵の発酵原料には、糖質、具体的には、グルコース、マルトース、シュークロース等の単糖類、二糖類や多糖類が用いられる。これらはセルロース、デンプン等を予め加水分解して、得られる生成物でも利用することもできる。
発酵反応には培地が用いられる。培地には、前記糖質、例えばグルコースが、特定量含有させたものが用いられる。一般的には10〜30重量%含有した水溶液が用いられる。
発酵を進行させるために酵母が用いられる。そして、例えば酵母エキス、ペプトン、リン酸カリウム、硫酸マグネシウムが添加される。
これらの培地は加圧蒸気滅菌してから発酵に用いられる。
【0015】
図6を用いて本発明の説明を行う。発酵槽(1)を、上記エタノール選択性分離膜(2)を介して、一方を、発酵によりエタノールの製造部分(3)とし、他の一方をエタノールの濃縮部分(4)に分ける。
エタノールの製造部分においては、前記培地を用いて、発酵が行われる。滅菌した培地を注入した後、酵母を添加して発酵させる。あるいは、この部分において予め酵母を増殖させた後、発酵させる。この際、培地1ml中に108個オーダーの酵母細胞数であることが望ましい。発酵によりエタノールを生産する酵母は多くの種類があり、いずれも用いることができるが、Saccharomyces cerevisiae 、Saccharomyces ubarumを用いることが一般的である。このほか細菌なども、用いることができる。
また、発酵反応は、25〜35℃の範囲で行うのが好ましく、もっとも好ましい温度は30℃付近である。
発酵反応は大気圧下で行う。エタノール回収部分は、減圧の状態にして圧力差を生じるようにする。エタノール回収部分の圧力は、減圧下、例えば、400トール以下,更には20トール、更に好ましくは10トール以下の真空に保つことが、膜分離によるアルコールを取り出す上で有効である。
発酵により得られる生成物中には,エタノールの他に副生成物や菌体などが含まれており、これらが上記エタノール選択性分離膜の利用に邪魔になるときには、これらを除去することが行われる。これらの処理には、ろ過膜や精密ろ過膜が用いられる。どの膜を選択するかは、除去しようとする対象物に応じて選択される。
【0016】
エタノールの濃縮を行う部分は、発酵反応を行った部分に対して膜を介して設けられている管状体の部分が利用される。管状体は内部の圧力を減圧若しくは真空に保つ機構を有している。分離膜を透過させたアルコールを含有する物質は液体,或いはガス状で取り出すことができるが、前記のように低圧に保つようにしてガス状にして取り出すこと、具体的には膜を透過させる物質の蒸気圧より低い圧力にすることが分離効率及び透過率のうえで有効である。具体的には、真空に保って減圧にする、或いは不活性ガスを流して低蒸気圧にすることが行われる。
【0017】
本発明では、エタノール水溶液の濃縮に際しては、エタノール選択性分離膜として、シリコンゴムをコーティングしたシリカライト膜が用いられる。
シリカライト膜は、多孔質焼結ステンレス基板上にシリカライトを固定した膜である。シリカライト膜は水熱合成法により製造される。
初めに、コロイダルシリカ、アルカリ金属源としてアルカリ金属水酸化物及び水を均一に混合して、水性ゲル混合物を調製する。
アルカリ金属水酸化物としては,水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等を挙げることができる。
シリカ1モルに対して、水は30〜1000モル、好ましくは50〜250モルの割合である。コロイダルシリカとアルカリ金属の割合は、シリカ1モルに対して、アルカリ金属水酸化物0.01〜0.3モル、好ましくは、0.1〜0.15モルである。
水性ゲル混合物には、結晶化調整剤が添加される。結晶化調整剤には、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等が用いられる。結晶化調整剤の使用量は、シリカ1モルに対して0.001〜0.1モル、好ましくは、0.002〜0.01モルである。
このようにして得られた水性ゲル混合物を、予めシリカが塗布されている担体に接触させる。水性ゲル混合物が乱流を生じさせないようにして加熱する。加熱温度は80〜250℃、好ましくは、120〜200℃である。
シリカ膜を形成する方法としては、シリカライト膜の合成を一回の水熱合成により形成する方法、二回の水熱合成反応でシリカライト膜の形成を行う二段階法、及び種結晶ペーストを用いる方法がある。
【0018】
一回の水熱合成反応によりシリカ膜を形成する方法は、一回の膜形成によりシリカライト膜を作成するものである。具体的な条件は、以下の通りである。
テトラプロピルアンモニウムブロマイド/SiO2=0.1、
NaOH/SiO2=0.1、
H2O/SiO2=60〜90の値である。
得られた膜を流水で洗浄し、100℃の温度で一昼夜乾燥させる。テンプレートを焼失させるために空気中で300〜400℃、20〜60時間処理を行う。
【0019】
二回の水熱合成反応でシリカ膜を形成する二段階方法は、一段階目はシリカ含有量が多い反応液を用いて結晶の生成を行い、次にシリカ含有量の少ない反応液を用いて170℃程度の温度で水熱合成反応を行い、膜の合成を行うものである。テトラプロピルアンモニウムブロマイド、コロイダルシリカ、カ性ソーダの濃度は前記と同じであり、H2O/SiO2=60というシリカ含有量が多い状態で行い、次に、H2O/SiO2=90以上という含有量が少ない状態で行う。H2O/SiO2=500で、96時間程度をかけると良好な結果が得られる。
【0020】
種結晶ペーストを用いる方法は、シリカライトの種結晶(粒径約1μm)を、すり込ませた基板を用いて水熱合成を行うものである。H2O/SiO2=300から700程度の値とすることが望ましい。NaOH/SiO2=10であり、テトラプロピルアンモニウムブロマイド/SiO2=0.10で、水熱合成温度が170℃程度で良好な結果が得られる。
【0021】
担体としてガスや液体を通しやすい多孔質基板を用いることにより、ガスや液体の分離膜として使用することができる。孔径が1μm以上であり、通常では、2〜40μmの範囲にある。粒子界面を有しない一体形状の膜状に結晶成長したシリカライトにより形成された膜となる。
【0022】
このようにして得られるシリカライト膜の表面をシリコンゴムによりコーティングする。シリコンゴムによりコーティングするには、シリカライト膜をシリコンゴムの溶液に浸漬することにより行われる。シリコンゴムには、ジメチルシリコン系ゴム、メチルビニルシリコン系ゴム、メチルフエニルシリコン系ゴムなどを挙げることができる。これらは触媒を用いて架橋して、或いは熱を与えて架橋して用いる。熱により架橋して用いる方が良好な結果が得られる。
本発明では、より分子量の大きいものを用いた方が有効な結果が得られる。シリコンゴムは溶剤に溶かしたものが用いられることが一般的である。溶剤には,無極性溶媒、例えば、n―ヘキサン、シクロヘキサンなどが用いられる。シリコンゴムの濃度はシリコンの分子量などに応じて適宜濃度が調整される。一般的な濃度は、0.1〜10%、好ましくは1.0〜5.0%濃度のものが用いられる。
このようにして得られるシリコンゴムによりコーティングされたシリカライト膜の構造を観察したところ、以下のような相違が見られた。図5は、シリカライト膜の未処理のもの、シリコンゴムにより表面処理を行ったシリカライト膜の表面写真である。
【0023】
このようにして得られたシリカライト膜の表面をシリコンゴムによりコーティングされた膜を反応槽内の反応部分と反応生成物の回収部分の間に設置する。この膜は支持体に取り付けられて固定される。
【0024】
反応部分では、酵母の添加と同時に培地中にエタノールが蓄積され始める。その濃度が3重量%程度に到達した時点でエタノールの浸透気化分離を開始することが望ましい。すなわち、膜の透過側を減圧となるようにして、膜を透過した蒸気はコールドトラップにより液体として回収することができる。
以上のようにして、エタノール発酵工程と浸透気化分離工程を一体化し、並行して工程を実行できる。使用するシリカライト膜の性能に依存するが、10重量%以下のエタノールを含む発酵液から50〜70重量%に濃縮されたエタノールを安定して生産することができる。
【0025】
【実施例】
次に実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0026】
実施例1 シリコンゴムコーティングしたシリカライト膜の作製
シリカライト膜は、既報に従い、水熱合成法により多孔質焼結ステンレス基板上に作製した。次いで、ヘキサン溶媒に対してシリコンゴム(信越化学製、高分子量型KE45)を5重量%、あるいは、シリコンゴム(信越化学製、低分子量KE108)を3重量%となるように均一に溶解した後、シリカライト膜の表面のみをコーティングするためにステンレス基板側をセロファンテープで覆い、シリカライト膜を10秒間浸漬した。その後2日間風乾(室温)した。本シリカライト膜のエタノール水溶液を用いた分離性能を表−1に示す。
【0027】
【表―1】
【0028】
実施例2 発酵法により得られたエタノールの浸透気化分離
反応槽を二分して、反応部分に、発酵原料としてグルコースを含む培地を配置し、これに市販の乾燥パン酵母(Saccharomyces cerevisiae、オリエンタル酵母工業製)を添加した。発酵は30℃(撹拌子の回転数;600rpm)で行い、発酵開始12時間経過後より、前記実施例1で作製した膜(高分子量型KE45、5重量%コーティング)を介して、反応部分と膜を介して反対側の濃縮部分側を、減圧(10トール)にして透過したアルコールを含む蒸気を液体窒素を用いたコールドトラップにより回収した。このコールドトラップは定期的に取り替えた。
培地中のグルコース、エタノール濃度は、高速液体クロマトグラフィー(日本分光製、880-PU)、示差屈折計検出器(日本分光製、RID-300)、ポリスフェアOA KCカラム(Cica-MERCK製)により経時的に分析した。
また、膜を透過した回収液中のエタノール濃度の分析は、熱伝導度検出器付ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、GC-8A)、Thermon-1000充填カラム(3.0 mm×2 m)により経時的に行った。
グルコース濃度を20重量%に調製した培地150mlに乾燥パン酵母1.5gを添加した発酵において、浸透気化分離法により回収されたエタノール濃度の経時変化を図−1に示す。濃縮エタノールの最大濃度は70.2重量%であり、培地中のグルコースが全て消費された発酵終了時には63.4重量%であった。全回収物中のエタノール濃度は、67.4重量%であった。
【0029】
実施例3
ヘキサン溶媒に対してシリコンゴム(信越化学製、低分子量型KE108)を3重量%となるように均一に溶解した後、シリカライト膜の表面のみをコーティングするためにステンレス基盤側をセロファンテープで覆い、シリカライト膜を10秒間浸漬した。その後2日間風乾(室温)した。本シリカライト膜のエタノール水溶液を用いた分離性能を、前記表−1に示す。
実施例2において用いたシリコンゴムによりコーティングしたシリカライト膜の代わりに、シリコンゴム(信越化学製、低分子量型KE108)でコーティングしたシリカライト膜を用いた以外は、実施例2と同様にして実験を行った。その結果、図−2に示すように、得られた濃縮エタノールの最大濃度は、59.3重量%であり、発酵終了時には50.2重量%であった。全回収物中のエタノール濃度は、55.4重量%であった。
【0030】
実施例4
シリコンゴムコーティングしたシリカライト膜を発酵エタノールの濃縮に繰り返し使用するために、実施例2の実験後、膜表面を蒸留水のみで洗浄した後、エタノール水溶液を用いて、分離性能が発酵前と同等であることを確認した。次に、実施例2と同様に繰り返し実験を行った。その結果、図−3に示すように、得られた濃縮エタノールの最大濃度は、71.3重量%であり、発酵終了時には68.3重量%であった。全回収物中のエタノール濃度は、69.7重量%であった。
【0031】
比較例
実施例2において、シリコンゴムコーティングしていないシリカライト膜を用いた以外は、実施例2と同様にして実験を行った。その結果、図−4に示すように、得られた濃縮エタノールの最大濃度は、40.2重量%であり、発酵終了時には24.3重量%と、15ポイント以上低下した。全回収物中のエタノール濃度は、29.7重量%であった。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、酵母による発酵法に並行してエタノールを高濃度に濃縮して、しかも安定して生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2において、分離膜としてシリコンゴム(信越化学製、高分子量型KE45)でコーティングしたシリカライト膜を用いて回収された発酵エタノール濃度の経時変化
【図2】実施例3において、分離膜としてシリコンゴム(信越化学製、低分子量型KE108)でコーティングしたシリカライト膜を用いて回収された発酵エタノール濃度の経時変化
【図3】実施例4において、分離膜としてシリコンゴム(信越化学製、高分子量型KE45)でコーティングしたシリカライト膜を用いて回収された発酵エタノール濃度の経時変化
【図4】比較例において、分離膜としてシリコンゴム未コーティングのシリカライト膜を用いて回収された発酵エタノール濃度の経時変化
【図5】シリカライト膜及びシリコンゴムによりコーテイング処理したシリカライト膜の状態を示す図
【図6】本発明の装置を示す図
Claims (6)
- 糖質を原料としてエタノール発酵によりエタノールを製造する発酵槽を、表面をシリコンゴムコーティングしたシリカライト膜からなるエタノール選択性分離膜を介して、一方を供給する糖質の発酵によるエタノールの製造部分とし、他の一方をエタノールの濃縮部分に分け、エタノール製造部分で得られるエタノール溶液を、該エタノール選択性分離膜中を透過させてエタノールの濃縮部分に導くことを特徴とする高濃度エタノールの製造方法。
- エタノールの製造部分に比べて、エタノール濃縮部分の圧力が低い状態に保たれていることを特徴とする請求項1記載の高濃度エタノールの製造方法。
- エタノール選択性分離膜を透過させるエタノールが気体状で取り出される、浸透気化法によることを特徴とする請求項1又は2記載の高濃度エタノールの製造方法。
- 糖質を原料として発酵によりエタノールを製造する発酵槽において、表面をシリコンゴムコーティングしたシリカライト膜からなるエタノール選択性分離膜を介して、一方を供給する糖質の発酵によるエタノールの製造部分とし、他の一方をエタノールの濃縮部分としたことを特徴とする高濃度エタノール製造装置。
- エタノールの製造部分に比べて、エタノール濃縮部分の圧力が低い状態に保たれていることを特徴とする請求項4記載の高濃度エタノールの製造装置。
- エタノール分離膜を透過させるエタノールが気体状で取り出される、浸透気化膜を用いることを特徴とする請求項4又は5記載の高濃度エタノール製造装置。
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- 2002-08-23 JP JP2002242833A patent/JP3981724B2/ja not_active Expired - Lifetime
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