JP4047659B2 - 表面導電性複合プラスチックシート及び電子部品搬送用容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物よりなる基材層と導電性を有する表面導電層からなる積層体で、帯電防止性を有し、かつ、機械的強度に優れ、チップ型電子部品の保管、輸送、装着に際し、チップ型電子部品をチリなどの汚染物から保護し、電子回路基盤に実装するために整列させ、スムーズに高速で取り出せる機能を有する包装体のうち、収納ポケットを形成したエンボスキャリヤテープに適した表面導電複合プラスチックシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からICやICを用いた電子部品の包装形態としてインジェクショントレー、真空成型トレー、マガジン、エンボスキャリヤテープ等が使用されている。電子部品がエンボスキャリヤテープに収納され、搬送、保管される場合は、蓋材であるカバーテープでシールし供給される。このエンボスキャリヤテープ用シートには静電気によるIC等の破壊を防止するため帯電防止機能が必要とされる。その対策としては、帯電防止剤、導電性塗料、導電性フィラー等を使用する方法がある。その中でも、安定した帯電防止効果を得られることから、導電性塗料をシート基材表面に塗布する方法や導電性フィラーであるカーボンブラックを樹脂に練り込む方法が一般的である。本用途に用いられる樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中では、環境面、コスト面及び他の樹脂に比べカーボンブラックを多量に添加しても流動性や成形性の低下が少ない等の理由から、一般的にポリスチレン系樹脂が多く使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリスチレン系樹脂に単にカーボンブラックを分散したシートでは帯電防止効果は良好であるが、耐衝撃性などの機械的強度やエンボスキャリヤテープに成形した場合のポケット強度が不十分であった。特にポケットが大きいものや電子部品の重量が重くポケットに高強度を要求されるものに関しては導電PS系シートの単層構成のもので使用可能なものはなかった。その為、表裏層に導電層を有し、中間層に機械強度の強い樹脂を用いた多層シートが開発されている。同時に、ポケット強度の不足をシートの厚みを厚くすることで補っていた。しかしながら、エンボスキャリヤテープのポケット形状の微細化、複雑化及び環境対応における重量減の要求に伴い、シート厚みを薄化する要求が高まっている。また、ポリカーボネート系樹脂を用いたエンボスキャリヤテープでは、耐衝撃性などの機械的強度やポケット強度が強く、シート厚みを薄化出来き、環境対応に優れているが、高い成形温度と長い加熱時間が必要である為、成形機に制約が多く、また、成形温度が分解温度に近いため長時間の加熱で熱劣化する等、成形性に問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる問題を解決したものであり、特定の熱可塑性樹脂組成のシート基材層および導電性を有する表面導電層とを積層することにより、様々な形状のエンボスキャリヤテープに加工した場合においても、エンボスキャリヤテープに成形した場合のポケット強度、成形性等に優れた表面導電性複合プラスチックシートを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(1) 熱可塑性樹脂からなるシート基材層の両面に表面導電層を積層してなる表面導電性複合プラスチックシートであって、表面抵抗値が1×103Ω/□以上1×1010Ω/□未満であり、表面導電層の引張弾性率がシート基材層の引張弾性率より大きいことを特徴とする表面導電性複合プラスチックシート、
(2) 熱可塑性樹脂が、ポリスチレン系樹脂及び/又はABS系樹脂或いはこれらのポリマーアロイである(1)項記載の表面導電性複合プラスチックシート、
(3) 表面導電層が、ポリカーボネート樹脂100〜80重量部、ポリエステル系樹脂及び/又はABS系樹脂0〜20重量部よりなる熱可塑性樹脂100重量部とカーボンブラック1〜50重量部との樹脂組成物からなる(1)又は(2)項記載の表面導電性複合プラスチックシート、
(4) (1)〜(3)項のいずれか1項に記載の表面導電性複合プラスチックシートよりなる電子部品搬送用容器
である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明に用いるシート基材層を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではないが、好ましくはポリスチレン系樹脂及び/又はABS系樹脂、或いはこれらのポリマーアロイが使用される。
本発明で使用するポリスチレン系樹脂とは一般のポリスチレン系樹脂、耐衝撃性ポリスチレン樹脂、スチレンとメチルメタクリレートとの共重合樹脂及びこれらの混合物を主成分とするものである。ABS系樹脂とはアクリルニトリル-ブタジエン-スチレンの三成分を主体とした共重合体を主成分とするものである。
【0007】
本発明で使用するポリカーボネート系樹脂は、2,2−ビス(4−オキシフェニル)アルカン系、ビス(4−オキシフェニル)エーテル系、ビス(4−オキシフェニル)スルホン系、ビス(4−オキシフェニル)スルフィド系、ビス(4−オキシフェニル)スルホキサド系等のビスフェノール類からなる重合体若しくは共重合体を主成分とするものであり、具体的には芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族―脂肪族ポリカーボネート樹脂等が上げられる。
【0008】
本発明で使用されるポリエステル系樹脂とは、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリ1,4シクロヘキシルジメレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の一般的な飽和ポリエステルである。 また、表面導電層に使用される導電性カーボンブラックは、比表面積が大きく、π電子捕捉不純物が少ないアセチレンブラック、ファーネブラック、ケッチェンブラック等が好ましく用いられる。また、添加量は表面に用いられるポリカーボネート系樹脂100〜80重量部、ポリエステル系樹脂及び/又はABS系樹脂0〜20重量部よりなる熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは3〜40重量部である。下限値未満では十分な導電効果が得られず表面抵抗値が上昇してしまい、また、上限値を超えると樹脂との均一性、成形性、流動性、機械的強度等が著しく低下するため好ましくない。
【0009】
また、本発明の表面導電性複合プラスチックシートの表面抵抗値が1×1010Ω/□を超えると十分な帯電防止効果が得られず、1×103Ω/□未満では導電性が良すぎて外部で発生した静電気に対して内容物であるIC等を破壊する恐れがあるため好ましくない。
【0010】
本発明のシート基材層および表面導電層には、必要に応じて流動性や力学的特性を改善するために、滑剤、可塑剤、加工助剤、相容化剤及び補強剤等の各種添加剤や樹脂等を添加することが可能である。
本発明は、中間層であるシート基材層にポリスチレン系樹脂又はABS系樹脂から選ばれた少なくとも一種類の熱可塑性樹脂、若しくはこれらのポリマーアロイを用い、表面導電層にポリカーボネート系樹脂を使用することにより、スチレン系樹脂にカーボンブラックを分散したシートに比べ、成型後のポケット強度等が強いエンボスキャリヤテープを提供することが可能となった。また、基材層にポリカーボネート系樹脂を用いたシートに比べ、ポケット強度等はほぼ同等で成形性に優れたエンボスキャリヤテープを提供することが可能になった。
【0011】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
<実施例1>
表面導電層としては、PC樹脂(住友ダウ(株)製、カリバー300−22)100重量部に対して導電性カーボンブラック(電気化学工業(株)製、デンカブラック(粒状))22重量部をバンバリーにて混練し、押出機にてストランドカットでペレット化したものを使用した。シート基材層としてはABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製、サンタックET−70)を使用した。表面導電層とシート基材層との積層は、20mmφの押出機2台を用いた2種3層のフィードブロック方式のシーティング設備にて共押出にて行った。複合シートの層構成比率を、導電層:シート基材層:導電層=5:90:5とし、厚み0.3mmの複合シートを得た。
またこれとは別に、引張弾性率測定用サンプルとして、シート基材層のみ、及び表面導電層のみで厚み0.3mmの単層シートを押出機により作製した。
【0012】
<実施例2>
表面導電層の樹脂としてPC樹脂(住友ダウ(株)製、カリバー300−22)90wt%、ABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製、サンタックET−70)10wt%のポリマーアロイしたものを用いた以外は実施例1と同様にして厚み0.3mmの複合シート及びシート基材層のみ、及び表面導電層のみの単層シートを得た。
<実施例3>
表面導電層の樹脂としてPC樹脂(90wt%)/PET樹脂(10wt%)のポリマーアロイしたもの(住友ダウ(株)製、SDポリカCR−3241)を用いた以外は実施例1と同様にして厚み0.3mmの複合シート及びシート基材層のみ、及び表面導電層のみの単層シートを得た。
<実施例4>
シート基材層としてAS樹脂(旭化成工業(株)製、スタイラック767)20wt%とABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製、サンタックET−70)80wt%のポリマーアロイしたものを用いた以外は実施例1と同様にして厚み0.3mmの複合シート及びシート基材層のみ、及び表面導電層のみの単層シートを得た。
【0013】
<比較例1>
表面導電層の樹脂としてHIPS樹脂(A&Mスチレン(株)製、HT516)85wt%、SBR樹脂(旭化成工業(株)、タフプレン125)12wt%及びEVA樹脂(三井デュポン・ポリケミカル(株)製、エバフレックスP2505)3wt%を用いた以外は実施例1と同様にして厚み0.3mmの複合シート及びシート基材層のみ、及び表面導電層のみの単層シートを得た。
<比較例2>
シート基材層としてPC(住友ダウ(株)製、カリバー300−4)を用いた以外は実施例1と同様にして厚み0.3mmの複合シート及びシート基材層のみ、及び表面導電層のみの単層シートを得た。
<比較例3>
表面導電層の樹脂としてHIPS樹脂(A&Mスチレン(株)製、HT516)85wt%、SBR樹脂(旭化成工業(株)、タフプレン125)12wt%及びEVA樹脂(三井デュポン・ポリケミカル(株)製、エバフレックスP2505)3wt%を、シート基材層としてPC(住友ダウ(株)製、カリバー300−4)を用いた以外は実施例1と同様にして厚み0.3mmの複合シート及びシート基材層のみ、及び表面導電層のみの単層シートを得た。
【0014】
この表面導電性複合プラスチックシートの表面抵抗値及び引張弾性率並びにシート基材層、表面導電層のみの単層シートの引張弾性率を表1に示した。試験法としては表面抵抗値(JIS―K―6911)、引張弾性率(JIS−K−7113)で行った。
さらに、実施例1〜4、比較例1〜3で得られた表面導電性複合プラスチックシートを圧空成形により、縦14mm×横16mm×深さ3mmのポケット形状を有するエンボスキャリヤテープを成形し、作製したポケット強度の評価を行った。
またポケット強度の測定方法は、エンボスキャリヤテープのポケットを1mm/minで圧縮し、ポケットが潰れ始めた時の値で評価した。加熱/金型温度とは、エンボスキャリヤテープを成形する際の、シートの加熱温度及び金型の温度である。成形性の評価は、圧空成形機にて縦14mm×横16mm×深さ3mmのポケット形状のものを成形する際に加熱温度が210℃以下で加熱時間が0.4秒以下のものを◎、加熱温度が210℃以下で加熱時間が0.6秒以下のものを○、加熱温度が210℃より高いか加熱時間が0.6秒より長いものを×とした。
【0015】
【表1】
【0016】
【発明の効果】
本発明の表面導電性複合プラスチックシートを使用することにより、どんな形状のエンボスキャリヤテープに加工した場合にも、ポケット強度、成形性、表面導電性に優れるとともに、表面比抵抗値が長期にわたり安定したプラスチック製エンボスキャリヤテープを提供することが可能となった。
Claims (3)
- ポリスチレン系樹脂及び/又はABS系樹脂或いはこれらのポリマーアロイである熱可塑性樹脂からなるシート基材層の両面に表面導電層を積層してなる表面導電性複合プラスチックシートであって、表面抵抗値が1×103Ω/□以上1×1010Ω/□未満であり、シート基材層の引張弾性率が1350MPa以下であり、表面導電層の引張弾性率がシート基材層の引張弾性率より大きく、ポケット強度が93.3N以上であることを特徴とする表面導電性複合プラスチックシート。
- 表面導電層が、ポリカーボネート樹脂100〜80重量部、ポリエステル系樹脂及び/又はABS系樹脂0〜20重量部よりなる熱可塑性樹脂100重量部とカーボンブラック1〜50重量部との樹脂組成物からなる請求項1記載の表面導電性複合プラスチックシート。
- 請求項1〜2のいずれか1項に記載の表面導電性複合プラスチックシートよりなる電子部品搬送用容器。
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