JP4045470B2 - コンフォーカル顕微鏡 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザービームを標本に照射してスキャニングを行い、標本からの光をコンピュータ処理して標本の映像をモニターするコンフォーカル顕微鏡に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
今日、レーザー照射手段からのレーザービームを標本などの試料に照射し、標本からの光を画像処理して試料を観察するコンフォーカル顕微鏡が使用されている。
このコンフォーカル顕微鏡は、標本などの試料にレーザービームを照射し、試料からの光を光電子増倍管などの光電変換手段により輝度信号を形成するものである。そして、この輝度信号をレーザービームのスキャニング位置に合わせてた信号とすることにより、更に映像信号を形成するものである。
【0003】
又、この映像信号をフレームメモリーなどの画像データ記憶手段に記憶し、NTSC規格などのテレビレートで読み出してモニター装置に標本の映像を表示するものである。
このコンフォーカル顕微鏡の一例としては、図6に示すように、レーザー照射手段11が出力するレーザービームをビームスプリッタ15及びXYスキャナー17を介し、対物レンズ21を通して標本にレーザービームを照射するものである。
【0004】
このレーザー照射手段11は、レーザー出力装置12や調光フィルター13などを有し、レーザー出力装置12が射出するレーザービームのビーム強度を調整設定することが可能なレーザー照射手段11とされるものである。
又、XYスキャナー17は、スキャナー制御装置18により制御され、X軸ミラー及びY軸ミラーを一定周期で振動させるものである。そして、レーザー照射手段11からのレーザービームを試料61に照射するに際し、水平方向に多数の平行なラインを形成するようにレーザービームを振動させ、このレーザービームにより試料61の2次元走査を行わせるものである。又、このXYスキャナー17は、試料61からの光をデスキャニングしてビームスプリッタ15に送るものである。
【0005】
そして、ビームスプリッタ15は、レーザー照射手段11からのレーザービームは透過させてXYスキャナー17に送る。又、XYスキャナー17から戻った光は反射して光電変換手段25に送るものである。
尚、光電変換手段25とビームスプリッタ15との間には、ピンホール23を設け、光電変換手段25に入射する光を絞るようにしている。
【0006】
この光電変換手段25には、多くの場合、光電子増倍管26が用いられ、光電子増倍管26と光電子増倍管26に印加する電圧の調整が可能な増倍管用電源装置27とにより光電変換手段25としている。この光電変換手段25は、微弱な試料61からの光を電気信号である輝度信号に変換するものである。
そして、このコンフォーカル顕微鏡10における画像処理手段31は、光電変換手段25からの輝度信号とスキャナー制御装置18からの座標基準信号に基づいて映像信号を形成するものである。
【0007】
即ち、画像処理手段31では、XYスキャナー17のX軸ミラーの振動に合わせた水平同期信号やY軸ミラーの振動に合わせた垂直同期信号を同期信号形成手段37により形成し、X軸ミラーの振動に合わせたクロック信号に基づいてアナログデジタル変換回路35で光電変換手段25からの輝度信号を多数の画素の輝度データに変換する。そして、同期信号と合わせた多数の画素の輝度データである映像信号を、フレームメモリーなどの画像データ記憶手段33に記憶するものである。
【0008】
又、画像処理手段31は、この画像データ記憶手段33から映像信号の画像データを読み出すに際し、読み出し制御手段39によりNTSC規格などのテレビレートのタイミングに合わせて画像データを読み出して出力し、映像信号としてテレビ画面などのモニタ部を有する表示装置55に標本の映像を映し出すことができるようにするものである。
【0009】
そして、レーザービームを試料61に照射するコンフォーカル顕微鏡10では、FITCやIND1等の蛍光試薬により試料61を染色しておき、染色状態によって病理状態など、試料61の状態の観察を行っている。
即ち、蛍光色素は、色素固有の吸収波長を持っている。そして、蛍光色素は励起波長の光を吸収し、この色素固有の波長の蛍光を発する。この蛍光の特徴としては、励起波長より長波長となること、蛍光の強度は励起光の強度に比べて極めて弱いこと、更に、褪色があること、その物質固有の蛍光スペクトルを持っていること、などが挙げられる。
【0010】
このため、レーザー照射を行う顕微鏡では、蛍光褪色に対する対策として、レーザーパワーを極力小さくすることが一般的であった。しかし、レーザーパワーを小さくすると、蛍光自体の発光量が少なくなり、ピンホール23の径を大きくしたり、光電変換手段25の増幅率を大きくしたりしている。
このように、コンフォーカル顕微鏡10では、レーザービームのビーム強度を調整して蛍光の発光量を調整し、ピンホール23の径によって像の鮮明度を調整し、更に光電変換手段25における増幅率を調整して映像の明るさを決定し、適切な明るさ、鮮明度、及び、コントラストを定めて観察に適した映像を形成するようにしている。
【0011】
尚、調光フィルター13などを操作してレーザービームのビーム強度を強くすると、試料61からの発光量を多くできる。しかし、ビーム強度を強くすると褪色を生じさせるなど、試料61を傷めやすくなる。又、ピンホール23を操作してピンホール23の径を大きくすると、光電変換手段25に入射する光量を増加させ、明るい映像の画像データを形成することができる。しかし、ピンホール23の径を大きくすると映像の鮮明度が低下することになる。更に、光電変換手段25とした光電子増倍管26への印加電圧を調整し、印加電圧を大きくすると光電変換手段25とした光電子増倍管26の増幅率を大きくして入射光量が少なくても明るい映像の画像データを形成することができる。しかし、光電子増倍管26への印加電圧を大きくするとノイズなどにより見辛い画像となることがある。
【0012】
このため、一般的には充分な経験が必要とされ、蛍光標本から観察に適した適切な映像をコンフォーカル顕微鏡10で取得形成するためには、レーザービームのビーム強度や光電変換手段25の増幅率、更にピンホール23の径などを変更してはレーザービームによる走査を行って画像を取得している。そして、明るさ、鮮明度、及び、コントラストの最適な映像データを形成することにより、この映像データによる映像を観察し、標本の分析を行っている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、コンフォーカル顕微鏡では、試料を蛍光試薬で染色して試料の映像を取得することがある。
又、レーザービームのビーム強度や光電変換手段の増幅率を調整して試料の発光量を決定している。しかし、試薬によっては褪色が早く、強いレーザービームを照射した場合は数回で蛍光を発しなくなるものがある。
【0014】
このような褪色の早い試薬による試料の観察を行う場合は、強いビームの照射は蛍光を褪色させるため、レーザービームの強度を小さくして映像の取得回数を増加させることが行われている。
しかし、ビーム強度を小さくすると、試料からの発光量が少なくなり、ピンホールの径を大きくしたり、又、光電変換手段の増幅率を大きくする必要が生じる。
【0015】
そして、ピンホールの径を大きくすると映像の鮮明度が低下する欠点があり、光電子増倍管などの光電変換手段の増幅率を大きくすると、映像にノイズが発生し、映像が見辛くなる欠点があった。
このため、褪色の早い試料では、観察に適した映像を形成することが困難であり、正確な分析観察を行うことが困難となる欠点があった。
【0016】
又、褪色の早い試料の観察を行うに際しては、同一条件で染色した複数のサンプルセルを用意することがある。この場合は、レーザービーム照射手段が出力するビーム強度や光電変換手段の増幅率、又、ピンホールの径などの画像取得条件を調整し、サンプルセルを順次変えて観察分析に適した画像の取得を試みているものである。しかし、近似のサンプルを複数用意することが困難な場合もあり、観察に適した画像を形成して取得することが確実には行えない場合も多く、正確な分析が困難であった。
【0017】
本発明は、このような欠点を排除するため、画像の取得回数が少なくても観察に適した画像データを形成することのできるコンフォーカル顕微鏡を提供するものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ビーム強度の調整が可能なレーザービーム照射手段、試料からの光を光電変換し、且つ、出力信号の増幅調整が可能とされる光電変換手段、光電変換手段への入光量を調整するピンホール、及び、少なくとも一画面分の画像データを記憶する画像データ記憶手段を有するコンフォーカル顕微鏡において、画像取得条件を入力する入力手段と、前記画像取得条件の各条件に関する関数テーブルが記憶された関数記憶手段とを有し、前記画像取得条件と前記関数テーブルとに基づいて、画像データ記憶手段に記憶された画像データから各画素のデータを修正演算する画像処理手段を有するコンフォーカル顕微鏡とする。
【0019】
又、この関数記憶手段には、少なくともビーム強度と蛍光発光量との関数テーブル及び光電変換手段の増幅率と映像の明るさとの関数テーブルを有し、画像処理手段は、ビーム強度や増幅率を入力手段により設定すると、設定したビーム強度や増幅率、及びこれらの関数テーブルに基づいて画像データをデータ記憶手段に記憶された画像データを修正する変換処理部を有するものとする。
【0020】
尚、関数記憶手段には、更にピンホールの径と映像の明るさとの関数テーブルや、試薬濃度と栄光発光量との関数テーブルをも設け、ピンホール径の設定や試薬濃度の設定によっても、画像データの修正を行う変換処理部とすることもある。
このように、本発明に係るコンフォーカル顕微鏡は、画像データ記憶手段に記憶された画像データを直接に出力するのみでなく、一画面分の画像データを記憶する画像データ記憶手段と画像データにおける各画素のデータを修正演算して出力する画像処理手段を有しているから、画像データを修正して明るさの異なる画像データを形成し、修正した画像データによる映像をモニタなどに写し出すことができる。
【0021】
そして、ビーム強度と蛍光発光量との関数テーブル及び光電変換手段の増幅率と映像の明るさとの関数テーブルを有する画像処理手段は、顕微鏡の画像取得条件であるビーム強度と増幅率を変更した映像の画像データを演算により形成することができる。
更に、ピンホール径と映像との関数テーブルを有する画像処理手段は、ピンホール径を加えた画像取得条件の設定変更を行った場合の画像データを演算により形成できる。そして、試薬濃度と蛍光発光量の関数テーブルを有する画像処理手段は、試薬濃度を変更したサンプルの画像を取得する場合の画像データの明るさを演算により予測することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係るコンフォーカル顕微鏡の実施の形態は、従来と同様のレーザー照射手段やXYスキャナー、光電変換手段などを有するコンフォーカル顕微鏡であって、図1に示すように、画像処理手段31に画像データ記憶手段33としてのフレームメモリと併せて変換処理部41を有するものである。
【0023】
そしてこの変換処理部41は、関数記憶手段45や演算処理手段43、更には推定画像記憶手段47、及び、取得条件記憶手段49により構成しているものである。
又、この画像処理手段31には、従来と同様に、光電変換手段25からの輝度信号、及び、スキャナー制御装置18からの座標基準信号が入力される。
即ち、この画像処理手段31は、画像データ記憶手段33や同期信号形成手段37及びアナログデジタル変換回路35を有し、同期信号形成手段37により、座標基準信号に基づいて水平同期信号及び垂直同期信号を形成し、1フレーム分の画像データを画像データ記憶手段33に記憶することは従来と同様である。
【0024】
又、XYスキャナー17に附属したクロック形成手段からのピクセルクロックが入力され、アナログデジタル変換回路35において輝度信号をサンプリングするタイミング、及び、画像データ記憶手段33であるフレームメモリーで書き込みアドレスを指定する際のアドレス切換えのタイミングを調整することも従来と同様である。
【0025】
そして、この画像処理手段31における変換処理部41の関数記憶手段45には、光電変換手段25の増幅率調整と増幅率との関係を示す関数f1()、ピンホール径と検出強度との関係を示す関数f2()、レーザービームのビーム強度と蛍光の強さとの関係を示す関数f3()、及び、試薬濃度と蛍光の強さとの関係を示す関数f4()を記憶させるものである。
【0026】
尚、この光電変換手段25の増幅率及びピンホール径と検出強度との関係は、当該顕微鏡に使用されている光電変換手段25の増幅特性などに合わせた関数とするものである。
即ち、光電変換手段25として光電子増倍管26を用いている顕微鏡においては、光電子増倍管26に印加する電圧により一定入光量に対する出力電流が異なり、印加電圧により増幅率に相当する増倍率が変化する。即ち、光電子増倍管26は、入射された光が光電陰極に照射されると、光電陰極から光電子を放出する。そして、放出された光電子は電子レンズ系に導かれて第1ダイノードに衝突して数倍の二次電子を放出する。この二次電子は、次のダイノードに衝突して増倍され、順次9段乃至12段程度とされるダイノードにより電子量が増倍されることになる。そして、ダイノード1段当たりの二次電子放出比δは、段間印加電圧Eの関数であり、数式1に示す関係となる。
【0027】
【数1】
Figure 0004045470
【0028】
尚、αはダイノードの形状や材質によって定まる定数であり、通常の光電子増倍管26では0.7〜0.8の値となっている。
そして、n段のダイノードをもつ光電子増倍管26の陰極と陽極との間に電圧Vを印加した場合、増幅率に相当する全体の像倍率の関数f1()は数式2のようになる。
【0029】
【数2】
Figure 0004045470
【0030】
又、光電子増倍管26は、通常、ダイノードが9段乃至12段程度とされており、図2に示すように、一般的には印加電圧の6乗乃至10乗に比例することになるものである。
従って、光電子増倍管26を用いた光電変換手段25では、印加電圧を調整することにより、出力電流の値を所定の割合で変化させ、輝度信号の変化を印加電圧の関数として表すことができる。この当該顕微鏡における光電変換手段25の増幅率の関数f1()を関数記憶手段45とするメモリにきおくしておくものである。
【0031】
又、ピンホール23の大きさは、規格化したピンホール23の径をVpとし、対物レンズの開口数をsinα、透過光の波長をλとすると数式3のように表すことができる。
【0032】
【数3】
Figure 0004045470
【0033】
そして、検出器の特性としては、一般に検出器の大きさが小さくなるほどコントラストが向上し、且つ、奥行きの分解能も増す。又、逆に、非常に大きな検出器では、コントラストや奥行きの分解能は低下することになる。
更に、半径Vpの有限の大きさの検出器を持つ光学系を伝達する光については、検出される信号f2()は数式4で表すことができる。
【0034】
【数4】
Figure 0004045470
【0035】
ここで、D(x,y)は検出器の形状を表すものである。
又、フレアや散乱した光強度が検出器の面積に単純に比例すると仮定すると、検出器の大きさの関数として検出器の出力信号対フレア比に関する数式を導くことができ、円形検出器の半径Vpと光電変換手段25に入射される光量との関係は、例えば図3に示すようになる。そして、数式4を数式5のように表すことができる。
【0036】
【数5】
Figure 0004045470
【0037】
尚、ここで、J0は0次の第1種ベッセル関数、J1は1次の第1種ベッセル関数である。
又、図3に示したAの曲線は、出力信号強度であり、Bの曲線は、フレアー比を表すものである。
従って、数式5に数式3を代入することにより、当該顕微鏡に使用した光電変換手段25が出力する信号強度とピンホール径との関係を示す関数f2()を求めることができ、このピンホール23の径を変更した場合の明るさの変化や鮮明度の変化を関数f2()として関数記憶手段45とするメモリに記憶しておくものである。
【0038】
又、一般に蛍光を発する現象は、励起光のエネルギーが蛍光物質に吸収され、物質のエネルギー準位が先ず励起された後、物質が元の状態に戻るようにエネルギー準位が戻るとき、吸収されたエネルギーが光として放出されるものである。
そして、レーザービームのビーム強度と試料61の発する蛍光強度との関係は、励起光であるレーザービームの強さをP0とし、単位面積当たりの蛍光の明るさをI0とすると、数式6のように表すことができる。
【0039】
【数6】
Figure 0004045470
【0040】
従って、蛍光吸収率と試料61の溶液吸収率が定まれば比例式が成り立ち、単位体積中の吸収率を一定のαとすると、レーザービームの強度と蛍光の強度との関数f3()は、数式7のように表すことができ、図4に示すように表すことができる。
【0041】
【数7】
Figure 0004045470
【0042】
又、試薬濃度と蛍光強度との関係は、数式6において、励起光であるレーザービームの強度を一定とすることにより求めることができる。
【0043】
【数8】
Figure 0004045470
【0044】
即ち、数式8のように、ビーム強度及び蛍光収率を一定と仮定すると、蛍光強度は図5に示すようになる。尚、図5の(1)として示す曲線は、試薬としてのIND1の例であり、(2)として示す曲線は、他の試薬であるFRA2の例である。
従って、蛍光強度は、ビーム強度を係数とする濃度の関数として、数式9のように表すことができる。
【0045】
【数9】
Figure 0004045470
【0046】
ここで、kcaは単位体積中の試薬の濃度を表すものである。
尚、この試薬濃度と蛍光強度との関係は、試薬の種類により異なるものであるから、種々の試薬のサンプルを用い、実測によりビーム強度と発光強度との関数f3()や試薬濃度と発光強度との関数f4の関数を求めて関数テーブルを作成することが効率的である。
【0047】
このように、各関数fn()を定め、シェーディングサンプル溶液を用いた実験値により当該顕微鏡固有の各関数のテーブルファイルを関数記憶手段45に記憶させるものである。
そして、変換処理部41における演算処理手段43を用い、画像データ記憶手段33に記憶した画像データを、入力手段51を操作することにより、関数記憶手段45に記憶した各関数に基づいて演算修正を施すことができるようにするものである。
更に、この演算修正した修正画像データは変換処理部41における推定画像記憶手段47に記憶させるものである。
【0048】
即ち、キーボードなどの入力手段51により、画像データ記憶手段33に画像データを取得したときの画像取得条件であるレーザービームの強度、光電子増倍管26への印加電圧、ピンホール23の径、及び、試薬の種類や濃度、更に走査回数などの画像取得条件を入力し、この画像取得条件を取得条件記憶手段49に記憶させることができるようにしている。
【0049】
尚、この画像取得条件は、レーザー照射手段11のビーム強度調整と連動して自動的にビーム強度を記憶し、光電変換手段25における増倍管用電源装置27の電圧調整器と連動して自動的に印加電圧を記憶し、ピンホール調整装置と連動して自動的にピンホール径を記憶する取得条件記憶手段49とすることもある。
そして、光電変換手段25の増幅率を変更する場合は、光電子増倍管26への印加電圧を変化させることになる故、修正する目標電圧の値を入力手段51から新たな印加電圧の数値として入力するものである。このように、変更項目として印加電圧を選択することにより、演算処理手段43に関数記憶手段45から印加電圧と輝度信号との関数f1()のテーブルを読み出させる。そして、取得条件記憶手段49に記憶された印加電圧の値と新たに入力された値とにより関数f1()を用いて画像データ記憶手段33に記憶している各画素データを修正する演算を行わせて推定画像記憶手段47に記憶させる。
【0050】
又、調光フィルター13によりレーザービームのビーム強度を変更する場合は、調光フィルター13の組み合わせによる新たなビーム強度の値を入力手段51から変換処理部41に入力するものである。この場合は、演算処理手段43はビーム強度と発光量との関数f3()の関数テーブルを関数記憶手段45から読み出し、取得条件記憶手段49に記憶されているビーム強度の値と新たに入力された値とにより、推定画像記憶手段47に記憶した各画素データの値を再度修正し、又は画像データ記憶手段33に記憶している各画素データを読み込んで修正演算して推定画像記憶手段47に記憶させるものである。
【0051】
即ち、試料61にビームを照射したときの画像取得条件をX0とすると、画像データ記憶手段33に記憶されるべき画像データの蛍光強度I0は、数式10に示すように表すことができる。
【0052】
【数10】
Figure 0004045470
【0053】
そして、修正された画像データの各画素の明るさをI’とし、画像データ記憶手段33に記憶されている画像データの各画素の明るさをIとすると、画像データ記憶手段33に記憶される修正画像データの各画素の明るさは数式11により表すことができる。
【0054】
【数11】
Figure 0004045470
【0055】
尚、I1は入力手段51から入力する仮想の画像取得条件により画像の取得を行った場合の各画素の明るさである。
従って、求める画像データの各画素の明るさは、各関数テーブルを用いることにより算出することができ、このときの映像における各画素の明るさは、数式12により求めることができる。
【0056】
【数12】
Figure 0004045470
【0057】
尚、X0は試料61にレーザービームを照射して画像データ記憶手段33に画像データを記憶させたときの画像取得条件である。又、X1はビーム強度や印加電圧、又はピンホール径などの新たに設定する画像取得条件である。
このように、変換処理部41を備えた画像処理手段31では、一度レーザービームにより試料61を走査し、一画面分の画像データを取得すれば、レーザービームのビーム強度を変更した画像の画像データを修正画像データとして演算処理により求めることができ、この修正画像データを推定画像記憶手段47に記憶させることができる。同様に、ピンホール径を変更修正した場合の画像データや光電変換手段25の増幅率に相当する光電子増倍管26への印加電圧の修正を行った場合の修正画像データを、更には試薬濃度を変更した試料61の画像を取得する場合の画像の明るさなどを演算処理手段43により演算して形成し、推定画像記憶手段47にこの修正画像データを記憶させることができる。
【0058】
尚、積算回数を入力手段51から入力することにより、各画素の明るさを回数倍することもある。
従って、試料61にレーザービームを一度照射して一枚の画像の画像データを取得すれば、ビーム強度や印加電圧など、画像取得条件を変更した画像の画像データを形成し、この修正画像データによる映像をCRTなどの表示装置55に表示させることができる。
【0059】
即ち、このコンフォーカル顕微鏡では、一度レーザービームを試料61に照射すると、以後、レーザービームの照射を行うことなく、ビーム強度や増幅率を変更した場合の映像を表示装置55に映し出し、最適な画像を得るためのビーム強度や増幅率、更にはピンホール23の径の組み合わせを決定することができることになる。
【0060】
従って、最初にビーム強度を小さくしたレーザービームを試料61に照射し、画像データを画像データ記憶手段33に記憶させ、入力手段51によりビーム強度や印加電圧、更にはピンホール径などを修正変更した場合の画像データである修正画像データを演算処理手段43により算出し、この修正演算により形成した修正画像データによる映像を表示装置55の画面に表示することができる。このため、観察に適した明るさの映像を視認しつつ印加電圧やビーム強度などの画像取得条件を定めることができるものである。
【0061】
そして、最適な画像を取得するための画像取得条件を決定するに際し、レーザービームを試料61に照射することなく種々の取得条件における画像を見て最適の画像取得条件を決定することができる故、画像取得条件の決定が容易であり、又、試料61をレーザービームにより傷めることがなく、新たに決定した最適の画像取得条件による画像データを再度取得することができる。
【0062】
尚、ビーム強度と増幅率との組み合わせにより観察に適した明るさの映像が得られる場合は、ピンホール径の変更を行わないことが観察条件を単純化できるために好ましい。
このように、本実施の形態におけるコンフォーカル顕微鏡10は、画像処理手段31に変換処理部41を有するコンフォーカル顕微鏡10である故、1枚の画像を取得することにより、ビーム強度の調整変更、光電変換手段25の増倍率の調整設定、積算回数及びピンホール23径の変更などの画像条件を変えた映像を表示装置55に表示させることができる。
【0063】
従って、レーザービームにより褪色など、試料61に損傷を与えることなく容易に観察分析に適した画像取得条件を定め、観察に適した画像取得条件により再度画像の取得を行って適切な観察分析を行うことができる。
特に、褪色の早い試薬を用いた試料61の観察に際しては、レーザービームを照射する回数を少なくすることができるため、サンプルセルの破壊を抑え、サンプルセルの数が少なくても適切な観察をおこなうことができる。
【0064】
このため、サンプルを多量に形成することが困難な倹体の観察やサンプルセルの作成に時間と手数とを要する試料61の観察分析を行う場合にも、観察を容易且つ正確に行うことができることになる。
尚、XYスキャナー17によりビームの走査を行う顕微鏡に限ることなく、コヒーレントな光を試料61の平面に照射し、二次元撮像素子と増幅器とを用いた光電変換手段により輝度信号又は映像信号を形成する顕微鏡であっても、同様に、変換処理部41を設けた画像処理手段31とすることにより、ビーム強度や増幅率、ピンホール径などの設定を容易におこなことができる。
【0065】
【発明の効果】
本発明は、画像記憶手段に記憶された前記画像データから各画素のデータを修正演算する画像処理手段を有するコンフォーカル顕微鏡である故、画像データを修正して明るさの異なる画像データを演算により算出形成することができる。
従って、画像取得条件を変更した画像データを演算により形成し、レーザービームを試料に照射することなく画像取得条件を変更した映像を観察し、分析観察に適した画像取得条件の決定が容易となる。
【0066】
又、請求項2に記載した発明は、ビーム強度と蛍光発光量との関数テーブル及び前記光電変換手段の増幅率と映像の明るさとの関数テーブルを有する故、当該顕微鏡におけるビーム強度及び増幅率を変更した種々の映像を形成する画像データを演算により形成し、この映像をモニタして観察に適したビーム強度と増幅率の組み合わせを容易に決定できる。
【0067】
そして、請求項3に記載した発明は、更にピンホールの径と映像の明るさとの関数テーブルを有する故、ビーム強度と増幅率、及び、ピンホール径の最適な組み合わせを容易に決定できる。
更に、請求項4に記載した発明は、試薬濃度と蛍光発光量との関数テーブルをも有する故、試薬濃度が変わる試料の観察を行うに際し、予めビーム強度を低くしつつ比較的観察に適した画像データを取得するビーム強度と増幅率、及び、ピンホール径の組み合わせを予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコンフォーカル顕微鏡における画像処理手段の例を示すブロック図。
【図2】光電子増倍管の出力特性を示す図。
【図3】ピンホール径と明るさとの関係を示す図。
【図4】ビーム強度と蛍光強度との関係を示す図。
【図5】試薬濃度と蛍光強度との関係を示す図。
【図6】コンフォーカル顕微鏡の全体を示すブロック図。
【符号の説明】
10 コンフォーカル顕微鏡
11 レーザー照射手段 12 レーザー出力装置
13 調光フィルター
15 ビームスプリッタ
17 XYスキャナー 18 スキャナー制御装置
21 対物レンズ
23 ピンホール
25 光電変換手段 26 光電子増倍管
27 増倍管用電源装置
31 画像処理手段 33 画像データ記憶手段
35 アナログデジタル変換回路 37 同期信号形成手段
39 読み出し制御手段
41 変換処理部 43 演算処理手段
45 関数記憶手段 47 推定画像記憶手段
49 取得条件記憶手段
51 入力手段
55 表示装置
61 試料

Claims (4)

  1. ビーム強度の調整が可能なレーザービーム照射手段と、
    試料からの光を光電変換して出力し、且つ、出力信号の増幅調整が可能な光電変換手段と、
    前記光電変換手段への入光量を調整するピンホールと、
    少なくとも一画面分の画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
    を有する顕微鏡において、
    画像取得条件を入力する入力手段と、
    前記画像取得条件の各条件に関する関数テーブルが記憶された関数記憶手段とを有し、
    前記画像取得条件と前記関数テーブルとに基づいて、前記画像データ記憶手段に記憶された前記画像データにおける各画素のデータを修正する演算を行って修正画像データを形成する画像処理手段を有することを特徴とするコンフォーカル顕微鏡。
  2. 前記関数記憶手段は、少なくとも前記ビーム強度と蛍光発光量との関数テーブル、及び、前記光電変換手段の増幅率と映像の明るさとの関数テーブルを有し、前記画像処理手段は、前記ビーム強度や前記増幅率を前記入力手段により設定すると前記画像データ記憶手段に記憶された画像データを、前記設定されたビーム強度や増幅率、及びこれらの関数テーブルに基づいて修正する変換処理部を備えたことを特徴とする請求項1に記載したコンフォーカル顕微鏡。
  3. 前記関数記憶手段は、前記ピンホールの径と映像の明るさとの関数テーブルを有し、前記ピンホールの径を前記入力手段により設定すると、前記変換処理部は、前記ピンホールの径と映像の明るさとの関数テーブルに基づいて、前記画像データ記憶手段に記憶された画像データの修正を行うことを特徴とする請求項2に記載したコンフォーカル顕微鏡。
  4. 前記関数記憶手段は、試薬濃度と蛍光発光量との関数テーブルを有し、前記試薬濃度の設定によって、前記変換処理部は、前記試薬濃度と蛍光発光量との関数テーブルに基づいて前記画像データ記憶手段に記憶された画像データの修正を行うことを特徴とする請求項3に記載したコンフォーカル顕微鏡。
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