JP4045082B2 - 超電導線材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は超電導線材に関する技術分野に属し、特には、NMR(核磁気共鳴)装置、物性実験用、ライフサイエンス分野、核融合、加速器等に用いられる高磁場マグネット、高磁気力が印加されるマグネットの構成素材として使用されるNb3 Sn系の超電導線材に関する技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
超電導物質によって実現される超電導現象を利用して、電力を消費せずに電流を流し、コイル状にして磁場を発生させる超電導マグネットは、核融合炉、磁気浮上列車、NMR装置、各種物性試験機器等に用いられている。このような超電導マグネットには、超電導物質として主にNbTi、Nb3 Sn超電導線材が用いられている。特に、8T以上の高磁界を発生させるマグネットには、Nb3 Sn超電導線材が用いられている。
【0003】
NbTi超電導線材は、フィラメント状のNbTi極細線がCu(銅又は銅合金)線中に埋め込まれた状態のものである。Nb3 Sn超電導線材は、Nbは延靱性に優れるがNb3 Snは延靱性が悪いことから、フィラメント状のNb極細線がSn含有銅合金線中に埋め込まれた状態のものをマグネットに巻線する等の加工をした後、熱処理をしてNb3 Sn反応層を形成させるというプロセスにより得られるものであり、換言すれば、フィラメント状のNb3 Sn極細線又はNb3 Sn層を有するNb極細線がCu又はCu合金中に存在するものである。
【0004】
上記Cu又はCu合金中のフィラメント状のものは超電導体フィラメントといわれ、Cuは超電導を安定化するための安定化材といわれる。Nb3 Sn超電導線材に関し、Nb極細線がSn含有銅合金線中に埋め込まれた状態で、熱処理前のもの、即ち、Nb3 Sn反応層が形成されていない状態のものは、Nb3 Snとしての超電導性を有していないので、厳密には超電導線材用の素材等というべきかもしれないが、Nb3 Sn反応層の形成後にはNb3 Snとしての超電導性を有するものとなることから、超電導線材といわれる。
【0005】
Nb3 Sn超電導線材を用いた高磁界マグネットは蓄積エネルギーが大きく、励磁時にマグネットを構成する超電導線材に高い電磁応力が印加される。このため、超電導線材自体にも高い電磁応力に耐えられる耐力、強度が要求される。特に、Nb3 Sn超電導線材の臨界電流は歪みに対して敏感で、歪みが約0.2%を超えると臨界電流が歪みと共に減少していくので、Nb3 Sn超電導線材の高強度化が要求されている。そこで、Nb3 Sn超電導線材の高強度化が検討されており、Nb3 Sn超電導線材の補強法として下記のようなものが提案されている。
【0006】
▲1▼ 特開平3-171514号公報では、Nb3 Sn超電導線材内にTa又はTa合金を補強材として挿入し、補強する方法が記載され提案されている。
▲2▼ 特開平10-255563 号公報では、上記補強材のTa及びTa合金の結晶粒径を規定している。
▲3▼ 特開平2-213008号公報では、内部拡散法のNb3 Sn線材に対して、ステンレス鋼、ハステロイ、W、Ta、NbTi等による補強を行っている。
▲4▼ 特開平7-310144号公報では、外部補強材、支持材に用いられるオーステナイト系ステンレス鋼の組成を規定している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来技術▲1▼〜▲4▼には次のような問題点がある。
【0008】
従来技術▲1▼及び▲2▼では、Taの材料費が高く、線材のコスト高につながっていた。また、Taの産出量が限られているため、その供給が不安定で生産スケジュールの遅延をもたらしていた。
【0009】
従来技術▲3▼では、補強材としてステンレス鋼をそのまま挿入した場合には、Nb3 Sn反応層を形成させるための高温長時間の熱処理の際に、この熱処理によってステンレス鋼内の磁性元素がNb3 Sn反応層あるいは更にCu部へ拡散してNb3 Sn超電導線材の超電導特性を損なうという問題があつた。
【0010】
従来技術▲4▼では、補強材に用いるステンレス鋼の組成を規定しているが、前提としている補強方法はNb3 Sn超電導線材の外部にケーシングするといった方法であるので、超電導線材製造の工程が複雑化し、余分な工程が増えるといった問題があった。また、ハンダ等のバインダーを用いるため、非超電導部が増え、コイル電流密度も低くなる。
【0011】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、前記従来技術▲1▼〜▲4▼でのような問題点を生じることなく、超電導線材の補強をすることができ、高強度化が可能な技術を提供しようとするものである。即ち、補強材として鉄基合金を用いた超電導線材であって、従来技術▲3▼での如き問題点が生じず、熱処理時の鉄基合金内の磁性元素の拡散による超電導特性の低下が生じ難い超電導線材を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る超電導線材は、請求項1記載の超電導線材としており、それは次のような構成としたものである。
【0013】
即ち、請求項1記載の超電導線材は、Snを含有するCu基合金材中にNbまたはNb合金よりなるフィラメントが配置されたNb/Cu基合金単芯部が複合多芯化されてなるNb/Cu基合金複合多芯部と、鉄基合金部とを有する超電導線材であって、前記鉄基合金部は超電導線材の中心部に配置され、前記Nb/Cu基合金複合多芯部は前記鉄基合金部の周囲に配置されており、前記Nb/Cu基合金複合多芯部と前記鉄基合金部との間に、元素周期表の4A族、5A族、6A族の金属の1種またはそれをベースとする合金よりなると共に厚みが3〜50μ m であり、前記鉄基合金部内の磁性元素の前記Nb/Cu基合金複合多芯部への拡散を防止するバリア層が配置されていることを特徴とする超電導線材である(第1発明)。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は例えば次のようにして実施する。
Snを含有するCu基合金材中にNbまたはNb合金よりなるフィラメントが配置されたNb/Cu基合金単芯部(線状体)を多数準備する。一方、補強材として鉄基合金(棒状体)を準備し、この棒状体の周囲に元素周期表の4A族、5A族、6A族の金属の1種またはそれをベースとする合金よりなる薄いシートを巻きつける。そして、この棒状体の周りにNb/Cu基合金単芯部(線状体)を多数配置する。さらに、これをバリア用の薄いシートで巻いた後、Cu管中に挿入し、これを減面加工する。そうすると、本発明に係る超電導線材が得られる。
【0016】
尚、上記超電導線材において、棒状体の周りに多数配置されたNb/Cu基合金単芯部(線状体)の集合体の部分がNb/Cu基合金複合多芯部に相当し、鉄基合金(棒状体)の部分が鉄基合金部(補強部)に相当し、鉄基合金(棒状体)の周囲に巻きつけられたシートがNb/Cu基合金複合多芯部と鉄基合金部との間に配置されたバリア層に相当する。
【0017】
上記超電導線材は、減面加工により所定の形状寸法となった後、熱処理をしてNb3 Sn又は(Nb,Ti)3 Snあるいは(Nb,Ta)3 Sn等のNb3 Sn系の反応層を形成させる。そうすると、超電導性を有するNb3 Sn系の超電導線材となる。
【0018】
このような形態で本発明が実施される。以下、本発明について主にその作用効果を説明する。
【0019】
本発明に係る超電導線材は、前述の如く、Snを含有するCu基合金材中にNbまたはNb合金よりなるフィラメントが配置されたNb/Cu基合金単芯部が複合多芯化されてなるNb/Cu基合金複合多芯部と、鉄基合金部とを有する超電導線材であって、前記Nb/Cu基合金複合多芯部と前記鉄基合金部との間に元素周期表の4A族、5A族、6A族の金属の1種またはそれをベースとする合金よりなるバリア層が配置されている。
【0020】
上記超電導線材は鉄基合金部が補強部となり、この鉄基合金部(補強部)によって補強をすることができる。この鉄基合金はTa等に比較して極めて材料費が安いので、線材のコストを低くすることができる。
【0021】
上記超電導線材においては、上記のように鉄基合金部が補強部となり、これよりわかる如く、補強材として鉄基合金を用いていることになるが、この鉄基合金部(補強部)とNb/Cu基合金複合多芯部との間に元素周期表の4A族、5A族、6A族の金属の1種またはそれをベースとする合金よりなるバリア層が配置されているので、Nb3 Sn系の反応層を形成させるための熱処理の際に、鉄基合金内の磁性元素の拡散を防ぐことができる。即ち、上記4A族、5A族、6A族の金属およびそれをベースとする合金は、鉄基合金内の磁性元素がNb/Cu基合金複合多芯部に向けて拡散しようとする際に、それを防止するバリアとしての機能を発揮する。このため、鉄基合金内の磁性元素の拡散による超電導特性の低下が生じ難い。
【0022】
このように、本発明に係る超電導線材は、補強材として鉄基合金を用いているが、熱処理時の鉄基合金内の磁性元素の拡散による超電導特性の低下が生じ難い。換言すれば、前記従来技術▲1▼〜▲4▼でのような問題点を生じることなく、超電導線材の補強をすることができる。
【0023】
前記元素周期表の4A族の金属としてはTi、やZr等、5A族の金属としてはNb、Ta、V等、6A族の金属としてはMo等がある。これらの金属及びその合金の中、Ti、Taは特に高磁場での臨界電流値の点で優れているので、この点からは主にTi、Taを用いることが望ましい。
【0024】
前記バリア層の厚みは3〜50μm とすることが望ましい。その理由を以下説明する。前記バリア層の厚みが3μm 以上の場合には鉄基合金内の磁性元素の拡散による超電導特性の低下を確実に防止することができるが、前記バリア層の厚みが3μm よりも薄い場合、減面加工(伸線加工等)の途中で施される焼鈍熱処理やNb3 Sn系反応層の形成のための熱処理の際に鉄基合金内のCr等の磁性元素の拡散を完全には防止することができず、バリア層を拡散して通過し、Nb3 Sn系反応層の超電導性を損なうことがあり、また、減面加工の途中でバリア層が破損してバリア層の機能が低下することがある。また、前記バリア層の厚みが50μm よりも厚い場合、超電導線材に占めるバリア層の断面積が大きくなり、超電導線材の断面積当たりの臨界電流密度が低下する。このような理由により、前記バリア層の厚みは3〜50μm とすることが望ましい。尚、前記バリア層の厚みは、Nb3 Sn系の超電導線材が減面加工により所定の形状寸法となった後でのバリア層の厚み、即ち、Nb3 Sn系の反応層を形成させるための熱処理の前のNb3 Sn系の超電導線材のバリア層の厚みである。
【0025】
本発明において、Nb/Cu基合金単芯部とは、Snを含有するCu基合金材中にNbまたはNb合金よりなるフィラメントが配置されたもののことである。Nb/Cu基合金複合多芯部とは、Nb/Cu基合金単芯部が複合多芯化されてなるもの、即ち、Nb/Cu基合金単芯部が複数個集まったもののことである。
【0026】
Snを含有するCu基合金材は、Cuをベースとする合金であってSnを必ず含有するものである。このCu基合金材としては、Snの他に、例えばTi,Ta,Zr,Hf,Ge,Si,Mgの1種以上を含むCu基合金を用いることができる。即ち、このCu基合金材としては、Cu−Sn合金(合金元素としてSnのみを含有するCu基合金)の他に、例えばCu−Sn−Ti合金(合金元素としてSn及びTiを含有するCu基合金)等を用いることができる。一方、フィラメントを構成するNb合金としては、Ti,Ta,Zr,Hf等の1種以上を含むNb合金、例えば、Nb−Ta合金(合金元素としてTaを含有するNb合金)やNb−Ti合金等を用いることができる。
【0027】
上記Cu基合金材とフィラメントを構成するNbまたはNb合金との組み合わせによって、熱処理で形成されるNb3 Sn系反応層は異なる。Cu基合金材としてCu−Sn合金を用い、フィラメントとしてNbを用いた場合、Nb3 Sn反応層が形成される。Cu基合金材としてCu−Sn−Ti合金を用い、フィラメントとしてNbを用いた場合、(Nb,Ti)3 Sn反応層が形成される。Cu基合金材としてCu−Sn合金材を用い、フィラメントとしてNb−Ta合金を用いた場合、(Nb,Ta)3 Sn反応層が形成される。これらのNb3 Sn系反応層はいずれも超電導性を有する物質である。
【0028】
Nb3 Sn系反応層には、Nb3 Sn反応層の他に、(Nb,Ti)3 Sn反応層、(Nb,Ta)3 Sn反応層等があり、いずれもNb及びSnを含む超電導性物質である。
【0029】
本発明に係る超電導線材においては、熱処理によって上記のようなNb3 Sn系反応層が形成される。
【0030】
本発明において、超電導線材の形状は限定されず、丸線、平角線のもの等を用いることができる。
【0031】
補強材(鉄基合金)は超電導線材の中心部に配置することができる。
【0032】
【実施例】
〔実施例1、比較例1および2〕
外部安定型のNb3 Sn超電導体を作製し、その性能評価試験を行った。この詳細を以下説明する。
【0033】
▲1▼ 実施例1に係るNb3 Sn超電導線材の作製:
直径60mmの丸棒状のCu−14質量%Sn合金材の中心とその周囲(6個所)に直径11.3mmの孔を合計で7個所空け、これらの孔にそれぞれNb棒を挿入し、押し出しビレットを作製した。
【0034】
このビレットを押し出し加工により直径20mmの棒状体とし、これを引き抜き加工により伸線し、六角ダイスにより対辺長1.5mmの六角断面に仕上げ、これを所定の長さに切断した。このようにして、Cu−14質量%Sn合金材中にNbよりなるフィラメントが配置されたNb/Cu基合金単芯部(六角線材)を多数準備した。
【0035】
一方、補強材の鉄基合金として直径10.5mmの丸棒状のステンレス鋼(SUS316L)を準備し、この丸棒の周囲に厚み0.2mmのNbシートを2層巻きつけた。
【0036】
次に、この丸棒の周りに前記六角線材(Nb/Cu基合金単芯部)を582本配置した。このようにして得られた複合体の周囲を厚み0.2mmのNbシート2層で巻き、これらを内径47mm、外径60mmのCu管中に挿入し、多芯押し出しビレットとした。この多芯押し出しビレットの断面構造を模式的に図1に示す。なお、図1において、符号の1は補強材(丸棒状ステンレス鋼)、2は補強材1の周囲に巻きつけられたNbシート、3は六角線材(Nb/Cu基合金単芯部)、4はNb/Cu基合金単芯部3が複合多芯化されてなるNb/Cu基合金複合多芯部、5はNb/Cu基合金複合多芯部4の周囲に巻きつけられたNbシート、6はCu管、7はこれらよりなる多芯押し出しビレットを示すものである。
【0037】
この多芯押し出しビレットを押し出し加工により直径20mmの棒状体とし、これを引き抜き加工により伸線し、厚み1.00mm、幅1.77mmの平角線材を製作した。このとき、伸線途中、適宜焼鈍熱処理を行った。このようにして、本発明の実施例1に係るNb3 Sn超電導線材を得た。
【0038】
上記平角線材を670℃で100時間加熱の条件で熱処理し、Nb3 Sn反応層を生成させた。
【0039】
▲2▼ 比較例1に係るNb3 Sn超電導線材の作製:
補強材としてステンレス鋼(SUS316L)に代えてTaを用いた。この点を除き、前記実施例1の場合と同様の方法により、同様の寸法の比較例1に係るNb3 Sn超電導線材(平角線材)を得、これを同様の条件で熱処理し、Nb3 Sn反応層を生成させた。
【0040】
▲3▼ 比較例2に係るNb3 Sn超電導線材の作製:
前記実施例1の場合には丸棒状ステンレス鋼(SUS316L)の周囲にNbシートを巻きつけたが、比較例2の場合にはNbシートを巻きつけなかった。この点を除き、前記実施例1の場合と同様の方法により、同様の寸法の比較例2に係るNb3 Sn超電導線材(平角線材)を得、これを同様の条件で熱処理し、Nb3 Sn反応層を生成させた。
【0041】
▲4▼ Nb3 Sn超電導線材の性能評価試験およびその結果:
前記熱処理によるNb3 Sn反応層生成後のNb3 Sn超電導線材について、液体ヘリウム中(温度4.2K、磁場12T)での臨界電流の測定および機械的特性(強度、0.2%耐力)の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
表1からわかる如く、比較例2に係るNb3 Sn超電導線材は、比較例1に係るNb3 Sn超電導線材と同様に強度および0.2%耐力が高くて機械的特性に優れているが、比較例1の場合よりも臨界電流が極めて小さく、また、n値も極めて小さい。
【0043】
本発明の実施例1に係るNb3 Sn超電導線材は、臨界電流およびn値が比較例2の場合よりも大きく、比較例1の場合と同様に優れており、また、比較例1の場合と同様に強度および0.2%耐力が高くて機械的特性に優れている。
【0044】
なお、比較例1に係るNb3 Sn超電導線材は、強度および0.2%耐力が高くて機械的特性に優れ、また、臨界電流およびn値が大きくて超電導特性に優れているものの、補強材としてTaを用いているので、コストが増大し、経済性の悪化を招来するという欠点がある。
【0045】
本発明の実施例1に係るNb3 Sn超電導線材は、このような経済性の悪化を招来することなく、比較例1に係るNb3 Sn超電導線材と同等もしくはそれ以上に優れた機械的特性および超電導特性を有することができる。これは、本発明の有効性を実証するものである。
【0046】
本発明の実施例1の場合、補強材の鉄基合金としてステンレス鋼(SUS316L)を用いたが、このステンレス鋼に代えて他の鉄基合金を用いた場合も同様の効果が得られる。また、本発明の実施例1の場合、丸棒状ステンレス鋼の周囲にNbシートを巻きつけたが、このNbシートに代えて他の元素周期表5A族の金属(Ta、V等)を用いた場合も、4A族の金属(Ti等)、6A族の金属(Mo等)を用いた場合も、ほぼ同様の効果が得られる。また、これらの金属をベースとする合金、例えばNb−Ta合金を用いた場合も、ほぼ同様の効果が得られる。また、これらの金属とCrやCu等との積層状のものを用いた場合も、ほぼ同様の効果が得られる。
【0047】
本発明の実施例1、比較例1および2の場合、Nb3 Sn反応層を形成させたが、これに代えて(Nb,Ti)3 Sn反応層や、(Nb,Ta)3 Sn反応層を形成させた場合も、前記実施例1、比較例1および2の場合と同様の傾向の結果が得られる。また、前記実施例1、比較例1および2の場合、外部安定型のNb3 Sn超電導体としたが、これに代えて内部安定型のNb3 Sn超電導体とした場合も、同様の傾向の結果が得られる。
【0048】
また、本発明の実施例1、比較例1および2の場合、外部安定型のNb3 Sn系超電導体を作製し、その性能評価試験を行ったが、内部安定型のNb3 Sn系超電導体とした場合も、その本発明例のNb3 Sn超電導線材は前記比較例1に対応する比較例のもの(補強材:Ta)と同等もしくはそれ以上に優れた機械的特性および超電導特性を有することができる。
【0049】
〔実施例2〕
補強材とNb/Cu基合金複合多芯部との間に配置されるNbよりなるバリア層の厚みをパラメータとして変化させた外部安定型のNb3 Sn超電導体を作製し、その性能評価試験を行い、バリア層の厚みの影響を調査した。この詳細を以下説明する。
【0050】
直径60mmの丸棒状のCu−14質量%Sn合金材の中心とその周囲(6個所)に直径11.3mmの孔を合計で7個所空け、これらの孔にそれぞれNb棒を挿入し、押し出しビレットを作製した。
【0051】
このビレットを押し出し加工により直径20mmの棒状体とし、これを引き抜き加工により伸線し、六角ダイスにより対辺長1.5mmの六角断面に仕上げ、これを所定の長さに切断した。このようにして、Cu−14質量%Sn合金材中にNbよりなるフィラメントが配置されたNb/Cu基合金単芯部(六角線材)を多数準備した。
【0052】
一方、補強材の鉄基合金として直径10.5mmの丸棒状のSUS316L材を準備し、この丸棒の周囲に厚み0.1mmのNbシートを1層巻きつけた。また、これと同様の丸棒の周囲に厚み0.2mmのNbシートを1層、3層、5層、10層あるいは20層巻きつけた。
【0053】
次に、この丸棒の周りに、前記六角線材(Nb/Cu基合金単芯部)を配置した。このようにして得られた複合体の周囲を厚み0.2mmのNbシート2層で巻き、これらを内径47mm、外径60mmのCu管中に挿入し、多芯押し出しビレットとした。この多芯押し出しビレットの断面構造を模式的に図1に示す。
【0054】
この多芯押し出しビレットを押し出し加工により直径20mmの棒状体とし、これを引き抜き加工により伸線し、厚み1.00mm、幅1.77mmの平角線材を製作した。このとき、伸線途中、適宜焼鈍熱処理を行った。このようにして、本発明の実施例2に係るNb3 Sn超電導線材を得た。
【0055】
上記平角線材を670℃で100時間加熱の条件で熱処理し、Nb3 Sn反応層を生成させた。
【0056】
前記Nb3 Sn反応層生成後のNb3 Sn超電導線材について、液体ヘリウム中(温度4.2K、磁場12T)での臨界電流の測定および機械的特性(強度、0.2%耐力)の測定を行った。また、電子顕微鏡による断面観察を行い、補強材(SUS316L材)の周囲に配置されたNbよりなるバリア層の厚みを計測した。これらの結果を表2に示す。
【0057】
表2からわかる如く、バリア層の厚みが3.6μm 、10.2μm 、16.4μm 、33.8μm の場合(符号B,C,D,E)は、臨界電流が大きいが、これに対し、バリア層の厚みが1.5μm の場合(A)及び62.4μm の場合(F)は、臨界電流が低くなっている。これは、バリア層の厚みは3〜50μm とすることが望ましいことを実証するものである。
【0058】
バリア層の厚みが62.4μm の場合の如く厚みが大きくなると臨界電流が低くなる。これは、バリア層の部分が非超電導であり、この部分の断面面積比が増大するためである。
【0059】
表2からわかる如く、バリア層の厚みが62.4μm の場合の如く厚みが大きくなると超電導線材の強度が高くなっている。これは、バリア層が強度メンバーとして作用するからである。即ち、Nb等の体心立方の結晶構造をとる金属は一般に低温で強度が急激に高くなり、このような性質を有するNbをバリア層に使用しているので、それの断面面積比が増大すると強度メンバーとして作用し、超電導線材の強度が高くなるためである。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【発明の効果】
本発明に係る超電導線材によれば、補強材として鉄基合金を用いているが、熱処理時の鉄基合金内の磁性元素の拡散による超電導特性の低下が生じ難くなる。即ち、鉄基合金内の磁性元素の拡散による超電導特性の低下を招くことなく、超電導線材の補強をすることができ、高強度化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例に係る多芯押し出しビレットの断面構造を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1--補強材、2--Nbシート、3--六角線材(Nb/Cu基合金単芯部)、
4--Nb/Cu基合金複合多芯部、5--Nbシート、6--Cu管、
7--多芯押し出しビレット。
Claims (1)
- Snを含有するCu基合金材中にNbまたはNb合金よりなるフィラメントが配置されたNb/Cu基合金単芯部が複合多芯化されてなるNb/Cu基合金複合多芯部と、鉄基合金部とを有する超電導線材であって、前記鉄基合金部は超電導線材の中心部に配置され、前記Nb/Cu基合金複合多芯部は前記鉄基合金部の周囲に配置されており、前記Nb/Cu基合金複合多芯部と前記鉄基合金部との間に、元素周期表の4A族、5A族、6A族の金属の1種またはそれをベースとする合金よりなると共に厚みが3〜50μ m であり、前記鉄基合金部内の磁性元素の前記Nb/Cu基合金複合多芯部への拡散を防止するバリア層が配置されていることを特徴とする超電導線材。
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